説明

可動式プラットホーム柵

【課題】列車の運行状況に関する情報提供機能を高めて乗降客の安全性を高めることができる可動式プラットホーム柵を提供する。
【解決手段】この可動式プラットホーム柵は、駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置により構成される可動式プラットホーム柵であり、ホームドア装置10のドア筐体部11の上部カバー部材11cに、入線する列車の進行方向を知らせる直線状の表示器21を備えることによって構成される。目につくドア筐体部の上部カバー部材の箇所に、入線する列車の進行方向に知らせる直線状の表示器を備え、駅ホームに居る旅客に対して当該番線における列車の運行状況に関する情報を正確に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動式プラットホーム柵に関し、特に、乗降客に対する安全サービスを高めるのに好適な可動式プラットホーム柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道駅のホーム(またはプラットホーム)では、列車(電車)に乗降する旅客の安全性を高めるため、可動式プラットホーム柵(以下では簡略して「ホーム柵」と記す)の設置が進められている。ホーム柵はホームの縁に沿って設置されている。ホーム柵は、柵構造部として機能するための所要台数の複数台のホームドア装置によって構成されている。複数台のホームドア装置は、各々、一列の防護壁を形成するように並べられている。各ホームドア装置は、ホームの床に固定されたドア筐体部(固定部)と、当該ドア筐体部内に収容され出し入れ自在に設けられた開閉自在なドア(可動部)とから構成されている。ホームドア装置は、電車が駅ホームに入ってくる時にはドアは閉じた状態にあり、柵の一部として、旅客と駅ホームに入ってくる電車とを隔離する機能を有している。ドアを駆動するための駆動機構はドア筐体部の内部に設けられている。駅ホームに入ってきた電車が停止した後、ホームドア装置ドア開、車両ドア開により旅客の乗り降りが行われる。
【0003】
本発明に関連する従来技術として下記の特許文献1,2を挙げることができる。
特許文献1が開示するプラットホームドアシステムは車椅子利用者が列車から降車するときにおいて、ホームドア付近の混雑を緩和し円滑な乗降を行えるようにするための構成を有する。具体的に、乗車駅側で、乗客が所持する記録媒体に基づき、個人情報から車椅子利用者であることを読み取ると共に、乗車券情報から降車予定駅を読み取る。さらにメモリ等に保存されるドア位置情報、時刻表データ、車両編成データ等から車椅子情報を生成する。読み取った上記の情報と生成した車椅子情報とを降車予定駅に送信する。降車予定駅では、表示部等により、ホームドア付近の旅客に対して車椅子利用者の存在を知らせる。
特許文献2が開示するプラットホーム柵は、安全にバリアフリーを実現する構成を有している。列車のレール方向に設けられる固定柵と可動柵とからなる構造において、固定柵に設けた戸袋に配置される可動柵の固有情報を通知する通知器を備える。この通知器により、視覚障害者は、可動柵の固有情報を取得することができる。視覚障害者は可動柵に触れる必要がなく、安全にその固有情報を入手することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151053号公報
【特許文献2】特開2005−239013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の可動式プラットホーム柵によれば、駅ホームで列車を待つ一般的な旅客に対して、入線する列車の進行方向について正確な情報を提供できる装置的仕組みを備えていなかった。近年、可動式プラットホーム柵において、駅ホームで列車を待つ旅客に対して、駅ホームに入線する列車の進行方向について正確な情報を与える装置的仕組みが求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、列車の運行状況に関する情報提供機能を高めて乗降客の安全性を高めることができる可動式プラットホーム柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る可動式プラットホーム柵は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0008】
第1の可動式プラットホーム柵(請求項1に対応)は、駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置により構成される可動式プラットホーム柵であり、ホームドア装置のドア筐体部の上部カバー部材に、入線する列車の進行方向を知らせる直線状表示手段を備えることによって構成される。
【0009】
上記の可動式プラットホーム柵では、人目につくドア筐体部の上部カバー部材の箇所に、入線する列車の進行方向に知らせる直線状の表示手段を備えるようにしたため、駅ホームに居る旅客に対して当該番線における列車の運行状況に関する情報を正確に提供することができ、乗降客の安全性を高めることが可能である。
【0010】
第2の可動式プラットホーム柵(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、直線状表示手段の点灯表示内容に基づいて入線状態を表示することを特徴とする。
【0011】
第3の可動式プラットホーム柵(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、直線状表示手段は列状の複数の表示要素によって構成され、複数の表示要素の各々の点灯表示順序に従って列車の進行方向を表示することを特徴とする。
【0012】
第4の可動式プラットホーム柵(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、直線状表示手段の色表示によって列車の入線状態を表示することを特徴とする。
【0013】
第5の可動式プラットホーム柵(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、表示要素はLEDであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、駅ホームにいる旅客に対して特に人目につくドア筐体部の上部カバー部材の箇所に、入線する列車の進行方向に知らせる直線状の表示手段を備えるようにしたため、当該旅客に対して列車の運行状況に関する情報を正確に提供することができ、列車の運行状況に関する情報提供機能を高めることができ、もって乗降客の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る可動式プラットホーム柵を構成する1台のホームドア装置を示し、駅ホーム側から見たホームドア装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ホームドア装置の外観正面図である。
【図3】ホームドア装置の平面図である。
【図4】ホームドア装置に設けられた表示器の制御構成と通信系を含むシステム構成とを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3を参照して本発明に係る可動式プラットホーム柵の実施形態を説明する。
この可動式プラットホーム柵は、駅ホーム(プラットホーム)の各番線に対応する線路側縁の大部分の領域に沿って設置される。可動式プラットホーム柵は全体として柵形態を有するものであるが、当該可動式プラットホーム柵は線路側縁の長さに応じた所要台数の複数台のホームドア装置を一列に並べて設置することにより形成されている。従って、可動式プラットホーム柵は複数台のホームドア装置によって構成されている。
図1は基本単位になる1台のホームドア装置の外観斜視図(駅ホーム側から見た)を示し、図2は同装置の外観正面図(駅ホーム側から見た)を示し、図3は同装置の平面図を示している。
【0018】
図1等では、列車(電車)が駅ホームの例えば1番線に到着する前の段階のホームドアが閉じた状態の1台のホームドア装置10のみを示している。1台のホームドア装置10は、可動式プラットホーム柵を構成する基本単位なる装置構成である。図1等において、1台のホームドア装置10の両側には、同じ構成を有する他のホームドア装置が設置されている。これらのホームドア装置10が一例に並べられ、連続してつながって全体としての可動式プラットホーム柵が形成される。図1等において他のホームドア装置の図示は省略されている。
【0019】
1台のホームドア装置10の全体は、駅ホームの線路側の縁100に沿って配置され固定されている。通常、ホームドア装置10は、駅ホームに入線し停車した電車の各車両ドアの位置に対応して所要台数のホームドア装置が配置され、固定されている。ホームドア装置10は、駅ホームの床面に固定される一対のドア筐体部11と、一対のドア筐体部11の各内部の戸袋構造部分に収納されかつ内蔵された制御装置および駆動装置に基づき進退動作により開閉自在に動作するホームドア(扉)12とから構成される。一対のドア筐体部11は、それぞれ基本的に同一の外観形状および構造を有し、かつ所要の間隔をあけて配置されている。当該間隔のスペースが乗降通路を形成する。一対のドア筐体部11における各々の対向する面(ドア開閉端面)11aには、ホームドア12が出入りするスリット状開口部11bが形成され、当該スリット状開口部11bを通してホームドア12が出入りする。ホームドア装置10が閉動作状態のときには、両側に位置するホームドア12が一対のドア筐体部11の各々から出て、乗降通路を閉じる。ホームドア装置10が開動作状態のときには、両側のホームドア12が各ドア筐体部11の中に入り、乗降通路が形成される。
【0020】
上記のホームドア12は所要の強度を有するほぼ矩形の金属製等の板状部材によって形成される。なおホームドア12は透明部を設けることによりシースルー構造に形成することもできる。
【0021】
駅ホームの線路側の縁100に沿って設けられた複数台のホームドア装置10の各々において、ドア筐体部11の内部に収容されかつ進退動作に基づき開閉動作を行うホームドア12を動作させる駆動機構はドア筐体部11の内部に設けられている。
【0022】
上記のホームドア装置10において、好ましくは左右両側に配置される一対のドア筐体部11の各々において、その上部カバー部材11cの上面領域を利用して、当該領域部分に表示器21が設けられている。
表示器21は、入線する列車の進行方向を知らせる直線状の形態を有した表示器であり、直線を形成するように一列に配置された例えば複数のLED素子21aによって構成されている。
なお表示器21の設置箇所としては、上部カバー部材11cの上面が望ましいが、これに限定されるものではない。ドア筐体部11の正面部等であってもかまわない。
【0023】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るホームドア装置10の上記の表示器21に関係するシステム構成とその動作を説明する。
【0024】
図4において、表示器21は複数のLED素子21aによって構成されている。LED素子21aの個数は任意である。表示の流れ(動き)を旅客に示すことができるのであれば任意の数を設定することができる。表示器21を形成する複数のLED素子21aの発光動作は、ドア筐体部11に設けられた処理制御部22によって制御される。処理制御部22は本来的にホームドア装置10に設けられているものであり、その一部の機能として表示器21の制御機能が組み込まれる。処理制御部22の内部には、CPUで構成された制御部31が備えられる。制御部31は、ホームドア装置10におけるホームドア12の開閉動作等の制御を行う機能を元々有している。制御部31に対してメモリ32が設けられ、当該メモリ32内にドア開閉制御プログラム33、表示制御プログラム34等が実装されている。前述した通り、表示器21に関する表示制御の機能は列車の入線動作と連動している部分もあるので、表示制御プログラム34は上位に位置する列車運行計画に係る管理プログラムとの間で情報の送受を行うことにより連動制御を行うプログラム要素を含んでいる。
処理制御部22内の制御部31は、通信部35を経由してネットワーク(通信回線または通信ライン)36に接続され、中央に位置する管理サーバ37と接続可能になっている。管理サーバ37は列車運行全体の制御の機能を有しているため、当該制御機能と上記の表示制御プログラム34とは情報の送受を行うことにより連動している。
【0025】
上記の構成を有するホームドア装置10によれば、列車が図1に示した駅ホームの入線しようとするとき、制御装置31による制御動作に基づき、一定の接近距離条件の下で、入線する列車の進行方向を知らせる目的で、表示器21の複数のLED素子21aの各々の発光動作が制御される。すなわち、直線状に配列された複数のLED素子21aは、入線する列車の進行方向に一致するように、一方の端部のLED素子から他方の端部のLED素子に向かって順次に発光を行い、かつ当該発光動作を必要な回数反復するようにする。これにより表示器21における複数のLED素子21aによって表示の流れ(動き)を生じさせる。駅ホームにいる旅客は、表示器21の表示の流れを見て容易に列車の入線と入線方向とを知ることができる。
【0026】
表示器21の表示の態様については、その他の変形例として入線状態に関して色を利用した表示を行うことができる。例えば、隣の駅を出発した場合には黄色を使い、駅ホームに接近し特に注意を要する場合には赤色を用いることができる。換言すれば、入線する列車の接近状況に対応する危険度に応じて色を変えて用いることができる。
また表示器21の点灯の仕方としては、上記の流れを生じさせる他に、点滅、通常の常時点灯という点灯態様を選択することもできる。
また、表示器21の表示領域を、直線状という観点ではなく、2次元平面的な領域にし、当該2次元平面の表示領域に文字情報を表示するように構成することもできる。
以上により、上記の表示器21によれば、列車運行および駅ホームへの列車の入線状態に基づいて、当該入線状態を表示することができ、旅客に対して安価に列車入線状態に係る情報を提供することができる。
【0027】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る可動式プラットホーム柵は、ホームドア装置のドア筐体部の上部カバー部材に列車の入線状態に係る表示を行うための表示器を設け、旅客の安全性の向上に利用される。
【符号の説明】
【0029】
10 ホームドア装置
11 ドア筐体部
11a ドア開閉端面
11b スリット状開口部
11c 上部カバー部材
12 ホームドア
21 表示器
21a LED素子
22 処理制御部
31 制御部
32 メモリ
33 ドア開閉制御プログラム
34 照明制御プログラム
35 通信部
36 ネットワーク
37 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅ホームの線路側縁に沿って設置された複数台のホームドア装置により構成される可動式プラットホーム柵において、前記ホームドア装置のドア筐体部の上部カバー部材に、入線する列車の進行方向を知らせる直線状表示手段を備えることを特徴とする可動式プラットホーム柵。
【請求項2】
前記直線状表示手段の点灯表示内容に基づいて入線状態を表示することを特徴とする請求項1記載の可動式プラットホーム柵。
【請求項3】
前記直線状表示手段は列状の複数の表示要素によって構成され、前記複数の表示要素の各々の点灯表示順序に従って前記列車の進行方向を表示することを特徴とする請求項1または2記載の可動式プラットホーム柵。
【請求項4】
前記直線状表示手段の色表示によって前記列車の入線状態を表示することを特徴とする請求項2記載の可動式プラットホーム柵。
【請求項5】
前記表示要素はLEDであることを特徴とする請求項3記載の可動式プラットホーム柵。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−218859(P2011−218859A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86969(P2010−86969)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】