説明

可動接点付きシート

【課題】可動接点付きシートに関し、良好なクリック感触が得られると共に、接触信頼性の高いものを提供することを目的とする。
【解決手段】曲げの曲率が変わる変曲部を有した上方凸形の円形ドーム状をした弾性金属薄板製の可動接点1が、PET樹脂等の絶縁樹脂フィルム製のベースシート21の下面に形成された粘着剤3で粘着保持されており、このベースシート21に可動接点1の変曲部に対応した位置とその内周側とにほぼ同心円状になるように半径を変えて2つのハーフカット部22を設けた構成のものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方凸形のドーム状の可動接点と、その可動接点を下面に配したベースシートとを備えた可動接点付きシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に代表される各種電子機器の操作部には、金属薄板製でドーム状に形成された可動接点を、絶縁シート下面に備えた可動接点付きシートが用いられることが多い。
【0003】
このような従来の可動接点付きシートについて、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
図5は従来の可動接点付きシートの平面図、図6は同分解斜視図であり、同図において、1は曲げの曲率が変わる変曲部を有した上方凸形の円形ドーム状に形成された弾性金属薄板製の可動接点、2は下面に粘着剤3が設けられた絶縁樹脂フィルム製のベースシートで、粘着剤3により可動接点1の上面が粘着保持されている。可動接点1は搭載される図示しない電子機器の操作部位置に対応した所定位置に複数個が配設されている。
【0005】
そして、4は可動接点1の外周縁に沿う位置のベースシート2に部分的に設けられた所定幅の円弧状のスリットで、各可動接点1に対して、可動接点1を中心とする点対称の位置に1対がそれぞれ設けられている。
【0006】
以上のように構成された可動接点付きシートは、図7の装着状態の断面図に示すように電子機器に搭載される。
【0007】
図7において、41は図示しない所定の配線パターンが形成された配線基板で、上面に中央固定接点42とその中央固定接点42を囲むように配された外側固定接点43が1対になり、複数対が所定位置に配設されている。
【0008】
そして、その配線基板41上にベースシート2下面の粘着剤3により可動接点付きシートが粘着固定されており、各可動接点1が対になった中央固定接点42と外側固定接点43の各位置に対応して配置されている。可動接点1は、その外周下端が外側固定接点43上に載り、中央部が間隔をあけて中央固定接点42と対峙している。
【0009】
51は操作用パッドで、各可動接点1位置に対応して操作ボタン部52が設けられている。53は開口部53Aを有する筐体で、各開口部53Aから操作ボタン部52が上方に突出している。
【0010】
このように装着された可動接点付きシートについて、その動作を説明する。
【0011】
まず、操作ボタン部52を押圧すると、ベースシート2を介して可動接点1の中央部に押圧力が加わり、その押圧力が所定の大きさを超えるとクリック感を伴って可動接点1の変曲部より内側が下方凸形に弾性反転し、中央部下面が中央固定接点42に接触する。これにより、可動接点1を介して中央固定接点42と外側固定接点43との間が導通したスイッチオン状態となる。
【0012】
次に操作ボタン部52への押圧を解除すると、クリック感を伴って可動接点1が元の上方凸形に弾性復帰し、中央部下面が中央固定接点42から離れ、中央固定接点42と外側固定接点43との間が絶縁したスイッチオフ状態となる。
【0013】
この押圧とその解除操作によって、可動接点1の弾性反転および弾性復帰に伴うクリック感が得られるが、可動接点1を粘着保持して上方を覆ったベースシート2の変形も同時になされているため、ベースシート2の変形応力により可動接点1のクリック感が鈍くなる。
【0014】
そこで、可動接点1の外周縁に沿う位置のベースシート2に設けた1対の円弧状のスリット4によって、可動接点1が弾性変形する際のベースシート2の変形応力を軽減させて、操作時のクリック感触の鈍化を抑えている。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−56737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記従来の可動接点付きシートにおいては、クリック感触の鈍化を軽減するためにベースシート2に設けたスリット4は、可動接点1の外周縁に対応する位置に設けてあるので、スリット4と可動接点1との間でベースシート2が細幅形状になって粘着面積が少なく、ベースシート2が配線基板41から剥がれて浮いた状態となりやすい。そのため、スリット4を介して外方から侵入した塵埃等の異物が可動接点1と固定接点42、43とのスイッチ接点部に入り込んで、接触が不安定になることがあるという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、押圧操作時のベースシートの変形応力を軽減して良好なクリック感触が得られると共に、防塵性を確保して接触信頼性の高い可動接点付きシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、上方凸形のドーム状に形成された弾性金属薄板製の可動接点と、その可動接点を下面に配した絶縁樹脂フィルム製のベースシートとを備え、前記ベースシートの前記可動接点位置に対応した位置にハーフカット部が設けられていることを特徴とする可動接点付きシートとしたものであり、ハーフカット部により押圧操作時のベースシートの変形応力を軽減して良好な操作感触が得られると共に、装着状態でスイッチ接点部の防塵性が確保される接触信頼性の高い可動接点付きシートを実現することができるという作用を有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、ハーフカット部は、可動接点位置に対応した位置の上面側に設けられていることを特徴とするものであり、可動接点の上方凸形のドーム形状に沿ったベースシートの変形応力が大きくなる上面側にハーフカット部を設けるようにしたことで、効果的に変形応力を軽減することができるという作用を有する。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、ハーフカット部は、可動接点位置に対応した位置に同心円状に設けられていることを特徴とするものであり、ベースシートの変形量が同等となる部分を繋ぐようにハーフカット部が設けられているので、変形応力をバランスよく軽減することができるという作用を有する。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、ハーフカット部は、可動接点のドーム状の曲げ曲率が大きい変曲部位置に対応する位置に設けられていることを特徴とするものであり、ベースシートに生じる変形応力が大きくなる位置に対応させてハーフカット部を設けたことにより、効果的に変形応力を軽減することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、押圧操作時のベースシートの変形応力を軽減して良好なクリック感触が得られると共に、防塵性を確保して接触信頼性の高い可動接点付きシートを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点付きシートの平面図
【図2】同断面図
【図3】同装着状態の断面図
【図4】図3において押圧操作した状態の断面図
【図5】従来の可動接点付きシートの平面図
【図6】同分解斜視図
【図7】同装着状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による可動接点付きシートの平面図、図2は同断面図であり、同図において、1は曲げの曲率が変わる変曲部を有した上方凸形の円形ドーム状をした弾性金属薄板製の可動接点、21は下面に粘着剤3が設けられたPET樹脂、PC樹脂やウレタン樹脂等の絶縁樹脂フィルム製のベースシートで、複数個の可動接点1のそれぞれの上面が粘着剤3により粘着保持されて各可動接点1が所定位置に配されていることは従来のものと同様であるが、本実施の形態の可動接点付きシートは、ベースシート21にハーフカット部22が設けられていることが異なっている。
【0028】
ハーフカット部22は、可動接点1を粘着保持した位置に対応するベースシート21の上面側に設けられており、円形の可動接点1の変曲部に対応した位置とその内周側位置にほぼ同心円状になるように半径を変えて2つ形成されている。
【0029】
ここに、本実施の形態のベースシート21の厚みは、25μm〜50μmのPET樹脂フィルムを用いており、ハーフカット部22の切り込み深さは、10μm〜30μmで、ベースシート21厚みの40%〜60%で切り込んでいる。
【0030】
このように、当該構成では、下面の粘着剤3で可動接点1を粘着保持したベースシート21部分は、可動接点1の上面に沿って上方凸形のドーム状となるため変形応力を内部に生じるが、ハーフカット部22によってベースシート21の厚みが薄くなったように作用して変形応力が軽減されている。また、ベースシート21はドーム状に変形しているので、部材厚み内で上面側が下面側より強く変形応力が生じるが、上面側にハーフカット部22が設けられていることで、下面側に設けた場合より変形応力を軽減できる。そして、可動接点1の変曲部に対応した曲げ曲率の大きい位置にハーフカット部22が設けられているので、変形応力を効果的に軽減している。
【0031】
なお、ベースシート21はドーム状の可動接点1に沿っているので、ハーフカット部22の上方側は若干開口しているようになり、その状態を図2の断面図では誇張して表している。
【0032】
以上のように構成した可動接点付きシートは、図3の装着状態の断面図に示すように電子機器に搭載される。
【0033】
つまり、同図に示したように、従来の可動接点付きシートと同様に、上面に中央固定接点42と外側固定接点43を1対とする複数対が配設された配線基板41上面に、当該可動接点付きシートが、ベースシート21下面の粘着剤3で粘着固定されている。そのとき、可動接点1の外周下端は、外側固定接点43上に載置され、可動接点1の中央部が間隔をあけて中央固定接点42と対峙していることも従来同様である。
【0034】
そして、可動接点1位置の上方に操作ボタン部52が位置するように可動接点付きシート上方に操作用パッド51が配され、操作ボタン部52が筐体53に設けられた開口部53Aから上方に突出している。
【0035】
このように電子機器の配線基板41上に装着された可動接点付きシートの動作について説明する。
【0036】
まず、操作ボタン部52を押圧すると、ベースシート21を介して可動接点1の中央部に押圧力が加わり、その押圧力が所定の大きさを超えると、クリック感を伴って可動接点1の変曲部より内側が下方凸形に弾性反転し、図4の断面図に示すように、中央部下面が中央固定接点42に接触する。これにより、可動接点1を介して中央固定接点42と外側固定接点43との間が導通したスイッチオン状態となる。
【0037】
この可動接点1が弾性反転した状態で、可動接点1の変曲部が大きな曲率で変形するため、ベースシート21もその部分で大きく変形するが、変曲部に対応した位置およびその内側に設けられた2つのハーフカット部22によりベースシート21の変形応力が軽減されて、弾性反転時のクリック感触への影響が少なく、良好なクリック感触が得られる。
【0038】
次に操作ボタン部52への押圧を解除すると、クリック感を伴って可動接点1が元の上方凸形に弾性復帰し、中央部下面が中央固定接点42から離れ、中央固定接点42と外側固定接点43との間が絶縁したスイッチオフ状態となる。
【0039】
この押圧を解除する際においても、ハーフカット部22によりベースシート21の変形応力が軽減されているため、良好なクリック感触が得られて可動接点1が弾性復帰する。
【0040】
当該構成であれば、ベースシート21にスリット等の開口部分がないため、可動接点付きシートが配線基板41上に装着された使用状態において、可動接点1と固定接点42、43とからなるスイッチ接点部が外方と繋がることがなく、防塵性が確保できて、接触信頼性を向上させることができる。
【0041】
このように本実施の形態によれば、押圧操作およびその解除操作に伴う可動接点1の弾性反転動作および弾性復帰動作において、可動接点1を下面に粘着保持したベースシート21のハーフカット部22が可動接点1の曲げ曲率の大きい変曲部に対応した位置およびその内側に設けられているため、ベースシート21の変形時の変形応力が軽減されて、良好なクリック感触を得ることができる。また、ハーフカット部22を設ける構成としてベースシート21に外方と繋がる開口部分をなくしたので、スイッチ接点部の防塵性も確保され接触信頼性の高いものにすることができる。
【0042】
そして、ハーフカット部22をベースシート21の上面側に設けてあるので、ベースシート21において、上方凸形の可動接点1のドーム状に沿った状態でベースシート21の上面側に大きく生じる変形応力に対して、より効果的に変形応力を軽減できる。
【0043】
また、可動接点1が弾性反転動作する際に、ドーム状中央部が上方凸形から下方凸形へ弾性変形するが、ベースシート21の変形量が同等となる部分を繋ぐように同心円状にハーフカット部22を設けているため、ベースシート21に生じる変形応力をバランスよく軽減することができる。
【0044】
なお、ベースシート21に設けたハーフカット部22の員数、設ける位置・切込み深さ・形状については、本実施の形態によるもののみに限定されるものではなく、加工性等とクリック感触を調べながら適宜設定すると良い。また、小判形や多角形等の形状の可動接点1を用いる場合については、ベースシート21に設けるハーフカット部22は、円形に限定されず、曲げ曲率の大きな変曲部に対応する位置に直線状、円弧状など適宜変更した形状で設ければ良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による可動接点付きシートは、押圧操作時のベースシートの変形応力を緩和して良好なクリック感触が得られると共に、防塵性を確保して接触信頼性の高いものに実現できるという有利な効果が得られ、主に各種電子機器の操作部用等に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 可動接点
3 粘着剤
21 ベースシート
22 ハーフカット部
41 配線基板
42 中央固定接点
43 外側固定接点
51 操作用パッド
52 操作ボタン部
53 筐体
53A 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方凸形のドーム状に形成された弾性金属薄板製の可動接点と、その可動接点を下面に配した絶縁樹脂フィルム製のベースシートとを備え、前記ベースシートの前記可動接点位置に対応した位置にハーフカット部が設けられていることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項2】
ハーフカット部は、可動接点位置に対応した位置の上面側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の可動接点付きシート。
【請求項3】
ハーフカット部は、可動接点位置に対応した位置に同心円状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の可動接点付きシート。
【請求項4】
ハーフカット部は、可動接点のドーム状の曲げ曲率が大きい変曲部位置に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の可動接点付きシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146545(P2012−146545A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4694(P2011−4694)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】