説明

可動補助輪機構

【課題】 補助輪の接地位置を変えることができる可動補助輪機構を提供すること。
【解決手段】 可動補助輪機構1は、上下にスライドするスライド体と、支点で回動自在に支持されており、一端に前記スライド体が連結され、前記支点を中心に他端が上下にスイング可能となっているスイング杆3,3と、基端がスイング杆3の支点と他端との間であって、スイング杆3の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪5が取り付けられている脚4,4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の横転又は転倒を防止するとともに車両の安定した走行を実現できる可動補助輪機構に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場や農作業現場において、荷物を運ぶための単軌道車両が用いられている。単軌道車両は小回りが可能というメリットがある反面、横転や転倒のおそれがあるというデメリットがある。
【0003】
このような横転や転倒を防止すべく、単軌道の主輪に加えて補助輪を取り付けて複数点で接地する運搬車が特許文献1に開示されており、また、単軌道の無限軌道に加えて補助輪を取り付けて複数点で接地する運搬車が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−96488
【特許文献2】実開平7−43399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の車両は主輪又はクローラの接地位置に対して、補助輪の接地位置を車両の進行方向、車両の幅方向、車両の高さ方向に変えることができないようになっている。そのため、例えば、両側が切立った道を走行する場合、補助輪の接地位置の幅が広すぎることによって車両が通れなくなり、走行できる道が制限されるという問題がある。
【0006】
さらに、車両において補助輪の接地位置、主輪又はクローラの接地位置、路面の傾斜等の条件によっては、車両の横転や転倒のおそれがある。
【0007】
上記点より本発明は、補助輪の接地位置を変えることができる可動補助輪機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1の可動補助輪機構は、上下にスライドするスライド体と、支点で回動自在に支持されており、一端に前記スライド体が連結され、前記支点を中心に他端が上下にスイング可能となっているスイング杆と、基端が前記スイング杆の前記支点と前記他端との間であって、前記スイング杆の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪が取り付けられている脚とを備える。
【0009】
この請求項1の可動補助輪機構によれば、スライド体のスライドによりスイング杆がスイングすること加えて脚がスイング杆の軸線周りに回動することによって、補助輪の接地位置を車両進行方向、車両の幅方向、車両の高さ方向に変えることができるようになっている。
【0010】
請求項2の可動補助輪機構は、請求項1の可動補助輪機構おいて、前記スライド体は、本体と、本体の端部に取り付けられており本体に対して上下に揺動可能となっている連結部とを備えており、前記スイング杆は、前記一端に軸線方向に穿孔された連結孔を備えており、前記連結部の一部が前記連結孔に遊嵌されている。
【0011】
この請求項2の可動補助輪機構によれば、請求項1の可動補助輪機構と同様に作用する上、上記のように簡易な構成でスライド体をスイング杆に連結するとともに、スライド体のスライド運動をスイング杆のスイング運動に容易に変換することができる。
【0012】
請求項3の可動補助輪機構は、請求項1又は2の可動補助輪機構おいて、前記スライド体には、スライド体を案内するためのガイド棒が貫通するガイド穴が形成されている。
【0013】
この請求項3の可動補助輪機構によれば、請求項1又は2の可動補助輪機構と同様に作用する上、スライド体には、スライド体を案内するためのガイド棒が貫通するガイド穴が形成されていることによって、スライド体が安定して上下にスライドし、ひいてはスイング杆のスイングが安定する。
【0014】
請求項4の可動補助輪機構は、回動自在に支持されている支持部と、前記支持部の軸線に対して所定角度をなす軸線となっている端部を有するシャフトと、基端が前記シャフトの前記端部の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪が取り付けられている脚とを備える。
【0015】
この請求項4の可動補助輪機構によれば、シャフトの回転によりシャフトの端部が変位すること加えて脚がシャフトの前記端部の軸線周りに回動することによって、補助輪の接地位置を車両進行方向、車両の幅方向、車両の高さ方向に変えることができるようになっている。
【0016】
請求項5の可動補助輪機構では、請求項4の可動補助輪機構おいて、前記端部は前記支持部の軸線に対して前記端部の軸線のなす角度が可変となっている。
【0017】
この請求項5の可動補助輪機構によれば、請求項4の可動補助輪機構と同様に作用する上、前記端部が前記支持部の軸線に対して前記端部の軸線のなす角度が可変となっていることによって、補助輪の接地位置を変える自由度がさらに高くなる。
【0018】
請求項6の可動補助輪機構は、請求項1乃至5のいずれかの可動補助輪機構おいて、前記補助輪が取り付けられている前記脚の先端は、この脚の長軸周りに回動可能となっている。
【0019】
この請求項6の可動補助輪機構によれば、請求項1乃至6のいずれかの可動補助輪機構と同様に作用する上、補助輪が取り付けられている脚の先端は、この脚の長軸周りに回動可能となっていることによって、補助輪の接地位置を容易に変えることができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1から5のいずれかの発明によれば、路面状況に応じて補助輪の接地位置を変えることによって、車両の横転や転倒を防止するとともに安定した走行を実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である
【図3】本発明の第一実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である。
【図4】本発明の第一実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である。
【図5】可動補助輪機構を示す正面図であり、ケーシングの一部を断面表示したものである。
【図6】本発明の第二実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である。
【図7】本発明の第二実施形態の可動補助輪機構を備える単軌道車両の正面図及び側面図である。
【図8】可動補助輪機構を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態の可動補助輪機構1を有する単軌道車両10について図1から図4を用いて説明する。図1は可動補助輪機構1を有する単軌道車両10が平らな路面を走行する場合を示す。図2は可動補助輪機構1を有する単軌道車両10が段差のある路面を走行する場合を示し、後述する車輪13が段差の谷で接地しており、同じく後述する補助輪5,5が段差の山に接地している。図3は可動補助輪機構1を有する単軌道車両10が段差のある路面を走行する場合を示し、後述する車輪13及び補助輪5,5が段差の谷で接地している。図4は可動補助輪機構1を有する単軌道車両10が傾斜のある路面を走行する場合を示す。
【0023】
図1から図4に示すように、単軌道車両10は、本体フレーム11と、本体フレーム11の下方に設けられた駆動装置12及び車輪13とから構成されている。
【0024】
本体フレーム11は、本体フレーム11の前方側に設けられた荷物を載置する荷台部11aと本体フレーム11の後方側に設けられた手持ちのハンドル部11bとから構成されている。作業者はハンドル部11bを把持し、荷台部11aを略水平にした状態で荷台部11aに載置された荷物の運搬を行うことができる。
【0025】
荷台部11aの前端には本発明の第一実施形態の可動補助輪機構1が設けられている。可動補助輪機構1は、ケーシング7と、ケーシング7の両端から一部がそれぞれ突出するスイング杆3,3と、各スイング杆3に基端が取り付けられており、先端には補助輪5が取り付けられている脚4,4とを備える。
【0026】
図1から図4の正面図(a)を比較して分かるように、スイング杆3,3がケーシング7から突出する方向を変化させてスイングできるようになっている。また、図1から図4の側面図(b)を比較して分かるように、脚4はスイング杆3の軸線周りに回動可能となっている。さらに、脚4は脚本体41と補助輪5が取り付けられている脚4の先端の脚先端部42とを有しており、図1及び図4と図2及び図3とを比較して分かるように、脚先端部42が脚4の長軸周りに回動可能となっている。
【0027】
スイング杆3,3のスイング、脚4の回動及び脚先端部42の回動によって、図1から図4に示すようにそれぞれの路面状況に応じて補助輪5,5の接地位置を変えることができるようになっている。
【0028】
以下、図5を用いて、可動補助輪機構1のケーシング7の内部の構成とスイング杆3,3のスイング動作について詳細に説明する。
【0029】
図5に示すように、可動補助輪機構1は、ケーシング7と、ケーシング7内部で上下にスライドするスライド体2と、支点となる支点ピン31でケーシング7に回動自在に支持されており、一端にスライド体2が連結され、支点ピン31を中心に他端が上下にスイング可能となっているスイング杆3,3と、基端がスイング杆3の支点ピン31と他端との間であって、スイング杆3の軸線周りに回動可能に取り付けられている脚4とを備える。
【0030】
ケーシング7は両端が開口している筒体であり、各開口からスイング杆3の一部が突出するようになっている。ケーシング7の内部にはスライド体2のスライドを案内するためのガイド棒71,71が配設されている。また内部でスライド体2と螺合している回動レバー6がケーシング7に取り付けられている。
【0031】
スライド体2は、本体21と、本体21の端部に連結ピン23を介して取り付けられており本体21に対して上下に揺動可能となっている連結部22,22とを備えている。
【0032】
本体21には、前述のガイド棒71、71がそれぞれ貫通するガイド穴24,24が形成されており、回動レバー6が螺合するネジ穴25が形成されている。
【0033】
各連結部22からは挿入棒22aが後述するスイング杆3の連結孔32内部へと延出している。これにより、連結部22の一部である挿入棒22aが連結孔32に遊嵌されている状態となっている。各連結部22は、連結ピン23を中心に本体21に対して揺動自在になっているが、挿入棒22aがスイング杆3の一端に軸線方向に穿孔された連結孔32から抜けてしまわないように連結部22の揺動範囲が制限されている。
【0034】
図5(a)から(c)に示すように、スライド体2がスライドすることによって、連結部22の挿入棒22aがスイング杆3の連結孔32の内壁を押すこととなる。この押す力によって、スイング杆3の他端は支点ピン31を中心にスイングするようになっている。
【0035】
以下、図6及び図7を用いて、本発明の第二実施形態の可動補助輪機構1Aについて説明する。図6は可動補助輪機構1Aを有する単軌道車両10が平らな路面を走行する場合を示す。図7は可動補助輪機構1Aを有する単軌道車両10が段差のある路面を走行する場合を示し、後述する車輪13及び補助輪5,5が段差の谷で接地している。尚、第一実施形態と共通する単軌道車両10の説明は省略し、第二実施形態の可動補助輪機構1Aを詳細に説明する。
【0036】
可動補助輪機構1Aは、回動自在に支持されている支持部81と、支持部81の軸線に対して所定角度をなす軸線となっている端部82,82を有するシャフト8と、基端がシャフト8のそれぞれの端部82の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪5が取り付けられている脚4,4とを備える。
【0037】
シャフト8は取付部材9を介して回動自在に支持されている状態で単軌道車両10の荷台部11aの前端に取り付けられている。
【0038】
可動補助輪機構1Aは、シャフト8を回動させることによって、図6に示すように端部82,82が上に向って屈曲している状態と、図7に示すように端部82,82が下に向って屈曲している状態とすることができる。可動補助輪機構1Aは、シャフト8の回動を固定できる固定手段を有していてもよい。
【0039】
シャフト8の端部82,82の変位、脚4の回動及び脚先端部42の回動によって、図6及び図7に示すようにそれぞれの路面状況に応じて補助輪5,5の接地位置を変えることができるようになっている。
【0040】
図8は、支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度が可変となっている端部82,82を有する可動補助輪機構1Bを示す。以下、可動補助輪機構1Aと共通する構成については説明を省略する。
【0041】
支持部81の両端において、それぞれ中心ピン83が貫通する中心孔が形成されている。また、端部82にも中心ピン83が貫通する中心孔が形成されている。支持部81の中心孔と端部82の中心孔を重合させた状態で中心ピンを両中心孔に挿入することによって、図8に示すように、支持部81の両端にそれぞれ端部82,82が中心に回動自在に取り付けられている。
【0042】
支持部81の両端において、それぞれ中心ピン83が貫通する中心孔から所定の距離に貫通孔が形成されている。また、端部82にも中心ピン83が貫通する中心孔から所定の距離であって中心孔を中心とする同心円上に複数の貫通孔85が形成されている。支持部81の貫通孔と端部82の貫通孔85の一つを重合させた状態で挿入ピン84を支持部81の貫通孔と端部82の貫通孔85の一つに挿入することによって、図8に示すように、端部82,82が支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度を固定することができる。支持部81の貫通孔と重合する端部82の貫通孔85の一つを変えて挿通ピン84を挿入よって、端部82,82は支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度が可変となっている。
【0043】
図8においては、端部82,82は支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度が同じ場合を示しているが、左右の端部82,82はそれぞれ独立して支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度を変化させることができる。
【0044】
尚、上記の支持部81の軸線に対して端部82,82の軸線のなす角度が可変となっている端部は一例であり、他の構成によって支持部の軸線に対して端部の軸線のなす角度が可変となっている端部を実現してもよい。
【0045】
上記第一及び第二実施形態では、単軌道車両10が車輪13を有する場合について説明したが、これに限定されること無く、例えば単軌道車両が無限軌道であるクローラ走行装置を有していてもよい。
【0046】
上記第一及び第二実施形態では、1個の車輪を有する単軌道車両10に可動補助輪機構1,1Aを取り付けた場合について説明したが、これに限定されること無く、例えば、3輪車両などの車両がバランスを崩しやすい複数輪又は複数軌道の車両に可動補助輪機構を取り付けてもよい。
【0047】
上記第一実施形態ではスライド体2と螺合する回動レバーを回動させることによって、スライド体2をスライドさせる構成となっている場合について説明したがこれに限定されること無く、例えばモータ又はアクチュエータ等の駆動力によって、スライド体をスライドさせてもよい。また、脚のスイング杆の軸線周りの回動も例えばモータ、アクチュエータ等の駆動力によって行われてもよい。
【0048】
上記第二実施形態におけるシャフト8の回動、端部82の回動及び挿入ピン84の抜き差しも例えばモータ、アクチュエータ等の駆動力によって行われてもよい。
【0049】
上記第一実施形態では一本のスライド体2のスライドによって二本のスイング杆3,3を同時にスイングさせる構成となっている場合について説明したが、これに限定されることなく、例えば、二本のスライド体を備え各スライド体にそれぞれスイング杆が連結されており、二本のスイング杆をそれぞれ独立してスイングさせる構成になっていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B 可動補助輪機構
2 スライド体
3 スイング杆
4 脚
5 補助輪
6 回動レバー
7 ケーシング
8 シャフト
9 取付部材
10 単軌道車両
11 本体フレーム
11a 荷台部
11b ハンドル部
12 駆動装置
13 車輪
21 本体
22 連結部
22a 挿入棒
23 連結ピン
24 ガイド穴
25 ネジ穴
31 支点ピン
32 連結孔
41 脚本体
42 脚先端部
71 ガイド棒
81 支持部
82 端部
83 中心ピン
84 挿通ピン
85 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下にスライドするスライド体と、
支点で回動自在に支持されており、一端に前記スライド体が連結され、前記支点を中心に他端が上下にスイング可能となっているスイング杆と、
基端が前記スイング杆の前記支点と前記他端との間であって、前記スイング杆の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪が取り付けられている脚とを備えることを特徴とする可動補助輪機構。
【請求項2】
前記スライド体は、本体と、本体の端部に取り付けられており本体に対して上下に揺動可能となっている連結部とを備えており、
前記スイング杆は、前記一端に軸線方向に穿孔された連結孔を備えており、
前記連結部の一部が前記連結孔に遊嵌されていることを特徴とする請求項1に記載の可動補助輪機構。
【請求項3】
前記スライド体には、スライド体を案内するためのガイド棒が貫通するガイド穴が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動補助輪機構。
【請求項4】
回動自在に支持されている支持部と、前記支持部の軸線に対して所定角度をなす軸線となっている端部を有するシャフトと、
基端が前記シャフトの前記端部の軸線周りに回動可能に取り付けられており、先端には補助輪が取り付けられている脚とを備えることを特徴とする可動補助輪機構。
【請求項5】
前記端部は、前記支持部の軸線に対して前記端部の軸線のなす角度が可変となっていることを特徴とする請求項4に記載の可動補助輪機構。
【請求項6】
前記補助輪が取り付けられている前記脚の先端は、この脚の長軸周りに回動可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の可動補助輪機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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