可動部材の駆動装置
【課題】センサを設けることなく可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させ得る利点を生かしながら、可動部材の異常動作の有無を判定できるようにする。
【解決手段】姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、可動部材を動作させる電動モータと、可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、電動モータへの通電開始から可動部材の動作が阻止されることによって電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた。
【解決手段】姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、可動部材を動作させる電動モータと、可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、電動モータへの通電開始から可動部材の動作が阻止されることによって電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、前記可動部材を動作させる電動モータと、前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段とを備えた可動部材の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記可動部材の駆動装置の一例として、車両のラジエータグリルにおける可動フィンの駆動装置がある。
可動フィンは、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材の一例であって、走行中の車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節することにより、車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与して、安定した走行状態を確保できるように設けてある。
可動フィンは、機関室への空気の侵入を阻止する全閉位置と、機関室への空気の侵入を許容する全開位置との二位置に亘る設定動作範囲を回動動作可能で、かつ、可動フィンとの接当により当該可動フィンの設定動作範囲を超える回動動作が阻止手段により阻止される(例えば、特許文献1参照。)。
したがって、可動フィンが設定動作範囲の一端から他端まで回動動作したことを検知するセンサを設けることなく、電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させ得る利点がある。
しかしながら、可動フィンにおける異常動作、例えば、所定時間の通電を行っても可動フィンが設定動作範囲の他端まで回動していなかったり、可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動させるに要する時間が短くて、可動フィンが設定動作範囲の他端まで回動動作した後の、可動フィンの設定動作範囲を超える回動動作が阻止されている状態での電動モータに対する通電時間が長いなどの異常動作の有無を判定できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するために、可動フィンが設定動作範囲の一端から他端まで回動動作したことを検知するセンサを設け、そのセンサによる検知タイミングに基づいて異常動作の有無を判定できるようにすることが考えられるが、この場合は、センサを設けることなく可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させ得る利点が損なわれる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、センサを設けることなく可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させ得る利点を生かしながら、可動部材の異常動作の有無を判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、前記可動部材を動作させる電動モータと、前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、前記電動モータへの通電開始から前記可動部材の動作が阻止されることによって前記電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて前記可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた点にある。
【0006】
本構成の可動部材の駆動装置であれば、電動モータに対して所定時間の通電を行ったときに、可動部材が設定動作範囲の一端から他端まで動作するに要した時間を電動モータへの通電開始からロック電流の検出までの時間として測定して、測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かによって、異常動作の有無を判定できる。
したがって、センサを設けることなく可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させ得る利点を生かしながら、可動部材の異常動作の有無を判定できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記異常判定手段は、前記車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチの操作回数が、前回の前記異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、前記異常判定処理を実行可能に構成してある点にある。
【0008】
本構成であれば、イグニッションスイッチが操作される毎に異常判定処理を実行するのではなく、前回実行した異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、異常判定処理を実行することができる。
したがって、電動モータに対して通電する回数も、可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させる回数も減らして、異常判定処理の実行に伴う負荷を軽減することができ、駆動装置のがたつきや異音の発生を防止して、駆動装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記可動部材が、前記車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンであり、前記異常判定手段が、前記可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて前記基準時間範囲を補正可能に構成してある点にある。
【0010】
本構成であれば、可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて、可動フィンの動作速度が速くなる時は基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、動作速度が遅くなる時は基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行って、機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記外部要因が前記電動モータの電源電圧であり、前記異常判定手段は、前記電源電圧が基準電圧よりも高いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行うように構成してある点にある。
【0012】
本構成であれば、電源電圧が基準電圧よりも高くて電動モータによる可動フィンの動作速度が速くなるときも、電源電圧が基準電圧よりも低くて電動モータによる可動フィンの動作速度が遅くなるときも、可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記異常判定手段は、前記車両の走行速度と、当該走行速度に応じた前記可動部材の前記基準時間範囲との相関マップに基づいて、前記基準時間範囲を決定するように構成してある点にある。
【0014】
本構成であれば、車両の走行中において、車両の走行速度に対応する基準時間範囲を相関マップから参照して、走行速度に応じた基準時間範囲に補正できる。
よって、車両の走行中においても、車両の走行速度に応じて基準時間範囲を決定して、可動部材の異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記外部要因が外気温度であり、前記異常判定手段は、前記外気温度が基準温度に対して高いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、前記外気温度が前記基準温度に対して低いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行うように構成してある点にある。
【0016】
電動モータの電機子コイルが横切る磁束密度は外気温度が高くなるほど低くなるので、外気温度が高くなるほど、電機子に発生する回転トルクが小さくなって、可動フィンの設定動作範囲に亘る動作時間が長くなる。
本構成であれば、外気温度が基準温度に対して高いときは、電動モータの回転トルクが小さくなるので、基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、外気温度が基準温度に対して低いときは、電動モータの回転トルクが大きくなるので、基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行う。
よって、外気温度に起因する可動フィンの設定動作範囲に亘る動作時間の変化に応じて、外気温度が基準温度に対して高いときも、低いときも、可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両のエンジンルームの断面図である。
【図2】車両のエンジンルームの断面図である。
【図3】制御装置(制御手段)のブロック図である。
【図4】中央処理装置による制御を示すフローチャートである。
【図5】異常判定処理を示すフローチャートである。
【図6】電圧差と電圧補正時間との相関関係を示すグラフである。
【図7】温度差と温度補正時間との相関関係を示すグラフである。
【図8】電流−電圧特性を示すグラフである。
【図9】走行速度と基準時間範囲との相関関係を示すグラフである。
【図10】第3実施形態の制御装置(制御手段)のブロック図である。
【図11】第3実施形態の中央処理装置による制御を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の異常判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、車両の前側部分に設けてあるエンジンルーム(機関室)1の内部を示す。エンジンルーム1には、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ2が設置され、ラジエータ2は車体ボディ3に取り付けられている。
【0019】
ラジエータ2の前面上部に対応して、グリル意匠部4に開口された第1グリル開口部5が配設されている。ラジエータ2の前面下部に対応して、バンパー6に開口された第2グリル開口部7が配設されている。
【0020】
ラジエータ2の前面であって、第1グリル開口部5と第2グリル開口部7との間には、車体ボディ3に取り付けられたバンパー補強材8が配置されている。バンパー補強材8の前面には発泡体緩衝材9が設けられ、緩衝材9を覆うバンパー6の樹脂製外装材10が取付けられている。
【0021】
ラジエータ2の前方には、第1筐体11と第2筐体12が上下に並設されている。第1筐体11と第2筐体12の夫々はブラケット13,14を介して車体ボディ3に取り付けられている。
【0022】
第1筐体11は、先端に第1蛇腹部15を形成した第1本体枠16と、第1本体枠16の内側に固定された第1筐体枠17とを備えている。
第1筐体枠17の内側に、ラジエータ2の前面上部を取り囲むように車幅方向に長い横断面形状が略長方形の第1空気流通路18が形成されている。
【0023】
第2筐体12は、先端に第2蛇腹部19を形成した第2本体枠20と、第2本体枠20の内側に固定された第2筐体枠21とを備えている。
第2筐体枠21の内側に、ラジエータ2の前面下部を取り囲むように車幅方向に長い横断面形状が略長方形の第2空気流通路22が形成されている。
【0024】
第1蛇腹部15の内側上部には、ボンネット周囲部材23から延長された壁材24が接合され、内側下部にはバンパー6の上部壁25が接合されている。これによって、第1グリル開口部5からラジエータ2の前面上部に至る第1空気導入通路26が形成されている。
【0025】
第2蛇腹部19の内側には、第2グリル開口部7に形成した開口端部27が嵌合している。これにより、第2グリル開口部7からラジエータ2の前面下部に至る第2空気導入通路28が形成されている。
【0026】
第1筐体枠17および第2筐体枠21には、本発明による可動部材の駆動装置の一例である第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2が夫々装備されている。
【0027】
第1シャッタ装置A1は、第1空気流通路18内に上下方向に間隔を隔てて配設された可動部材の一例としての複数の第1可動フィン29と、これらの第1可動フィン29を車幅方向に沿う横軸芯Xの周りで一体に回動動作させる図示しない減速ギア付き直流第1電動モータM1とを備えている。
【0028】
第1可動フィン29の夫々は、図1に示すように第1空気流通路18からエンジンルーム1への空気の侵入を許容する全開位置と、図2に示すようにエンジンルーム1への空気の侵入を阻止する全閉位置との二位置に亘る範囲が設定動作範囲として設定されている。
【0029】
第1可動フィン29を設定動作範囲のいずれか一端から他端まで回動動作させることにより、第1空気導入通路26を通した車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0030】
第2シャッタ装置A2は、第2空気流通路22内に配設された可動部材の一例としての複数の第2可動フィン30と、これらの第2可動フィン30を車幅方向に沿う横軸芯Xの周りで一体に回動動作させる図示しない減速ギア付き直流第2電動モータM2とを備えている。
【0031】
第1可動フィン29の両端部は、第1筐体枠17の両側枠部分に回動可能に支持され、第2可動フィン30の両端部は、第2筐体枠21の両側枠部分に回動可能に支持されている。
第1電動モータM1と第2電動モータM2は、いずれも、車載のバッテリー (図示せず)を駆動電源としている。
【0032】
第2可動フィン30の夫々は、図1に示すように第2空気流通路22からエンジンルーム1への空気の侵入を許容する全開位置と、図2に示すようにエンジンルーム1への空気の侵入を阻止する全閉位置との二位置に亘る範囲が設定動作範囲として設定されている。
【0033】
第2可動フィン30を設定動作範囲のいずれか一端から他端まで回動動作させることにより、第2空気導入通路28を通した車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0034】
第1筐体枠17及び第2筐体枠21の側枠部分の夫々には、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つとの接当により、当該第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段31を突設してある。
【0035】
阻止手段31は、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つの夫々が全開位置において接当することにより、第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の全開位置を越える回動動作を阻止する第1阻止部材31aと、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つの夫々が全閉位置において接当することにより、第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の全閉位置を越える回動動作を阻止する第2阻止部材31bとを突設して構成してある。
【0036】
第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、図1に示すように、全開位置では互いに平行で水平な角度位置に回動されていて、第1空気流通路18又は第2空気流通路22を開いている。
【0037】
第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、図2に示すように、全閉位置では、隣り合う第1可動フィン29の端部どうし又は隣り合う第2可動フィン30の端部どうしが近接している位置に回動されていて、第1空気流通路18又は第2空気流通路22を閉じている。
【0038】
第1シャッタ装置A1における第1可動フィン29と、第2シャッタ装置A2における第2可動フィン30を各別に全開位置又は全閉位置の二位置に回動動作させることにより、走行中の車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0039】
したがって、第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材の一例であって、車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することにより、走行中の車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与して、安定した走行状態を確保できるように構成してある。
【0040】
すなわち、第1可動フィン29と第2可動フィン30の全てを全閉位置に回動させることにより、空気抵抗(空気抵抗係数)及び揚力が低下すると共に、車両の前方側の空気が床面の下側に流れて、車両を下向きに引っ張るダウンフォースが発生する。
【0041】
また、第1可動フィン29と第2可動フィン30の全てを全開位置に移動させることにより、空気抵抗が高くなると共に、エンジンルーム1に導入される空気によってエンジンルーム1内の圧力が上昇し、揚力が高くなる。
【0042】
一定の走行速度においても、第1可動フィン29の開閉位置(全閉位置又は全開位置)と、第2可動フィン30の開閉位置(全閉位置又は全開位置)との組合せを変更することにより、発生する空気抵抗や揚力,ダウンフォースの大きさを調節することができる。
【0043】
図3は、第1シャッタ装置A1における第1電動モータM1と第2シャッタ装置A2における第2電動モータM2の作動を制御する制御装置(制御手段)Bのブロック図を示す。
【0044】
制御装置Bは、メモリ32とクロック回路33とを有する中央処理装置34と、第1電動モータM1と第2電動モータM2の作動を各別に制御するモータ制御回路35と、第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2の作動用電源(バッテリー)(図示せず)の電圧を監視する電圧モニタ回路36と、第1電動モータM1と第2電動モータM2に流れる電流を各別に監視する電流モニタ回路37と、走行速度や外気温度、ラジエータ2における冷却水温度などの車両情報が入力される通信回路38とを備えている。
【0045】
中央処理装置34は、図4に示すように、イグニッションスイッチ(IG)39がON操作されると(ステップ#1)、第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々について異常判定処理を実行し(ステップ#2)、第1可動フィン29と第2可動フィン30のいずれにも異常動作が無いと判定したときは、第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2の作動を制御するためのシャッタ開閉制御をイグニッションスイッチ(IG)39がOFF操作されるまで、つまりエンジンの駆動が停止されるまで所定時間毎または所定走行距離毎に実行する(ステップ#3,4)。
【0046】
異常判定処理では、図5に示すように、第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の回動動作が阻止されることによって第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流を検出するまでの動作時間T1,T2を測定すると共に、当該測定した動作時間T1,T2が上限時間TAmax ,TBmax と下限時間TAmin ,TBmin とで規定される基準時間範囲から逸脱している場合に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の異常動作の有無を判定する
【0047】
上限時間TAmax 及び下限時間TAmin は第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への回動動作方向に対応する開動作用基準時間範囲を規定する時間であり、上限時間TBmax 及び下限時間TBmin は第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全開位置から全閉位置への回動動作方向に対応する閉動作用基準時間範囲を規定する時間である。
【0048】
中央処理装置34は、異常判定手段としての異常判定プログラムと、予め設定してある設定基準時間範囲を規定する上限時間Tmax 及び下限時間Tmin と、後述する第1可動フィン29又は第2可動フィン30の動作速度に影響を与える外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係とをメモリ32に予め記憶している。
【0049】
したがって、中央処理装置34は、異常判定プログラムと、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin と、外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係とをメモリ32から読み出して異常判定処理を実行する。
【0050】
外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係は、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への動作方向と、全開位置から全閉位置への動作方向との夫々に対応してメモリ32に記憶してある。
補正時間TAa,TAbは全閉位置から全開位置への動作方向に対応する補正時間を示し、補正時間TBa,TBbは全開位置から全閉位置への動作方向に対応する補正時間を示す。
【0051】
図5は異常判定処理のフローチャートを示し、イニシャル処理においては、外部要因としての第1電動モータの電源電圧Vと、外部要因としての外気温度Temp とに基づいて、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に補正時間TAa,TAb,TBa,TBbを加算して基準時間範囲を補正する(ステップ#10)。
【0052】
図6は、全閉位置から全開位置への動作方向に対応する電源電圧Vと基準電圧V0との電圧差(V−V0)と、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に加算する電圧補正時間TAaとの相関関係を示し、電圧差(V−V0)と電圧補正時間TAaとが正比例している。
全開位置から全閉位置への動作方向に対応する電圧差(V−V0)と電圧補正時間TBaとの相関関係は、図6に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0053】
電源電圧Vが基準電圧V0よりも高いときは、電圧差(V−V0)に応じたマイナス符号の電圧補正時間TAaを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を短縮する補正を行い、電源電圧Vが基準電圧V0よりも低いときは、電圧差(V−V0)に応じたプラス符号の電圧補正時間TAaを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を延長する補正を行う。
【0054】
図7は、全閉位置から全開位置への動作方向に対応する外気温度Temp と基準温度Temp 0との温度差(Temp −Temp 0)と、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に加算する温度補正時間TAbとの相関関係を示し、温度差(Temp −Temp 0)と温度補正時間TAbとが正比例している。
全開位置から全閉位置への動作方向に対応する温度差(Temp −Temp 0)と温度補正時間TBbとの相関関係は、図7に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0055】
外気温度Temp が基準温度Temp 0を越えて高くなるほど、電機子コイルが横切る磁束密度が低くなって、第1電動モータM1と第2電動モータM2の回転トルクが小さくなるので、温度差(Temp −Temp 0)に応じたプラス符号の温度補正時間TAbを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を延長する補正を行い、外気温度Temp が基準温度Temp 0よりも低くなるほど、電機子コイルが横切る磁束密度が高くなって、第1電動モータM1と第2電動モータM2の回転トルクが大きくなるので、温度差(Temp −Temp 0)に応じたマイナス符号の温度補正時間TAbを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を短縮する補正を行う。
【0056】
基準時間範囲の補正は、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への動作方向と、全開位置から全閉位置への動作方向との夫々に対応して行う。
【0057】
次に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置に回動動作させた後(ステップ#11)、全開位置に回動動作させて、図8に示すように、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置から全開位置に回動動作させるための第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、電流モニタ回路37により当該第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流が所定時間に亘って検出されるまでの開動作時間T1をクロック回路33により測定する(ステップ#12)。
【0058】
次に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置に回動動作させて、図8に示すように、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全開位置から全閉位置に回動動作させるための第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、電流モニタ回路37により当該第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流が所定時間に亘って検出されるまでの閉動作時間T2をクロック回路33により測定する(ステップ#13)。
【0059】
次に、開動作時間T1が開動作用基準時間範囲から逸脱しているか否か、及び、閉動作時間T2が閉動作用基準時間範囲から逸脱しているか否かを判定し、いずれの基準時間範囲からも逸脱していないときは、異常動作無し(正常)と判定する(ステップ#14)。
【0060】
開動作時間T1と閉動作時間T2の少なくともいずれかが基準時間範囲から逸脱している場合は、異常動作有り(異常)と判定して、警告ランプを点灯するなどの異常処理を実行した後(ステップ#14,15)、異常判定処理を終了する。
【0061】
異常動作無しと判定されると、中央処理装置34はシャッタ開閉制御を実行する。
シャッタ開閉制御においては、冷却水温度が設定温度以下になるように制御する冷却水温度制御と、車両の空力特性を調節する空力制御とを所定時間毎または所定走行距離毎に実行する。
【0062】
冷却水温度制御では、入力された冷却水温度に基づいて、冷却水温度が設定温度以下になるように第1可動フィン29又は第2可動フィン30を回動動作させるために、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に所定時間に亘って通電する通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0063】
空力制御は、冷却水温度が設定温度以下であることを条件に実行され、車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することにより、入力された走行速度に基づいて車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与するために、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に所定時間に亘って通電する通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0064】
モータ制御回路35は、中央処理装置34から通電指令が入力されると、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に対して所定時間に亘って通電することにより、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させるモータ制御を実行する。
【0065】
つまり、中央処理装置34は、シャッタ開閉制御において、第1可動フィン29又は第2可動フィン30が全開位置にあるときは必要に応じていずれか又は双方を全閉位置まで回動動作させ、第1可動フィン29又は第2可動フィン30が全閉位置にあるときは必要に応じていずれか又は双方を全開位置まで回動動作させための通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0066】
〔第2実施形態〕
車両の走行中において、可動部材(可動フィン29,30)の異常動作の有無を判定する異常判定手段の実施形態を示す。
異常判定手段としての異常判定プログラムは、車両の走行速度Sと、当該走行速度Sに応じた第1可動フィン29と第2可動フィン30の上限時間TAmax ,TBmax 及び下限時間TAmin ,TBmin で規定される基準時間範囲との相関マップに基づいて、基準時間範囲を決定するように構成してある。
【0067】
メモリ32は、走行速度Sと開動作用基準時間範囲及び開動作用基準時間範囲との相関関係を記憶している。
図9は、走行速度Sと開動作用基準時間範囲との相関関係を示し、走行速度Sに正比例して上限時間TAmax 及び下限時間TAmin が増大する。
走行速度Sと閉動作用基準時間範囲との相関関係は、図9に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0068】
異常判定処理のイニシャル処理(ステップ#10)において、現在の車両の走行速度Sに対応する開動作用基準時間範囲の上限時間TAmax 及び下限時間TAmin をメモリ32から読み出して開動作用基準時間範囲を決定し、現在の車両の走行速度Sに対応する閉動作用基準時間範囲の上限時間TBmax 及び下限時間TBmin をメモリ32から読み出して開動作用基準時間範囲を決定する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0069】
〔第3実施形態〕
図10は、別実施形態の制御装置(制御手段)のブロック図を示し、本実施形態では、車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチ(IG)39のON操作回数N、つまりエンジンを起動させる側への操作回数Nをカウントするカウンタ回路40を中央処理装置34が備えている点で、第1実施形態と異なっている。
【0070】
本実施形態の中央処理装置34は、図11に示すように、イグニッションスイッチ(IG)39のON操作回数Nが、前回の異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数Mに達する毎に、異常判定処理を実行する。
【0071】
すなわち、イグニッションスイッチ(IG)39がON操作されると(ステップ#20)、ON操作回数Nをカウントアップし(ステップ#21)、前回の異常判定処理において異常動作が無い(異常検出無し)と判定されているときは (ステップ#22)、ON操作回数Nが設定回数M(但し、Mは2以上)であるか否かが判別される(ステップ#23)。
【0072】
前回の異常判定処理において異常動作が有る(異常検出有り)と判定されているとき、及び、ON操作回数Nが設定回数M以上であると判別されたときには、異常判定処理を実行する(ステップ#24)。
【0073】
したがって、前回の異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて、異常動作が有ると判定されているときは設定回数Mが実質的に1と設定され、異常動作が無いと判定されているときは設定回数Mが2以上に設定される。本実施形態では、異常動作が無いと判定されているときに判別される設定回数Mは例えば10に設定されている。
【0074】
ステップ#23においてON操作回数Nが設定回数M未満であると判別されたときは、第1実施形態で示したシャッタ開閉制御と同様のシャッタ開閉制御をイグニッションスイッチ(IG)39がOFF操作されるまで、つまりエンジンの駆動が停止されるまで所定時間毎または所定走行距離毎に実行する(ステップ #25,26)。
【0075】
図12は、本実施形態における異常判定処理のフローチャートを示す。
本実施形態の異常判定処理におけるステップ#30〜ステップ#34の動作は、第1実施形態で示した異常判定処理(図5)のステップ#10〜ステップ#14の動作と同じであるので、ステップ#35以降の動作について説明する。
【0076】
ステップ#34において異常動作無しと判定されたときは、カウンタ回路40を初期化してON操作回数Nを「0」とした後(ステップ#35)、図11に示したステップ#25のシャッタ開閉制御を実行する。
【0077】
ステップ#34において異常動作有りと判定されたときは、現在までに異常動作有りと判定された回数が2回以上か否かを判別し(ステップ#36)、2回未満のときは、図11に示したステップ#25のシャッタ開閉制御を実行し、2回以上のときは、警告ランプを点灯するなどの異常処理を実行して(ステップ#37)、異常判定処理を終了する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0078】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による可動部材の駆動装置は、可動部材の動作速度が速くなる時は基準時間範囲の下限時間のみを短縮する補正を行い、可動部材の動作速度が遅くなる時は基準時間範囲の上限時間のみを延長する補正を行うように構成してあってもよい。
2.本発明による可動部材の駆動装置は、イグニッションスイッチのエンジンの駆動を停止させる側への操作回数が設定回数に達する毎に、異常判定処理を実行可能に構成してあってもよい。
3.本発明による可動部材の駆動装置は、異常判定処理が実行可能となる設定回数を、エンジンの延べ運転時間や、車両の延べ走行距離に応じて変更設定可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 機関室
29 可動部材(可動フィン)
30 可動部材(可動フィン)
31 阻止手段
39 イグニッションスイッチ
B 制御手段
N 操作回数
M 設定回数
M1 電動モータ
M2 電動モータ
S 走行速度
Temp 外気温度
Temp 0 基準温度
Tmin 下限時間
Tmax 上限時間
V 電源電圧
V0 基準電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、前記可動部材を動作させる電動モータと、前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段とを備えた可動部材の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記可動部材の駆動装置の一例として、車両のラジエータグリルにおける可動フィンの駆動装置がある。
可動フィンは、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材の一例であって、走行中の車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節することにより、車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与して、安定した走行状態を確保できるように設けてある。
可動フィンは、機関室への空気の侵入を阻止する全閉位置と、機関室への空気の侵入を許容する全開位置との二位置に亘る設定動作範囲を回動動作可能で、かつ、可動フィンとの接当により当該可動フィンの設定動作範囲を超える回動動作が阻止手段により阻止される(例えば、特許文献1参照。)。
したがって、可動フィンが設定動作範囲の一端から他端まで回動動作したことを検知するセンサを設けることなく、電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させ得る利点がある。
しかしながら、可動フィンにおける異常動作、例えば、所定時間の通電を行っても可動フィンが設定動作範囲の他端まで回動していなかったり、可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動させるに要する時間が短くて、可動フィンが設定動作範囲の他端まで回動動作した後の、可動フィンの設定動作範囲を超える回動動作が阻止されている状態での電動モータに対する通電時間が長いなどの異常動作の有無を判定できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するために、可動フィンが設定動作範囲の一端から他端まで回動動作したことを検知するセンサを設け、そのセンサによる検知タイミングに基づいて異常動作の有無を判定できるようにすることが考えられるが、この場合は、センサを設けることなく可動フィンを設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させ得る利点が損なわれる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、センサを設けることなく可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させ得る利点を生かしながら、可動部材の異常動作の有無を判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、前記可動部材を動作させる電動モータと、前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、前記電動モータへの通電開始から前記可動部材の動作が阻止されることによって前記電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて前記可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた点にある。
【0006】
本構成の可動部材の駆動装置であれば、電動モータに対して所定時間の通電を行ったときに、可動部材が設定動作範囲の一端から他端まで動作するに要した時間を電動モータへの通電開始からロック電流の検出までの時間として測定して、測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かによって、異常動作の有無を判定できる。
したがって、センサを設けることなく可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させ得る利点を生かしながら、可動部材の異常動作の有無を判定できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記異常判定手段は、前記車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチの操作回数が、前回の前記異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、前記異常判定処理を実行可能に構成してある点にある。
【0008】
本構成であれば、イグニッションスイッチが操作される毎に異常判定処理を実行するのではなく、前回実行した異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、異常判定処理を実行することができる。
したがって、電動モータに対して通電する回数も、可動部材を設定動作範囲の一端から他端まで動作させる回数も減らして、異常判定処理の実行に伴う負荷を軽減することができ、駆動装置のがたつきや異音の発生を防止して、駆動装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記可動部材が、前記車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンであり、前記異常判定手段が、前記可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて前記基準時間範囲を補正可能に構成してある点にある。
【0010】
本構成であれば、可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて、可動フィンの動作速度が速くなる時は基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、動作速度が遅くなる時は基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行って、機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記外部要因が前記電動モータの電源電圧であり、前記異常判定手段は、前記電源電圧が基準電圧よりも高いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行うように構成してある点にある。
【0012】
本構成であれば、電源電圧が基準電圧よりも高くて電動モータによる可動フィンの動作速度が速くなるときも、電源電圧が基準電圧よりも低くて電動モータによる可動フィンの動作速度が遅くなるときも、可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記異常判定手段は、前記車両の走行速度と、当該走行速度に応じた前記可動部材の前記基準時間範囲との相関マップに基づいて、前記基準時間範囲を決定するように構成してある点にある。
【0014】
本構成であれば、車両の走行中において、車両の走行速度に対応する基準時間範囲を相関マップから参照して、走行速度に応じた基準時間範囲に補正できる。
よって、車両の走行中においても、車両の走行速度に応じて基準時間範囲を決定して、可動部材の異常動作の有無を精度良く判定できる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記外部要因が外気温度であり、前記異常判定手段は、前記外気温度が基準温度に対して高いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、前記外気温度が前記基準温度に対して低いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行うように構成してある点にある。
【0016】
電動モータの電機子コイルが横切る磁束密度は外気温度が高くなるほど低くなるので、外気温度が高くなるほど、電機子に発生する回転トルクが小さくなって、可動フィンの設定動作範囲に亘る動作時間が長くなる。
本構成であれば、外気温度が基準温度に対して高いときは、電動モータの回転トルクが小さくなるので、基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、外気温度が基準温度に対して低いときは、電動モータの回転トルクが大きくなるので、基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行う。
よって、外気温度に起因する可動フィンの設定動作範囲に亘る動作時間の変化に応じて、外気温度が基準温度に対して高いときも、低いときも、可動フィンの異常動作の有無を精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両のエンジンルームの断面図である。
【図2】車両のエンジンルームの断面図である。
【図3】制御装置(制御手段)のブロック図である。
【図4】中央処理装置による制御を示すフローチャートである。
【図5】異常判定処理を示すフローチャートである。
【図6】電圧差と電圧補正時間との相関関係を示すグラフである。
【図7】温度差と温度補正時間との相関関係を示すグラフである。
【図8】電流−電圧特性を示すグラフである。
【図9】走行速度と基準時間範囲との相関関係を示すグラフである。
【図10】第3実施形態の制御装置(制御手段)のブロック図である。
【図11】第3実施形態の中央処理装置による制御を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の異常判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、車両の前側部分に設けてあるエンジンルーム(機関室)1の内部を示す。エンジンルーム1には、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ2が設置され、ラジエータ2は車体ボディ3に取り付けられている。
【0019】
ラジエータ2の前面上部に対応して、グリル意匠部4に開口された第1グリル開口部5が配設されている。ラジエータ2の前面下部に対応して、バンパー6に開口された第2グリル開口部7が配設されている。
【0020】
ラジエータ2の前面であって、第1グリル開口部5と第2グリル開口部7との間には、車体ボディ3に取り付けられたバンパー補強材8が配置されている。バンパー補強材8の前面には発泡体緩衝材9が設けられ、緩衝材9を覆うバンパー6の樹脂製外装材10が取付けられている。
【0021】
ラジエータ2の前方には、第1筐体11と第2筐体12が上下に並設されている。第1筐体11と第2筐体12の夫々はブラケット13,14を介して車体ボディ3に取り付けられている。
【0022】
第1筐体11は、先端に第1蛇腹部15を形成した第1本体枠16と、第1本体枠16の内側に固定された第1筐体枠17とを備えている。
第1筐体枠17の内側に、ラジエータ2の前面上部を取り囲むように車幅方向に長い横断面形状が略長方形の第1空気流通路18が形成されている。
【0023】
第2筐体12は、先端に第2蛇腹部19を形成した第2本体枠20と、第2本体枠20の内側に固定された第2筐体枠21とを備えている。
第2筐体枠21の内側に、ラジエータ2の前面下部を取り囲むように車幅方向に長い横断面形状が略長方形の第2空気流通路22が形成されている。
【0024】
第1蛇腹部15の内側上部には、ボンネット周囲部材23から延長された壁材24が接合され、内側下部にはバンパー6の上部壁25が接合されている。これによって、第1グリル開口部5からラジエータ2の前面上部に至る第1空気導入通路26が形成されている。
【0025】
第2蛇腹部19の内側には、第2グリル開口部7に形成した開口端部27が嵌合している。これにより、第2グリル開口部7からラジエータ2の前面下部に至る第2空気導入通路28が形成されている。
【0026】
第1筐体枠17および第2筐体枠21には、本発明による可動部材の駆動装置の一例である第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2が夫々装備されている。
【0027】
第1シャッタ装置A1は、第1空気流通路18内に上下方向に間隔を隔てて配設された可動部材の一例としての複数の第1可動フィン29と、これらの第1可動フィン29を車幅方向に沿う横軸芯Xの周りで一体に回動動作させる図示しない減速ギア付き直流第1電動モータM1とを備えている。
【0028】
第1可動フィン29の夫々は、図1に示すように第1空気流通路18からエンジンルーム1への空気の侵入を許容する全開位置と、図2に示すようにエンジンルーム1への空気の侵入を阻止する全閉位置との二位置に亘る範囲が設定動作範囲として設定されている。
【0029】
第1可動フィン29を設定動作範囲のいずれか一端から他端まで回動動作させることにより、第1空気導入通路26を通した車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0030】
第2シャッタ装置A2は、第2空気流通路22内に配設された可動部材の一例としての複数の第2可動フィン30と、これらの第2可動フィン30を車幅方向に沿う横軸芯Xの周りで一体に回動動作させる図示しない減速ギア付き直流第2電動モータM2とを備えている。
【0031】
第1可動フィン29の両端部は、第1筐体枠17の両側枠部分に回動可能に支持され、第2可動フィン30の両端部は、第2筐体枠21の両側枠部分に回動可能に支持されている。
第1電動モータM1と第2電動モータM2は、いずれも、車載のバッテリー (図示せず)を駆動電源としている。
【0032】
第2可動フィン30の夫々は、図1に示すように第2空気流通路22からエンジンルーム1への空気の侵入を許容する全開位置と、図2に示すようにエンジンルーム1への空気の侵入を阻止する全閉位置との二位置に亘る範囲が設定動作範囲として設定されている。
【0033】
第2可動フィン30を設定動作範囲のいずれか一端から他端まで回動動作させることにより、第2空気導入通路28を通した車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0034】
第1筐体枠17及び第2筐体枠21の側枠部分の夫々には、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つとの接当により、当該第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段31を突設してある。
【0035】
阻止手段31は、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つの夫々が全開位置において接当することにより、第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の全開位置を越える回動動作を阻止する第1阻止部材31aと、第1可動フィン29のうちの一つ又は第2可動フィン30のうちの一つの夫々が全閉位置において接当することにより、第1可動フィン29の全部又は第2可動フィン30の全部の全閉位置を越える回動動作を阻止する第2阻止部材31bとを突設して構成してある。
【0036】
第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、図1に示すように、全開位置では互いに平行で水平な角度位置に回動されていて、第1空気流通路18又は第2空気流通路22を開いている。
【0037】
第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、図2に示すように、全閉位置では、隣り合う第1可動フィン29の端部どうし又は隣り合う第2可動フィン30の端部どうしが近接している位置に回動されていて、第1空気流通路18又は第2空気流通路22を閉じている。
【0038】
第1シャッタ装置A1における第1可動フィン29と、第2シャッタ装置A2における第2可動フィン30を各別に全開位置又は全閉位置の二位置に回動動作させることにより、走行中の車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することができる。
【0039】
したがって、第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々は、姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材の一例であって、車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することにより、走行中の車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与して、安定した走行状態を確保できるように構成してある。
【0040】
すなわち、第1可動フィン29と第2可動フィン30の全てを全閉位置に回動させることにより、空気抵抗(空気抵抗係数)及び揚力が低下すると共に、車両の前方側の空気が床面の下側に流れて、車両を下向きに引っ張るダウンフォースが発生する。
【0041】
また、第1可動フィン29と第2可動フィン30の全てを全開位置に移動させることにより、空気抵抗が高くなると共に、エンジンルーム1に導入される空気によってエンジンルーム1内の圧力が上昇し、揚力が高くなる。
【0042】
一定の走行速度においても、第1可動フィン29の開閉位置(全閉位置又は全開位置)と、第2可動フィン30の開閉位置(全閉位置又は全開位置)との組合せを変更することにより、発生する空気抵抗や揚力,ダウンフォースの大きさを調節することができる。
【0043】
図3は、第1シャッタ装置A1における第1電動モータM1と第2シャッタ装置A2における第2電動モータM2の作動を制御する制御装置(制御手段)Bのブロック図を示す。
【0044】
制御装置Bは、メモリ32とクロック回路33とを有する中央処理装置34と、第1電動モータM1と第2電動モータM2の作動を各別に制御するモータ制御回路35と、第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2の作動用電源(バッテリー)(図示せず)の電圧を監視する電圧モニタ回路36と、第1電動モータM1と第2電動モータM2に流れる電流を各別に監視する電流モニタ回路37と、走行速度や外気温度、ラジエータ2における冷却水温度などの車両情報が入力される通信回路38とを備えている。
【0045】
中央処理装置34は、図4に示すように、イグニッションスイッチ(IG)39がON操作されると(ステップ#1)、第1可動フィン29と第2可動フィン30の夫々について異常判定処理を実行し(ステップ#2)、第1可動フィン29と第2可動フィン30のいずれにも異常動作が無いと判定したときは、第1シャッタ装置A1と第2シャッタ装置A2の作動を制御するためのシャッタ開閉制御をイグニッションスイッチ(IG)39がOFF操作されるまで、つまりエンジンの駆動が停止されるまで所定時間毎または所定走行距離毎に実行する(ステップ#3,4)。
【0046】
異常判定処理では、図5に示すように、第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の回動動作が阻止されることによって第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流を検出するまでの動作時間T1,T2を測定すると共に、当該測定した動作時間T1,T2が上限時間TAmax ,TBmax と下限時間TAmin ,TBmin とで規定される基準時間範囲から逸脱している場合に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の異常動作の有無を判定する
【0047】
上限時間TAmax 及び下限時間TAmin は第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への回動動作方向に対応する開動作用基準時間範囲を規定する時間であり、上限時間TBmax 及び下限時間TBmin は第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全開位置から全閉位置への回動動作方向に対応する閉動作用基準時間範囲を規定する時間である。
【0048】
中央処理装置34は、異常判定手段としての異常判定プログラムと、予め設定してある設定基準時間範囲を規定する上限時間Tmax 及び下限時間Tmin と、後述する第1可動フィン29又は第2可動フィン30の動作速度に影響を与える外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係とをメモリ32に予め記憶している。
【0049】
したがって、中央処理装置34は、異常判定プログラムと、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin と、外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係とをメモリ32から読み出して異常判定処理を実行する。
【0050】
外部要因と補正時間TAa,TAb,TBa,TBbとの相関関係は、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への動作方向と、全開位置から全閉位置への動作方向との夫々に対応してメモリ32に記憶してある。
補正時間TAa,TAbは全閉位置から全開位置への動作方向に対応する補正時間を示し、補正時間TBa,TBbは全開位置から全閉位置への動作方向に対応する補正時間を示す。
【0051】
図5は異常判定処理のフローチャートを示し、イニシャル処理においては、外部要因としての第1電動モータの電源電圧Vと、外部要因としての外気温度Temp とに基づいて、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に補正時間TAa,TAb,TBa,TBbを加算して基準時間範囲を補正する(ステップ#10)。
【0052】
図6は、全閉位置から全開位置への動作方向に対応する電源電圧Vと基準電圧V0との電圧差(V−V0)と、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に加算する電圧補正時間TAaとの相関関係を示し、電圧差(V−V0)と電圧補正時間TAaとが正比例している。
全開位置から全閉位置への動作方向に対応する電圧差(V−V0)と電圧補正時間TBaとの相関関係は、図6に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0053】
電源電圧Vが基準電圧V0よりも高いときは、電圧差(V−V0)に応じたマイナス符号の電圧補正時間TAaを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を短縮する補正を行い、電源電圧Vが基準電圧V0よりも低いときは、電圧差(V−V0)に応じたプラス符号の電圧補正時間TAaを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を延長する補正を行う。
【0054】
図7は、全閉位置から全開位置への動作方向に対応する外気温度Temp と基準温度Temp 0との温度差(Temp −Temp 0)と、設定基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin に加算する温度補正時間TAbとの相関関係を示し、温度差(Temp −Temp 0)と温度補正時間TAbとが正比例している。
全開位置から全閉位置への動作方向に対応する温度差(Temp −Temp 0)と温度補正時間TBbとの相関関係は、図7に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0055】
外気温度Temp が基準温度Temp 0を越えて高くなるほど、電機子コイルが横切る磁束密度が低くなって、第1電動モータM1と第2電動モータM2の回転トルクが小さくなるので、温度差(Temp −Temp 0)に応じたプラス符号の温度補正時間TAbを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を延長する補正を行い、外気温度Temp が基準温度Temp 0よりも低くなるほど、電機子コイルが横切る磁束密度が高くなって、第1電動モータM1と第2電動モータM2の回転トルクが大きくなるので、温度差(Temp −Temp 0)に応じたマイナス符号の温度補正時間TAbを加算して基準時間範囲の上限時間Tmax 及び下限時間Tmin を短縮する補正を行う。
【0056】
基準時間範囲の補正は、第1可動フィン29又は第2可動フィン30の全閉位置から全開位置への動作方向と、全開位置から全閉位置への動作方向との夫々に対応して行う。
【0057】
次に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置に回動動作させた後(ステップ#11)、全開位置に回動動作させて、図8に示すように、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置から全開位置に回動動作させるための第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、電流モニタ回路37により当該第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流が所定時間に亘って検出されるまでの開動作時間T1をクロック回路33により測定する(ステップ#12)。
【0058】
次に、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全閉位置に回動動作させて、図8に示すように、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を全開位置から全閉位置に回動動作させるための第1電動モータM1又は第2電動モータM2への通電開始から、電流モニタ回路37により当該第1電動モータM1又は第2電動モータM2に生じるロック電流が所定時間に亘って検出されるまでの閉動作時間T2をクロック回路33により測定する(ステップ#13)。
【0059】
次に、開動作時間T1が開動作用基準時間範囲から逸脱しているか否か、及び、閉動作時間T2が閉動作用基準時間範囲から逸脱しているか否かを判定し、いずれの基準時間範囲からも逸脱していないときは、異常動作無し(正常)と判定する(ステップ#14)。
【0060】
開動作時間T1と閉動作時間T2の少なくともいずれかが基準時間範囲から逸脱している場合は、異常動作有り(異常)と判定して、警告ランプを点灯するなどの異常処理を実行した後(ステップ#14,15)、異常判定処理を終了する。
【0061】
異常動作無しと判定されると、中央処理装置34はシャッタ開閉制御を実行する。
シャッタ開閉制御においては、冷却水温度が設定温度以下になるように制御する冷却水温度制御と、車両の空力特性を調節する空力制御とを所定時間毎または所定走行距離毎に実行する。
【0062】
冷却水温度制御では、入力された冷却水温度に基づいて、冷却水温度が設定温度以下になるように第1可動フィン29又は第2可動フィン30を回動動作させるために、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に所定時間に亘って通電する通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0063】
空力制御は、冷却水温度が設定温度以下であることを条件に実行され、車両の前部からエンジンルーム1への空気の侵入量を調節することにより、入力された走行速度に基づいて車両に空気抵抗、揚力或いはダウンフォースを付与するために、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に所定時間に亘って通電する通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0064】
モータ制御回路35は、中央処理装置34から通電指令が入力されると、第1電動モータM1又は第2電動モータM2に対して所定時間に亘って通電することにより、第1可動フィン29又は第2可動フィン30を設定動作範囲の一端から他端まで回動動作させるモータ制御を実行する。
【0065】
つまり、中央処理装置34は、シャッタ開閉制御において、第1可動フィン29又は第2可動フィン30が全開位置にあるときは必要に応じていずれか又は双方を全閉位置まで回動動作させ、第1可動フィン29又は第2可動フィン30が全閉位置にあるときは必要に応じていずれか又は双方を全開位置まで回動動作させための通電指令をモータ制御回路35に入力する。
【0066】
〔第2実施形態〕
車両の走行中において、可動部材(可動フィン29,30)の異常動作の有無を判定する異常判定手段の実施形態を示す。
異常判定手段としての異常判定プログラムは、車両の走行速度Sと、当該走行速度Sに応じた第1可動フィン29と第2可動フィン30の上限時間TAmax ,TBmax 及び下限時間TAmin ,TBmin で規定される基準時間範囲との相関マップに基づいて、基準時間範囲を決定するように構成してある。
【0067】
メモリ32は、走行速度Sと開動作用基準時間範囲及び開動作用基準時間範囲との相関関係を記憶している。
図9は、走行速度Sと開動作用基準時間範囲との相関関係を示し、走行速度Sに正比例して上限時間TAmax 及び下限時間TAmin が増大する。
走行速度Sと閉動作用基準時間範囲との相関関係は、図9に示す相関関係における比例定数のみが異なるので、その図示は省略する。
【0068】
異常判定処理のイニシャル処理(ステップ#10)において、現在の車両の走行速度Sに対応する開動作用基準時間範囲の上限時間TAmax 及び下限時間TAmin をメモリ32から読み出して開動作用基準時間範囲を決定し、現在の車両の走行速度Sに対応する閉動作用基準時間範囲の上限時間TBmax 及び下限時間TBmin をメモリ32から読み出して開動作用基準時間範囲を決定する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0069】
〔第3実施形態〕
図10は、別実施形態の制御装置(制御手段)のブロック図を示し、本実施形態では、車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチ(IG)39のON操作回数N、つまりエンジンを起動させる側への操作回数Nをカウントするカウンタ回路40を中央処理装置34が備えている点で、第1実施形態と異なっている。
【0070】
本実施形態の中央処理装置34は、図11に示すように、イグニッションスイッチ(IG)39のON操作回数Nが、前回の異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数Mに達する毎に、異常判定処理を実行する。
【0071】
すなわち、イグニッションスイッチ(IG)39がON操作されると(ステップ#20)、ON操作回数Nをカウントアップし(ステップ#21)、前回の異常判定処理において異常動作が無い(異常検出無し)と判定されているときは (ステップ#22)、ON操作回数Nが設定回数M(但し、Mは2以上)であるか否かが判別される(ステップ#23)。
【0072】
前回の異常判定処理において異常動作が有る(異常検出有り)と判定されているとき、及び、ON操作回数Nが設定回数M以上であると判別されたときには、異常判定処理を実行する(ステップ#24)。
【0073】
したがって、前回の異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて、異常動作が有ると判定されているときは設定回数Mが実質的に1と設定され、異常動作が無いと判定されているときは設定回数Mが2以上に設定される。本実施形態では、異常動作が無いと判定されているときに判別される設定回数Mは例えば10に設定されている。
【0074】
ステップ#23においてON操作回数Nが設定回数M未満であると判別されたときは、第1実施形態で示したシャッタ開閉制御と同様のシャッタ開閉制御をイグニッションスイッチ(IG)39がOFF操作されるまで、つまりエンジンの駆動が停止されるまで所定時間毎または所定走行距離毎に実行する(ステップ #25,26)。
【0075】
図12は、本実施形態における異常判定処理のフローチャートを示す。
本実施形態の異常判定処理におけるステップ#30〜ステップ#34の動作は、第1実施形態で示した異常判定処理(図5)のステップ#10〜ステップ#14の動作と同じであるので、ステップ#35以降の動作について説明する。
【0076】
ステップ#34において異常動作無しと判定されたときは、カウンタ回路40を初期化してON操作回数Nを「0」とした後(ステップ#35)、図11に示したステップ#25のシャッタ開閉制御を実行する。
【0077】
ステップ#34において異常動作有りと判定されたときは、現在までに異常動作有りと判定された回数が2回以上か否かを判別し(ステップ#36)、2回未満のときは、図11に示したステップ#25のシャッタ開閉制御を実行し、2回以上のときは、警告ランプを点灯するなどの異常処理を実行して(ステップ#37)、異常判定処理を終了する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0078】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による可動部材の駆動装置は、可動部材の動作速度が速くなる時は基準時間範囲の下限時間のみを短縮する補正を行い、可動部材の動作速度が遅くなる時は基準時間範囲の上限時間のみを延長する補正を行うように構成してあってもよい。
2.本発明による可動部材の駆動装置は、イグニッションスイッチのエンジンの駆動を停止させる側への操作回数が設定回数に達する毎に、異常判定処理を実行可能に構成してあってもよい。
3.本発明による可動部材の駆動装置は、異常判定処理が実行可能となる設定回数を、エンジンの延べ運転時間や、車両の延べ走行距離に応じて変更設定可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 機関室
29 可動部材(可動フィン)
30 可動部材(可動フィン)
31 阻止手段
39 イグニッションスイッチ
B 制御手段
N 操作回数
M 設定回数
M1 電動モータ
M2 電動モータ
S 走行速度
Temp 外気温度
Temp 0 基準温度
Tmin 下限時間
Tmax 上限時間
V 電源電圧
V0 基準電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、
前記可動部材を動作させる電動モータと、
前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、
前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、
前記電動モータへの通電開始から前記可動部材の動作が阻止されることによって前記電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて前記可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた可動部材の駆動装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチの操作回数が、前回の前記異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、前記異常判定処理を実行可能に構成してある請求項1に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項3】
前記可動部材が、前記車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンであり、
前記異常判定手段が、前記可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて前記基準時間範囲を補正可能に構成してある請求項1または2に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項4】
前記外部要因が前記電動モータの電源電圧であり、
前記異常判定手段は、前記電源電圧が基準電圧よりも高いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行うように構成してある請求項3に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記車両の走行速度と、当該走行速度に応じた前記可動部材の前記基準時間範囲との相関マップに基づいて、前記基準時間範囲を決定するように構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項6】
前記外部要因が外気温度であり、
前記異常判定手段は、前記外気温度が基準温度に対して高いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、前記外気温度が前記基準温度に対して低いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行うように構成してある請求項3に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項1】
姿勢変化を伴って車両の空力特性を調節する可動部材と、
前記可動部材を動作させる電動モータと、
前記可動部材との接当により当該可動部材の設定動作範囲を超える動作を阻止する阻止手段と、
前記電動モータに対して所定時間の通電を行うことにより、前記可動部材を前記設定動作範囲の一端から他端まで動作させる制御手段と、
前記電動モータへの通電開始から前記可動部材の動作が阻止されることによって前記電動モータに生じるロック電流の検出までの時間を測定すると共に、当該測定した時間が基準時間範囲から逸脱しているか否かに基づいて前記可動部材の異常動作の有無を判定する異常判定処理を実行可能な異常判定手段を備えた可動部材の駆動装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記車両に搭載されたエンジンに装備してあるイグニッションスイッチの操作回数が、前回の前記異常判定処理において判定された異常動作の有無に応じて設定された設定回数に達する毎に、前記異常判定処理を実行可能に構成してある請求項1に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項3】
前記可動部材が、前記車両の前部から機関室への空気の侵入量を調節する可動フィンであり、
前記異常判定手段が、前記可動フィンの動作速度に影響を与える外部要因に基づいて前記基準時間範囲を補正可能に構成してある請求項1または2に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項4】
前記外部要因が前記電動モータの電源電圧であり、
前記異常判定手段は、前記電源電圧が基準電圧よりも高いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行い、前記電源電圧が前記基準電圧よりも低いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行うように構成してある請求項3に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記車両の走行速度と、当該走行速度に応じた前記可動部材の前記基準時間範囲との相関マップに基づいて、前記基準時間範囲を決定するように構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の可動部材の駆動装置。
【請求項6】
前記外部要因が外気温度であり、
前記異常判定手段は、前記外気温度が基準温度に対して高いときは前記基準時間範囲の少なくとも上限時間を延長する補正を行い、前記外気温度が前記基準温度に対して低いときは前記基準時間範囲の少なくとも下限時間を短縮する補正を行うように構成してある請求項3に記載の可動部材の駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−247819(P2010−247819A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44228(P2010−44228)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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