説明

可変バンドパスフィルタ及び通信装置

【課題】小型で、通過帯域の中心周波数と通過帯域幅を設定できる可変バンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】接地面に接続された一端8から延在する結合伝送線路10と、結合伝送線路10の他端14で分岐し第1の開放端16まで延在する第1の分岐伝送線路18と、他端14で分岐し第2の開放端20まで延在する第2の分岐伝送線路22と、第1の分岐伝送線路18と接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段24と、第2の分岐伝送線路22と接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段26と、結合伝送線路10と接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段28とを有し、所望の通過帯域幅になるように前記第3の可変容量を変化させ、前記第1及び第2の分岐伝送線路22と結合伝送線路10の電気長の和のそれぞれが1/4波長になるように前記第1及び第2の可変容量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バンドパスフィルタ及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめとする移動体通信(モバイル通信)に利用される周波数帯は、ギガヘルト(GHz)以上のマイクロ波帯にシフトし、しかも多チャンネル化される傾向がある。このように多チャンネル化されたマイクロ波周波数帯を利用する通信機器には、通過帯域の中心周波数を所望の周波数に設定する可変バンドパスフィルタが欠かせない。
【0003】
従来の可変バンドパスフィルタは、通過帯域毎に設けられた複数のバンドパスフィルタと、これら複数のバンドパスフィルタから所望のバンドパスフィルタを選択する選択回路を有している。このように従来の可変バンドパスフィルタは、多くの回路を有するので、小型化には適していない。
【0004】
このような状況に鑑み、近年、伝送線路共振器(transmission-line resonator)にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)キャパシタを装荷した、MEMS可変バンドパスフィルタが注目されている。MEMS可変バンドパスフィルタは、MEMSキャパシタの容量を変化させることで、通過帯域の中心周波数を変化させるバンドパスフィルタである。
【0005】
MEMS可変バンドパスフィルタを形成する伝送線路共振器の一辺は、高々数mmである。また、MEMSキャパシタの一辺は、高々数百μmである。従って、MEMS可変バンドパスフィルタは小型化に適している。
【0006】
因みに、MEMSキャパシタは低損失な高周波素子なので、MEMS可変バンドパスフィルタは低損失化にも適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. A. Tamijani et al, “Miniature and Tunable Filters Using MEMS Capacitors ”, IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 51, NO.7, p1878-1885, July 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のMEMS可変バンドパスフィルタの通過帯域幅は一定であり、帯域幅を変化させることはできなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、小型でしかも、通過帯域の中心周波数と共に通過帯域幅を所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタ及びこの可変バンドパスフィルタを有する通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本フィルタの第1の観点によれば、接地面に接続された一端から延在する結合伝送線路と、前記結合伝送線路の他端で分岐し第1の開放端まで延在する第1の分岐伝送線路と、前記他端で分岐し第2の開放端まで延在する第2の分岐伝送線路と、前記第1の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、前記第2の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段とを有し、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記第1の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる可変バンドパスフィルタが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本フィルタによれば、小型でしかも、通過帯域の中心周波数とともに通過帯域幅も所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】第4乃至第6の可変容量手段の構成を説明する回路図である。
【図4】実施の形態1の可変バンドパスフィルタの中心周波数の可変特性を説明する図である。
【図5】実施の形態1の可変バンドパスフィルタの通過帯域幅の可変特性を説明する図である。
【図6】通過帯域幅(−3dB帯域幅)と結合係数の関係を説明する図である。
【図7】実施の形態1の可変バンドパスフィルタの製造方法を説明する工程断面図である(その1)。
【図8】実施の形態1の可変バンドパスフィルタの製造方法を説明する工程断面図である(その2)。
【図9】実施の形態1の可変バンドパスフィルタの製造方法を説明する工程断面図である(その3)。
【図10】実施の形態2の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図11】図10のXI-XI線に沿った断面図である。
【図12】実施の形態3の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図13】図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【図14】実施の形態4の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図15】実施の形態5の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図16】実施の形態6の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図17】図16のXVII-XVII線に沿った断面図である。
【図18】実施の形態7の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図19】実施の形態8の可変バンドパスフィルタのパッケージ内平面図である。
【図20】実施の形態9の通信装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
(1)構 成
図1は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ2のパッケージ内平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
【0015】
―誘電体基板―
本可変バンドパスフィルタ2は、図2に示すように、表面がパッケージング部材44により覆われ、内部に接地面4が設けられた誘電体基板6を有している。ここで、接地面4は、層間配線(図示せず)を介して、誘電体基板6の裏面に設けられた接地端子(図示せず;電極パッド)に接続されている。
【0016】
誘電体基板6は、例えばグリーンシートを積層して焼成したLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板である。誘電体基板6の比誘電率は、例えば10〜100である。また、誘電体基板6の一辺は、例えば5mmである。
【0017】
―伝送線路―
本可変バンドパスフィルタ2は、図1に示すように、接地面4に接続された一端8から延在する結合伝送線路10を有している。ここで、上記一端8(以下、接地端と呼ぶ)は、接地電極12と層間配線(図示せず)を介して、接地面4に接続されている。
【0018】
また、本可変バンドパスフィルタ2は、結合伝送線路10の他端14で分岐し第1の開放端16まで延在する第1の分岐伝送線路18と、上記他端14で分岐し第2の開放端20まで延在する第2の分岐伝送線路22を有している。
【0019】
図1に示した例では、第1の分岐伝送線路18と第2の分岐伝送線路22の境界には、切り欠き部23が設けられている。この切り欠き部23により、第1の分岐伝送線路18を伝搬する高周波信号(例えば、マイクロ波)は、第2の分岐伝送線路22への侵入を妨げられ、結合伝送線路10に進行する。同様に、切り欠き部23により、第2の分岐伝送線路22を伝搬する高周波信号は、第1の分岐伝送線路18への侵入を妨げられ、結合伝送線路10に進行する。尚、このような切り欠き部23を設けずに、第1の分岐伝送線路18及び第2の分岐伝送線路22を、Y字形に分岐させてもよい。
【0020】
また、本可変バンドパスフィルタ2は、図2に示すように、結合伝送線路10と接地面4の間に設けられた第3の可変容量Cgを有する第3の可変容量手段28を有している。同様に、本可変バンドパスフィルタ2は、第1の分岐伝送線路18と接地面4の間に設けられた第1の可変容量を有する複数の第1の可変容量手段24を有している。また、本可変バンドパスフィルタ2は、第2の分岐伝送線路22と接地面4の間に設けられた第2の可変容量を有する複数の第2の可変容量手段26とを有している。尚、図1に示した例では、第1の可変容量手段24及び第2の可変容量手段26は、伝送線路18,22に沿って複数設けられる。しかし、第1の可変容量手段24及び第2の可変容量手段26は、単数であってもよい。一方、第3の可変容量手段28は、複数であってもよい。
【0021】
―MEMSキャパシタ―
本実施の形態の第1乃至第3の可変容量手段24,26,28は、MEMSキャパシタである。すなわち、第1乃至第3の可変容量手段24,26,28は、図2に示すように、それぞれの伝送線路(第1の分岐伝送線路18、第2の分岐伝送線路22、結合伝送線路10)との間に間隔30が設けられ且つ接地面4に接続された可撓性の可動電極32と、この可動電極32に対向する駆動電極34とを有している。尚、可動電極32は、その中央部に厚膜部80を有している。
【0022】
可動電極32は、図2に示すように、一対の導電性のアンカー部36に両端が固定されている。可動電極32は、この導電性のアンカー部36と層間配線38aを介して、接地面4に接続されている。一方、駆動電極34は、誘電体基板6を貫通する層間配線38bを介して、誘電体基板6の裏面に設けられた駆動端子(電極パッド)40に接続されている。この駆動端子40と接地端子(図示せず)の間に電圧(直流または交流)を加えると、駆動電極34と可動電極32の間に静電引力が発生し、可撓性の可動電極32が撓む。その結果、各伝送線路(例えば、結合伝送線路10)と可動電極32の間隔が狭まり、各伝送線路(例えば、結合伝送線路10)と接地面4との間の可変容量Cgが変化する。すなわち、可動電極32と、駆動電極34の間に電圧が印加されて、これら電極の間隔が変化する。その結果、各伝送線路(例えば、結合伝送線路10)と接地面4の間の容量値が変化する。
【0023】
ところで、図2に示すように、各伝送線路(例えば、結合伝送線路10)及び駆動電極34の表面には、誘電体膜42a,42bが設けられている。これらの誘電体膜42a,42bは、可動電極32が、各伝送線路(例えば、結合伝送線路10)または駆動電極34に接触することを防止する。また、各伝送線路上の誘電体膜42aは、その高い誘電率により、各伝送線路と可動電極32の間の可変容量を増大させる。尚、これらの誘電体膜42a,42bは、省略してもよい。
【0024】
―整合回路等―
また、本可変バンドパスフィルタ2は、図1に示すように、第1の分岐伝送線路18を信号入力端子46に接続する第4の可変容量手段48と、第2の分岐伝送線路22を信号出力端子50に接続する第5の可変容量手段52を有している。また、本可変バンドパスフィルタ2は、一端が信号入力端子46に接続され、他端が信号出力端子50に接続された第6の可変容量手段54を有している。
【0025】
ここで、第4の可変容量手段48及び第5の可変容量手段52は、インピーダンス整合用の可変容量素子である。一方、第6の可変容量手段54は、通過帯域(−3dB通過帯域)の両側の減衰特性を急峻にする飛越結合容量である。従って、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54は、省略してもよい場合がある。例えば、整合回路を外部回路に設ける場合には、第4の可変容量手段48及び第5の可変容量手段52を省略することができる。また、急峻な減衰特性を必要としない回路に、可変バンドパスフィルタ2を用いる場合には、第5の可変容量手段54を省略することができる。
【0026】
ところで、図1では、信号入力端子46及び信号出力端子50は、誘電体基板6の表面に描かれている。しかし、信号入力端子46及び信号出力端子50は、誘電体基板6の裏面に設けられた外部電極であってもよい。
【0027】
図3は、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54の構造を説明する図である。可変容量手段48,52,54は、バラクタダイオード56(pinダイオード)と、このバラクタダイオード56の一端に接続された第1のキャパシタ58と、バラクタダイオード56の他端に接続された第2のキャパシタ60を有している。また、可変容量手段48,52,54は、第1のキャパシタ58とバラクタダイオード56の間に接続された第1のインダクタ62と、第2のキャパシタ60とバラクタダイオード56の間に接続された第2のインダクタ64を有している。
【0028】
ここで、第1のキャパシタ58及び第2のキャパシタ60は、それぞれ信号入力端子46及び信号出力端子50に接続される。一方、第1のインダクタ62及び第2のインダクタ64は、誘電体基板6を貫通する層間配線を介して、それぞれ誘電体基板6の裏面に設けられた外部電極(以下、バラクタ制御端子と呼ぶ)に接続されている。このバラクタ制御端子を介してバラクタダイオード56に逆バイアス電圧が印加され、バラクタダイオード56の容量が変化する。第1のキャパシタ58及び第2のキャパシタ60は、この逆バイアス電圧を遮断する。一方、第1のインダクタ62及び第2のインダクタ64は、高周波信号が外部回路へ流出することを防止する。
【0029】
このように、本実施の形態では、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54は、バラクタダイオード56とそのバイアス回路を有する電気回路である。しかし、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54は、MEMSキャパシタ等の他の可変容量素子であってもよい。
【0030】
上述したように、本可変バンドパスフィルタ2の主要部材は伝送線路であり、その寸法は高々数mmである。従って、本可変バンドパスフィルタ2は、小型化に適している。
【0031】
(2)特 性
図4は、本可変バンドパスフィルタ2の中心周波数の可変特性を説明する図である。図5は、本可変バンドパスフィルタ2の通過帯域BPの幅の可変特性を説明する図である。横軸は、入力信号(高周波信号)の周波数である。縦軸は、通過損失(信号入力端子46に入射する高周波信号のパワーと、信号出力端子50から出射する高周波信号のパワーの比)である。尚、図4及び5は、回路シミュレーションにより得た特性である。
【0032】
各伝送線路10,18,22の電気長は、その可変容量手段24,26,28が各伝送線路10,18,22に付加する可変容量Cgと各伝送線路10,18,22の回路定数(単位長当たりの容量等)とによって決まる。本可変バンドパスフィルタ2の可変容量手段は、上述したようにMEMSキャパシタである。ここで、MEMSキャパシタに印加される電圧は、例えば10〜100Vである。これにより、各伝送線路10,18,22の電気長を、2〜3倍(最大で、5倍程度)長くなる。尚、電気長とは、伝送線路における高周波信号の波長λを基準とした当該伝送線路の長さである。
【0033】
ところで、第1の分岐伝送線路18と第2の分岐伝送線路22の回路定数は、略同じである。また、第1の分岐伝送線路18と第2の分岐伝送線路22に可変容量手段24,26が付加する可変容量Cgも、略同じである。従って、第1の分岐伝送線路18と第2の分岐伝送線路22の電気長は、略同じになる。
【0034】
以上のような構造に基づき、高周波信号は、本可変バンドパスフィルタ内を以下のように伝搬する。
【0035】
高周波信号は、まず信号入力端子46に入射し、インピーダンス整合用の可変容量手段48を通過した後、第1の分岐伝送線路18に入射する。次に、高周波信号は、第1の分岐伝送線路18を結合伝送線路10に向かって伝搬する。次に、高周波信号は、結合伝送線路10に入射し、結合伝送線路10をその接地端8に向かって伝搬する。接地端8に到達した高周波信号は反射され、結合伝送線路10を逆行して、第1の分岐伝送線路18に再入射する。次に、高周波信号は、第1の分岐伝送線路18を第1の開放端16に向かって伝搬し、第1の開放端16で反射される。第1の開放端16で反射された高周波信号は、再び第1の分岐伝送線路18を結合伝送線路10に向かって伝搬する。以後、高周波信号は、第1の開放端16と接地端8の間を往復する。
【0036】
このような往復運動を繰返しながら、高周波信号の一部は第2の分岐導波路22に入射し、残りの高周波信号は信号入力端子46から外部に出射される(すなわち、反射される。)。
【0037】
―中心周波数の可変特性―
本実施の形態では、所定の範囲内(以下、周波数可変範囲と呼ぶ)の所望の周波数で、第1の分岐伝送線路18と結合伝送線路10の電気長の和が1/4波長になるように、それぞれの伝送線路の可変容量Cgが設定される。従って、第1の分岐伝送線路18と結合伝送線路10は、所謂1/4λ共振器を形成する。故に、上記所望の周波数(以下、共振周波数と呼ぶ)では、高周波信号は殆ど反射されず、略全て後段の第2の分岐伝送線路22に供給される。
【0038】
第2の分岐伝送線路22の電気長は、上述したように、第1の分岐伝送線路18の電気長に略等しい。従って、第2の分岐伝送線路22と結合伝送線路10も、上記共振周波数において1/4λ共振器を形成する。従って、第2の分岐伝送線路22に入射した高周波信号も、最終的には、略全て整合用の可変容量手段52に供給される。その後、高周波信号は、信号出力端子50を介して外部回路に出力される。
【0039】
このように共振周波数では、信号入力端子46に入射した高周波信号は、略全て信号出力端子50から出力される。しかし、周波数が共振周波数から離れるに従い、高周波信号は、上記1/4λ共振器により反射されやすくなる。その結果、高周波信号は信号出力端子50に届きにくくなり、図5に示すようなバンドパス特性66が得られる。
【0040】
上述したように、各伝送線路10,18,22の電気長は、その可変容量Cgと回路定数によって決まる。従って、各伝送線路10,18,22の可変容量を異なった値に設定することにより、図4に示すように、中心周波数fcの異なる複数のバンドパス特性68が得られる。
【0041】
―通過帯域幅の可変特性―
図5は、中心周波数が2.7GHzの場合のバンドパス特性69である。図5中のパラメータk(以下、結合係数と呼ぶ)は、結合伝送線路10の電気長xと上記1/4λ共振器の電気長(1/4λ)の比(=x/(1/4λ))である。
【0042】
図5に示すように、バンドパス特性69の通過帯域幅(−3dB帯域幅)は、結合係数kが大きくなるに従って広くなる。図6は、この通過帯域幅と結合係数kの関係を示した図である。図6に示すように、通過帯域幅は、結合係数kに対して略直線的に増加する。従って、結合伝送線路10の電気長と第1及び第2の分岐伝送線路18,22の電気長を調整することにより、可変バンドパスフィルタ2の通過帯域幅を制御することができる。
【0043】
因みに、縦列接続されたバンドパスフィルタの帯域幅は、初段のバンドパスフィルタに蓄えられた高周波信号のエネルギーEと後段のバンドパスフィルタに伝達される高周波信号の電力Pの伝達比(=P/E)を増加させることにより、広げることができる。本可変バンドパスフィルタ2は、一対の1/4λ共振器が縦列接続されたバンドパスフィルタと考えることができる。従って、本バンドパスフィルタ2では、結合係数kとともに高周波信号の伝達比が増加し、その結果図6に示すように、通過帯域幅が広がると考えられる。
【0044】
すなわち、従来のバンドパスフィルタは、多数(多段)の小規模なバンドパスフィルタを結合回路により縦列接続することで、通過帯域の両側で急峻な減衰特性を実現している。従って、従来のバンドパスフィルタは多数の共振器とその結合回路を有するので、小型化には適していない。しかし、本バンドパスフィルタ2は、1/4λ共振器の一部を結合回路として用いることで、直接、1/4λ共振器を縦列接続している。従って、本バンドパスフィルタ2は、小型化に適している。
【0045】
(3)動 作
次に、本可変バンドパスフィルタ2の動作を説明する。まず、図4に示すように、所定の周波数可変範囲TWR(例えば、2.0〜4.5GHz)内の所望の周波数(好ましくは、複数の周波数のそれぞれ)において、通過帯域の幅(通過帯域幅)が所望の幅になるように、第3の可変容量手段28の可変容量Cgが変化させられる。
【0046】
次に、上記所望の周波数において、第1の分岐伝送線路18と結合伝送線路10の電気長の和が1/4波長になるように、第1の可変容量手段24の可変容量Cgが変化させられる。
【0047】
同様に、上記所望の周波数において、第2の分岐伝送線路22と結合伝送線路10の電気長の和が1/4波長になるように、第2の可変容量手段26の可変容量Cgが変化させられる。
【0048】
これにより、本可変バンドパスフィルタ2によれば、通過帯域の中心周波数及び通過帯域幅を所望の値に設定することができる。
【0049】
更に、本可変バンドパスフィルタ2では、上記中心周波数において、信号入力端子46に接続される外部回路に可変バンドパスフィルタ2がインピーダンス整合するように、第4の可変容量手段48の容量値が変化させられる。同様に、上記中心周波数において、信号出力端子50に接続される外部回路に可変バンドパスフィルタ2がインピーダンス整合するように、第5の可変容量手段52の容量値が変化させられる。従って、本可変バンドパスフィルタ2と外部回路をインピーダンス整合させることができる。
【0050】
また、本可変バンドパスフィルタ2では、通過帯域BPの両側に減衰極(トラップ)70が形成されるように、第6の可変容量54が変化させられる(図5参照)。従って、通過帯域BPの両側における通過損失の減少を急峻にすることができる。
【0051】
以上のように各可変容量が設定された後、第4の可変容量手段48を介して第1の分岐伝送線路18に信号(入力信号)を供給すると、第2の分岐伝送線路22からフィルタリングされた上記信号(出力信号)が出射する。この時、第1の分岐伝送線路18に供給された信号は、第1の分岐伝送線路18、結合伝送線路10、及び第2の分岐伝送線路22を経由し、その間に、通過帯域BPの内の周波数成分が選択される。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、小型でしかも、通過帯域の中心周波数fc及び通過帯域幅を所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタ2を提供することができる。
【0053】
(4)製造方法
図7乃至図9は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ2の製造方法を説明する工程断面図である。
【0054】
―誘電体ウエハの形成工程―
まず、グリーンシート(セラミックシート)に、各層間配線に対応するビアホールを形成する。次に、導電ペーストにより、このビアホールを埋め込む共に、グリーンシートの表面に、接地面4等に対応する配線パターンを印刷する。以上の工程により形成したグリーンシートを積層し、加熱下で厚み方向にプレスする。
【0055】
次に、加熱処理により上記積層体を一体焼成し、誘電体ウエハを形成する。その後、この誘電体ウエハに研磨等を施して、表面を平滑化する。
【0056】
―駆動電極及び伝送線路の形成(図7(a)及び(b)参照)―
まず、表面を平滑化した誘電体ウエハ72の表面に金属層を成膜し、フォトリソグラフィ技術により、MEMSキャパシタの駆動電極74を形成する(図7(a)参照)。
【0057】
次に、誘電体ウエハ72の表面に絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィ技術により、駆動電極74の上に誘電体膜42bを形成する。
【0058】
次に、誘電体ウエハ72の表面に再度金属層を成膜し、フォトリソグラフィ技術により、各伝送線路10,18,22、MEMSキャパシタのアンカー部36、及び各素子間の配線に対応する金属パターンを形成する。
【0059】
次に、誘電体ウエハ72の裏面に金属層を成膜し、フォトリソグラフィ技術により、駆動端子40、信号入力端子46、信号出力端子50、および接地端子等を形成する。これらの端子は、上記「誘電体ウエハも形成工程」において、予め形成してもよい。
【0060】
次に、Auメッキ処理により、アンカー部の下層部分36a及び各伝送線路10,18,22を形成する。
【0061】
次に、図7(b)に示すように、各伝送線路10,18,22の上に、ドット状の誘電体ドット42aを形成する。
【0062】
尚、図7(a)乃至図9(a)には、誘電体ウエハ72の一部とその形成物のみが示されている。
【0063】
―可動電極の形成工程(図7(c)乃至図9(a))―
次に、図7(c)に示すように、アンカー部の下層部分36aと各伝送線路10,18,22の間に、フォトレジスト等により、伝送線路10,18,22と略同じ高さの第1の犠牲層76aを形成する。
【0064】
次に、図8(a)に示すように、第1の犠牲層76aの上に、第2の犠牲層76bを形成する。
【0065】
次に、図8(b)に示すように、アンカー部の下層部分36a及び第2の犠牲層76bの上に、可撓性のシートばね層78を形成する。このシートばね層78の材料は、例えば、Au、Cu、Al等のいずれかの金属、或いはAu,Cu、Alのいずれかが含まれる合金である。
【0066】
次に、図8(c)に示すように、シートばね層78の中央部に、メッキにより、Au製の厚膜部80を形成する。同時に、アンカー部の下層部分36aの上方に、アンカー部の上層部分36bを形成する。
【0067】
次に、図9(a)に示すように、第1の犠牲層76a及び第2犠牲層76bを除去する。その後、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54のバラクタダイオード等を、誘電体ウエハ72に実装する。尚、第4乃至第6の可変容量手段48,52,54は、MEMS可変キャパシターであっても良い。
【0068】
―パッケージング工程(図9(b)参照)―
次に、パッケージング部材44により、誘電体ウエハ72の表面上の各素子を封止する。最後に、誘電体ウエハ72を、個々の可変バンドパスフィルタ2に分割する。
【0069】
以上のように、可変バンドパスフィルタ2の形成及び封止を全てウエハレベルで行うので、本製造方法によれば、生産性が高くなる。
【0070】
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ82のパッケージ内平面図である。図11は、図10のXI-XI線に沿った断面図である。
【0071】
本実施の形態の可変バンドパスフィルタ82は、実施の形態1の可変バンドパスフィルタ2と略同じ構造を有している。但し、本バンドパスフィルタ82の第3の可変容量手段28aは、図11に示すように、結合伝送線路10の側面から両側に突出した線路側部電極84との間に間隔が設けられ且つ接地面4に接続された可動電極32aを有している。また、第3の可変容量手段28aは、可動電極32aに対向する駆動電極34aを有している。ここで、可動電極32aは、アンカー部36cにより担持されている。また、線路側部電極84の表面は、誘電体膜42cにより覆われている。尚、線路側部電極84の厚みは、信号線10と同じであっても良い。
【0072】
以上の構造において、可動電極32aと駆動電極34aの間に電圧が印加されて、上記間隔が変化する。これにより、結合伝送線路10と接地面4の間の容量Cg´が変化し、結合伝送線路10の電気長が変化する。
【0073】
本バンドパスフィルタ82では、第1の可変容量手段24a及び第2の可変容量手段26aも、上記第3の可変容量手段28aと同様の構造を有している。そして、第1の可変容量手段24a及び第2の可変容量手段26aも、第3の可変容量手段28aと同様に動作して、それぞれの伝送線路18,22の電気長を変化させる。
【0074】
従って、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、小型でしかも、通過帯域の中心周波数及び通過帯域幅を所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタを提供することができる。
【0075】
(実施の形態3)
図12は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ83のパッケージ内平面図である。図13は、図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【0076】
本実施の形態の可変バンドパスフィルタ83は、実施の形態1の可変バンドパスフィルタ2と略同じ構造を有している。但し、本可変バンドパスフィルタ83の第3の可変容量手段28bは、図13に示すように、線路側部電極84との間ではなく、結合伝送線路10との間に間隔が設けられ且つ接地面4に接続された可動電極32bを有している。また、第3の可変容量手段28bは、可動電極32bに対向する駆動電極34bを有している。ここで、可動電極32aは、アンカー部36cにより担持されている。そして、可動電極32bに対向する結合伝送線路10の表面は、ドット状の誘電体膜42cにより覆われている。
【0077】
以上の構造により、可動電極32bと駆動電極34bの間に電圧が印加されて、上記間隔が変化する。これにより、結合伝送線路10と接地面4の間の容量Cg´が変化し、結合伝送線路10の電気長が変化する。
【0078】
本可変バンドパスフィルタ83では、第1の可変容量手段24b及び第2の可変容量手段26bも、上記第3の可変容量手段28bと同様の構造を有している。そして、第1の可変容量手段24b及び第2の可変容量手段26bも、第3の可変容量手段28bと同様に動作して、それぞれの伝送線路18,22の電気長を変化させる。
【0079】
従って、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、小型でしかも、通過帯域の中心周波数及び通過帯域幅を所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタを提供することができる。
【0080】
(実施の形態4)
図14は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ86のパッケージ内平面図である。本可変バンドパスフィルタ86は、実施の形態1の可変バンドパスフィルタ2と略同じ構造を有している。但し、第3の可変容量手段28cは、図3を参照して説明したインピーダンス整合用の可変容量手段と同様、バラクタダイオード56(可変容量ダイオード)を有している。また、第3の可変容量手段28cは、このバラクタダイオード56の両端に接続されたキャパシタ58,60とインダクタ62,64を有している。そして、一方のキャパシタ58が接地電極12aと層間配線を介して接地面4に接続され、他方のキャパシタ60が結合伝送線路10に接続されている。そして、上記インダクタ62,64を介して、逆バイアス電圧がバラクタダイオードに印加される。
【0081】
すなわち、第3の可変容量手段28cは、両端がそれぞれ結合伝送線路10及び接地面4にキャパシタ58,60を介して接続された可変容量ダイオード56(バラクタダイオード)を有している。そして、第3の可変容量ダイオード28cは、インダクタ62,64を介して両端に逆バイアス電圧が印加され、その容量値が変化する。
【0082】
この容量値の変化により結合伝送線路10の電気長が変化し、所望の中心周波数及び帯域幅が得られる。
【0083】
(実施の形態5)
図15は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ88のパッケージ内平面図である。本実施の形態の可変バンドパスフィルタも、実施の形態2の可変バンドパスフィルタ82と共通の構成を有している。従って、共通する部分については、説明を省略する。
【0084】
本実施の形態の可変バンドパスフィルタ88は、図15に示すように、接地電極12bと層間配線(図示せず)を介して接地面4に接続された一端8aから、延在する第1の結合伝送線路10aを有している。
【0085】
また、本可変バンドパスフィルタ88は、第1の結合伝送線路10aの他端14aから第1の開放端16aまで延長された第1の延長伝送線路100aを有している。
【0086】
また、本可変バンドパスフィルタ88は、接地電極12bと層間配線(図示せず)を介して接地面4に接続された一端8bから、第1の結合伝送線路10aに沿って延在し、第1の結合伝送線路10aに電磁誘導結合した第2の結合伝送線路10bを有している。従って、第1の結合伝送線路10aと第2の結合伝送線路10bは、近接している。
【0087】
また、本可変バンドパスフィルタ88は、第2の結合伝送線路10bの他端14bから第2の開放端16bに延長された第2の延長伝送線路100bを有している。ここで、第1の結合伝送線路10aと第2の結合伝送線路10bの間隔Gより広い距離Lが第1の延長伝送線路100aと第2の延長伝送線路100bの間に保たれている。
【0088】
また、本可変バンドパスフィルタ88は、第1の延長伝送線路100aと接地面4の間に設けられた第1の可変容量を有する複数の第1の可変容量手段24aを有している。また、本可変バンドパスフィルタ88は、第2の延長伝送線路100bと接地面4の間に設けられた第2の可変容量を有する複数の第2の可変容量手段26aを有している。また、本可変バンドパスフィルタ88は、第1の結合伝送線路10aと接地面4の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段90aを有している。また、本可変バンドパスフィルタ88は、第2の結合伝送線路10bと接地面4の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段90bとを有している。これら第1乃至第4の可変容量手段24a,26a,90a,90bは、図11を参照して説明したMEMSキャパシタと略同じ構造を有している。
【0089】
そして、本可変バンドパスフィルタ88では、所定の周波数範囲内の所望の周波数(好ましくは、複数の周波数のそれぞれ)において、通過帯域の幅が所望の幅になるように第3の可変容量90a及び第4の可変容量90bが変化させられる。この時、第1の結合伝送線路10a及び第2の結合伝送線路10bの電気長が変化して、両結合伝送線路間の誘導結合定数が変化する。その結果、初段の1/4λ共振器から後段1/4λ共振器に伝達される高周波信号の伝達比が変化して、通過帯域の幅が変化する。
【0090】
また、本可変バンドパスフィルタ88では、上記周波数において、第1の延長伝送線路100aと第1の結合伝送線路10aの電気長の和が1/4波長になるように第1の可変容量(第1の可変容量手段24aに対応する可変容量)が変化させられる。
【0091】
また、本可変バンドパスフィルタ88では、上記周波数において、第2の延長伝送線路100bと第2の結合伝送線路10bの電気長の和が1/4波長になるように第2の可変容量(第2の可変容量手段26bに対応する可変容量)が変化させられる。
【0092】
本実施の形態では、結合伝送線路を2つ有している。しかし、両結合伝送線路は近接している。従って、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、小型でしかも、通過帯域の中心周波数及び通過帯域幅を所望の値に設定できる可変バンドパスフィルタを提供することができる。
【0093】
尚、図15に示した例では、第1の可変容量手段24a及び第2の可変容量手段26は、伝送線路100a,100bに沿って複数設けられる。しかし、第1の可変容量手段24a及び第2の可変容量手段26は、単数であってもよい。一方、第3の可変容量手段90aおよび第3の可変容量手段90bは、単数であってもよい。
【0094】
(実施の形態6)
図16は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ92のパッケージ内平面図である。図17は、図16のXVII-XVII線に沿った断面図である。本実施の形態の可変バンドパスフィルタ92は、実施の形態5の可変バンドパスフィルタ88と略同じ構成を有している。但し、第1の延長伝送線路100aに沿って設けられた複数の第1の可変容量手段24は、図2を参照して説明したMEMSキャパシタである。同様に、第2の延長伝送線路100bに沿って設けられた複数の第2の可変容量手段26は、図2を参照して説明したMEMSキャパシタである。
【0095】
また、第1の結合伝送線路10a及び第2の結合伝送線路10bは、新たな可変容量手段28dを共有している。可変容量手段28dは、図17に示すように、それぞれの伝送線路(第1の結合伝送線路10a及び第2の結合伝送線路10b)との間に間隔30aが設けられ且つ接地面4に接続された可撓性の可動電極32cを有している。また、可変容量手段28dは、この可動電極32cに対向し、第1の結合伝送線路10a及び第2の結合伝送線路10bの外側に設けられた一対の駆動電極34cを有している。ここで、可動電極32cの厚膜80aは、第1の結合伝送線路10a及び第2の結合伝送線路10bの上方に配置されている。
【0096】
この可動電極32cは、図17に示すように、一対の導電性のアンカー部36に両端が固定されている。可動電極32cは、この導電性のアンカー部36と層間配線38aを介して、接地面4に接続されている。また、駆動電極34cは、誘電体基板6を貫通する層間配線38bを介して、誘電体基板6の裏面に設けられた駆動端子(電極パッド)40に接続されている。そして、可変容量手段28dは、この駆動端子40と接地端子(図示せず)の間に印加された電圧(直流または交流)により撓み、第1の結合伝送線路10aとの間に設けられた可変容量Cg1と、第2の結合伝送線路10bとの間に設けられた可変容量Cg2を同時に変化させる。ここで、可変容量Cg1と可変容量Cg2は、略同じ大きさである。
【0097】
以上により、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ92は、実施の形態5の可変バンドパスフィルタ88と同様に、中心周波数fc及び通過帯域幅BPが可変のバンドパスフィルタとして動作する。
【0098】
(実施の形態7)
図18は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ95のパッケージ内平面図である。
【0099】
実施の形態1乃至6の可変バンドパスフィルタでは、2つの1/4λ共振器が縦列接続されている。一方、本可変バンドパスフィルタ95では、4つの1/4λ共振器が縦列接続されている。従って、本可変バンドパスフィルタ95の通過帯域の減衰特性は、実施の形態1乃至6の可変バンドパスフィルタより急峻である。
【0100】
本可変バンドパスフィルタ95は、図18に示すように、接地電極12を介して接地面4に接続された一端8から延在する複数の結合伝送線路10cを有している。また、本可変バンドパスフィルタ95は、それぞれの複数の結合伝送線路10cの他端14で分岐し、結合伝送線路10cを順次接続する分岐伝送線路96を有している。
【0101】
また、本可変バンドパスフィルタ95は、分岐伝送線路96が一本だけ接続された(結合伝送線路10eの)他端14eで分岐し、第1の開放端16まで延在する入力分岐伝送線路98を有している。
【0102】
また、本可変バンドパスフィルタ95は、分岐伝送線路96が一本だけ接続された(結合伝送線路10fの)他の他端14fで分岐し、第2の開放端20まで延在する出力分岐伝送線路110を有している。
【0103】
尚、本実施の形態では、分岐伝送線路96は2本であるが。しかし、分岐伝送線路96の数は、1本又は3本以上であってもよい。また、本実施の形態では、結合伝送線路対10cは3つである。しかし、分岐伝送線路96の数は、2又は4以上であってもよい。
【0104】
また、本可変バンドパスフィルタ95は、それぞれの結合伝送線路10cと接地面4の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段112を有している。また、本可変バンドパスフィルタ95は、分岐伝送線路96と接地面4の間に設けられた第2の可変容量を有する複数の第2の可変容量手段114を有している。また、本可変バンドパスフィルタ95は、入力分岐伝送線路98と接地面4の間に設けられた第3の可変容量を有する複数の第3の可変容量手段116を有している。また、本可変バンドパスフィルタ95は、出力分岐伝送線路110と接地面4の間に設けられた第4の可変容量を有する複数の第4の可変容量手段118を有している。
【0105】
尚、本実施の形態の第1の可変容量手段112は単数である。しかし、第1の可変容量手段112は複数であってもよい。一方、本実施の形態の第2乃至第4の可変容量手段114、116、118は複数である。しかし、第2乃至第4の可変容量手段114、116、118は単数であってもよい。
【0106】
ここで、第1乃至第4の可変容量手段112、114、116、118は、例えば、図2を参照して説明したMEMSキャパシタである。
【0107】
そして、本可変バンドパスフィルタ95では、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように第1の可変容量112が変化させられる。また、分岐伝送線路96の両端に接続された2つの結合伝送線路10cと分岐伝送線路96との電気長の和が1/4波長になるように第2の可変容量が変化させられる。また、入力分岐伝送線路98と結合伝送線路10c(10e)の電気長の和が1/4波長になるように第3の可変容量が変化させられる。また、出力分岐伝送線路110と結合伝送線路10c(10f)の電気長の和が1/4波長になるように第4の可変容量が変化させられる。そして、入力分岐伝送線路98に信号(入力信号)が供給され、出力分岐伝送線路110からフィルタリングされた上記信号(出力信号)が出射する。
【0108】
更に、本可変バンドパスフィルタ95は、入力分岐伝送線路98を信号入力端子46に接続する第5の可変容量手段120と、出力分岐伝送線路110を信号出力端子50に接続する第6の可変容量手段122を有している。また、本可変バンドパスフィルタ95は、一端が信号入力端子46に接続され、他端が信号出力端子50に接続された第7の可変容量手段124を有している。
【0109】
第5の可変容量手段120、第6の可変容量手段122、及び第7の可変容量手段124は、例えば、図3を参照して説明したバラクタダイオードを有する電子回路である。
【0110】
そして、第5の可変容量手段120の容量値は、信号入力端子46が接続される外部回路に、本バンドパスフィルタ95が整合するように変化させられる。また、第6の可変容量手段122の容量値は、信号出力端子50が接続される外部回路に、本バンドパスフィルタ95が整合するように変化させられる。また、第7の可変容量124は、通過帯域の両側に減衰極が形成されるように変化させられる。
【0111】
(実施の形態8)
図19は、本実施の形態の可変バンドパスフィルタ200のパッケージ内平面図である。
【0112】
実施の形態1乃至6の可変バンドパスフィルタでは、2つの1/4λ共振器が縦列接続されている。一方、本可変バンドパスフィルタ200では、4つの1/4λ共振器が縦列接続されている。従って、本可変バンドパスフィルタ200の通過帯域の減衰特性は、実施の形態1乃至6の可変バンドパスフィルタより急峻である。
【0113】
本可変バンドパスフィルタ200は、図19に示すように、複数の結合伝送線路対202を有している。この結合伝送線路対202は、接地電極12を介して接地面に接続された一端8aから延在する第1の結合伝送線路10aを有している。また、結合伝送線路対202は、接地電極12を介して接地面に接続された一端8bから第1の結合伝送線路10aに沿って延在し、第1の結合伝送線路10aに電磁誘導結合する第2の結合伝送線路と10bを有している。
【0114】
また、本可変バンドパスフィルタ200は、結合伝送線路対202aの第1の結合伝送線路10aの他端14aと他の結合伝送線路対202bの第2の結合伝送線路10bの他端14bを接続する延長伝送線路204を有している。
【0115】
また、本可変バンドパスフィルタ200は、延長伝送線路204が接続されていない第1の結合伝送線路10cの他端14cから第1の開放端16aまで延長された入力延長伝送線路206を有している。また、本可変バンドパスフィルタ200は、延長伝送線路204が接続されていない第2の結合伝送線路10dの他端14dから第2の開放端16bまで延長された出力延長伝送線路208を有している。ここで、同一結合伝送線路対内の第1の結合伝送線路10aと第2の結合伝送線路10bの間隔より広い距離が、入力延長伝送線路206と隣接する延長伝送線路204との間、延長伝送線路204と隣接する延長伝送線路204との間、及び出力延長伝送線路208と隣接する延長伝送線路204の間に保たれている。
【0116】
尚、本実施の形態では、延長伝送線路204は2本であるが。しかし、延長伝送線路204の数は、1本又は3本以上であってもよい。また、本実施の形態では、結合伝送線路対202は3つである。しかし、結合伝送線路対202の数は、2又は4以上であってもよい。
【0117】
そして、本可変バンドパスフィルタ200は、入力延長伝送線路206と接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する複数(又は単数)の第1の可変容量手段210を有している。また、本可変バンドパスフィルタ200は、出力延長伝送線路208と接地面の間に設けられた複数(又は単数)の第2の可変容量を有する第2の可変容量手段212を有している。
【0118】
また、本可変バンドパスフィルタ200は、延長伝送線路204と接地面の間に設けられた複数(又は単数)の第3の可変容量を有する第3の可変容量手段214を有している。また、本可変バンドパスフィルタ200は、第1の結合伝送線路10aと接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する単数(又は複数)第4の可変容量手段216を有している。また、本可変バンドパスフィルタ200は、第2の結合伝送線路10bと接地面の間に設けられた第5の可変容量を有する第5の可変容量手段216とを有している。ここで、第1乃至第5の可変容量手段は、例えば、MEMSキャパシタである。尚、本実施の形態では、第4及び第5の可変容量手段は、図17を参照して説明した、一つのMEMSキャパシタである。
【0119】
そして、本可変バンドパスフィルタ200では、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように第4の可変容量及び第5の可変容量が変化させられる。また、本可変バンドパスフィルタ200では、入力延長伝送線路206に接続された第1の結合伝送線路10a(10c)と入力延長伝送線路206との電気長の和が1/4波長になるように第1の可変容量が変化させられる。また、本可変バンドパスフィルタ200では、出力延長伝送線路208に接続された第2の結合伝送線路10b(10d)と出力延長伝送線路208との電気長の和が1/4波長になるように第2の可変容量が変化させられる。また、本可変バンドパスフィルタ200では、以下の伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように第3の可変容量が変化させられる。上記伝送線路とは、入力延長伝送線路206に接続されていない第1の結合伝送線路10a、出力延長伝送線路208に接続されていない第2の結合伝送線路10b、および延長伝送線路204である。
【0120】
更に、本可変バンドパスフィルタ200は、入力延長伝送線路206を信号入力端子46に接続する第6の可変容量手段218と、出力延長伝送線路208を信号出力端子50に接続する第7の可変容量手段220を有している。また、本可変バンドパスフィルタ200は、一端が信号入力端子46に接続され、他端が信号出力端子50に接続された第8の可変容量手段222を有している。
【0121】
第6の可変容量手段218、第7の可変容量手段220、及び第8の可変容量手段222は、例えば、図3を参照して説明したバラクタダイオードを有する電子回路である。
【0122】
そして、第6の可変容量手段218の容量値は、信号入力端子46が接続される外部回路に、本バンドパスフィルタ200が整合するように変化させられる。また、第7の可変容量手段220の容量値は、信号出力端子50が接続される外部回路に、本バンドパスフィルタ200が整合するように変化させられる。また、第8の可変容量222は、通過帯域の両側に減衰極が形成されるように変化させられる。
【0123】
(実施の形態9)
図20は、本実施の形態の通信装置128の構成図である。
【0124】
本通信装置128は、実施の形態1乃至7のいずれかの可変バンドパスフィルタ2〜200を有している。また、本通信装置128は、可変バンドパスフィルタ2〜200の第1の可変容量〜第3の可変容量(または、第1の可変容量〜第4の可変容量)を変化させる駆動ユニット130を有している。駆動ユニット130は、例えば、複数の中心周波数fcと複数の通過帯域BPに対応した可変容量手段の駆動条件を記録したメモリとCPU(central processing unit)を有する電子回路である。
【0125】
また、本通信装置128は、可変バンドパスフィルタ2〜200に信号を供給する信号供給ユニット132を有している。信号供給ユニット132は、例えば、無線信号を受信するアンテナとこのアンテナに接続された増幅器とを有している。
【0126】
また、本通信装置128は、可変バンドパスフィルタ2〜200の出力信号を処理する信号処理ユニット134を有している。信号処理ユニット134は、例えば、信号処理プログラムが記録されたメモリとこのプログラムに従って動作するCPUを有している。
【0127】
また、本通信装置128は、信号処理ユニット134が生成したデータを出力する出力ユニット136を有している。出力ユニット136は、例えば、液晶表示装置である。
【0128】
本通信装置128は、小型化された可変バンドパスフィルタ2〜200を有しているので、小型化に適している。
【0129】
以上の実施の形態では、分岐伝送線路(または、延長伝送線路)に沿って設けられる可変容量手段は、MEMSキャパシタである。しかし、これらの可変容量手段は、MEMSキャパシタに限られない。これらの可変容量手段は、例えば、図3のようなバラクタダイオードを有する電子回路であってもよい。
【0130】
また、以上の実施の形態では、接地面4は、各伝送線路とは異なる面に設けられている。しかし、接地面4は、各伝送線路と同じ面内に設けてもよい。
【0131】
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0132】
(付記1)
接地面に接続された一端から延在する結合伝送線路と、
前記結合伝送線路の他端で分岐し第1の開放端まで延在する第1の分岐伝送線路と、
前記他端で分岐し第2の開放端まで延在する第2の分岐伝送線路と、
前記第1の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記第2の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段とを有し、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記第1の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【0133】
(付記2)
付記1に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
前記第1の可変容量手段は、前記第1の分岐伝送線路との間に第1の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第1の可動電極と、前記第1の可動電極に対向する第1の駆動電極とを有し、
前記第1の可動電極と前記第1の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第1の間隔が変化し、
前記第2の可変容量手段は、前記第2の分岐伝送線路との間に第2の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第2の可動電極と、前記第2の可動電極に対向する第2の駆動電極とを有し、
前記第2の可動電極と前記第2の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第2の間隔が変化し、
前記第3の可変容量手段は、前記結合伝送線路との間に第3の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第3の可動電極と、前記第3の可動電極に対向する第3の駆動電極とを有し、
前記第3の可動電極と前記第3の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第3の間隔が変化することを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0134】
(付記3)
付記1に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
前記第1の可変容量手段は、前記第1の分岐伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記第1の分岐伝送線路との間に第1の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第1の可動電極と、前記第1の可動電極に対向する第1の駆動電極とを有し、
前記第1の可動電極と前記第1の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第1の間隔が変化し、
前記第2の可変容量手段は、前記第2の分岐伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記第2の分岐伝送線路との間に第2の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第2の可動電極と、前記第2の可動電極に対向する第2の駆動電極とを有し、
前記第2の可動電極と前記第2の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第2の間隔が変化し、
前記第3の可変容量手段は、前記結合伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記結合伝送線路との間に第3の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第3の可動電極と、前記第3の可動電極に対向する第3の駆動電極とを有し、
前記第3の可動電極と前記第3の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第3の間隔が変化することを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0135】
(付記4)
付記1に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
前記第3の可変容量手段は、両端がそれぞれ前記結合伝送線路及び前記接地面にキャパシタを介して接続された可変容量ダイオードを有し、
前記両端にインダクタを介して電圧が印加されて、前記第3の可変容量ダイオードの容量値が変化することを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0136】
(付記5)
付記1乃至4のいずれか1項に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
更に、前記第1の分岐伝送線路を信号入力端子に接続する第4の可変容量手段と、
前記第2の分岐伝送線路を信号出力端子に接続する第5の可変容量手段と、
一端が前記信号入力端子に接続され、他端が前記信号出力端子に接続された第6の可変容量手段を有し、
前記信号入力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第4の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記信号出力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第5の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記通過帯域の両側に減衰極が形成されるように、前記第6の可変容量が変化させられることを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0137】
(付記6)
接地面に接続された一端から延在する第1の結合伝送線路と、
前記第1の結合伝送線路の他端から第1の開放端まで延長された第1の延長伝送線路と、
前記接地面に接続された一端から前記第1の結合伝送線路に沿って延在し、前記第1の結合伝送線路に電磁誘導結合した第2の結合伝送線路と、
前記第2の結合伝送線路の他端から第2の開放端まで延長された第2の延長伝送線路と、
前記第1の延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記第2の延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記第1の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、
前記第2の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段とを有し、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量及び前記第4の可変容量が変化させられ、前記第1の延長伝送線路と前記第1の結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の延長伝送線路と前記第2の結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【0138】
(付記7)
接地面に接続された一端から延在する複数の結合伝送線路と、
それぞれの前記結合伝送線路の他端で分岐し、前記結合伝送線路を順次接続する分岐伝送線路と、
前記分岐伝送線路が一本だけ接続された前記他端で分岐し、第1の開放端まで延在する入力分岐伝送線路と、
前記分岐伝送線路が一本だけ接続された他の前記他端で分岐し、第2の開放端まで延在する出力分岐伝送線路と、
それぞれの前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記入力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、
前記出力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段と、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記分岐伝送線路の両端に接続された前記結合伝送線路と前記分岐伝送線路との電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられ、前記入力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記出力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第4の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【0139】
(付記8)
付記7に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
更に、前記入力分岐伝送線路を信号入力端子に接続する第5の可変容量手段と、
前記出力分岐伝送線路を信号出力端子に接続する第6の可変容量手段と、
一端が前記信号入力端子に接続され、他端が前記信号出力端子に接続された第7の可変容量手段を有し、
前記信号入力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第5の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記信号出力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第6の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記通過帯域の両側に減衰極が形成されるように、前記第7の可変容量手段の容量値が変化させられることを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0140】
(付記9)
接地面に接続された第1の一端から延在する第1の結合伝送線路と、前記接地面に接続された第2の一端から前記第1の結合伝送線路に沿って延在し、前記第1の結合伝送線路に電磁誘導結合する第2の結合伝送線路とを有する複数の結合伝送線路対と、
前記結合伝送線路対の前記第1の結合伝送線路の他端と他の前記結合伝送線路対の前記第2の結合伝送線路の他端を接続する延長伝送線路と、
前記延長伝送線路が接続されていない前記第1の結合伝送線路の他端から第1の開放端まで延長された入力延長伝送線路と、
前記延長伝送線路が接続されていない前記第2の結合伝送線路の他端から第2の開放端まで延長された出力延長伝送線路と、
前記入力延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記出力延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、
前記第1の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段と、
前記第2の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第5の可変容量を有する第5の可変容量手段とを有し、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第4の可変容量及び前記第5の可変容量が変化させられ、前記入力延長伝送線路に接続された前記第1の結合伝送線路と前記入力延長伝送線路との電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記出力延長伝送線路に接続された前記第2の結合伝送線路と前第出力延長伝送線路との電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられ、前記第1の結合伝送線路と前記第2の結合伝送線路と前記延長伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第3の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【0141】
(付記10)
付記9に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
更に、前記入力延長伝送線路を信号入力端子に接続する第6の可変容量手段と、
前記出力延長伝送線路を信号出力端子に接続する第7の可変容量手段と、
一端が前記信号入力端子に接続され、他端が前記信号出力端子に接続された第8の可変容量手段を有し、
前記信号入力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第6の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記信号出力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第7の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記通過帯域の両側に減衰極が形成されるように、前記第8の可変容量手段の容量値が変化させられることを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【0142】
(付記11)
接地面に接続された一端から延在する結合伝送線路と、前記結合伝送線路の他端で分岐し第1の開放端まで延在する第1の分岐伝送線路と、前記他端で分岐し第2の開放端まで延在する第2の分岐伝送線路と、前記第1の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、前記第2の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段とを有し、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記第1の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる可変バンドパスフィルタと、
前記第1の可変容量乃至第3の可変容量を変化させる駆動ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタに信号を供給する信号供給ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタの出力信号を処理する信号処理ユニットとを有する
通信装置。
【0143】
(付記12)
接地面に接続された一端から延在する複数の結合伝送線路と、それぞれの前記複数の結合伝送線路の他端で分岐し、前記複数の結合伝送線路を順次接続する分岐伝送線路と、前記分岐伝送線路が一本だけ接続された前記他端で分岐し、第1の開放端まで延在する入力分岐伝送線路と、前記分岐伝送線路が一本だけ接続された他の前記他端で分岐し、第2の開放端まで延在する出力分岐伝送線路と、それぞれの前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、前記分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、前記入力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、前記出力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段と、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられ、前記入力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記出力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第4の可変容量が変化させられる可変バンドパスフィルタと、
前記第1の可変容量乃至第4の可変容量を変化させる駆動ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタに信号を供給する信号供給ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタの出力信号を処理する信号処理ユニットとを有する
通信装置。
【符号の説明】
【0144】
2・・・可変バンドパスフィルタ
4・・・接地面
10・・・結合伝送線路
18・・・第1の分岐伝送線路
22・・・第2の分岐伝送線路
24・・・第1の可変容量手段
26・・・第2の可変容量手段
28・・・第3の可変容量手段
32・・・可動電極
34・・・第3の駆動電極
48・・・第4の可変容量手段
52・・・第5の可変容量手段
54・・・第6の可変容量手段
82・・・可変バンドパスフィルタ
83・・・可変バンドパスフィルタ
84・・・線路側部電極
86・・・可変バンドパスフィルタ
88・・・可変バンドパスフィルタ
92・・・可変バンドパスフィルタ
95・・・可変バンドパスフィルタ
200・・・可変バンドパスフィルタ
202・・・入力延長伝送線路
204・・・延長伝送線路
206・・・入力延長伝送線路
208・・・出力延長伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に接続された一端から延在する結合伝送線路と、
前記結合伝送線路の他端で分岐し第1の開放端まで延在する第1の分岐伝送線路と、
前記他端で分岐し第2の開放端まで延在する第2の分岐伝送線路と、
前記第1の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記第2の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段とを有し、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記第1の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
前記第1の可変容量手段は、前記第1の分岐伝送線路との間に第1の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第1の可動電極と、前記第1の可動電極に対向する第1の駆動電極とを有し、
前記第1の可動電極と前記第1の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第1の間隔が変化し、
前記第2の可変容量手段は、前記第2の分岐伝送線路との間に第2の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第2の可動電極と、前記第2の可動電極に対向する第2の駆動電極とを有し、
前記第2の可動電極と前記第2の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第2の間隔が変化し、
前記第3の可変容量手段は、前記結合伝送線路との間に第3の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第3の可動電極と、前記第3の可動電極に対向する第3の駆動電極とを有し、
前記第3の可動電極と前記第3の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第3の間隔が変化することを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項3】
請求項1に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
前記第1の可変容量手段は、前記第1の分岐伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記第1の分岐伝送線路との間に第1の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第1の可動電極と、前記第1の可動電極に対向する第1の駆動電極とを有し、
前記第1の可動電極と前記第1の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第1の間隔が変化し、
前記第2の可変容量手段は、前記第2の分岐伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記第2の分岐伝送線路との間に第2の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第2の可動電極と、前記第2の可動電極に対向する第2の駆動電極とを有し、
前記第2の可動電極と前記第2の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第2の間隔が変化し、
前記第3の可変容量手段は、前記結合伝送線路の側面から突出した線路側部電極または前記結合伝送線路との間に第3の間隔が設けられ且つ前記接地面に接続された第3の可動電極と、前記第3の可動電極に対向する第3の駆動電極とを有し、
前記第3の可動電極と前記第3の駆動電極の間に電圧が印加されて、前記第3の間隔が変化することを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
更に、前記第1の分岐伝送線路を信号入力端子に接続する第4の可変容量手段と、
前記第2の分岐伝送線路を信号出力端子に接続する第5の可変容量手段と、
一端が前記信号入力端子に接続され、他端が前記信号出力端子に接続された第6の可変容量手段を有し、
前記信号入力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第4の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記信号出力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第5の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記通過帯域の両側に減衰極が形成されるように、前記第6の可変容量が変化させられることを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項5】
接地面に接続された一端から延在する第1の結合伝送線路と、
前記第1の結合伝送線路の他端から第1の開放端まで延長された第1の延長伝送線路と、
前記接地面に接続された一端から前記第1の結合伝送線路に沿って延在し、前記第1の結合伝送線路に電磁誘導結合した第2の結合伝送線路と、
前記第2の結合伝送線路の他端から第2の開放端まで延長された第2の延長伝送線路と、
前記第1の延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記第2の延長伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記第1の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、
前記第2の結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段とを有し、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量及び前記第4の可変容量が変化させられ、前記第1の延長伝送線路と前記第1の結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の延長伝送線路と前記第2の結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【請求項6】
接地面に接続された一端から延在する複数の結合伝送線路と、
それぞれの前記結合伝送線路の他端で分岐し、前記結合伝送線路を順次接続する分岐伝送線路と、
前記分岐伝送線路が一本だけ接続された前記他端で分岐し、第1の開放端まで延在する入力分岐伝送線路と、
前記分岐伝送線路が一本だけ接続された他の前記他端で分岐し、第2の開放端まで延在する出力分岐伝送線路と、
それぞれの前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、
前記分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、
前記入力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段と、
前記出力分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第4の可変容量を有する第4の可変容量手段と、
所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記分岐伝送線路の両端に接続された前記結合伝送線路と前記分岐伝送線路との電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられ、前記入力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記出力分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第4の可変容量が変化させられる
可変バンドパスフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載の可変バンドパスフィルタにおいて、
更に、前記入力分岐伝送線路を信号入力端子に接続する第5の可変容量手段と、
前記出力分岐伝送線路を信号出力端子に接続する第6の可変容量手段と、
一端が前記信号入力端子に接続され、他端が前記信号出力端子に接続された第7の可変容量手段を有し、
前記信号入力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第5の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記信号出力端子が接続される外部回路に整合するように、前記第6の可変容量手段の容量値が変化させられ、
前記通過帯域の両側に減衰極が形成されるように、前記第7の可変容量手段の容量値が変化させられることを、
特徴とする可変バンドパスフィルタ。
【請求項8】
接地面に接続された一端から延在する結合伝送線路と、前記結合伝送線路の他端で分岐し第1の開放端まで延在する第1の分岐伝送線路と、前記他端で分岐し第2の開放端まで延在する第2の分岐伝送線路と、前記第1の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第1の可変容量を有する第1の可変容量手段と、前記第2の分岐伝送線路と前記接地面の間に設けられた第2の可変容量を有する第2の可変容量手段と、前記結合伝送線路と前記接地面の間に設けられた第3の可変容量を有する第3の可変容量手段とを有し、所定の周波数範囲内の複数の周波数において、通過帯域の幅が所望の幅になるように前記第3の可変容量が変化させられ、前記第1の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第1の可変容量が変化させられ、前記第2の分岐伝送線路と前記結合伝送線路の電気長の和が1/4波長になるように前記第2の可変容量が変化させられる可変バンドパスフィルタと、
前記第1の可変容量乃至第3の可変容量を変化させる駆動ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタに信号を供給する信号供給ユニットと、
前記可変バンドパスフィルタの出力信号を処理する信号処理ユニットとを有する
通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−244233(P2011−244233A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114902(P2010−114902)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発/複数周波数対応通信三次元デバイス技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】