可変分路インピーダンスを備えた超電導限流器
故障電流を抵抗によりまたは誘導により制限するように構成された超電導素子と、超電導素子に並列に電気的に結合されている1つまたは複数の可変インピーダンス分路とを有する超電導限流器が提供される。可変インピーダンス分路(複数可)は、超電導素子の超電導状態中は第1のインピーダンスを示し、超電導素子の標準抵抗状態中は第2のインピーダンスを示すように構成されている。超電導素子は、故障電流に応じて超電導状態から標準抵抗状態に遷移し、それに応じて、可変インピーダンス分路(複数可)は、第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移する。可変インピーダンス分路(複数可)の第2のインピーダンスは、第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、それにより、超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、可変インピーダンス分路(複数可)を通る電流の流れが促進され、したがって負荷下の超電導素子の回復が促進される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、限流器に関し、より詳細には、負荷下の超電導素子の回復を容易にするために超電導素子に並列に接続された可変分路インピーダンスを有する超電導限流器に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願情報
本出願は、参照によりすべて本明細書に組み込まれる、SUPER CONDUCTING FAULT CURRENT-LIMITER WITH VARIABLE SHUNT IMPEDANCEと題する2010年1月21日に出願された米国特許出願第12/691,325号明細書の利益を主張する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国エネルギー省によって付与された契約番号DE−F36−03G013033の下、部分的には米国政府の支援を受けてなされたものである。したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有することができる。
【0004】
限流装置は、電力伝送および配電システムにおいて重要である。落雷等のさまざまな理由のために、送電網の一区間において、電流に鋭いサージをもたらす短絡状態が発生する可能性がある。故障電流と呼ばれることが多いこの電流のサージが、送電網システムを通して配備されている開閉機器の保護能力を超えた場合、送電網機器およびシステムに接続されている需要家負荷に破壊的な損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
超電導体、特に高温超電導(HTS)材料は、一定の動作条件の下で「可変インピーダンス」の効果を達成するように操作することができる固有の特性があるため、限流装置で使用されるのによく適している。超電導体は、一定温度および外部磁場範囲(すなわち、「臨界温度」(Tc)および「臨界磁場(Hc)範囲)内で動作する時、そこを流れる電流が一定閾値(すなわち、「臨界電流レベル)(Ic))未満である場合にいかなる電気抵抗も示さず、したがって、「超電導状態」にあると言われる。しかしながら、電流がこの臨界電流レベルを超えると、超電導体は、その超電導状態から「標準抵抗状態」に遷移する。超電導体のその超電導状態から標準抵抗状態へのこの遷移は、「クエンチ」と呼ばれる。クエンチは、3つの要素、すなわち動作温度、外部磁場または電流レベルのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せが対応する臨界レベルを超える場合に発生する可能性がある。これらの3つの要素のうちのいずれか1つまたは組合せを用いて、超電導体を、クエンチを起こすように誘導しかつ/または強制する機構は、通常、トリガ機構と呼ばれる。
【0006】
超電導体のクエンチ中にいかなる熱的損傷または構造的損傷もなかった場合に、クエンチを起こした超電導体は、動作環境をその臨界電流、臨界温度および臨界磁場範囲内にすることにより、その超電導状態に戻すことができる。液体ヘリウム温度(4°K)近くで動作する低温超電導(LTS)材料と比較して、HTS材料は、液体窒素温度(77°K)近くで動作することが可能である。したがって、HTS材料は動作温度範囲がより高くかつ広いため、その操作特性がはるかに容易である。
【0007】
バルクBSCCO、YBCOおよびMgB2等のいくつかのHTS材料の場合、超電導体の体積内に、製造プロセスからもたらされる不均一領域が存在することが多い。こうした不均一領域は、超電導体の臨界電流レベルを超える電流のサージ中に、いわゆる「ホットスポット」になる可能性がある。本質的に、電流によるクエンチの初期段階では、超電導体体積のいくつかの領域は、不均一であるために他の領域より前に抵抗を有するようになる。抵抗領域は、これらの不均一領域においてその関連するI2R損失から熱を発生する。発生する熱がその周囲領域および環境に十分迅速に伝播されない場合、局所加熱が超電導体に損傷を与え、超電導体素子全体の破壊(バーンアウト)をもたらす可能性がある。
【0008】
参照によりすべて本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された「Matrix-Type Superconducting Fault Current-limiter」と題する2003年12月16日に発行された米国特許第6,664,875号明細書は、超電導体のクエンチを起こす要素のうちの3つすべて、すなわち、電流、磁場および温度を組み合わせて、限流中に超電導体のより均一なクエンチを達成する機構を使用する。このいわゆるマトリクス型超電導限流器(MFCL)概念は、超電導体体積に存在する不均一性によるバルク超電導材料におけるバーンアウトの危険を劇的に低減することができる。さらに、障害の検出およびMFCLの限流インピーダンスの後続する起動は、能動制御機構の支援なしに、組込マトリクス設計によって受動的に行われる。これにより、MFCL概念に基づく限流器が、広範囲のあり得る限流用途に対して、より容易に設計され、構築されかつ操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,664,875号明細書
【特許文献2】米国特許第6,809,910号明細書
【特許文献3】米国特許第6,958,893号明細書
【特許文献4】米国特許第7,283,339号明細書
【特許文献5】米国特許第7,440,244号明細書
【特許文献6】米国特許第6,190,752号明細書
【発明の概要】
【0010】
高い障害電流によってもたらされるHTS材料における過度の加熱は、分路インピーダンスを用いてHTS素子からの電流を分路インピーダンスに分流させることによって最小限にされる。いくつかの超電導限流器(SCFCL)設計では、2つの外部巻線(コイル)が、1つはトリガ磁場を発生させるために、1つは分路インピーダンスとして使用される。HTS素子毎に2つのコイルを使用することによる多数の構成要素(部品)により、設計の複雑性が加算され、それは、生産性、サイズ、重量、巻線および相互接続出力損失ならびに高圧設計の領域において問題となる。
【0011】
簡単に要約すると、一態様では、本発明は、超電導素子、および、超電導素子に並列に電気的に結合されている少なくとも1つの可変インピーダンス分路を有する超電導限流器を含む。超電導素子は、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成されており、少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、超電導素子の超電導状態中は第1のインピーダンスを示し、超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中は第2のインピーダンスを示すように構成されている。動作時、超電導素子は、故障電流に応じて超電導状態から標準抵抗状態に遷移し、それに応じて、少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移し、第2のインピーダンスは、第1のインピーダンスより低いインピーダンスである。少なくとも1つの可変インピーダンス分路を第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへ遷移させることにより、負荷下の超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進される。
【0012】
別の態様では、本明細書において、直列に電気的に接続されている複数の限流モジュールを有する超電導限流器が提示される。各限流モジュールは、少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に制限するように構成された少なくとも1つの超電導体セグメントを備える。超電導限流器はさらに、複数の可変インピーダンス分路を備える。各可変インピーダンス分路は、複数の限流モジュールのうちのそれぞれの限流モジュールに関連付けられ、故障電流中に第1のインピーダンスを示し、関連する限流モジュールの少なくとも1つの超電導素子の少なくとも1つの超電導体セグメントの標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように構成されている。複数の限流モジュールの超電導体セグメントは合わせて、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することによって故障電流を制限し、それに応じて、複数の可変インピーダンス分路は、第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移し、第2のインピーダンスは第1のインピーダンスより低い分路インピーダンスである。第2のインピーダンスへのこの遷移により、それぞれの限流モジュールの少なくとも1つの超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、それぞれの可変インピーダンス分路を流れる電流の流れが促進され、それにより、負荷下での少なくとも1つの超電導素子の回復が促進される。
【0013】
さらなる態様では、超電導限流器を製造する方法が提供される。この方法は、超電導素子と少なくとも1つの可変インピーダンス分路とを並列に電気的に接続するステップであって、超電導素子が、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成され、少なくとも1つの可変インピーダンス分路が、故障電流中に第1のインピーダンスを示し、超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように製造される、ステップを含み、少なくとも1つの可変インピーダンス分路の第2のインピーダンスは、第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、少なくとも1つの可変インピーダンス分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移により、故障電流を制限した後の超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中の少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより負荷下の超電導素子の回復が促進される。
【0014】
さらに、さらなる特徴および利点は、本発明の技法によって具現化される。本発明の他の実施形態および態様は、本明細書に詳細に記載されており、特許請求された発明の一部であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
発明としてみなされる主題は、特許請求の範囲において特に示されかつ明瞭に請求される。本発明の上述したかつ他の目的、特徴および利点は、添付図面に関連して以下の詳細な説明から明らかである。
【0016】
【図1】本発明の態様による、超電導限流器に採用される高温超電導セグメントの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の態様による、1つまたは複数の超電導限流器を採用する送電網システム等の電気系統の一実施形態の概略図である。
【図3】本発明の態様による超電導限流器の1つの動作実施態様の流れ図である。
【図4】本発明の態様によるマトリクス型超電導限流器の概略図であり、ここでは可変インピーダンス分路が、マトリクス型超電導限流器の各限流モジュール内の超電導素子に並列に結合されている。
【図5A】本発明の態様による別のマトリクス型超電導限流器の部分立面図である。
【図5B】本発明の態様による、図5Aのマトリクス型超電導限流器の部分的に組立分解された部分斜視図である。
【図6A】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図6B】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図6C】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図7A】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図7B】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図8A】軟質磁性材料対硬質磁性材料に対する磁気対磁場強度をプロットしている典型的なヒステリシスループのグラフである。
【図8B】鉄等の非線形磁性材料に対する典型的なヒステリシスループを示す図である。
【図9】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の別の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図11】本発明の態様による超電導限流器の別の実施形態の概略図であり、ここでは飽和制御された可変インピーダンス分路が超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図12】本発明の態様による超電導限流器の代替的実施形態の概略図であり、ここでは飽和制御された可変インピーダンス分路および固定インピーダンスがともに超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図13】本発明の態様による超電導限流器のさらなる実施形態の概略図であり、ここでは複数の直列接続された可変インピーダンス分路段が超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図14】本発明の態様による超電導限流器の別の実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御するDC飽和コントローラを備えた飽和コントローラが示されている。
【図15】本発明の態様による、図14の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図であり、ここでは分路コイルおよび飽和コイルがともに、共通のトロイダル形状可飽和鉄心を部分的に包囲している。
【図16】本発明の態様による、可変インピーダンス分路の代替的実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御するAC飽和コントローラを備える飽和コントローラが示されている。
【図17】本発明の態様による、超電導限流器のさらなる実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御する周波数飽和コントローラを備える飽和コントローラが示されている。
【図18A】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18B】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18C】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18D】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
さまざまな従来の出願および特許が、超電導限流器に対するクエンチトリガ機構に焦点を当てている。たとえば、参照によりすべて本明細書に組み込まれる米国特許第6,809,910号明細書、米国特許第6,958,893号明細書、米国特許第7,283,339号明細書、および、米国特許第7,440,244号明細書を参照されたい。対照的に、本発明は、障害電流の制限に続いて負荷下の超電導素子の回復が向上した超電導限流器に関する。
【0018】
いくつかの超電導限流器トポロジは、並列インピーダンスリアクタンスを採用して、障害電流をさらに制限し、超電導素子がそのインピーダンス状態を超電導状態から標準抵抗状態に変化させる場合に、一定量の電流が流れるのを可能にする。分路リアクタンスが採用される場合、障害制限中にクエンチダイナミクスを増大させるために、高インピーダンス値が必要である。しかしながら、障害状態が発生した後、および超電導素子の回復時間中、高い分路リアクタンスは望ましくなく、それは、標準抵抗状態から超電導状態への回復プロセスをより困難にするためである。したがって以下、超電導限流器であって、障害遷移中に高いインピーダンスを示し、超電導素子の回復プロセス中、障害電流がクエンチした後に、異なるより低い(または最小の)インピーダンスを示す、その超電導素子に並列な可変インピーダンス分路を有する超電導限流器について説明する。
【0019】
本明細書に記載する超電導限流器は、いかなる低温超電導材料または高温超電導材料で採用されてもよい。しかしながら、本明細書に提示する超電導限流器の超電導素子(複数可)内の超電導体セグメント(複数可)として高温超電導体(HTS)を採用することによって、利益が得られる。こうした導体は、今日、障害電流に応じて自己トリガする、すなわち、障害電流自体のより高い電流値に基づいて障害電流を制限するために、状態を超電導状態から標準抵抗状態に変化させるように構成することができる。超電導限流器についてさらに説明する前に、(本明細書で説明するような)超電導素子用のHTS超電導体セグメントについて、図1を参照して以下に説明する。
【0020】
図1を参照すると、本発明による、超電導限流器の超電導素子または超電導素子の一部(たとえば、複数のこうした超電導体セグメントと並列である)として採用することができるHTS導体100の概略層化構造が示されている。HTS導体100は、基板110と、基板110の上に重なる緩衝層111と、HTS層112と、それに続くキャップ層114(通常貴金属層)と、安定化層116(通常非貴金属層)とを含む。図1に示す実施形態では、緩衝層111、HTS層112、キャップ層114および安定化層116を、まとめて超電導領域と呼び、それは、図示するように基板110の1つの主面に沿って配置されている。
【0021】
基板110は通常、テープ状構造であり、アスペクト比が高い。たとえば、テープの幅は、通常およそ2mm〜12mmであり、テープの長さは、通常少なくとも約100mm、最も典型的には約500mを超える。したがって、基板は、およそ103以上またはさらには104以上の、極めて高いアスペクト比を有することができる。いくつかの実施形態はより長く、アスペクト比は105以上である。本明細書で用いる「アスペクト比」という用語は、基板またはテープの長さの次に長い寸法、すなわち基板またはテープの幅に対する比を意味するように用いている。
【0022】
一実施形態では、基板は、HTSテープの構成層が後に堆積するのに望ましい表面特性を有するように処理される。たとえば、表面は、所望の平坦さおよび表面粗さに対して軽く研磨することができる。さらに、既知のRABiTS(roll assisted biaxially textured substrate)技法による等、本技術分野において理解されるように二軸配向するように処理してもよい。
【0023】
緩衝層111に関し、緩衝層は、単層であってもよく、またはより一般的には、複数のフィルムから構成されていてもよい。最も典型的には、緩衝層は、二軸配向フィルムを含み、そのフィルムは概して、フィルムの面内および面外の両方において結晶軸に沿って位置合せされている結晶組織を有している。こうした二軸配向は、IBADによって達成することができる。この技術分野において理解されるように、IBADは、イオンビームアシスト蒸着(Ion Beam Assisted Deposition)の頭字語であり、それは、優れた超電導特性のために望ましい結晶配向を有するHTS層の後続する形成のために、適切に配向された緩衝層を形成するために有利に利用することができる技法である。酸化マグネシウムが、IBADフィルムに対して選択される典型的な材料であり、50オングストロームから200オングストローム等、およそ50オングストロームから500オングストロームであり得る。一般に、IBADフィルムは、参照によりすべて本明細書に組み込まれる米国特許第6,190,752号明細書に定義されかつ記載されているように、岩塩状結晶構造を有している。
【0024】
緩衝層は、IBADフィルムと基板とに直接接触しかつそれらの間に配置されるように提供されるバリアフィルム等、追加のフィルムを含むことができる。これに関して、バリアフィルムは、有利にはイットリア等の酸化物から形成することができ、バリアフィルムは、IBADフィルムから基板を隔離するように機能する。バリアフィルムは、窒化ケイ素および炭化ケイ素等の非酸化物から形成してもよい。バリアフィルムを堆積させるのに適している技法には、化学気相成長およびスパッタリングを含む物理気相成長が挙げられる。バリアフィルムの典型的な厚さは、約100オングストローム〜200オングストロームの範囲内であり得る。さらに、緩衝層はまた、IBADフィルムの上に形成されたエピタキシャル成長フィルムも有することができる。これに関して、エピタキシャル成長フィルムは、IBADフィルムの厚さを増大させるのに有効であり、望ましくは、主にMgO等、IBAD層に利用されるものと同じ材料から作製することができる。
【0025】
MgO系IBADフィルムおよび/またはエピタキシャルフィルムを利用する実施形態では、MgO材料と超電導層の材料との間に格子不整合が存在する。したがって、緩衝層は、別の緩衝フィルムをさらに含むことができ、これは特に、HTS層と下にあるIBADフィルムおよび/またはエピタキシャルフィルムとの間の格子定数の不整合を低減するように実施される。この緩衝フィルムは、YSZ(イットリア−安定化ジルコニア)ルテニウム酸ストロンチウム、マンガン酸ランタンおよび一般に、ペロブスカイト構造セラミック材料等の材料から形成することができる。緩衝フィルムは、さまざまな物理気相成長技法によって堆積させることができる。
【0026】
上述したことは、主に、IBAD等の配向プロセスによる緩衝スタック(層)における二軸配向フィルムの実施態様に焦点が当てられているが、あるいは、基板表面自体を二軸配向させてもよい。この場合、緩衝層は概して、緩衝層に二軸配向を保持するように配向基板の上にエピタキシャル成長する。二軸配向基板を形成する1つのプロセスは、本技術分野において一般に理解されている、本技術分野においてRABiTS(roll assisted biaxially textured substrate)として知られているプロセスである。
【0027】
高温超電導体(HTS)層112は、通常、液体窒素の温度77°Kを超える超電導特性を示す高温超電導材料のうちのいずれから選択される。こうした材料としては、たとえば、YBa2Cu3O7−x、Bi2Sr2Ca2Cu3O10+y、Ti2Ba2Ca2Cu3O10+yおよびHgBa2Ca2Cu3O8+yが挙げられる。材料の一種にはREBa2Cu3O7−xが含まれ、REは希土類元素である。上述したもののうち、一般にYBCOとも呼ばれるYBa2Cu3O7−xを有利に利用することができる。HTS層112は、厚膜形成技法および薄膜形成技法を含むさまざまな技法のうちのいずれかによって形成することができる。好ましくは、高堆積速度に対して、パルスレーザ堆積(PLD)等の薄膜物理気相成長技法を使用することができ、またはより低コストかつより広い表面積の処理のために、化学気相成長技法を使用することができる。通常、HTS層は、HTS層112に関連する望ましいアンペア定格を得るために、約2ミクロンから約10ミクロン等、およそ約1ミクロンから約30ミクロン、最も典型的には約2ミクロンから約20ミクロンの厚さである。
【0028】
キャップ層114および安定化層116は概して、電気的安定性のため、すなわち実際に使用する際にHTSバーンアウトの防止を支援するために実装される。より詳細には、層114および116は、冷却が失敗するかまたは臨界電流密度を超え、かつHTS層が超電導状態から移動して抵抗を有するようになった場合に、電荷がHTS導体に沿って流れ続けるのを支援する。通常、安定化層(複数可)とHTS層112との間の望ましくない相互作用を防止するために、キャップ層114に対して貴金属が利用される。典型的な貴金属としては、金、銀、白金およびパラジウムが挙げられる。銀が、コストおよび一般的な利用しやすさのために通常使用される。キャップ層114は通常、安定化層116からの成分のHTS層112内への望ましくない拡散を防止するために十分厚いように作製されるが、コストの理由で(原材料コストおよび処理コスト)一般に薄く作製される。キャップ層114の典型的な厚さは、0.5ミクロンから約5.0ミクロン等、約0.1ミクロンから約10.0ミクロン内の範囲である。キャップ層114の堆積のために、DCマグネトロンスパッタリング等、物理気相成長を含むさまざまな技法を使用することができる。
【0029】
本発明の実施形態の特定の特徴によれば、安定化層116は、超電導層112の上に重なるように、特に図1に示す実施形態ではキャップ層114の上に重なりかつ直接接触するように組み込まれる。安定化層116は、苛酷な環境条件および超電導クエンチに対して安定性を強化するように保護/分路層として機能する。この層は、概して高密度であり、熱伝導性かつ導電性を有し、超電導層における故障の場合に電流をバイパスさせるように機能する。従来、こうした層は、はんだまたはフラックス等の中間接合材料を使用することにより、予備成形された銅ストリップを超電導テープの上に積層することによって形成されてきた。他の技法は、物理気相成長、典型的にはスパッタリングに焦点が当てられてきた。しかしながら、こうした付与技法は、コストがかかり、大規模生産作業の場合は特に経済的に実現可能ではない。実施形態の特定の特徴によれば、安定化層116は電気めっきによって形成される。この技法によれば、電気めっきを使用して、超電導テープの上に材料の厚い層を迅速に蓄積させることができ、それは、熱伝導性かつ導電性金属の稠密層を有効に生成することができる比較的低コストのプロセスである。1つの特徴によれば、安定化層は、融点が約300℃未満であるはんだ層(フラックスを含む)等、中間接合層を利用するかそれに依存することなくかつそれを利用することなく堆積する。
【0030】
電気めっき(電着としても知られる)は一般に、堆積させるべき金属のイオンを含む溶液に超電導テープを浸漬することによって行われる。テープの表面は外部電源に接続され、電流が表面から溶液内に流され、以下のように、電子(e−)を有する金属イオン(Mz−)の反応により金属(M)が形成される。
Mz−+ze−=M
【0031】
キャップ層114は、その上に銅を堆積させるための第2の層として機能する。安定化金属の電気めっきの特定の場合、超電導テープは一般に、硫酸銅溶液等の第2銅イオンを含む溶液に浸漬される。キャップ層114に電気的接触がなされ、電流が流され、それにより、キャップ層114の表面において反応Cu2++2e−→Cuが発生する。キャップ層114は、溶液における陰極として機能し、金属イオンがCu金属原子に還元されテープ上に堆積するようにする。一方、銅を含む陽極が溶液内に配置され、そこで酸化反応が発生し、銅イオンが溶液内に進み還元されて陰極に堆積する。
【0032】
いかなる二次反応もない場合、電気めっき中に導電性面に運ばれる電流は、堆積する金属の量に正比例する(ファラデーの電気分解の法則)。この関係を使用して、安定化層116を形成する堆積材料の質量、したがって厚さを容易に制御することができる。
【0033】
上述したことは、概して銅に言及しているが、アルミニウム、銀、金および他の熱伝導性かつ導電性金属を含む他の金属を利用してもよいことが留意される。しかしながら、一般に、超電導テープを形成するために全体的な材料コストを低減するように非貴金属を利用することが望ましい。
【0034】
上述した説明および図1は、超電導テープの一方の面に沿って安定化層116を形成する電気めっきについて述べているが、超電導テープの反対側の主面をコーティングしてもよいことも留意され、実際には、構造の全体を封止するようにコーティングすることができる。当業者は、図1のHTS導体100の上述した説明が単に例として提供されていることを留意するであろう。後述する超電導素子は、本明細書とともに提供する特許請求の範囲から逸脱することなく、あらゆる適切な超電導テープまたはバルク材料を利用することができる。
【0035】
図2は、本発明の態様による、1つまたは複数の超電導限流器210を含む、配電システムまたは配電網等の電気系統200の一実施形態の概略図である。一例として、電気系統は送電網であり、システム電圧220が、伝送ラインおよび/または配電ライン(システムインピーダンス221を有する)ならびに超電導限流器210を横切って負荷インピーダンス230に供給される。超電導限流器210は、超電導素子240とそれに並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路250とを備えている。図示するように、後にさらに説明するように可変インピーダンス分路の(たとえば)第1の高インピーダンスから第2の低インピーダンスへの遷移およびその逆を制御するように、コントローラ260を任意に設けることができる。コントローラ260の存在および実施態様は、採用される可変インピーダンス分路の特定の実施態様によって決まる。(たとえば、さまざまな実施態様において、コントローラ260は、可変インピーダンス分路を通してインピーダンスを制御する、コンピュータ実装コントローラならびに電流および/または電圧センサを備えていてもよい。)いくつかの可変インピーダンス分路は、高い故障電流の制限に応じて第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移するように固有に構成されているため、制御機構が必要ではない。
【0036】
図示するように、負荷電流IL(t)が負荷インピーダンス230に電力を供給する。短絡故障電流IF(t)等の故障電流270の発生時、短絡により全電流IT(t)が著しく増大する。本明細書に記載する実施形態では、超電導限流器および特に超電導素子240は、超電導状態から標準抵抗状態にクエンチするかまたは遷移することにより、この故障電流を抵抗により制限するように構成されている。
【0037】
図3は、図2に関連して上述したような、超電導限流器の動作実施形態の流れ図である。図示するように、超電導素子は、通常、超電導状態で動作し、超電導素子と並列な可変インピーダンス分路は、第1の高インピーダンスを示している300。電気系統内で故障電流が発生する310と、超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移して超電導体のクエンチにより電流を制限することによって応答する320。続いて、超電導素子の回復プロセス中、可変インピーダンス分路が、第1の高インピーダンスを示すことから第2の低インピーダンスを示すように遷移し(または遷移させられ)、分路を通る電流の流れ、したがって負荷下の超電導素子の回復を促進する330。超電導素子が事前に定義された最小電流レベル(または通常超電導素子を流れている電流の最小パーセンテージ)まで回復すると、可変インピーダンス分路は、第2の低インピーダンスから第1の高インピーダンスに戻るように遷移する340。これにより、超電導素子が完全に超電導状態まで回復する前に(第1の故障電流を制限した後に)第2の故障電流が発生した場合、可変インピーダンス分路が第1の高インピーダンスレベルにあることが保証される。
【0038】
上述したように、(本発明による)超電導限流器は、可変インピーダンス分路と並列に結合された、HTS素子等の少なくとも1つの超電導素子を有している。可変インピーダンス分路は、(一実施形態では)超電導限流器の基本構造を形成するように超電導素子と並列に結合された分路コイルを備えている。さらに後述するように、分路コイルの可変インピーダンスは、関連する鉄心に対する分路コイルの機械的移動、または関連する鉄心の制御された飽和を含む、複数の種々の手法を用いて実施することができる。
【0039】
標準動作状態下では、超電導素子には抵抗がなく、したがって、すべての電流が超電導素子を流れる。したがって、構成全体にわたって電圧降下がなく、並列接続された可変インピーダンス分路には電流が流れない。しかしながら、故障電流が発生すると、電流サージが超電導素子の臨界電流レベルを超過し、超電導素子を即座にクエンチさせ、したがって、可変インピーダンス分路の前後に十分に大きい電圧降下を発生させ、その結果、電流全体の一部が分路に分流する。分路は、超電導体によって生成された電圧を制限するように作用し、総電流負荷を共有することにより、超電導体が過熱せず、故障が除去されるか部分的に除去されるとその正常状態に迅速に戻ることができることを保証する。有利には、分路は、そのインピーダンスが、超電導体の故障電流からの回復プロセスの少なくとも一部の間に変化するように制御される。
【0040】
特に、可変インピーダンス分路は、第1の高インピーダンスレベルから第2の低インピーダンスレベルに遷移して、初期回復プロセスを促進する。超電導素子を通る回復電流の流れが閾値レベル(または閾値パーセンテージ)に達すると、可変インピーダンス分路のインピーダンスは、第1の高インピーダンスレベルに戻るように遷移する。これにより、超電導素子が第1の故障電流から完全に回復していない(すなわち、部分的にしか回復していない)にもかかわらず、超電導限流器が後続する故障電流を処理することができることが確実になる。一実施態様では、超電導素子を介して標準動作電流レベルの10%〜90%が回復されると、可変インピーダンス分路を、第1の高インピーダンスレベルに戻るように遷移させることができる。しかしながら、用途に応じて、他の閾値パーセンテージまたは閾値電流レベル設定を採用することができる。
【0041】
基本モジュールとして上述した構成を用いて、マトリクス型限流器は、こうしたモジュールの少なくとも1つの行および少なくとも1つの列を有するように構成することができ、そこでは、各モジュールは、各列においてモジュール同士で並列に結合され、各列は、列同士で直列に結合される。こうした超電導限流器のモジュール性により、超電導限流器が、それが接続する電力系統の高電圧かつ/または高電流動作環境に適用可能となる。
【0042】
図4は、図2に関連して上述した基本限流器の「n」行および「m」列を含むマトリクス型超電導限流器400の例示的な実施形態を示している。行1、列1では、可変インピーダンス分路は、直列の抵抗器R11および可変インダクタL11によって示されており、それらは合わせて、超電導素子RS11の可変抵抗と並列である。行2、列1では、可変インピーダンス分路は、抵抗器R21と直列接続された可変インダクタンスL21とによって示されており、超電導素子は、可変抵抗RS21によって示されている。行「n」、列1では、可変インピーダンス分路は、可変インダクタンスLn,1と直列の抵抗器Rn,1によって示されており、超電導素子は、可変抵抗RSn,1によって示されている。それに対応して、行「n」、列「m」では、可変インピーダンス分路は、可変インダクタンスLn,mと直列の抵抗器Rn,mによって表されており、超電導素子は、可変抵抗RSn,mによって表されている。
【0043】
基本限流器のこの配置から、論理的に、マトリクス型限流器が、非常にモジュール性が高くかつスケーラブルであることが可能であり、それにより、超電導限流器アセンブリを、さまざまな限流用途要件に適応するように設計しサイズを決めることができるということになる。このマトリクス型超電導限流器は、そのモジュール性により、それが接続する電力系統の高電圧かつ/または高電流動作要件に極めて適応可能となる。高電圧用途の場合、全電圧は、マトリクスアセンブリの複数の列の間に分割され、それにより、さまざまな高電圧絶縁要件を満たすようなマトリクス型超電導限流器の誘電性設計が実質的に簡略化する。さらに、異なる数の行および列の組合せを用いて、高電圧かつ高電流動作要件と種々の限流要件との両方を有する用途に対処することができる。
【0044】
次に、マトリクス型超電導限流器を組み込んだ電力系統の動作を説明する。上述したように、分路を用いて、クエンチした後の各超電導素子の前後に発生する可能性がある最大電圧降下が制限される。故障電流の一部が、超電導素子から分路内に分流され、したがって、I2R損失の形態で超電導素子において発生する熱を低減し、それによって超電導素子に対しあり得る熱的損傷および機械的損傷から保護する。これにより、超電導素子の熱的回復と、したがって故障が除去されてからの限流器の回復時間とが改善され、発生する電圧が分路によって制限されるため、超電導素子のそのクエンチおよび後続する状態の間の温度上昇も制限される。有利には、本発明によれば、分路は可変インピーダンス分路であり、分路におけるインピーダンスは、故障電流を制限した後に超電導素子の回復段階中により低いインピーダンスが示されるように制御される。このようにインピーダンスが低下することにより、超電導素子が回復している間に電流の多くの部分を分路に分流させることによって、超電導素子が負荷下でよりよく回復することができる。
【0045】
図4に示すマトリクス構成では、結合された超電導体臨界電流レベルは、正常動作中は限流器400の行の数「n」に対応し、公称AC動作電流のピークに、電力系統によって必要とされるあらゆる過電流容量を足したもの以上であるように設計される。限流器の各行における限流器モジュールは、この全システム電流の約1/nを留意する。各限流器内では、可変インピーダンス分路は、正常動作状態中は高インピーダンスを有し、超電導素子の回復プロセス中は低インピーダンスを有するように設計されている。この低インピーダンスは、電流が可変インピーダンス分路内に向けられるように、超電導素子のクエンチした抵抗より実質的に低いように設計され、それにより、超電導素子が負荷下でより容易に回復することができる。上述したように、システム電流はその臨界電流レベル未満であるため、限流器は、電力系統の正常動作中いかなる電気抵抗も示さず、それにより、限流器の前後にいかなる電圧降下ももたらされない。したがって、いかなる電流も可変インピーダンス分路内に分流せず、そのため、正常動作中、可変インピーダンス分路においていかなる電力損失も発生しない。
【0046】
電力系統において故障が発生すると、マトリクス型超電導限流器を流れるサージ電流が、正常動作電流の何倍にまで増大する。その結果として、超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態への遷移を開始する(「クエンチ」とも呼ばれる)。このクエンチ状態において超電導素子によって生成される抵抗またはインダクタンスにより、超電導素子の前後に電圧が発生する。そして、この電圧により、可変インピーダンス分路に流れる電流が発生し、それは、それら可変インピーダンス分路が超電導素子に並列に電気的に結合されているためである。初期クエンチが開始すると、超電導素子内の後続するI2R加熱がクエンチプロセスに寄与する。合わせて、電流サージおよび温度上昇が、超電導素子の高速かつ均一なクエンチを促進し、材料欠陥によるバーンアウトを防止するように動作する。マトリクス型超電導限流器のモジュール性が、設計における組込冗長性を提供し、それにより、限流器におけるいかなる個々の超電導体(または超電導素子)の故障も、装置全体の故障をもたらすことがない。
【0047】
回復プロセス中の可変インピーダンス分路の第1の高インピーダンスレベルから第2の低インピーダンスレベルへの遷移により、システム内の電流を可変インピーダンス分路に一時的に分流させて負荷への電流の連続した供給を可能にすると同時に、超電導素子の超電導状態への回復を促進することにより、個々の超電導素子の回復が促進される。実施態様に応じて、たとえば、回復プロセス中のいずれかの定義された時点で、超電導素子を流れる電流が定義されたレベルに達すると、可変インピーダンス分路のインピーダンスが正常動作インピーダンス、すなわち電流が分路に流れるのを抑制する高いインピーダンスに戻される。
【0048】
この構造の利点は多い。たとえば、マトリクス型超電導限流器の正常動作中、I2R損失はわずかであり、限流器は、正常システム動作にいかなる影響も与えない。図4に示しかつ上述した実施態様は、容易なスケーラビリティおよび製造可能性のために本質的にモジュール式であり、それは、基本限流器を、さまざまな用途要件に適応するように「n」行×「m」列のマトリクス構成で配置することができるためである。さらに、可変インピーダンス分路を採用して、故障電流の回復プロセスに続く制限が改善され、それにより負荷下で超電導状態により高速に戻ることができる。実施態様に応じて、本明細書に記載するマトリクス型超電導限流器を、能動的な故障検知および制限制御機構なしに限流機能を行うように構成することができる。
【0049】
図5Aおよび図5Bに、マトリクス型超電導限流器の1つの実際的な実施態様を示す。この例では、各限流モジュール(または列)は、少なくとも1つの超電導素子と並列に単一の可変インピーダンス分路を採用しており、超電導素子の各々は複数の超電導体セグメントを備えている。
【0050】
まず図5Aを参照すると、マトリクス型超電導限流器が示されており、(たとえば図4のマトリクス例の限流器の列を備える)限流モジュール500は、この構成では1つまたは複数の直列の電気的に接続された超電導素子510を備えており、その各々は、可変インピーダンス分路510に並列に結合されている超電導テープの複数の層等、複数の超電導体を備えている。これらの限流モジュールは、第1の主接続Aと第2の主接続Bとの間に直列に接続されている。各限流モジュール500内の超電導体のサイズ、構成および数は、特定の実施態様の高電圧かつ高電流動作要件と種々の限流要件とに応じて変化する可能性がある。一例では、各超電導体層(またはテープ)はHTS導体を備えている。
【0051】
図5Bは、図5Aに部分的に示すマトリクス型超電導限流器の部分的に組立分解された断面図を示している。この実施形態では、主接点Aと主接点Bとの間に直列に接続されている個々の限流器モジュール500は、マトリクスを収容するようにサイズが決められている容器530から突出している。例として、単一の限流モジュール500が容器530内の適所に示されている。図示するように、電力線531、532が、マトリクス540にマトリクスへの主接続AおよびBを介して接続している。この実施態様では、単相限流構造が示されている。3相実施形態では、各相は、図示するような限流構造を有する。あるいは、3相実施態様の各相に対する限流構造が単一容器内に含まれるように、容器を再構成することができる。動作時、液体窒素等の冷却剤が、容器を通して圧送され、それにより、超電導素子が超電導状態を確立しその状態を維持することに寄与する温度であり続けることが確実になる。本明細書に記載する超電導限流器は、個々の超電導素子の超電導状態から標準抵抗状態へのクエンチにより、故障電流を抵抗によりまたは誘導により制限する。この抵抗による制限または誘導による制限により、容器内の温度が上昇し、この温度上昇は、容器内を圧送される液体窒素によって除去される。
【0052】
当業者は、上記説明から、図5Aおよび図5Bの特定の実施形態が、本明細書に提示するマトリクス型超電導限流器の単なる一例であることを留意するであろう。より一般的には、これらの図に示す直列接続された複数の限流モジュールを、単一の可変インピーダンス分路に並列な単一超電導素子として実装してもよい。超電導体(または超電導素子)の数および可変インピーダンス分路の数は、問題になっている限流実施態様に応じて変化してもよい。
【0053】
図6A〜図18Dは、本発明による限流器(またはその可変インピーダンス分路)のさまざまな実施態様を示している。最初に、図6A〜図7Bを参照すると、機械的に制御される可変インピーダンス分路が記載されており、残りの図は、飽和制御される可変インピーダンス分路のさまざまな実施形態を提示しており、それらのいずれも本発明による限流器で使用することができる。
【0054】
まず図6A〜図6Cを参照すると、円柱状鉄心600とその鉄心の少なくとも一部を包囲するように巻回されたらせんコイル610とを備えている可変インピーダンス分路の一実施形態が示されている。可変インピーダンスは、透磁率が空気より大きいと想定される鉄心により種々の技法を用いて得られる。動作時、鉄心600は、典型的にはらせんコイル610内で固定されていると想定され、使用される鉄心材料およびコイルの透磁率に基づいて最初から高インピーダンス値を有している。故障電流が発生すると、図示するように同軸状に配置されている鉄心600およびコイル610は、たとえば、超電導素子による故障電流のクエンチに応じて、機械的アクチュエータ(図示せず)を採用して分離される。この移動を図6Bおよび図6Cに示し、そこでは、鉄心600およびコイル610が離れるように移動すると、インピーダンスは低下し続ける。
【0055】
別の手法では、故障電流がない場合、鉄心をコイルの外側に配置して固定してもよい。故障電流に応じて、鉄心およびコイルを、鉄心が少なくとも部分的にコイル内にあるように移行させてもよい。この手法では、コイルおよび鉄心は、鉄心がコイルの中心に引き寄せられるように設計され、鉄心材料の透磁率に応じてリアクタンス値が増大し、その結果故障がより制限される。故障が終了すると、鉄心は、たとえばばね作動により、または重力によるそれ自体の重量により、コイルから機械的に取り除かれる。これらの力のいずれも、故障後は磁力より大きくなければならないが、故障状態中は、鉄心をコイル内に引き寄せることができるために磁気結合力より小さくなければならない。
【0056】
鉄心がその固定された正常動作位置にある間にコイル内にあり、分路のより低いインピーダンスへの回復プロセス中、コイルから出るように移動する図6A〜図6Cの実施形態では、超電導素子が超電導状態に戻っている際に鉄心はコイル内に戻るように移動する。分路巻線のリアクタンスを低減することにより、より多くの電流が分路内に流れ、超電導素子を流れる電流は少なくなり、それにより、超電導素子の回復プロセスが促進される。したがって、鉄心が正常動作時にコイル内で固定して採用されるかまたはコイルの外側で採用されるかにかかわらず、キャンセル原理は同じである。故障状態中は、分路によって大きいインピーダンスが提示され、超電導素子の回復プロセス中は、分路によってより低いインピーダンスが提示される。
【0057】
可変インピーダンス分路のコイルおよび鉄心は、性能を向上させるように異なる構成および材料で製作してもよい。たとえば、先細り形状を使用してもよく、その場合、コイルおよび鉄心はともに先細りの直径を有するように作製される。同じ方向または反対方向の巻線を備える分割コイルおよび/または分割鉄心を用いることも可能である。コイルは、同じ方向に巻回されている場合、同じ軸に沿って近接して配置される場合、両コイルによって発生する磁場を結合する。この技法を通して、コイルの磁場、インダクタンスおよび全体的なインピーダンスを、大幅に増大させることができる。この構成では、図7Aに示すように、中間で接する両鉄心の力を低減するためにばねを用いてもよい。
【0058】
図7Aにおいて、第1のコイル710は第1の鉄心700を取り囲み、第2のコイル711は第2の鉄心701を取り囲み、コイル710、711および鉄心700、701は同様に構成されかつ互いに隣接して同軸状に配置されている。先に説明したように、鉄心およびコイルを異なるモードで使用してもよい。たとえば、鉄心対コイルの位置決めを、超電導限流器の正常超電導状態動作中に、鉄心が完全にコイル内にあるか、部分的にコイル内にあるか、または完全にコイル外にあるが、すべての場合において、鉄心が、故障状態のそれらのより低いインピーダンスへの制限の後にコイルからさらに移動し、それにより負荷下での超電導素子の回復プロセスを促進するようなものであってもよい。
【0059】
図7Aおよび図7Bの実施形態では、コイルおよび鉄心は共通軸に沿って位置合せされ、周囲のあらゆる磁場をさらに結合する。この磁場およびインダクタンスの結合は、位置合せおよびそれらの間に形成する結果としての間隔および角度によって変化する。故障が発生すると、鉄心と巻線との間の引力のために、鉄心は一実施形態ではコイル内に移動する。引力の方向を、コイルの巻回方向によって決めることができる。引力は、ばね力を用いて滑らかに停止することができ、ばねとして弾性材料が用いられる。鉄心は、内側にある場合、より高いインピーダンスを示し、その逆でもある。
【0060】
1つまたは複数の固定されたコイルと1つまたは複数の固定された鉄心とを用いて、可変分路リアクタンス(またはインピーダンス)を実装することも可能である。図8Aは、軟質磁性材料対硬質磁性材料の典型的なヒステリシスループを示し、図8Bは、鉄等の非線形材料の典型的なヒステリシスループを示している。ヒステリシスグラフでは、線がy軸上の磁束密度と交差する場所は、残留磁気(またはより一般には残留磁束密度)を指し、「Br」として示される。これは、印加される磁場強度がゼロである場合の飽和後の磁束密度の値である。同様に、ヒステリシス線がx軸上の磁場強度Hと交差する場所は、保磁力と呼ばれ、「Hc」として示される。この値は、磁束密度がゼロである磁場強度に対応する。B/H線が線形に増大しないため、材料は、次第に大きくなるHの値の後に飽和を示す。したがって、印加される磁場強度レベルが増大する場合、あらゆる有効な透磁率の低減またはB−H曲線の勾配の低減も飽和として知られている。
【0061】
飽和の遅延を回避しかつ飽和時間を反転させるために、ヒステリシス曲線がより急峻である軟質材料が望ましい。しかしながら、本システムを、故意に飽和時間を長くするようにより鋭い飽和曲線を有するように設計することができる。これは、連続した故障が非常に近接しておかれており、超電導素子を回復するために十分な時間がない、複数の故障シーケンスシナリオに対して有用であり、したがって、分路の可変インピーダンスは、より長い期間低いままであるべきである。軟質材料は細いループを有し、高い透磁率を有するため容易に磁化し消磁する。急峻なヒステリシスループの材料を用いて、飽和時間を数ナノ秒まで低減することができる。回路によって課されるdV/dtおよびdI/dtが十分でないために飽和時間が大きすぎる場合、鉄心の断面を変化させることにより飽和時間が低減するかまたは増大する。飽和時間が大きすぎる場合、複数の鉄心を使用することができ、その逆も可能である。
【0062】
本明細書に記載するもののような飽和制御された可変インピーダンス分路を実装するために、種々の鉄心形状を用いることができる。図9では、トロイダル状飽和鉄心900が示されており、分路コイル910がトロイダル状飽和鉄心の周囲に部分的に巻回されている。図10では、一対の固定されたトロイダル状の飽和鉄心1000、1001が採用されており、両飽和鉄心1000、1001の一部の周囲に単一の分路コイル1010が巻回されている。これらの構成で採用される分路コイルは、ワイヤの単層で作製されてもよく、またはより大きいインダクタンスを達成するように多層巻線から作製されていてもよい。
【0063】
後に説明するように、飽和の遅延は、複数の直列に接続された分路段を採用することによって導入することができる。このため、直列接続された分路段は、回路の各それぞれの鉄心に対する飽和の速度を制御する。しかしながら、電流が、故障電流事象中に発生するように十分に高い場合、分路コイルははるかに高いdI/dt率を示すことになるため、飽和遅延は顕著でなくなり、また、飽和がより長い期間となりかつ飽和後の差動残留電圧テール(tail)が長くなる。
【0064】
磁場(およびしたがってそのキャンセル)の大きさの差は、インダクタンスの低減と同様に顕著であり、比例してキャンセルされる。高いインピーダンスと低いインピーダンスとのより広い範囲を達成するために、鉄心が飽和する場合に低いインダクタンス値が望ましい。このため、鉄心が取り除かれる設計に対して、低いインダクタンス値もまた望ましい。この目的で、幅が広く厚さが小さい導体ストリップを使用して、そこを流れている必要な電流に対して断面のサイズが決められている、低い、鉄心のないインダクタンスかまたは飽和鉄心インダクタンスを達成してもよい。
【0065】
固定されたコイルおよび鉄心のインピーダンスの大きさは、鉄心の飽和により高インピーダンスから低インピーダンスに変化する。このインピーダンスの低減により、超電導素子のより高速な回復が可能になる。鉄心材料の飽和点の間に低インピーダンスが維持される。
【0066】
飽和すると、分路のインピーダンスの大きさは、鉄心がコイルの外側に取り除かれた場合、図6A〜図6Cの例において説明したように、鉄心の周囲のコイルの空心インピーダンスに等価である。
【0067】
図11は、故障電流を制限するために、送電網システム等のシステム内で接続された超電導限流器1100の一実施形態を示している。超電導限流器1100は、超電導素子1110と飽和制御された可変インピーダンス分路1120とを有している。この例では、飽和制御された可変インピーダンス分路1120は、上述したように分路コイルおよび可飽和鉄心を備えている。図11の限流器は、図12の超電導限流器1200において例示するような固定インピーダンスZ1を含むように変更してもよい。この実施形態では、超電導限流器1200は、この場合もまた故障電流を制限するようにシステム内に接続されているものと想定される。限流器は、超電導素子1200と、超電導素子と並列な飽和制御された可変インピーダンス分路1220とを有している。固定インピーダンスZ1 1230もまた、図示するように超電導素子と並列であり、超電導限流器を通して既知の最小インピーダンスを提供する。
【0068】
別の実施形態では、各々が、上述した飽和制御された可変インピーダンス分路として構成されそれと並列して固定インピーダンスを有する、異なる直列接続された可変インピーダンス分路段を、図13に示すもののような超電導限流器の超電導素子の前後に並列に接続してもよい。この実施形態では、超電導限流器1300は、直列に接続された4つの飽和制御された可変インピーダンス分路段1320を含み、各段1320に対応する固定インピーダンスZ1、Z2、Z3およびZ4が並列に接続されているように示されている。複数の可変インピーダンス分路段を図示するように直列に接続することにより、いかなる所望のインピーダンスプロファイルにも容易に一致することができる。直列接続された回路全体が、あらゆる瞬間に異なる段の飽和した(または飽和していない鉄心)の関数として等価なインピーダンスの大きさを示す。巻きの数および選択された鉄心材料の特性に基づいて、飽和時間を、要求に応じて当業者が調整することができる。
【0069】
図14は、本発明の態様による超電導限流器1400のさらなる変形を示している。図示するように、超電導限流器1400は、超電導素子1410と、それに並列に結合された可変インピーダンス分路1420とを有している。この実施形態では、可変インピーダンス分路1420は、少なくとも部分的に分路コイルによって包囲されている鉄心の飽和を制御するように配置されたDCコイルを流れる可変DC電流によって制御される。飽和コントローラ1460は、DCコイルに供給されるDC電流の量を制御し、したがって鉄心の飽和を制御する。コントローラ1460は、超電導限流器1400内に示されているが、(一実施態様では)超電導限流器を含む容器の外側に位置している。電流または電圧検知を採用して、故障電流の存在を検知し、可変インピーダンス分路の鉄心の飽和状態へかつ飽和状態からの遷移を制御し、したがって、本明細書に記載したように、分路のインピーダンスの第1の高インピーダンスから第2の低インピーダンスへおよびその逆の遷移を制御することができる。
【0070】
可変制御電流は、種々の方法で、たとえば可変インピーダンスにより、または固体出力電源の切換えを制御することによって達成することができる。この可飽和トポロジは、分路コイルを流れるAC電流の比例制御があることを可能にする。簡単のために、図14において(図16と同様に)、可変抵抗器が示されている。故障電流が存在する場合、コイルおよび鉄心(複数可)は、飽和しないように高インピーダンスを有するように設計されている。故障の時間中または故障の時間の後のあらゆる瞬間において、鉄心は、分路を通してエネルギーを切り換えるように飽和させることができ、分路はその時点で超電導素子より低いインピーダンスを示す。
【0071】
図15は、図14に示すような限流器の一実施態様を示している。この実施態様では、トロイダル状鉄心は、分路コイル1510によって部分的に包囲され、かつ限流器の可変インピーダンス分路のDCコイル1520によって部分的に包囲されている。後にさらに説明するように、これは、鉄心の飽和、したがって分路コイルを通るインピーダンスを制御する多くのあり得る構成のうちの1つの構成を表している。
【0072】
飽和を制御するために、可変インピーダンス分路設計は、故障電流状態からの分路コイルを通る電流の上昇による磁場強度の増大を考慮するべきである。故障中のこの電流の増大もまた、(上述したように)単独で、すなわち、印加される高電流の結果として、磁場強度が鉄心を飽和させるのに十分高くなる場合、鉄心を飽和させる可能性がある。したがって、飽和を制御する能力を有するために、故障状態中の分路コイルにおける電流の増大は、コイルの飽和に影響を与えるべきではない。したがって、分路コイルは、飽和コイルより著しく小さい誘導値を有するべきであり、かつ/または飽和を制御する電流は、分路コイルを流れる故障電流に相当するかまたはそれより高いものであるべきである。結果として、飽和コイルによって発生する磁場強度は、飽和コイルによって生成される磁場強度より常に大きくあるべきであり、それにより飽和プロセスの制御が可能になる。
【0073】
図16に示すように、1つの代替的実施形態では、超電導限流器1600は、超電導素子1610に並列に接続されかつAC飽和コントローラ1660を介して制御される、可変インピーダンス分路1620を有することができる。この手法では、図14の実施形態のDCコイルは、ACコイルに置き換えられ、AC電流の大きさは、故障回復プロセスにおける所望の時点で鉄心を故意に飽和させるように採用される。
【0074】
上述した飽和現象に加えて、いくつかの強磁性材料の透磁率は、同様に周波数によって激しく影響を受ける可能性がある。こうした材料は、他の周波数より高い周波数で著しく低い透磁率を示す。これは、AC飽和制御として用いることができ、そこでは、鉄心は、その側面の1つに(または鉄心の長さに沿って)印加されるAC電流の大きさを増大させることで飽和させることができ、その鉄心の周囲にACコイルが巻回されている。図17では、図示されている超電導限流器1700は可変インピーダンス分路1720を示し、それは、超電導素子1710と並列に電気的に接続され、可変周波数コントローラ1760によって、故障回復プロセスにおける所望の時点で鉄心を飽和させるように制御される。
【0075】
図14〜図17の設計のうちのいずれか1つは、並列固定リアクタンスがあるかまたはなしで、図13に示すように、2つ以上の可変飽和リアクタンス(可変インピーダンス分路)を備える限流器に使用してもよいことを留意されたい。
【0076】
可飽和鉄心(複数可)の飽和は、分路コイルによって部分的に包囲されている可飽和鉄心に必ずしも巻回されていないコイルによって生成される間接磁場を印加することによって、達成することも可能である。可変インピーダンス分路の飽和を開始するために必要な磁場を生成するように、飽和を開始する飽和コイルが(上述したように)鉄心の周囲に巻回されていても、または別の鉄心に巻回されているか否かにかかわらず鉄心の外側であっても、上述した可飽和オプションのすべてを使用することができる。これは、あらゆる可動磁石または制御可能な外部磁場によって外部磁場を印加することによっても達成することができる。鉄心は直線状であってもよく、またはトロイダル構造に類似する形状であってもよい。可飽和コイルおよび分路コイルは、分路コイルによって包囲される鉄心内で飽和の間接的なトリガを達成するように、非常に異なる組合せおよび位置および形状で配置することができる。例として、図18A〜図18Dに、これらの組合せのいくつかを示す。
【0077】
図18Aにおいて、第1の鉄心1800は、分路コイル1810によって部分的に包囲されており、第2の鉄心1801は、図14〜図17に関連して上述したように制御される、飽和コイル1811によって部分的に包囲されている。図18Bにおいて、円柱状鉄心1800’は、分路コイル1810’によって部分的に包囲され、飽和は、飽和コイル1811’を介して磁場を確立することによって間接的に制御される。図18Cにおいて、トロイダル状鉄心1800は、分路コイル1810によって部分的に包囲され、飽和は、トロイダル状鉄心1800を貫通するように示されている飽和コイル1811”によって制御される。図18Dでは、トロイダル状鉄心1800および分路コイル1810は、飽和コイル1811’によって包囲されている。
【0078】
本明細書では、可変インピーダンス分路を可変インダクタに関連するように述べているが、説明した可変インピーダンスは、インピーダンスを変化させることができる3つのあり得る手法、すなわち分路の抵抗値、誘導値および/または容量値を変化させることのうちのいずれかに関連する。抵抗成分、誘導成分および容量成分を含む多数の可変インピーダンス設計が目下存在している。本発明は、わずかな可変誘導性代替物を述べているが、いかなる可変抵抗性インピーダンスまたは容量性インピーダンスも同様に採用することも可能である。可変インピーダンス分路は、本明細書において飽和誘導性負荷で説明したように、所与のインピーダンス勾配に一致するようにグループで配置することができる。したがって、提示する概念は、いかなるトポロジの超電導限流器においても(上述したように)使用される超電導素子と並列なあらゆる可変インピーダンス分路の使用に関連する。本明細書で用いるように、あらゆる可変コンデンサ、インダクタまたは抵抗器設計を採用することも可能であり、それらは、提示する装置のダイナミクスを向上させる。また、いかなる電流損失も回避するように電流周波数の表皮深さと同等の厚さを有する積層鉄心を使用することができる。
【0079】
さらに、本発明の1つまたは複数の制御態様は、たとえばコンピュータ使用可能媒体を有する製品(たとえば1つまたは複数のコンピュータプログラム製品)に含めることができる。そこでは、媒体は、たとえば本発明の機能を提供しかつ促進するコンピュータ可読プログラムコード手段またはロジック(たとえば、命令、コード、コマンド等)を有している。製品は、コンピュータシステムの一部として含めることができ、または別個に販売することができる。
【0080】
本発明の1つまたは複数の制御態様を組み込んでいる製品またはコンピュータプログラム製品の一例は、たとえば、本発明の1つまたは複数の態様を提供しかつ促進するように、コンピュータ可読プログラムコード手段またはロジックを格納する1つあるいは複数のコンピュータ可読媒体を含む。媒体は、電子、磁気、光、電磁気、赤外線あるいは半導体システム(または装置もしくはデバイス)または伝播体であり得る。コンピュータ可読媒体の例として、超伝導体または固体メモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、リジッド磁気ディスクおよび光ディスクが挙げられる。光ディスクの例としては、コンパクトディスク−リードオンリメモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)およびDVDが挙げられる。
【0081】
1つあるいは複数のコンピュータ可読プログラムコード手段またはロジックによって定義される1つあるいは複数の相関するモジュールのプログラム命令または論理アセンブリのシーケンスは、本発明の1つあるいは複数の制御態様の性能を方向づける。
【0082】
さまざまな実施形態を上述しているが、これらは単に例である。
【0083】
さらに、プログラムコードを格納しかつ/または実行するのに適しているデータ処理システムが使用でき、それは、メモリ素子に直接またはシステムバスを介して間接的に結合された少なくとも1つのプロセッサを含む。メモリ素子は、たとえば、プログラムコードの実際の実行中に採用されるローカルメモリ、バルクストレージ、および実行中にバルクストレージからコードを検索しなければならない回数を低減するために、少なくとも一部のプログラムコードを一時的に格納するキャッシュメモリを含む。
【0084】
入力/出力デバイスすなわちI/Oデバイス(限定されないが、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス、DASD、テープ、CD、DVD、サムドライブおよび他のメモリ媒体等を含む)は、システムに、直接または介在するI/Oコントローラを介して結合することができる。データ処理システムは、介在する私設ネットワークまたは公衆ネットワークを介して他のデータ処理システムまたは遠隔プリンタもしくは記憶装置に結合することができるように、システムにネットワークアダプタを結合してもよい。モデム、ケーブルモデムおよびイーサネットカードは、利用可能なタイプのネットワークアダプタのうちのごくわずかである。
【0085】
本発明の1つまたは複数の制御態様の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの何らかの組合せで実装することができる。機械によって読取可能な少なくともプログラム記憶装置であって、機械が本発明の機能を実行するように実行可能な命令の少なくとも1つのプログラムを具現化する、少なくとも1つのプログラム記憶装置を提供することができる。
【0086】
本明細書に示した流れ図は単なる一例である。本発明の趣旨から逸脱することなく、この図およびそこに記載されているステップ(または動作)に対して多くの変形があり得る。たとえば、いくつかのステップは、異なる順序で行ってもよく、またはステップを追加し、削除し、あるいは変更してもよい。これらの変形のすべてが、特許請求された発明の一部とみなされる。
【0087】
本明細書では実施形態を詳細に示しかつ説明したが、当業者には、本発明の趣旨から逸脱することなくさまざまな変更、追加、置換等を行うことができることが明らかとなり、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあるとみなされる。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、限流器に関し、より詳細には、負荷下の超電導素子の回復を容易にするために超電導素子に並列に接続された可変分路インピーダンスを有する超電導限流器に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願情報
本出願は、参照によりすべて本明細書に組み込まれる、SUPER CONDUCTING FAULT CURRENT-LIMITER WITH VARIABLE SHUNT IMPEDANCEと題する2010年1月21日に出願された米国特許出願第12/691,325号明細書の利益を主張する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国エネルギー省によって付与された契約番号DE−F36−03G013033の下、部分的には米国政府の支援を受けてなされたものである。したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有することができる。
【0004】
限流装置は、電力伝送および配電システムにおいて重要である。落雷等のさまざまな理由のために、送電網の一区間において、電流に鋭いサージをもたらす短絡状態が発生する可能性がある。故障電流と呼ばれることが多いこの電流のサージが、送電網システムを通して配備されている開閉機器の保護能力を超えた場合、送電網機器およびシステムに接続されている需要家負荷に破壊的な損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
超電導体、特に高温超電導(HTS)材料は、一定の動作条件の下で「可変インピーダンス」の効果を達成するように操作することができる固有の特性があるため、限流装置で使用されるのによく適している。超電導体は、一定温度および外部磁場範囲(すなわち、「臨界温度」(Tc)および「臨界磁場(Hc)範囲)内で動作する時、そこを流れる電流が一定閾値(すなわち、「臨界電流レベル)(Ic))未満である場合にいかなる電気抵抗も示さず、したがって、「超電導状態」にあると言われる。しかしながら、電流がこの臨界電流レベルを超えると、超電導体は、その超電導状態から「標準抵抗状態」に遷移する。超電導体のその超電導状態から標準抵抗状態へのこの遷移は、「クエンチ」と呼ばれる。クエンチは、3つの要素、すなわち動作温度、外部磁場または電流レベルのうちのいずれか1つまたはいずれかの組合せが対応する臨界レベルを超える場合に発生する可能性がある。これらの3つの要素のうちのいずれか1つまたは組合せを用いて、超電導体を、クエンチを起こすように誘導しかつ/または強制する機構は、通常、トリガ機構と呼ばれる。
【0006】
超電導体のクエンチ中にいかなる熱的損傷または構造的損傷もなかった場合に、クエンチを起こした超電導体は、動作環境をその臨界電流、臨界温度および臨界磁場範囲内にすることにより、その超電導状態に戻すことができる。液体ヘリウム温度(4°K)近くで動作する低温超電導(LTS)材料と比較して、HTS材料は、液体窒素温度(77°K)近くで動作することが可能である。したがって、HTS材料は動作温度範囲がより高くかつ広いため、その操作特性がはるかに容易である。
【0007】
バルクBSCCO、YBCOおよびMgB2等のいくつかのHTS材料の場合、超電導体の体積内に、製造プロセスからもたらされる不均一領域が存在することが多い。こうした不均一領域は、超電導体の臨界電流レベルを超える電流のサージ中に、いわゆる「ホットスポット」になる可能性がある。本質的に、電流によるクエンチの初期段階では、超電導体体積のいくつかの領域は、不均一であるために他の領域より前に抵抗を有するようになる。抵抗領域は、これらの不均一領域においてその関連するI2R損失から熱を発生する。発生する熱がその周囲領域および環境に十分迅速に伝播されない場合、局所加熱が超電導体に損傷を与え、超電導体素子全体の破壊(バーンアウト)をもたらす可能性がある。
【0008】
参照によりすべて本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された「Matrix-Type Superconducting Fault Current-limiter」と題する2003年12月16日に発行された米国特許第6,664,875号明細書は、超電導体のクエンチを起こす要素のうちの3つすべて、すなわち、電流、磁場および温度を組み合わせて、限流中に超電導体のより均一なクエンチを達成する機構を使用する。このいわゆるマトリクス型超電導限流器(MFCL)概念は、超電導体体積に存在する不均一性によるバルク超電導材料におけるバーンアウトの危険を劇的に低減することができる。さらに、障害の検出およびMFCLの限流インピーダンスの後続する起動は、能動制御機構の支援なしに、組込マトリクス設計によって受動的に行われる。これにより、MFCL概念に基づく限流器が、広範囲のあり得る限流用途に対して、より容易に設計され、構築されかつ操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,664,875号明細書
【特許文献2】米国特許第6,809,910号明細書
【特許文献3】米国特許第6,958,893号明細書
【特許文献4】米国特許第7,283,339号明細書
【特許文献5】米国特許第7,440,244号明細書
【特許文献6】米国特許第6,190,752号明細書
【発明の概要】
【0010】
高い障害電流によってもたらされるHTS材料における過度の加熱は、分路インピーダンスを用いてHTS素子からの電流を分路インピーダンスに分流させることによって最小限にされる。いくつかの超電導限流器(SCFCL)設計では、2つの外部巻線(コイル)が、1つはトリガ磁場を発生させるために、1つは分路インピーダンスとして使用される。HTS素子毎に2つのコイルを使用することによる多数の構成要素(部品)により、設計の複雑性が加算され、それは、生産性、サイズ、重量、巻線および相互接続出力損失ならびに高圧設計の領域において問題となる。
【0011】
簡単に要約すると、一態様では、本発明は、超電導素子、および、超電導素子に並列に電気的に結合されている少なくとも1つの可変インピーダンス分路を有する超電導限流器を含む。超電導素子は、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成されており、少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、超電導素子の超電導状態中は第1のインピーダンスを示し、超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中は第2のインピーダンスを示すように構成されている。動作時、超電導素子は、故障電流に応じて超電導状態から標準抵抗状態に遷移し、それに応じて、少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移し、第2のインピーダンスは、第1のインピーダンスより低いインピーダンスである。少なくとも1つの可変インピーダンス分路を第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへ遷移させることにより、負荷下の超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進される。
【0012】
別の態様では、本明細書において、直列に電気的に接続されている複数の限流モジュールを有する超電導限流器が提示される。各限流モジュールは、少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に制限するように構成された少なくとも1つの超電導体セグメントを備える。超電導限流器はさらに、複数の可変インピーダンス分路を備える。各可変インピーダンス分路は、複数の限流モジュールのうちのそれぞれの限流モジュールに関連付けられ、故障電流中に第1のインピーダンスを示し、関連する限流モジュールの少なくとも1つの超電導素子の少なくとも1つの超電導体セグメントの標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように構成されている。複数の限流モジュールの超電導体セグメントは合わせて、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することによって故障電流を制限し、それに応じて、複数の可変インピーダンス分路は、第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移し、第2のインピーダンスは第1のインピーダンスより低い分路インピーダンスである。第2のインピーダンスへのこの遷移により、それぞれの限流モジュールの少なくとも1つの超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、それぞれの可変インピーダンス分路を流れる電流の流れが促進され、それにより、負荷下での少なくとも1つの超電導素子の回復が促進される。
【0013】
さらなる態様では、超電導限流器を製造する方法が提供される。この方法は、超電導素子と少なくとも1つの可変インピーダンス分路とを並列に電気的に接続するステップであって、超電導素子が、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成され、少なくとも1つの可変インピーダンス分路が、故障電流中に第1のインピーダンスを示し、超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように製造される、ステップを含み、少なくとも1つの可変インピーダンス分路の第2のインピーダンスは、第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、少なくとも1つの可変インピーダンス分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移により、故障電流を制限した後の超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中の少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより負荷下の超電導素子の回復が促進される。
【0014】
さらに、さらなる特徴および利点は、本発明の技法によって具現化される。本発明の他の実施形態および態様は、本明細書に詳細に記載されており、特許請求された発明の一部であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
発明としてみなされる主題は、特許請求の範囲において特に示されかつ明瞭に請求される。本発明の上述したかつ他の目的、特徴および利点は、添付図面に関連して以下の詳細な説明から明らかである。
【0016】
【図1】本発明の態様による、超電導限流器に採用される高温超電導セグメントの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の態様による、1つまたは複数の超電導限流器を採用する送電網システム等の電気系統の一実施形態の概略図である。
【図3】本発明の態様による超電導限流器の1つの動作実施態様の流れ図である。
【図4】本発明の態様によるマトリクス型超電導限流器の概略図であり、ここでは可変インピーダンス分路が、マトリクス型超電導限流器の各限流モジュール内の超電導素子に並列に結合されている。
【図5A】本発明の態様による別のマトリクス型超電導限流器の部分立面図である。
【図5B】本発明の態様による、図5Aのマトリクス型超電導限流器の部分的に組立分解された部分斜視図である。
【図6A】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図6B】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図6C】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図である。
【図7A】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図7B】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図8A】軟質磁性材料対硬質磁性材料に対する磁気対磁場強度をプロットしている典型的なヒステリシスループのグラフである。
【図8B】鉄等の非線形磁性材料に対する典型的なヒステリシスループを示す図である。
【図9】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の別の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の態様による、図2に示すような超電導限流器用の可変インピーダンス分路の代替的実施形態を示す図である。
【図11】本発明の態様による超電導限流器の別の実施形態の概略図であり、ここでは飽和制御された可変インピーダンス分路が超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図12】本発明の態様による超電導限流器の代替的実施形態の概略図であり、ここでは飽和制御された可変インピーダンス分路および固定インピーダンスがともに超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図13】本発明の態様による超電導限流器のさらなる実施形態の概略図であり、ここでは複数の直列接続された可変インピーダンス分路段が超電導素子に並列に電気的に接続されている。
【図14】本発明の態様による超電導限流器の別の実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御するDC飽和コントローラを備えた飽和コントローラが示されている。
【図15】本発明の態様による、図14の可変インピーダンス分路の一実施形態を示す図であり、ここでは分路コイルおよび飽和コイルがともに、共通のトロイダル形状可飽和鉄心を部分的に包囲している。
【図16】本発明の態様による、可変インピーダンス分路の代替的実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御するAC飽和コントローラを備える飽和コントローラが示されている。
【図17】本発明の態様による、超電導限流器のさらなる実施形態の概略図であり、ここでは超電導素子に並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路の飽和を制御する周波数飽和コントローラを備える飽和コントローラが示されている。
【図18A】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18B】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18C】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【図18D】本発明の態様による、超電導素子の回復プロセス中に分路の第1のインピーダンスから第2のインピーダンスへの遷移を容易にする、可変インピーダンス分路の可飽和鉄心の間接的な、磁場によってトリガされる飽和に対する飽和制御構成の代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
さまざまな従来の出願および特許が、超電導限流器に対するクエンチトリガ機構に焦点を当てている。たとえば、参照によりすべて本明細書に組み込まれる米国特許第6,809,910号明細書、米国特許第6,958,893号明細書、米国特許第7,283,339号明細書、および、米国特許第7,440,244号明細書を参照されたい。対照的に、本発明は、障害電流の制限に続いて負荷下の超電導素子の回復が向上した超電導限流器に関する。
【0018】
いくつかの超電導限流器トポロジは、並列インピーダンスリアクタンスを採用して、障害電流をさらに制限し、超電導素子がそのインピーダンス状態を超電導状態から標準抵抗状態に変化させる場合に、一定量の電流が流れるのを可能にする。分路リアクタンスが採用される場合、障害制限中にクエンチダイナミクスを増大させるために、高インピーダンス値が必要である。しかしながら、障害状態が発生した後、および超電導素子の回復時間中、高い分路リアクタンスは望ましくなく、それは、標準抵抗状態から超電導状態への回復プロセスをより困難にするためである。したがって以下、超電導限流器であって、障害遷移中に高いインピーダンスを示し、超電導素子の回復プロセス中、障害電流がクエンチした後に、異なるより低い(または最小の)インピーダンスを示す、その超電導素子に並列な可変インピーダンス分路を有する超電導限流器について説明する。
【0019】
本明細書に記載する超電導限流器は、いかなる低温超電導材料または高温超電導材料で採用されてもよい。しかしながら、本明細書に提示する超電導限流器の超電導素子(複数可)内の超電導体セグメント(複数可)として高温超電導体(HTS)を採用することによって、利益が得られる。こうした導体は、今日、障害電流に応じて自己トリガする、すなわち、障害電流自体のより高い電流値に基づいて障害電流を制限するために、状態を超電導状態から標準抵抗状態に変化させるように構成することができる。超電導限流器についてさらに説明する前に、(本明細書で説明するような)超電導素子用のHTS超電導体セグメントについて、図1を参照して以下に説明する。
【0020】
図1を参照すると、本発明による、超電導限流器の超電導素子または超電導素子の一部(たとえば、複数のこうした超電導体セグメントと並列である)として採用することができるHTS導体100の概略層化構造が示されている。HTS導体100は、基板110と、基板110の上に重なる緩衝層111と、HTS層112と、それに続くキャップ層114(通常貴金属層)と、安定化層116(通常非貴金属層)とを含む。図1に示す実施形態では、緩衝層111、HTS層112、キャップ層114および安定化層116を、まとめて超電導領域と呼び、それは、図示するように基板110の1つの主面に沿って配置されている。
【0021】
基板110は通常、テープ状構造であり、アスペクト比が高い。たとえば、テープの幅は、通常およそ2mm〜12mmであり、テープの長さは、通常少なくとも約100mm、最も典型的には約500mを超える。したがって、基板は、およそ103以上またはさらには104以上の、極めて高いアスペクト比を有することができる。いくつかの実施形態はより長く、アスペクト比は105以上である。本明細書で用いる「アスペクト比」という用語は、基板またはテープの長さの次に長い寸法、すなわち基板またはテープの幅に対する比を意味するように用いている。
【0022】
一実施形態では、基板は、HTSテープの構成層が後に堆積するのに望ましい表面特性を有するように処理される。たとえば、表面は、所望の平坦さおよび表面粗さに対して軽く研磨することができる。さらに、既知のRABiTS(roll assisted biaxially textured substrate)技法による等、本技術分野において理解されるように二軸配向するように処理してもよい。
【0023】
緩衝層111に関し、緩衝層は、単層であってもよく、またはより一般的には、複数のフィルムから構成されていてもよい。最も典型的には、緩衝層は、二軸配向フィルムを含み、そのフィルムは概して、フィルムの面内および面外の両方において結晶軸に沿って位置合せされている結晶組織を有している。こうした二軸配向は、IBADによって達成することができる。この技術分野において理解されるように、IBADは、イオンビームアシスト蒸着(Ion Beam Assisted Deposition)の頭字語であり、それは、優れた超電導特性のために望ましい結晶配向を有するHTS層の後続する形成のために、適切に配向された緩衝層を形成するために有利に利用することができる技法である。酸化マグネシウムが、IBADフィルムに対して選択される典型的な材料であり、50オングストロームから200オングストローム等、およそ50オングストロームから500オングストロームであり得る。一般に、IBADフィルムは、参照によりすべて本明細書に組み込まれる米国特許第6,190,752号明細書に定義されかつ記載されているように、岩塩状結晶構造を有している。
【0024】
緩衝層は、IBADフィルムと基板とに直接接触しかつそれらの間に配置されるように提供されるバリアフィルム等、追加のフィルムを含むことができる。これに関して、バリアフィルムは、有利にはイットリア等の酸化物から形成することができ、バリアフィルムは、IBADフィルムから基板を隔離するように機能する。バリアフィルムは、窒化ケイ素および炭化ケイ素等の非酸化物から形成してもよい。バリアフィルムを堆積させるのに適している技法には、化学気相成長およびスパッタリングを含む物理気相成長が挙げられる。バリアフィルムの典型的な厚さは、約100オングストローム〜200オングストロームの範囲内であり得る。さらに、緩衝層はまた、IBADフィルムの上に形成されたエピタキシャル成長フィルムも有することができる。これに関して、エピタキシャル成長フィルムは、IBADフィルムの厚さを増大させるのに有効であり、望ましくは、主にMgO等、IBAD層に利用されるものと同じ材料から作製することができる。
【0025】
MgO系IBADフィルムおよび/またはエピタキシャルフィルムを利用する実施形態では、MgO材料と超電導層の材料との間に格子不整合が存在する。したがって、緩衝層は、別の緩衝フィルムをさらに含むことができ、これは特に、HTS層と下にあるIBADフィルムおよび/またはエピタキシャルフィルムとの間の格子定数の不整合を低減するように実施される。この緩衝フィルムは、YSZ(イットリア−安定化ジルコニア)ルテニウム酸ストロンチウム、マンガン酸ランタンおよび一般に、ペロブスカイト構造セラミック材料等の材料から形成することができる。緩衝フィルムは、さまざまな物理気相成長技法によって堆積させることができる。
【0026】
上述したことは、主に、IBAD等の配向プロセスによる緩衝スタック(層)における二軸配向フィルムの実施態様に焦点が当てられているが、あるいは、基板表面自体を二軸配向させてもよい。この場合、緩衝層は概して、緩衝層に二軸配向を保持するように配向基板の上にエピタキシャル成長する。二軸配向基板を形成する1つのプロセスは、本技術分野において一般に理解されている、本技術分野においてRABiTS(roll assisted biaxially textured substrate)として知られているプロセスである。
【0027】
高温超電導体(HTS)層112は、通常、液体窒素の温度77°Kを超える超電導特性を示す高温超電導材料のうちのいずれから選択される。こうした材料としては、たとえば、YBa2Cu3O7−x、Bi2Sr2Ca2Cu3O10+y、Ti2Ba2Ca2Cu3O10+yおよびHgBa2Ca2Cu3O8+yが挙げられる。材料の一種にはREBa2Cu3O7−xが含まれ、REは希土類元素である。上述したもののうち、一般にYBCOとも呼ばれるYBa2Cu3O7−xを有利に利用することができる。HTS層112は、厚膜形成技法および薄膜形成技法を含むさまざまな技法のうちのいずれかによって形成することができる。好ましくは、高堆積速度に対して、パルスレーザ堆積(PLD)等の薄膜物理気相成長技法を使用することができ、またはより低コストかつより広い表面積の処理のために、化学気相成長技法を使用することができる。通常、HTS層は、HTS層112に関連する望ましいアンペア定格を得るために、約2ミクロンから約10ミクロン等、およそ約1ミクロンから約30ミクロン、最も典型的には約2ミクロンから約20ミクロンの厚さである。
【0028】
キャップ層114および安定化層116は概して、電気的安定性のため、すなわち実際に使用する際にHTSバーンアウトの防止を支援するために実装される。より詳細には、層114および116は、冷却が失敗するかまたは臨界電流密度を超え、かつHTS層が超電導状態から移動して抵抗を有するようになった場合に、電荷がHTS導体に沿って流れ続けるのを支援する。通常、安定化層(複数可)とHTS層112との間の望ましくない相互作用を防止するために、キャップ層114に対して貴金属が利用される。典型的な貴金属としては、金、銀、白金およびパラジウムが挙げられる。銀が、コストおよび一般的な利用しやすさのために通常使用される。キャップ層114は通常、安定化層116からの成分のHTS層112内への望ましくない拡散を防止するために十分厚いように作製されるが、コストの理由で(原材料コストおよび処理コスト)一般に薄く作製される。キャップ層114の典型的な厚さは、0.5ミクロンから約5.0ミクロン等、約0.1ミクロンから約10.0ミクロン内の範囲である。キャップ層114の堆積のために、DCマグネトロンスパッタリング等、物理気相成長を含むさまざまな技法を使用することができる。
【0029】
本発明の実施形態の特定の特徴によれば、安定化層116は、超電導層112の上に重なるように、特に図1に示す実施形態ではキャップ層114の上に重なりかつ直接接触するように組み込まれる。安定化層116は、苛酷な環境条件および超電導クエンチに対して安定性を強化するように保護/分路層として機能する。この層は、概して高密度であり、熱伝導性かつ導電性を有し、超電導層における故障の場合に電流をバイパスさせるように機能する。従来、こうした層は、はんだまたはフラックス等の中間接合材料を使用することにより、予備成形された銅ストリップを超電導テープの上に積層することによって形成されてきた。他の技法は、物理気相成長、典型的にはスパッタリングに焦点が当てられてきた。しかしながら、こうした付与技法は、コストがかかり、大規模生産作業の場合は特に経済的に実現可能ではない。実施形態の特定の特徴によれば、安定化層116は電気めっきによって形成される。この技法によれば、電気めっきを使用して、超電導テープの上に材料の厚い層を迅速に蓄積させることができ、それは、熱伝導性かつ導電性金属の稠密層を有効に生成することができる比較的低コストのプロセスである。1つの特徴によれば、安定化層は、融点が約300℃未満であるはんだ層(フラックスを含む)等、中間接合層を利用するかそれに依存することなくかつそれを利用することなく堆積する。
【0030】
電気めっき(電着としても知られる)は一般に、堆積させるべき金属のイオンを含む溶液に超電導テープを浸漬することによって行われる。テープの表面は外部電源に接続され、電流が表面から溶液内に流され、以下のように、電子(e−)を有する金属イオン(Mz−)の反応により金属(M)が形成される。
Mz−+ze−=M
【0031】
キャップ層114は、その上に銅を堆積させるための第2の層として機能する。安定化金属の電気めっきの特定の場合、超電導テープは一般に、硫酸銅溶液等の第2銅イオンを含む溶液に浸漬される。キャップ層114に電気的接触がなされ、電流が流され、それにより、キャップ層114の表面において反応Cu2++2e−→Cuが発生する。キャップ層114は、溶液における陰極として機能し、金属イオンがCu金属原子に還元されテープ上に堆積するようにする。一方、銅を含む陽極が溶液内に配置され、そこで酸化反応が発生し、銅イオンが溶液内に進み還元されて陰極に堆積する。
【0032】
いかなる二次反応もない場合、電気めっき中に導電性面に運ばれる電流は、堆積する金属の量に正比例する(ファラデーの電気分解の法則)。この関係を使用して、安定化層116を形成する堆積材料の質量、したがって厚さを容易に制御することができる。
【0033】
上述したことは、概して銅に言及しているが、アルミニウム、銀、金および他の熱伝導性かつ導電性金属を含む他の金属を利用してもよいことが留意される。しかしながら、一般に、超電導テープを形成するために全体的な材料コストを低減するように非貴金属を利用することが望ましい。
【0034】
上述した説明および図1は、超電導テープの一方の面に沿って安定化層116を形成する電気めっきについて述べているが、超電導テープの反対側の主面をコーティングしてもよいことも留意され、実際には、構造の全体を封止するようにコーティングすることができる。当業者は、図1のHTS導体100の上述した説明が単に例として提供されていることを留意するであろう。後述する超電導素子は、本明細書とともに提供する特許請求の範囲から逸脱することなく、あらゆる適切な超電導テープまたはバルク材料を利用することができる。
【0035】
図2は、本発明の態様による、1つまたは複数の超電導限流器210を含む、配電システムまたは配電網等の電気系統200の一実施形態の概略図である。一例として、電気系統は送電網であり、システム電圧220が、伝送ラインおよび/または配電ライン(システムインピーダンス221を有する)ならびに超電導限流器210を横切って負荷インピーダンス230に供給される。超電導限流器210は、超電導素子240とそれに並列に電気的に接続されている可変インピーダンス分路250とを備えている。図示するように、後にさらに説明するように可変インピーダンス分路の(たとえば)第1の高インピーダンスから第2の低インピーダンスへの遷移およびその逆を制御するように、コントローラ260を任意に設けることができる。コントローラ260の存在および実施態様は、採用される可変インピーダンス分路の特定の実施態様によって決まる。(たとえば、さまざまな実施態様において、コントローラ260は、可変インピーダンス分路を通してインピーダンスを制御する、コンピュータ実装コントローラならびに電流および/または電圧センサを備えていてもよい。)いくつかの可変インピーダンス分路は、高い故障電流の制限に応じて第1のインピーダンスから第2のインピーダンスに遷移するように固有に構成されているため、制御機構が必要ではない。
【0036】
図示するように、負荷電流IL(t)が負荷インピーダンス230に電力を供給する。短絡故障電流IF(t)等の故障電流270の発生時、短絡により全電流IT(t)が著しく増大する。本明細書に記載する実施形態では、超電導限流器および特に超電導素子240は、超電導状態から標準抵抗状態にクエンチするかまたは遷移することにより、この故障電流を抵抗により制限するように構成されている。
【0037】
図3は、図2に関連して上述したような、超電導限流器の動作実施形態の流れ図である。図示するように、超電導素子は、通常、超電導状態で動作し、超電導素子と並列な可変インピーダンス分路は、第1の高インピーダンスを示している300。電気系統内で故障電流が発生する310と、超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移して超電導体のクエンチにより電流を制限することによって応答する320。続いて、超電導素子の回復プロセス中、可変インピーダンス分路が、第1の高インピーダンスを示すことから第2の低インピーダンスを示すように遷移し(または遷移させられ)、分路を通る電流の流れ、したがって負荷下の超電導素子の回復を促進する330。超電導素子が事前に定義された最小電流レベル(または通常超電導素子を流れている電流の最小パーセンテージ)まで回復すると、可変インピーダンス分路は、第2の低インピーダンスから第1の高インピーダンスに戻るように遷移する340。これにより、超電導素子が完全に超電導状態まで回復する前に(第1の故障電流を制限した後に)第2の故障電流が発生した場合、可変インピーダンス分路が第1の高インピーダンスレベルにあることが保証される。
【0038】
上述したように、(本発明による)超電導限流器は、可変インピーダンス分路と並列に結合された、HTS素子等の少なくとも1つの超電導素子を有している。可変インピーダンス分路は、(一実施形態では)超電導限流器の基本構造を形成するように超電導素子と並列に結合された分路コイルを備えている。さらに後述するように、分路コイルの可変インピーダンスは、関連する鉄心に対する分路コイルの機械的移動、または関連する鉄心の制御された飽和を含む、複数の種々の手法を用いて実施することができる。
【0039】
標準動作状態下では、超電導素子には抵抗がなく、したがって、すべての電流が超電導素子を流れる。したがって、構成全体にわたって電圧降下がなく、並列接続された可変インピーダンス分路には電流が流れない。しかしながら、故障電流が発生すると、電流サージが超電導素子の臨界電流レベルを超過し、超電導素子を即座にクエンチさせ、したがって、可変インピーダンス分路の前後に十分に大きい電圧降下を発生させ、その結果、電流全体の一部が分路に分流する。分路は、超電導体によって生成された電圧を制限するように作用し、総電流負荷を共有することにより、超電導体が過熱せず、故障が除去されるか部分的に除去されるとその正常状態に迅速に戻ることができることを保証する。有利には、分路は、そのインピーダンスが、超電導体の故障電流からの回復プロセスの少なくとも一部の間に変化するように制御される。
【0040】
特に、可変インピーダンス分路は、第1の高インピーダンスレベルから第2の低インピーダンスレベルに遷移して、初期回復プロセスを促進する。超電導素子を通る回復電流の流れが閾値レベル(または閾値パーセンテージ)に達すると、可変インピーダンス分路のインピーダンスは、第1の高インピーダンスレベルに戻るように遷移する。これにより、超電導素子が第1の故障電流から完全に回復していない(すなわち、部分的にしか回復していない)にもかかわらず、超電導限流器が後続する故障電流を処理することができることが確実になる。一実施態様では、超電導素子を介して標準動作電流レベルの10%〜90%が回復されると、可変インピーダンス分路を、第1の高インピーダンスレベルに戻るように遷移させることができる。しかしながら、用途に応じて、他の閾値パーセンテージまたは閾値電流レベル設定を採用することができる。
【0041】
基本モジュールとして上述した構成を用いて、マトリクス型限流器は、こうしたモジュールの少なくとも1つの行および少なくとも1つの列を有するように構成することができ、そこでは、各モジュールは、各列においてモジュール同士で並列に結合され、各列は、列同士で直列に結合される。こうした超電導限流器のモジュール性により、超電導限流器が、それが接続する電力系統の高電圧かつ/または高電流動作環境に適用可能となる。
【0042】
図4は、図2に関連して上述した基本限流器の「n」行および「m」列を含むマトリクス型超電導限流器400の例示的な実施形態を示している。行1、列1では、可変インピーダンス分路は、直列の抵抗器R11および可変インダクタL11によって示されており、それらは合わせて、超電導素子RS11の可変抵抗と並列である。行2、列1では、可変インピーダンス分路は、抵抗器R21と直列接続された可変インダクタンスL21とによって示されており、超電導素子は、可変抵抗RS21によって示されている。行「n」、列1では、可変インピーダンス分路は、可変インダクタンスLn,1と直列の抵抗器Rn,1によって示されており、超電導素子は、可変抵抗RSn,1によって示されている。それに対応して、行「n」、列「m」では、可変インピーダンス分路は、可変インダクタンスLn,mと直列の抵抗器Rn,mによって表されており、超電導素子は、可変抵抗RSn,mによって表されている。
【0043】
基本限流器のこの配置から、論理的に、マトリクス型限流器が、非常にモジュール性が高くかつスケーラブルであることが可能であり、それにより、超電導限流器アセンブリを、さまざまな限流用途要件に適応するように設計しサイズを決めることができるということになる。このマトリクス型超電導限流器は、そのモジュール性により、それが接続する電力系統の高電圧かつ/または高電流動作要件に極めて適応可能となる。高電圧用途の場合、全電圧は、マトリクスアセンブリの複数の列の間に分割され、それにより、さまざまな高電圧絶縁要件を満たすようなマトリクス型超電導限流器の誘電性設計が実質的に簡略化する。さらに、異なる数の行および列の組合せを用いて、高電圧かつ高電流動作要件と種々の限流要件との両方を有する用途に対処することができる。
【0044】
次に、マトリクス型超電導限流器を組み込んだ電力系統の動作を説明する。上述したように、分路を用いて、クエンチした後の各超電導素子の前後に発生する可能性がある最大電圧降下が制限される。故障電流の一部が、超電導素子から分路内に分流され、したがって、I2R損失の形態で超電導素子において発生する熱を低減し、それによって超電導素子に対しあり得る熱的損傷および機械的損傷から保護する。これにより、超電導素子の熱的回復と、したがって故障が除去されてからの限流器の回復時間とが改善され、発生する電圧が分路によって制限されるため、超電導素子のそのクエンチおよび後続する状態の間の温度上昇も制限される。有利には、本発明によれば、分路は可変インピーダンス分路であり、分路におけるインピーダンスは、故障電流を制限した後に超電導素子の回復段階中により低いインピーダンスが示されるように制御される。このようにインピーダンスが低下することにより、超電導素子が回復している間に電流の多くの部分を分路に分流させることによって、超電導素子が負荷下でよりよく回復することができる。
【0045】
図4に示すマトリクス構成では、結合された超電導体臨界電流レベルは、正常動作中は限流器400の行の数「n」に対応し、公称AC動作電流のピークに、電力系統によって必要とされるあらゆる過電流容量を足したもの以上であるように設計される。限流器の各行における限流器モジュールは、この全システム電流の約1/nを留意する。各限流器内では、可変インピーダンス分路は、正常動作状態中は高インピーダンスを有し、超電導素子の回復プロセス中は低インピーダンスを有するように設計されている。この低インピーダンスは、電流が可変インピーダンス分路内に向けられるように、超電導素子のクエンチした抵抗より実質的に低いように設計され、それにより、超電導素子が負荷下でより容易に回復することができる。上述したように、システム電流はその臨界電流レベル未満であるため、限流器は、電力系統の正常動作中いかなる電気抵抗も示さず、それにより、限流器の前後にいかなる電圧降下ももたらされない。したがって、いかなる電流も可変インピーダンス分路内に分流せず、そのため、正常動作中、可変インピーダンス分路においていかなる電力損失も発生しない。
【0046】
電力系統において故障が発生すると、マトリクス型超電導限流器を流れるサージ電流が、正常動作電流の何倍にまで増大する。その結果として、超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態への遷移を開始する(「クエンチ」とも呼ばれる)。このクエンチ状態において超電導素子によって生成される抵抗またはインダクタンスにより、超電導素子の前後に電圧が発生する。そして、この電圧により、可変インピーダンス分路に流れる電流が発生し、それは、それら可変インピーダンス分路が超電導素子に並列に電気的に結合されているためである。初期クエンチが開始すると、超電導素子内の後続するI2R加熱がクエンチプロセスに寄与する。合わせて、電流サージおよび温度上昇が、超電導素子の高速かつ均一なクエンチを促進し、材料欠陥によるバーンアウトを防止するように動作する。マトリクス型超電導限流器のモジュール性が、設計における組込冗長性を提供し、それにより、限流器におけるいかなる個々の超電導体(または超電導素子)の故障も、装置全体の故障をもたらすことがない。
【0047】
回復プロセス中の可変インピーダンス分路の第1の高インピーダンスレベルから第2の低インピーダンスレベルへの遷移により、システム内の電流を可変インピーダンス分路に一時的に分流させて負荷への電流の連続した供給を可能にすると同時に、超電導素子の超電導状態への回復を促進することにより、個々の超電導素子の回復が促進される。実施態様に応じて、たとえば、回復プロセス中のいずれかの定義された時点で、超電導素子を流れる電流が定義されたレベルに達すると、可変インピーダンス分路のインピーダンスが正常動作インピーダンス、すなわち電流が分路に流れるのを抑制する高いインピーダンスに戻される。
【0048】
この構造の利点は多い。たとえば、マトリクス型超電導限流器の正常動作中、I2R損失はわずかであり、限流器は、正常システム動作にいかなる影響も与えない。図4に示しかつ上述した実施態様は、容易なスケーラビリティおよび製造可能性のために本質的にモジュール式であり、それは、基本限流器を、さまざまな用途要件に適応するように「n」行×「m」列のマトリクス構成で配置することができるためである。さらに、可変インピーダンス分路を採用して、故障電流の回復プロセスに続く制限が改善され、それにより負荷下で超電導状態により高速に戻ることができる。実施態様に応じて、本明細書に記載するマトリクス型超電導限流器を、能動的な故障検知および制限制御機構なしに限流機能を行うように構成することができる。
【0049】
図5Aおよび図5Bに、マトリクス型超電導限流器の1つの実際的な実施態様を示す。この例では、各限流モジュール(または列)は、少なくとも1つの超電導素子と並列に単一の可変インピーダンス分路を採用しており、超電導素子の各々は複数の超電導体セグメントを備えている。
【0050】
まず図5Aを参照すると、マトリクス型超電導限流器が示されており、(たとえば図4のマトリクス例の限流器の列を備える)限流モジュール500は、この構成では1つまたは複数の直列の電気的に接続された超電導素子510を備えており、その各々は、可変インピーダンス分路510に並列に結合されている超電導テープの複数の層等、複数の超電導体を備えている。これらの限流モジュールは、第1の主接続Aと第2の主接続Bとの間に直列に接続されている。各限流モジュール500内の超電導体のサイズ、構成および数は、特定の実施態様の高電圧かつ高電流動作要件と種々の限流要件とに応じて変化する可能性がある。一例では、各超電導体層(またはテープ)はHTS導体を備えている。
【0051】
図5Bは、図5Aに部分的に示すマトリクス型超電導限流器の部分的に組立分解された断面図を示している。この実施形態では、主接点Aと主接点Bとの間に直列に接続されている個々の限流器モジュール500は、マトリクスを収容するようにサイズが決められている容器530から突出している。例として、単一の限流モジュール500が容器530内の適所に示されている。図示するように、電力線531、532が、マトリクス540にマトリクスへの主接続AおよびBを介して接続している。この実施態様では、単相限流構造が示されている。3相実施形態では、各相は、図示するような限流構造を有する。あるいは、3相実施態様の各相に対する限流構造が単一容器内に含まれるように、容器を再構成することができる。動作時、液体窒素等の冷却剤が、容器を通して圧送され、それにより、超電導素子が超電導状態を確立しその状態を維持することに寄与する温度であり続けることが確実になる。本明細書に記載する超電導限流器は、個々の超電導素子の超電導状態から標準抵抗状態へのクエンチにより、故障電流を抵抗によりまたは誘導により制限する。この抵抗による制限または誘導による制限により、容器内の温度が上昇し、この温度上昇は、容器内を圧送される液体窒素によって除去される。
【0052】
当業者は、上記説明から、図5Aおよび図5Bの特定の実施形態が、本明細書に提示するマトリクス型超電導限流器の単なる一例であることを留意するであろう。より一般的には、これらの図に示す直列接続された複数の限流モジュールを、単一の可変インピーダンス分路に並列な単一超電導素子として実装してもよい。超電導体(または超電導素子)の数および可変インピーダンス分路の数は、問題になっている限流実施態様に応じて変化してもよい。
【0053】
図6A〜図18Dは、本発明による限流器(またはその可変インピーダンス分路)のさまざまな実施態様を示している。最初に、図6A〜図7Bを参照すると、機械的に制御される可変インピーダンス分路が記載されており、残りの図は、飽和制御される可変インピーダンス分路のさまざまな実施形態を提示しており、それらのいずれも本発明による限流器で使用することができる。
【0054】
まず図6A〜図6Cを参照すると、円柱状鉄心600とその鉄心の少なくとも一部を包囲するように巻回されたらせんコイル610とを備えている可変インピーダンス分路の一実施形態が示されている。可変インピーダンスは、透磁率が空気より大きいと想定される鉄心により種々の技法を用いて得られる。動作時、鉄心600は、典型的にはらせんコイル610内で固定されていると想定され、使用される鉄心材料およびコイルの透磁率に基づいて最初から高インピーダンス値を有している。故障電流が発生すると、図示するように同軸状に配置されている鉄心600およびコイル610は、たとえば、超電導素子による故障電流のクエンチに応じて、機械的アクチュエータ(図示せず)を採用して分離される。この移動を図6Bおよび図6Cに示し、そこでは、鉄心600およびコイル610が離れるように移動すると、インピーダンスは低下し続ける。
【0055】
別の手法では、故障電流がない場合、鉄心をコイルの外側に配置して固定してもよい。故障電流に応じて、鉄心およびコイルを、鉄心が少なくとも部分的にコイル内にあるように移行させてもよい。この手法では、コイルおよび鉄心は、鉄心がコイルの中心に引き寄せられるように設計され、鉄心材料の透磁率に応じてリアクタンス値が増大し、その結果故障がより制限される。故障が終了すると、鉄心は、たとえばばね作動により、または重力によるそれ自体の重量により、コイルから機械的に取り除かれる。これらの力のいずれも、故障後は磁力より大きくなければならないが、故障状態中は、鉄心をコイル内に引き寄せることができるために磁気結合力より小さくなければならない。
【0056】
鉄心がその固定された正常動作位置にある間にコイル内にあり、分路のより低いインピーダンスへの回復プロセス中、コイルから出るように移動する図6A〜図6Cの実施形態では、超電導素子が超電導状態に戻っている際に鉄心はコイル内に戻るように移動する。分路巻線のリアクタンスを低減することにより、より多くの電流が分路内に流れ、超電導素子を流れる電流は少なくなり、それにより、超電導素子の回復プロセスが促進される。したがって、鉄心が正常動作時にコイル内で固定して採用されるかまたはコイルの外側で採用されるかにかかわらず、キャンセル原理は同じである。故障状態中は、分路によって大きいインピーダンスが提示され、超電導素子の回復プロセス中は、分路によってより低いインピーダンスが提示される。
【0057】
可変インピーダンス分路のコイルおよび鉄心は、性能を向上させるように異なる構成および材料で製作してもよい。たとえば、先細り形状を使用してもよく、その場合、コイルおよび鉄心はともに先細りの直径を有するように作製される。同じ方向または反対方向の巻線を備える分割コイルおよび/または分割鉄心を用いることも可能である。コイルは、同じ方向に巻回されている場合、同じ軸に沿って近接して配置される場合、両コイルによって発生する磁場を結合する。この技法を通して、コイルの磁場、インダクタンスおよび全体的なインピーダンスを、大幅に増大させることができる。この構成では、図7Aに示すように、中間で接する両鉄心の力を低減するためにばねを用いてもよい。
【0058】
図7Aにおいて、第1のコイル710は第1の鉄心700を取り囲み、第2のコイル711は第2の鉄心701を取り囲み、コイル710、711および鉄心700、701は同様に構成されかつ互いに隣接して同軸状に配置されている。先に説明したように、鉄心およびコイルを異なるモードで使用してもよい。たとえば、鉄心対コイルの位置決めを、超電導限流器の正常超電導状態動作中に、鉄心が完全にコイル内にあるか、部分的にコイル内にあるか、または完全にコイル外にあるが、すべての場合において、鉄心が、故障状態のそれらのより低いインピーダンスへの制限の後にコイルからさらに移動し、それにより負荷下での超電導素子の回復プロセスを促進するようなものであってもよい。
【0059】
図7Aおよび図7Bの実施形態では、コイルおよび鉄心は共通軸に沿って位置合せされ、周囲のあらゆる磁場をさらに結合する。この磁場およびインダクタンスの結合は、位置合せおよびそれらの間に形成する結果としての間隔および角度によって変化する。故障が発生すると、鉄心と巻線との間の引力のために、鉄心は一実施形態ではコイル内に移動する。引力の方向を、コイルの巻回方向によって決めることができる。引力は、ばね力を用いて滑らかに停止することができ、ばねとして弾性材料が用いられる。鉄心は、内側にある場合、より高いインピーダンスを示し、その逆でもある。
【0060】
1つまたは複数の固定されたコイルと1つまたは複数の固定された鉄心とを用いて、可変分路リアクタンス(またはインピーダンス)を実装することも可能である。図8Aは、軟質磁性材料対硬質磁性材料の典型的なヒステリシスループを示し、図8Bは、鉄等の非線形材料の典型的なヒステリシスループを示している。ヒステリシスグラフでは、線がy軸上の磁束密度と交差する場所は、残留磁気(またはより一般には残留磁束密度)を指し、「Br」として示される。これは、印加される磁場強度がゼロである場合の飽和後の磁束密度の値である。同様に、ヒステリシス線がx軸上の磁場強度Hと交差する場所は、保磁力と呼ばれ、「Hc」として示される。この値は、磁束密度がゼロである磁場強度に対応する。B/H線が線形に増大しないため、材料は、次第に大きくなるHの値の後に飽和を示す。したがって、印加される磁場強度レベルが増大する場合、あらゆる有効な透磁率の低減またはB−H曲線の勾配の低減も飽和として知られている。
【0061】
飽和の遅延を回避しかつ飽和時間を反転させるために、ヒステリシス曲線がより急峻である軟質材料が望ましい。しかしながら、本システムを、故意に飽和時間を長くするようにより鋭い飽和曲線を有するように設計することができる。これは、連続した故障が非常に近接しておかれており、超電導素子を回復するために十分な時間がない、複数の故障シーケンスシナリオに対して有用であり、したがって、分路の可変インピーダンスは、より長い期間低いままであるべきである。軟質材料は細いループを有し、高い透磁率を有するため容易に磁化し消磁する。急峻なヒステリシスループの材料を用いて、飽和時間を数ナノ秒まで低減することができる。回路によって課されるdV/dtおよびdI/dtが十分でないために飽和時間が大きすぎる場合、鉄心の断面を変化させることにより飽和時間が低減するかまたは増大する。飽和時間が大きすぎる場合、複数の鉄心を使用することができ、その逆も可能である。
【0062】
本明細書に記載するもののような飽和制御された可変インピーダンス分路を実装するために、種々の鉄心形状を用いることができる。図9では、トロイダル状飽和鉄心900が示されており、分路コイル910がトロイダル状飽和鉄心の周囲に部分的に巻回されている。図10では、一対の固定されたトロイダル状の飽和鉄心1000、1001が採用されており、両飽和鉄心1000、1001の一部の周囲に単一の分路コイル1010が巻回されている。これらの構成で採用される分路コイルは、ワイヤの単層で作製されてもよく、またはより大きいインダクタンスを達成するように多層巻線から作製されていてもよい。
【0063】
後に説明するように、飽和の遅延は、複数の直列に接続された分路段を採用することによって導入することができる。このため、直列接続された分路段は、回路の各それぞれの鉄心に対する飽和の速度を制御する。しかしながら、電流が、故障電流事象中に発生するように十分に高い場合、分路コイルははるかに高いdI/dt率を示すことになるため、飽和遅延は顕著でなくなり、また、飽和がより長い期間となりかつ飽和後の差動残留電圧テール(tail)が長くなる。
【0064】
磁場(およびしたがってそのキャンセル)の大きさの差は、インダクタンスの低減と同様に顕著であり、比例してキャンセルされる。高いインピーダンスと低いインピーダンスとのより広い範囲を達成するために、鉄心が飽和する場合に低いインダクタンス値が望ましい。このため、鉄心が取り除かれる設計に対して、低いインダクタンス値もまた望ましい。この目的で、幅が広く厚さが小さい導体ストリップを使用して、そこを流れている必要な電流に対して断面のサイズが決められている、低い、鉄心のないインダクタンスかまたは飽和鉄心インダクタンスを達成してもよい。
【0065】
固定されたコイルおよび鉄心のインピーダンスの大きさは、鉄心の飽和により高インピーダンスから低インピーダンスに変化する。このインピーダンスの低減により、超電導素子のより高速な回復が可能になる。鉄心材料の飽和点の間に低インピーダンスが維持される。
【0066】
飽和すると、分路のインピーダンスの大きさは、鉄心がコイルの外側に取り除かれた場合、図6A〜図6Cの例において説明したように、鉄心の周囲のコイルの空心インピーダンスに等価である。
【0067】
図11は、故障電流を制限するために、送電網システム等のシステム内で接続された超電導限流器1100の一実施形態を示している。超電導限流器1100は、超電導素子1110と飽和制御された可変インピーダンス分路1120とを有している。この例では、飽和制御された可変インピーダンス分路1120は、上述したように分路コイルおよび可飽和鉄心を備えている。図11の限流器は、図12の超電導限流器1200において例示するような固定インピーダンスZ1を含むように変更してもよい。この実施形態では、超電導限流器1200は、この場合もまた故障電流を制限するようにシステム内に接続されているものと想定される。限流器は、超電導素子1200と、超電導素子と並列な飽和制御された可変インピーダンス分路1220とを有している。固定インピーダンスZ1 1230もまた、図示するように超電導素子と並列であり、超電導限流器を通して既知の最小インピーダンスを提供する。
【0068】
別の実施形態では、各々が、上述した飽和制御された可変インピーダンス分路として構成されそれと並列して固定インピーダンスを有する、異なる直列接続された可変インピーダンス分路段を、図13に示すもののような超電導限流器の超電導素子の前後に並列に接続してもよい。この実施形態では、超電導限流器1300は、直列に接続された4つの飽和制御された可変インピーダンス分路段1320を含み、各段1320に対応する固定インピーダンスZ1、Z2、Z3およびZ4が並列に接続されているように示されている。複数の可変インピーダンス分路段を図示するように直列に接続することにより、いかなる所望のインピーダンスプロファイルにも容易に一致することができる。直列接続された回路全体が、あらゆる瞬間に異なる段の飽和した(または飽和していない鉄心)の関数として等価なインピーダンスの大きさを示す。巻きの数および選択された鉄心材料の特性に基づいて、飽和時間を、要求に応じて当業者が調整することができる。
【0069】
図14は、本発明の態様による超電導限流器1400のさらなる変形を示している。図示するように、超電導限流器1400は、超電導素子1410と、それに並列に結合された可変インピーダンス分路1420とを有している。この実施形態では、可変インピーダンス分路1420は、少なくとも部分的に分路コイルによって包囲されている鉄心の飽和を制御するように配置されたDCコイルを流れる可変DC電流によって制御される。飽和コントローラ1460は、DCコイルに供給されるDC電流の量を制御し、したがって鉄心の飽和を制御する。コントローラ1460は、超電導限流器1400内に示されているが、(一実施態様では)超電導限流器を含む容器の外側に位置している。電流または電圧検知を採用して、故障電流の存在を検知し、可変インピーダンス分路の鉄心の飽和状態へかつ飽和状態からの遷移を制御し、したがって、本明細書に記載したように、分路のインピーダンスの第1の高インピーダンスから第2の低インピーダンスへおよびその逆の遷移を制御することができる。
【0070】
可変制御電流は、種々の方法で、たとえば可変インピーダンスにより、または固体出力電源の切換えを制御することによって達成することができる。この可飽和トポロジは、分路コイルを流れるAC電流の比例制御があることを可能にする。簡単のために、図14において(図16と同様に)、可変抵抗器が示されている。故障電流が存在する場合、コイルおよび鉄心(複数可)は、飽和しないように高インピーダンスを有するように設計されている。故障の時間中または故障の時間の後のあらゆる瞬間において、鉄心は、分路を通してエネルギーを切り換えるように飽和させることができ、分路はその時点で超電導素子より低いインピーダンスを示す。
【0071】
図15は、図14に示すような限流器の一実施態様を示している。この実施態様では、トロイダル状鉄心は、分路コイル1510によって部分的に包囲され、かつ限流器の可変インピーダンス分路のDCコイル1520によって部分的に包囲されている。後にさらに説明するように、これは、鉄心の飽和、したがって分路コイルを通るインピーダンスを制御する多くのあり得る構成のうちの1つの構成を表している。
【0072】
飽和を制御するために、可変インピーダンス分路設計は、故障電流状態からの分路コイルを通る電流の上昇による磁場強度の増大を考慮するべきである。故障中のこの電流の増大もまた、(上述したように)単独で、すなわち、印加される高電流の結果として、磁場強度が鉄心を飽和させるのに十分高くなる場合、鉄心を飽和させる可能性がある。したがって、飽和を制御する能力を有するために、故障状態中の分路コイルにおける電流の増大は、コイルの飽和に影響を与えるべきではない。したがって、分路コイルは、飽和コイルより著しく小さい誘導値を有するべきであり、かつ/または飽和を制御する電流は、分路コイルを流れる故障電流に相当するかまたはそれより高いものであるべきである。結果として、飽和コイルによって発生する磁場強度は、飽和コイルによって生成される磁場強度より常に大きくあるべきであり、それにより飽和プロセスの制御が可能になる。
【0073】
図16に示すように、1つの代替的実施形態では、超電導限流器1600は、超電導素子1610に並列に接続されかつAC飽和コントローラ1660を介して制御される、可変インピーダンス分路1620を有することができる。この手法では、図14の実施形態のDCコイルは、ACコイルに置き換えられ、AC電流の大きさは、故障回復プロセスにおける所望の時点で鉄心を故意に飽和させるように採用される。
【0074】
上述した飽和現象に加えて、いくつかの強磁性材料の透磁率は、同様に周波数によって激しく影響を受ける可能性がある。こうした材料は、他の周波数より高い周波数で著しく低い透磁率を示す。これは、AC飽和制御として用いることができ、そこでは、鉄心は、その側面の1つに(または鉄心の長さに沿って)印加されるAC電流の大きさを増大させることで飽和させることができ、その鉄心の周囲にACコイルが巻回されている。図17では、図示されている超電導限流器1700は可変インピーダンス分路1720を示し、それは、超電導素子1710と並列に電気的に接続され、可変周波数コントローラ1760によって、故障回復プロセスにおける所望の時点で鉄心を飽和させるように制御される。
【0075】
図14〜図17の設計のうちのいずれか1つは、並列固定リアクタンスがあるかまたはなしで、図13に示すように、2つ以上の可変飽和リアクタンス(可変インピーダンス分路)を備える限流器に使用してもよいことを留意されたい。
【0076】
可飽和鉄心(複数可)の飽和は、分路コイルによって部分的に包囲されている可飽和鉄心に必ずしも巻回されていないコイルによって生成される間接磁場を印加することによって、達成することも可能である。可変インピーダンス分路の飽和を開始するために必要な磁場を生成するように、飽和を開始する飽和コイルが(上述したように)鉄心の周囲に巻回されていても、または別の鉄心に巻回されているか否かにかかわらず鉄心の外側であっても、上述した可飽和オプションのすべてを使用することができる。これは、あらゆる可動磁石または制御可能な外部磁場によって外部磁場を印加することによっても達成することができる。鉄心は直線状であってもよく、またはトロイダル構造に類似する形状であってもよい。可飽和コイルおよび分路コイルは、分路コイルによって包囲される鉄心内で飽和の間接的なトリガを達成するように、非常に異なる組合せおよび位置および形状で配置することができる。例として、図18A〜図18Dに、これらの組合せのいくつかを示す。
【0077】
図18Aにおいて、第1の鉄心1800は、分路コイル1810によって部分的に包囲されており、第2の鉄心1801は、図14〜図17に関連して上述したように制御される、飽和コイル1811によって部分的に包囲されている。図18Bにおいて、円柱状鉄心1800’は、分路コイル1810’によって部分的に包囲され、飽和は、飽和コイル1811’を介して磁場を確立することによって間接的に制御される。図18Cにおいて、トロイダル状鉄心1800は、分路コイル1810によって部分的に包囲され、飽和は、トロイダル状鉄心1800を貫通するように示されている飽和コイル1811”によって制御される。図18Dでは、トロイダル状鉄心1800および分路コイル1810は、飽和コイル1811’によって包囲されている。
【0078】
本明細書では、可変インピーダンス分路を可変インダクタに関連するように述べているが、説明した可変インピーダンスは、インピーダンスを変化させることができる3つのあり得る手法、すなわち分路の抵抗値、誘導値および/または容量値を変化させることのうちのいずれかに関連する。抵抗成分、誘導成分および容量成分を含む多数の可変インピーダンス設計が目下存在している。本発明は、わずかな可変誘導性代替物を述べているが、いかなる可変抵抗性インピーダンスまたは容量性インピーダンスも同様に採用することも可能である。可変インピーダンス分路は、本明細書において飽和誘導性負荷で説明したように、所与のインピーダンス勾配に一致するようにグループで配置することができる。したがって、提示する概念は、いかなるトポロジの超電導限流器においても(上述したように)使用される超電導素子と並列なあらゆる可変インピーダンス分路の使用に関連する。本明細書で用いるように、あらゆる可変コンデンサ、インダクタまたは抵抗器設計を採用することも可能であり、それらは、提示する装置のダイナミクスを向上させる。また、いかなる電流損失も回避するように電流周波数の表皮深さと同等の厚さを有する積層鉄心を使用することができる。
【0079】
さらに、本発明の1つまたは複数の制御態様は、たとえばコンピュータ使用可能媒体を有する製品(たとえば1つまたは複数のコンピュータプログラム製品)に含めることができる。そこでは、媒体は、たとえば本発明の機能を提供しかつ促進するコンピュータ可読プログラムコード手段またはロジック(たとえば、命令、コード、コマンド等)を有している。製品は、コンピュータシステムの一部として含めることができ、または別個に販売することができる。
【0080】
本発明の1つまたは複数の制御態様を組み込んでいる製品またはコンピュータプログラム製品の一例は、たとえば、本発明の1つまたは複数の態様を提供しかつ促進するように、コンピュータ可読プログラムコード手段またはロジックを格納する1つあるいは複数のコンピュータ可読媒体を含む。媒体は、電子、磁気、光、電磁気、赤外線あるいは半導体システム(または装置もしくはデバイス)または伝播体であり得る。コンピュータ可読媒体の例として、超伝導体または固体メモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、リジッド磁気ディスクおよび光ディスクが挙げられる。光ディスクの例としては、コンパクトディスク−リードオンリメモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)およびDVDが挙げられる。
【0081】
1つあるいは複数のコンピュータ可読プログラムコード手段またはロジックによって定義される1つあるいは複数の相関するモジュールのプログラム命令または論理アセンブリのシーケンスは、本発明の1つあるいは複数の制御態様の性能を方向づける。
【0082】
さまざまな実施形態を上述しているが、これらは単に例である。
【0083】
さらに、プログラムコードを格納しかつ/または実行するのに適しているデータ処理システムが使用でき、それは、メモリ素子に直接またはシステムバスを介して間接的に結合された少なくとも1つのプロセッサを含む。メモリ素子は、たとえば、プログラムコードの実際の実行中に採用されるローカルメモリ、バルクストレージ、および実行中にバルクストレージからコードを検索しなければならない回数を低減するために、少なくとも一部のプログラムコードを一時的に格納するキャッシュメモリを含む。
【0084】
入力/出力デバイスすなわちI/Oデバイス(限定されないが、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス、DASD、テープ、CD、DVD、サムドライブおよび他のメモリ媒体等を含む)は、システムに、直接または介在するI/Oコントローラを介して結合することができる。データ処理システムは、介在する私設ネットワークまたは公衆ネットワークを介して他のデータ処理システムまたは遠隔プリンタもしくは記憶装置に結合することができるように、システムにネットワークアダプタを結合してもよい。モデム、ケーブルモデムおよびイーサネットカードは、利用可能なタイプのネットワークアダプタのうちのごくわずかである。
【0085】
本発明の1つまたは複数の制御態様の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの何らかの組合せで実装することができる。機械によって読取可能な少なくともプログラム記憶装置であって、機械が本発明の機能を実行するように実行可能な命令の少なくとも1つのプログラムを具現化する、少なくとも1つのプログラム記憶装置を提供することができる。
【0086】
本明細書に示した流れ図は単なる一例である。本発明の趣旨から逸脱することなく、この図およびそこに記載されているステップ(または動作)に対して多くの変形があり得る。たとえば、いくつかのステップは、異なる順序で行ってもよく、またはステップを追加し、削除し、あるいは変更してもよい。これらの変形のすべてが、特許請求された発明の一部とみなされる。
【0087】
本明細書では実施形態を詳細に示しかつ説明したが、当業者には、本発明の趣旨から逸脱することなくさまざまな変更、追加、置換等を行うことができることが明らかとなり、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあるとみなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導限流器であって、
超電導素子であって、前記超電導素子は、当該超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成されている、超電導素子と、
前記超電導素子に並列に電気的に接続されている少なくとも1つの可変インピーダンス分路であって、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記超電導素子の超電導状態中は第1のインピーダンスを示し、前記超電導素子の標準抵抗状態から前記超電導状態への回復遷移中は第2のインピーダンスを示すように構成され、前記超電導素子は、前記故障電流に応じて前記超電導状態から前記標準抵抗状態に遷移し、それに応じて、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの前記遷移により、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中の前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより、負荷下の前記超電導素子の回復が促進される、少なくとも1つの可変インピーダンス分路と
を含むことを特徴とする超電導限流器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は次に、前記超電導素子が前記制限された故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも部分的に回復することは、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る遷移中に、前記超電導素子を通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、少なくとも1つの鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成された少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを備え、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルおよび前記少なくとも1つの鉄心は、同軸状に位置合せされ、かつ互いに対して移動可能であることにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを通るインピーダンスの変更を促進し、当該超電導限流器はさらに、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルに対する前記少なくとも1つの鉄心の位置を制御して、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間のインピーダンスの遷移を促進するコントローラを含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、複数の鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成された複数の可変インピーダンス分路コイルを備え、各可変インピーダンス分路コイルは、前記複数の鉄心のうちのそれぞれの鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成され、前記コントローラが、そのそれぞれの可変インピーダンス分路コイルに対して各鉄心の位置を制御することにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路のインピーダンスの前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間の遷移を促進することを特徴とする請求項3に記載の超電導限流器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを備え、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを通るインピーダンスは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和により前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移することを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項6】
各可変インピーダンス分路コイルは、複数の可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項7】
前記超電導素子および前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路に並列に電気的に接続された固定インピーダンスをさらに含み、前記固定インピーダンスは、前記超電導素子に並列な最小インピーダンスを保証することを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項8】
前記超電導素子に並列に電気的に接続された複数の直列接続された可変インピーダンス分路をさらに含み、前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの各可変インピーダンス分路は、それぞれの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する可変インピーダンス分路コイルを含むことを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項9】
前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの各可変インピーダンス分路はさらに、前記可変インピーダンス分路コイルに並列なそれぞれの固定インピーダンスを含み、前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの少なくとも2つの可飽和鉄心は異なる飽和特性を備えることを特徴とする請求項8に記載の超電導限流器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルによって少なくとも部分的に包囲される前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和を能動的に制御することにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移を促進する飽和コントローラをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項11】
前記飽和コントローラは、DC飽和コントローラ、AC飽和コントローラまたは周波数飽和コントローラのうちの1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の超電導限流器。
【請求項12】
前記飽和コントローラは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心に選択的に磁気的に結合し、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を制御するように配置された永久磁石か、または電流が流れると前記少なくとも1つの可飽和鉄心に磁気的に結合し、前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和を制御し、それにより前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移を促進するように配置された飽和コイルのうちの一方を備えることを特徴とする請求項10に記載の超電導限流器。
【請求項13】
前記飽和コントローラは前記飽和コイルを備え、前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする請求項12に記載の超電導限流器。
【請求項14】
前記飽和コントローラは前記飽和コイルを備え、前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和コイルに隣接して配置されるがその周囲に巻回されないことを特徴とする請求項12に記載の超電導限流器。
【請求項15】
前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを包囲する、または、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に貫通することを特徴とする請求項14に記載の超電導限流器。
【請求項16】
直列に接続されかつ前記故障電流を抵抗によりまたは誘導により制限するように構成された複数の超電導素子をさらに含み、各超電導素子は、並列に結合された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項17】
直列に電気的に接続されている複数の限流モジュールであって、各限流モジュールは少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより前記超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に制限するように構成された少なくとも1つの超電導体セグメントを備える、複数の限流モジュールと、
複数の可変インピーダンス分路であって、各々は前記複数の限流モジュールのうちのそれぞれの限流モジュールに関連付けられ、各可変インピーダンス分路は、前記故障電流中に第1のインピーダンスを示し、前記関連する限流モジュールの前記少なくとも1つの超電導素子の前記少なくとも1つの超電導体セグメントの標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように構成され、前記複数の限流モジュールの超電導体セグメントは、前記超電導状態から前記標準抵抗状態に遷移することによって前記故障電流をクエンチし、それに応じて、前記複数の可変インピーダンス分路は、前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移し、前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低い分路インピーダンスであり、かつ前記それぞれの限流モジュールの前記少なくとも1つの超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、前記複数の可変インピーダンス分路を流れる電流の流れを促進し、それにより、負荷下での前記少なくとも1つの超電導素子の回復を促進する、複数の可変インピーダンス分路と
を含むことを特徴とする超電導限流器。
【請求項18】
各超電導素子は、並列に電気的に接続された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項19】
各限流モジュールは、直列に電気的に接続された少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、並列に電気的に接続された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項20】
各可変インピーダンス分路は、前記関連する限流モジュール内の前記少なくとも1つの超電導素子の前記少なくとも1つの超電導体セグメントは前記故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも部分的に回復することは、前記少なくとも1つの超電導体セグメントのその標準抵抗状態から負荷下の超電導状態への遷移中に、前記少なくとも1つの超電導体セグメントを通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項21】
超電導限流器を製造する方法であって、
超電導素子と少なくとも1つの可変インピーダンス分路とを並列に電気的に接続するステップであって、前記超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、前記超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成され、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記故障電流中に第1のインピーダンスを示し、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように製造される、ステップ
を含み、
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移により、故障電流を制限した後の前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中の前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより負荷下の前記超電導素子の回復が促進されることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は次に、前記超電導素子が前記故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに戻るように遷移するように製造され、少なくとも部分的に回復することは、前記超電導素子のその標準抵抗状態から負荷下の超電導状態への遷移中に前記超電導素子を通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項1】
超電導限流器であって、
超電導素子であって、前記超電導素子は、当該超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成されている、超電導素子と、
前記超電導素子に並列に電気的に接続されている少なくとも1つの可変インピーダンス分路であって、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記超電導素子の超電導状態中は第1のインピーダンスを示し、前記超電導素子の標準抵抗状態から前記超電導状態への回復遷移中は第2のインピーダンスを示すように構成され、前記超電導素子は、前記故障電流に応じて前記超電導状態から前記標準抵抗状態に遷移し、それに応じて、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの前記遷移により、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中の前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより、負荷下の前記超電導素子の回復が促進される、少なくとも1つの可変インピーダンス分路と
を含むことを特徴とする超電導限流器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は次に、前記超電導素子が前記制限された故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも部分的に回復することは、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る遷移中に、前記超電導素子を通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、少なくとも1つの鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成された少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを備え、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルおよび前記少なくとも1つの鉄心は、同軸状に位置合せされ、かつ互いに対して移動可能であることにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを通るインピーダンスの変更を促進し、当該超電導限流器はさらに、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルに対する前記少なくとも1つの鉄心の位置を制御して、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間のインピーダンスの遷移を促進するコントローラを含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、複数の鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成された複数の可変インピーダンス分路コイルを備え、各可変インピーダンス分路コイルは、前記複数の鉄心のうちのそれぞれの鉄心を少なくとも部分的に包囲するように構成され、前記コントローラが、そのそれぞれの可変インピーダンス分路コイルに対して各鉄心の位置を制御することにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路のインピーダンスの前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの間の遷移を促進することを特徴とする請求項3に記載の超電導限流器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを備え、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを通るインピーダンスは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和により前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移することを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項6】
各可変インピーダンス分路コイルは、複数の可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項7】
前記超電導素子および前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路に並列に電気的に接続された固定インピーダンスをさらに含み、前記固定インピーダンスは、前記超電導素子に並列な最小インピーダンスを保証することを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項8】
前記超電導素子に並列に電気的に接続された複数の直列接続された可変インピーダンス分路をさらに含み、前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの各可変インピーダンス分路は、それぞれの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する可変インピーダンス分路コイルを含むことを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項9】
前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの各可変インピーダンス分路はさらに、前記可変インピーダンス分路コイルに並列なそれぞれの固定インピーダンスを含み、前記複数の直列接続された可変インピーダンス分路のうちの少なくとも2つの可飽和鉄心は異なる飽和特性を備えることを特徴とする請求項8に記載の超電導限流器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルによって少なくとも部分的に包囲される前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和を能動的に制御することにより、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移を促進する飽和コントローラをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の超電導限流器。
【請求項11】
前記飽和コントローラは、DC飽和コントローラ、AC飽和コントローラまたは周波数飽和コントローラのうちの1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の超電導限流器。
【請求項12】
前記飽和コントローラは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心に選択的に磁気的に結合し、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を制御するように配置された永久磁石か、または電流が流れると前記少なくとも1つの可飽和鉄心に磁気的に結合し、前記少なくとも1つの可飽和鉄心の飽和を制御し、それにより前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移を促進するように配置された飽和コイルのうちの一方を備えることを特徴とする請求項10に記載の超電導限流器。
【請求項13】
前記飽和コントローラは前記飽和コイルを備え、前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする請求項12に記載の超電導限流器。
【請求項14】
前記飽和コントローラは前記飽和コイルを備え、前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和コイルに隣接して配置されるがその周囲に巻回されないことを特徴とする請求項12に記載の超電導限流器。
【請求項15】
前記飽和コイルは、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つの可変インピーダンス分路コイルを包囲する、または、前記少なくとも1つの可飽和鉄心を少なくとも部分的に貫通することを特徴とする請求項14に記載の超電導限流器。
【請求項16】
直列に接続されかつ前記故障電流を抵抗によりまたは誘導により制限するように構成された複数の超電導素子をさらに含み、各超電導素子は、並列に結合された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項17】
直列に電気的に接続されている複数の限流モジュールであって、各限流モジュールは少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより前記超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に制限するように構成された少なくとも1つの超電導体セグメントを備える、複数の限流モジュールと、
複数の可変インピーダンス分路であって、各々は前記複数の限流モジュールのうちのそれぞれの限流モジュールに関連付けられ、各可変インピーダンス分路は、前記故障電流中に第1のインピーダンスを示し、前記関連する限流モジュールの前記少なくとも1つの超電導素子の前記少なくとも1つの超電導体セグメントの標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように構成され、前記複数の限流モジュールの超電導体セグメントは、前記超電導状態から前記標準抵抗状態に遷移することによって前記故障電流をクエンチし、それに応じて、前記複数の可変インピーダンス分路は、前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスに遷移し、前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低い分路インピーダンスであり、かつ前記それぞれの限流モジュールの前記少なくとも1つの超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態への回復遷移中に、前記複数の可変インピーダンス分路を流れる電流の流れを促進し、それにより、負荷下での前記少なくとも1つの超電導素子の回復を促進する、複数の可変インピーダンス分路と
を含むことを特徴とする超電導限流器。
【請求項18】
各超電導素子は、並列に電気的に接続された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項19】
各限流モジュールは、直列に電気的に接続された少なくとも1つの超電導素子を備え、各超電導素子は、並列に電気的に接続された複数の超電導体セグメントを備えることを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項20】
各可変インピーダンス分路は、前記関連する限流モジュール内の前記少なくとも1つの超電導素子の前記少なくとも1つの超電導体セグメントは前記故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに遷移し、前記少なくとも部分的に回復することは、前記少なくとも1つの超電導体セグメントのその標準抵抗状態から負荷下の超電導状態への遷移中に、前記少なくとも1つの超電導体セグメントを通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項17に記載の超電導限流器。
【請求項21】
超電導限流器を製造する方法であって、
超電導素子と少なくとも1つの可変インピーダンス分路とを並列に電気的に接続するステップであって、前記超電導素子は、超電導状態から標準抵抗状態に遷移することにより、前記超電導素子を流れる故障電流を少なくとも部分的に抵抗によりまたは誘導により制限するように構成され、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は、前記故障電流中に第1のインピーダンスを示し、前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中に第2のインピーダンスを示すように製造される、ステップ
を含み、
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第2のインピーダンスは、前記第1のインピーダンスより低いインピーダンスであり、前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路の前記第1のインピーダンスから前記第2のインピーダンスへの遷移により、故障電流を制限した後の前記超電導素子の標準抵抗状態から超電導状態に戻る回復遷移中の前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路を通る電流の流れが促進され、それにより負荷下の前記超電導素子の回復が促進されることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの可変インピーダンス分路は次に、前記超電導素子が前記故障電流から少なくとも部分的に回復することに応じて、前記第2のインピーダンスから前記第1のインピーダンスに戻るように遷移するように製造され、少なくとも部分的に回復することは、前記超電導素子のその標準抵抗状態から負荷下の超電導状態への遷移中に前記超電導素子を通る閾値電流の流れに達することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【公表番号】特表2013−519216(P2013−519216A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550154(P2012−550154)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022063
【国際公開番号】WO2011/091256
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022063
【国際公開番号】WO2011/091256
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】
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