説明

可変容量ターボチャージャ

【課題】低流量時にインペラ動翼に流入する排気ガス流速を低損失で高くでき、大流量時に流れの合流損失が少なく、可動部の減少により信頼性を高くでき,温度差による熱応力を低くできるタービンハウジングのツインスクロール構造の可変容量ターボチャージャを提供する。
【解決手段】タービンハウジング20が、環状流路22と、その半径方向外端近傍で互いに合流する合流点25を有する小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26とを有する。小流量用スクロール24は、合流点25の上流側に、ガス流を旋回させる複数の小流量用静翼27を有する。さらに、ガス流入マニホールドに設置され大流量用スクロール26のガス流入口を流量調整可能に開閉する流量調節弁と、流量調節弁を制御する制御装置とを備え、排気ガスの小流量時に流量調節弁を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて流量調節弁の開度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンインペラを囲みその外周に排気ガスを供給するタービンハウジングのツインスクロール構造を有する可変容量ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機(ターボチャージャ)は、タービンとコンプレッサが機械的に連結されており、エンジンの排気ガスでタービンを回転駆動し、これと連結されたコンプレッサで吸入空気を圧縮して加圧された空気をエンジンに供給し、エンジンの性能を向上させる装置である。
【0003】
ターボチャージャ用のタービンは、一般的にラジアルタービンであり、ラジアルタービンの外周に排気ガスを供給するために、スクロールが用いられる。すなわちスクロールは、エンジンからの排気ガスの流れを旋回流にしてタービンインペラの外周に一様に分配する渦巻室である。
【0004】
上述したターボチャージャは、スクロールの流路形状により旋回流速が決まり低流量ではその流速が不足するため、タービンが高負荷で稼動可能な排気ガスの流量範囲が狭い問題点がある。
そこで、ターボチャージャに供給可能な排気ガスの流量範囲を拡大するために、種々の構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
特許文献1は、ツインスクロール式過給機による過給を利用しながらも、高回転時において、排気通路における排気ガスの圧力脈動を低減し、過給効率を向上させるとともに、エンジンを良好な燃焼状態とすることを目的とする。
そのためこのエンジン排気システムは、図9に示すように、エンジン50における別個の燃焼室に接続され、互いに独立してツインスクロール式過給機51へ排気ガスを案内する第1排気通路52及び第2排気通路53と、各排気通路52,53を連通する接続通路54と、接続通路54に設けられた開閉自在の連通制御弁55と、エンジン50の高回転時に連通制御弁55を開き、エンジン50の低回転時に連通制御弁55を閉じる制御部とを備え、エンジン50が高回転のときには、各排気通路52,53における排気ガスの圧力脈動が均一化されるようにしたものである。
なおこの図において、56は排気制御弁、57は第1スクロール室、58は第2スクロール室、59はタービンである。
【0006】
特許文献2は、可変容量ターボチャージャにおける可変容量の拡大を図る場合、ターボチャージャの性能の効率を良好に維持することを目的とする。
そのため、この可変容量ターボチャージャは、図10に示すように、外周スクロール部60の基準位置スクロール面積Sを、区画壁61の全連通孔62の開口面積の和S1(基準位置スクロール面積S/全連通孔の開口面積の和S1)の1.2倍以下に設定するものである。
なおこの図において、63はタービンハウジング、64はタービンロータ、65は制御弁である。
【0007】
特許文献3は、ノズル開閉時におけるタービン回転速度のヒステリシスと可変ノズル翼の摺動抵抗を大幅に低減でき、これによりタービン回転速度の自動制御を容易にし、かつノズル取付面や隙間調整プレートの傷や摩耗を低減することを目的とする。
そのため、この可変容量型過給機の可変ノズル装置は、図11に示すように、各可変ノズル翼70が、ノズル取付面71を貫通するノズル駆動軸72と隙間調整プレート73を貫通するノズル支持軸74とで両端支持される。また、リンク室75と隙間調整プレート73の中空室76の圧力が、ノズル駆動軸72とノズル支持軸74に作用するガス圧による軸力がほぼバランスするように調整されているものである。
なおこの図において、77はタービンハウジング、78はタービンインペラ、79はスクロール室、80は可変ノズル装置である。
【0008】
【特許文献1】特開2004−68631号明細書、「エンジン排気システム及びエンジン排気システムの制御方法」
【特許文献2】特開2001−263080号明細書、「可変容量ターボチャージャ」
【特許文献3】特開2007−40251号明細書、「可変容量型過給機の可変ノズル装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、2系統の独立したスクロールを有する従来型のツインスクロール構造は、以下の問題点があった。
当該構造では,2系統のスクロール出口がインペラ動翼の直ぐ上流部で合流する。ここで、
(1) 2系統のスクロール流路を隔てる流路隔壁をインペラ動翼の直ぐ上流部に設置し合流部を無くすと、その板厚分当該部の流路幅を広くする必要があり、インペラ動翼入口部で流路に段差を設定せざるを得ず、段差による損失が増大する。
(2) これを回避するために、インペラ動翼の上流部に合流部を作ると流路隔壁の板厚分の流路の急拡大部ができ、特に流速の早い当該部でインペラ動翼に流れ込む排気ガス流速が剥離し損失が大きくなり、一方旋回流速も遅くなりタービン動翼の反動度Rを高くすることができない。
なお、反動度とは、インペラ動翼におけるエンタルピー変化Δiの段差仕事Wに対する割合R=Δi/Wを意味する。
(3) また、流路隔壁が円板状であるために、半径方向の温度差による熱応力が大きく、亀裂が発生する傾向が強い。すなわち、比較的温度の低い外壁に接続するあたりは隔壁の温度も低く、合流部付近は熱の逃げ場がなく温度が高くなる。この時、流路隔壁が円板状であると熱膨張差の逃げ場がなく高い応力が発生する傾向が強い。
【0010】
特許文献2のツインスクロール構造では、小流量時のみに流すスクロールの出口に前置静翼がないため、極小流量時にインペラ動翼に流れ込む排気ガスの流速が遅くなり、タービン動翼の反動度Rを高くすることができない。
【0011】
特許文献3の可変静翼構造は、タービン動翼の衝動度を高くするために、静翼部で旋回流速を大きく加速しなければならず、静翼の翼負荷を高く設定する必要がある。
また、特許文献3の可変静翼構造は、高温部に多くの可動部を有するため、故障しやすく、また多くの摺動部から漏洩する排気ガスのため特に低流量時の性能を悪くする問題点があった。
【0012】
言い換えれば、従来のツインスクロール構造では、ツインスクロールの出口が動翼入口に平行に並んでいて動翼入口で流路が拡大する為、流れが減速していた。そのため、低速側スクロールの出口で空気の周方向流速を大きくとれなかった。
【0013】
本発明は上述した従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、低流量時においてインペラ動翼に流入する排気ガス流速を低損失で高くでき、大流量時における流れの合流損失が少なく、可動部の減少により信頼性を高くでき,温度差による熱応力を低くできるタービンハウジングのツインスクロール構造をもつ可変容量ターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、エンジンの排気ガスで回転駆動されるタービンインペラを囲みその外周に排気ガスを供給するタービンハウジングを備え、
該タービンハウジングは、タービンインペラのガス流入口を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路と、
該環状流路の半径方向外端近傍で互いに合流する合流点を有する小流量用スクロール及び大流量用スクロールと、
小流量用スクロール及び大流量用スクロールのガス流入口にエンジンからの排気ガスを供給するガス流入マニホールドとを有し、
前記小流量用スクロールは、前記合流点の上流側に、環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の小流量用静翼を有しており、
さらに、ガス流入マニホールドに設置され、小流量用スクロールのガス流入口を常時開放し、大流量用スクロールのガス流入口を流量調整可能に開閉する流量調節弁と、
該流量調節弁を制御する制御装置とを備え、
排気ガスの小流量時に前記流量調節弁を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記流量調節弁の開度を調整する、ことを特徴とする可変容量ターボチャージャが提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、タービンインペラの軸心からの前記合流点の半径位置Rは、タービンインペラのガス流入口の半径位置rの1.2倍以上、10倍以下である。
【0016】
また、前記大流量用スクロールの前記合流点の上流側に設けられ、前記環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の大流量用静翼を併有する、ことが好ましい。
【0017】
また、本発明によれば、エンジンの排気ガスで回転駆動されるタービンインペラを囲みその外周に排気ガスを供給するタービンハウジングを備え、
該タービンハウジングは、タービンインペラのガス流入口を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路と、
該環状流路の半径方向外端近傍で互いに合流する合流点を有する小流量用スクロール及び大流量用スクロールと、
小流量用スクロール及び大流量用スクロールのガス流入口にエンジンからの排気ガスを供給するガス流入マニホールドとを有し、
さらに、前記大流量用スクロールの前記合流点の上流側に設けられ、前記環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の大流量用静翼と、
該大流量用静翼を揺動させてその出口流路面積を可変制御する可変ノズル装置とを備え、
排気ガスの小流量時に前記可変ノズル装置を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記可変ノズル装置の開度を調整する、ことを特徴とする可変容量ターボチャージャが提供される。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明の構成によれば、タービンハウジングが、タービンインペラのガス流入口を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路を有し、この環状流路の半径方向外端近傍の合流点で小流量用スクロール及び大流量用スクロールからのガス流が互いに合流するので、合流後の排ガス流路(すなわち環状流路)に急拡大部や段差部が少なく損失を低減できる。
【0019】
また、排気ガスの小流量時に流量調節弁又は可変ノズル装置を全閉して、複数の小流量用静翼を有する小流量用スクロールのみから環状流路に排ガスを流出するので、環状流路の半径方向外端近傍に旋回流を形成することができる。
ここで、環状流路内を半径方向内向きに流れる間に,角運動量保存則により旋回流の旋回速度が増加するので、インペラ動翼(タービンインペラ)に流入する排気ガス流速を高くできる。従って、特に排気ガスの小流量時におけるターボチャージャの加速特性を改善できる。
また小流量用静翼又は大流量用静翼とインペラ動翼が離れる事により、静翼による励振力が小さくなり、インペラ動翼の共振破損を抑制することができる。
【0020】
一方,排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記流量調節弁又は前記可変ノズル装置の開度を調整すると、小流量用スクロール及び大流量用スクロールからの排気ガスが環状流路内の合流点で合流するが、環状流路の半径方向外端近傍で合流するので、板厚分流路が広がってしまう部分の流速が遅くなり、合流損失を少なくできる。
【0021】
さらに、小流量用スクロールと大流量用スクロールを仕切る隔壁は、タービンインペラの軸線を囲む円筒形又は接頭円錐形で構成できるので、隔壁を隔てて温度差があっても発生する熱応力を低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の可変容量ターボチャージャの第1実施形態図であり、図2は図1のA−A矢視図である。
図1及び図2において、本発明の可変容量ターボチャージャは、タービンインペラ10を囲みその外周12に排気ガス1を供給するタービンハウジング20、流量調節弁30および制御装置40を備える。
【0024】
タービンインペラ10は、この例ではラジアルタービン用のタービンインペラである。タービンインペラ10は、その外周12から内側に向けて供給されるエンジンの排気ガス1により回転駆動され、ターボチャージャのコンプレッサ(図示せず)を回転駆動する。
【0025】
図1及び図2において、タービンハウジング20は、外壁20a,20b,20c、内壁20d、隔壁20e,20fからなり、内部に環状流路22、小流量用スクロール24、大流量用スクロール26およびガス流入マニホールド28を有する。
この例において、タービンハウジング20は、外壁20aの外周端近傍で分割して製作し、接合箇所21で溶接等で接合されている。この場合、分割箇所、すなわち接合箇所21は、例えばタービンインペラ10の軸線を囲む円筒面となる。
【0026】
環状流路22は、タービンインペラ10のガス流入口(すなわち外周12)を囲み、半径方向外方に延びる。
この例において、環状流路22は、タービンハウジング20のコンプレッサ側に位置し半径方向に延びる円板状の外壁20bと、大流量用スクロール26との間に位置し半径方向に延びる円板状の隔壁20eとの間に形成された中空円板状の空間である。
なお、外壁20bと隔壁20eの軸方向間隔は、この例では、半径方向内方に向かって漸増しているが、互いに平行であってもよい。
【0027】
小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26は、環状流路22の半径方向外端近傍で互いに合流する合流点25を有する。
この例において、小流量用スクロール24は半径方向外側、大流量用スクロール26は半径方向内側に位置し、その間は隔壁20fで仕切られている。
【0028】
また、隔壁20fは、小流量用スクロール24から環状流路に流出するガス流路に急拡大部や段差部がなく、かつ熱応力を低減するように円筒形と接頭円錐形で構成されている。
同様に、隔壁20eは、大流量用スクロール26から環状流路に流出するガス流路に急拡大部や段差部がなく、かつ熱応力を低減するように先端部分が円筒形または接頭円錐形で構成されている。
【0029】
また、タービンインペラ10の軸心からの合流点25までの半径位置Rは、ガス流入口12の半径位置rより十分大きいことが好ましく、例えば、半径位置Rは半径位置rの1.2倍以上、10倍以下に設定されている。
【0030】
ガス流入マニホールド28は、小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26のガス流入口24a,26aに連通しており、エンジンからの排気ガス1を小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26に供給するようになっている。ガス流入マニホールド28は、この例では1つであるが、必要に応じて複数にしてもよい。
【0031】
図1及び図2において、小流量用スクロール24は、合流点25の上流側に、環状流路22へ流出するガス流1を旋回させるように設置された複数の小流量用静翼27を有する。この旋回方向は、タービンインペラ10の回転方向である。
この例において、小流量用静翼27は、タービンハウジング20の外壁20c又は隔壁20fに一体的に形成されているが、個別に製作して、外壁20c又は隔壁20fに溶接又はボルト等で固定してもよい。
【0032】
図2において、流量調節弁30は、ガス流入マニホールド28に設置され、小流量用スクロール24のガス流入口24aを常時開放し、大流量用スクロール26のガス流入口26aを流量調整可能に開閉する流量調節弁32を有する。
制御装置40は、この流量調節弁30を制御し、排気ガスの小流量時に流量調節弁30を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記流量調節弁の開度を調整する。流量調節弁の開閉は排ガス流量が中/大流量時に実施し、排ガス流量は実測してもよく、或いはエンジン制御装置(図示せず)からの指令値(例えば回転速度)に基づき計算してもよい。
【0033】
図3は、本発明の可変容量ターボチャージャの第2実施形態図である。
この例において、タービンハウジング20は、外壁20a、20cの外周部に設けられたフランジ21a,21bで分割して製作し、ボルト等で連結されている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
図4は、本発明の可変容量ターボチャージャの第3実施形態図であり、図5は、図4のA−A矢視図である。
この例において、タービンハウジング20は、外壁20cと内壁20dのタービン側端部で分割して製作し、接合箇所21で溶接等で接合されている。
また、この例において、小流量用スクロール24は半径方向内側、大流量用スクロール26は半径方向外側に位置し、その間を隔壁20fで仕切られている。
さらに、この例において、小流量用静翼27は、タービンハウジング20の隔壁20e又は隔壁20fに一体的に形成されている。
【0035】
また、この例において、隔壁20fは、大流量用スクロール26から環状流路に流出するガス流路に急拡大部や段差部がなく、かつ熱応力を低減するように円筒形と接頭円錐形で構成されている。
同様に、隔壁20eは、小流量用スクロール24から環状流路に流出するガス流路に急拡大部や段差部がなく、かつ熱応力を低減するように先端部分が円筒形または接頭円錐形で構成されている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0036】
図6は、本発明の可変容量ターボチャージャの第4実施形態図である。
この例において、タービンハウジング20は、外壁20a、20cの外周部に設けられたフランジ21a,21bで分割して製作し、ボルト等で連結されている。
その他の構成は第3実施形態と同様である。
【0037】
図7は、本発明の可変容量ターボチャージャの第5実施形態図である。
この図において、本発明の可変容量ターボチャージャは、大流量用スクロール26の前記合流点25の上流側に設けられ、環状流路22へ流出するガス流を旋回させる複数の大流量用静翼42を併有する。また、20gは大流量用静翼42の設置に伴い増設する隔壁である。
その他の構成は、図4の第3実施形態と同様である。
この構成により、大流量用スクロール26の合流点25の上流側に設けられた複数の大流量用静翼42により、環状流路22へ流出するガス流を旋回させることができる。この場合の旋回方向も、タービンインペラ10の回転方向である。
【0038】
図8は、本発明の可変容量ターボチャージャの第6実施形態図である。この図において、(A)は図4の第3実施形態と同様の断面図、(B)はそのB−B線における部分断面図、(C)はC−C矢視図である。
【0039】
この例では、第3実施形態の図5における大流量用スクロール26のガス流入口26aを流量調整可能に開閉する流量調節弁32は無く、その代わりに、複数の大流量用静翼43と可変ノズル装置44を備えている。
複数の大流量用静翼43は、スピンドル部43aと一体の可変ノズルであり、大流量用スクロール26の合流点25の上流側に設けられ、環状流路22へ流出するガス流を旋回させるようになっている。
また、可変ノズル装置44は、この例では周方向に揺動可能な同期リング45と、スピンドル部43aに固定され同期リング45に回転可能に連結したベーンレバー46とからなり、同期リング45の周方向への揺動により、複数の大流量用静翼43を揺動させてその出口流路面積を可変制御するようになっている。
その他の構成は、図7の第5実施形態と同様である。
【0040】
この構成により、排気ガスの小流量時に可変ノズル装置44を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて可変ノズル装置44の開度を調整することができる。
【0041】
上述した本発明の構成によれば、タービンハウジング20が、タービンインペラ10のガス流入口12を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路22を有し、この環状流路22の半径方向外端近傍の合流点25で小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26からのガス流が互いに合流するので、合流後の排ガス流路(すなわち環状流路)に急拡大部や段差部が少なく損失を低減できる。
【0042】
また、排気ガスの小流量時に流量調節弁30又は可変ノズル装置を全閉して、複数の小流量用静翼27を有する小流量用スクロール24のみから環状流路22に排ガス1を流出するので、環状流路22の半径方向外端近傍に旋回流を形成することができる。
ここで、環状流路内を半径方向内向きに流れる間に,角運動量保存則により旋回流の旋回速度が増加するので、インペラ動翼(タービンインペラ)に流入する排気ガス流速を高くできる。従って、特に排気ガスの小流量時におけるターボチャージャの加速特性を改善できる。
また、小流量用静翼又は大流量用静翼とインペラ動翼が離れる事により、静翼による励振力が小さくなり、インペラ動翼の共振破損を抑制することができる。
【0043】
また、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて流量調節弁30又は可変ノズル装置の開度を調整すると、小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26からの排気ガス1が環状流路内の合流点25で合流するが、環状流路22の半径方向外端近傍で合流するので、板厚分流路が広がってしまう部分の流速が遅くなり、合流損失を少なくできる。
【0044】
さらに、小流量用スクロール24と大流量用スクロール26を仕切る隔壁20fは、タービンインペラ10の軸線を囲む円筒形又は接頭円錐形で構成されるので、隔壁20fを隔てて温度差があっても発生する熱応力を低くできる。
【0045】
さらに、本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) インペラ動翼入口部の流路の段差を回避できる。
(2) 小流量用静翼の翼弦長を短くし、翼枚数を削減し、翼形状を簡単にできる。
(3) 小流量用スクロール24及び大流量用スクロール26のガス流量を1個の流量調節弁30又は可変ノズル装置により調整することで故障率を低減できる。
(4) 大流量用スクロール26に流すガス流量を小流量時にも微量のガスを流すことで、流路拡大の影響をその下流に及ぼさないようにし、小/中流量時には当該流路の合流部への流入部において低速のガスが染み出すように合流することで、合流損失を抑制できる。
(5) 大流量用スクロール26の出口部には静翼を設置せず、当該スクロールから合流する排気ガスにより旋回流速を減速させることにより、インペラ動翼入口部のチョーク流量を大きく設定できる。
(6) 大流量用スクロール26の出口部に静翼を設置し、当該スクロールから合流する排気ガスにより旋回流速を調整し、中/大流量時にもインペラ動翼の衝動度を維持することができる。
(7) 静翼を可変にして、当該スクロールから合流する排気ガスにより旋回流速をよりきめ細かく調整し、タービン性能を向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の可変容量ターボチャージャの第1実施形態図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本発明の可変容量ターボチャージャの第2実施形態図である。
【図4】本発明の可変容量ターボチャージャの第3実施形態図である。
【図5】図4のA−A矢視図である。
【図6】本発明の可変容量ターボチャージャの第4実施形態図である。
【図7】本発明の可変容量ターボチャージャの第5実施形態図である。
【図8】本発明の可変容量ターボチャージャの第6実施形態図である。
【図9】特許文献1のエンジン排気システムの模式図である。
【図10】特許文献2の可変容量ターボチャージャの模式図である。
【図11】特許文献3の可変ノズル装置の模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1 排気ガス、
10 タービンインペラ、12 外周(ガス流入口)、
20 タービンハウジング、20a,20b,20c 外壁、
20d 内壁、20e,20f,20g 隔壁、21 接合箇所、
21a,21b フランジ、22 環状流路、
24 小流量用スクロール、24a ガス流入口、
25 合流点、26 大流量用スクロール、26a ガス流入口、
27 小流量用静翼、28 ガス流入マニホールド、
30 流量調節弁、32 揺動弁、40 制御装置、
42 大流量用静翼、43 大流量用静翼(可変ノズル)、
43a スピンドル部、44 可変ノズル装置、
45 同期リング、46 ベーンレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスで回転駆動されるタービンインペラを囲みその外周に排気ガスを供給するタービンハウジングを備え、
該タービンハウジングは、タービンインペラのガス流入口を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路と、
該環状流路の半径方向外端近傍で互いに合流する合流点を有する小流量用スクロール及び大流量用スクロールと、
小流量用スクロール及び大流量用スクロールのガス流入口にエンジンからの排気ガスを供給するガス流入マニホールドとを有し、
前記小流量用スクロールは、前記合流点の上流側に、環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の小流量用静翼を有しており、
さらに、ガス流入マニホールドに設置され、小流量用スクロールのガス流入口を常時開放し、大流量用スクロールのガス流入口を流量調整可能に開閉する流量調節弁と、
該流量調節弁を制御する制御装置とを備え、
排気ガスの小流量時に前記流量調節弁を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記流量調節弁の開度を調整する、ことを特徴とする可変容量ターボチャージャ。
【請求項2】
タービンインペラの軸心からの前記合流点までの半径位置Rは、タービンインペラのガス流入口の半径位置rの1.2倍以上、10倍以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量ターボチャージャ。
【請求項3】
前記大流量用スクロールの前記合流点の上流側に設けられ、前記環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の大流量用静翼を併有する、ことを特徴とする請求項1に記載の可変容量ターボチャージャ。
【請求項4】
エンジンの排気ガスで回転駆動されるタービンインペラを囲みその外周に排気ガスを供給するタービンハウジングを備え、
該タービンハウジングは、タービンインペラのガス流入口を囲み半径方向外方に延び、段差を含む流路面積の急な変化が無い環状流路と、
該環状流路の半径方向外端近傍で互いに合流する合流点を有する小流量用スクロール及び大流量用スクロールと、
小流量用スクロール及び大流量用スクロールのガス流入口にエンジンからの排気ガスを供給するガス流入マニホールドとを有し、
さらに、前記大流量用スクロールの前記合流点の上流側に設けられ、前記環状流路へ流出するガス流を旋回させる複数の大流量用静翼と、
該大流量用静翼を揺動させてその出口流路面積を可変制御する可変ノズル装置とを備え、
排気ガスの小流量時に前記可変ノズル装置を全閉し、排気ガスの流量の漸増或いは漸減に合わせて前記可変ノズル装置の開度を調整する、ことを特徴とする可変容量ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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