説明

可変容量型圧縮機

【課題】圧縮機の流量検出に係る要素の調整作業及び校正作業を従来よりも簡便に実施することができる可変容量型圧縮機の提供にある。
【解決手段】ハウジング11に接合されるフランジ部材が備えられ、フランジ部材は外部冷媒回路36とハウジング11内の冷媒通路との間にフランジ通路を形成し、フランジ通路中の冷媒ガスの差圧により可動され、かつ磁石を有する可動体53と、磁石57の磁束密度を検出する検出センサを有し、検出センサが検出する磁束密度に基づいて冷媒ガスの流量を検知する可変容量型圧縮機であり、可動体53はフランジ部材に可動自在に装着され、検出センサはフランジ部材に固定され、フランジ部材は、可動体53及び検出センサを備えた状態でハウジング11に対して着脱自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変容量型圧縮機に関し、特に、冷媒ガスの流量の変化に対応して移動する可動体を備え、可動体が有する磁石の磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づき冷媒ガスの流量を検出する可変容量型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、従来から知られている可変容量型圧縮機(以下、単に「圧縮機」という)は、容量制御弁の開度を調整することにより斜板の傾斜角度を変更し、吐出容量を変更するように構成されている。
【0003】
しかし、吐出容量の変更制御では、容量制御弁に流量変更指令を出すのみで、実際の冷媒ガスの流量を知ることができないという問題がある。
また、吐出容量が変更されると圧縮機の動力も変化するが、圧縮機の動力は流量指令値に基づく計算値により推測しているのが現状である。
【0004】
従って、流量変更指令後の吐出容量が指令値に達するまでの間、実際の圧縮機の動力は流量指令値に基づく計算値と異なり、誤差が生じる。
特に車両エンジンの運転開始時に圧縮したような場合は誤差が大きくなる。
このため、必要な車室内温度に達する時間が長くなったり、車両側のエンジンへの負担が増加するなど、適切な制御を行いにくい状態がある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
圧縮機において冷媒ガスの流量を正確に検出できれば、実際の吐出容量や動力を計算によって知ることができ、極めて有用である。
そこで、例えば、特許文献2に開示されるような電子流量計を利用し、圧縮機の流量を検出する方法が考えられる。
【0006】
特許文献2の第1図に開示される電子流量計は、面積流量計の本体のフロート(可動体に相当する。)の可動部位の上部に摺動用ガイドが設けられ、フロートの上面に設けたロッドを介してマグネットが固着されている。
そして、フロートの昇降につれて摺動用ガイドの内部をマグネットが昇降自在に変位する。
摺動用ガイドの外壁にホール素子(検出センサに相当する。)の薄膜と直角にマグネットの磁界が形成され、かつ、マグネットがホール素子の薄膜に平行して変位するように配設されている。ホール素子は制御手段と接続される。
【0007】
また、特許文献2の第2図に開示される電子流量計では、流路のオリフィスの前後に固設された高圧導圧路と低圧導圧路に接続する差圧検出部が設けられ、検出部をベロフラム(可動体に相当する。)によって気密に2分し、ベロフラムの両側にオリフィスにおける流路の圧力が伝達され、その差圧によりベロフラムに延設してあるマグネットが変位する。
また、マグネットの変位方向に直角にホール素子(検出センサに相当する。)を設け、マグネットはその磁極をホール素子に対抗させる構成となっている。ホール素子と制御手段とは接続される。
【0008】
特許文献2に開示された電子流量計を圧縮機に適用する場合であっても、流量検出に係る各部の寸法精度のばらつきにより、圧縮機毎に流量検出の精度がばらつくことが避けられない。
流量検出の精度を高めるためには、電子流量計を具備した圧縮機毎に必要な冷媒ガスを流して、マグネットやホール素子の位置を調整したり、ホール素子自体の校正等を実施すればよい。
【特許文献1】特開2002−332962号公報
【特許文献2】実開昭63−177715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された流量計を単に圧縮機に適用した場合、圧縮機のハウジング内に可動体や検出センサが組み付けられた状態にあり、圧縮機に冷媒ガスを通した上で、流量検出に係るこれらの要素の調整作業及び校正作業を行うことになるから、この種の作業は煩雑となることを回避できず、この場合、作業自体の自動化は非常に困難である。
また、現在の圧縮機の生産現場では、大量に生産される圧縮機の夫々に冷媒ガスを通すことは、コストや生産時間の増大を招く等の生産上の都合から事実上不可能という問題も存在する。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、圧縮機の流量検出に係る要素の調整作業及び校正作業を従来よりも簡便に実施することができる可変容量型圧縮機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明は、シリンダボア及びクランク室を具備するハウジング内に吸入圧領域及び吐出圧領域を含む冷媒通路が形成され、前記シリンダボア内にピストンが収容され、前記クランク室内に斜板が収容され、前記ハウジングに接合されるフランジ部材が備えられ、該フランジ部材は外部冷媒回路とハウジング内の冷媒通路との間にフランジ通路を形成し、該フランジ通路中の冷媒ガスの流量に応じて可動され、かつ磁石を有する可動体と、前記磁石の磁束密度を検出する検出センサを有し、前記斜板の傾斜角度は、前記クランク室内の圧力と前記シリンダボア内の圧力との前記ピストンを介した差に応じて制御され、吐出圧領域の圧力をクランク室に供給する給気通路と、クランク室の圧力を吸入圧領域に放出する抽気通路とを介してクランク室内の圧力調整を行ない、前記検出センサが検出する磁束密度に基づいて前記冷媒ガスの流量を検知する可変容量型圧縮機において、前記可動体は前記フランジ部材に可動自在に装着され、前記検出センサは前記フランジ部材に固定され、前記フランジ部材は、前記可動体及び前記検出センサを備えた状態で前記ハウジングに対して着脱自在であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、流量検出に係る要素である可動体及び検出センサがフランジ部材と一体となっており、フランジ部材はハウジングに対して着脱自在に備えられる。
このため、可動体及び検出センサを具備するフランジ部材を、例えば、調整及び校正のための機器に接続して、流量検出に係る要素の調整作業や校正作業等を実施することが可能となる。
つまり、可動体及び検出センサを具備するフランジ部材が圧縮機に装着されない状態で、流量検出に係る要素の調整作業や校正作業等を実施することが可能である。
なお、ここでいう流量検出に係る要素とは、少なくとも可動体及び検出センサを含むフランジ部材が具備する要素である。
【0013】
また、上記の可変容量型圧縮機において、前記フランジ部材と前記ハウジングとの間に断熱材が介在されてもよい。
この場合、高速回転により圧縮機の温度が上昇する場合があるが、フランジ部材とハウジングとの間に断熱材が介在されていることから、圧縮機の熱は断熱材により遮られる。
このため、圧縮機の熱はフランジ部材へ伝わりにくく、圧縮機の熱による検出センサの測定誤差を少なくすることができ、特に、圧縮負荷が低くても駆動が継続されるクラッチレス式の圧縮機に対して効果的である。
【0014】
また、上記の可変容量型圧縮機において、前記フランジ通路に絞り部が介在され、前記絞り部はフランジ部材に備えられ、前記検出センサは前記フランジ通路における前記絞り部の上流側及び下流側の2点間の差圧に基づく磁束密度を検出するようにしてもよい。
この場合、フランジ部材に備えられる絞り部がフランジ通路に介在され、検出センサは前記フランジ通路における絞り部の上流側及び下流側の2点間の差圧に基づく磁束密度を検出する。
このため、冷媒ガスの流体抵抗に基づく誤差の影響を受けることなく、正確に冷媒ガスの流量検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧縮機の流量検出に係る要素の調整作業及び校正作業を従来よりも簡便に実施することができる可変容量型圧縮機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る可変容量型圧縮機(以下、単に「圧縮機」と表記する)について説明する。
図1は本願発明を実施した圧縮機の概要を示す。
圧縮機のハウジング11はシリンダブロック12と、シリンダブロック12の前端に接合されるフロントハウジング13と、シリンダブロック12の後端に接合されるリヤハウジング14から形成されている。
なお、説明の便宜上、図1における左方を前方とし、また、右方を後方とする。
【0017】
シリンダブロック12とフロントハウジング13は、制御室としてのクランク室15をハウジング11内に区画形成する。
クランク室15内には、駆動軸16が回転可能に配設されている。
駆動軸16は、車両に積載されたエンジン17に作動連結され、エンジン17からの動力供給によって回転駆動される。
この実施形態では、エンジン17の動力が常に駆動軸16に伝達される構成を採用しており、圧縮機としてはクラッチレス式可変容量型圧縮機である。
【0018】
クランク室15において、駆動軸16上にはラグプレート18が一体回転可能に固定されている。
また、クランク室15内には斜板19が収容されている。
斜板19は設定された傾斜角で駆動軸16に嵌合し、駆動軸16の軸線方向に傾動可能に支持されるとともに駆動軸16上を摺動可能に設けられている。
ヒンジ機構20はラグプレート18と斜板19との間に介在されている。
従って、斜板19はヒンジ機構20を介してラグプレート18及び駆動軸16と同期回転するとともに、駆動軸16の軸線方向に対して傾動する。
また、斜板19の傾斜角は後述する容量制御弁34によって制御される。
【0019】
シリンダブロック12には複数(図1には一つのみ示す)のシリンダボア21が形成されており、各シリンダボア21内には片頭型のピストン22が往復動可能に収容されている。
各ピストン22はシュー23を介して斜板19の外周部に係留されている。
従って、駆動軸16の回転に伴う斜板19の回転運動がシュー23を介してピストン22の往復運動に変換される。
【0020】
シリンダブロック12とリヤハウジング14の間に弁・ポート形成体24が介装されており、シリンダボア21の背面側(図1の右方)には、ピストン22と弁・ポート形成体24とにより囲まれた圧縮室25が区画されている。
リヤハウジング14の内部には、吸入圧力領域としての吸入室26及び吐出圧領域としての吐出室27がそれぞれ区画形成されている。
吸入室26及び吐出室27は圧縮機における冷媒通路である。
【0021】
そして、吸入室26の冷媒ガスは、各ピストン22が上死点位置から下死点位置へ移動することにより、弁・ポート形成体24に形成された吸入ポート28及び吸入弁29を介して圧縮室25に吸入される。
圧縮室25に吸入された冷媒ガスは、ピストン22が下死点位置から上死点位置へ移動することにより所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体24に形成された吐出ポート30及び吐出弁31を介して吐出室27に吐出される。
【0022】
ところで、クランク室15と吸入室26とを連通する抽気通路32がシリンダブロック12に形成されている。
抽気通路32はクランク室15の圧力を吸入室26へ放出するための通路である。
また、吐出室27とクランク室15とを連通する給気通路33がシリンダブロック12及びリヤハウジング14にわたって形成されている。
給気通路33は吐出室27の圧力をクランク室15へ供給するための通路である。
リヤハウジング14において、給気通路33の途中には容量制御弁34が配設されている。
【0023】
なお、容量制御弁34は、第1検圧回路35を介して吸入室26と連通されており、吸入室26の圧力に応じて容量制御弁34の開度が調整される。
そして、容量制御弁34の開度を調節することで、給気通路33を介してクランク室15へ導入される高圧冷媒ガスの導入量と抽気通路32を介してクランク室15から導出される冷媒ガス導出量とのバランスが制御され、クランク室15の内圧が決定される。
クランク室15の内圧に応じて、ピストン22を介したシリンダボア内21の内圧との差が変更され、斜板19は駆動軸16に対する傾斜角が変更される。
この結果、圧縮機はピストン22のストローク、即ち冷媒ガスの吐出容量を変更することができる。
【0024】
例えば、クランク室15の内圧が低下すると斜板19の傾斜角が増大し、圧縮機の吐出容量が増大される。
図1の二点鎖線で示した斜板19はラグプレート18に当接した最大傾斜角度の状態を示している。
逆に、クランク室15の内圧が上昇すると斜板19の傾斜角度は減少し、圧縮機の吐出容量が減少される。
図1の実線で示した斜板19は最小傾斜角度の状態を示している。
【0025】
車両用空調装置の冷媒回路(冷凍サイクル)は、冷媒回路の一部としての圧縮機と、圧縮機の吐出室27及び吸入室26に接続される外部冷媒回路36と、から構成されている。
なお、冷媒としては、例えば、二酸化炭素やフロンが用いられている。
外部冷媒回路36は、吐出室27側から順に、凝縮器37、レシーバタンク38、膨張弁39及び蒸発器40を備えている。
また、凝縮器37とレシーバタンク38を繋ぐ冷媒通路には、冷媒の圧力を検出する圧力センサ41が配設される。
圧力センサ41の検出信号は電気的な接続線42、データ入力手段43及び接続線44を介してアンプ45に送信される。
アンプ45は容量制御弁34を制御し、アンプ45からの吐出容量変更指令は接続線61を介して容量制御弁34に発信される。
アンプ45は、後述する磁気センサ60からの冷媒ガスの流量に関するデータと、データ入力手段43からの車室内温度情報と、圧縮機の圧力センサ41からの冷媒ガスの圧力データ等を有する。
さらに、アンプ45は図示しないエンジン制御手段と接続されている。
【0026】
ところで、シリンダブロック12の上面には、図2〜図4に詳細を示した流量検出装置が設置されている。
流量検出装置は、シリンダブロック12に外側に接合されるフランジ部材としての吐出フランジ46に備えられており、吐出フランジ46に収容される可動体53と、可動体53を付勢する付勢部材としてのコイルスプリング56と、吐出フランジ46の表面に固定される検出センサとしての磁気センサ60から主に構成される。
【0027】
吐出フランジ46は図示しない接合用ボルトによりシリンダブロック12に対して着脱自在に接合されている。
吐出フランジ46とシリンダブロック12との間には断熱材としてのガスケット47が介在されている。
ガスケット47は、ゴム又は樹脂による断熱性材料から形成され、ハウジング11側の熱を吐出フランジ46に伝え難くしている。
【0028】
吐出フランジ46がシリンダブロック12に接合された状態では、吐出フランジ46の内部にはフランジ通路が形成される。
フランジ通路は、図2に示すように、吐出フランジの隔壁46aに設けた絞り52を介して連通される高圧空間48a及び低圧空間48bと、低圧空間48bと連通される流通路51と、低圧空間48bと連通する密封室49と、密封室49と高圧空間48aを連通する連通路50を含む。
吐出フランジ46における隔壁46aはフランジ通路の絞り52を形成することから絞り部に相当し、高圧空間48aは絞り部としての隔壁46aの上流側であって、低圧空間48bは絞り部の下流側である。
吐出フランジ46内には、連通路50を介して高圧空間48aと連通する有底円筒形状の密封室49が形成され、その内部にスプールから成る可動体53が一定の距離を摺動することができるように収容されている。
【0029】
可動体53は、図2に示すように、上端大径部54と下端小径部55を有する円柱状の形態を呈している。
下端小径部55は密封室49の内壁との間に隙間を有し、この隙間に可動体53を上方へ付勢する付勢部材としてのコイルスプリング56が設けられる。
コイルスプリング56は可動体53に後述する差圧が作用したとき、所定位置にて釣り合うようにばね定数が設定されている。
上端大径部54には、磁石57が埋設されている。
なお、上端大径部54の外径は密封室49の内径にほぼ対応しており、両者の隙間は密封室49内における可動体53の摺動を許容する程度の微小な隙間となっている。
下端小径部55の下端部とコイルスプリング56の下端を支持する有孔の係止部材58が、吐出フランジ46における密封室49内壁の下端付近に取り付けられており、係止部材58は可動体53とコイルスプリング56の密封室49からの脱落を防止する。
上端大径部54の上端面は高圧空間48aの圧力を受ける受圧面であり、下端小径部55の下端面は低圧空間48bの圧力を受ける受圧面である。
【0030】
吐出フランジ46の上面には、可動体53の磁石57と対向する磁気センサ60が取付部材59により固定されている。
磁気センサ60は磁石57の磁束密度を検出する検出センサである。
磁気センサ60と吐出フランジ46との間に所定の隙間が空けられ、磁気センサ60がハウジング11側の熱の伝達を直接受けないようにしている。
さらに、磁気センサ60を保持する断熱材としての取付部材59は、ゴム又は樹脂による断熱性材料により形成されており、取付部材59を通じた磁気センサ60への熱伝導を防止するようにしている。
【0031】
磁気センサ60は接続線65を介してアンプ45に接続されている。
アンプ45では 磁気センサ60からの出力に基づき、磁気センサ60と磁石57との距離が接近したとき、高圧空間48aと低圧空間48bとの差圧が小さいと認識し、磁石57との距離が離れたとき両者48a、48bの差圧が大きいと認識する機能を有する。
なお、吐出フランジ46内に形成された高圧空間48aは、図1に示したように、リヤハウジング14に形成された吐出通路62、63、64を介して吐出室27に連通する。
従って、高圧空間48aは吐出室27から吐出された高圧の冷媒ガスの供給を受けることができる。
なお、図2に示すシリンダブロック12には、フロントハウジング13及びリヤハウジング14との接合を図る通しボルトのためのボルト用通孔67が形成されている。
【0032】
上記の構成によれば、高圧の冷媒ガスの供給を受けることにより、高圧空間48aから絞り52を通じて低圧空間48bへ冷媒ガスが導入され、低圧空間48bにける冷媒ガスの圧力は高圧空間48aと比較して低下した状態にある。
このため、上端大径部54の端面が受ける高圧の冷媒ガスと、連通路50を通じて密封室49へ導入され、下端小径部55に作用する低圧の冷媒ガスとの2点間の流量差圧により、可動体53は密封室49内において上下に摺動する。
容量制御弁34の制御により吐出容量が変更されると、吐出室27の吐出容量が変化するため、可動体53に作用する流量差圧が変化し、可動体53は流量差圧に応じて図3の上方又は下方へ移動する。
例えば、吐出容量が増加すると、流量差圧が増大するため可動体53は、図3の場合では下方へ移動する。
因みに、図4は最大吐出容量における可動体53の状態を示す図であり、この場合、可動体53は最も下方へ移動する。
【0033】
流量差圧に応じて可動体53が移動すれば、磁気センサ60に対する磁石57の磁束密度は変化する。
磁気センサ60が検出する磁束密度に基づき冷媒ガスの流量を知ることができる。
アンプ45は磁気センサ60により得られる冷媒ガスの流量データに基づいてリアルタイムで吐出容量を算出して容量制御弁34へのフィードバック制御行い、最適な吐出容量制御が行われる。
さらに、冷媒ガスの流量が得られることから圧縮機のトルクも算出することが可能となり、アンプ45はエンジン制御手段に対して流量に応じたフィードバック制御を行い、最適なエンジン回転数制御が実施される。
【0034】
次に、第1の実施形態に係る圧縮機における流量検出装置の調整及び校正について説明する。
この実施形態では、可動体53と、コイルスプリング56と、係止部材58、磁気センサ60と、取付部材59は、吐出フランジ46に具備されている。
このため、流量検出に係る各要素の調整や校正は、必ずしも、吐出フランジ46を圧縮機のハウジング11に取り付けた状態で行う必要がない。
例えば、吐出フランジ46を圧縮機から取り外し、図5に示す流量検出装置調整器Tに吐出フランジ46を装着する。
吐出フランジ46が装着された流量検出装置調整器Tは、圧縮機におけるフランジ通路とほぼ同等の試験通路を形成する。
調整や校正に必要な冷媒ガスを流量検出装置調整器T及び吐出フランジ46に通し、冷媒ガスの流量に応じて磁気センサ60の出力を確認する。
磁気センサ60による出力に基づく冷媒ガスの流量と、実際に流量検出装置調整器T及び吐出フランジ46を通過する冷媒ガスの流量との乖離があれば、各要素の調整や校正を行う。
【0035】
具体的な調整としては、取付部材59に対する磁気センサ60の取付位置、コイルスプリング56の付勢力の調整、可動体53に対する磁石57の取付位置であり、校正としては磁気センサ60の出力の校正である。
特に、圧縮機の製造においては、圧縮機が大量生産されることが多いが、流量検出装置調整器Tを用いて各要素の調整や校正を行えば、各圧縮機に吐出フランジ46を夫々取り付ける必要がない。
【0036】
この実施形態に係る圧縮機によれば以下の効果を奏する。
(1)流量検出装置を構成する可動体53と、コイルスプリング56と、係止部材58、磁気センサ60と、取付部材59は、いずれも吐出フランジ46に具備されるから、これらの各要素が具備された吐出フランジ46を取り扱うようにすれば、流量検出装置の各要素の調整や校正は、必ずしも、吐出フランジ46を圧縮機のハウジング11に取り付けた状態で行う必要がなく、圧縮機の流量検出に係る要素の調整作業及び校正作業を従来よりも簡便に実施することができる
(2)製造過程において、流量検出に係る各要素を備えた吐出フランジ46のみを取り扱うことにより、流量検出に係る各要素の調整や校正の自動化も期待できる。
(3)吐出フランジ46とハウジング11との間には断熱性材料により形成されたガスケット47を介在されるので、ハウジング11の熱が吐出フランジ46に伝わり難くなっており、磁気センサ60に対する熱の悪影響を抑制することができる。また、磁気センサ60を保持する取付部材59も断熱性材料により形成されているほか、磁気センサ60と吐出フランジ46との間に所定の隙間が空いていることにより、ハウジング11の熱の吐出フランジ46への伝導がさらに抑制される。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る圧縮機について図6に基づき説明する。
第2の実施形態は、吐出フランジの構造と、この吐出フランジに対する磁気センサの取付構造が第1の実施形態と異なる。
この実施形態の圧縮機の基本構造は、第1の実施形態と同様であることから、圧縮機において共通する構成の説明は第1の実施形態の説明を援用する。
【0038】
この実施形態の吐出フランジ71におけるフランジ通路は、図6に示すように、高圧流体室72と、連通路74と、流通路75と、密封室73と連通する分岐路76を含む。
吐出フランジ71の内部に形成された密封室73の上方において、さらに空間部85が形成されており、この空間部85に磁気センサ84が収容される。
磁気センサ84は、断熱性材料により形成された取付部材83を介して収容され、抜け止めのCリング82が可動体77を臨む側に装着される。
なお、可動体77は上端小径部78と、下端大径部79と、磁石81を有し、コイルスプリング80により下方へ付勢され、差圧が存在しないとき下端大径部79は連通路74の内壁下部に当接する。
この実施形態では、磁気センサ60からの出力に基づき、磁気センサ60と磁石57との距離が接近したとき、アンプは高圧流体室72と流通路75との差圧が大きいと認識し、磁石57との距離が離れたとき両者72、75の差圧が小さいと認識する機能を有する。
この実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が期待できる。
【0039】
本発明は、上記した第1、第2の実施形態に限定されるものではなく例えば、以下のように、発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の第1、2の実施形態では、いずれも可動体の摺動方向を上下としたが、必ずしも上下方向に限定する趣旨ではなく、フランジ部材としての吐出フランジはハウジングの上下左右、前後といずれの位置に設けることを妨げない。この場合、可動体の摺動方向をフランジ部材の取付位置に対応する方向に設定してもよいし、あるいは、吐出フランジの接合位置と関係無く可動体の摺動方向を設定してもよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、いずれも吐出側の冷媒ガスの流量検出を行う構成としたが、吸入側の冷媒ガスの流量検出を除外する趣旨ではない。例えば、圧縮機の吸入室と外部冷媒回路に間に、フランジ部材としての吸入フランジを設け、吸入フランジに可動体、磁気センサ等を設け、吸入側の冷媒ガスの流量検出を行うようにしてもよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、フランジ通路に絞り部を介在させ、検出センサをフランジ通路における絞り部の上流側及び下流側の2点の差圧を検出するセンサとしたが、検出センサは、例えば、フランジ通路内において流体抵抗に応じてフランジ通路を開閉する逆止弁としての機能を有する逆止弁タイプのセンサとしてもよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、フランジ部材を金属製としたが、フランジ部材を樹脂等の断熱性材料により形成してもよく、この場合、金属製のフランジ部材よりも磁気センサに熱が伝わり難くなるほか、ガスケットや取付部材を断熱性材料に限定する必要がなくなったり、さらに言うと、ガスケットや取付部材の省略も可能となる。取付部材を省略する場合、磁気センサを直接フランジ部材に取り付ければよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、可動体を用いた可変絞り弁の一例を示したが、可変絞り弁の構造は、第1、第2の実施形態に示す構造に限らず、冷媒ガスの差圧に応じて可動体が移動できる構造であればよく、高圧流体室、連通路、流通路、分岐路の構造も適宜変更可能である。
○ 上記の第1の実施形態では、第1検圧回路の吸入圧に基づいて制御される容量制御弁としたが、容量制御弁は、外部冷媒回路と連通する第2検圧回路を介し、制御信号及び両検圧回路の2点間差圧に基づいて開度が調整される流量差圧制御弁を用いてもよいし、電磁力のみで弁体の開弁量を制御するON/OFF電磁弁としてもよい
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態に係る可変容量型圧縮機の縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A線の矢視図である。
【図3】流量検出装置を拡大して示す断面図である。
【図4】流量検出装置の作動状態を示す断面図である。
【図5】流量検出装置の調整及び校正の作業を説明する説明図である。
【図6】第2の実施形態に係る可変容量型圧縮機の流量検出装置を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0041】
11 ハウジング
12 シリンダブロック
15 クランク室
16 駆動軸
22 ピストン
27 吐出室
34 容量制御弁
36 外部冷媒回路
46 吐出フランジ
46a 隔壁
47 ガスケット
48a 高圧空間
48b 低圧空間
49、73 密封室
50、74 連通路
51、75 流通路
52 絞り
53、71 可動体
56、80 コイルスプリング
57、81 磁石
59、83 取付部材
60、84 磁気センサ
72 高圧流体室
76 分岐路
T 流量検出装置調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボア及びクランク室を具備するハウジング内に吸入圧領域及び吐出圧領域を含む冷媒通路が形成され、前記シリンダボア内にピストンが収容され、前記クランク室内に斜板が収容され、前記ハウジングに接合されるフランジ部材が備えられ、該フランジ部材は外部冷媒回路とハウジング内の冷媒通路との間にフランジ通路を形成し、該フランジ通路中の冷媒ガスの流量に応じて可動され、かつ磁石を有する可動体と、前記磁石の磁束密度を検出する検出センサを有し、前記斜板の傾斜角度は、前記クランク室内の圧力と前記シリンダボア内の圧力との前記ピストンを介した差に応じて制御され、吐出圧領域の圧力をクランク室に供給する給気通路と、クランク室の圧力を吸入圧領域に放出する抽気通路とを介してクランク室内の圧力調整を行ない、前記検出センサが検出する磁束密度に基づいて前記冷媒ガスの流量を検知する可変容量型圧縮機において、
前記可動体は前記フランジ部材に可動自在に装着され、
前記検出センサは前記フランジ部材に固定され、
前記フランジ部材は、前記可動体及び前記検出センサを備えた状態で前記ハウジングに対して着脱自在であることを特徴とする可変容量型圧縮機。
【請求項2】
前記フランジ部材と前記ハウジングとの間に断熱材が介在されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量型圧縮機。
【請求項3】
前記フランジ通路に絞り部が介在され、前記絞り部はフランジ部材に備えられ、前記検出センサは前記フランジ通路における前記絞り部の上流側及び下流側の2点間の差圧に基づく磁束密度を検出することを特徴とする請求項1又は2記載の可変容量型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303416(P2007−303416A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133838(P2006−133838)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】