説明

可変減衰器

【課題】 従来の可変減衰器では、高周波信号を損失少なく通過させる基準状態と、所望の減衰量を得る減衰状態との間で、通過位相差を生じてしまうという課題があった。
【解決手段】 入出力間FET3と並列、定位相可変減衰器4と直列に位相補正用FET5を設置することで、入出力間FET3がオン状態のときは位相補正用FET5をオフ状態とし、入出力間FET3がオフ状態のときは位相補正用FET5をオン状態とすることによって、基準状態と減衰状態との間で通過位相を等しくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波やミリ波等の高周波信号を減衰する可変減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変減衰器は、入力端子と出力端子との間に設けられた入出力間FET(field-effect transistor)と入出力間FETのソース電極とドレイン電極間に直列接続された複数のπ型減衰器で構成される。入出力間FETをオン状態とし、すべてのπ型減衰器をオフ状態としたときを基準状態、入出力間FETをオフ状態とし、1つまたは複数のπ型減衰器をオン状態としたときを減衰状態とすると、高周波信号を損失少なく通過させたい場合は基準状態、所望の減衰量を得たい場合は減衰状態とすることで可変減衰器として動作させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の可変減衰器では、基準状態と減衰状態を比べると、入出力間FETのオフ容量の作用によって、両者の間に通過位相差が生じてしまうという問題があった。
【0005】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、高周波信号通過時に、基準状態の通過位相と減衰状態の通過位相を等しくすることができる可変減衰器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による可変減衰器は、入力端子と出力端子の間に接続された入出力間FETと、上記入出力間FETのドレインとソースの間に、直列接続された少なくとも2つの定位相可変減衰器と、上記少なくとも2つの定位相可変減衰器の間に接続された位相補正用FETと、上記入出力間FETおよび位相補正用FETのオン状態とオフ状態とが、相互に反転した状態で、オン状態もしくはオフ状態に動作させる制御回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、高周波信号の通過時に、基準状態の通過位相と減衰状態の通過位相とを等しくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る実施の形態1による可変減衰器の構成を示した図である。
図において、実施の形態1の可変減衰器は、入出力間FET(field-effect transistor)3と、少なくとも2つの定位相可変減衰器4と、位相補正用FET5と、FET制御回路6と、インバータ7から構成される。
【0009】
入出力間FET3は、入力端子1と出力端子2との間に接続される。少なくとも2つの定位相可変減衰器4は互いに直列に接続され、入出力間FET3のソース電極とドレイン電極の間に並列に接続される。位相補正用FET5は、少なくとも2つの定位相可変減衰器4の間に、ソース電極及びドレイン電極が直列に接続される。FET制御回路6の出力端子は、入出力間FET3のゲート電極に接続される。また、FET制御回路6の出力端子は、インバータ7の入力端子にも接続される。インバータ7の出力端子は、位相補正用FET5のゲート電極に接続される。
【0010】
次に、実施の形態1の可変減衰器の動作について説明する。
FET制御回路6から出力されたFET制御信号は、入出力間FET3のゲート電極に入力される。また、インバータ7で反転した制御信号は、位相補正用FET5のゲート電極に入力される。したがって、入出力間FET3がオン状態のときは、位相補正用FET5はオフ状態となり、入出力間FET3がオフ状態のときは、位相補正用FET5がオン状態となる。すなわち、FET制御回路6とインバータ7は、入出力間FET3および位相補正用FET5のオン状態とオフ状態とが、相互に反転した状態で、オン状態もしくはオフ状態に動作させる制御回路を構成している。
【0011】
入出力間FET3がオン状態、位相補正用FET5がオフ状態であって、なおかつ2つの定位相可変減衰器4が減衰作用を有さない通過状態の場合は、可変減衰器は基準状態となる。また、入出力間FET3がオフ状態、位相補正用FET5がオン状態であって、なおかつ定位相可変減衰器4の何れか一方または両方が減衰作用を得るように減衰動作する場合は、可変減衰器は減衰状態となる。ここで、個々の定位相可変減衰器4は、例えばπ型減衰器のような2ビット可変アッテネータから構成され、通過状態と減衰動作状態との間で、通過位相差は生じないものを用いる。
【0012】
図2は、基準状態の入出力間FET3と位相補正用FET5を等価回路で表した図である。図3は、減衰状態の入出力間FET3と位相補正用FET5を等価回路で表した図である。
実施の形態1の可変減衰器は、基準状態において、図2の等価回路に示すように、入出力間FET3はオン抵抗8、位相補正用FET5はオフ容量9となる。
また、減衰状態においては、図3の等価回路に示すように、入出力間FET3はオフ容量9、位相補正用FET5はオン抵抗8となる。
【0013】
図2と図3を見比べてわかるように、高周波信号が通過する際に位相を変化させる支配的要因となるオフ容量9が、基準状態と減衰状態の両方において、オン抵抗8と並列に同じ数だけ含まれている。このため、実施の形態1の可変減衰器によれば、基準状態と減衰状態の両方において、入力端子1と出力端子2の間における高周波信号の通過時に、通過位相を等しくすることができる。
【0014】
以上説明した通り、実施の形態1による可変減衰器は、入力端子1と出力端子2の間に接続された入出力間FET3と、入出力間FET3のドレインとソースの間に、直列接続された少なくとも2つの定位相可変減衰器4と、少なくとも2つの定位相可変減衰器4の間に接続された位相補正用FET5と、入出力間FET3および位相補正用FET5のオン状態とオフ状態とが、相互に反転した状態で、オン状態もしくはオフ状態に動作させる制御回路(FET制御回路6およびインバータ7)とから構成される。また、基準状態のときは、入出力間FET3をオン状態、位相補正用FET5をオフ状態とし、減衰状態のときは、入出力間FET3をオフ状態、位相補正用FET5をオン状態とする。
【0015】
このようにすることで、実施の形態1による可変減衰器の基準状態と減衰状態において、位相が変化する要因となる容量成分が同じ数だけ含まれるため、基準状態と減衰状態との間で通過位相を等しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る実施の形態1による可変減衰器の構成を示す図である。
【図2】基準状態の入出力間FET3と位相補正用FET5を等価回路で表した図である。
【図3】減衰状態の入出力間FET3と位相補正用FET5を等価回路で表した図である。
【符号の説明】
【0017】
1 入力端子、2 出力端子、3 入出力間FET、4 定位相可変減衰器、5 位相補正用FET、6 FET制御回路、7 インバータ、8 オン抵抗、9 オフ容量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子の間に接続された入出力間FETと、
上記入出力間FETのドレインとソースの間に、直列接続された少なくとも2つの定位相可変減衰器と、
上記少なくとも2つの定位相可変減衰器の間に接続された位相補正用FETと、
上記入出力間FETおよび位相補正用FETのオン状態とオフ状態とが、相互に反転した状態で、オン状態もしくはオフ状態に動作させる制御回路と、
を備えた可変減衰器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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