説明

可撓性ホース

【課題】本体部と補強部との接着性能の向上を図り、可撓性、保形性、耐久性のいずれにおいても優れ、しかも環境に優しい可撓性ホースを提供せんとする。
【解決手段】内面がほぼフラットの本体部3と、この本体部3の補強を行うために該本体部3に一部又は全部が埋設された螺旋状の補強部2とを備えてなる可撓性ホースにおいて、前記補強部2を、硬質のポリプロピレンを主成分とし、これにタルクを混合してなり、前記本体部3を、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、EVA樹脂およびポリプロピレンを混合して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を必要とする各種ホースとして使用したり、粒体や粉体を流通案内するホースの他、泥水や食品用液体などを流通案内するホースなど、気体や液体あるいは粒体や粉体を案内するものに用いられる可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
上記可撓性ホースは、軽量で保形性を必要とするだけでなく、可撓性を有するものが好ましい。その一例として、内部に硬質塩化ビニルでなる硬質補強部を埋入した断面がほぼ山型形状で軟質塩化ビニルでなる軟質樹脂帯状体と、内側を構成すると共に硫黄40〜80%の多硫化ゴムでなるゴム製(EPDMでなる)帯状体のそれぞれを、溶融状態で螺旋状に回転体に巻き付けることにより、可撓性ホースを構成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1では、外側周壁部を比重が1.2〜1.4の間に存在する軟質塩化ビニルで構成しているため、重量が重くなるという不都合があるだけでなく、焼却処理時に、ダイオキシン等の有毒ガスが発生するという不都合もある。また、軟質塩化ビニルでなる軟質樹脂帯状体に対して相溶性のないゴム製帯状体を溶融接着させるため、その接着力はあまり強く(大きく)ない。そのため、使用に伴い外側周壁部と内側周壁部とが剥がれてしまう等のトラブル発生があり、改善の余地があった。
【0004】
これに対して本出願人は、内面がほぼフラットで筒状の本体部と、この本体部の補強を行うために該本体部に一部又は全部が埋設された螺旋状の補強部とを備えてなる可撓性ホースにおいて、前記補強部を、主成分である硬質のポリプロピレンに硬質のポリエチレンとタルクとを混合してなり、前記本体部を、前記補強部と相溶性がある軟質のオレフィン系樹脂、具体的にはオレフィン系熱可塑性エラストマーにEVA樹脂を混合して構成したことを特徴とする可撓性ホースを提案した(特許文献2参照。)。
【0005】
この可撓性ホースによれば、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)に比べて比重の小さいオレフィン系樹脂で構成しているため軽量化を図ることができるとともに、ダイオキシン等の有毒ガスが発生せず、容易に焼却処理ができ、さらには、本体部を補強部と相溶性のある軟質のオレフィン系樹脂(オレフィン系エラストマーも含む)を主成分として構成したので、本体部をゴムだけで構成したものに比べて接着性能を高め、剥がれ難いホースを提供できるが、本体部のオレフィン系エラストマーにより発揮される可撓性の向上にかかわらず、偏平強度が十分でなく、本体部と補強部との更なる接着性能の向上が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特公昭59−52317号公報
【特許文献2】特開2005−155761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、本体部と補強部との接着性能の向上を図り、可撓性、保形性、耐久性のいずれにおいても優れ、しかも環境に優しい可撓性ホースを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、内面がほぼフラットの本体部と、この本体部の補強を行うために該本体部に一部又は全部が埋設された螺旋状の補強部とを備えてなる可撓性ホースにおいて、前記補強部を、硬質のポリプロピレンを主成分とし、これにタルクを混合して構成し、前記本体部を、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、EVA樹脂およびポリプロピレンを混合して構成したことを特徴とする可撓性ホースとした。
【0009】
ここで、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを50〜90重量%、前記EVA樹脂を9〜30重量%、および前記ポリプロピレンを1〜20重量%に設定して、前記本体部を構成するものが好ましい。
【0010】
また、前記本体部及び前記補強部がそれぞれ略同一の厚みで螺旋状に延びた内外面略フラットのホースに構成するものが好ましい実施例である。
【発明の効果】
【0011】
以上にしてなる本願発明に係る可撓性ホースは、以下の効果を奏する。
[1] 焼却時に灰分が少なく、有毒ガスが発生せず、容易に焼却処理ができるとともに、従来から使用されている材料のPVC(ポリ塩化ビニル樹脂)に比べてポリプロピレンの比重は小さく、略半分の重量に軽量化でき、環境面及び使用面のいずれにおいても優れたホースを提供できる。
[2] PVCにてホースを構成した場合に比べて、伸びに対して良好で(伸びにくい利点が)あり、水圧のかかるものに使用したときの耐久面において特に有利になる。
[3] 本体部を、補強部を構成する硬質のポリプロピレンと相溶性のあるオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分としているので、本体部をゴムだけで構成したものに比べて、本体部との接着性能を高めることができ、さらには、本体部に、前記補強部を構成するポリプロピレンと同じポリプロピレンを混合したので、相互の接着性能をより高めることができる。
[4] 補強部を、プラスチック素材の中でも比重が小さく、耐熱性及び耐油性に優れたポリプロピレンを主成分として構成しながらもタルクを混合することによって保形強度が向上する。
[5] 本体部にEVA樹脂を混合したので、溶融状態の材料の流動性の改善を行うことができ、成形上(製造上)において有利になるとともに、可撓性をより高めることができる。
[6] 本体部及び補強部がそれぞれ略同一の厚みで螺旋状に延びた内外面略フラットのホースに構成したので、内面側においては流動抵抗を軽減でき、外面側では塵の付着体積を防止することができるだけでなく、外面の拭き取り作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る可撓性ホースの全体構成を示す図であり、図1は代表的実施形態を示し、図中符号1はホース、2は補強部、3は本体部をそれぞれ示している。
【0014】
本発明のホース1は、図1に示すように、螺旋状に延びる略同一の厚みの補強部2と本体部3とが長手方向に沿って交互に接合された内外面略フラットのホースであり、補強部2は、硬質のポリプロピレンを主成分とし、保形強度を上げる目的のタルク、着色用の顔料(無くてもよい)を混合して構成されており、また、本体部3は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、EVA樹脂およびポリプロピレンを混合して構成され、溶融状態の本体部3の流動性を良好に維持することができる。
【0015】
補強部2は、具体的には、全体を100重量%として、前記硬質のポリプロピレン(PP)65〜75重量%、前記タルク25〜35重量%に設定することによって、ホースの剛性を上げることができながらも、低温時(−20℃)における衝撃力(人間がホースに実際に乗ったときの衝撃力とこれよりも衝撃力が大きくなるようにホースを床に所定速度にて叩きつけたときの衝撃力)による割れの発生を抑えることができる。
【0016】
また、本体部3は、好ましくは補強部2と相溶性のあるオレフィン系熱可塑性エラストマーを50〜90重量%、EVA樹脂を9〜30重量%、およびポリプロピレンを1〜20重量%に設定し、より好ましくは、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを60〜80重量%、EVA樹脂を13〜27重量%、およびポリプロピレンを7〜13重量%に設定し、ホースの使用目的に応じてEVA樹脂やポリプロピレンの範囲を設定することになる。
【0017】
このようなホースの製造方法としては、例えば補強部2と本体部3とを同時に連続溶融押出して成形したものを回転軸上に螺旋状に巻きつけ、順次溶着させることで得ることができ、本例では、補強部2の前後に本体部3の略半分の部分が一体成形されたものを螺旋状に巻きつけ、本体部3の略半分の部分同士を順次溶着して構成されている。
【0018】
本実施形態の可撓性ホース1は、図1に示すように、内面及び外面がほぼフラットに構成されているが、本発明はこのような構造に何ら限定されず、特に外面はホース長手方向に沿って凹凸に構成してもよい。とくに、本例では補強部2を本体部3と略同一の厚さに設定しているが、補強部2を断面視三角等に形成して本体部3から凸状に突出させたり、補強部2を本体部3に完全に埋設させ、本体部3とともに凸状に突出させることも好ましい。また、本体部を外面側および内面側の2層構造とし、その間に螺旋状の補強部を挟み込んだ構造とすることもでき、本体部の内面にポリプロピレンからなる内側被覆部をさらに備えたものや、本体部の外面にEVA樹脂からなる外側被覆部を備えることも可能である。
【実施例】
【0019】
次に、図1で示した代表的実施形態の構造のホースについて、原料配合を調整した実施例1、比較例1について特性を調べた結果について説明する。
【0020】
実施例1のホースは、補強部2を、硬質のポリプロピレン71.50重量%、タルク28.50重量%に設定して構成し、本体部3を、オレフィン系熱可塑性エラストマー75重量%、EVA樹脂15重量%、およびポリプロピレン10重量%に設定して構成した。また、比較例1のホースは、補強部2を、同じく硬質のポリプロピレン71.50重量%、タルク28.50重量%に設定して構成し、本体部3は、オレフィン系熱可塑性エラストマー80重量%、ポリプロピレン20重量%に設定して構成した。実施例1および比較例1の各ホースは、上記原料配合を除くホースの構造や寸法等は同じであり、外径寸法は約110.0mm、内径寸法は約101.0mm(±1.0mm)、補強部2のピッチPは約11.5mm、補強部2と本体部3の重量比は7:3に設定した。
【0021】
各種試験の結果を表1に示す。偏平強度は、一定速度で移動するクロスヘッドをもち、応力ひずみをグラフ化できる引張り圧縮試験機を使用し、試料ホースを2時間以上試験温度(常温)中におき、試料ホースの中央の外径を測定し、圧縮部長さを100mmとし、試料ホースを試験装置の中央にセットして圧縮速度50mm/minで荷重をかけ、荷重49N/cm時の外径変化率を測定した。可撓性は、1.2m以上の試料ホースを直管状態で測定温度(0℃、25℃)中に2時間以上おいた後、水平な台に乗せ、700mm突き出した状態にて固定し、先端から50mmの位置に荷重49Nを作用させた状態で1分後の垂れ下がり長さを測定した。耐水圧力は、試料ホースに水圧をかけ、破壊に至るまで圧力を加え測定した。最小曲げ半径は、試料ホースを湾曲させ、芯線の折れ曲がる直前の曲率半径を測定した。いずれの試験も数回行い、表1に示す範囲の結果となった。
【0022】
【表1】

【0023】
表1より、実施例1のホースでは、可撓性について0℃、25℃の何れにおいても比較例1のホースと比べ1.5倍〜3倍程度の値となり、可撓性が飛躍的に向上した。また、最小曲げ半径も比較例1のホースに比べて小さくなっており、格段に柔らかくフレキシブルな性能を有し、低温下でもよく曲がる優れた耐寒性を有していることが分かる。また、実施例1のホースでは、極度に曲げても補強部と本体部の剥離などが生じない強固な接着強度を有し、上記の優れた柔軟性を十分に発揮させることができることが分かる。また、実施例1のホースは、耐水圧力についても比較例より優れた十分な値を達成しており、高低差のある現場や水圧の高い給排水にも耐える優れた性能を有していることが分かる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る可撓性ホースの一部を断面にした側面図。
【符号の説明】
【0026】
1 ホース
2 補強部
3 本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面がほぼフラットの本体部と、この本体部の補強を行うために該本体部に一部又は全部が埋設された螺旋状の補強部とを備えてなる可撓性ホースにおいて、前記補強部を、硬質のポリプロピレンを主成分とし、これにタルクを混合して構成し、前記本体部を、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、EVA樹脂およびポリプロピレンを混合して構成したことを特徴とする可撓性ホース。
【請求項2】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを50〜90重量%、前記EVA樹脂を9〜30重量%、および前記ポリプロピレンを1〜20重量%に設定して、前記本体部を構成してなる請求項1記載の可撓性ホース。
【請求項3】
前記本体部及び前記補強部がそれぞれ略同一の厚みで螺旋状に延びた内外面略フラットのホースに構成してなる請求項1又は2記載の可撓性ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2008−261485(P2008−261485A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275112(P2007−275112)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】