可撓性導電体
【課題】導電性及び可撓性を有すると共に、更に熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体の提供。
【解決手段】導電層と可撓性支持体とを有し、前記可撓性支持体が、独立した空洞100を有する樹脂フィルム1を有し、前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体である。
【解決手段】導電層と可撓性支持体とを有し、前記可撓性支持体が、独立した空洞100を有する樹脂フィルム1を有し、前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線などに使用可能な可撓性導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(PC)、ポータブルナビゲーション、携帯電話等の電子機器の小型化が求められている。前記電子機器を小型化する方法としては、前記電子機器内の部品を小型化する方法が一般的ではあるものの、部品を多機能化する方法も有効な方法として知られるようになっている。部品を多機能化することにより、従来、個々の部品間に存在していた空間を圧縮できる。特に、フレキシブル配線などの導電体は前記電子機器内部に多く使用されているため、前記導電体を多機能化できれば、前記電子機器の小型化に大きく貢献できる。
【0003】
これまでに、多機能な導電体として、表面導電性ポリオレフィン系シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この表面導電性ポリオレフィン系シートは、ポリプロピレンからなる基材層の少なくとも片面に、平均粒径が0.1μm〜15μmの無機充填材、融点が180℃以上の結晶性樹脂及びガラス転移温度が80℃以上の非晶性樹脂の少なくとも1種類を含む表面比抵抗値が102Ω〜1010Ωである表面導電層を積層した構造である。この表面導電性ポリオレフィン系シートは、導電性及び可撓性を有する。可撓性を有することは、電子機器内の部品間の隙間などに自由に配置できることにつながり、電子機器の小型化に有効である。
また、多機能な導電体として、微細な非線形貫通孔を有する多孔質ポリアミドフィルムに導電性ポリマーを担持した導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この導電性フィルムは、微細な非線形貫通孔を有する多孔質構造を持ち、空孔率35%〜85%、孔径0.01μm〜5μm、厚み5μm〜50μmである多孔質ポリアミドフィルムであって、かつ、フィルムの断面方向に、微多孔質からなる層と相対的に大きな空隙又は開口部を有する層とが積層した構造を有し、かつ前記2層が貫通微細孔により互いに連結されている多孔質ポリアミドフィルムに、導電性ポリマーを担持した構造である。この導電性フィルムは導電性及び可撓性を有する。可撓性を有することは、電子機器内の部品間の隙間などに自由に配置できることにつながり、電子機器の小型化に有効である。
【0004】
しかしながら、前記電子機器の小型化において、前記電子機器内部の熱の伝達をコントロールしないと、以下のような問題がある。
前記電子機器内部にある電子部品の中には、熱に弱く、熱により動作不良や寿命低下などを起こす部品がある。一方、前記電子機器内にはCPUやハードディスクのように、発熱する部品がある。そして、前記電子機器を小型化することは、前記電子機器内部の空間を小さくすることにつながるため、前記電子機器内部の熱の伝達をコントロールしないと、発熱する部品から熱に弱い部品への熱が伝達し、熱に弱い部品は動作不良や寿命低下を起こす。
そのため、前記電子機器の小型化において、前記電子機器内部の熱をコントロールすることは重要である。
【0005】
そこで、前記導電体の多機能化において、前記導電体に、熱の移動方向を規制する機能を組み合せることができれば、前記電子機器の小型化を達成しつつ、発熱する部品から熱に弱い部品への熱の伝達を防止することが期待でき、大変有用である。
しかしながら、このことについてほとんど検討されていないのが現状である。
【0006】
したがって、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な導電体の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−96688号公報
【特許文献2】特開2001−160318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 導電層と可撓性支持体とを有し、
前記可撓性支持体が、独立した空洞を有する樹脂フィルムを有し、
前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、
前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体である。
該<1>に記載の可撓性導電体は、電気を流すと導通可能な前記導電層を有しているため、配線などに使用され、また、可撓性のある前記可撓性支持体を有しているため、折り曲げるなどして狭い空間に好適に使用される。さらに、前記可撓性導電体に熱が伝わると、その熱は、前記導電層により、前記導電層の面方向に伝わる。一方、前記樹脂フィルムは、独立した空洞を有し、該空洞が樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向し、かつ特定範囲のアスペクト比を有することにより、空洞を有さない樹脂フィルムやフィルム表面への貫通孔を有する樹脂フィルムよりも、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れていることから、前記可撓性導電体に伝わった熱は、前記樹脂フィルムの厚み方向へ伝わりにくい。即ち、前記可撓性導電体に伝わった熱の移動方向が規制される。その結果、前記可撓性導電体は、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる。
<2> 可撓性支持体が、シート状である前記<1>に記載の可撓性導電体である。
<3> 導電層の厚みが、200μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<4> 樹脂フィルムが、結晶性ポリマーのみからなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<5> 可撓性導電体の厚みが50μm以上1mm以下であり、かつ、導電層の厚みをT(μm)とし、可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比が0.5以上800以下である前記<2>から<4>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<6> 樹脂フィルムの表面粗さRaが、0.10μm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<7> 樹脂フィルムの熱伝導率が、0.08W/mK以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<8> 独立した空洞の割合が、全ての空洞に対して80体積%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<9> 曲率半径1mmでの折り曲げに対して割れを生じない前記<1>から<8>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<10> 導電層が、金属からなる前記<1>から<9>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を説明するための図であって、独立した空洞を有する樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を説明するための図であって、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を説明するための図であって、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図3A】図3Aは、熱の移動方向を評価するための測定装置の斜視図である。
【図3B】図3Bは、熱の移動方向を評価するための測定装置の容器の上面図である。
【図3C】図3Cは、熱の移動方向の評価を開始する際の、測定装置、及び測定サンプルの外観を示す図である。
【図3D】図3Dは、熱の移動方向の評価中の測定装置、測定サンプルの配置、及び各温度センサーの配置を示す、上面から見た断面図である。
【図3E】図3Eは、熱の移動方向の評価中のセラミックヒーター及び各温度センサーの示す温度の一例を示す図である。
【図4】図4は、可撓性を評価する曲げ試験に使用する曲げ試験器具の斜視図である。
【図5】図5は、曲げ試験の方法を示す図である。
【図6】図6は、実施例2で作製した樹脂フィルム3の断面写真(図2AのA−A’断面に相当する断面写真)である。
【図7】図7は、比較例5で作製した樹脂フィルム17の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(可撓性導電体)
本発明の可撓性導電体は、導電層と可撓性支持体とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0013】
<導電層>
前記導電層は、導電性を有する。
前記導電層の導電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.5×107S/m以上が好ましく、5.8×107S/m以上がより好ましく、6.1×107S/m以上が特に好ましい。前記導電層の導電率が3.5×107S/m未満であると、電流を流した際に電流をロスしたり、電気信号の波形を歪ませてしまい、広帯域の伝送ができなかったり、導電層自身が発熱してしまうことがある。前記導電層の導電率が、前記特に好ましい範囲内であると、電気信号を効率的に伝える点、及び電力を供給する際に発熱が抑えられる点で有利である。
ここで、導電率は、例えば、FIRST ELECTRONIC TECHNOLOGY社のデジタル導電率計 FIRST110により測定することができる。
【0014】
前記導電性を有する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム(3.6×107S/m)、銅(5.8×107S/m)、銀(6.1×107S/m)、金(4.4×107S/m)などの金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、高い導電性があり、かつ安価である点で銅が好ましい。
【0015】
前記導電層の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平面形状、配線状などが挙げられる。
【0016】
前記導電層の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造、積層構造が挙げられる。
【0017】
前記導電層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200μm以下が好ましく、0.1μm以上100μm以下がより好ましく、0.5μm以上30μm以下が特に好ましい。前記導電層の厚みが、200μmを超えると、剥離が起こることや、可撓性が低下し、高密度に実装した電子部品をコンパクトに収めることが困難になることがある。一方、前記導電層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、可撓性に優れ、狭いところへの設置、取り回しが容易になる点で有利である。
なお、前記可撓性導電体を使用する機器の構造によっては、前記導電層の厚みを部分的に変えてもよい。
【0018】
前記導電層の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可撓性支持体がシート状の場合、シート状の前記可撓性支持体の片面、及び両面のいずれであってもよい。また、例えば、前記可撓性支持体がシート状の場合、シート状の前記可撓性支持体の1つの面における、全面であってもよく、一部であってもよい。
【0019】
前記導電層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可撓性支持体の面に、蒸着法、スパッタリング法により形成する方法、導電性を有するフィルムを貼り付ける方法が挙げられる。
前記導電層を前記可撓性支持体に貼り付ける際には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて接着剤を用いてもよい。
また、前記導電層を前記可撓性支持体が有する面の一部に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感光性材料を用いたフォトリソグラフィー工程により所定のパターン形状を形成する方法などが挙げられる。
【0020】
<可撓性支持体>
前記可撓性支持体としては、独立した空洞を有する樹脂フィルムを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0021】
前記可撓性支持体とは、可撓性を有する支持体である。
本発明において可撓性とは、折り曲げることができることを意味し、具体的には、曲率半径1mmでの折り曲げ試験に対して割れを生じないことを指す。
前記曲率半径1mmでの折り曲げ試験は、図4に示す曲げ試験器具を使用する。図4の曲げ試験器具50は、曲率半径1mmの先端部51を有し、辺52と辺53のなす角は30°である。
前記曲率半径1mmでの折り曲げ試験は、前記曲げ試験器具50の先端部51に、可撓性支持体の面を当てた後、前記可撓性支持体が辺52及び辺53に沿うように折り曲げて行う。
【0022】
−独立した空洞を有する樹脂フィルム−
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムが有する前記空洞とは、前記樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。前記独立した空洞とは、空洞の周囲に樹脂が存在する状態で2つ以上の空洞が連結していない状態を指す。前記独立した空洞は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析することにより確認することができる。
【0023】
前記独立した空洞の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全ての空洞に対して80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましく95体積%以上が特に好ましい。前記独立した空洞の割合が、前記特に好ましい範囲内であると、断熱性の点で有利である。ここで、前記独立した空洞の割合は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析することにより求めることができる。
【0024】
前記空洞は、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向している。そして、前記空洞は、特定範囲のアスペクト比を有している。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、独立した空洞を有し、その空洞が特定の配向及びアスペクト比を有することで、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる。
【0025】
前記アスペクト比とは、前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比(以下、「アスペクト比」と省略することがある。)を意味する。
前記アスペクト比としては、10以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、15以上が好ましく、20以上がより好ましい。前記アスペクト比が20以上であると、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0026】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、独立した空洞を有する樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0027】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、「厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0028】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0029】
ここで、前記厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0030】
前記厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0031】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0032】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの表面粗さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.10μm以下が好ましく、Ra=0.07μm以下がより好ましく、Ra=0.05μm以下が特に好ましい。前記表面粗さが、0.10μmを超えると、前記導電層との密着性が低く剥がれること、及び印刷性に劣ることがある。前記表面粗さが、前記好ましい範囲内であると、前記導電層から剥離しにくくなり、きれいな印刷が可能となる点で有利である。
表面粗さは、例えば、Zygo社製の非接触表面形状測定機 NewView7200により測定することができる。
【0033】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの熱伝導率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.08(W/mK)以下であることが好ましく、0.06(W/mK)以下であることがより好ましい。前記熱伝導率が、前記好ましい範囲内であると、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0034】
ここで、前記熱伝導率は、熱拡散率、比熱、密度の測定値の積によって算出することができる。前記熱拡散率は一般的にはレーザーフラッシュ法(例えば、TC−7000((株)真空理工製))により測定できる。前記比熱はDSCによりJIS K7123に記載の方法に従って測定できる。前記密度は一定面積の質量とその厚みを測定することにより、算出することができる。
【0035】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以下が好ましく、50μm以上800μm以下がより好ましく、60μm以上200μm以下が特に好ましい。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚みが1mmを超えると、高密度に実装された電子部品の狭い隙間での設置、取外しが困難になること、急峻な曲げによって、曲げ箇所でフィルムが圧縮されてしまうことがある。なお、本発明において、前記厚みは、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムを1枚で使用する場合には、1枚の厚みを指し、複数枚を積層して使用する場合には、積層した複数枚の合計の厚みを指す。
【0036】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーのみからなるものであってもよいし、結晶性ポリマー以外のその他の成分を含むものであってもよい。
これらの中でも、前記結晶性ポリマーのみからなるものが、空洞を発現し易く、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0037】
−−結晶性ポリマー−−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0038】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン類(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、アイソタクティックポリプロピレン(isoPP)などが挙げられる。これらの中でも、耐久性、力学強度、製造及びコストの観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリオレフィン類、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0039】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0040】
前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が特に好ましい。前記IVが0.4〜1.2であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0041】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好ましく、100℃〜260℃が特に好ましい。前記融点が40℃〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0042】
−−−ポリエステル樹脂−−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0043】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0044】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0045】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0046】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0047】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0048】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しにくくなり、品質が安定したりする点、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しにくくなる点、及び、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0049】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が特に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しにくくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0050】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、70℃〜300℃が好ましく、90℃〜270℃がより好ましい。
【0051】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0052】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0053】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0054】
結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程で空洞を形成させることができる。これにより、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムのリサイクル性を高めることができる。さらに、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法については、後記する。
【0055】
ここで、結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分などが空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、前記その他の成分や、後記するその他の成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0056】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系微粒子、前記結晶性ポリマーと相溶しない樹脂などが挙げられる。
【0057】
−独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法−
−−結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法−−
前記結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくともポリマー成形体を2倍〜8倍延伸する延伸工程を含むことが好ましい。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法は、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでもよい。
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性ポリマーのみからなり、特に空洞を有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
【0058】
−−延伸工程−−
前記延伸工程では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、独立した空洞を有する樹脂フィルムが得られる。
【0059】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性ポリマーが、製膜時(原反作成時)に当該フィルム中に微結晶核及び微結晶のいずれかを形成し、延伸の際にこの延伸し難い硬い微結晶核及び微結晶のいずれかとそこに隣接する樹脂の間が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0060】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0061】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0062】
−−延伸速度−−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しにくくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10mm/min〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しにくくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0063】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000mm/min〜36,000mm/minが好ましく、1,100mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが特に好ましい。
【0064】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10mm/min〜300mm/minが好ましく、40mm/min〜220mm/minがより好ましく、70mm/min〜150mm/minが特に好ましい。
【0065】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜15,000mm/minが特に好ましい。
【0066】
−−延伸温度−−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが特に好ましい。
【0067】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+70}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0068】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の成形体は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしてもよい。
【0069】
前記ポリマー成形体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーがポリオレフィン類、ポリエステル樹脂及びポリアミド類などである場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。
また、前記ポリマー成形体の製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0070】
図1は、独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で急冷固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、独立した空洞を有する樹脂フィルム1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、独立した空洞を有する樹脂フィルム1として使用してもよい。
【0071】
−−その他の製造方法−−
前記結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法以外の、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムを作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂フィルムなどの樹脂フィルムの中に無機系微粒子などを含有させておき、樹脂の延伸製膜時に無機微粒子などと樹脂界面とが剥離することにより作製する方法、主たる成分である樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂)に、その樹脂と相溶しない(非相溶の)別の樹脂を添加して混練することにより2相構造(例えば海島構造)を形成し、樹脂の延伸製膜時に主たる成分である樹脂と、そこに添加・混練された別の樹脂との界面を剥離することにより作製する方法などが挙げられる。
【0072】
−その他の部材−
前記可撓性支持体の前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空洞を有さない樹脂フィルム、前記独立した空洞を有する樹脂フィルム以外の空洞を有する樹脂フィルムなどが挙げられる。
なお、前記可撓性支持体において、積層の枚数は、1枚でもよいし、複数枚でもよい。また、複数枚を積層する場合には、本発明の効果を損なわない限り、接着剤を用いてもよい。
【0073】
−可撓性支持体の形状など−
前記可撓性支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤー状、シート状などが挙げられる。また、表面に凹凸を有していてもよい。これらの中でも、シート状であることが、可撓性に優れる点で有利である。
【0074】
前記可撓性支持体がシート状である場合、該シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以下が好ましく、50μm以上800μm以下がより好ましく、60μm以上200μm以下が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、機器の電子部品の狭い隙間へ設置、取外しが容易となり、かつ、可撓性及び厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる点で有利である。
【0075】
前記可撓性支持体と、前記導電層の厚みの比については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電層の厚みをT(μm)とし、前記可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比は、0.5以上800以下が好ましく、1以上600以下がより好ましく、5以上200以下が特に好ましい。前記t/T比が0.5未満では、遮熱性が不充分になり熱を所望の方向に逃がすことが難しくなることがあり、800を超えると、機器への組み込みに支障をきたすこと、導電性が不十分となることがある。前記t/T比が、前記特に好ましい範囲内であると、必要な導電性が確保でき、かつ、機器の狭い隙間へ配置でき、更に熱の移動をうまく制御することができる点で有利である。
【0076】
<可撓性導電体の形状など>
前記可撓性導電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤー状、シート状などが挙げられる。また、表面に凹凸を有していてもよい。
これらの中でも、シート状であることが好ましい。シート状であることは、可撓性に優れる点で有利である。
【0077】
本発明の可撓性導電体がシート状である場合、該シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以上1mm以下が好ましく、60μm以上900μm以下がより好ましく、70μm以上300μm以下が特に好ましい。前記特に好ましい範囲内であると、可撓性及び厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる点で有利である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0079】
(実施例1)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて255℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム1(独立した空洞を有する樹脂フィルム1)を作製した。
次に、樹脂フィルム1をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み110μmの樹脂フィルム2(独立した空洞を有する樹脂フィルム2)を作製した。この樹脂フィルム2を可撓性支持体1とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体1の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム2及び前記可撓性導電体について、下記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<測定>
<<1>>熱伝導率の測定
熱拡散率は、TC−7000(レーザーフラッシュ熱定数測定装置、(株)真空理工製)を用いて測定した。樹脂フィルム両面をスプレーにより黒化し室温で測定した。密度、比熱は後述の方法で測定し、3つの測定値の積から熱伝導率を求めた。
密度は、一定面積を切り取り、その質量を天秤で測定し、その厚みを膜厚計で測定し、質量を体積で割ることで求めた。
比熱はJIS K7123に記載の方法で求めた。DSCとしては、Q1000(示差走査熱量計、TAインスツルメント社製)を用いた。
【0081】
<<2>>厚みの測定
−樹脂フィルムの厚み−
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。
−蒸着層の厚み−
シートの小片を包埋樹脂で包埋し、断面が露出した薄切片作成後、透過型電子顕微鏡(JEM2010型、日本電子製)により厚みを測定した。または、シートの断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(S−4700型、日立ハイテクノロジーズ製)により厚みを測定した。
【0082】
<<3>>空洞の有無
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を観察して、空洞の有無を確認した。
【0083】
<<4>>独立した空洞の有無
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析して、独立した空洞の有無を確認した。
【0084】
<<5>>独立した空洞の割合
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析して、独立した空洞の割合を求めた。
【0085】
<<6>>配向の方向
配向の方向は、樹脂フィルムの縦延伸方向に対して平行な方向と垂直な方向のそれぞれの断面を露出させ、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真により確認した。
なお、表1中の記載は以下の意味である。
MD:全ての空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
MDが多い:6割以上10割未満の空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
MD/TD同等:5割の空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向しており、5割の空洞が横延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
【0086】
<<7>>アスペクト比の測定
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50個〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個づつの厚み(ri)を測定し、その平均の厚みをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個づつの長さ(Li)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σri)/m ・・・(2)
L=(ΣLi)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0087】
<<8>>表面粗さ
樹脂フィルムの表面粗さはZygo社製の非接触表面形状測定機 NewView7200により測定した。
【0088】
<評価>
<<1>>可撓性及び剥離性
図4に示す曲げ試験器具50を用いて可撓性及び剥離性の評価を行った。可撓性導電体は幅1cmのものを用いた。
前記曲げ試験器具50の曲率半径1mmを有する先端部51に、前記可撓性導電体における可撓性支持体の面が接するように、前記可撓性導電体を前記曲げ試験器具50に当てた後、図5に示すように、前記可撓性導電体が辺52及び辺53に沿うように折り曲げた。続いて、前記可撓性導電体の長手方向の両端部それぞれに1kgの荷重を5分間与えた。その後、前記可撓性導電体を平面状に戻し、割れの有無を目視で確認した。また、前記可撓性導電体の、先端部51に接した部分の、可撓性支持体と導電層との剥離の様子を光学顕微鏡で観察した。
可撓性及び剥離性を下記の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
−可撓性−
○:割れがない
×:割れがある
−剥離性−
○:剥離が見られないもの
△:剥離が見られるものの、剥離が1mm未満のもの
×:剥離が1mm以上のもの
【0089】
<<2>>導電性
ヘルムートフィッシャー社製の導電性測定機(シグマスコープSMP10)を用いて測定した。
可撓性導電体の導電体層に前記導電性測定機を接触させて測定される導電性を下記の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:5.0×107S/m以上
△:3.0×107S/m以上5.0×107S/m未満
×:3.0×107S/m未満
【0090】
<<3>>熱の移動方向の規制
−測定装置−
図3A、図3B、図3C、図3Dに示す測定装置31を用意した。前記測定装置31は、スリット33を有する発泡スチロール製の容器32a、前記容器32aと同じ形状の上蓋32b、セラミックヒーター34、及び温度センサー35、36、37を有している。
−測定方法−
5cm×18cmの大きさにした可撓性導電体を、前記測定装置31の2つのスリット33に跨るように、かつ導電層を有する面が前記セラミックヒーター34と対面するように配置した。前記温度センサー35、36は、配置した可撓性導電体の中央の表面から1cmの距離に設置した。スリット33の間隙は、発泡ポリウレタンフォームで塞いだ。前記温度センサー37は、図3Dに示すように、前記測定装置32a、32bの外側に出た可撓性導電体40の導電層側の表面であって、前記測定装置31から2cm離れた位置に貼り付けた。
上記のように測定装置を準備した後に、前記セラミックヒーター34の温度を80℃に上昇させ、前記温度センサー35、36、37の温度を測定した。そして、全ての温度センサーの温度が安定した時点から2分後の温度を測定値とした。前記セラミックヒーター34、前記温度センサー35、36、37の温度上昇の一例を図3Eに示す。温度センサーの示す温度が安定したA点から2分後のB点の温度が本測定における測定値である。なお、測定時の室温は22℃である。
上記測定結果を基に、下記評価基準により評価した結果を表1に示す。下記評価基準において、D1及びD2は以下の意味である。
D1=(温度センサー35の温度)−(温度センサー36の温度)
D2=(温度センサー35の温度)−(温度センサー37の温度)
なお、D1の値が大きいほど、可撓性導電体が、厚み方向への熱の伝達を抑える機能に優れていることを示す。D2の値が小さいほど、可撓性導電体が、面方向への熱を伝達する機能に優れていることを示す。
評価基準
◎:D1が5℃以上かつD2が35℃以下である
○:D1が2℃以上5℃未満かつD2が35℃以下である、又はD1が5℃以上かつD2が35℃を超え45℃以下である
△:D1が2℃以上5℃未満かつD2が35℃を超え45℃以下である
×:D1が2℃未満である、又はD2が45℃を超える
【0091】
<<4>>印刷性
印刷性の試験は下記方法により行った。
まず、可撓性導電体の印刷面(可撓性支持体の面)に受容層を形成した。
受容層は、塩化ビニール−酢酸ビニール樹脂 100重量部、アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X22−3050C)6質量部、エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X22−300E)6質量部、メチルエチルケトン/トルエン(1/1(質量比))400質量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリティケミカルズ社製 チヌビン900)4重量部を混合した組成物をバーコーターにより塗布して作製した。受容層の目付量は、110℃×30秒の乾燥後に4.0g/m2となるように調整した。
次に、可撓性導電体の導電層に、2液式エポキシ系接着剤(セメダイン社 EP001N)を1μmの厚みとなるように塗布してプライマー処理を行い、その上に厚み185μm(表面粗さRa=0.01μm)のPET2軸延伸フィルム(富士フイルム株式会社製)を貼り付けた。
次に、カラープリンター(富士フイルム株式会社製 フジックスVP8100)を用い、専用リボンをセットして、画像評価用パターンで受容層に印刷テストを行い、テスターによる官能試験を行い下記評価基準で評価した。
なお、前記印刷テストは、可撓性導電体の断熱性が高いため、前記カラープリンターの熱転写ヘッドの出力を通常の80%の出力で行った。
◎:画像のムラ、かすれもなく良好である。
○:画像のムラ、かすれもなく印字濃度も充分である。淡色部分が僅かに薄くなる傾向が見られるが比較しなければわからないレベルであり、実用上問題ない。
△:淡色部にごく僅かのムラが見られる。
×:イエロー、マゼンタ、シアンのうちいずれかにかすれが見られ、その部分は画像の色が僅かにサンプルに転写せず、色が一部分不連続になる。黒べた部分にも同様の現象が見られる。
【0092】
(実施例2)
実施例1で得た樹脂フィルム1を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、50℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸し、150℃で熱固定した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム3(独立した空洞を有する樹脂フィルム3)を作製した。この樹脂フィルム3を可撓性支持体2とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体2の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム3及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例3)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて260℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み390μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、42℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、550mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み110μmの樹脂フィルム4(独立した空洞を有する樹脂フィルム4)を作製した。この樹脂フィルム4を可撓性支持体3とした。
前記可撓性支持体3の片面の全面に厚み120μmのアルミホイル(商品名:三菱ホイル、三菱アルミニウム社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で貼り合わせ、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム4及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例4)
前記可撓性支持体1(前記樹脂フィルム2)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例5)
極限粘度(IV)=0.68であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、85℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム5(独立した空洞を有する樹脂フィルム5)を作製した。
次に、前記樹脂フィルム5を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、145℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸し、150℃で熱固定した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム6(独立した空洞を有する樹脂フィルム6)を作製した。この樹脂フィルム6を可撓性支持体4とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体4の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム6及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例6)
前記可撓性支持体4(前記樹脂フィルム6)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例7)
メルトフローインデックスが8.5であるPP(ポリプロピレン100%樹脂、ポリオレフィン類)を、溶融押出機を用いて230℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、30℃の加温雰囲気下で、25mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、550mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム7(独立した空洞を有する樹脂フィルム7)を作製した。
次に、前記樹脂フィルム7を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、210℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム8(独立した空洞を有する樹脂フィルム8)を作製した。この樹脂フィルム8を可撓性支持体5とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体5の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム8及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例8)
前記可撓性支持体1(前記樹脂フィルム2)の片面の全面に、厚み230μmのアルミホイル(商品名:三菱ホイル、三菱アルミニウム社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で貼り合わせ、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例9)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて265℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み190μmの樹脂フィルム9(独立した空洞を有する樹脂フィルム9)を作製した。
次に、樹脂フィルム9をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み180μmの樹脂フィルム10(独立した空洞を有する樹脂フィルム10)を作製した。この樹脂フィルム10を可撓性支持体6とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体6の片面の全面に厚み0.2μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム10及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例10)
前記可撓性支持体6(前記樹脂フィルム10)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例11)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて265℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、900mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム11(独立した空洞を有する樹脂フィルム11)を作製した。
次に、樹脂フィルム11をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み110μmの樹脂フィルム12(独立した空洞を有する樹脂フィルム12)を作製した。この樹脂フィルム12を可撓性支持体7とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体7の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム12及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて250℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を延伸せず空洞のない樹脂フィルム13を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム13の片面の全面に厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム13及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例2)
極限粘度(IV)=0.66であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.50mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を延伸せず空洞のない樹脂フィルム14を作製した。
次に、樹脂フィルム14の片面の全面に厚み0.5mmのグラファイトフィルム(商品名:HT1220AP、グラフテック社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で4枚貼り合わせ、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム14及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例3)
極限粘度(IV)=0.66であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.50mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、75℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、500mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み750μmの樹脂フィルム15(独立した空洞を有する樹脂フィルム15)を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム15の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム15及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例4)
極限粘度(IV)=0.67であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.9mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を2軸延伸(縦延伸ののち横延伸)した。
具体的には、90℃の加温雰囲気下で、500mm/minの速度で1軸延伸し、厚み1.0mmの1軸延伸フィルムを得た。
次のこのフィルムを横延伸装置(テンター)にて145℃で延伸し、厚み135μmの樹脂フィルム16(ボイド(空洞)を有しない透明樹脂フィルム16)を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム16の片面の全面に厚み0.1μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム16及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例5)
ポリプロピレン(J105、プライムポリマ−社製)100重量部に対し、低密度ポリエチレン(ネオゼックス1014T、プライムポリマ−社製)を15重量部の割合で溶融ブレンドし、Tダイによりキャストして厚み0.5mmのフィルムを作成後、室温にて2.2倍に1軸延伸(縦延伸)し、次いで、緊張状態を保持しながら140℃に加熱し2.2倍に2軸延伸(横延伸)し、厚み99.5μmの樹脂フィルム17を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム17の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム17及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
以上の結果から、本発明の可撓性導電体は、導電性を有し、可撓性に優れ、更に熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の可撓性導電体は、導電性及び可撓性を有すると共に、更に熱の移動方向を規制できるため、例えば、フレキシブル配線などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 独立した空洞を有する樹脂フィルム
1a 表面
11 原料
12 押出機
13 Tダイ
14 キャスティングロール
15 縦延伸機
15a ロール
16 横延伸機
16a クリップ
100 空洞
F フィルム又はシート
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する厚み方向における空洞の長さ
31 測定装置
32a 容器
32b 上蓋
33 スリット
34 セラミックヒーター
35 温度センサー
36 温度センサー
37 温度センサー
40 可撓性導電体
50 曲げ試験器具
51 曲率半径1mmを有する先端部
52 辺
53 辺
54 可撓性導電体
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線などに使用可能な可撓性導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(PC)、ポータブルナビゲーション、携帯電話等の電子機器の小型化が求められている。前記電子機器を小型化する方法としては、前記電子機器内の部品を小型化する方法が一般的ではあるものの、部品を多機能化する方法も有効な方法として知られるようになっている。部品を多機能化することにより、従来、個々の部品間に存在していた空間を圧縮できる。特に、フレキシブル配線などの導電体は前記電子機器内部に多く使用されているため、前記導電体を多機能化できれば、前記電子機器の小型化に大きく貢献できる。
【0003】
これまでに、多機能な導電体として、表面導電性ポリオレフィン系シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この表面導電性ポリオレフィン系シートは、ポリプロピレンからなる基材層の少なくとも片面に、平均粒径が0.1μm〜15μmの無機充填材、融点が180℃以上の結晶性樹脂及びガラス転移温度が80℃以上の非晶性樹脂の少なくとも1種類を含む表面比抵抗値が102Ω〜1010Ωである表面導電層を積層した構造である。この表面導電性ポリオレフィン系シートは、導電性及び可撓性を有する。可撓性を有することは、電子機器内の部品間の隙間などに自由に配置できることにつながり、電子機器の小型化に有効である。
また、多機能な導電体として、微細な非線形貫通孔を有する多孔質ポリアミドフィルムに導電性ポリマーを担持した導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この導電性フィルムは、微細な非線形貫通孔を有する多孔質構造を持ち、空孔率35%〜85%、孔径0.01μm〜5μm、厚み5μm〜50μmである多孔質ポリアミドフィルムであって、かつ、フィルムの断面方向に、微多孔質からなる層と相対的に大きな空隙又は開口部を有する層とが積層した構造を有し、かつ前記2層が貫通微細孔により互いに連結されている多孔質ポリアミドフィルムに、導電性ポリマーを担持した構造である。この導電性フィルムは導電性及び可撓性を有する。可撓性を有することは、電子機器内の部品間の隙間などに自由に配置できることにつながり、電子機器の小型化に有効である。
【0004】
しかしながら、前記電子機器の小型化において、前記電子機器内部の熱の伝達をコントロールしないと、以下のような問題がある。
前記電子機器内部にある電子部品の中には、熱に弱く、熱により動作不良や寿命低下などを起こす部品がある。一方、前記電子機器内にはCPUやハードディスクのように、発熱する部品がある。そして、前記電子機器を小型化することは、前記電子機器内部の空間を小さくすることにつながるため、前記電子機器内部の熱の伝達をコントロールしないと、発熱する部品から熱に弱い部品への熱が伝達し、熱に弱い部品は動作不良や寿命低下を起こす。
そのため、前記電子機器の小型化において、前記電子機器内部の熱をコントロールすることは重要である。
【0005】
そこで、前記導電体の多機能化において、前記導電体に、熱の移動方向を規制する機能を組み合せることができれば、前記電子機器の小型化を達成しつつ、発熱する部品から熱に弱い部品への熱の伝達を防止することが期待でき、大変有用である。
しかしながら、このことについてほとんど検討されていないのが現状である。
【0006】
したがって、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な導電体の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−96688号公報
【特許文献2】特開2001−160318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 導電層と可撓性支持体とを有し、
前記可撓性支持体が、独立した空洞を有する樹脂フィルムを有し、
前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、
前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体である。
該<1>に記載の可撓性導電体は、電気を流すと導通可能な前記導電層を有しているため、配線などに使用され、また、可撓性のある前記可撓性支持体を有しているため、折り曲げるなどして狭い空間に好適に使用される。さらに、前記可撓性導電体に熱が伝わると、その熱は、前記導電層により、前記導電層の面方向に伝わる。一方、前記樹脂フィルムは、独立した空洞を有し、該空洞が樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向し、かつ特定範囲のアスペクト比を有することにより、空洞を有さない樹脂フィルムやフィルム表面への貫通孔を有する樹脂フィルムよりも、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れていることから、前記可撓性導電体に伝わった熱は、前記樹脂フィルムの厚み方向へ伝わりにくい。即ち、前記可撓性導電体に伝わった熱の移動方向が規制される。その結果、前記可撓性導電体は、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる。
<2> 可撓性支持体が、シート状である前記<1>に記載の可撓性導電体である。
<3> 導電層の厚みが、200μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<4> 樹脂フィルムが、結晶性ポリマーのみからなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<5> 可撓性導電体の厚みが50μm以上1mm以下であり、かつ、導電層の厚みをT(μm)とし、可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比が0.5以上800以下である前記<2>から<4>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<6> 樹脂フィルムの表面粗さRaが、0.10μm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<7> 樹脂フィルムの熱伝導率が、0.08W/mK以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<8> 独立した空洞の割合が、全ての空洞に対して80体積%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<9> 曲率半径1mmでの折り曲げに対して割れを生じない前記<1>から<8>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
<10> 導電層が、金属からなる前記<1>から<9>のいずれかに記載の可撓性導電体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、導電性及び可撓性を有すると共に、熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を説明するための図であって、独立した空洞を有する樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を説明するための図であって、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を説明するための図であって、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図3A】図3Aは、熱の移動方向を評価するための測定装置の斜視図である。
【図3B】図3Bは、熱の移動方向を評価するための測定装置の容器の上面図である。
【図3C】図3Cは、熱の移動方向の評価を開始する際の、測定装置、及び測定サンプルの外観を示す図である。
【図3D】図3Dは、熱の移動方向の評価中の測定装置、測定サンプルの配置、及び各温度センサーの配置を示す、上面から見た断面図である。
【図3E】図3Eは、熱の移動方向の評価中のセラミックヒーター及び各温度センサーの示す温度の一例を示す図である。
【図4】図4は、可撓性を評価する曲げ試験に使用する曲げ試験器具の斜視図である。
【図5】図5は、曲げ試験の方法を示す図である。
【図6】図6は、実施例2で作製した樹脂フィルム3の断面写真(図2AのA−A’断面に相当する断面写真)である。
【図7】図7は、比較例5で作製した樹脂フィルム17の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(可撓性導電体)
本発明の可撓性導電体は、導電層と可撓性支持体とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0013】
<導電層>
前記導電層は、導電性を有する。
前記導電層の導電率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.5×107S/m以上が好ましく、5.8×107S/m以上がより好ましく、6.1×107S/m以上が特に好ましい。前記導電層の導電率が3.5×107S/m未満であると、電流を流した際に電流をロスしたり、電気信号の波形を歪ませてしまい、広帯域の伝送ができなかったり、導電層自身が発熱してしまうことがある。前記導電層の導電率が、前記特に好ましい範囲内であると、電気信号を効率的に伝える点、及び電力を供給する際に発熱が抑えられる点で有利である。
ここで、導電率は、例えば、FIRST ELECTRONIC TECHNOLOGY社のデジタル導電率計 FIRST110により測定することができる。
【0014】
前記導電性を有する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム(3.6×107S/m)、銅(5.8×107S/m)、銀(6.1×107S/m)、金(4.4×107S/m)などの金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、高い導電性があり、かつ安価である点で銅が好ましい。
【0015】
前記導電層の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平面形状、配線状などが挙げられる。
【0016】
前記導電層の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造、積層構造が挙げられる。
【0017】
前記導電層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200μm以下が好ましく、0.1μm以上100μm以下がより好ましく、0.5μm以上30μm以下が特に好ましい。前記導電層の厚みが、200μmを超えると、剥離が起こることや、可撓性が低下し、高密度に実装した電子部品をコンパクトに収めることが困難になることがある。一方、前記導電層の厚みが、前記特に好ましい範囲内であると、可撓性に優れ、狭いところへの設置、取り回しが容易になる点で有利である。
なお、前記可撓性導電体を使用する機器の構造によっては、前記導電層の厚みを部分的に変えてもよい。
【0018】
前記導電層の形成位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可撓性支持体がシート状の場合、シート状の前記可撓性支持体の片面、及び両面のいずれであってもよい。また、例えば、前記可撓性支持体がシート状の場合、シート状の前記可撓性支持体の1つの面における、全面であってもよく、一部であってもよい。
【0019】
前記導電層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可撓性支持体の面に、蒸着法、スパッタリング法により形成する方法、導電性を有するフィルムを貼り付ける方法が挙げられる。
前記導電層を前記可撓性支持体に貼り付ける際には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて接着剤を用いてもよい。
また、前記導電層を前記可撓性支持体が有する面の一部に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感光性材料を用いたフォトリソグラフィー工程により所定のパターン形状を形成する方法などが挙げられる。
【0020】
<可撓性支持体>
前記可撓性支持体としては、独立した空洞を有する樹脂フィルムを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0021】
前記可撓性支持体とは、可撓性を有する支持体である。
本発明において可撓性とは、折り曲げることができることを意味し、具体的には、曲率半径1mmでの折り曲げ試験に対して割れを生じないことを指す。
前記曲率半径1mmでの折り曲げ試験は、図4に示す曲げ試験器具を使用する。図4の曲げ試験器具50は、曲率半径1mmの先端部51を有し、辺52と辺53のなす角は30°である。
前記曲率半径1mmでの折り曲げ試験は、前記曲げ試験器具50の先端部51に、可撓性支持体の面を当てた後、前記可撓性支持体が辺52及び辺53に沿うように折り曲げて行う。
【0022】
−独立した空洞を有する樹脂フィルム−
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムが有する前記空洞とは、前記樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。前記独立した空洞とは、空洞の周囲に樹脂が存在する状態で2つ以上の空洞が連結していない状態を指す。前記独立した空洞は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析することにより確認することができる。
【0023】
前記独立した空洞の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全ての空洞に対して80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましく95体積%以上が特に好ましい。前記独立した空洞の割合が、前記特に好ましい範囲内であると、断熱性の点で有利である。ここで、前記独立した空洞の割合は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析することにより求めることができる。
【0024】
前記空洞は、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向している。そして、前記空洞は、特定範囲のアスペクト比を有している。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、独立した空洞を有し、その空洞が特定の配向及びアスペクト比を有することで、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる。
【0025】
前記アスペクト比とは、前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比(以下、「アスペクト比」と省略することがある。)を意味する。
前記アスペクト比としては、10以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、15以上が好ましく、20以上がより好ましい。前記アスペクト比が20以上であると、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0026】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、独立した空洞を有する樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける独立した空洞を有する樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0027】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、「厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0028】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0029】
ここで、前記厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0030】
前記厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0031】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、独立した空洞を有する樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0032】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの表面粗さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.10μm以下が好ましく、Ra=0.07μm以下がより好ましく、Ra=0.05μm以下が特に好ましい。前記表面粗さが、0.10μmを超えると、前記導電層との密着性が低く剥がれること、及び印刷性に劣ることがある。前記表面粗さが、前記好ましい範囲内であると、前記導電層から剥離しにくくなり、きれいな印刷が可能となる点で有利である。
表面粗さは、例えば、Zygo社製の非接触表面形状測定機 NewView7200により測定することができる。
【0033】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの熱伝導率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.08(W/mK)以下であることが好ましく、0.06(W/mK)以下であることがより好ましい。前記熱伝導率が、前記好ましい範囲内であると、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0034】
ここで、前記熱伝導率は、熱拡散率、比熱、密度の測定値の積によって算出することができる。前記熱拡散率は一般的にはレーザーフラッシュ法(例えば、TC−7000((株)真空理工製))により測定できる。前記比熱はDSCによりJIS K7123に記載の方法に従って測定できる。前記密度は一定面積の質量とその厚みを測定することにより、算出することができる。
【0035】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以下が好ましく、50μm以上800μm以下がより好ましく、60μm以上200μm以下が特に好ましい。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの厚みが1mmを超えると、高密度に実装された電子部品の狭い隙間での設置、取外しが困難になること、急峻な曲げによって、曲げ箇所でフィルムが圧縮されてしまうことがある。なお、本発明において、前記厚みは、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムを1枚で使用する場合には、1枚の厚みを指し、複数枚を積層して使用する場合には、積層した複数枚の合計の厚みを指す。
【0036】
前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーのみからなるものであってもよいし、結晶性ポリマー以外のその他の成分を含むものであってもよい。
これらの中でも、前記結晶性ポリマーのみからなるものが、空洞を発現し易く、厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能を高めることができる点で有利である。
【0037】
−−結晶性ポリマー−−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0038】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン類(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、アイソタクティックポリプロピレン(isoPP)などが挙げられる。これらの中でも、耐久性、力学強度、製造及びコストの観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリオレフィン類、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0039】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0040】
前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が特に好ましい。前記IVが0.4〜1.2であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0041】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好ましく、100℃〜260℃が特に好ましい。前記融点が40℃〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0042】
−−−ポリエステル樹脂−−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0043】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0044】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0045】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0046】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0047】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0048】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しにくくなり、品質が安定したりする点、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しにくくなる点、及び、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0049】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が特に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時に空洞を発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しにくくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0050】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、70℃〜300℃が好ましく、90℃〜270℃がより好ましい。
【0051】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0052】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0053】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0054】
結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程で空洞を形成させることができる。これにより、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムのリサイクル性を高めることができる。さらに、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法については、後記する。
【0055】
ここで、結晶性ポリマーのみからなる前記独立した空洞を有する樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分などが空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、前記その他の成分や、後記するその他の成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0056】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系微粒子、前記結晶性ポリマーと相溶しない樹脂などが挙げられる。
【0057】
−独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法−
−−結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法−−
前記結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくともポリマー成形体を2倍〜8倍延伸する延伸工程を含むことが好ましい。前記独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法は、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでもよい。
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性ポリマーのみからなり、特に空洞を有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
【0058】
−−延伸工程−−
前記延伸工程では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、独立した空洞を有する樹脂フィルムが得られる。
【0059】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性ポリマーが、製膜時(原反作成時)に当該フィルム中に微結晶核及び微結晶のいずれかを形成し、延伸の際にこの延伸し難い硬い微結晶核及び微結晶のいずれかとそこに隣接する樹脂の間が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0060】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0061】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0062】
−−延伸速度−−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しにくくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10mm/min〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しにくくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0063】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000mm/min〜36,000mm/minが好ましく、1,100mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが特に好ましい。
【0064】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10mm/min〜300mm/minが好ましく、40mm/min〜220mm/minがより好ましく、70mm/min〜150mm/minが特に好ましい。
【0065】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜15,000mm/minが特に好ましい。
【0066】
−−延伸温度−−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが特に好ましい。
【0067】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+70}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0068】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の成形体は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしてもよい。
【0069】
前記ポリマー成形体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーがポリオレフィン類、ポリエステル樹脂及びポリアミド類などである場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。
また、前記ポリマー成形体の製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0070】
図1は、独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で急冷固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、独立した空洞を有する樹脂フィルム1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、独立した空洞を有する樹脂フィルム1として使用してもよい。
【0071】
−−その他の製造方法−−
前記結晶性ポリマーのみからなる独立した空洞を有する樹脂フィルムの製造方法以外の、前記独立した空洞を有する樹脂フィルムを作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂フィルムなどの樹脂フィルムの中に無機系微粒子などを含有させておき、樹脂の延伸製膜時に無機微粒子などと樹脂界面とが剥離することにより作製する方法、主たる成分である樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂)に、その樹脂と相溶しない(非相溶の)別の樹脂を添加して混練することにより2相構造(例えば海島構造)を形成し、樹脂の延伸製膜時に主たる成分である樹脂と、そこに添加・混練された別の樹脂との界面を剥離することにより作製する方法などが挙げられる。
【0072】
−その他の部材−
前記可撓性支持体の前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空洞を有さない樹脂フィルム、前記独立した空洞を有する樹脂フィルム以外の空洞を有する樹脂フィルムなどが挙げられる。
なお、前記可撓性支持体において、積層の枚数は、1枚でもよいし、複数枚でもよい。また、複数枚を積層する場合には、本発明の効果を損なわない限り、接着剤を用いてもよい。
【0073】
−可撓性支持体の形状など−
前記可撓性支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤー状、シート状などが挙げられる。また、表面に凹凸を有していてもよい。これらの中でも、シート状であることが、可撓性に優れる点で有利である。
【0074】
前記可撓性支持体がシート状である場合、該シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm以下が好ましく、50μm以上800μm以下がより好ましく、60μm以上200μm以下が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、機器の電子部品の狭い隙間へ設置、取外しが容易となり、かつ、可撓性及び厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる点で有利である。
【0075】
前記可撓性支持体と、前記導電層の厚みの比については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電層の厚みをT(μm)とし、前記可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比は、0.5以上800以下が好ましく、1以上600以下がより好ましく、5以上200以下が特に好ましい。前記t/T比が0.5未満では、遮熱性が不充分になり熱を所望の方向に逃がすことが難しくなることがあり、800を超えると、機器への組み込みに支障をきたすこと、導電性が不十分となることがある。前記t/T比が、前記特に好ましい範囲内であると、必要な導電性が確保でき、かつ、機器の狭い隙間へ配置でき、更に熱の移動をうまく制御することができる点で有利である。
【0076】
<可撓性導電体の形状など>
前記可撓性導電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤー状、シート状などが挙げられる。また、表面に凹凸を有していてもよい。
これらの中でも、シート状であることが好ましい。シート状であることは、可撓性に優れる点で有利である。
【0077】
本発明の可撓性導電体がシート状である場合、該シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以上1mm以下が好ましく、60μm以上900μm以下がより好ましく、70μm以上300μm以下が特に好ましい。前記特に好ましい範囲内であると、可撓性及び厚み方向に熱が伝わるのを抑える機能に優れる点で有利である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0079】
(実施例1)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて255℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム1(独立した空洞を有する樹脂フィルム1)を作製した。
次に、樹脂フィルム1をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み110μmの樹脂フィルム2(独立した空洞を有する樹脂フィルム2)を作製した。この樹脂フィルム2を可撓性支持体1とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体1の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム2及び前記可撓性導電体について、下記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<測定>
<<1>>熱伝導率の測定
熱拡散率は、TC−7000(レーザーフラッシュ熱定数測定装置、(株)真空理工製)を用いて測定した。樹脂フィルム両面をスプレーにより黒化し室温で測定した。密度、比熱は後述の方法で測定し、3つの測定値の積から熱伝導率を求めた。
密度は、一定面積を切り取り、その質量を天秤で測定し、その厚みを膜厚計で測定し、質量を体積で割ることで求めた。
比熱はJIS K7123に記載の方法で求めた。DSCとしては、Q1000(示差走査熱量計、TAインスツルメント社製)を用いた。
【0081】
<<2>>厚みの測定
−樹脂フィルムの厚み−
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。
−蒸着層の厚み−
シートの小片を包埋樹脂で包埋し、断面が露出した薄切片作成後、透過型電子顕微鏡(JEM2010型、日本電子製)により厚みを測定した。または、シートの断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(S−4700型、日立ハイテクノロジーズ製)により厚みを測定した。
【0082】
<<3>>空洞の有無
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を観察して、空洞の有無を確認した。
【0083】
<<4>>独立した空洞の有無
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析して、独立した空洞の有無を確認した。
【0084】
<<5>>独立した空洞の割合
光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像解析して、独立した空洞の割合を求めた。
【0085】
<<6>>配向の方向
配向の方向は、樹脂フィルムの縦延伸方向に対して平行な方向と垂直な方向のそれぞれの断面を露出させ、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影した写真により確認した。
なお、表1中の記載は以下の意味である。
MD:全ての空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
MDが多い:6割以上10割未満の空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
MD/TD同等:5割の空洞が縦延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向しており、5割の空洞が横延伸方向(厚み方向と直交する方向)に配向している。
【0086】
<<7>>アスペクト比の測定
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50個〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個づつの厚み(ri)を測定し、その平均の厚みをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個づつの長さ(Li)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σri)/m ・・・(2)
L=(ΣLi)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0087】
<<8>>表面粗さ
樹脂フィルムの表面粗さはZygo社製の非接触表面形状測定機 NewView7200により測定した。
【0088】
<評価>
<<1>>可撓性及び剥離性
図4に示す曲げ試験器具50を用いて可撓性及び剥離性の評価を行った。可撓性導電体は幅1cmのものを用いた。
前記曲げ試験器具50の曲率半径1mmを有する先端部51に、前記可撓性導電体における可撓性支持体の面が接するように、前記可撓性導電体を前記曲げ試験器具50に当てた後、図5に示すように、前記可撓性導電体が辺52及び辺53に沿うように折り曲げた。続いて、前記可撓性導電体の長手方向の両端部それぞれに1kgの荷重を5分間与えた。その後、前記可撓性導電体を平面状に戻し、割れの有無を目視で確認した。また、前記可撓性導電体の、先端部51に接した部分の、可撓性支持体と導電層との剥離の様子を光学顕微鏡で観察した。
可撓性及び剥離性を下記の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
−可撓性−
○:割れがない
×:割れがある
−剥離性−
○:剥離が見られないもの
△:剥離が見られるものの、剥離が1mm未満のもの
×:剥離が1mm以上のもの
【0089】
<<2>>導電性
ヘルムートフィッシャー社製の導電性測定機(シグマスコープSMP10)を用いて測定した。
可撓性導電体の導電体層に前記導電性測定機を接触させて測定される導電性を下記の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:5.0×107S/m以上
△:3.0×107S/m以上5.0×107S/m未満
×:3.0×107S/m未満
【0090】
<<3>>熱の移動方向の規制
−測定装置−
図3A、図3B、図3C、図3Dに示す測定装置31を用意した。前記測定装置31は、スリット33を有する発泡スチロール製の容器32a、前記容器32aと同じ形状の上蓋32b、セラミックヒーター34、及び温度センサー35、36、37を有している。
−測定方法−
5cm×18cmの大きさにした可撓性導電体を、前記測定装置31の2つのスリット33に跨るように、かつ導電層を有する面が前記セラミックヒーター34と対面するように配置した。前記温度センサー35、36は、配置した可撓性導電体の中央の表面から1cmの距離に設置した。スリット33の間隙は、発泡ポリウレタンフォームで塞いだ。前記温度センサー37は、図3Dに示すように、前記測定装置32a、32bの外側に出た可撓性導電体40の導電層側の表面であって、前記測定装置31から2cm離れた位置に貼り付けた。
上記のように測定装置を準備した後に、前記セラミックヒーター34の温度を80℃に上昇させ、前記温度センサー35、36、37の温度を測定した。そして、全ての温度センサーの温度が安定した時点から2分後の温度を測定値とした。前記セラミックヒーター34、前記温度センサー35、36、37の温度上昇の一例を図3Eに示す。温度センサーの示す温度が安定したA点から2分後のB点の温度が本測定における測定値である。なお、測定時の室温は22℃である。
上記測定結果を基に、下記評価基準により評価した結果を表1に示す。下記評価基準において、D1及びD2は以下の意味である。
D1=(温度センサー35の温度)−(温度センサー36の温度)
D2=(温度センサー35の温度)−(温度センサー37の温度)
なお、D1の値が大きいほど、可撓性導電体が、厚み方向への熱の伝達を抑える機能に優れていることを示す。D2の値が小さいほど、可撓性導電体が、面方向への熱を伝達する機能に優れていることを示す。
評価基準
◎:D1が5℃以上かつD2が35℃以下である
○:D1が2℃以上5℃未満かつD2が35℃以下である、又はD1が5℃以上かつD2が35℃を超え45℃以下である
△:D1が2℃以上5℃未満かつD2が35℃を超え45℃以下である
×:D1が2℃未満である、又はD2が45℃を超える
【0091】
<<4>>印刷性
印刷性の試験は下記方法により行った。
まず、可撓性導電体の印刷面(可撓性支持体の面)に受容層を形成した。
受容層は、塩化ビニール−酢酸ビニール樹脂 100重量部、アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X22−3050C)6質量部、エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製 X22−300E)6質量部、メチルエチルケトン/トルエン(1/1(質量比))400質量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリティケミカルズ社製 チヌビン900)4重量部を混合した組成物をバーコーターにより塗布して作製した。受容層の目付量は、110℃×30秒の乾燥後に4.0g/m2となるように調整した。
次に、可撓性導電体の導電層に、2液式エポキシ系接着剤(セメダイン社 EP001N)を1μmの厚みとなるように塗布してプライマー処理を行い、その上に厚み185μm(表面粗さRa=0.01μm)のPET2軸延伸フィルム(富士フイルム株式会社製)を貼り付けた。
次に、カラープリンター(富士フイルム株式会社製 フジックスVP8100)を用い、専用リボンをセットして、画像評価用パターンで受容層に印刷テストを行い、テスターによる官能試験を行い下記評価基準で評価した。
なお、前記印刷テストは、可撓性導電体の断熱性が高いため、前記カラープリンターの熱転写ヘッドの出力を通常の80%の出力で行った。
◎:画像のムラ、かすれもなく良好である。
○:画像のムラ、かすれもなく印字濃度も充分である。淡色部分が僅かに薄くなる傾向が見られるが比較しなければわからないレベルであり、実用上問題ない。
△:淡色部にごく僅かのムラが見られる。
×:イエロー、マゼンタ、シアンのうちいずれかにかすれが見られ、その部分は画像の色が僅かにサンプルに転写せず、色が一部分不連続になる。黒べた部分にも同様の現象が見られる。
【0092】
(実施例2)
実施例1で得た樹脂フィルム1を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、50℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸し、150℃で熱固定した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム3(独立した空洞を有する樹脂フィルム3)を作製した。この樹脂フィルム3を可撓性支持体2とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体2の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム3及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例3)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて260℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み390μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、42℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、550mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み110μmの樹脂フィルム4(独立した空洞を有する樹脂フィルム4)を作製した。この樹脂フィルム4を可撓性支持体3とした。
前記可撓性支持体3の片面の全面に厚み120μmのアルミホイル(商品名:三菱ホイル、三菱アルミニウム社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で貼り合わせ、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム4及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例4)
前記可撓性支持体1(前記樹脂フィルム2)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例5)
極限粘度(IV)=0.68であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、85℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム5(独立した空洞を有する樹脂フィルム5)を作製した。
次に、前記樹脂フィルム5を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、145℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸し、150℃で熱固定した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム6(独立した空洞を有する樹脂フィルム6)を作製した。この樹脂フィルム6を可撓性支持体4とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体4の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム6及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例6)
前記可撓性支持体4(前記樹脂フィルム6)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例7)
メルトフローインデックスが8.5であるPP(ポリプロピレン100%樹脂、ポリオレフィン類)を、溶融押出機を用いて230℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、30℃の加温雰囲気下で、25mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、550mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム7(独立した空洞を有する樹脂フィルム7)を作製した。
次に、前記樹脂フィルム7を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には、210℃の加温雰囲気下で、300mm/minで1.5倍に横延伸した後に冷却して巻取り、厚み90μmの樹脂フィルム8(独立した空洞を有する樹脂フィルム8)を作製した。この樹脂フィルム8を可撓性支持体5とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体5の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム8及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例8)
前記可撓性支持体1(前記樹脂フィルム2)の片面の全面に、厚み230μmのアルミホイル(商品名:三菱ホイル、三菱アルミニウム社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で貼り合わせ、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例9)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて265℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、600mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み190μmの樹脂フィルム9(独立した空洞を有する樹脂フィルム9)を作製した。
次に、樹脂フィルム9をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み180μmの樹脂フィルム10(独立した空洞を有する樹脂フィルム10)を作製した。この樹脂フィルム10を可撓性支持体6とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体6の片面の全面に厚み0.2μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム10及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例10)
前記可撓性支持体6(前記樹脂フィルム10)の片面の全面に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例11)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて265℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み380μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、900mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み120μmの樹脂フィルム11(独立した空洞を有する樹脂フィルム11)を作製した。
次に、樹脂フィルム11をテンターにより150℃で2分間熱固定した後に冷却して巻取り、厚み110μmの樹脂フィルム12(独立した空洞を有する樹脂フィルム12)を作製した。この樹脂フィルム12を可撓性支持体7とした。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該可撓性支持体7の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、可撓性導電体を作製した。
前記樹脂フィルム12及び前記可撓性導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
極限粘度(IV)=0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて250℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を延伸せず空洞のない樹脂フィルム13を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム13の片面の全面に厚み0.5μmのアルミニウムを蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム13及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例2)
極限粘度(IV)=0.66であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.50mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を延伸せず空洞のない樹脂フィルム14を作製した。
次に、樹脂フィルム14の片面の全面に厚み0.5mmのグラファイトフィルム(商品名:HT1220AP、グラフテック社製)を接着剤(エアゾール接着剤、スプレーのり99、3M製)で4枚貼り合わせ、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム14及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例3)
極限粘度(IV)=0.66であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.50mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、75℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、500mm/minの速度で、同一方向に更に1軸延伸し、厚み750μmの樹脂フィルム15(独立した空洞を有する樹脂フィルム15)を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム15の片面の全面に厚み0.8μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム15及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例4)
極限粘度(IV)=0.67であるPET(ポリエチンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで急冷固化させて、厚み1.9mmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を2軸延伸(縦延伸ののち横延伸)した。
具体的には、90℃の加温雰囲気下で、500mm/minの速度で1軸延伸し、厚み1.0mmの1軸延伸フィルムを得た。
次のこのフィルムを横延伸装置(テンター)にて145℃で延伸し、厚み135μmの樹脂フィルム16(ボイド(空洞)を有しない透明樹脂フィルム16)を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム16の片面の全面に厚み0.1μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム16及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例5)
ポリプロピレン(J105、プライムポリマ−社製)100重量部に対し、低密度ポリエチレン(ネオゼックス1014T、プライムポリマ−社製)を15重量部の割合で溶融ブレンドし、Tダイによりキャストして厚み0.5mmのフィルムを作成後、室温にて2.2倍に1軸延伸(縦延伸)し、次いで、緊張状態を保持しながら140℃に加熱し2.2倍に2軸延伸(横延伸)し、厚み99.5μmの樹脂フィルム17を作製した。
次に、蒸着装置(商品名:VPC−410、ULVAC社製)を用いて、該樹脂フィルム17の片面の全面に厚み0.5μmの銅を蒸着し、比較用の導電体を作製した。
前記樹脂フィルム17及び前記導電体について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
以上の結果から、本発明の可撓性導電体は、導電性を有し、可撓性に優れ、更に熱の移動方向を規制できる多機能な可撓性導電体であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の可撓性導電体は、導電性及び可撓性を有すると共に、更に熱の移動方向を規制できるため、例えば、フレキシブル配線などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 独立した空洞を有する樹脂フィルム
1a 表面
11 原料
12 押出機
13 Tダイ
14 キャスティングロール
15 縦延伸機
15a ロール
16 横延伸機
16a クリップ
100 空洞
F フィルム又はシート
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する厚み方向における空洞の長さ
31 測定装置
32a 容器
32b 上蓋
33 スリット
34 セラミックヒーター
35 温度センサー
36 温度センサー
37 温度センサー
40 可撓性導電体
50 曲げ試験器具
51 曲率半径1mmを有する先端部
52 辺
53 辺
54 可撓性導電体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と可撓性支持体とを有し、
前記可撓性支持体が、独立した空洞を有する樹脂フィルムを有し、
前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、
前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体。
【請求項2】
可撓性支持体が、シート状である請求項1に記載の可撓性導電体。
【請求項3】
導電層の厚みが、200μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項4】
樹脂フィルムが、結晶性ポリマーのみからなる請求項1から3のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項5】
可撓性導電体の厚みが50μm以上1mm以下であり、かつ、導電層の厚みをT(μm)とし、可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比が0.5以上800以下である請求項2から4のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項6】
樹脂フィルムの表面粗さRaが、0.10μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項7】
樹脂フィルムの熱伝導率が、0.08W/mK以下である請求項1から6のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項8】
独立した空洞の割合が、全ての空洞に対して80体積%以上である請求項1から7のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項9】
曲率半径1mmでの折り曲げに対して割れを生じない請求項1から8のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項10】
導電層が、金属からなる請求項1から9のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項1】
導電層と可撓性支持体とを有し、
前記可撓性支持体が、独立した空洞を有する樹脂フィルムを有し、
前記樹脂フィルムにおける前記空洞が、前記樹脂フィルムの厚み方向と直交して配向しており、かつ、
前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上であることを特徴とする可撓性導電体。
【請求項2】
可撓性支持体が、シート状である請求項1に記載の可撓性導電体。
【請求項3】
導電層の厚みが、200μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項4】
樹脂フィルムが、結晶性ポリマーのみからなる請求項1から3のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項5】
可撓性導電体の厚みが50μm以上1mm以下であり、かつ、導電層の厚みをT(μm)とし、可撓性支持体の厚みをt(μm)とした際のt/T比が0.5以上800以下である請求項2から4のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項6】
樹脂フィルムの表面粗さRaが、0.10μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項7】
樹脂フィルムの熱伝導率が、0.08W/mK以下である請求項1から6のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項8】
独立した空洞の割合が、全ての空洞に対して80体積%以上である請求項1から7のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項9】
曲率半径1mmでの折り曲げに対して割れを生じない請求項1から8のいずれかに記載の可撓性導電体。
【請求項10】
導電層が、金属からなる請求項1から9のいずれかに記載の可撓性導電体。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−228423(P2011−228423A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95893(P2010−95893)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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