説明

可撓継手

【課題】配管に接続される可撓継手において、首抜けの発生を抑制しながら、配管等への接続の施工性を良好にする。
【解決手段】筒本体10aと鍔部10bとを有する可撓筒体10と、各鍔部10bに埋設されたソリッドリング11と、筒本体10aに埋設された補強コード12と、可撓筒体10の軸方向各端部に配設されたユニオン13とを設ける。ユニオン13は、軸方向外側端部にフランジ部14aが形成されたユニオンナット14と、ユニオンナット14にその軸方向内側から挿入されて外側に突出する筒本体15aと筒本体15aの軸方向内側端部に形成され、フランジ部14aと当接する鍔部15bとを有するユニオンツバ15と、筒本体10aが貫通され、ユニオンツバ15との間に鍔部10bを挟み込むようにユニオンナット14にその軸方向内側から螺合されたユニオンネジ16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に接続される可撓継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水ポンプと給水管(配管)とを接続して、この給水管に給水ポンプから振動が伝達されないようにした可撓継手が従来技術として知られている。
【0003】
以下、特許文献1、特許文献2により従来の可撓継手について説明する。
【0004】
特許文献1の可撓継手は、筒状の筒本体とこの筒本体の軸方向両端部に径方向外側に延びるようにそれぞれ形成されたシール部としての環状の鍔部とを有するゴム製可撓筒体と、この可撓筒体の各鍔部に埋設された環状の環状部材と、可撓筒体の筒本体に軸方向に延びるように埋設された筒状の補強部材と、可撓筒体の軸方向各端部に配設された接続部としての環状のフランジとを備えているフランジ式のフレキシブルジョイントである。このフランジの内周面には、可撓筒体の筒本体が、軸方向外側端面には、可撓筒体の鍔部が、それぞれ形成されている。可撓筒体、環状部材及び補強コードは、フランジに加硫一体成形されている。この可撓継手では、環状部材により可撓筒体の鍔部が抜け落ちる所謂首抜けが防止されている。
【0005】
特許文献2の可撓継手は、筒状の筒本体とこの筒本体の軸方向両端部に径方向外側に延びるようにそれぞれ形成された環状の鍔部とを有するゴム製可撓筒体と、この可撓筒体の筒本体に軸方向に延びるように埋設された筒状の補強部材と、可撓筒体の軸方向各端部に配設された接続部としてのユニオンとを備えているユニオン式のフレキシブルジョイントである。このユニオンは、軸方向外側端部に環状のフランジ部が径方向内側に延びるように形成されたユニオンナットと、このユニオンナットにその軸方向内側から挿入されてその軸方向外側に突出する筒状の筒本体とこの筒本体の軸方向内側端部に径方向外側に延びるように形成され、ユニオンナットのフランジ部と当接する環状の鍔部とを有するユニオンツバと、可撓筒体の筒本体が貫通され、ユニオンツバとの間に可撓筒体の鍔部を挟み込むようにユニオンナットにその軸方向内側から螺合された筒状のユニオンネジとを有している。この可撓継手では、ユニオンより配管等に接続されるため、その施工性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57−27579号公報
【特許文献2】意匠登録第489693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のものは、フランジにより配管等に接続されるため、その施工性が悪化するという課題がある。
【0008】
また、特許文献2のものは、可撓筒体の鍔部がユニオンツバとユニオンネジとの間に挟み込まれることのみにより保持されているため、首抜けが発生しやすいという課題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、配管に接続される可撓継手において、首抜けの発生を抑制しながら、配管等への接続の施工性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、配管に接続される可撓継手であって、筒状の筒本体と、該筒本体の軸方向両端部に径方向外側に延びるようにそれぞれ形成された環状の鍔部とを有する可撓筒体と、上記可撓筒体の各鍔部に埋設された環状の環状部材と、上記可撓筒体の筒本体に軸方向に延びるように埋設された筒状の補強部材と、上記可撓筒体の軸方向各端部に配設されたユニオンとを備えており、上記ユニオンは、軸方向外側端部に環状のフランジ部が径方向内側に延びるように形成されたユニオンナットと、上記ユニオンナットにその軸方向内側から挿入されてその軸方向外側に突出する筒状の筒本体と、該筒本体の軸方向内側端部に径方向外側に延びるように形成され、上記ユニオンナットのフランジ部と当接する環状の鍔部とを有するユニオンツバと、上記可撓筒体の筒本体が貫通され、上記ユニオンツバとの間に上記可撓筒体の鍔部を挟み込むように上記ユニオンナットにその軸方向内側から螺合された筒状のユニオンネジとを有していることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、可撓筒体の各鍔部に環状の環状部材を埋設しているので、この環状部材により首抜けの発生を抑制することができる。
【0012】
また、可撓筒体の軸方向各端部に接続部としてのユニオンを配設しているので、このユニオンにより配管等に接続され、その施工性を良好にすることができる。
【0013】
以上により、首抜けの発生を抑制しながら、配管等への接続の施工性を良好にすることができる。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記可撓筒体は、ゴム製のものであり、上記可撓筒体、上記環状部材及び上記補強部材は、上記ユニオンネジに加硫一体成形されていることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、可撓筒体、環状部材及び補強部材をユニオンネジに加硫一体成形しているので、この加硫一体成形品を成形するのに、従来のフランジ式フレキシブルジョイントを加硫一体成形するのに用いられる金型を流用することができ、その設備投資を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可撓筒体の各鍔部に環状の環状部材を埋設しているので、この環状部材により首抜けの発生を抑制することができ、また、可撓筒体の軸方向各端部に接続部としてのユニオンを配設しているので、このユニオンにより配管等に接続され、その施工性を良好にすることができ、以上により、首抜けの発生を抑制しながら、配管等への接続の施工性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る可撓継手を示す概略片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る可撓継手1は、例えば、高圧給水ポンプ(不図示)と給水管(不図示)とを接続して、この給水管に高圧給水ポンプから振動が伝達されないようにしたフレキシブルジョイントである。このように、可撓継手1を高圧給水ポンプと接続しているため、このポンプの駆動時における可撓継手1の内圧は高くなる。
【0020】
可撓継手1は、円筒状の筒本体10aとこの筒本体10aの軸方向両端部に径方向外側に延びるようにそれぞれ形成されたシール部としての円環状の鍔部10bとを有するゴム製可撓筒体10と、この可撓筒体10の各鍔部10bに埋設された円環状の金属製ソリッドリング11(環状部材)と、可撓筒体10の筒本体10aに軸方向に延びるように埋設された円筒状の繊維製補強コード12(補強部材)と、可撓筒体10の軸方向各端部に配設された接続部としての金属製F型ユニオン13とを備えている。
【0021】
可撓筒体10は、内面ゴム10cと、この内面ゴム10cの外側に積層された外面ゴム10dとで構成されている。内面ゴム10cは、例えば、厚生省令第14号浸出性能に適合する合成ゴムからなる。外面ゴム10dは、例えば、合成ゴムからなる。可撓筒体10の筒本体10aは、その軸方向中央部が両端部よりも径方向外側に膨らんだ一山形状に形成されている。
【0022】
ソリッドリング11は、例えば、SS400からなり、その内径がF型ユニオン13のユニオンネジ16の内径よりも小さく、その外径がユニオンネジ16の内径よりも大きくなるように、断面略矩形状に形成されている。ソリッドリング11は、その軸心が可撓筒体10の軸心と一致し、かつ軸方向から見ると一部(図1では略全部)がユニオンネジ16と重なるように配置されている。上記のように、ソリッドリング11の断面形状を略矩形状にしているため、面シールとなり、シール圧が固定するので、水漏れがなく、耐久性も安定する。
【0023】
補強コード12は、例えば、合成繊維からなり、内面ゴム10cと外面ゴム10dとの間に可撓筒体10の形状に沿って配置されており、その軸方向両端部は、各ソリッドリング11にその径方向内側から1回巻き付けられて折り返されることにより各ソリッドリング11に取り付けられている。
【0024】
F型ユニオン13は、軸心が可撓筒体10の軸心と一致するように配置されており、軸方向外側端部に円環状のフランジ部14aが径方向内側に延びるように形成されたユニオンナット14と、このユニオンナット14にその軸方向内側から挿入されてその軸方向外側に突出する円筒状の筒本体15aとこの筒本体15aの軸方向内側端部に径方向外側に延びるように形成され、かつ軸方向外側端面がユニオンナット14におけるフランジ部14aの内周縁部の軸方向内側端面と当接する円環状の鍔部15bとを有するユニオンツバ15と、内部に可撓筒体10の筒本体10aの軸方向外側端部が貫通され、軸方向外側端面とユニオンツバ15の軸方向内側端面との間に可撓筒体10の鍔部10bを挟み込むようにユニオンナット14にその軸方向内側から螺合された円筒状のユニオンネジ16とを有している。
【0025】
ユニオンナット14は、軸方向から見て多角形状(例えば八角形状や十角形状など)に形成されている。ユニオンナット14におけるフランジ部14a以外の部分の内周面には、雌ネジ14bが形成されている。
【0026】
ユニオンツバ15の筒本体15aにおけるユニオンナット14から突出した部分(この部分を以下、突出部15cという)は、軸方向から見て多角形状(例えば八角形状や十角形状など)に形成されている。筒本体15aの突出部15c以外の部分は、その内径及び外径がそれぞれ突出部15cよりも大きくなるように、軸方向から見て円状に形成されている。筒本体15aは、全体として、その外径がユニオンナット14のフランジ部14aの内径よりも小さくなるように形成されている。筒本体15aの突出部15cの内周面には、雌ネジ15dが形成されている。ユニオンツバ15の鍔部15bは、その外径がユニオンナット14のフランジ部14aの内径よりも大きくなるように形成されている。そして、ユニオンツバ15は、その雌ネジ15dが高圧給水ポンプや給水管の雄ネジに直接、螺合されるようになっている。この際、可撓継手1は、軸方向に引っ張られた状態で高圧給水ポンプや給水管に取り付けられる。
【0027】
ユニオンネジ16の内周面には、可撓筒体10の筒本体10aの軸方向外側端部が、その軸方向外側端面には、可撓筒体10の鍔部10bが、それぞれ形成されている。ユニオンネジ16の軸方向内側端部は、その外径がその他の部分(この部分を以下、ネジ本体16aという)よりも小さくなるように、軸方向から見て多角形状(例えば八角形状や十角形状など)に形成されている。ユニオンネジ16におけるネジ本体16aの軸方向外側部分の外周面には、雄ネジ16bが形成されている。そして、ユニオンネジ16には、可撓筒体10、ソリッドリング11及び補強コード12が加硫一体成形されている。
【0028】
可撓継手1の製造方法を以下、説明する。まず、ユニオンネジ16、ソリッドリング11及び補強コード12を金型(不図示)にそれぞれセットして、この金型を型締めする。次いで、金型のキャビティ内にゴム材料を注入充填して、ユニオンネジ16に可撓筒体10、ソリッドリング11及び補強コード12を加硫一体成形する。次いで、ユニオンツバ15をユニオンナット14にその軸方向内側から挿入してその軸方向外側へ突出させ、その状態のユニオンナット14の雌ネジ14bにユニオンネジ16の雄ネジ16bを螺合する。これにより、ユニオンツバ15の鍔部15bの軸方向外側端面がユニオンナット14におけるフランジ部14aの内周縁部の軸方向内側端面と接触するとともに、可撓筒体10の鍔部10bがユニオンツバ15の軸方向内側端面とユニオンネジ16の軸方向外側端面との間に挟み入れられる。以上のようにして、可撓継手1が製造される。
【0029】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、可撓筒体10の各鍔部10bにソリッドリング11を埋設しているので、高圧給水ポンプや給水管に引っ張られた状態で取り付けられた可撓継手1が変位したり、可撓継手1の内圧が高かったりするにも拘わらず、そのソリッドリング11により首抜けの発生を抑制することができる。
【0030】
また、可撓筒体10の軸方向各端部に接続部としてのF型ユニオン13を配設しているので、このF型ユニオン13により高圧給水ポンプや給水管に接続され、その施工性を良好にすることができる。
【0031】
以上により、首抜けの発生を抑制しながら、高圧給水ポンプや給水管への接続の施工性を良好にすることができる。
【0032】
また、可撓筒体10、ソリッドリング11及び補強コード12をユニオンネジ16に加硫一体成形しているので、この加硫一体成形品を成形するのに、従来のフランジ式フレキシブルジョイントを加硫一体成形するのに用いられる金型を流用することができ、その設備投資を抑制することができる。
【0033】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、可撓筒体10の筒本体10aを一山形状に形成しているが、これに限らず、山谷のない形状に形成したり、二山以上の山形状に形成したりしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、ソリッドリング11を、軸方向から見ると一部がユニオンネジ16と重なるように配置しているが、ソリッドリング11を、その内径がユニオンネジ16の内径よりも大きくなるように形成して、軸方向から見ると全部がユニオンネジ16と重なるように配置してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、両ユニオンをF型ユニオン13で構成しているが、これに限らず、ユニオンツバに雄ネジを形成したM型ユニオンで構成したり、一方をF型ユニオン、他方をM型ユニオンで構成したりしてもよい。
【0036】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0037】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明に係る可撓継手は、首抜けの発生を抑制しながら、配管等への接続の施工性を良好にすることが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 可撓継手
10 可撓筒体
10a 筒本体
10b 鍔部
11 ソリッドリング(環状部材)
12 補強コード(補強部材)
13 F型ユニオン
14 ユニオンナット
14a フランジ部
15 ユニオンツバ
15a 筒本体
15b 鍔部
16 ユニオンネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続される可撓継手であって、
筒状の筒本体と、該筒本体の軸方向両端部に径方向外側に延びるようにそれぞれ形成された環状の鍔部とを有する可撓筒体と、
上記可撓筒体の各鍔部に埋設された環状の環状部材と、
上記可撓筒体の筒本体に軸方向に延びるように埋設された筒状の補強部材と、
上記可撓筒体の軸方向各端部に配設されたユニオンとを備えており、
上記ユニオンは、
軸方向外側端部に環状のフランジ部が径方向内側に延びるように形成されたユニオンナットと、
上記ユニオンナットにその軸方向内側から挿入されてその軸方向外側に突出する筒状の筒本体と、該筒本体の軸方向内側端部に径方向外側に延びるように形成され、上記ユニオンナットのフランジ部と当接する環状の鍔部とを有するユニオンツバと、
上記可撓筒体の筒本体が貫通され、上記ユニオンツバとの間に上記可撓筒体の鍔部を挟み込むように上記ユニオンナットにその軸方向内側から螺合された筒状のユニオンネジとを有していることを特徴とする可撓継手。
【請求項2】
請求項1記載の可撓継手において、
上記可撓筒体は、ゴム製のものであり、
上記可撓筒体、上記環状部材及び上記補強部材は、上記ユニオンネジに加硫一体成形されていることを特徴とする可撓継手。

【図1】
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