説明

可溶化剤を同調して放出する医薬組成物

同調した可溶化剤の放出を有する医薬組成物、それに関連する様々な方法を開示し、説明する。より具体的には、可溶化剤の同調した放出によって、薬物の水溶性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
優先権データ
本願は、2005年5月4日付けで出願された米国仮特許出願第11/122,788号(参照により本発明の開示に含まれる)に関する。
【0002】
1.発明の分野
本明細書で開示する発明は、全体的に、可溶化剤を同調して放出する、水溶性が高められた医薬組成物に関する。より具体的には、可溶化剤の同調した放出によって、薬物の水溶性が向上した薬物(例えばシロスタゾールおよびカルベジロール)の医薬組成物が本明細書で開示される。
【0003】
2.背景
多くの治療剤において、これらの薬物を患者に有効に投与する際の重要な問題は、溶解性である。例えばシロスタゾールは、様々な心臓血管疾患を治療および予防するのに用いられる物質であるが、これを即時放出錠剤の剤形として製剤化し経口投与によって吸収させても、最小の絶対生物学的利用率しか得られない。その上、シロスタゾールの即時放出錠剤の剤形の吸収は用量に比例せず、溶解性が限定された吸収を伴う。また、シロスタゾールの即時放出錠剤の剤形の吸収は、食物消費によっても顕著な影響を受け、これは、溶解性が限定された吸収の別の指標である。高脂肪食は、シロスタゾールの即時放出錠剤の剤形の吸収を顕著に増加させ、この場合、Cmaxは約90%増加し、AUCは約25%増加する。シロスタゾールの即時放出錠剤の剤形が食物消費後に投与される場合、食物消費に起因するシロスタゾール吸収の顕著な増加により、頭痛や動悸のような有害な副作用が起こる。それゆえに、シロスタゾールの即時放出錠剤の剤形は、1日2回日、すなわち朝食の少なくとも30分間前、または、朝食の少なくとも2時間後に摂取しなければならない。
【0004】
溶解性が限定された吸収性を有する薬物に対して、従来の徐放性製剤は効果がない。従来の可溶性が不十分な薬物の徐放性では、薬物溶解性の有意で持続的な改善がみられず吸収が改善されないので、望ましい期間にわたって十分な全身の薬物濃度が得られないと予想される。
【0005】
従って、薬物、具体的にはシロスタゾールのような溶解性が限定された吸収を伴う薬物の溶解性を高めるための医薬組成物および経口用製剤が必要である。好ましくは、このような医薬組成物および経口用製剤は、放出調節型の製剤で投与することができる。
【0006】
3.要約
本発明は、可溶化剤を同調して放出する、水溶性が高められた薬物組成物を提供することによって、上記およびその他の必要性を満たす。より具体的には、薬物の水溶性が可溶化剤の同調した放出によって強化された医薬組成物が提供される。
【0007】
一形態において、医薬組成物が提供される。本医薬組成物は、治療有効量の薬物、可溶化剤および放出モジュレーター(modulator:調節剤・調節器)を含み、薬物と可溶化剤との放出が同調している。可溶化剤は、同調して放出されると薬物の水溶性を有意に増加させる。薬物および可溶化剤が同調して放出されると、放出を調節することができ、さらに生物学的利用率を損なうことなく放出調節特性が付与される可能性がある。さらに、薬物および可溶化剤の同調により、治療効果に必要な用量を低減させるか、または、投与頻度を低減させることができる。また、薬物および可溶化剤を同調して放出させることによって、副作用を減少させることも可能である。同調させた薬物および可溶化剤は、許容できる薬物動態学的および治療に関するプロファイルを維持しつつ食事と共に投与してもよいし食事なしで投与してもよい。さらに、薬物投与頻度および副作用の低減によって、患者のコンプライアンスが改善されることが多い。
【0008】
その他の形態において、経口用製剤が提供される。経口用製剤は、治療有効量の薬物、可溶化剤および放出モジュレーターを含み、薬物と可溶化剤との放出が同調している。具体的には、錠剤、カプセル、粉末などの多くの経口用製剤が考えられる。当業者であれば容易に認識できるように、本発明の実施において、その他の多くの製剤も使用可能である。
【0009】
さらにその他の形態において、固形の経口用製剤が提供される。経口用製剤は、治療有効量の薬物、可溶化剤および放出モジュレーターを含み、薬物と可溶化剤との放出が同調している。
【0010】
4.図面の簡単な説明
図1は、シロスタゾールの水溶性を、37℃での、酵素を含まない人工腸液(pH6.8)中の可溶化剤の濃度の関数として説明し;
図2は、実施例6−2のシロスタゾールおよび可溶化剤の放出を説明し[USP装置I、100rpm、37℃、1000mlの酵素を含まない人工胃液+0.275%w/vのドデシル硫酸ナトリウム];
図3は、実施例6−3の可溶化剤の放出、および、シロスタゾールの溶解性の強化を説明し[遅延放出の試験器、10rpm、37℃;0〜2時間:100mlの酵素を含まないSGF、2時間+時間:100mlの酵素を含まないSIF(pH6.8)];
図4は、実施例6−1および6−2のシロスタゾールの放出を説明し[USP装置I、100rpm、37℃、1000mlの酵素を含まない人工腸液(pH6.8)];
図5は、実施例9−1および9−2のカルベジロール、および、可溶化剤の放出を説明し[USP装置I、100rpm、37℃、0〜2時間:1,000mlのSGF(pH1.2);2時間+時間:1,000mlのSIF(pH6.8)];
図6は、実施例10−1および比較例10−1のカルベジロールの放出を説明し[遅延放出の試験器;10rpm、37℃、100mlのSGF(pH1.2)、または、100mlのSIF(pH6.8)];
図7は、健康な志願者での単回投与の無作為交差試験における実施例10−1および比較例11−1のカルベジロールの血漿濃度を時間の関数として説明し;
図8は、実施例12−1、12−2および12−3のザフィルルカストの放出を説明し;
図9は、実施例12−4および12−8のザフィルルカストの放出を説明し;および、
図10は、実施例15−1〜15−3のピオグリタゾンの放出を説明する。
【0011】
5.詳細な説明
5.1.定義
単数形「a」、「an」および「the」には複数形の指示対象が含まれるが、文脈上明らかにそうでない場合は除く。従って、例えば、「可溶化剤(the solubilizer)」および「放出モジュレーター(the release modulator)」という場合は、特定の可溶化剤および放出モジュレーターの1種またはそれより多くを含み、「添加剤」(an additive)という場合は、このような添加剤の1種またはそれより多くを含み、「可塑化剤(the plasticizing agent)」という場合は、このような物質の1種またはそれより多くを含む。
【0012】
AUC」は、ゼロ時間から無限時間への外挿によって得られる血漿薬物濃度対時間曲線下の領域である。
max」は、薬物の血管外投与後の血漿中で観察された最大薬物濃度である。
【0013】
長期間」は、即時放出に必要な時間を越える期間にわたって放出がなされることを意味する。放出は、持続性でもよいし、遅延性でもよいし、または、パルス型でもよい。
薬物」、「医薬活性物質」、「生理活性因子」、「治療剤」および「活性物質」は、同じ意味で用いることができ、有効量で投与した場合の病気または障害の治療における治療効果のような、体に測定可能な有益な生理学的効果を有する物質、例えば化学物質または複合体を意味する。さらに、これらの用語が用いられる場合、または、具体的な活性物質を名称または種類によって特定して識別する場合、活性物質それ自体、それに加えて製薬上許容でき薬理学的に活性なそれらの誘導体、または、それらに有意に関連する化合物、例えば、これらに限定されないが、塩、製薬上許容できる塩、N−酸化物、プロドラッグ、活性な代謝産物、異性体、フラグメント、類似体、溶媒化合物、水和物、放射性同位体などがこれらに含まれるものと理解される。
【0014】
有効量」および「十分な量」は、同じ意味で用いることができ、意図する目的または目標を達成するするのに十分な物質の量を意味する。
即時放出」は、薬物の製剤方法によって有意に改変されない速度での薬物の放出を意味する。用語「即時放出」または「瞬間放出」は、当業者周知である。
【0015】
患者」には、ヒトが含まれる。本明細書において用語「ヒト」および「患者」は同じ意味で用いられる。
製薬上許容できる塩」は、親化合物の望ましい薬理活性を有する化合物の塩を意味する。このような塩としては、(1)無機酸と形成された酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと形成された酸付加塩;または、有機酸と形成された酸付加塩、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成された酸付加塩;または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、または、アルミニウムイオンで置換される場合に形成された塩、;または、有機塩基との配位体(coordinate)、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンなどが挙げられる。
【0016】
〜を予防すること」または「予防」は、病気または障害に罹る危険性を減少させること、すなわち、病気に晒されているか、または素因を有する可能性があるが、未だ病気を経験していないか、または症状を示していない患者に、その病気の臨床症状の少なくとも1種を発症させないようにすることを意味する。
【0017】
プロドラッグ」は、活性な薬物が放出されるように体内での変換を必要とする薬物分子の誘導体を意味する。プロドラッグは、必ずしもそうとは限らないが、親の薬物に変換されるまで薬理学的に不活性であることが多い。ヒドロキシルを含む薬物は、例えば、スルホン酸塩、エステルまたは炭酸塩のプロドラッグに変換することができ、これらは、インビボで加水分解されてヒドロキシル化合物を提供し得る。アミノを含む薬物は、例えば、カルバメート、アミド、エナミン、イミン、N−ホスホニル、N−ホスホリル、または、N−スルフェニルのプロドラッグに変換することができ、これらは、インビボで加水分解されてアミノ化合物を提供し得る。カルボン酸薬物は、エステル(例えば、シリルエステル、および、チオエステルなど)、アミド、または、ヒドラジドのプロドラッグに変換することができ、これらは、インビボで加水分解されてカルボン酸化合物を提供し得る。上記で列挙したものと異なる官能基を有する薬物のプロドラッグは、当業者周知である。
【0018】
可溶化剤」は、薬物の水溶性を強化するあらゆる物質を意味する。
同調した放出」は、薬物と可溶化剤とが平行して放出されることを意味する。放出は、持続性でもよいし、遅延性でもよいし、または、パルス型でもよい。
【0019】
いずれかの病気または障害を「治療すること」、または、それらの「治療」は、一実施態様において、病気または障害を改善すること(すなわち、病気の発症またはそれらの臨床症状の少なくとも1つを停止または減少させること)を意味する。その他の実施態様において、「治療すること」または「治療」は、患者が認識することができない物理的なパラメーターの少なくとも1つを改善することを意味する。さらにその他の実施態様において、「治療すること」または「治療」は、物理的に(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的なパラメーターの安定化)のいずれかによって、または、その両方によって病気または障害を阻害することを意味する。さらにその他の実施態様において、「治療すること」または「治療」は、病気または障害の発病を遅らせることを意味する。
【0020】
治療有効量」は、病気を治療するために患者に投与した場合、このような病気の治療を行うのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、病気およびその重症度、ならびに、治療しようとする患者の年齢、体重などに応じて様々であると予想される。
【0021】
ここで、本発明の好ましい実施態様について詳細に述べる。本発明は好ましい実施態様と併せて説明されるが、当然ながら本発明をその好ましい実施態様に限定することは目的としない。それとは反対に、添付の請求項によって定義される本発明の本質および範囲に含まれ得る代替形態、改変形態および等価な形態を含むこととする。
【0022】
5.2.医薬組成物
本発明は、薬物と可溶化剤との放出を同調させることによって薬物の溶解性を増加させるための医薬組成物および経口用製剤を提供する。当業者であれば、その他の物理化学的または薬物動態学的/薬力学的な問題も、薬物と可溶化剤との同調した放出によって緩和され得ることを理解できると思われる。このような状況において、可溶化剤と薬物との同調した放出は、多数の特定の放出プロファイルおよび作用、例えば、これらに限定されないが、遅延放出、遅延放出、および、パルス型の放出と共に利用することができる。さらに、当業者であれば理解していると思われるが、経口用製剤が用いられる場合、このような放出プロファイルは、それに対応する吸収プロファイルを発生させる可能性がある。
【0023】
一実施態様において、本発明は、治療有効量の薬物、可溶化剤;および、放出モジュレーターを含み、薬物と可溶化剤との放出が同調している医薬組成物を提供する。一実施態様において、薬物の水溶性は、約100pg/ml未満である。その他の実施態様において、薬物の水溶性は、約50pg/ml未満である。さらにその他の実施態様において、薬物の水溶性は、約25pg/ml未満である。好ましくは、可溶化剤は、薬物の水溶性を、薬物本来の水溶性と比較して約25%以上増加させる。
【0024】
一実施態様において、放出は長期間にわたる。一実施態様において、上記長期間は、約1時間より長い。その他の実施態様において、上記長期間は、約2時間より長い。さらにその他の実施態様において、上記長期間は、約2時間〜約24時間である。
【0025】
場合によって、同調した放出は、薬物および可溶化剤の溶解または放出速度の分析および決定によって評価してもよい。薬物および可溶化剤が同時に放出されると同調した放出が示され、すなわち、同調した放出は、放出された薬物および可溶化剤の量が時間の関数として相関する。好ましくは、薬物と可溶化剤との放出の相関係数は、約0.80より大きく、より好ましくは約0.90より大きく、最も好ましくは約0.95より大きい。一実施態様において、同調した放出は、製剤を可溶化しない溶解媒体(例えば、人工胃液、人工腸液または水)に晒す溶解実験で、薬物の放出を測定することによって評価してもよい。放出が長期間にわたって起こり、観察された溶解媒体中での薬物の水溶性が、長期間にわたって、薬物本来の溶解性に比べて25%向上させられたり、または、上昇したりする場合、薬物と可溶化剤との放出は同調している。その他の実施態様において、同調した放出は、インビボでの血中濃度プロファイルによって評価することができる。同調した可溶化剤の放出製剤の用量で正規化したCmaxは、同調していない可溶化剤の放出コントロールに比べて減少する可能性があるが、用量で正規化したAUCに匹敵するか、またはそれより大きいAUCを生じる可能性もある。
【0026】
薬物と可溶化剤との同調した放出によって利益が得られる可能性がある薬物の例としては、これらに限定されないが、アカンプロセート、アセブトロール、アシトレチン、アルファキサロン、アムロジピン、アミオダロン、アモキシリン、アンプレナビル、アナグレライド、アナストラゾール、アテノロール、アトバコン、アトルバスタチン、アバシマイブ(avasimibe)、アザチオプリン、アジスロマイシン、バカンピシリン、ベクロメタゾン、ベタキソロール、ビカルタミド、ビソプロロール、ボセンタン、ブシンドロール、ブデソニド、ブプロプリオン(buproprion)、カルベジロール、カンデサルタンシレキセチル、カルバマゼピン(carbamezepine)、カルビドパ、セレコキシブ、セチリジン、ケノデオキシコール酸、シクレソニド、シロスタゾール、シプロフロキサシン、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロベタゾール、クロナゼパム、クロピドグレル、クロザピン、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、メシル酸デラビリジン(delaviridine mesylate)、デソゲストレル、ジヒドロエルゴタミン、ダイアナボル、ジレバロール、ジピリダモール、ドセタキセル、ドネゼピル、デスロラタジン、デュタステライド、エコナゾール、エフィヴァレンズ(efivarenz)、エンロピタント(enlopitant)、エンタカポン、エプレレノン、エプロサルタン、エルゴタミン、エスモロール、エスタゾラム、エトプロロール(etoprolol)、エトリコキシブ、エベロリムス、エキセメスタン、フェノフィブラート(fenofibate)、フェキソフェナジン、フルコナゾール、フルフェナジン、フロバトリプタン 、グラニセトロン、ヒドロコドン、イルベサルタン、イスラジピン、イタセトロン、イトラコナゾール、ラベタロール、ラモトリジン、ランソプラゾール、レルカニジピン、レトロゾール、レボドパ(levadopa)、レボフロキサシン、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタチン、メフロキン、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メロキシカム、メタキソロン(metaxolone)、メトラゾン、ミフェプリストン、ミルタザピン、モダフィニル 、モルヒネ、モメタゾン、ナドロール(nadalol)、ネファゾドン、ネヴィブロール(nevibulol)、ニフェジピン、ネフィナヴィル(nefinavir)、ニモジピン、ニソルジピン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルフロキサシン、ノルテストステロン、オランザピン、オルメサルタンメドキソミル、オンダンセトロン(ondasetron)、オキサカルベザピン(oxacarbezapine)、オキサプロジン、オクスプレノロール(oxprenolol)、パロキセチン、ペニシリン、ペルゴリド、フェナゾピリジン、ピオグリタゾン、ピメクロリムス、ピタバスタチン、プレグナンジオール、プレグネノロン(pregnanolone)、プレグネノロン、アロプレグネノロン、エピアロプレグネノロン、プロゲステロン、プロパフェノン、プロパノロール(propanolol)、クエチアピン、ラロキシフェン、ラミプリル、ラノラジン、リファペンチン、リスペリドン、リタノヴィル(ritanovir)、リバスチグミン、ロフェコンキシブ(rofeconxib)、ロピニロール(ropinorole)、ロジグリタゾン、ロスバスタチン、サルメテロール、サキナビル、セルトラリン、シルデナフィル、シロリムス、ソタロール、シンバスタチン、スパルフロキサシン、スピロノラクトン、スタブジン、スルファメトキサゾール、スマトリプタン、タクロリムス、タダラフィル、テガセロド、タムスロシン、テルミサルタン、テルビナフィン、テルコナゾール、テストステロンおよびテストステロンエステル、ウンデカン酸テストステロン、メチルテストステロン、サリドアミド(thalidoamide)、チアガビン、チボロン、チザニジン、トルカポン、トピラメート、トルセトラピブ、トランドラプリル、トラマドール、トリアゾラム、リメトプリム、バルデコキシブ、バルデナフィル、バルサルタン、バルルビシン、ウルソデオキシコール酸、ボリコナゾール、ザフィルルカスト、ザレペロン(zalepelon)、ジロートン、ジプラシドン、および、ゾルピデムが挙げられる。いくつかの好ましい薬物は、シロスタゾール、カルベジロール、ザフィルルカスト、アミオダロン、フェノフィブラート、ドロネダロン(dronederone)、リスペリドン(risperdone)、ジプラシドン、シンバスタチン(simivastatin)、ピオグリタゾン、または、アトルバスタチン(atorvastin)である。
【0027】
薬物と可溶化剤との同調した放出によって利益を得る可能性がある治療剤のタイプとしては、これらに限定されないが、安全性、便利さ、部位特異的な吸収、または安定性の条件を満たすような放出調節プロファイルを必要とする、難水溶性またはpH依存性の水溶性を有する薬物が挙げられる。例えば、胃のpHでは高い溶解性を有するが、腸のpHでは低い溶解性を有する弱塩基性の薬物(約9.0未満のpKa)は、pHが低く、薬物が主に水溶性のイオン化型である場合、近位の消化管では急速な吸収を示す可能性があるが、pHがそれより高く、薬物が可溶性の低い遊離塩基として存在する場合、このような薬物は、遠位の消化管では吸収が不十分であるか、または、吸収されない。このような溶解性プロファイルは、急速な初期吸収による望ましくない副作用を示す治療上活性な化合物に特に望ましくない場合がある。
【0028】
抗高血圧症薬(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブシンドロール、カルベジロール、ジレバロール、ラベタロール、エスモロール、エトプロロール、ナドロール、ネヴィブロール、オクスプレノロール、プロパノロール、ソタロール)は、急速な初期吸収による急性低血圧の副作用(眩暈、めまい、および、失神)に関連する可能性がある。従って、難水溶性を有する、または、塩基性の抗高血圧症薬は、上記で列挙した薬物のような、薬物と可溶化剤との同調した放出によって利益を得る可能性がある薬物である。
【0029】
カルベジロール、(1−(9H−カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(2−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノールは、この薬剤分類のその他の例である。カルベジロールは、α遮断活性を有する非選択的なβ−アドレナリン遮断薬であり、高血圧やうっ血性心不全のような心臓血管に関する状態などの様々な状態の治療で必要とされる。カルベジロールは、弱塩基性であり(pKaは約7.6)、水溶性が極めて低い(すなわち、約0.001mg/ml未満)。カルベジロールは、低いpHで水溶性のイオン化型が形成されるために明らかな水溶性を示すが、比較的不溶性の塩化水素酸の酸付加塩が形成されるために溶解性は約1mg/ml未満に限定される。
【0030】
pH依存性の溶解特性のために、経口投与されたカルベジロール医薬組成物は、低いpHによって胃での有意なカルベジロール溶解性および放出を示し、そのために、血漿濃度および低血圧の副作用が上昇するか、または、迅速に増加する可能性がある。このような製剤が消化管を通じて移動し、pHが上昇するにつれて、カルベジロールの溶解性と放出は極めて少なくなる。すなわち、カルベジロールは、低血圧の逆作用を引き起こす可能性を減少させるために、食事と共に投与して胃での初期の放出を遅延させることが必要である。これらの特徴によって、カルベジロールは、同調した可溶化剤の放出組成物に配合するのに特に十分な適性を有している。
【0031】
薬物と可溶化剤との同調した放出によって利益を得る可能性があるその他のタイプの治療剤は、持続性の高い血中濃度を必要とする、短い血漿半減期を有する難水溶性で難吸収性の化合物である。このタイプの物質の例は、テストステロンである。
【0032】
同調した可溶化剤の放出によって利益を得る可能性があるさらにその他のタイプの治療剤としては、抗不整脈薬(例えば、アミオダロン、ドロネダロン、プロパフェノン)、抗精神病薬(例えば、ジプラシドン、リスペリドン)、および、抗パーキンソン病薬(例えば、カルビドパ、レボドパ、または、ペルゴリドのようなドーパミンアゴニスト)が挙げられる。
【0033】
シロスタゾール(周知のPDE III阻害剤)も、薬物と可溶化剤との同調した放出によって利益を得る可能性がある。シロスタゾールは、脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈 病気、重症虚血肢、および、間欠性跛行症などの心臓血管に関する状態を治療または予防するために用いられてきた。シロスタゾールは、脂質代謝異常に罹った患者、具体的には糖尿病患者の脂質のプロファイルを有利に変化させる。同調したシロスタゾールおよび可溶化剤の放出は、薬物投与の頻度を1日2回日から1日1回に減少させることが可能であり、それによって、患者のコンプライアンスを高め、さらに頭痛や動悸のような副作用も減少させることが可能である。さらに、同調したシロスタゾールおよび可溶化剤の放出によって、で食物消費の有無にかかわらず、許容できない副作用を生じることなくシロスタゾール投与を可能にする。
【0034】
上記の治療剤は、市販されているものでもよいし、または、当業者既知の手法を用いて合成してもよい。
本発明の医薬組成物は、可溶化剤を含む。好ましくは、製剤を生理的に現実的な体積の水溶液(約20〜約500ml)に溶解させた場合、可溶化剤は、水性薬物の溶解性を、本来の(可溶化剤なしの)薬物の水溶性よりも25%以上高める。一実施態様において、可溶化剤は、水性薬物の溶解性を50%またはそれより多く高め、その他の実施態様において、可溶化剤は、水溶性を100%またはそれより多く高める。当然ながら、以下の可溶化剤の混合物も本発明の範囲内である。
【0035】
薬物の水溶性が高まるのであれば様々な適切な可溶化剤が使用できる。好ましくは、可溶化剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、シクロデキストリン(例えば、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン)、シクロデキストリン誘導体(例えば、スルホブチル、または、ヒドロキシプロピルエーテル)、胆汁酸、胆汁酸誘導体、ステロール誘導体、アルコール、具体的には脂肪族アルコールおよび脂肪族アルコール誘導体、酸、具体的には脂肪酸および脂肪酸誘導体、ならびに、トコール誘導体である。より好ましくは、可溶化剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、脂肪酸誘導体、および、トコール誘導体である。
【0036】
好ましい脂肪酸およびアルコールは、C6〜C22脂肪酸およびアルコール、例えばステアリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸(arachnidoic acid)、ベヘン酸、および、それらの対応する製薬上許容できる塩である。好ましい脂肪酸および脂肪族アルコール誘導体としては、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アミドエステル(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、サルコシン酸ラウリルナトリウム、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、および、ミリストイルカルニチン)、ヒドロキシ酸とのエステル(例えば、ステアロイル乳酸ナトリウム);糖エステル[例えば、乳酸ラウリル、モノカプリル酸グルコース、モノカプリル酸ジグルコース、ラウリン酸スクロース、モノラウリン酸ソルビタン(アーラセル(Arlacel(R))20)、モノパルミチン酸ソルビタン(スパン(Span)−40)、モノオレイン酸ソルビタン(スパン−80)、モノステアリン酸ソルビタン、および、トリステアリン酸ソルビタン]、低級アルコールの脂肪酸エステル[例えば、オレイン酸エチル(クロダモル(Crodamol)EO)、ミリスチン酸イソプロピル(クロダモルIPM)、および、パルミチン酸イソプロピル(クロダモルIPP)]、プロピレングリコールとのエステル[例えば、モノラウリン酸プロピレングリコール(ラウログリコール(Lauroglycol)FCC)、リシノール酸プロピレングリコール(プロピマルス(Propymuls))、モノオレイン酸プロピレングリコール(マイベロール(Myverol(R))P−06)、モノカプリル酸プロピレングリコール(カプリオール(Capryol(R))90)、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(カプテックス(Captex(R))200)、および、ジオクタン酸プロピレングリコール(カプテックス800)]、グリセロールとのエステル[例えば、モノオレイン酸グリセリル(ペセオール(Peceol))、リシノール酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル(カプマル(Capmul(R))GDL)、ジオレイン酸グリセリル(カプマルGDO)、モノリノール酸グリセロール(マイシン(Maisine(R)))、モノ/ジオレイン酸グリセリル(カプマルGMO−K)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(カプマルMCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(インウィター(Imwitor(R))988)、モノおよびジアセチル化モノグリセリド(ミバセット(Myvacet(R))9−45)]、トリグリセリド[例えば、トウモロコシ油、アーモンド油、ダイズ油、ヤシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、プレコ(Pureco)100、ヒドロコート(Hydrokote)AP5、カプテックス300、350、ミグリオール(Miglyol)812、ミグリオール818、および、ゲルシア(Gelucire)33/01)]、プロピレングリコールエステルとグリセロールエステルとの混合物[例えば、プロピレングリコールのオレイン酸エステルと、グリセロール(アーラセル186)との混合物]、および、ポリグリセリド化脂肪酸、例えばオレイン酸ポリグリセリル(プルロール(Ploral(R))オレイケ(Oleique))、ジオレイン酸ポリグリセリル−2(ニッコール(Nikkol)DGDO)、トリオレイン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−10(ニッコール・デカグリン(Decaglyn)1−L)、オレイン酸ポリグリセリル−10(ニッコール・デカグリン1−O)、および、モノ、ジオレイン酸ポリグリセリル−10(カプロール(Caprol(R))PEG860)が挙げられる。
【0037】
その他の有用な脂肪酸誘導体としては、ポリエトキシ化された脂肪酸(例えば、ラウリン酸PEG−8、オレイン酸PEG−8、ステアリン酸PEG−8、オレイン酸PEG−9、ラウリン酸PEG−10、オレイン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、ラウリン酸PEG−20、および、オレイン酸PEG−20)、PEG−脂肪酸ジエステル(例えば、ジラウリン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、ジステアリン酸PEG−20、ジラウリン酸PEG−32、および、ジオレイン酸PEG−32)、PEG−脂肪酸モノおよびジエステル混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル(例えば、PEG化グリセロール12アシルオキシ−ステアラート、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、および、オレイン酸PEG−30グリセリル)、および、アルコール−油エステル交換生成物[例えば、ポリオキシル40ヒマシ油(クレモフォール(Cremophor(R))RH40)、ポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォールEL、または、インクロカス(Incrocas)35)、トリオレイン酸PEG−25(TAGAT(R)TO)、PEG−60トウモロコシグリセリド(クロヴォル(Crovol)M70)、PEG−60アーモンド油(クロヴォルA70)、PEG40パーム核油(クロヴォルPK70)、PEG−50ヒマシ油(エマレックス(Emalex)C−50)、PEG−50硬化ヒマシ油(エマレックスHC−50)、PEG−60硬化ヒマシ油(クレモフォールRH60)、カプリル酸/カプリン酸PEG−8グリセリド(ラブラゾール(Labrasol(R)))、ラウロイルマクロゴール32グリセリド(ゲルシア(R)44/14)、リノレオイルマクロゴグリセリド(ラブラフィル(Labrafil)(R))、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド(ゲルシア50/13)、および、カプリル酸/カプリン酸PEG−6グリセリド(ソフティジェン(Softigen(R))767)]が挙げられる。
【0038】
具体的に好ましい脂肪酸誘導体は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、グルコースポリエチレングリコール、または、アルファ−ヒドロキシ酸とのエステルである。
【0039】
胆汁酸およびステロール誘導体としては、これらに限定されないが、コラート、ウルソデオキシコラート、ケノデオキシコラート、タウロケノデデオキシコラート、タウロウルソデオキシコラート、グリコケノデデオキシコラート、グリコウルソデオキシコラート、ステロール、および、ステロールエステルまたはエーテル、例えばPEG−24コレステロールエーテル(ソルラン(Solulan(R))C−24)が挙げられる。
【0040】
トコール誘導体としては、トコール構造[2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール]、または、トコトリエノール構造[2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−6−オール]を有する物質の誘導体が挙げられる。具体的には、一般的にトコフェロールとして知られているモノ、ジ、トリメチル−トコール、および、それらの有機酸エステル、例えば酢酸、ニコチン酸、コハク酸およびポリエチレングリコールコハク酸エステルが挙げられる。例えば、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(200〜8000Mw)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS,イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Co.))が挙げられる。本発明の実施のために、混合型のラセミ体(例えば、あらゆるラセミ体またはdl−)、加えて、純粋なエナンチオマー(例えば、d−、l−またはRRR−)が適切である。好ましいトコール誘導体としては、α−トコフェロールエステル、および、ポリエトキシ化されたα−トコフェロールエステルが挙げられる。より具体的に好ましいトコール誘導体としては、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸(nicotinoate)α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(200〜8000Mw)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、または、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が挙げられる。
【0041】
好ましい可溶化剤としては、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、カプリル酸/カプリン酸PEG−8グリセリド(ラブラゾール(R))、モノオレイン酸ソルビタン(スパン−80)、モノラウリン酸ソルビタン(スパン20)、モノパルミチン酸PEG−20ソルビタン(トゥイーン(Tween)40)、モノステアリン酸PEG20ソルビタン(トゥイーン60)、モノオレイン酸PEG−20ソルビタン(ポリソルベート80、または、トゥイーン80)、モノ/ジオレイン酸グリセリル(カプマルGMO−K)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(カプマルMCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(インウィター(R)988)、および、モノ−、および、ジアセチル化モノグリセリド(ミバセット(R)9−45)、リノレオイルモノグリセリド(ラブラフィル2125CS)、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(ゲルシア(R)44/14)、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(200〜8000Mw)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が挙げられる。
【0042】
特に好ましい可溶化剤としては、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸PEG−20ソルビタン(ポリソルベート80、または、トゥイーン80)、リノレオイルモノグリセリド(ラブラフィル2125CS)、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(ゲルシア(R)44/14)、および、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が挙げられる。
【0043】
上記の可溶化剤は商業的な供給元から入手してもよいし、または、当業者既知の手法を用いて合成してもよい。
本発明の医薬組成物はさらに、薬物と可溶化剤との放出を長期間にわたり同調させる放出モジュレーターも含む。当然ながら、放出モジュレーターの混合物も本発明の範囲内である。
【0044】
様々な放出モジュレーターが当業者既知である。適切な放出モジュレーターの例としては、これらに限定されないが、浸透圧ポンプのような装置(例えば、Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201; Saudek等, N. Engl. JMed. 1989, 321, 574を参照)、徐溶解性の塩または複合体(例えば、タンニン酸との)、または、加水分解性のエステル、侵食性のマトリックス(例えば、ポリアミド、例えばアルブミン、コラーゲン、ポリ(L−グルタミン酸の−コ−γ−エチル−L−グルタマートなど、ポリエステル、例えばポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびそれらのコポリマー、ポリ(オルトエステル)、および、ポリ無水物)、イオン交換樹脂(例えば、ジビニルベンゼン−ポリスチレンスルホナートコポリマー)、ワックス(例えば、微晶質ワックス)、不溶性キャリアー、例えば硫酸カルシウム、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸誘導体、脂肪族アルコール誘導体(例えば、脂肪族アルコールから誘導されたワックス、例えば乳化ワックスまたは混合型の脂肪酸、ならびに、脂肪族アルコール誘導体、例えばセチルエステルワックス、カルナウバ蝋、黄蝋および白蝋)、および、トコール誘導体が挙げられる。好ましくは、放出モジュレーターは、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アルコール誘導体、脂肪酸誘導体、または、トコール誘導体である。
【0045】
高分子材料の具体的な例としては、これらに限定されないが、高分子量ポリエチレングリコール、セルロース性物質(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCS)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース)、セラック、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸(カルボマー)、メタクリラートの中性ポリマー(例えば、オイドラギット(Eudragit)NE)、官能基としてトリメチルアミノエチルメタクリレートを有するメタクリル酸コポリマー(例えば、オイドラギットRS、RS100、RL、RL100)、メタクリル酸およびメタクリラートのアニオン性ポリマー(例えば、オイドラギットL100、L100−55、S100)、ポリビニルピロリドンコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン・酢酸ビニルコポリマー(コリドン(Kollidon)VA64、コリドン(Kollidon)SR))、ガラクトース・マンナート(gelactose mannate)、高分子量多糖類ゴムおよび樹脂(例えば、アカシア、キサンタンガム、トラガカント、セラックなど)、グリクロナン(glycuronan)ポリマー(例えば、アルギン酸、および、製薬的に利用可能な塩)が挙げられる。好ましい高分子の放出モジュレーターは、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンコポリマー、アクリル系ポリマー、セラック、ポリビニルアセテートフタレート、および、高分子量の多糖類ゴムである。
【0046】
放出モジュレーターとして有用な脂肪酸または脂肪族アルコールおよび誘導体の具体的な例としては、これらに限定されないが、ステアリルアルコール、ステアリン酸、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール(コンプリトール(Compritol)(R)888)、ジステアリン酸グリセロール(プレシロール(Precirol)(R))、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(ゲルシア(R)44/14)、および、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド(ゲルシア50/13)、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、および、ワックス(例えば、混合型の脂肪族アルコール、および、脂肪酸誘導体ワックス、例えばセチルエステルワックス、非イオン性乳化ワックス、黄蝋、白蝋、および、カルナウバ蝋)が挙げられる。好ましい脂肪酸、脂肪族アルコールまたは誘導体としては、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ステアロイルアルコール、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、カルナウバ蝋、黄蝋、白蝋、または、セチルエステルワックスが挙げられる。
【0047】
放出モジュレーターとして有用なトコール誘導体の具体的な例としては、これらに限定されないが、一般的にトコフェロールとして知られているモノ、ジ、トリメチル−トコール、および、それらの有機酸エステル(例えば、酢酸、ニコチン酸(nicitanoate)、コハク酸、ポリエチレングリコールコハク酸エステルなど)が挙げられる。放出モジュレーターとして有用な具体的な化合物は、例えば、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(200〜8000Mw)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400である。トコール誘導体の混合型のラセミ体(例えば、あらゆるラセミ体またはdl−)、および、純粋なエナンチオマー(例えば、d−、l−またはRRR−)はいずれも、本発明の実施において有用である。
【0048】
多くの放出モジュレーターが、医薬組成物中または水性分散液中のいずれかで薬物の可溶化剤としてさらに役立つ可能性がある(さらに、前の章で定義されたような可溶化剤としても作用する)。同様に、多くの可溶化剤が、医薬組成物中または水性分散液中のいずれかで薬物の放出モジュレーターとしてさらに役立つ可能性がある(さらに、前の章で定義されたような放出モジュレーターとしても作用する)。
【0049】
上記の放出モジュレーターは商業的な供給元から入手してもよいし、または、当業者既知の手法を用いて合成してもよい。
上記で列挙された可溶化剤および放出モジュレーターに加えて、本医薬組成物は、任意に1種またはそれより多くの添加剤を含んでいてもよい。具体的には、添加剤の非限定的な例は以下で説明されている通りである。
【0050】
適切な添加剤としては、処理工程を容易にするために一般的に利用されているもの、例えば凝集、エアサスペンションの冷却、エアサスペンションの乾燥、ボーリング、コアセルベーション、粉砕、圧縮、ペレット化、低温ペレット化(cryopelletization)、押出し、顆粒化、均質化、包接錯化、凍結乾燥、ナノカプセル化、溶融、混合、成形、パンコーティング、溶媒の脱水、超音波破砕、球形化(spheronization)、噴霧冷却、噴霧凝結、噴霧乾燥、または、その他の当業界既知の処理が挙げられる。添加剤をプレコーティングしてもよいし、または、カプセル封入してもよい。適切なコーティングは当業界周知である。
【0051】
本発明の医薬組成物は、任意に、1種またはそれより多くの溶媒、すなわち、薬物の水溶性を高める可溶化剤とは異なる、キャリアー中での活性成分またはその他の組成物の成分の溶解性を高める添加剤を含んでいてもよい。本発明で使用するための組成物に適した溶媒としては、これらに限定されないが、酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸など)、アルコールおよびポリオール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびそれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体など)、約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル(例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール,BASFより商標名テトラグリコールで商業的に入手可能)、または、メトキシPEG(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)))、アミド(例えば、2−ピロリドン、2−ピペリドン、カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドンなど)、エステル(例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセタート、カプロラクトンおよびそれらの異性体、バレロラクトンおよびそれらの異性体、ブチロラクトンおよびそれらの異性体など)、および、当業界既知のその他の溶媒、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(アーラソルブ(Arlasolve)DMI(ICI))、N−メチルピロリドン(ファーマソルブ(Pharmasolve)(ISP))、モノオクタノイン、および、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(ガットフォセ(Gattefosse)より商標名トランスクトール(Transcutol)で入手可能)が挙げられる。また、溶媒の混合物も本発明の範囲内である。これらの化合物は、標準的な商業的な供給源より容易に入手可能であり、または、当業者既知の手法を用いて合成してもよい。
【0052】
好ましい溶媒としては、酢酸、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。具体的に好ましい溶媒としては、酢酸、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、グリセロール、エタノール、イソプロパノール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、および、プロピレングリコールが挙げられる。
【0053】
本発明の組成物に含ませることができる溶媒の量は具体的に限定されない。当然ながら、このような組成物が最終的に患者に投与される際に、所定の溶媒の量は生物学的に許容できる量に限定され、このような量は当業者によって容易に決定される。ある種の環境では、生物学的に許容できる量をかなり超える量の可溶化剤を含ませ、本組成物を患者に提供する前に、例えば蒸留または蒸発のような従来技術を用いて過量の溶媒を除去することによって活性成分の濃度を最大にすることが有利な場合がある。
【0054】
医薬組成物において従来用いられるその他の添加剤を含ませてもよく、このような添加剤は当業界周知である。このような添加剤としては、これらに限定されないが、付着防止剤(固着防止剤、滑剤、流動促進剤、潤滑剤)(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒュームドシリカ(カルボシル(Carbosil),エアロシル(Aerosil))、微粉末シリカ(シロイド(Syloid)番号FP244,グレース(Grace)U.S.A)、ポリエチレングリコール、界面活性剤、ワックス、ステアリン酸、ステアラート、ステアリン酸誘導体、スターチ、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ロイシン、PEG−4000、および、ラウリル硫酸マグネシウム)、凝固防止剤(例えば、アセチル化モノグリセリド)、消泡剤(例えば、長鎖アルコール、および、シリコーン誘導体)、抗酸化剤(例えば、BHT、BHA、没食子酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、トコフェロールなど)、結合剤(接着剤)、すなわち粒子間結合によって粉末状の材料に凝集性を付与する物質(例えば、マトリックス結合剤(乾燥スターチ、乾燥糖類)、フィルム結合剤(PVP、デンプン糊、セルロース、ベントナイト、スクロース))、化学的結合剤(例えば、高分子セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、HPC、HPMCなど、シュガーシロップ、コーンシロップ、水溶性多糖類(例えば、アカシア、トラガカント、グアール、アルギナートなど)、ゼラチン、ゼラチン加水分解産物、寒天、スクロース、デキストロース、非セルロース系結合剤(例えば、PVP、PEG、ビニルピロリドンコポリマー、α化デンプン、ソルビトール、グルコースなど)、酸が製薬上許容できる酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ハイドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸など)である緩衝剤(bufferant)、および、塩基が製薬上許容できる塩基(例えば、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン)である緩衝剤、または、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ハイドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸および尿酸の製薬上許容できる塩、キレート剤(例えば、EDTA、および、EDTA塩)、凝血薬(例えば、アルギナート)、着色剤、または、不透明化剤(opaquant)(例えば、二酸化チタン、食用色素、レーキ、天然植物性着色剤、酸化鉄、ケイ酸塩、硫酸塩、水酸化マグネシウム、および、水酸化アルミニウム)、冷却剤(例えば、ハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、フルオロトリクロロメタン)、ジエチルエーテル、および、液体窒素)、凍結防止剤(例えば、トレハロース、リン酸塩、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、デキストラン、マンニトールなど)、希釈剤または充填剤(例えば、ラクトース、マンニトール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸、噴霧乾燥させたラクトース、加水分解デンプン、直接圧縮可能なデンプン、微結晶性セルロース、セルロース性物質、ソルビトール、スクロース、スクロースベースの材料、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、および、デキストロース崩壊剤、または、スーパー崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム、スターチ、スターチ誘導体、粘土、ゴム類、セルロース、セルロース誘導体、アルギナート、架橋ポリビニルピロリドン、グリコール酸ナトリウムスターチ、および、微結晶性セルロース)、水素結合剤(例えば、酸化マグネシウム)、香味物質または減感剤(例えば、噴霧乾燥させた矯味矯臭薬剤、エッセンシャルオイル、および、エチルバニリン)、イオン交換樹脂(例えば、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、および、第四アンモニウム化合物)、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸塩 エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル)、アセチル化モノグリセリド、グリセリン、トリアセチン、プロピレングリコール、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、ヒマシ油、ソルビトール、および、ジブチルセケート(dibutyl seccate))、保存剤(例えば、アスコルビン酸、ホウ酸、ソルビン酸、安息香酸およびそれらの塩、パラベン、フェノール、ベンジルアルコール、および、第四アンモニウム化合物)、溶媒(例えば、アルコール、ケトン、エステル、塩素化炭化水素、および、水)、甘味料、例えば天然甘味料(例えば、マルトース、スクロース、グルコース、ソルビトール、グリセリン、および、デキストリン)、および、人工甘味料(例えば、アスパルテーム、サッカリン、および、サッカリン塩)、および、増粘剤(粘度調整剤、増粘剤)(例えば、糖類、ポリビニルピロリドン、セルロース性物質、ポリマー、および、アルギナート)が挙げられる。
【0055】
また添加剤は、タンパク質(例えば、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、イガイ類のタンパク質、リポタンパク質)、炭水化物(例えば、アルギナート、カラゲーナン、セルロース誘導体、ペクチン、スターチ、キトサン)、ゴム類(例えば、キサンタンガム、アラビアゴム)、鯨蝋、天然または合成ワックス、カルナウバ蝋、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸)、脂肪族アルコール、糖類、セラック、例えば糖類をベースとするもの(例えば、ラクトース、スクロース、デキストロース)、または、スターチ、多糖類をベースとするポリマー(例えば、マルトデキストリン、および、マルトデキストリン誘導体、デキストレート、シクロデキストリン、および、シクロデキストリン誘導体)、セルロースベースのポリマー(例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、トリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、無機物質(例えば、リン酸二カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、タルク、および、チタニア)、ポリオール(例えば、マンニトール、キシリトール、および、ソルビトールポリエチレングリコールエステル)、および、ポリマー(例えば、アルギナート、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ゼラチン、架橋ゼラチンおよび寒天)のような材料であってもよい。
【0056】
一般的な使用において、上記で列挙した添加剤のなかでかなりの重複があるが、これは、ある種の添加剤は、異なる分野の技術者によって異なって分類されることが多いため、または、一般的にはいくつもの異なる機能のうちいずれかに関して使用されるため、または、は、組成物中でのレベルに応じて異なる機能を有する可能性があるためと理解すべきである。従って、上記で列挙した添加剤は、これらに限定されないが、本発明の組成物に含ませることができる添加剤のタイプの単なる典型例として考えるべきである。このような添加剤の量は、当業者であれば、望ましい具体的な特性に応じて容易に決定することができる。
【0057】
本発明は、このような医薬組成物および製剤を製造する様々な方法を包含する。本発明は、同調した可溶化剤の放出によって強化された溶解性を有する薬物を提供する方法を提供する。医薬組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠の形成、湿式粉砕、乳化、カプセル封入、取り込み、凍結乾燥処理またはその他の当業者既知の方法によって製造することができる。医薬組成物は、従来の方式で、1種またはそれより多くの薬物、可溶化剤、放出モジュレーター、および/または、本明細書で開示された薬物を製薬的に使用可能な調製物に加工することを容易にする添加剤を用いて製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に応じて決定される。
【0058】
本発明の医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル、液体を含むカプセル、粉末、持続放出性製剤、坐剤、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、懸濁液の形態、または、使用に適したその他のあらゆる形態をとることができる。一実施態様において、製薬上許容できる基剤はカプセルである(例えば、Grosswald等の米国特許第5,698,155号を参照)。適切な製薬用基剤のその他の例は、当業界において説明されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences, Philadelphia College of Pharmacy and Science, 第19版, 1995を参照)。好ましくは、医薬組成物は経口送達のために製剤化され、具体的には経口用放出調節投与のために製剤化される。
【0059】
経口送達用の医薬組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル、シロップ、または、エリキシルの形態が可能である。さらに、錠剤または丸剤の形態の場合、本組成物は、消化管における崩壊および吸収を遅延させるためにコーティングされていてもよく、それによって長期間にわたる遅延型の、持続的な、または、パルス型の作用を提供することができる。また、浸透活性を促進させる化合物を取り囲む選択的な透過性を有する膜も、経口投与される医薬組成物に適している。これらの後者のプラットフォームにおいて、上記促進する化合物によってカプセルを取り囲む環境からの流体が吸収され、それにより膨潤し、開口部を通じて上記物質または上記物質の組成物を押し出す。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤の急なピークを示すプロファイルとは対照的に、実質的にゼロ次の送達プロファイルを提供することができる。時間を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸グリセロール、または、ステアリン酸グリセロールも使用できる。
【0060】
局所投与のために、薬物を、当業界周知の溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化することができる。
全身投与用の製剤としては、注射(例えば皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内または腹膜内注射)で投与できるように設計されたもの、加えて経皮、経粘膜、経口または肺投与できるように設計されたものが挙げられる。全身投与用の製剤は、気道粘液の粘膜毛様体クリアランスを改善するか、または、粘膜の粘度を低くする追加の活性物質と併用してもよい。これらの活性物質としては、これらに限定されないが、ナトリウムチャンネルブロッカー、抗生物質、N−アセチルシステイン、ホモシステイン、および、リン脂質が挙げられる。
【0061】
一実施態様において、慣例的な手法に従って、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として薬物を製剤化してもよい。典型的には、静脈内投与用の薬物は、滅菌等張水性緩衝液の溶液である。注射用として、水溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液または生理的な緩衝塩類溶液中に薬物を製剤化してもよい。このような溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような成形剤を含んでいてもよい。静脈内投与用の医薬組成物は、注射部位の痛みを和らげるためにリグノカインのような局所麻酔剤を任意に含んでいてもよい。一般的に、このような成分は、例えば活性物質の量を示したアンプルのような密閉容器または小袋中に、凍結乾燥粉末または水分を含まない濃縮物として、別々に、または、1回投与量と共に混合された形態のいずれかで供給される。薬物が輸液で投与される場合、例えば、滅菌した医薬品グレードの水または食塩水を含む輸液ボトルを用いて投薬することができる。薬物が注射投与される場合、上記成分が投与前に混合されるように、滅菌した注射用水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【0062】
経粘膜投与の場合、バリアを浸透させるのに適した浸透剤が製剤に用いられる。このような浸透剤は一般的に当業界既知である。
口腔内投与の場合、本医薬組成物は、従来の方式で製剤化された錠剤、ロゼンジなどの形態をとってもよい。
【0063】
また薬物を、直腸または膣用の医薬組成物に製剤化してもよく、このような製剤としては、例えばカカオバターまたはその他のグリセリドのような一般的な坐剤基剤を含む坐剤または保留浣腸が挙げられる。
【0064】
上述した製剤に加えて、薬物をデポ製剤として製剤化してもよい。このような持続型製剤は、(例えば、皮下または筋肉内に)埋め込むことによって投与してもよいし、または、筋肉内注射によって投与してもよい。従って、例えば薬物は、適切な高分子材料または疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)、または、イオン交換樹脂と共に製剤かしてもよいし、または、難溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として製剤化してもよい。
【0065】
5.3:有用な治療方法
本明細書で説明される医薬組成物は、治療剤を用いて治療することができる病気に罹った患者に投与することができる。また本医薬組成物は、治療剤によって予防が可能な病気に対する予防措置として患者に投与してもよい。具体的な医薬組成物で用いられる治療剤によって、本医薬組成物の投与によって治療または予防される病気が決定される。
【0066】
一実施態様において、アミオダロン、ドロネダロン(dronederone)、または、プロパフェノンを含む医薬組成物は、不整脈(antiarrythmia)を治療または予防するために使用できる。その他の実施態様において、ジプラシドン、または、リスペリドンを含む医薬組成物は、精神病的な状態を治療または予防するために使用できる。さらにその他の実施態様において、ドーパミンアゴニスト(例えば、カルビドパ、レボドパ(levidopa)など)を含む医薬組成物は、パーキンソン病などを治療または予防するために使用できる。さらにその他の実施態様において、抗高血圧剤(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブシンドロール、カルベジロール、ジレバロール、ラベタロール、エスモロール、エトプロロール、ナドロール、ネヴィブロール、オクスプレノロール、プロパノロー、ソタロール)を含む医薬組成物は、心臓血管疾患を治療または予防するために使用できる。さらにその他の実施態様において、シロスタゾールを含む医薬組成物は、脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈疾患、間欠性跛行症、重症虚血肢、および、脂質代謝異常などの様々な心臓血管に関する状態を治療または予防するために使用できる。さらにその他の実施態様において、シロスタゾールを含む医薬組成物は、脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈疾患、間欠性跛行症、重症虚血肢、および、脂質代謝異常などの心臓血管に関する状態を治療または予防するために、即時放出性のシロスタゾール組成物に関連する頭痛や動悸を起こすことなく使用できる。
【0067】
5.4:投与方法および用量
本明細書で説明される医薬組成物は、ヒト用の医薬において有利に用いることができる。上記の5.3の章で述べたように、説明した医薬組成物は、様々な病気を治療または予防するのに有用である。
【0068】
上記の病気または障害を治療または予防するために使用する場合、医薬組成物は、単独で投与または適用してもよいし、または、その他の物質と組み合わせて投与または適用してもよい。また、医薬組成物は、単独で投与または適用してもよいし、その他の医薬活性物質と組み合わせて投与または適用してもよい。
【0069】
本発明は、このような治療が必要な患者に、治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することによる治療および予防方法を提供する。患者は動物が可能であり、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0070】
本発明の医薬組成物は、1種またはそれより多くの薬物を含み、好ましくは経口投与される。また、本発明の医薬組成物はその他のあらゆる便利な経路で投与することができ、例えば、輸液またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができる。投与は、全身投与でもよいし、または、局所投与でもよい。本発明の医薬組成物を投与するのに用いることができる様々な送達システムが既知である(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへのカプセル化)。投与方法としては、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、大脳内、膣内、経皮、直腸投与、さらに、具体的には耳、鼻、目または皮膚への吸入または局所による投与が挙げられる。好ましい投与様式は医師の裁量に任されるが、病状の部位に一部依存すると予想される。大抵の場合、投与によって本発明の医薬組成物が血流に放出されると予想される。
【0071】
具体的な実施態様において、治療が必要な領域に、1種またはそれより多くの本発明の医薬組成物を局所投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、これらに限定されないが、外科手術中の局所注入、局所塗布(例えば、外科手術後に創傷包帯を併用して)、注射、カテーテル、坐剤、または、シラスティック(sialastic)膜またはファイバーのような膜などのインプラント(前記インプラントは、多孔質、非多孔質またはゲル状の材料で形成される)によって達成することができる。一実施態様において、投与は、病気の部位(または以前病気だった部位)に直接注射することによって行うことができる。
【0072】
具体的な実施態様において、中枢神経系に、1種またはそれより多くの本発明の医薬組成物を、脳室内、髄腔内および硬膜外注射などのあらゆる適切な経路によって導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えばOmmayaリザーバのようなリザーバに取り付けた脳室カテーテルによって容易にすることができる。
【0073】
その他の実施態様において、本発明の医薬組成物は、小胞、具体的にはリポソームで送達することができる(Langer, 1990, Science, 249: 1527-1533; Treat等, in “Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,” Lopez-BeresteinおよびFidler(編集), Liss, ニューヨーク, pp.353-365(1989)を参照;全般的には、“Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,” LopezBeresteinおよびFidler(編集), Liss, ニューヨーク, pp.353-365(1989)を参照)。
【0074】
患者の病気の治療または予防において有効であると予想される薬物の量は、状態の具体的な性質に依存すると予想され、当業界既知の標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、最適な用量範囲の確認を助けるために、インビトロまたはインビボでの分析を任意に用いてもよい。投与される薬物の量は、当然ながらその他の要因にも依存し、なかでも治療される被検者、被検者の体重、苦しみの重症度、投与方式、および、担当医師の判断に依存すると予想される。
【0075】
具体的な医薬組成物に含まれる薬物、可溶化剤および放出モジュレーターの量およびタイプは、当業者の知見に従い、本医薬組成物の具体的なその他の成分、および、望ましい具体的な治療効果を考慮して変化させることができる。
【0076】
しかしながら、一実施態様において、薬物の量は、医薬組成物の約0.25w/w〜約80%w/wであり得る。その他の実施態様において、薬物の量は、医薬組成物の約0.5%w/w〜約50%w/wであり得る。さらにその他の実施態様において、薬物の量は、医薬組成物の約0.75%w/w〜約24%w/wであり得る。
【0077】
一実施態様において、用いられる可溶化剤の量は、医薬組成物の約5%w/w〜約99%w/wであり得る。その他の実施態様において、可溶化剤の量は、医薬組成物の約15%w/w〜約95%w/wであり得る。さらにその他の実施態様において、可溶化剤の量は、医薬組成物の約30%w/w〜約95%w/wであり得る。さらにその他の実施態様において、組成物中の可溶化剤と薬物との相対量は、約1:1〜約1:10であり得る。
【0078】
一実施態様において、用いられる放出モジュレーターの量は、医薬組成物の約1%w/w〜約50%w/wであり得る。その他の実施態様において、放出モジュレーターの量は、医薬組成物の約5%w/w〜約30%w/wであり得る。さらにその他の実施態様において、放出モジュレーターの量は、医薬組成物の約10%w/w〜約20%w/wであり得る。
【0079】
好ましくは、1日2回以下で、より好ましくは1日1回のみ患者に投与されるように本製剤を適合させる。投与は、単独でなされてもよいし、または、その他の薬物と併用してもよく、病気の有効な治療または予防に必要な程度の期間継続してもよい。
【0080】
5.5:併用療法
具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物は、少なくとも1種のその他の治療剤との併用療法で用いることができる。本発明の医薬組成物と、その他の治療剤とを付加的に作用させてもよいし、または、より好ましくは相乗的に作用させてもよい。一実施態様において、本発明の医薬組成物は、その他の治療剤の投与と同時に投与される。その他の実施態様において、本発明の医薬組成物は、その他の治療剤の投与の前に、または、その後に投与される。
【0081】
6.実施例
以下の様々な本発明の医薬組成物を詳細に説明する実施例を参照して本発明をさらに定義する。当業者は十分に理解することができるであろうが、本発明の範囲から逸脱することなく、材料および方法の両方に対する多くの改変を施すことができる。
【0082】
6−1:実施例1
実施例1は、以下の2種の代表的な可溶化剤:トコール誘導体(コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、NF、または、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000;ビタミンETPGS、イーストマン・ケミカル社)[実施例1-1]、および、ポリエトキシ化された脂肪酸誘導体(ポリオキシル40硬化ヒマシ油、NF、クレモフォールRH40;BASF)[実施例1-2]を用いたシロスタゾールの水溶性の強化を説明する。酵素を含まない人工腸液(USP26,pH6.8)の溶液を、様々な可溶化剤濃度で製造した。過量のシロスタゾールを添加し、制御された温度(37±0.5℃)で穏やかに混合しながら平衡化した。次に、この過量の薬物を含む水溶液をろ過し(0.2gの呼び孔径)、透明なろ液を希釈し、HPLCでシロスタゾール濃度に関して分析した。結果を図1に示す。
【0083】
これらの条件下でのシロスタゾールの本来の溶解性は6.5μg/mlであり、溶解性は、試験された範囲にわたって可溶化剤の濃度と共に直線的に増加した。可溶化剤がコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000の場合、その本来の水溶性を超えるシロスタゾールの溶解性の増加は、0.05%w/vの水性の可溶化剤の濃度で約60%の増加から、1%w/vの水性の可溶化剤の濃度で約10倍の増加の範囲であった。可溶化剤がクレモフォールRH40の場合、シロスタゾールの溶解性の強化は、0.05%w/vの可溶化剤の濃度で約30%の増加から、1%w/vの水性の可溶化剤の濃度で約5倍の増加の範囲であった。
【0084】
以下の表に、数種の追加の可溶化剤、および、可溶化剤の混合物に関する溶解性の強化を示す。
【0085】
【表1】

【0086】
6−2:実施例2
実施例2は、本発明に従って製造された製剤からの同調した可溶化剤とシロスタゾールとの放出を説明する。可溶化剤(すなわち、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS、イーストマン・ケミカル社))、放出モジュレーター(すなわち、コハク酸d−α−トコフェロール(スペクトラム・ケミカル社(Spectrum Chemical Co.)))、および、添加剤(すなわち、ポリエチレングリコール8000(スペクトラム・ケミカル社)を用いて、製剤を製造した。製造された製剤の組成を以下に要約する。
【0087】
【表2】

【0088】
薬物を除く全ての成分を融解させ、続いて薬物を添加し、この混合物を高せん断ローター−ステーターホモジナイザーを用いて短時間でホモジナイズした。融解した混合物を、ハードゼラチンカプセルに充填し、制御されていない室温で(〜25℃)凝結させた。得られたカプセルを、USP装置I(100rpm)で0.275%w/wドデシル硫酸ナトリウムを含む酵素を含まない人工胃液(USP26)1,000mlからなる溶解媒体を用いて試験した。薬物、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、コハク酸d−アルファ−トコフェロールの溶解を、HPLCによってモニターした。図2に、薬物と可溶化剤の両方の時間の関数としての溶解プロファイルを示す。薬物と可溶化剤との放出はいずれも同調しており、相関係数は、8時間の放出期間にわたり0.99より大きかった。
【0089】
6−3:実施例3
実施例3は、本発明に従って製造された2種の追加の製剤からのシロスタゾールと可溶化剤との同調した放出を説明する。可溶化剤(すなわち、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000)、放出モジュレーター(すなわち、dl−α−トコフェロール(スペクトラム・ケミカル社))、および、溶媒(すなわち、酢酸(スペクトラム・ケミカル社))を用いて製剤を製造した。製造された製剤の組成を以下に要約する。
【0090】
【表3】

【0091】
薬物および酢酸を除く全ての成分を融解させ、ブレンドした。薬物を酢酸に溶解させ、続いてその他の溶融した成分に添加した。ボルテックス混合した後、溶融した溶液をハードゼラチンカプセルに充填し、室温で(〜25℃)凝結させた。
【0092】
所定の時間間隔の後に、製剤を可溶化しない溶解媒体に繰り返して晒す溶解実験によって製剤を試験した。この溶解実験では、回転式のボトル装置(遅延放出の試験器;バンケル(VanKel))を10rpm、3710.1℃で利用し、最初の2時間は、100mlの酵素を含まない人工胃液(USP26)を用いて、その後、100mlの酵素を含まない人工腸液(USP26,pH6.8)で交換した。薬物であるコハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、dl−アルファトコフェロールの溶解を、HPLCによってモニターした。図3は、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、dl−アルファトコフェロールの放出、および、シロスタゾールの溶解性の増加を示す。示された可溶化剤、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、放出モジュレーター、dl−アルファトコフェロールの放出は、薬物放出と同調した(薬物と、可溶化剤および放出モジュレーター両方との間の〜13時間の放出期間中、相関係数は0.98超であった)。シロスタゾールの溶解性は放出期間中ずっと増加し、本来の溶解性に比べて約5倍の総体的な増加が得られた。
【0093】
6−4:実施例4
実施例4は、本発明に従って可溶化剤としてコハク酸d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000を用いて製造された組成物における、様々な濃度の放出モジュレーター(すなわち、コハク酸dl−アルファトコフェロール)の作用を説明する。製造された製剤の組成を以下に要約する。
【0094】
【表4】

【0095】
薬物を除く全ての成分を融解させ、続いて薬物とHPMCを添加し、この混合物を高せん断ローター−ステーターホモジナイザーを用いて短時間でホモジナイズした。溶融した混合物をハードゼラチンカプセルに充填し、制御されていない室温で(〜25℃)凝結させた。
【0096】
所定の時間間隔の後に、製剤を可溶化しない溶解媒体に繰り返して晒す溶解実験によって製剤を試験した。この実験では、回転式のボトル装置(遅延放出の試験器,バンケル)を10rpm、370.1℃で利用し、最初の2時間は100mlの酵素を含まない人工胃液(USP26)を用いて、その後、100mlの酵素を含まない人工腸液(USP26,pH6.8)で交換した。薬物およびコハク酸d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000の溶解を、HPLCによってモニターした。70%が溶解した時間を以下の表に要約する。
【0097】
【表5】

【0098】
組成物4−2〜4-4の70%が放出された時間は、は、放出モジュレーターの濃度と共に指数関数的に増加した。
6.5:実施例5
実施例5は、本発明に従って可溶化剤、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、リノレオイルマクロゴールグリセリド(ラブラフィル2125CS)を用いて製造された製剤からの同調した可溶化剤とシロスタゾールとの放出を説明する。放出モジュレーターは、ジベヘン酸グリセロール(コンプリトール888Ato,ガットフォセ)、および/または、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトセル(Methocel)K100M、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company))であった。製造された製剤の組成を以下に要約する。
【0099】
【表6】

【0100】
薬物とHPMCを除く全ての成分を融解させ、続いて薬物とHPMCを添加し、この混合物を高せん断ローター−ステーターホモジナイザーを用いて短時間でホモジナイズした。溶融した混合物をハードゼラチンカプセルに充填し、制御されていない室温で(〜25℃)凝結させた。
【0101】
所定の時間間隔の後に、製剤を可溶化しない溶解媒体に繰り返して晒す溶解実験によって製剤を試験した。この実験では、回転式のボトル装置(バンケルの遅延放出の試験器)を10rpm、370.1℃で利用して、最初の2時間は100mlの酵素を含まない人工胃液(USP26)を用いて、その後、100mlの酵素を含まない人工腸液(USP26,pH6.8)で交換した。薬物、および、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000溶解を、HPLCによってモニターした。シロスタゾールの水溶性は遅延放出期間中ずっと強化され、薬物と可溶化剤との同調した放出を示した。以下の表に、可溶化剤の放出時間、加えて本来の溶解性と比べたシロスタゾールの水溶性の増加を要約する。
【0102】
【表7】

【0103】
6.6:実施例6
実施例6は、本発明に従って可溶化剤としてポリオキシル40硬化ヒマシ油NF(クレモフォールRH40、BASF)、および、放出モジュレーターとしてヒドロキシプロピルセルロース(HPMCK4M)を用いて製造された製剤の性能を示す。製造された製剤の組成を以下に要約する。
【0104】
【表8】

【0105】
ポリビニルピロリドンK90、クレモフォールRH40、無水アルコールUSP、および、脱イオン水の結合剤溶液を製造し、ポリビニルピロリドンが全て溶解するまで振盪した。シロスタゾールを、タルク、コロイド状SiOおよび浸潤剤、ドデシル硫酸ナトリウム(組成物3−2)とブレンドし、続いて60メッシュスクリーンを通過させた。次に、微結晶性セルロースおよびHPMCK4Mを添加し、ポリバッグ中で〜20分ブレンドした。得られた粉末は結合剤溶液と共に必要とされ、この練った生地を10ml注射器の注射外筒を通して押出した。押出された材料を、25℃/26〜30%のRHで約20時間乾燥させた。乾燥させた押出し材料を切断して長さ約3〜5mmのペレットにし、ハードゼラチンカプセルに充填した。
【0106】
このカプセルを、USP装置Iで、1,000mlの酵素を含まない人工胃液(USP26)からなる溶解媒体を用いて100rpm、37.0±0.5℃で試験した。時間の関数としてのシロスタゾールの溶解を、図4に示す。これらの組成物は約3時間でプラトーに達し、シロスタゾールの溶解性は約30%増加した。
【0107】
6.7:実施例7
本発明に係る錠剤の製剤を、可溶化剤としてコハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、放出モジュレーターとしてHPMCを用いて製造した。錠剤の組成を以下に示す。
【0108】
【表9】

【0109】
シロスタゾールを、2分の1のタルクおよびスターチ1500とブレンドし、次に、番号100のメッシュスクリーンに通過させた。さらに2分の1のHPMCおよび微結晶性セルロース、および、4分の1のポリビニルピロリドンを混合し、同じ番号100のメッシュスクリーンに通過させた。次に、この2種の混合物を合わせ、よく混合した。
【0110】
別々に、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000、および、ステアリン酸マグネシウムを15〜20分間混合した。次に、2分の1のタルクを添加し、5分間混合を続けた。最後に、2分の1のMCC、HPMC、スターチ1500、および、4分の3のPVPを添加し、10〜15分間混合した。薬物を含むブレンドと、コハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000を含むブレンドとを、ポリバッグ中で約20分間混合した。
【0111】
最終的なブレンドを、IRペレットディスク(直径12.5mm)を用いたカーバー・プレス(Carver press)を、2,500lbの力で1〜2秒用いて錠剤に圧縮した。
6.8:実施例8
実施例8は、本発明に係る様々な可溶化剤を用いた、弱塩基性の抗高血圧剤であるカルベジロールの溶解性の強化を示す。可溶化剤は、ポリエトキシ化されたヒマシ油誘導体(ポリオキシル35ヒマシ油、NF;クレモフォール(R)EL,BASF)、トコール誘導体(コハク酸d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000、ビタミンE TPGS(R)、イーストマン・ケミカル社)、ポリエトキシ化された脂肪酸誘導体(リノレオイル(linoleyl)マクロゴールグリセリド、EP、ラブラフィル2125CS,ガットフォセ)であった。組成物8−4には、脂肪酸誘導体(ジベヘン酸グリセロール;コンプリトール888Ato,ガットフォセ)も含めた。可溶化剤を含まないカルベジロールのコントロールも製造した。
【0112】
【表10】

【0113】
製剤8−1および8−2は、室温でカルベジロール塩基を液状の賦形剤中に60mg/gで溶解させることによって製造された。製剤8−3および8−4は、約80℃でカルベジロール塩基を溶融した賦形剤混合物中に60mg/gで溶解させ、得られた透明な液体を周囲温度で冷却して固体を得ることによって製造された。
【0114】
溶解性および放出特性を決定するために、全ての組成物を、酵素を含まない人工胃液(pH1.210.1、USP26);pH6.8の酵素を含まない人工腸液(USP26);または、pH8の酵素を含まない人工腸液に分散した。製剤8−1〜8-4を5倍希釈で分散させ(最終的なカルベジロール濃度は12mg/ml)、コントロールを最終的なカルベジロール濃度が12mg/mlになるように分散させた。得られた分散液を、回転器上で37±1℃で4時間混合した。水相中のカルベジロール濃度を、分散液を0.2pナイロンフィルターでろ過し、ろ液をアセトニトリルで1対1に希釈し、希釈したろ液を、5pC8固定相を有する4.6×150mmのカラムを用いた逆相HPLCによって分析することによって決定した。移動相は、1.2ml/分でのアセトニトリル/20mMリン酸塩(pH2.3)を用いた濃度勾配とした。測定したカルベジロール濃度を、以下の表に示す。
【0115】
【表11】

【0116】
これからわかるように、4時間でのカルベジロールの溶解/溶解性は、pHの減少と共に増加しており、これは、水溶性のプロトン化されたカルベジロール種がより多く形成されていることと一致する。pH1.2のSGFでは、薬物が実質的に完全にイオン化されると予想されるが、それにもかかわらず溶解した薬物濃度は、平衡溶解がわずか約1mg/mlの酸付加HCl塩が形成されるためにかなり低い。
【0117】
本発明に従って製造された実施例8−1〜8-4について、カルベジロールの溶解性は劇的に増加し、異なるpH値の様々な媒体に溶解した薬物濃度に差はほとんどない。実施例8−2では、pH8のSIF(8.8mg/ml)で得られた溶解性と,pH1.2のSGF(9.1mg/ml)で得られた溶解性との間に4%未満の差がみられるが、実施例8−1では、20%未満の差がみられる(SGF中では10.7mg/ml、これに対して、pH8のSIF中では8.9mg/ml)。これらの結果によれば、本発明を用いて溶解性を強化することによって、シロスタゾールの溶解性は、実質的に媒体のpHの影響を受けなくなり、さらに塩化物イオンの存在の影響も受けないことが示される。
【0118】
6.9:実施例9
本発明に係るカルベジロールを含む錠剤の製剤を、可溶化剤としてコハク酸d−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコール1000を用いて製造した。放出モジュレーターとしては、脂肪酸誘導体(ジベヘン酸グリセロール、Sコンプリトール888Ato,ガットフォセ)、放出モジュレーターとして、セルロース誘導体(HPMCK100LV、および、HPMCK4MP、ダウ・ケミカル社)、および、ポリアクリル酸系物質(カーボポール(Carbopol)940、BFグッドリッチ(BF Goodrich))を用いた。錠剤の組成を以下に示す。
【0119】
【表12】

【0120】
コンプリトールとビタミンE TPGSとを、オスタライザー(Osterizer)ブレンダーで乾式混合し、次に、ポリマーとシリカとを添加し、4段階でブレンドした。得られた混合物を篩にかけ、60メッシュ未満の分画を回収した。カルベジロールを添加し、この粉末を、スパーテルで周期的に混合しながらリストアクションシェーカーで8時間混合した(〜1/時間)。
【0121】
最終的なブレンドを、IRペレットディスク(直径12.5mm)を用いたカーバー・プレスを2,500lbの力で1〜2秒用いて錠剤に圧縮した。この錠剤を、USP装置Iで、100rpm、37.0±0.5℃で試験した。溶解媒体は、最初の2時間は、1,000mlの酵素を含まない人工胃液(USP26)とし、続いて、24時間の実験の残りの時間は、1,000mlの酵素を含まない人工腸液に交換した。アジレント(Agilent)のオンラインのサンプル回収バルブを備えたUV/Vis分光光度計を用いて、カルベジロールと可溶化剤ビタミンE TPGSの溶解を解析した。カルベジロールの分析は、360nmでの吸光度に基づいて行われ、ビタミンE TPGSの分析は、285nmでの吸光度に基づいて行われた(この波長でのカルベジロールの吸光度を差し引いた後)。定量化は、カルベジロールおよびビタミンE TPGSの既知濃度の外部標準の線形回帰によって行われた。
【0122】
図5に、薬物と可溶化剤の両方の時間の関数としての溶解プロファイルを示す。実施例9−1で、放出が完了する時間(〜11時間)と共に遅延放出プロファイルを示したところ、薬物と可溶化剤との放出は、0〜11時間の期間にわたりよく同調していた(r>0.99)。実施例9−2は、放出が完了する時間(24時間を超える)と共に遅延放出プロファイルを有していた。薬物と可溶化剤との放出は、0〜24時間の実験期間にわたり同調した(r>0.97)。
【0123】
6.10:実施例10
本発明に係る同調した可溶化剤の放出組成物を、可溶化剤としてトコール誘導体(ビタミンE−TPGS、イーストマン・ケミカル社)、放出モジュレーターとして脂肪酸誘導体(コンプリトール888Ato,ガットフォセ)、および、カルベジロールを75.2/18.8/6.0%w/wの比率で用いて製造した。ビタミンE−TPGS、および、コンプリトール888を融解させ、80℃で一緒にブレンドし、次に、この混合物にカルベジロールの遊離塩基を溶解させた。溶融した溶液を、サイズ3のハードゼラチンカプセルに、全重量0.21mg/カプセル(12.5mgのカルベジロール/カプセル)で充填し、周囲温度で凝固させた(実施例10−1)。これらのカプセルからのカルベジロールの溶解を、それぞれ2つのカプセル(25mgのカルベジロール総量)を用いて、回転式のボトル装置(遅延放出の試験器;バンケル)で10rpmおよび37±0.1℃で試験した。溶解媒体は、100mlの酵素を含まないSGF(pH1.2、USP26)であるか、または、100mlの酵素を含まないSIF(pH6.8、USP26)であった。また、同調した可溶化剤の放出を伴わない比較例の製剤も同じ条件下で試験した(比較例10−1;コレグ(Coreg(R))25mgのカルベジロール錠剤;グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline))。時間の関数としてのカルベジロールの放出を、実施例8で説明されているようにしてモニターした。
【0124】
図6に、得られた溶解プロファイルを示す。これからわかるように、実施例9−1は、強化された溶解性と、pH1.2のSGFおよびpH6.8のSIFの両方において、40%未満の薬物が0.5時間で溶解し、80%を超える薬物が0.5時間までに溶解するという遅延放出との両方を示す。比較例9−1では、pH1.2のSGF中で0.5時間までに100%が放出されるが、SIF中では、このpHでは薬物の溶解性は限定されるため1.5時間までにわずか〜20%しか放出されない。
【0125】
6.11:実施例11
7人の健康な志願者での単回投与の無作為交差試験において、実施例10(実施例10−1)の同調した可溶化剤の放出製剤を投与し、比較例として市販の即時放出錠剤(比較例11−1;コレグ(R)12.5mgのカルベジロール錠剤;グラクソ・スミスクライン)を用いた。いずれの処理も朝食の直後に施された。約7mlの血液サンプルをEDTAチューブ中に回収し、遠心分離し、血漿を、有効なLC/MS/MS法を用いてカルベジロールに関して分析した。図7は、得られた血漿プロファイルを示し、以下の表は、標準的なノンコンパートメント解析技術を用いて計算された薬物動態学的なパラメーターの要約を示す。最大血漿濃度と最大血漿濃度までの時間を、直接データからとった。初期の吸収曲線からの直線の外挿によってTagを計算した。0〜∞の濃度曲線下面積(AUC)値を台形積分によって計算した。当該実施例のカプセルは、平均ラグタイムが1.2時間であり、Tmaxが1.5〜3時間の範囲である一貫した遅延放出プロファイルを示した。比較例の即時放出錠剤は、平均ラグタイムが0.5時間であり、Tmaxが0.5〜3時間の範囲である極めて多様な初期吸収を示した。以下の表で示されるように、AUC0−∞比率から、同調した、かつ強化された薬物の可溶化によって生物学的利用率が有意に増加したことが示される。
【0126】
【表13】

【0127】
6.12:実施例12
本発明に係るザフィルルカストを含む追加の組成物を以下で説明する。これら組成物は、溶融した賦形剤または賦形剤混合物に、ザフィルルカストを高温で溶解させ、続いて冷却し、固形のプラグを形成することによって製造された。試験用の製剤を製造するために、溶融した組成物200mgを、10mgのザフィルルカストの単位強度に応じたサイズ3のツーピースのハードゼラチンカプセルに充填した。
【0128】
【表14】

【0129】
【表15】

【0130】
【表16】

【0131】
【表17】

【0132】
【表18】

【0133】
【表19】

【0134】
【表20】

【0135】
【表21】

【0136】
6.13:実施例13
以下で説明される組成物を、溶融した脂質賦形剤または脂質賦形剤混合物中に高温でザフィルルカストを溶解させることによって製造した。次に、この溶融した組成物にHPMCポリマーを懸濁し、例えば高温での均質化または撹拌によって均一な分散液を形成した。この分散液をゼラチンカプセルに充填し、固形のプラグを形成した。また分散液は、望ましいサイズおよび形状に押出すこともでき(球形化による顆粒)、次に、カプセルに充填させてもよい。
【0137】
また、ザフィルルカスト、脂質賦形剤およびHPMCの顆粒は、別々に製造してもよいし、または、個々の成分のいずれかを組み合わせて(例えばザフィルルカストとTPGS)製造してもよく、その際、固溶体または固体分散体としてジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロールまたはコハク酸ビタミンEを含めてもよいし、または含めなくてもよい。このような顆粒は、適切な添加剤を用いて製造してもよいし、または、適切な添加剤と共にブレンドしてもよく、続いて、カプセルに充填してもよいし、または、ペレットまたは錠剤に圧縮してもよい。
【0138】
【表22】

【0139】
【表23】

【0140】
【表24】

【0141】
【表25】

【0142】
【表26】

【0143】
【表27】

【0144】
6.14:実施例14
実施例12のカプセルからのザフィルルカストの溶解を行い、様々な期間にわたるザフィルルカストの遅延放出および可溶化を実証した。実施例12−1、12−2、12−3、12−4、および、12−8の組成物中に10mgのザフィルルカストを含むカプセルそれぞれを、USPタイプIの溶解装置に、250mlの酵素を含まない人工胃液(pH1.2)と共に2時間置いた(100rpm、37℃)。2時間後、溶解媒体を、250mlの酵素を含まない人口腸液(pH6.8)で交換し、さらに22時間溶解の研究を続けた。所定のタイムポイントで、溶解媒体のアリコートをサンプリングし、放出された(可溶化した)ザフィルルカスト濃度について分析した。図8および9に、カプセルから放出されたザフィルルカストの累積パーセンテージを示すが、これによると、これらの条件下で可溶化剤の非存在下でのザフィルルカストの放出に比べて50倍大きい増加を示す。
【0145】
6.15:実施例15
以下で説明される組成物を以下のように製造した。ピオグリタゾンHCl、脂質賦形剤およびHPMCの顆粒を、適切な添加剤(Cab−O−SilTS−530アモルファスヒュームドシリカ、1%w/w)を用いて別々に製造し、60メッシュ未満になるように篩にかけ、次に、一緒にブレンドし、錠剤に圧縮した。
【0146】
【表28】

【0147】
【表29】

【0148】
【表30】

【0149】
6.16:実施例16
実施例15−1〜15−3の組成物を含む実施例15のピオグリタゾンHCl錠剤の溶解を行い、様々な期間にわたるピオグリタゾンの遅延放出および可溶化を実証した。実施例15−1〜15−3の組成物中に50mgのピオグリタゾンHClを含む錠剤それぞれを、USPタイプII溶解装置(100rpm)に、250mlの酵素を含まない人工腸液(pH6.8)と共に100rpm、37℃で8時間置いた。所定のタイムポイントで、溶解媒体のアリコートをサンプリングし、放出された(可溶化した)ピオグリタゾンの濃度について分析した。図10に、時間の関数としての錠剤から放出されたピオグリタゾンの濃度を要約する。このpHにおけるその本来の溶解性を上回るピオグリタゾンの溶解性の累積増加は、約36%の増加(実施例15−1)から約6倍の増加(実施例15−3)の範囲に至った。
【0150】
6.17:実施例17
組成物を本発明に従って製造し、ここでは、難水溶性を有する塩基性の薬物カルベジロールと可溶化剤とを製剤中で別々にした。
【0151】
【表31】

【0152】
成分1〜6を含むカルベジロールペレット(−OS−直径1.0mm)を実施例7に類似した方法で製造し、次に、流動床型塗布装置で成分7〜9でコーティングした。可溶化剤および放出モジュレーター(コハク酸ビタミンE、コハク酸アルファ−トコフェロール)を融解させ、ハードゼラチンカプセル(サイズ00)に充填した。次に、これらの充填物を引き続き溶融させた状態にしながら、状態で薬物+放出モジュレーターペレットを即座に添加した。次に、このカプセルを周囲温度で冷却し、同調した薬物と可溶化剤との放出を示す、可溶化剤+放出モジュレーターマトリックスに、バリアコーティングしたカルベジロールペレットが存在する懸濁液を含むカプセルを製造した。
【0153】
【表32】

【0154】
成分1〜8を含むカルベジロール顆粒を製造し、次に、流動床型塗布装置で成分9〜11でコーティングし、カルベジロール、および、放出モジュレーターを含むバリアコーティングされた顆粒を形成した。可溶化剤+放出モジュレーターの顆粒を別々に製造した。実施例17−2A、カルベジロール+放出モジュレーターの顆粒をまず圧縮し、続いて可溶化剤の顆粒を用いて第二の圧縮を行い、同調した可溶化剤と薬物との放出を示す二層構造の錠剤を製造した。実施例17−2B、薬物+放出モジュレーターの顆粒と、可溶化剤+放出モジュレーターの顆粒とをブレンドし、サイズ00のハードゼラチンカプセルに充填し、同調させた薬物と可溶化剤との放出を示すカプセルを製造した。
【0155】
当業者にはよく知られていると予想されるが、材料および方法両方へ多くの改変を、この開示の範囲から逸脱することなく施すことができる。従って、本発明の実施態様は、限定ではなく説明のためとみなされるべきであり、本発明は本明細書に示した詳細に限定されないものとするが、添付の請求項の範囲と、それに等しいものの範囲内で改変されていてもよい。
【0156】
本明細書で引用された出版物および特許はいずれも、それら全体として参照により開示に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】シロスタゾールの水溶性を、37℃での、酵素を含まない人工腸液(pH6.8)中の可溶化剤の濃度の関数として説明する。
【図2】実施例6−2のシロスタゾールおよび可溶化剤の放出を説明する。
【図3】実施例6−3の可溶化剤の放出、および、シロスタゾールの溶解性の強化を説明する。
【図4】実施例6−1および6−2のシロスタゾールの放出を説明する。
【図5】実施例9−1および9−2のカルベジロール、および、可溶化剤の放出を説明する。
【図6】実施例10−1および比較例10−1のカルベジロールの放出を説明する。
【図7】健康な志願者での単回投与の無作為交差試験における実施例10−1および比較例11−1のカルベジロールの血漿濃度を時間の関数として説明する。
【図8】実施例12−1、12−2および12−3のザフィルルカストの放出を説明する。
【図9】実施例12−4および12−8のザフィルルカストの放出を説明する。
【図10】実施例15−1〜15−3のピオグリタゾンの放出を説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の薬物;
可溶化剤;および、
放出モジュレーター;
を含み、該薬物と該可溶化剤との放出が同調している、医薬組成物。
【請求項2】
前記薬物が、ピオグリタゾン、ザフィルルカスト、シンバスタチン、アトルバスタチン、または、フェノフィブラートである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記薬物が、シロスタゾールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記可溶化剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、シクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体、脂肪酸誘導体、トコール誘導体、または、それらの混合物である、請求項1または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロールエステル、ポリエトキシ化されたα−トコフェロールエステル、または、それらの混合物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(200〜8000Mw)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、または、それらの混合物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸誘導体が、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、グルコース、ポリエチレングリコール、アルファ−ヒドロキシ酸、または、それらの混合物とのエステルである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記エステルが、ポリオキシルヒマシ油誘導体、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、中鎖モノ、ジもしくはトリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、リノレオイルモノグリセリド、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド、または、それらの混合物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記放出モジュレーターが、浸透圧ポンプ、徐溶解性複合体塩、侵食性のマトリックス、交換樹脂、ワックス、不溶性キャリアー、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸誘導体、脂肪族アルコール誘導体、または、トコール誘導体である、請求項1または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記放出モジュレーターが、高分子マトリックス、高分子コーティング、ワックス、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アルコール誘導体もしくは脂肪酸誘導体、トコール誘導体、または、それらの混合物である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記高分子マトリックスまたは高分子コーティングが、セルロース誘導体、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドンコポリマー、セラック、ポリビニルアセテートフタレート、高分子量の多糖類ゴム、または、それらの混合物である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、または、それらの混合物である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記放出モジュレーターが、微晶質ワックス、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、グリセロールパルミトステアレート、ラウロイルマクロゴール32グリセリド、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ステアロイルアルコール、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、黄蝋、白蝋、カルナウバ蝋、非イオン性乳化ワックス、セチルエステルワックス、または、それらの混合物である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記薬物の水溶性が、約100pg/ml未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記薬物の水溶性が、約50pg/ml未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記薬物の水溶性が、約25pg/ml未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記放出が長期間にわたる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記期間が、約1時間より長い、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記期間が、約2時間より長い、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記期間が、約2時間〜約24時間である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記可溶化剤が、前記薬物の溶解性を、前記薬物本来の水溶性と比較して25%以上増加させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記薬物と可溶化剤との放出が、0.80より大きい相関係数で同調している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記薬物と可溶化剤との放出が、0.90より大きい相関係数で同調している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記薬物と可溶化剤との放出が、0.95より大きい相関係数で同調している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
1種またはそれより多くの添加剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記可溶化剤が、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、または、ポリオキシル40硬化ヒマシ油であり、前記放出モジュレーターが、コハク酸α−トコフェロール、ジベヘン酸グリセロール、または、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
1種またはそれより多くの添加剤を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記可溶化剤が、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000であり、前記放出モジュレーターが、コハク酸α−トコフェロールであり、前記添加剤が、ポリエチレングリコールである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記可溶化剤が、ポリオキシル40硬化ヒマシ油であり、前記放出モジュレーターが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記薬物の水溶性が、pHに依存する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記薬物が、約9.0またはそれ未満のpKaを有する、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記薬物が、カルベジロール、アミオダロン、ドロネダロン、リスペリドン、または、ジプラシドンである、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
治療有効量の薬物;
可溶化剤;および、
放出モジュレーター;
を含み、該薬物と該可溶化剤との放出が同調している、経口用製剤。
【請求項34】
治療有効量の薬物;
可溶化剤;および、
放出モジュレーター;
を含み、該薬物と該可溶化剤との放出が同調している、経口用固形製剤。
【請求項35】
前記薬物が、ウンデカン酸テストステロンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記薬物が、酢酸メゲストロールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記薬物が、クロナゼパムである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記薬物が、アナグレライドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記薬物が、アカンプロセートである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記薬物が、バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタンシレキセチル、オルメサルタンメドキソミル、および、イルベサルタンから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−540451(P2008−540451A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510270(P2008−510270)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/017445
【国際公開番号】WO2006/119498
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505433002)リポシン・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】