説明

可視光応答性ルチル型二酸化チタン光触媒

【課題】工業的生産に適しており、且つ、簡単な手法で、均一で緻密なものとして、光触媒活性に優れた二酸化チタン薄膜を有する基材であって、さらに可視光に対する応答性に優れている二酸化チタン薄膜を有する基材を得る技術を提供する。
【解決手段】基板チタンあるいはチタン合金に、窒化物を形成しない程度に窒化処理を施し、それを基板にして陽極酸化を行ない、陽極酸化後に熱処理を施すことにより、基板にドープした固溶窒素を酸化膜に拡散させ、電解浴から陽極酸化膜に混入する硫黄と共に、二酸化チタンへの複合添加を行う。このようにして作製した二酸化チタンは窒素と硫黄がドープされたもので、400nm以上の長波長の光照射下で、有機物酸化分解および超親水性に優れる。またこれらの機能は紫外線照射下での機能の劣化を伴わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、可視光に対する応答性のある光触媒活性を有するルチル型二酸化チタンを形成する技術に関する。より具体的には、本発明は、陽極酸化により表面に形成される光触媒活性を有するルチル型二酸化チタンに窒素と硫黄をドープせしめ、それにより可視光応答性に優れた二酸化チタン光触媒材を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体的特性を有する金属酸化物、特には二酸化チタンは、紫外線領域の特定波長の光を照射することによって優れた光触媒活性を示し、その表面において気相あるいは液相(場合によっては固相)の化学物質を酸化分解する。該光触媒作用に由来する強力な酸化反応によって該二酸化チタンは、防臭、防黴、殺菌作用を発揮する。
こうした活性を有する二酸化チタンを、チタンまたはチタン合金の表面に担持せしめるための従来技術としては、蒸着法とゾルゲル法が多用されている。ゾルゲル法はディップコートやスピンコートで行う簡便な方法で、異型基材への担持が可能であるが、量産性に劣るという問題を有している。特にスピンコートでは膜の均一性が悪く平板基板にしか担持できないという短所がある。一方、蒸着法は成膜材の緻密性や均一性に優れているものの、特殊装置を用いることからコストが高く、膜厚が厚いことから剥離の可能性が高いという欠点がある。
【0003】
こうした手法に代わるものとして、陽極酸化法により光触媒活性を有する二酸化チタン薄膜を成膜する方法が提案されている。陽極酸化法による光触媒二酸化チタン薄膜の製造の報告例では、光触媒としては、アナタース型二酸化チタンのほうが、高温型結晶として知られるルチル型二酸化チタンよりその活性が高いとして、専らアナタース型二酸化チタン膜を形成することを目的としている。
【0004】
こうした従来技術の中で、特開2002-113369号公報〔特許文献1〕は、結晶構造がルチ
ル型の二酸化チタンを含むことを特徴とする光触媒及びその製造法を開示するが、それは酸化チタン粉末を主とする光触媒材料を成形して光触媒体を製造する技術であり、そこではルチル型二酸化チタン粉末は水素雰囲気中熱処理を行うことにより酸素欠陥を導入してアナタース型二酸化チタン粉末との混合物からなる酸化チタン粉末として得られたり、ルチル型の二酸化チタン粉末のみからなる酸化チタン粉末として得られたり、さらには膜状体に酸素欠陥導入又は原子置換を施して光触媒体を得ているといったものである。
こうした中で、本発明者等は、これまでに、意外なことに、二酸化チタン光触媒体の光触媒活性および超親水性などの性能が、二酸化チタンのルチル結晶性である薄膜においても、大変優れていることを見出している。
【0005】
ところで、光触媒としての活性を利用する場合、生活空間では可視光に対する応答性があることが、より広い適用が期待できて望まれている。可視光での光触媒活性の改善には、二酸化チタンのバンドギャップの狭窄が必要である。そのための方策の一つとして、添加元素の電子軌道と二酸化チタンの価電子帯の混成により、価電子帯の上端電位を高めることが提案されており、窒素ドーピングが有効であることが報告されている(非特許文献1: Chemical Physics Letter, 123 (1986), 126、特許文献2:特開2005-240139号公報)。
【0006】
また、他方、同様の効果を期待できるとされているのが、硫黄ドーピングであるが、窒素ドーピングに比べその報告は圧倒的に少なく、効果の程も詳細には不明であったが、先
ごろ、本発明者等は、硫酸水溶液電解浴を使用した陽極酸化法により、確実に硫黄ドーピングが可能な技術の開発に成功した〔特許文献3:特願2008-327669〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-113369号公報
【特許文献2】特開2005-240139号公報
【特許文献3】特願2008-327669
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chemical Physics Letter, 123 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
工業的生産に適しており、且つ、簡単な手法で、均一で緻密なものとして、光触媒活性に優れた二酸化チタン薄膜を有する基材であって、さらに可視光に対する応答性に優れている二酸化チタン薄膜を有する基材を得る技術を提供することが求められている。特には、可視光領域での光触媒活性に優れた二酸化チタン薄膜を成膜する技術の開発が求められている。本発明者等は、上記のように、硫酸電解浴を使用した陽極酸化法により作製した二酸化チタンにおいて、陽極酸化膜に硫黄をドープさせることでバンドギャップの狭窄化による可視光下での活性を示す材料開発に成功している(特願2008-327669)。本発明で
はさらなるバンドギャップ狭窄を目指して、窒素と硫黄の複合添加を目指した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意研究の結果、基板チタンあるいはチタン合金に、窒化物を形成しない程度に窒化処理を施し、それを基板にして陽極酸化を行い、陽極酸化後に熱処理を施すことにより、基板にドープした固溶窒素を酸化膜に拡散させ、二酸化チタンへの窒素と硫黄の複合添加を行うことに成功した。そして、このようにして作製した二酸化チタンは400 nm以上の長波長の光照射下で、有機物酸化分解および超親水性に優れることを見出した。またこれらの機能は紫外線照射下での機能の劣化を伴わないことも見出した。
【0011】
かくして、本発明は、次なるものを提供する。
〔1〕チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に陽極酸化を施して光触媒活性ルチル型二酸化チタン被覆材を製造する方法において、当該基材のチタンまたはチタン合金に窒化処理を施し、該窒化処理された基材を陽極酸化に付し、前記陽極酸化を施して作製した膜に、熱処理を施して、可視光領域で高い光触媒活性を示し且つ窒素と硫黄がドープされたルチル型二酸化チタン被覆材料を得ることを特徴とする可視光応答性に優れた光触媒ルチル型二酸化チタンを製造する方法。
〔2〕前記窒化処理は、窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化であることを特徴とする上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記窒化処理は、窒素含有のガスの存在下、350〜850℃の処理温度、200〜1000Pa
の範囲のガス圧の条件で、10分間〜24時間の範囲でプラズマ窒化するものであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記窒化処理は、窒素と水素の混合ガスの容量比N2:H2=おおよそ1.2:0.8〜N2:H2=
おおよそ1:4である窒素源のガスの存在下、650〜750℃の処理温度、450〜1000Paの範囲のガス圧の条件で、1.5〜3.5時間の範囲でプラズマ窒化するものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の方法。
〔5〕陽極酸化が、0.02〜1.6mol/Lの硫酸濃度の硫酸水溶液中で、100〜300Vの電位を印
加し、約10〜約60分間の範囲の間行われるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載の方法。
〔6〕陽極酸化が、電流約180〜220mAで、電流密度45〜55mA/cm2の条件下に行われるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の方法。
〔7〕熱処理が、400〜500℃の範囲の温度で、約1〜約20時間の期間なされるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の方法。
〔8〕熱処理が、430〜470℃の範囲の温度で、約4〜約6時間の期間なされるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一に記載の方法。
〔9〕該ルチル型二酸化チタンが、結晶性に優れ、X線回折におけるルチル110回折線の
半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタン皮膜であるこ
と及び該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載の方法。
〔10〕前記陽極酸化される基板は窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化処理されたもので、該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされたもので、二酸化チタン中に約0.5〜2.0 at%の窒素と400ppm (0.04%)〜20000ppm (2.0%)の硫黄とを含有して
いることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一に記載の方法。
〔11〕チタンまたはチタン合金からなる基材であって、窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化処理された基材が用いられてその基材表面に形成されている二酸化チタン皮膜を有する光触媒体であって、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを90%以上含有すること及び該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされた陽極酸化薄膜であることを特徴とする二酸化チタン可視光応答性光触媒体。
〔12〕該ルチル型二酸化チタンは、可視光領域で高い光触媒活性を示すことを特徴とする上記〔11〕に記載の光触媒体。
〔13〕該ルチル型二酸化チタンは、可視光領域の約440nmの波長の光に対して約30%以上
のメチレンブルー(MB)分解率を示す高い光触媒活性を示すことを特徴とする上記〔11〕又は〔12〕に記載の光触媒体。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、工業的生産に適しており、且つ、簡単な手法で、均一で緻密なものとして、光触媒活性に優れた二酸化チタン薄膜を有する基材であって、さらに可視光に対する応答性に優れている二酸化チタン薄膜を有する基材が製造でき、当該二酸化チタン薄膜は、窒素と硫黄がドープされた陽極酸化薄膜であり、当該基材は、製造コストの点で有利なもので且つ膜が剥離する可能性もなくて、耐久性に優れると考えられ、光触媒として可視光応答性が優れるので、医療分野、室内の壁材などの分野、ビル外壁および屋根に使用されるチタン製建造物や資材、厨房ダクトなどの各種広範な用途に対して非常に有用である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】可視光領域でのMB分解率を指標にした光触媒活性を測定した結果。
【図2】プラズマ窒化したチタン基板及び窒化していないチタン基板の表面の拡散反射スペクトル。
【図3】窒化チタン板を硫酸濃度0.02〜1.2mol/Lの硫酸水溶液電解浴中で陽極酸化して二酸化チタン被覆を施した基板材料のX線回折プロファイル。
【図4】H2:N2=1:1の雰囲気で窒化した窒化チタン板を硫酸濃度0.02〜1.2mol/Lの硫酸水溶液電解浴中で陽極酸化して二酸化チタン被覆を施した基板材料及びさらに熱処理した基板材料の超親水性性能試験の結果を示す。
【図5】H2:N2=4:1の雰囲気で窒化した窒化チタン板を硫酸濃度0.02〜1.2mol/Lの硫酸水溶液電解浴中で陽極酸化して二酸化チタン被覆を施し熱処理した基板材料の超親水性性能試験の結果を示す。
【図6】Ar:H2:N2=49:50:1の雰囲気で窒化した窒化チタン板を硫酸濃度0.02〜1.2mol/Lの硫酸水溶液電解浴中で陽極酸化して二酸化チタン被覆を施し熱処理した基板材料の超親水性性能試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、陽極酸化法を用いて可視光領域において高い光触媒活性を有している二酸化チタン薄膜をチタンまたはチタン合金の基材上にコーティングする方法並びに該方法で得られた可視光領域に高い光触媒活性を持つ二酸化チタン薄膜被覆チタンまたはチタン合金の基材を提供する。
本発明は、硫黄のみならず窒素もドープされたルチル構造の二酸化チタン薄膜で被覆されたチタンまたはチタン合金基材が、可視光領域でも高い光触媒活性を持つこと、そして当該材料が、基板との密着強度が強く剥離しにくい材料作製手法として利点を有し且つ経済性に優れた陽極酸化法で得ることができるとの知見も利用している。本発明では、さらに、陽極酸化法で形成された二酸化チタン膜、所定の熱処理を施すことで、可視光応答性の光触媒活性が高いという性質をはじめとした優れた機能(例えば、超親水性と酸化分解性能の二つの機能を同時に満たしているなどを含めてよい高機能)の膜の製造が可能となるとの知見も利用している。
【0015】
本発明において用いられる基材は、チタン含有金属材料からなるものが挙げられ、該基材としてはチタン(純チタンを含む)またはチタン合金からなるものが包含される。チタン合金とは、チタンを含有する合金を包含するものである。該チタン含有金属材料は、実質的に100%チタンからなる純チタンであってもよく、ここで該「実質的に」とは、本発
明の効果を損なわない程度の不純物、混合物の存在を包含する意味を有するものであってよい。純チタンとしては、例えば、JIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種、ASTM G1、ASTM G2、ASTM G3、ASTM G4、AMS4902、AMS4900、AMS4901、AMS4921などが挙げられる。典型的な場合では、得られる金属材料の光触媒性能などの性能(超親水性能が含まれてよい)の観点から、成膜部分(表面並びにその近傍など)では基体に使用される合金全体におけるチタン含有量は80%以上であることが望ましい。
【0016】
チタンと共に合金を構成する金属は、チタンとの相溶性が良好であれば特に制限はなく、目的に応じて、様々な元素から選択されてよく、当該分野で知られたものを使用してよい。チタン合金としては、例えば、チタン基合金が挙げられ、5族元素(5A族元素)、6族元素(6A族元素)、7族元素(7A族元素)、鉄族元素、白金族元素、11族元素(1B族元素)、14族元素(4B族元素)、3族元素(3A族元素、ランタノイド、アクチノイド、ミッシュメタル
を包含する)よりなる群から選択される元素の少なくとも1種を含有するもの、チタンとの金属間化合物を形成する元素の少なくとも1種を含有するものなどが挙げられる。
【0017】
チタン合金に配合される代表的な元素としては、5族元素では、例えば、V, Nb, Taな
ど、6族元素では、例えば、Cr, Mo, Wなど、7族元素では、例えば、Mn, Reなど、鉄族
元素では、例えば、Fe, Co, Niなど、白金族元素では、例えば、Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、11族元素では、例えば、Cu, Ag, Auなど、14族元素では、例えば、Si, Sn, Pbなど、3族元素では、Y, La, Ce, Nd, Sm, Tb, Er, Yb, Acなどが挙げられ、それらは単独あ
るいは複数のものをTiに対して配合されているものでよい。典型的な場合、本発明で用いる好ましいチタン合金としては、例えばMo, Nb, Ta, V, Ag, Co, Cr, Cu, Fe, Mn, Ni, Pb, Si, Wの元素の少なくとも1種を合金元素として含有するチタン合金が挙げられる。
【0018】
代表的なチタン合金としては、当該分野で知られたものを使用してよく、例えば、Ti-Nb-Sn合金、Ti-Fe-O合金、Ti-Fe-O-Si合金、Ti-Pd合金、Ti-Ni-Pd-Ru-Cr合金、Ti-Al-V合
金、Ti-Al-Sn-Zr-Mo合金、Ti-Al-Mo-V-Fe-Si-C合金、Ti-V-Cr-Sn-Al合金、Ti-Mo-Zr-Al合金、Ti-Mo-Ni合金、Ti-Ta合金、Ti-Al-Sn合金、Ti-Al-Mo-V合金、Ti-Al-Sn-Zn-Mo-Si-C-Ta合金、Ti-Al-Nb-Ta合金、Ti-Al-V-Sn合金、Ti-Al-Sn-Zr-Cr-Mo合金、Ti-V-Fe-Al合金、Ti-V-Cr-Al合金、Ti-V-Sn-Al-Nb合金、Ti-Al-Nb合金、Ti-Al-V-S合金などが挙げられる。
例えば、Ti-5Al-2.5Sn合金、Ti-6Al-4V合金、Ti-15Mo-5Zr-3Al合金等の如きチタン合金を使用することができる。
【0019】
本発明技術では、チタンまたはチタン合金からなる金属基材は、予め、板状や箔等あるいは目的とする使用形態に適合した所望の形状(チタン又はチタン合金メッキされたものも包含する)に加工したのち、窒化処理、その後の陽極酸化処理に付される。金属基材の形状は、特に限定されるものではなく、板状、棒状、円柱状、網状、繊維状、多孔質状(スポンジ状)、粉体や繊維を圧縮加工してなる成形体、塊状物等を用いることもできる。所望の形状に成形加工したものは、通常、表面洗浄を施された後、窒化処理に付される。該基材は、窒化処理や陽極酸化処理を行う前に、熱処理等の前処理を施してあってもよい。
【0020】
本発明技術では、チタンまたはチタン合金基材は、窒素ドープされた二酸化チタン薄膜層を基材に形成することを保障するため、窒化処理される。窒化処理は、基板チタンまたはチタン合金に、窒化物を形成しない程度に施されるのが望ましい。本発明で適用される窒化処理は、窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化である。チタンまたはチタン合金基材は、純窒素ガス(N2)中で高温保持すれば窒化され、例えば、温度としては、800〜1000℃程度が挙げられる。当該プラズマ窒化は、金属材料の分野でプラズマ窒化プ
ロセスとして知られたプロセス並びにそのための装置を使用して行うことができる。プラズマ窒化法は、荷電された粒子・イオンと電子からなるプラズマ状態を利用しておこなう窒化法であり、イオン化されたガスの原子あるいは分子を利用する。プラズマ窒化では、窒化速度は迅速であり、雰囲気のガス組成を調整することによりターゲット材料の表面に形成される窒化層の組成のコントロールも可能であり、適切な処理を加えることで、ターゲット材料の表面に酸化皮膜をきたすことなく窒化できる。プラズマイオンは、陰極側にあるターゲット試料に対して加速されて、運動エネルギーを有する窒素イオンが試料表面に入ることとなる。該プラズマ窒化プロセスでは、通常、真空ポンプで排気した放電処理炉に窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)との混合ガスを導入し、ガス圧を所定の圧力に設定し、処理試料を陰極として、数百ボルトの直流電圧を印加し、グロー放電を発生させることにより、窒化を行う。
【0021】
本発明のプラズマ窒化における一つの具体的な態様では、処理温度としては、例えば、350〜850℃であり、好ましくは500〜800℃であり、より好ましくは600〜750℃である。プラズマ源の放電領域、加速領域、そして、窒化処理槽は、真空ポンプなどを使用して、真空に近い状態、例えば、数Pa程度の真空状態とされてから、そこに処理用ガス、すなわち、窒素源のプラズマ用原料ガスが、所要の圧力となるように導入される。上記真空状態は、上述の範囲を好適に使用できるが、これに限定されるものではない。
該窒素源のプラズマ用原料ガスとしては、窒素含有のガス、例えば、純窒素ガス、窒素と水素の混合ガス、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、窒素ガスと水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスなどを使用できる。窒素と水素の混合ガスの容量比は、望ましい結果が得られる限り特に限定されることなく適切に選択できるが、典型的な場合、N2/H2=10/1〜1/100の範囲から適宜選択でき、例えば、N2/H2=5/1〜1/5の範囲を選ぶことができ、好
ましくはN2/H2=2/1〜1/2の範囲であり、特に好ましくはN2:H2=おおよそ1:1である。
【0022】
該プラズマ窒化プロセスのターゲット試料は、加熱されていることも可能であり、適宜、外部加熱、内部加熱のいずれも採用可能である。該窒素源のプラズマ用原料ガスの窒化処理槽内でのガス圧としては、望ましい結果が得られる限り特に限定されることなく適切に選択できるが、典型的な場合、200〜1000Paの範囲から適宜選択でき、例えば、350〜750Paの範囲を選ぶことができ、好ましくは400〜650Paの範囲であり、特に好ましくはおお
よそ500Paである。該プラズマ窒化の処理時間は、適用される処理温度、使用窒素源ガス
の種類、ガス圧などのパラメーターに応じて、所望の窒化の程度を勘案して適宜選択され、望ましい結果が得られる限り特に限定されることなく適切に選択できるが、典型的な場合、30分間〜24時間の範囲から適宜選択でき、例えば、1〜10時間の範囲を選ぶことができ、好ましくは1.5〜5時間の範囲であり、特に好ましくはおおよそ3時間である。
本プラズマ窒化プロセスは、当該分野で知られた装置あるいは当該分野で入手可能な装置、例えば、プラズマ窒化炉、イオン窒化炉などを使用して行うことができるが、所要の目的を達成することのできる装置であればこれらに限定されず使用可能である。
【0023】
本発明では、該窒化チタン含有金属材料を電圧印加の下に陽極酸化処理することにより、基体上にルチル型二酸化チタンを含む陽極酸化膜が形成され、このルチル型二酸化チタンが可視光領域における高い光触媒活性(及び/又は超親水性)を有するといったものが得られるのである。別の態様では、当該窒化チタン含有金属材料を高電流密度条件下に陽極酸化処理することにより、基体上にルチル型二酸化チタンを含む陽極酸化膜が形成され、このルチル型二酸化チタンが可視光領域における高い光触媒活性(及び/又は超親水性)を有するものが得られる。本陽極酸化処理では、均一で緻密な処理が可能で、複雑な形状でも簡単に処理しうるし、光触媒活性を有する層の強度に優れる。
【0024】
本発明技術では、基材の陽極酸化は、酸性溶液中で行われる。代表的な酸性溶液としては、希硫酸水溶液などの希薄鉱酸水溶液が挙げられる。希硫酸水溶液における硫酸の濃度としては、所要の結果が得られるものを選択でき、例えば、0.02〜1.6mol/L、より好ましくは1.0〜1.5mol/Lで行うのがよく、さらに好ましくは1.1〜1.3mol/L、もっと好ましくはおおよそ1.2mol/Lで行うのがよい。別の態様では、希硫酸水溶液における硫酸の濃度としては、8.8〜12.3重量%(wt%)、あるいは、8.8〜11.4重量%(wt%)、より好ましくは9.7〜11.4重量%で行うのがよく、さらに好ましくは約10.5重量%で行うのがよい。
【0025】
陽極酸化の際の極間の電圧は、例えば、50〜500V、より好ましくは100〜500V、さらに
好ましくは150〜500Vの電位で行うのがよく、さらには、好ましくは160〜500V、もっと好ましくは210〜450Vの電位で行うのがよい。ある場合には、該陽極酸化処理は、100〜400V、より好ましくは150〜400Vの電位で行うのがよく、別の態様では、100〜350V、もっと好ましくは150〜300Vの電位で行うものであってよい。該陽極酸化処理は、200〜400V、より好ましくは200〜350Vの電位で行うことがよい場合もあり、さらには、好ましくは200〜275V、もっと好ましくは200〜250Vの電位で行うものであってよい。
本陽極酸化処理は、1分間〜50時間、好ましくは2分間〜24時間、さらに好ましくは3分間〜12時間行うものであってよく、さらには9分間〜5時間あるいは10分間〜3時間行うものであってよいし、さらには20分間〜3時間行うものであってよい。
【0026】
別の態様としては、電圧を上げる代わりに電流密度を高めることができる。電流密度は電流値と試料表面積で算出される。本陽極酸化の際の電流密度としては、所要の結果が得られるものを選択でき、例えば、少なくとも25mA/cm2以上であればよいが、好適に、30mA/cm2以上としてもよいし、さらに50mA/cm2以上でも好ましい結果が得られ、70mA/cm2以上が望ましい場合もあり、100mA/cm2以上としてもよい。高い電流密度を採用できる場合に
は、化成電圧を、例えば、100〜500Vとすることができるし、さらに、120〜500Vとしてもよく、また150〜500Vの電位で行ってよいし、さらには、好ましくは180〜500V、もっと好ましくは200〜450Vの電位で行ってもよい。本態様では、該陽極酸化処理は、1分間〜100
時間、好ましくは2分間〜48時間、さらに好ましくは3分間〜12時間行うものであってよく、さらには9分間〜5時間あるいは10分間〜3時間行うものであってよいし、さらには20分間〜3時間行うものであってよい。
【0027】
陽極酸化は、通常、室温で行われる。陽極酸化処理は、直流、交直重畳、又はパルス波を印加して行ってよい。又は、サイリスタ方式による直流電源を用いて、単相半波、三相半波、六相半波を印加して行うことも可能である。
本陽極酸化処理によれば、微細で均一な表面酸化が可能なため、複雑な形状の金属材料も、均一で、且つ、すぐれた光触媒機能や超親水性能を持つものに簡単に加工することができる。酸化電圧をコントロールすることにより、形成される陽極酸化膜の膜厚を様々に制御することもできる。また、酸化時の電流密度をコントロールすることにより、形成される陽極酸化膜の膜厚を様々に制御することもできる。本陽極酸化処理は、非常に簡便な方法であり、且つ、大面積を有する表面への成膜が容易であり、便利である。しかも、複雑な形状の基板に対しても成膜が可能であり、工業的に有用な方法である。
【0028】
典型的な態様では、プラズマ窒化処理及びその後の陽極酸化処理は、次のようにされる。まず、所望の形状に成形され、前処理を施されたチタン含有金属材料からなる成形体(例えば、板状をなす基材)は、プラズマ窒化炉に配置され、真空ポンプで炉内の排気を行った後、窒素と水素の混合ガスの容量比N2:H2=おおよそ1.2:0.8〜N2:H2=おおよそ1:4である窒素源のガス(代表的には、窒素と水素の混合ガスの容量比N2:H2=おおよそ1:1である
窒素源のガス)を導入する。プラズマ窒化の条件を、圧力おおよそ450〜1000Paの範囲(
代表的には、圧力おおよそ500Pa)、電圧おおよそ550V、処理温度おおよそ650〜750℃(
代表的には、処理温度おおよそ700℃)として、おおよそ1.5〜3.5時間の範囲(代表的に
は、おおよそ3時間)窒化せしめる。表面をプラズマ窒化せしめたチタン含有金属試料は、次に、アノードに接続され、カソードには純チタンかステンレスあるいは白金を素材とし、板か棒あるいはメッシュの形状の金属が接続される。セル中には、適当な電解質を含有する水溶液(おおよそ0.02〜1.6mol/Lの硫酸濃度の硫酸水溶液、典型的な本態様においてはおおよそ1.2mol/L硫酸水溶液)が満たされ、前記成形体と純チタンかステンレスあるいは白金を素材とし、板か棒あるいはメッシュの形状の金属が浸漬されている。電圧計、電流計を観察して、直流電流を調整しながら、直流電力供給装置により電力を供給して、電圧約210〜500V程度(電流密度が少なくとも25mA/cm2以上の場合では電圧約120〜500V程度)で、陽極酸化処理を行う。すなわち、得られた金属材料成形体を、陽極酸化処理装置のアノードに取り付けて、1.2mol/L硫酸水溶液中で、電圧210〜500Vで陽極酸化処理(あ
るいは少なくとも25mA/cm2以上の電流密度条件下で陽極酸化処理)を行って、金属材料、特にそこに含まれるチタンを酸化し、表面にルチル型二酸化チタン膜(陽極酸化膜)を形成させるものである。本陽極酸化された基材は、通常、十分に水洗される。また、該基材は、メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒で洗浄されてもよい。
【0029】
また、本発明技術では、該陽極酸化後に行われる熱処理は、酸化性雰囲気中300〜1000
℃、より好ましくは300〜1000℃、さらにより好ましくは400〜600℃の温度範囲で行うこ
とが望ましい。該温度域における保持時間は30分間〜20時間程度であるが、好ましい保持時間は1〜10時間程度であって、より好ましくは、熱処理が400℃程度で行われる場合、30分間〜10時間程度であり、熱処理が450℃程度で行われる場合、30分間〜5時間程度であり、典型的には約3時間程度である。酸化性雰囲気は、特に限定されないが、典型的には酸
素が存在する雰囲気であり、通常は大気雰囲気が挙げられる。本熱処理で、金属材料基体の表面に形成された陽極酸化膜を固定化し、強度、密着性を向上させ、且つ、光触媒特性や超親水性の特性を向上させることができる。本発明によると、基材の種類や形状、陽極酸化条件および熱処理条件を適宜変更することによって、種々の特徴を有する光触媒材料を製造することが可能である。
【0030】
本発明方法の代表的な態様では、上記したようなチタンまたはチタン合金からなる基材は、まず、プラズマ窒化装置にて、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを原料ガスとして使用し、容量比N2:H2=おおよそ1.2:0.8〜N2:H2=おおよそ1:4の雰囲気(例えば、H2:N2=おおよそ1:1の雰囲気)、ガス圧力450〜550Pa、例えば、約500Paのプラズマ窒化の条件にて、650〜750℃で1.5〜3.5時間処理して、例えば、約700℃で約2.0時間あるいは約3.0時間処
理し、チタンまたはチタン合金基板をプラズマ窒化する。次に、プラズマ窒化せしめられた基材は、約0.1〜約1.6mol/Lまでの濃度の硫酸水溶液中で、その表面に約150〜約300Vまでの電圧を約20分間〜約1時間の間印加して陽極酸化を施し、次に得られた該基材上成膜
に約400〜約500℃までの温度で、約1〜約20時間の間熱処理を施して、結晶性に優れたル
チル型二酸化チタンを製造する方法が提供される。
【0031】
また、本発明の別の代表的な態様では、上記チタンまたはチタン合金からなる基材は、プラズマ窒化装置にて、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを原料ガスとして使用し、例えば、H2:N2=おおよそ1:1の雰囲気、ガス圧力、例えば、約500Paのプラズマ窒化の条件にて、例えば、約700℃で約2.0時間あるいは約3.0時間処理し、プラズマ窒化されたチタンま
たはチタン合金基板を製造し、次に、該プラズマ窒化された基板を、例えば、約1.0〜約1.3mol/Lまでの濃度の硫酸水溶液中で、その表面に約200〜約220Vまでの高電圧(例えば、電流約180〜220mA、電流密度45〜55mA/cm2)を印加して、約20〜約60分間の間陽極酸化を施し、次に得られた該基材上の成膜に約430〜約470℃の温度で、約2〜約6時間の間熱処
理を施して、結晶性に優れたルチル型二酸化チタンを製造する方法が提供される。
【0032】
本発明の典型的な態様の一つでは、チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、プラズマ窒化を施し、例えば、プラズマ窒化装置にて、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを原料ガスとして使用し、H2:N2=おおよそ1:1の雰囲気、ガス圧力約500Paのプラズマ窒化の条件にて、約700℃で約2.0時間あるいは約3.0時間処理し、プラズマ窒化されたチタンま
たはチタン合金基板を製造し、次に、該プラズマ窒化された基板を、例えば、約1.2mol/Lの濃度の硫酸水溶液中で、その表面に約210Vの高電圧(例えば、電流約200mA、電流密度
約50mA/cm2)を印加して、約30分間陽極酸化を施し、次に得られた該基材上の成膜に約450℃の温度で、約5時間熱処理を施して、結晶性に優れたルチル型二酸化チタンを製造す
る方法が提供される。
【0033】
本発明は、本明細書で開示の方法で得られ且つ基体上にルチル型二酸化チタン被膜を有し、さらに、特定の優れた光触媒活性、例えば、可視光領域での応答性に優れている光触媒活性を有する材料を提供する。ある場合には、当該材料は、超親水性を有する点でも優れていることが認められよう。当該材料は、図1〜6に示されたデータをその材料の特性値として有するルチル型二酸化チタン被膜をもつ基材である。当該材料の特性値としては、可視光に対する応答性で評価される光触媒能試験で得られる可視光で誘導されるMB分解率が挙げられる。また、当該材料の特性値としては、超親水性性能試験で得られる接触角などであってもよい。
本発明で得られる上記基材の上に形成される結晶性に優れた二酸化チタン薄膜が、ルチル型二酸化チタンであることは、図3より明らかである。本発明で得られる上記結晶性に優れたルチル型二酸化チタンは、薄膜X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを少なくとも85%以上、好ましくは少なくとも90%以上、更に好ましくは少なくとも95%以上、より好ましくは少なくとも96%以上、もっと好ましくは少なくとも97%以上含有するものである。典型的な場合、本発明で得られる当該基体上の上記ルチル型二酸化チタンとは、薄膜X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを98%以上含有する二酸化チタン皮膜である。一つの代表例では、本発明で得られる当該基体上の上記ルチル型二酸化チタンとは、薄膜X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを99%以上含有する二酸化チタン薄膜である。
【0034】
さらに、本発明で基材上に形成せしめられたルチル型二酸化チタン物質は、優れた可視光応答性を有しており、有用である。該ルチル型二酸化チタン被膜物質は、二酸化チタン中に硫黄と共に窒素がドープされたものであることが見出されている。これまで二酸化チタン形成物に窒素と共に硫黄が添加されたもの、そして、実際に、本発明で得られる製品のように優れた可視光応答性を達成したものは、得られたとの報告はなく、従来のものは、本発明のもののように二酸化チタン中に窒素と共に硫黄がドープされたものとは考え難い。本発明で基材上に形成せしめられたルチル型二酸化チタン被膜物質の幾つかの例の分析から、膜厚は約7μmで、二酸化チタン中の硫黄濃度は、1441ppm(0.144%)までは確実に
ドープされていることが見出されている。こうしたことから、二酸化チタン中の硫黄濃度の上限としては20000ppm (2.0%)程度であり、一方、硫黄濃度の下限としては250ppm (0.025%)以下であり、例えば、200ppm (0.02%)程度であると考えられる。一つの典型的な態様では、本発明で基材上に形成せしめられたルチル型二酸化チタン被膜物質は、硫黄がドープされたもので、二酸化チタン中に400ppm (0.04%)〜10000ppm (1.0%)の硫黄を含有して
いるもので、ある場合には、二酸化チタン中に600ppm (0.06%)〜4000ppm (0.4%)の硫黄を含有しているもので、好ましくは、二酸化チタン中に800ppm (0.08%)〜2000ppm (0.2%)の硫黄を含有しているものである。
【0035】
該二酸化チタン中の窒素濃度は、1.2 at%、1.3 at%から、1.35 at%とか1.6 at%などの
値が得られ、そうした値までは確実にドープされていることが見出されている。こうしたことから、二酸化チタン中の窒素濃度の上限としては2.0 at%程度まで、例えば、約1.7 at%までであり、一方、窒素濃度の下限としては0.5 at%以上、例えば、約1.0 at%以上が好適であるというものであり、例えば、約1.3〜1.65 at%で、より好適な結果がえられるも
のと考えられる。一つの典型的な態様では、本発明で基材上に形成せしめられたルチル型二酸化チタン被膜物質は、窒素と硫黄がドープされたもので、二酸化チタン中に、約0.5
〜2.0 at%の窒素と400ppm (0.04%)〜10000ppm (1.0%)の硫黄を含有しているもので、ある場合には、二酸化チタン中に約1.0〜1.7 at%の窒素と600ppm (0.06%)〜5000ppm (0.5%)の硫黄を含有しているもので、好ましくは、二酸化チタン中に約1.3〜1.65 at%の窒素と800ppm (0.08%)〜2000ppm (0.2%)の硫黄を含有しているものである。
【0036】
本発明の方法で得られた光触媒活性を有しかつ優れた超親水性を有するルチル型二酸化チタン薄膜を有する材料は、脱臭、防黴、防汚性、殺菌作用等を示し、防黴、防汚などの効果を有する建築材、空調機器、浄水設備等に用いられる各種部材として有効に活用することができる。
本発明の金属材料の使用方法としては、金属タイルや、内装材としてそのまま使用するほか、本発明の構造を有する金属材料の薄板を作製し、既存の建築材料であるセラミックス、モルタル、硝子、鉄板、アルミ板等に接合して、複合材料として使用することもできる。このように、既存材料の上に接合して用いる方法によれば、光触媒活性を有する金属材料の使用量の低減が可能となり、優れた防臭、殺菌機能等の光触媒活性を有する種々の複合材料を安価に提供できる。
本発明の方法で得られた光触媒活性を有しかつ優れた超親水性を有するルチル型二酸化チタン薄膜を有する材料は、水浄化に使用できる。、当該ルチル型二酸化チタン薄膜によりクリーンな光エネルギーを利用して、水中の希薄な有機物の除去をするといった浄化法を可能とする。
【0037】
本発明の方法で得られたルチル型二酸化チタン薄膜を有する材料は、工場プラント用建築資材を含めた各種建築材料やその他の機器、医療用材料などを含めた材料、例えば、建築物の内,外装材、調理用器具、食器類、衛生機器、空調機器、その他下水管等の土木用材料、道路の遮音壁、冷蔵庫などの食品保管庫用材料などに使用できる。本発明で得られる材料の有する光触媒作用を利用し、自浄、空気清浄化、殺菌作用をもった資材が提供で
きる。本発明の方法で得られたルチル型二酸化チタンに太陽光や照明器具などからの紫外線や可視光を含めた光を照射すると、光エネルギーが化学エネルギーに変換されて、有機物などを分解する光触媒作用を発揮し、オフィス、住宅室内で発生する代表的アレルゲンであるホルムアルデヒドの分解除去の他にも、抗菌、消臭及び防汚効果が得られる。本発明の技術で作製された二酸化チタン(薄膜又は薄膜材料)は400 nm以上の長波長の光照射下で、有機物酸化分解および超親水性に優れる。また、これらの機能は紫外線照射下での機能に関してその機能劣化を伴わないことも大きな特徴である。
【0038】
可視光活性光触媒の多くは、窒素ドープ型であり、幾つか市販もされている。しかし、その形態は粉末を出発原料とするために、基板への固定化に問題があると共に、触媒としての活用後の回収の点で煩雑あるいは困難であるという実用上の問題がある。また繰り返し使用に伴い、基板との密着性が低下し剥離するという欠点もある。発明者らはチタン上に熱力学的に安定な二酸化チタンを陽極酸化法で創製し、酸化分解性能に優れる電気化学条件を模索してきた。その結果、従来は性能に劣ると言われていたルチル構造の二酸化チタンにおいて、光触媒及び超親水性の両者において、優れた酸化分解性能を発揮するものが得られることを見出している。これは、化成電圧や電流密度制御による結晶性の向上、酸化膜の溶出に伴う多孔質化による表面積の増加、そして電解浴からの硫黄ドープによることを学術的に解明した。こうしたことを基礎に、本発明では、さらなる機能改善を目指し、バンド構造改質をすべく、基板そのものに窒素ドーピングを施し、そのドーピングした窒素の拡散により酸化膜の電子構造の改質を目指したものである。その際には、上述の硫黄によるバンド構造改質も同時に行わせることができており、硫黄ドープ材を超える優れた性能を引き出したものである。
【0039】
従来技術としては、蒸着法とゾルゲル法が多用されている。しかし、ゾルゲル法はデイップコートやスピンコートで行う簡便な方法で、異型基材への担持が可能ではあるが、量産性に劣るという問題がある。特に、スピンコートでは膜の均一性が悪く平板基板にしか担持できないという決定的な短所がある。一方、蒸着法は成膜材の緻密性や均一性に優れているものの、特殊装置を用いることから、コストが高くなり、膜厚が厚いことから剥離の可能性が高いという重大な欠点がある。
陽極酸化法は、従来、着色技術として広く実用されてきたが、光触媒としての報告はほとんどない。そのなかで注目すべきものとしては、特開2005-240139号公報があり、陽極
酸化の際に高電圧を印加して成膜している技術が示されているが、比較すると、本発明よりも印加電圧は低いものである。当該報告ではMB分解性能が、もっとも優れた陽極酸化膜で、6時間の紫外線照射で分解率が15%程度であることが開示されるが、本発明の未熱処理材の65.3%を大きく下回るものでしかない。また高温でのガス窒化処理を行っているが、
本発明では熱処理を施すと、MB分解率は97.5%まで増加し、明らかに、上記特許文献に開
示のものよりも優れる。
一方、陽極酸化法で成膜した二酸化チタンの超親水性については、それを開示する学術文献および特許文献はまったく報告されていない。
【0040】
殆どの報告は超親水性と酸化分解性能の二つの機能のうち片方のみを扱っているが、本発明では、紫外光だけでなく可視光照射下でも超親水性と同時に酸化分解性能に優れた二酸化チタンをつくり、セルフクリーニング機能として活用することを目指している。本発明者は課題解決の具体的な方法として、二酸化チタンの結晶性向上、表面積増加、バンド構造改質を考えて研究を進めている。問題解決の方策として採用した、硫黄と窒素の複合添加を陽極酸化法で行うという発想はこれまでにない。また上述の二つの機能を紫外光だけでなく可視光領域でも得ようとする点にも特徴があり、屋外太陽光を利用した建造物の外壁清浄化などに活用できると考える。
本発明で得られる二酸化チタン薄膜を有する製品は、可視光応答性が優れるので、医療分野、室内の壁材などの分野、ビル外壁および屋根に使用されるチタン製建造物、厨房ダ
クトなどに非常に有用である。
【0041】
本発明で得られる二酸化チタン薄膜を有するチタン又はチタン合金材においては、当該二酸化チタンのルチル構造の結晶性が向上せしめられている。当該ルチル型二酸化チタン薄膜形成材は、紫外光ばかりでなく可視光を含めた光照射により酸素空孔が形成され易くなっており、酸素空孔への水酸基の吸着が促進されて超親水性が改善されたものとなっている。本発明では、ルチル型二酸化チタン薄膜により、大変優れた可視光領域での応答性を有する光触媒活性および超親水性などの性能が得られるので、超親水性と酸化分解性能の二つの機能を同時に満たす膜の製造が可能となる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0042】
〔二酸化チタン膜の形成〕
Ti圧延板(JIS1種Ti; 20mm×10mm×1mm)の表面を化学研磨仕上げし、次に窒化処理を施
した。窒化処理は、プラズマ窒化を施した。プラズマ窒化では、日本電子工業社製JIN-1Sを使用し、次なる条件を使用した: 電圧550V; 圧力500Pa; 処理温度700℃; 処理時間3
時間。原料ガスは窒素ガスと水素ガスとの混合ガス、該混合ガスにアルゴンガスを添加したものなどを使用した。
表面をプラズマ窒化したTi板を陽極試料とし、0.02〜1.2mol/L硫酸水溶液のいずれかの濃度の硫酸水溶液中に浸漬した。電流を200mA(電流密度50mA/cm2)として、化成電圧を210V(最終電位)として、30分間の陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理は室温で行った
。陽極酸化後はメタノールにて洗浄後乾燥させたものを未熱処理材サンプルとする。陽極酸化後の基材を450℃において、5時間の大気酸化を施したものを熱処理材サンプルとす
る。
【0043】
〔光触媒能試験〕
作製した二酸化チタン膜被覆サンプルを、0.1mmol/L(3.19ppm)メチレンブルー(MB)水溶液(2mL)を満たしたポリメチルメタクリレート(PMMA)製セルに浸漬し、所定の時間、光照
射した。被検サンプルは、本MB分解試験の前に前処理を行って触媒表面への吸着に配慮した。前処理は、6.38 ppmのMB水溶液(2mL)に12時間以上浸漬することにより行った。
光源は、朝日分光製Xeランプ(MAX-302)を使用し、ミラーモジュール、JIS規格のバンドパスフィルター(5種)を組合せて、365、400、440、500、そして530nmの光(バンド幅約10nm)を3時間照射した。光強度は、0.3mW/cm2を用いた。色素増感作用による分解、直接光分解を排除するようにして測定を行った。一定時間照射後に石英セルからMB水溶液を採取し、分光光度計(日本分光V-550)にて664nmのMB吸光度変化から、MB分解率を算出した。
【0044】
〔超親水性性能試験〕
サンプルに365nmの紫外線を0.2 mW/cm2の強度で、所定の時間(0.5、1、1.5、2、2.5、3時間)照射した。一定時間照射後に1.0mLの蒸留水を滴下し、θ/2法にて接触角を測
定した。
【0045】
得られた結果を、図1に示す。
図1中、blankは陽極酸化処理したのみの試料であり、TiN anは窒化基板(TiN)上に陽極酸化処理した試料を熱処理(アニール処理)した試料で、TiN asは窒化基板(TiN)上に陽
極酸化処理した試料で熱処理を施していない試料、そして、Ti anはチタン基板(Ti)上に
陽極酸化処理した試料をアニール処理して得られた試料である。
この結果から、プラズマ窒化処理されたチタン基板を陽極酸化法で成膜し、熱処理して得られたルチル型二酸化チタン薄膜形成体(TiN an)では、陽極酸化した試料でアニールしてない試料(TiN as)やプラズマ窒化処理されていないチタン基板を陽極酸化法で成膜した試料をアニール化した薄膜形成体(Ti an)よりも、可視光領域(通常、360〜400nmよりも長波長側)にてMB分解率が高い(高い光触媒活性を示す)ことがわかる。窒素がドープされ
ていることで、可視光領域での高い光触媒活性となっていることが示されている。また熱処理を施すことで、光触媒活性は向上することがわかる。
また、電解浴の硫酸濃度0.02〜1.2mol/Lにて陽極酸化して得られた試料のX線回折プロファイルを、図3に示す。本図3より、電解浴の硫酸濃度を0.02mol/Lから1.2mol/Lに増
加せしめるにつれて、アナタースからルチルに変化していることから、ルチル型二酸化チタンが得られていることが明らかである。
【0046】
プラズマ窒化の条件として、(1)H2:N2=1:1の雰囲気、(2)H2:N2=4:1の雰囲気、(3)H2:Ar:N2=50:49:1の雰囲気のいずれかにて、700℃で2時間処理して、チタン基板を窒化した
。本窒化チタン基板を使用して、1.2mol/L硫酸水溶液電解浴中で上記と同様な条件で陽極酸化した後大気中で上記と同様な条件でもって450℃で4時間焼成した。この試料の表面
の拡散反射スペクトルを図2に示す。このスペクトルから窒化基板を用いて作製した陽極酸化膜の方が窒化を施していない基板を用いて作製した陽極酸化膜よりも、可視光側での吸収が大きいことがわかる。
【0047】
超親水性性能試験の結果を図4〜6に示す。図4は、H2:N2=1:1の雰囲気下で窒化した
チタン基板を用いて作製した陽極酸化膜で、未熱処理材サンプルと熱処理材サンプルを示す。1.2mol/Lの硫酸濃度の硫酸水溶液浴での陽極酸化膜サンプルでは、熱処理前でも、接触角は低い値を示しており、紫外線未照射でも超親水性に優れていることがわかる。また熱処理を施すことで、超親水性が顕著に改善せしめられることがわかる。図5は、H2:N2=4:1の雰囲気下で窒化したチタン基板を用いて作製した陽極酸化膜で、熱処理材サンプル
を示す。
接触角は、H2:N2=1:1の雰囲気下で窒化したチタン基板を用いて作製した陽極酸化膜の接
触角よりも高いことがわかる。図6は、Ar:H2:N2=49:50:1の雰囲気下で窒化したチタン基板を用いて作製した陽極酸化膜で、熱処理材サンプルを示す。1.2mol/Lの硫酸濃度の硫酸水溶液浴での陽極酸化膜サンプルでは、紫外線未照射でも接触角は低い値を示しており、超親水性に優れていることがわかる。
【0048】
H2:N2=1:1の雰囲気のプラズマ窒化の条件にて、700℃で2時間処理して、チタン基板を窒化し、得られた窒化チタン基板を使用して、1.2mol/L硫酸水溶液電解浴中で上記と同様な条件で陽極酸化した後大気中で上記と同様な条件にて450℃で4時間焼成した。この試
料につき、X線光電子分光法(XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いた表面解
析を行ったところ、窒素濃度については、可視光活性の高い方では1.35 at%、1.6 at%で
、活性の低い方では1.3 at%、1.2 at%という値であった。可視光による光触媒活性の高い試料の方が、窒素濃度は高い傾向が認められた。これらの試料の硫黄についての分析結果は、可視光活性の高い二酸化チタン層では、約0.13 at%で、可視光活性の低い二酸化チタン層では、約0.45 at%であると予想されるものであった。この硫黄量は、基板がチタンでも窒化チタンでも、大差ないと予想されるものである。
以上より、硫黄単独ドープより、窒素と硫黄の複合ドープの方が、可視光応答性はより良好となっている。つまり、硫黄に加えて、窒素が上記の値程度、二酸化チタンに添加されることで、可視光活性が改善されると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明で得られるルチル型二酸化チタン薄膜形成材料は、可視光領域の光に対しても応答して優れた光触媒活性を示し、さらに、紫外光での光触媒活性や超親水性という特性と併せて優れた光触媒作用を有する材料として有用で、さらに、その製造手法からみて、耐久性や製造コストの面でも有利なものであると期待される。したがって、可視光が普通に存在する、通常の生活空間における光触媒活性保有材料として、有用性が高く、脱臭、防黴、防汚性、殺菌作用等を示し、防黴、防汚などの効果を有する建築材(工場プラント資材を含めた各種建築材料)やその他の機器、空調機器、浄水設備、医療分野、衛生分野等に用いられる各種部材、医療用材料などを含めた材料、建築物の内,外装材、調理用器具、食器類、衛生機器、空調機器、土木用材料、道路の遮音壁、冷蔵庫などの食品保管庫用材料など、各種様々な適用・用途に使用されて、有用性を発揮できる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に陽極酸化を施して光触媒活性ルチル型二酸化チタン被覆材を製造する方法において、当該基材のチタンまたはチタン合金に窒化処理を施し、該窒化処理された基材を陽極酸化に付し、前記陽極酸化を施して作製した膜に、熱処理を施して、可視光領域で高い光触媒活性を示し且つ窒素と硫黄がドープされたルチル型二酸化チタン被覆材料を得ることを特徴とする可視光応答性に優れた光触媒ルチル型二酸化チタンを製造する方法。
【請求項2】
前記窒化処理は、窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒化処理は、窒素含有のガスの存在下、350〜850℃の処理温度、200〜1000Paの範囲
のガス圧の条件で、10分間〜24時間の範囲でプラズマ窒化するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記窒化処理は、窒素と水素の混合ガスの容量比N2:H2=おおよそ1.2:0.8〜N2:H2=おおよ
そ1:4である窒素源のガスの存在下、650〜750℃の処理温度、450〜1000Paの範囲のガス圧の条件で、1.5〜3.5時間の範囲でプラズマ窒化するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
陽極酸化が、0.02〜1.6mol/Lの硫酸濃度の硫酸水溶液中で、100〜300Vの電位を印加し、
約10〜約60分間の範囲の間行われるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
陽極酸化が、電流約180〜220mAで、電流密度45〜55mA/cm2の条件下に行われるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
熱処理が、400〜500℃の範囲の温度で、約1〜約20時間の期間なされるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
熱処理が、430〜470℃の範囲の温度で、約4〜約6時間の期間なされるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
該ルチル型二酸化チタンが、結晶性に優れ、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅
が0.4未満のルチル型二酸化チタンを90%以上含有する二酸化チタン皮膜であること及び
該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記陽極酸化される基板は窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化処理されたもので、該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされたもので、二酸化チタン中に約0.5〜2.0 at%の窒素と400ppm (0.04%)〜20000ppm (2.0%)の硫黄とを含有しているこ
とを特徴とする請求項1〜9のいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
チタンまたはチタン合金からなる基材であって、窒素雰囲気下加熱による窒化あるいはプラズマ窒化処理された基材が用いられてその基材表面に形成されている二酸化チタン皮膜を有する光触媒体であって、X線回折におけるルチル110回折線の半価幅が0.4未満のルチル型二酸化チタンを90%以上含有すること及び該ルチル型二酸化チタンは、窒素と硫黄がドープされた陽極酸化薄膜であることを特徴とする二酸化チタン可視光応答性光触媒体。
【請求項12】
該ルチル型二酸化チタンは、可視光領域で高い光触媒活性を示すことを特徴とする請求項11に記載の光触媒体。
【請求項13】
該ルチル型二酸化チタンは、可視光領域の約440nmの波長の光に対して約30%以上のメチ
レンブルー分解率を示す高い光触媒活性を示すことを特徴とする請求項11又は12に記載の光触媒体。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−120998(P2011−120998A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280447(P2009−280447)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)
【Fターム(参考)】