説明

可逆セルの運転方法

【課題】固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化させた可逆セルにおいて、格別な制御、定格以上の電解電流、電流供給設備、ポンプの持続運転等を必要とせず、長期的な運転に伴う性能低下を最小限に抑える。
【解決手段】固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化して、水電解運転と燃料電池運転との運転モードの切り替え可能な可逆セル1を運転するにあたり、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施する。可逆セル1の運転自体を1時間以上停止して保管する際、停止直前の運転モードが水電解運転である場合には、終了準備燃料電池運転を所定時間実施してから可逆セル1の運転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形の水電解装置と燃料電池のセルを一体化した可逆セル(以降、単に「可逆セル」と言うことがある)において、長期的な運転に伴う性能低下を最小限に抑えて高寿命化を実現するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同形状の固体高分子電解質型セルとして構成することができる水電解セルと燃料電池セルとを一体化した固体高分子形の可逆セルは、一般的には、固体電解質材料の膜(高分子膜)を両側から電極触媒層によって挟持して構成される発電ユニット(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、その外側に接合した酸化剤極集電体及び燃料極集電体と、これら酸化剤極集電体及び燃料極集電体の各外側に配置したセパレータとによって主要部が構成されている。通常、セパレータは波板形状を有し、セパレータと酸化剤極集電体、及びセパレータと燃料極集電体とによって形成される各独立空間が、酸化剤(酸素ガス)、燃料(水素ガス)の反応ガスの流路を構成する。MEAと酸化剤極集電体及び燃料極集電体は、セル内部基材を構成している。
【0003】
このような可逆セルにおいて、水電解や燃料電池の性能を低下させる内部抵抗(過電圧)には、抵抗過電圧、活性化過電圧、拡散過電圧がある。長期間運転を行うと、反応サイトやその近傍の電極部微細孔の一部に、水電解時ではガスが、燃料電池時では水が、各々滞留し、前者では局所的な乾きが、後者の場合には濡れがそれぞれ電極部に発生する。この現象が起きると反応に必要な水、ガスの反応サイトへの拡散が阻害される。また電池構成部材やシステム、燃料中に含まれる汚染物質(以降、単に「コンタミ」と言うことがある)が、膜電極接合部に蓄積していく。これらの現象により各過電圧が徐々に上昇し、結果として可逆セルの性能が低下する。
【0004】
反応サイトの回復についての従来技術としては、特許文献1にあるように、発電の停止状態で燃料電池運転時の酸化剤極に水素含有ガスを供給して、両極間に電源を接続し、燃料極から酸化剤極に電流を流して微細孔中の水を排除するという燃料電池を対象とした方法がある。またコンタミ問題に対する従来技術としては、特許文献2にあるように定格以上の電解電流で電解を行なって、コンタミを膜外に押し流すという水電解セルを対象とした方法がある。さらにまた、水電解運転後に水素極に水が滞留していると、セル構成部材等からのコンタミが滞留水に溶け込み、電解質膜や触媒がこの状態に曝されるとコンタミの混入が発生するが、特許文献3に記載の技術では、運転停止後もしばらく両極に水を廻すことでこの問題を解決しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−272686号公報
【特許文献2】特開平6−86939号公報
【特許文献3】特開2003−293179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、燃料電池に外部から加える電流値や供給する水素流量等複数の因子を厳密に監視する必要があり、制御も複雑になるばかりでなく、酸化剤極に水素含有ガスを供給する系統が必要になる。また特許文献2に記載の技術では、酸素極から入ってきたコンタミを、膜を介して水素極まで移動させてから排出するための駆動力として、定格以上の電解電流が必要となり、電流供給設備が過大となる。さらに特許文献3の技術では、運転を停止しているにも関わらず水を流すためのポンプを動かしておく必要があり、長期間運転しない場合等を考えると運用上無駄があるばかりか停電等の不測の事態に対応できない。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、水電解・燃料電池の双方の運転が可能な可逆セルにおいて、格別な制御、定格以上の電解電流、電流供給設備、ポンプの持続運転等を必要とせず、長期的な運転に伴う性能低下を最小限に抑えて高寿命化を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化して、水電解運転と燃料電池運転との運転モードの切り替え可能な可逆セルの運転方法であって、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施するとともに、当該可逆セルの運転自体を1時間以上停止する際、当該停止の前の運転モードが水電解運転である場合には、当該水電解運転の後に、終了準備燃料電池運転を所定時間実施してから可逆セルの運転を停止することを特徴としている。
【0009】
水電解運転を開始した直後は、本来水で満たされている電極部を構成する電極触媒層と集電体、とりわけ電極触媒層の微細孔のごく一部に、水電解で発生したガスが滞留していき、反応サイトへの水供給を阻害すると共にその部分は反応に寄与しなくなる。そのためこの現象が生じている間は性能が低下(入力電圧が上昇)していく。そしてこの過渡現象が収束し定常状態になった時点で性能が安定する。水電解の場合は、特に運転を開始した直後にこの現象がみられ、また性能が安定した後であっても局所的にごく僅かな割合で進行する可能性がある。この微細孔中に残留したガスは緻密な電極触媒層にあるため、水電解運転を停止して循環水を供給し続けても排出することは困難である。また水電解運転を停止して何もせず放置しておくと両極間でクロスリークが起こるため、ある程度のガスは触媒上で反応するが、完全に消費するには至らないばかりかクロスリークに伴う膜破損の危険性もある。特にガス抜け性の悪い電極を使用した場合には過渡現象が長時間にわたり続き、極端な場合には局所的な膜の分解や破損にまで至り、電極としての機能を完全に失ってしまうおそれがある。そのため水電解運転の連続運転時間が長くなるほど、また短時間運転であっても水電解運転の度にガスの滞留サイトが増加し、それに応じて性能が低下する。
【0010】
この点本発明によれば、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施するようにしているので、水電解運転時に電極部微細孔に滞留したガスを、燃料電池運転によって確実に消費させることができ、前記したようなリスクを負うことなく水電解の反応サイトを確実に回復させることができ、再度水電解運転を行う時の性能を最大限まで回復させることができる。また両モードに共通する長期運転に伴う劣化原因として、コンタミの混入によりイオン交換性能が低下することで生じる性能低下があるが、これに対しても、本発明のように交互に反対モードの運転をすることでプロトンの移動方向が逆になるため、それぞれのモードで運転中に混入したコンタミをそれが入ってきた方向に向けて容易に押し流すことができる。このとき、コンタミがより端部にある方が容易に取り除くことができるため、本発明のように交互に反対モードの運転を行うことが有効である。
【0011】
また本発明では可逆セルの運転自体を1時間以上停止する際、当該停止の前の運転モードが水電解運転である場合には、当該水電解運転の後に、終了準備燃料電池運転を所定時間実施してから可逆セルの運転を停止するようにしている。これによって、長時間の運転停止後、可逆セルの運転を再開する際に、当該再開が、水電解運転、燃料電池運転のいずれであっても、直ちに起動させることができる。
【0012】
すなわち、水電解運転を終了した状態で長時間停止(保管)すると、水電解運転を終了した状態では、セル内部基材が全て完全に濡れた状態になっているため、セル内部に残存した水(特に水素側)が保管中に性能低下を引き起こすことがあり、それが起きると性能回復が困難になる。また水電解運転で終了しセル内部基材が濡れた状態となっていると、次回起動する時の運転モードが燃料電池運転の場合には、起動前にセル内部を乾燥させる必要がある。乾燥ガスの飽和水蒸気分圧は温度の低下とともに低下する。これは温度が低いほど乾燥ガスが持ち去る(気化させる)ことのできる水分量が減少することを意味する。よって、セル温度が低いほど規定の状態までの乾燥(乾燥ガスがセル内部から一定量の水を気化させる)に時間を要する。ここで、実用上の乾燥ガス(例えば外気)中には必ずごく僅かにコンタミ成分(外気中の不純物:たとえばCa等)が含まれるため、乾燥時間が長いほど反応膜にコンタミ成分が蓄積し、それが原因で性能低下が発生する。また実用上、起動したい時にすぐに起動できないと使い勝手が非常に悪い。
【0013】
この点、本発明では、長時間停止前の水電解運転の後に、一旦「終了準備燃料電池運転」を所定時間実施してから可逆セルの運転を停止するようにしているので、セル内部基材(特に水素側)は基本的に濡れの無い状態であり、性能低下を引き起こす残留水がセル内部に存在しないため、水電解運転で終了して保管した場合に比べて性能低下を大幅に抑制できる。なお、燃料電池運転を終了した状態で保管した際には特段の問題は生じない。
また終了準備燃料電池運転とは、通常の需要側の負荷に応じる発電の為の燃料電池運転と、呼称上区別するために便宜的に用いたものであり、運転自体の内容は、通常の燃料電池運転と同じである。ただし、所定時間、たとえば5〜10分程度の運転で足り、通常の燃料電池運転と比べて極めて短い時間で済むものである。
【0014】
前記終了準備燃料電池運転を実施する前に、可逆セルの流路内に残留した電解水をセル内部から排出し、燃料電池運転時に酸化剤極となる側の反応ガス流路にのみ空気を供給し、セル内部基材を乾燥させる乾燥工程を実施するようにしてもよい。これによって、速やかに終了準備燃料電池運転を開始することができ、その結果、可逆セル自体の停止までのトータルの時間を短縮することができる。なお発明者らの知見によれば、酸化剤極となる側の反応ガス流路にのみ空気を供給した場合、酸化剤極側の水分は酸化剤極集電体から当該空気に伝達され、当該空気によって系外に排出される。一方燃料極側の水分については、まず燃料極集電体からMEA及び酸化剤側集電体を伝達して、最終的に当該空気に伝達され、当該空気によって系外に排出される。したがって、窒素ガスなどの不活性ガスを酸化剤極側及び燃料極側の両極の反応ガス流路に供給しなくとも、セル内部基材を好適に乾燥させることができる。本発明に用いる前記空気としては、もちろん大気中の空気をそのまま用いることができるほか、通常の空調機で減湿処理を行なったものを用いてもよい。好ましくは露点温度が20℃以下のものがよい。
なお流路内に残留した電解水をセル内部から排出するにあたっては、可逆セル内部の反応ガス流路に気体を供給して、流路内に残留した電解水をセル内部から排出するようにしてもよい。
【0015】
前記乾燥工程開始の際には、可逆セルの温度を70℃以上にしておくことが好ましい。飽和水蒸気分圧は70℃付近から急速に上昇するためである。なおここでいう可逆セルの温度が70℃以上とは、可逆セル内の集電体の温度が70℃以上を意味する。但し、実際には集電体の温度を測定するのは困難であるから、水電解運転時に電解水が流入する酸素極側の流路入口温度を測定し、当該流路入口温度が70℃以上になっていればよい。集電体の温度は、当該流路入口温度よりも高くなるからである。
【0016】
そしてこのように乾燥工程開始の際に可逆セルの温度を70℃以上にしておくことで、乾燥工程に要する時間を飛躍的に短縮することができる。可逆セルの温度を70℃以上にするには、たとえば水電解運転の運転温度を70℃以上にすることで達成できる。ただし装置環境や負荷の状況、あるいは装置特性等からそのように水電解運転の運転温度を70℃以上にできない場合には、たとえば可逆セル停止前の水電解運転の終了前に、可逆セルに通水する冷却水の流量を減じたり、または冷却水の温度を昇温したり、あるいはその双方を実施するなどして制御したり、可逆セル停止前の水電解装置運転の終了前に、可逆セルに供給する電流密度を高めて可逆セル自体の発熱量を増加させるようにしてもよい。
【0017】
前記した終了準備燃料電池運転は、下記の条件で行なうことが好ましい。すなわち、
水素側供給ガスの可逆セル温度における飽和水蒸気量:MH2−SAT[mol/s]
酸素側供給ガスの可逆セル温度における飽和水蒸気量:MO2−SAT[mol/s]
水素側供給ガス中の水蒸気量 :MH2[mol/s]
酸素側供給ガス中の水蒸気量 :MO2[mol/s]
反応生成水量:MH2O[mol/s]としたとき、
(MH2−SAT+MO2−SAT)−(MH2+MO2+MH2O)≦0の範囲で終了準備燃料電池運転するのがよい。これによって、可逆セルの膜や集電体の過度の乾燥による劣化を抑えることができる。
なおここでいう可逆セル温度とは、具体的には可逆セルにおける冷却水の入口温度である。
【0018】
さらに前記終了準備燃料電池運転終了後、可逆セルを停止する前に、可逆セル内を加圧し、その後可逆セル内に通ずる流路を閉鎖するようにしてもよい。これによって、温度降下に伴って外部空気が可逆セル内に侵入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水電解・燃料電池の双方の運転が可能な可逆セルにおいて、格別な制御、定格以上の電解電流、電流供給設備、ポンプの持続運転等を必要とせず、長期的な運転に伴う性能低下を最小限に抑えて高寿命化することができ、しかも長時間の運転停止後、可逆セルの運転を再開する際に、当該再開後の運転モードが、水電解運転、燃料電池運転のいずれであっても、直ちに起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態で用いた可逆セルの縦断面構成を模式的に示した説明図である。
【図2】図1の可逆セルの水平断面構成を模式的に示した説明図である。
【図3】図1の可逆セルの系統を模式的に示した説明図である。
【図4】図1の可逆セルを水電解運転の単一運転モードで繰り返し実施した際の入力電圧の変化を示すグラフである。
【図5】図1の可逆セルを燃料電池運転の単一運転モードで繰り返し実施した際の出力電圧の変化を示すグラフである。
【図6】図1の可逆セルにおいて、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施した際の入力電圧と出力電圧の各変化を示すグラフである。
【図7】図1の可逆セルにおいて、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施した際の入力電圧と出力電圧の運転回数に基づいた各変化を示すグラフである。
【図8】図1の可逆セルにおいて、保管前の運転モードと保管後水電解運転を開始した際の入力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態について説明する。図1は、可逆セル1の内部を模式的に示しており、図2は、この可逆セル1の水平断面を示している。なおこの可逆セル1は、発電、電解ユニットの最小単位である単セルを示している。この可逆セル1は、図2に示したように、最も外側に各々給・集電板2、3が配置されている。給・集電板2、3間の中心には、電極触媒層によって構成される2枚の電極部4a、4b間に、固体電解質材料によって構成されるイオン交換膜4cが配置されて、複合化した発電ユニットであるMEA4が構成されている。各電極部4a、4bの外側には、例えば多孔質の材料からなる集電体5、6が配置されている。本実施の形態においては、これらMEA4と集電体5、6とでセル内部基材が構成されている。電極部4aは、水電解運転時にはカソードとなり、電極部4bは、水電解運転時にはアノードとなる。
【0022】
集電体5と給・集電板2との間には空間Sが形成され、集電体6と給・集電板3との間には空間Sが形成されている。各空間S、S内には、各々断面が波型のセパレータ7が各々配置されている。そしてこの可逆セル1は水冷方式による冷却方法を採用しており、空間Sに配置されたセパレータ7によって、空間Sには、冷却水流路11と流路12が交互に形成されている。一方、空間Sに配置されたセパレータ7によって、空間Sにも、冷却水流路13と流路14が交互に形成されている。冷却水は、冷却水流路11とヒートポンプ介装の恒温水槽(図示せず)や冷却塔(図示せず)を循環し、可逆セル1の入り口で例えば60℃〜80℃を維持するように運転される。
【0023】
再び図1に戻ってさらに説明すると、流路12の両端部には、流通口12a、12bが形成され、流路14の両端部には、流通口14a、14bが形成されている。
【0024】
次にこのような構成を有する可逆セル1のガス系統、排出系統等について説明する。図3に示したように、流通口12aには、流路31が接続され、流通口14aには、流路41が接続され、流通口14bには、流路51が接続され、流通口12bには、流路61が各々接続されている。各流路31、41、51、61、ならびに後述するバイパス流路45は、たとえばステンレス鋼の配管によって構成される。
【0025】
流路31には、水電解運転時の純水貯蔵タンクとなるタンク32を介して、流路33、34が接続されている。流路33、34には、各々弁33a、34aが設けられている。
【0026】
流路41には、水電解運転時の純水貯蔵タンクとなるタンク42を介して、流路43、44が接続されている。流路43、44には、各々弁43a、44aが設けられている。また流路41と流路43との間には、タンク42をバイパスするバイパス流路45が接続され、バイパス流路45には弁45aが設けられている。流路43の端部には、水電解運転から燃料電池運転への運転切替時に、パージガスでありまた酸化剤としても作用する空気を供給するブロア46が設けられている。
【0027】
流路51には、弁51aが設けられており、また流路51とタンク42との間には流路52が接続され、流路52には、ポンプ53及び弁52aが設けられている。ポンプ53は、水電解運転時にタンク42に貯蔵してある純水を可逆セル1に供給するものである。
【0028】
流路61には、弁61aが設けられている。なお流路61とタンク32との間に流路(図示せず)を設け、この流路に、ポンプ、弁(いずれも図示せず)を設けてもよい。これによって、万が一水電解運転時において燃料極側の水が十分ではない場合に、これらポンプ、弁(いずれも図示せず)を用いて燃料極側にも適宜水を供給しておくことで、膜の乾燥を防止して、膜の破損を未然に防ぐことができる。
【0029】
なお、本図では水素の供給源は明示していないが、水電解運転によって得られた水素を、高圧タンクや水素吸蔵合金に貯蔵したものや、化石燃料を改質したもの等の供給源を別途設置することができる。
【0030】
前記した各弁33a、34a、43a、44a、45a、51a、52a、61aは、いずれも制御装置71によって制御される。またこの制御装置71は、水電解運転時に可逆セル1に水の電気分解をするための電流を供給したり、燃料電池運転時に需要側に電力を供給する電源設備72も制御する。
【0031】
次にこのような主たる構成を有する可逆セル1の運転方法について説明する。
(燃料電池運転時)
弁33a、43a、51a、61aは開放され、弁34a、44a、45a、52aは閉鎖される。そして流路33へ燃料(水素ガス)を導入し、タンク32において加湿を行った後に流路31、流通口12aを通じて可逆セル1に導入する。また流路43へ酸化剤(酸素ガスまたは空気)を導入し、タンク42において加湿を行った後に流通口14aを通じて可逆セル1に導入する。これによって可逆セル1のセル内部基材では、発電反応が起こり、電極部4aから電源設備72を通じて電極部4bへと電子が流れ、電流が発生する。
【0032】
なお発電反応においては外部の負荷に応じた量のガスが消費され、余剰の燃料(水素ガス)は、流通口12b、流路61を介して排出され、余剰の酸化剤(酸素ガスまたは空気)は、流通口14b、流路51を介して排出される。図1における太矢印は、その場合の反応ガスの流れを示している。
【0033】
(水電解運転時)
弁33a、43a、51a、45a、61aは閉鎖され、弁34a、44a、52aは開放される。そしてタンク42に貯蔵した純水がポンプ53で吸込まれ、流路51、流通口14bを通じて可逆セル1内部に導入される。一方、電源設備72からは、集電体5、6に与える電流が供給され(電子は集電体6→電源設備72→集電体5に流れる)、図1に示した流路14内の水は、電気分解され、供給された電流に応じた量の酸素と水素が発生する。
【0034】
そしてかかる水電解運転において発生した水素は、流通口12aを介して流路31からタンク32へと流れ、タンク32において気液分離処理を行なった後、流路34を通じて外部へと排出される。一方水電解運転において発生した酸素は、流通口14aを介して流路41からタンク42へと流れ、タンク42において気液分離処理を行なった後、流路44を通じて外部へと排出される。なおこれら気液分離処理を行なった後の、純水素、純酸素は、別途設ける燃料貯蔵設備、酸化剤貯蔵設備(いずれも図示せず)に貯蔵しておくことで、次の燃料電池運転時の燃料、酸化剤として各々用いることができる。
【0035】
なお前記した構成の可逆セル1においては、燃料電池時の酸化剤極となる電極部4bの基材を水電解の運転状態に耐えられる仕様にする必要があるが、たとえば特開2004−134134号公報や、特開2007−12315号公報に開示されているように、白金電極触媒に少量のイリジウムを混入して基材の撥水性を調整し、集電体とセパレータをPtで鍍金すればよい。
【0036】
前記した可逆セル1は、このようにして水電解運転と燃料電池運転との双方を任意に実施することが可能である。したがって、たとえば水電解運転→水電解運転→水電解運転というように、水電解運転のみを断続的に実施することも可能であり、逆に燃料電池運転→燃料電池運転→燃料電池運転というように、インターバルをおいて燃料電池運転のみを断続的に実施することも可能である。しかしながらそのように単一のモード運転のみを実施すると、既述したように性能の劣化が次第に顕著になる。
【0037】
実際に発明者が検証したところ、たとえば水電解運転のみを断続的に実施した場合、図4に示したような結果が得られた。図4は水電解運転の単一モードで繰返し運転したときの性能経時変化を示し、横軸は運転時間、縦軸は水電解に必要な入力電圧(v)を示している。なお電流密度は、1.0A/cmである。これによれば、運転初期にある程度性能が低下し(すなわち入力電圧が高くなり)、その後は緩やかに低下していく。そして一度運転を停止して再度運転を再開すると、ある程度性能は回復するが初期の性能までは回復せず、運転の度に性能は徐々に低下していく。ここでガス・水抜け性のよい電極構造を採用した場合には、運転初期に性能が低下した後は殆ど性能低下が起こらず、毎回同じような経時変化を示すが長期的に見れば徐々に低下する。
【0038】
図6は燃料電池の単一モードで繰返し運転したときの性能経時変化を示し、横軸は運転時間、燃料電池の出力電圧(v)を示している。なお電流密度は、0.6A/cmである。この場合も、やはり運転初期にある程度性能が低下し、その後は緩やかに低下していくことがわかる。そして一度運転を停止して再度運転を再開すると、ある程度性能は回復するものの初期の性能までには回復せず、運転の度に性能は徐々に低下していく。ここでもガス・水抜け性のよい電極構造を採用した場合には、運転初期に性能が低下した後は殆ど性能低下が起こらず、毎回同じような経時変化を示すが、やはり長期的に見れば徐々に低下する。
【0039】
本発明に従えば、このような構成の可逆セル1を運転するにあたり、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施することになる。それによって、前記した図4、図5でみられたような、性能低下を抑えることができる。実際に発明者が検証したところ、図6に示した結果が得られた。
【0040】
図6は、水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施(以降、単に「交互運転」と言うことがある。)した際の、水電解入力電圧(v)と燃料電池の出力電圧(v)を示しており、左側の縦軸に水電解入力電圧、右側の縦軸に燃料電池の出力電圧をとり、図6のグラフ中、上半分は水電解入力電圧、下半分は燃料電池の出力電圧の各経時変化を記載したものである。なお水電解運転時の電流密度は、1.0A/cm、燃料電池運転時の電流密度は、0.6A/cmである。
【0041】
またそのように水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施する際は、電流値の低い燃料電池運転をより長く稼動させて、燃料電池運転と水電解運転のトータル負荷を等しくする運転をすることが望ましい。
【0042】
図6に示すように、水電解運転と燃料電池運転とを交互に行うことで、単一モード運転に見られたような運転する度に起きる性能低下は無くなり、ガス・水抜け性の悪い電極構造を採用した場合においても長期間、初期性能近傍を維持することが確認できた。
【0043】
さらに図7は交互運転の繰り返し行ったときの性能変化をまとめた結果を示し、図のグラフ中、上側のグラフは水電解入力電圧、下側のグラフは燃料電池出力電圧を示し、運転回数を重ねていった場合の、これらの変化を示している。発明者の知見によれば、交互運転をすることで、今回の例では性能低下速度を単一モードのときよりも35%以上低減した。但し、ここに示した効果割合は一例であり、交互運転すれば、既述したように、プロトンの移動方向が逆になり、各モードで運転中に混入したコンタミをそれが入ってきた方向に向けて容易に押し流すことができから、単一モードに対する性能低下の低減効果は、運転時間が長くなり切替回数が増えるほど更なる効果が期待できる。
【0044】
また劣化原因の1つとして、電極触媒層の減肉化があるが、この対策としては、電極触媒層を厚くして耐久性を確保する方法が考えられる。そうした場合、単一モード運転ではガス・水抜け性が悪くなるため反応サイトの減少、つまり性能低下が顕著に発生する(図4、5と同様の傾向が発生)。しかしながら本発明のように交互運転を実施することで、有効な反応サイトの減少を限定的かつ一時的なものに抑え続けることができ、耐久性向上が図れる。
【0045】
このように可逆セル1を交互運転することで、水電解や燃料電池の性能を長期間にわたり維持することができる。本効果を最大限利用できる理想的な利用・運用形態は、水電解運転と燃料電池運転を1台で切替えて行う可逆セルであり、通常の運用(定期的に運転を切替)をしているだけで主要な劣化加速要因の発生を未然に防止でき、初期近傍の性能を長期間にわたり維持できる。さらに、その切替周期が短いほど効果的で、日単位までの切替が推奨されるが、周単位の切替であっても本発明は実施可能である。具体的な利用方法としては、両モード間の運転を前提としているシステムへの導入が最適である。例えば夜間の電力を用いて水電解運転により水素を製造しそれを貯蔵しておき、日中の電力需要のピーク時に貯蔵した水素で燃料電池運転を行うといった電力負荷平準化システムへの適用が提案できる。さらにまた、自然エネルギー由来の電気(たとえば太陽電池、風力発電など)により水電解を行い、自然エネルギーによる発電量が不足したときに、両運転モードのトータル負荷が同じになる範囲で、燃料電池運転に切替えて不足分を補う運用するといった方法が挙げられる。
【0046】
ところでそのようにして水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施し、通常の切り替えインターバルよりも長い期間、たとえば1時間以上運転を停止する場合(以降、単に「保管」ということがある)、最後の運転が水電解運転である場合には、水電解運転の後に、終了準備燃料電池運転を所定時間実施してから可逆セルの運転を停止することがよい。これによって、次回どちらのモードで起動しても性能低下を生じることはない。
【0047】
その際の終了準備燃料電池運転の運転条件としては、イオン交換膜4cを適度な湿潤状態にし、コンタミをイオン交換膜4cから押し流すために高電流密度での飽和加湿運転が好ましい。発明者の知見では、電流密度0.6A/cm以上で飽和加湿運転を5〜10分実行すればこの問題を抑制でき、図8に示したように、保管後でも保管前と同等の性能を維持できることを確認した。なお同図中、WEは水電解運転、FCは燃料電池運転を表している。
【0048】
なお、終了準備燃料電池運転時に低加湿運転をするとイオン交換膜4cのさらなる乾燥や、反応生成水によるコンタミの排出効果が見込めないため、逆に劣化の加速を招く。ここでいう低加湿運転とは、燃料電池運転中に可逆セル1の水素側、酸素側に供給される反応ガスが燃料電池発電に伴い発生する生成水を完全に気化させてしまう運転状態を指し、簡易的には以下の各値を算出することで判断できる。
【0049】
水素側供給ガスのセル温度(図2中の流路11の入口温度)における飽和水蒸気量:MH2−SAT[mol/s]
酸素側供給ガスのセル温度(図2中の流路13の入口温度)における飽和水蒸気量:MO2−SAT[mol/s]
水素側供給ガス中の水蒸気量 :MH2[mol/s]
酸素側供給ガス中の水蒸気量 :MO2[mol/s]
反応生成水量:MH2O[mol/s]
としたとき、以下の不等式が成立する場合は、低加湿運転である(なお通常、流路11、13に供給される冷却水は同一の冷却水源から供給されるので、この場合、流路11の入口温度=流路13の入口温度である)。
(MH2−SAT+MO2−SAT)−(MH2+MO2+MH2O)>0
したがって、上記不等式を満たさない条件で、終了準備燃料電池運転を行なうのがよい。すなわち、
(MH2−SAT+MO2−SAT)−(MH2+MO2+MH2O)≦0を満たす範囲で、終了準備燃料電池運転を行なうことがよい。これによって、イオン交換膜4cをはじめとするMEA4や集電体5、6の過度の乾燥による劣化を抑えることができる。
【0050】
ところで、そのように終了直前運転モードが水電解運転の場合には、終了準備燃料電池運転を実施するのがよいが、終了準備燃料電池運転といえども、運転内容自体は燃料電池運転と変わらないから、可逆セル1内部の基材を構成するMEA4の電極部4a、4bや集電体5、6、とりわけ集電体5、6が濡れたままでは、終了準備燃料電池運転を直ちに実施できない事態も想定できる。そこで水電解運転終了後、終了準備燃料電池運転開始前に、可逆セル1内部の反応ガス流路に気体を供給して、流路内に残留した電解水をセル内部から排出し、その後、燃料電池運転時に酸化剤極となる側の反応ガス流路にのみ空気を供給し、セル内部基材を乾燥させる乾燥工程を実施するようにしてもよい。
【0051】
具体的には、まず水電解運転が終了すると、弁33a、43a、51a、61aのみが開放され、他の弁は全て閉鎖する。そして電源設備72の回路を遮断した状態で、可逆セル1に残留した水を排出するために、燃料(水素ガス)を流路31から流通口12aを通じて可逆セル1内に導入し、酸化剤または空気を流路41から流通口14aを通じて可逆セル1内に導入する。すなわちこれらのガスによる圧力差で流路内の水を系外に押し出すことに排出する。この時間は、数秒程度であり、またその際の流量は、例えば特開2007−115588号公報に開示された方法を採用して決定してもよい。前記した排出が完了した後は、電源設備72の回路の遮断を解除する。なおこのようなパージ操作は、必ずしも実行しなければならないというプロセスではなく、当該プロセスを省略して後述のブロア46の稼動による乾燥を行なってもよいが、当該プロセスを実行すると、水電解運転から燃料電池運転への切り替えがより円滑に行なわれる。
【0052】
次に弁33a、43aを閉鎖し、弁45aを開放し、ブロア46を起動して可逆セル1の内部基材の乾燥を、酸化剤極側のみから行う。乾燥時間は、セル内部基材からパージガスに伝達した水分量が、あらかじめ求めておいた所定の値(=セル内部基材が燃料電池運転可能となる乾燥状態に達するまでの水分量)となる時間を制御装置71の演算部にて算出する。制御装置71の演算部(図示せず)では、あらかじめ求めておいたセル内部基材とブロア46によって供給される空気間の物質伝達率とそのときの乾燥条件から、セル内部の物質移動計算を行い、乾燥所要時間(規定の時間)を算出する。
【0053】
そして前記乾燥所要時間の間乾燥したら、弁45aを閉鎖し、弁33a、43aを開放することで、可逆セル1に反応ガス(燃料、酸化剤)を供給し、終了準備燃料電池運転を開始する。このようなプロセスを経て終了準備燃料電池運転を実施することで、終了直前の水電解運転から終了準備燃料電池運転までの時間を保管までの時間を少なくすることが可能である。
【0054】
なお前記乾燥工程開始の際には、可逆セル1の温度を70℃以上にしておくことが好ましい。これを図1に即して言えば、本来的には、少なくとも集電体6が70℃以上になっていればよい。但し、集電体6の温度を測定するのは実際問題として困難であるから、流通口14bの温度が70℃以上になっていればよい。また可逆セル1の温度(流通口14bの温度)を70℃以上にしておくにあたっては、可逆セル1停止前の水電解運転の終了前に、可逆セル1に通水する冷却水、すなわち冷却水流路11、13を流れる水の流量を制御して実現してもよい。流量を絞れば可逆セル1の温度は上昇する。もちろん冷却水流路11、13を流れる水の温度を制御してもよい。また可逆セル1停止前の水電解運転の終了前に、可逆セル1に供給する電源設備72からの電流密度を高めて可逆セル1自体の発熱量を増加させるようにしてもよい。
【0055】
なお終了準備燃料電池運転を終えたあと、系内をブロア46やファン(図示せず)で加圧し、次いで空気系の弁33a、61a、43a、51aを閉鎖することで、系内が室温に温度降下した際の系内減圧を防止することができ、これによって、温度降下に伴って外部空気が可逆セル内に侵入することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、固体高分子形の水電解装置と燃料電池のセルを一体化した可逆セルに有用なものである。
【符号の説明】
【0057】
1 可逆セル
2、3 給・集電板
4 MEA
4a、4b 電極部
4c イオン交換膜
5、6 集電体
7 セパレータ
11,13 冷却水流路
12,14 流路(可逆セル内)
12a,12b,14a,14b 流通口
31、41、51、61 流路(可逆セル外)
32、42 タンク
33a、34a、43a、44a、45a、51a、52a、61a 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化して、水電解運転と燃料電池運転との運転モードの切り替え可能な可逆セルの運転方法であって、
水電解運転と燃料電池運転とを交互に実施するとともに、
当該可逆セルの運転自体を1時間以上停止する際、当該停止の前の運転モードが水電解運転である場合には、当該水電解運転の後に、終了準備燃料電池運転を所定時間実施してから可逆セルの運転を停止することを特徴とする、可逆セルの運転方法。
【請求項2】
前記終了準備燃料電池運転を実施する前に、流路内に残留した電解水をセル内部から排出し、その後燃料電池運転時に酸化剤極となる側の反応ガス流路にのみ空気を供給し、セル内部基材を乾燥させる乾燥工程を実施することを特徴とする、請求項1に記載の可逆セルの運転方法。
【請求項3】
前記排出は、可逆セル内部の反応ガス流路に気体を供給することによって行なうことを特徴とする、請求項2に記載の可逆セルの運転方法。
【請求項4】
可逆セル停止前の水電解運転の終了前に、可逆セルに通水する冷却水の少なくとも流量または温度を制御して、前記乾燥工程開始の際には、前記可逆セルの温度を70℃以上にしておくことを特徴とする、請求項2又は3に記載の可逆セルの運転方法。
【請求項5】
可逆セル停止前の水電解運転の終了前に、可逆セルに供給する電流密度を高めて可逆セル自体の発熱量を増加させて、前記乾燥工程開始の際には、前記可逆セルの温度を70℃以上にしておくことを特徴とする、請求項2又は3に記載の可逆セルの運転方法。
【請求項6】
前記終了準備燃料電池運転は、下記の条件で行なうことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の可逆セルの運転方法。
水素側供給ガスの可逆セル温度における飽和水蒸気量:MH2−SAT[mol/s]
酸素側供給ガスの可逆セル温度における飽和水蒸気量:MO2−SAT[mol/s]
水素側供給ガス中の水蒸気量 :MH2[mol/s]
酸素側供給ガス中の水蒸気量 :MO2[mol/s]
反応生成水量:MH2O[mol/s]としたとき、
(MH2−SAT+MO2−SAT)−(MH2+MO2+MH2O)≦0
【請求項7】
前記終了準備燃料電池運転終了後、可逆セルを停止する前に、可逆セル内を加圧し、その後可逆セル内に通ずる流路を閉鎖することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の可逆セルの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−282768(P2010−282768A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133590(P2009−133590)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19・20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構エネルギー使用合理化技術戦略的開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【Fターム(参考)】