説明

可逆性感熱記録媒体およびその製造方法並びに製造用転写セット

【課題】感熱記録層の特性劣化や耐久性低下がなく、インクジェット印刷によるインク受容層と書き換え可能な可逆性感熱記録層を併有する可逆性感熱記録媒体とする
ことである。
【解決手段】離型性フィルム1に保護層2および可逆性感熱記録層7を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなる(インクジェット)インク受容層3を重ねて一体化し、このインク受容層3の表面にはインクジェット印刷4を施してなる転写シート9とし、別途被転写材である基材シート6を設けた可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェット印刷による固定画像を表示すると共に書き換え可能な可視
画像をも表示できるようにした磁気カード、ICカード等の可逆性感熱記録媒体およびその製造方法並びに製造用転写セットに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カード、ICカード等の一般的なプラスチックカードの構成は、コアシートと呼ばれる白色樹脂シートに印刷を施し、印刷保護のため、両面にはオーバーシートと呼ばれる透明樹脂シートを被せ、熱プレスで積層一体化されたものであることが知られている。
【0003】
このようなプラスチックカードは、印刷、打抜加工、エンボスなどの加工適性に優れるという利点があり、前記コアシートの材料としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂(以下、PVCと略記する。)、非晶質ポリエステル樹脂(以下、PETGと略記する。)、ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略記する。)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(以下、ABS樹脂と略記する。)等が使用されている。
【0004】
近年のクレジットカード、メンバーズカード、社員証などのプラスチックカードには、所有者以外の不正使用を防止するために、顔写真等の所有者の識別認証となる画像をフルカラーで印刷する視認性も要求されている。特に個人情報を掲載するための印刷は、顔写真に代表されるような高解像性で高階調性が要求されている。
【0005】
また、識別認証となるような画像ばかりではなく、透明性または発色性を温度によって可逆的に変化させることにより必要に応じて可視画像を書き換えて必要な情報を提示したり、または必要ならば消去も可能な感熱記録材料が提案されており、たとえば、高分子樹脂に結晶性の有機低分子化合物を分散させたものがあり(特許文献1)、また高分子樹脂にロイコ染料と電子受容性化合物である顕色剤を分散させた感熱記録材料(特許文献2)が開発されている。
【0006】
そして、書き換え可能な感熱記録と共に、昇華転写印刷よる固定画像を形成できる昇華転写印刷受理層を有する転写シートも知られており、転写シートを用いて作製されたカード状の情報記録媒体も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−163094号公報
【特許文献2】特開平2−188293号公報
【特許文献3】特開2002−331798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の転写シートは、昇華転写印刷受理層と可逆性感熱記録層が予め隣接して設けられている構造であり、昇華転写印刷受理層を可逆性感熱記録層の上に可逆性感熱記録層を溶解する有機溶剤を用いる印刷法またコーティング法等により直接積層する場合には、感熱記録層の特性が劣化するという問題が生じていた。
【0009】
また、このような感熱記録層は、サーマルヘッド等の接触により画像が形成されたり消去されたりするものであるため、接触時の加熱やせん断によって可逆性感熱記録層や印刷受理層が変形しやすく、繰り返して使用したときの耐久性に問題を有していた。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、感熱記録層の特性の劣化や繰り返し使用した際の耐久性低下という問題がないように、昇華転写印刷に代わるインクジェット印刷による固定画像のインク受容層と、書き換え可能な可視記録画像を形成できる可逆性感熱記録層とを併有するシートによる優れた可逆性感熱記録媒体とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明においては、離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を重ねて一体化し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施してなる転写シートと、被転写材である基材シートとからなる可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットとしてもよい。
【0012】
上記した構成によるこの発明の可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットは、転写により製造される可逆性感熱記録媒体が、可逆性感熱記録媒体の印刷面の表面に保護層があるため、「こすれ」による印刷の劣化を防止することができる。
【0013】
そして、この可逆性感熱記録媒体を以下の方法で製造することにより、インク受容層の形成時に可逆性感熱記録層の特性が阻害されない。
【0014】
すなわち、離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を、前記可逆性感熱記録層が不溶な溶剤を用いたコーティングにより形成し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法を採用したのである。
【0015】
または、離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を無溶剤コーティングにより形成し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法とするのである。
【0016】
または、離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を別途フィルム化して形成し、このフィルムを前記可逆性感熱記録層の上に貼付し、当該インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法としたのである。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットを、離型性フィルムに保護層、インクジェット印刷を施したインク受容層からなる転写シートと、基材シート上に可逆性感熱記録層を設けた被転写材で構成したので、感熱記録層の特性の劣化や繰り返し使用した際の耐久性低下という問題がなく、しかも固定画像のインク受容層が可逆性感熱記録層の機能を阻害しないような優れた可逆性感熱記録媒体またはそれを製造できる転写セットとなる利点がある。
【0018】
また、離型性フィルムに保護層、可逆性感熱記録層、インクジェット印刷を施したインクジェットインク受容層を重ねた転写シートと、被転写材である基材シートとからなる可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットに係る発明では、「こすれ」による印刷の劣化を防止できる利点がある。
【0019】
また、この可逆性感熱記録媒体におけるインクジェットインク受容層を所定の方法で形成することにより、「こすれ」による印刷の劣化を防止できる可逆性感熱記録媒体を製造できると共に、インク受容層の形成時に可逆性感熱記録層の特性が阻害されないという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】参考例の転写シートおよび被転写材の転写工程を示す説明図
【図2】第1実施形態の転写シートおよび被転写材の転写工程を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施形態を以下に図面を参照しながら説明する。
図2に示すように、第1実施形態は、離型性フィルム1に保護層2および可逆性感熱記録層7を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなる(インクジェット)インク受容層3を重ねて一体化し、このインク受容層3の表面にはインクジェット印刷4を施してなる転写シート9とし、別途被転写材である基材シート6を設けた可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットである。
【0022】
これらの発明に用いる離型性フィルム1は、保護層2を直接積層することができるものであり、かつ離型性があればよく、適当な樹脂を選択的に採用すればよい。そのような離型性フィルムとしては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)フィルム、ポリエーテルニトリル(PEN)フィルムなどが挙げられる。
【0023】
離型性フィルムの厚みは、10μm〜200μmであるものが好ましく、さらにはハンドリング性や経済性を考慮すると、20μm〜100μmのものがより好ましい。
【0024】
次に、離型性フィルムの上に積層する保護層の材料としては、外部との接触を考慮して耐殺傷性、耐汚染性などに優れた材料が好ましい。
このような保護層2の材料として特に好ましいものは、紫外線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂である。具体的にはウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマーからなる主成分に各種アクリレートモノマー、その他添加剤を適宜混合して、取り扱い性、作業性、硬化性などを調整したものが使用できる。紫外線硬化性樹脂の場合は、ベンゾイン系、アセトフェノン系、パーオキシド系等の光重合開始剤を適量添加して硬化重合させる。
【0025】
保護層は、コーティング法や印刷法で塗工され、使用する材料の種類に応じて変えればよいが、例えば層厚は、0.5μm〜20μmが好ましく、さらには2μm〜10μmがより好ましい。厚さが薄すぎると、十分な保護効果が得られず、厚すぎると印字消去が困難になることがあるからである。
【0026】
次に保護層2または可逆性感熱記録層7の上に積層するインク受容層3について説明する。インク受容層は、(1)インク受容層材料を溶剤に溶解もしくは分散させた塗液を保護層の上にコーティングしてインク受容層を設ける方法や、(2)押し出しコーティング法や押し出しラミネート法を用い、インク受容層をフィルム化しておき、保護層と貼り合わせる方法や、(3)インク受容層を保護層に無溶剤コーティング法で設ける方法がある。
【0027】
(1)の場合、可逆性感熱記録層が溶解しない溶剤として、水やアルコールもしくは水とアルコールの混合液を用い、これらの溶剤にインク受容層材料としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド系共重合体、シリカ等の多孔質無機微粒子等を単独もしくは混合して溶解または分散させて塗液を作製し、可逆性感熱記録層にコーティングする。
【0028】
インク受容層の材料は単独もしくは混合してよく、ここに挙げた以外の材料でもよく限定されるものではない。これらの樹脂は熱、紫外線、電子線照射により架橋されてもよい。また、ホットメルト接着性を有する樹脂を必要量添加してもよい。
【0029】
(2)の場合、押し出しコーティング法や押し出しラミネート法を用い、離型性のあるフィルムのインク受容層材料をコーティングまたはラミネートし、離型フィルム付きのインク受容層フィルムを成形する。そして、得られたインク受容層を可逆性感熱記録層に加熱加圧して貼り合わせた後、離型性フィルムを剥がしてインク受容層を可逆性感熱記録層の上に設けることができる。
【0030】
ここで用いられるインク受容層の材料には、ポリビニルアルコールおよびその重合体やポリエチレンオキシド系共重合体、シリカ等の多孔質無機微粒子等があり、これらを単独もしくは複数を混合して用いることができる。なお、ここで挙げた以外の材料でもよく、限定されるものではない。樹脂の場合には、熱、紫外線、電子線照射により架橋されてもよい。また、ホットメルト接着性を有する樹脂を必要量だけ添加してもよい。
【0031】
また、ここで用いられる離型性フィルムには、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)フィルム等を例示できる。離型性フィルムの厚さは、10μmから200μmが好ましく、ハンドリング性、経済性を考慮すると25μmから125μmがさらに好ましい。
【0032】
(3)の場合、押し出しコーティング法を用い、可逆性感熱記録層に対して直接にインク受容層材料をコーティングしてインク受容層を成形する。ここで用いられるインク受容層材料としては、ポリビニルアルコールおよびその重合体やポリエチレンオキシド系共重合体、シリカ等の多孔質無機微粒子等を例示することができ、これらの単独もしくは複数を混合して用いることもできる。これらの樹脂は、熱、紫外線、電子線照射により架橋されていてもよい。また、ホットメルト接着性を有する樹脂を必要量だけ添加してもよい。
【0033】
(1)、(2)、(3)についてインク受容層の厚さは、いずれも用いられる材料に応じて異なるが、インク受理性や印刷品位に考慮して2μmから30μmが好ましく、5μmから20μmがさらに好ましい。
【0034】
ここでいうインク受容層は、インクジェットプリンタから吐出されたインクそのものを吸収するか、もしくはインクの溶媒を吸収する層をいい、水系インクでは親水性樹脂を用いたインク受容層とする。
【0035】
インク吸収原理としては、多孔質の無機微粒子を親水性樹脂のバインダーで固めた空隙型インク受容層と、吸水性のある樹脂を積層し、樹脂の膨潤によりインクを吸収する膨潤型インク受容層が一般的である。膨潤型インク受容層においては、充分なインク吸収性を有する適当な高親水性の樹脂が無いので、近年では耐水性の問題や吸収性の問題で空隙型のインク受容層が代表的なものである。
【0036】
なお、これらのインク受容層は、インク受容性(インクジェット印刷適性)だけでなく、可逆性感熱記録層と基材シートとの接着性も必要なものであり、この点も考慮してインク受容層の材質を選定する。
【0037】
以上のように構成した転写シートでは、予めインク受容層の表面にインクジェット印刷を施した後、基材シート上に可逆性感熱記録層を設けた被転写材に転写することにより、可逆性感熱記録層の記録特性を劣化させることなく保護層を積層一体化することができる。これにより、可逆性感熱記録媒体の記録を書き換える際、サーマルヘッドの接触による印刷受理層や可逆性感熱記録層の摩耗や損傷を防止できる。
【0038】
次に可逆性感熱記録層について説明する。可視化できる可逆性感熱記録層として、温度により透明性が変化するものと発色性が変化するものがあり、前者は高分子/低分子タイプであり、後者はロイコ染料タイプである。
【0039】
高分子/低分子タイプの可逆性感熱記録層は、高分子樹脂母材に結晶性の有機低分子化合物を直径が0.1μm〜2.0μm程度に分散させ、熱処理によって融解また結晶化させるものである。使用される高分子樹脂母材としては、ポリ塩化ビニル,塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体,塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体,塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体,その他の酢酸ビニル化合物,塩化ビニル系共重合体,ポリ塩化ビニリデン,塩化ビニリデン共重合体,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,アクリル樹脂,ポリスチレン樹脂,AS樹脂,ABS樹脂等で、透明なアモルファス樹脂が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
【0040】
また、使用される結晶性の有機低分子化合物としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪族二塩基酸、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族エーテル、脂肪族アルコールおよびその誘導体からなる結晶性低分子化合物が挙げられ、それらを単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
【0041】
これら化合物の融点は、50〜150℃のものが望ましい。特に炭素数12以上の脂肪酸エステルと炭素数10以上の脂肪族二塩基酸を併用する組み合わせが良好である。炭素数12以上の脂肪酸エステルの例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチル、リグノセリン酸ステアリル、リグノセリン酸ベヘニルがある。炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の例としては、セバシン酸、ドデカン2酸、テトラデカン2酸、エイコサン2酸が挙げられる。
【0042】
一方、ロイコ染料タイプは高分子樹脂母材にロイコ染料(電子供与性呈色化合物)と電子受容性化合物を分散させ、熱処理後の冷却速度を調整することによって、発色消色させるものであり、使用される高分子樹脂母材には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、その他の酢酸ビニル化合物、塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等、透明なアモルファス樹脂が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
【0043】
また、使用されるロイコ染料(電子供与性呈色化合物)には、クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3、3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等のフタリド化合物、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチルイソペンチルアミノ)フルオラン、3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ベンジルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルラン、3−メチルプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオランなどのフルオラン化合物があげられる。これらの化合物は分子構造中にラクトン環部分をもち、そのラクトン環に開環・閉環により発・消色する。
【0044】
また、使用される電子受容性化合物としては、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩、スルホン酸、スルホン酸塩類が挙げられ、具体的にはドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等。フェノール化合物としては4′−ヒドロキシ−4−オクタデシルベンズアニリド、N−オクタデシル−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N′−オクタデシル尿素、4−ヒドロキシフェニルプロピオノ−ベヘニルヒドラジドなどがあげられる。
【0045】
これらの材料で可逆性感熱記録層を形成するには、通常、コーティング法や印刷法等で塗工され、塗膜の厚さは、好ましくは1μm〜25μmであり、より好ましくは5μm〜15μmである。
【0046】
透明性が変化する高分子/低分子タイプにおいては、画像の視認性を向上させるために可逆性感熱記録層を塗工する基材シート(オーバーシート)に着色層または光反射層を設けることが好ましい。
【0047】
光反射層を設ける場合には、アルミニウムやスズなどの蒸着箔を貼り合わせた層、またはアルミニウム粉などを混ぜた光反射性塗料の塗布層または蒸着層からなる層を設けることが好ましい。なお、色、光沢、コスト、汎用性などの面からアルミニウムの蒸着膜が適当であり、なお、ロイコ染料タイプの場合にも、同様に着色層や光反射層を設けることができる。
【0048】
金属蒸着層を形成する方法として真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着法などの周知の方法を選択的に採用することができる。光反射層の厚さは金属蒸着膜のものは数百オングストロームであるが、可逆性感熱記録層に形成する画像の色、光沢、製造コスト、強度、平面性などを考慮して、適宜決定すればよい。
【0049】
次にサーマルヘッド等の接触式の方法により画像が形成消去による繰り返し耐久性低下防止について説明する。
通常、可逆性感熱記録層への印字消去はサーマルヘッドやヒーターバーで記録層に接触させながら行うため、各ヘッドが加熱されたまま圧力、せん断力を記録層に負荷するので記録層が物理的に破壊されてしまう。特にICカードは、高価なICチップの寿命よりも可逆性感熱記録材料の寿命が遙かに短くなるから、可逆性感熱記録材料の寿命がカード自身の寿命となって経済的に不合理である。
【0050】
そこで、繰り返し耐久性を向上させるためには非接触方式での記録を行うことが好ましい。これは可逆性感熱記録層に隣接する層に光を熱に変換するための光熱変換層を設け、この光熱変換層に対して半導体レーザを照射し、印字消去する方式である。
【0051】
光熱変換層には光熱変換物質を含有させる。使用される光熱変換物質として、たとえば赤外線吸収色素が挙げられ、使用する半導体レーザ光の発振波長付近に吸収ピークを持つものが選択される。一般には波長100nm〜1000nm、好ましくは700nm〜900nmの半導体レーザを使用することができ、赤外線吸収色素としては、かかる波長領域に吸収ピークを有するシアニン系色素、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素が好ましく用いられる。これらの中ではフタロシアニン系色素やナフタロシアニン系色素が好ましい。構造的に熱や紫外線による分解等の劣化に対して耐久性があるので、リライト回数の向上を図ることができるからである。耐候性、耐熱性等の化学的安定性の見地からは特に、各種金属と錯体を形成しているものが好ましい。
【0052】
光熱変換層を構成する樹脂は、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂であり、これらを単独もしくは混合して塗工することもできる。また、ここに挙げた以外の樹脂でもよく限定されるものではない。これらの樹脂は熱、紫外線、電子線照射により架橋されてもよい。
【0053】
特にイソシアネート化合物によって架橋された非塩素系樹脂を主成分とするものが好ましい。透明で製膜性が良好なものが好ましく、さらに耐熱性に優れ、分解せず、また黄変しないのものが、より好ましい。
たとえば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等の非塩素系樹脂が挙げられる。非塩素系樹脂が用いられる理由は塩素系樹脂を用いると、熱分解を起こして黄変したり、脱塩素と赤外吸収色素が反応する等の不具合を生じ、耐熱性、耐候性、保存安定性を低下させるからである。また、黄変した場合には可視画像の視認性が低下し、表示機能が低下する。イソシアネート化合物によって熱架橋させ、3 次元硬化させると、高温時の弾性率が向上して変形を抑えることができ、耐久性が向上する。
【0054】
これらの光熱変換層は、コーティング法や印刷法等で塗工することができ、塗膜の厚みは、好ましくは0.1μm〜10μmで、より好ましくは0.5μm〜5μmである。
【0055】
また、上述した以外にも光熱変換物質を可逆性感熱記録層の含有させる方法もある。
可逆性感熱記録層と光熱変換物質に赤外線吸収色素を用いた光熱変換層は、耐候性に弱く、紫外線の照射により機能が劣化してしまう。そのため、保護層または可逆性感熱記録層と光熱変換層の間に紫外線を吸収する紫外線吸収層があることが好ましい。
【0056】
この紫外線吸収層は有機または無機の紫外線吸収剤を透明性のある高分子樹脂の添加し、コーティング法や印刷法で塗工され、使用する材料の種類によって変わるが、層厚0.5〜20μmが好ましく、さらには1〜10μmがより好ましい。この紫外線吸収層を形成する高分子樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を混合することができる。
【0057】
一方、紫外線吸収剤は、有機系としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系,トリアジン系、ベンゾエート系化合物が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を混合することができる。また、無機系としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、シリカ、アルミナが挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を混合することができる。
【0058】
各層の層間や表面は接着層やアンカー層を設けたり、コロナ処理等の接着処理を施して各層の積層を強固にしたり、ブリードを抑制させるために目止め層を設けたり、あるいは表面の平滑性を得るための平滑層などを必要に応じて適宜設けることができる。
【0059】
本願の(離型性フィルム/保護層/インクジェットインク受容層/インクジェット印刷)からなる転写シートと、基材シート上に可逆性感熱記録層を設けた被転写材とからなる可逆性感熱記録媒体の製造用転写セットに係る発明の実施態様として、可逆性感熱記録層は、例えば有機溶剤系塗料をオーバーシートにコーティングして設けられるので、オーバーシートが耐溶剤性の低い材質の場合、オーバーシートが劣化してしまう。そのため、オーバーシートの劣化を防止するためにオーバーシートに水系またはアルコール系塗料をコーティングして耐溶剤性に優れてバリア層を設けることが好ましい。このバリア層は、オーバーシートと可逆性感熱記録層との接着性の機能をもっていることが好ましい。
【0060】
このバリア層の材質はUV硬化樹脂や架橋されたウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂が挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上混合することができる。また、層厚は使用する材料の種類によって変わるが、1〜20μmが好ましく、さらには2〜10μmがより好ましい。
【0061】
一般的にカードは、コアシートと呼ばれる白色樹脂シートに印刷を施した後、印刷保護のために両面にオーバーシートと呼ばれる透明樹脂シートを被せ、熱プレスを行い積層して製造される。このようなカードには、印刷、打ち抜き加工、エンボスなどの加工適性に優れることからポリ塩化ビニル樹脂(以下PVC),非晶質ポリエステル樹脂(以下PETG),ポリカーボネート樹脂(以下PC),アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(以下ABS)等が使用される。
【0062】
この発明においてカード用シートという場合には、カード製造に使用される基材としてのシートを言い、コアシートやオーバーシート等のシートを含むものとする。
【0063】
実施形態のカードは、コアシートの少なくとも一方の面に、オーバーシートを積層して製造することができる。例えば、白色コアシートの表面にシルクスクリーン印刷、オフセット印刷等によって印刷を施し、形成された印刷面にオーバーシートを被せ、また必要に応じてコアシートの他方の面にもオーバーシートを被せ、仮貼りした後、化粧板に挟み込み、熱プレスして積層体を形成する。オーバーシートとコアシートとオーバーシートをこの順に重ねてプレスすることによりカード用積層体を形成してもよい。また、得られた積層体を打抜き刃でカード状に打ち抜き、打ち抜きカードを形成することもできる。
【0064】
コアシートとしては、非晶性のポリエステル系樹脂を主成分とするシートを使用することができるが、オーバーシートと一体化が可能なものであれば、特に限定されることなく使用することができる。ただし、環境保護の観点からは、PVC以外の樹脂であることが好ましい。
【0065】
ICカードの場合には、コアシートはアンテナコイルやICチップ等の凹凸を吸収することができる材料であることが好ましく、加熱加圧プレスにより変形するものが好ましい。例えば、加熱、加圧等によって変形する熱可塑性樹脂が好ましく使用される。好ましく使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PC樹脂等の汎用プラスチックが挙げられる。本発明においては、コアシートとして、これらの熱可塑性樹脂の1種類又は2種類以上を主成分とするフィルムやシートが好ましく使用される。
【0066】
またコアシートの材料として、耐熱性が良好なエンジニアリングプラスチックを使用することもできる。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上を主成分とするフィルムやシートが好ましく使用される。ただし、ガラス転移温度(Tg)、融解温度等が高過ぎる材料では、加熱プレス加工の際に、可逆性記録層やICチップ等の劣化や破壊を引き起こすことも想定されるので、加熱温度を考慮して適当なガラス転移温度を有する材料を選択することが好ましい。
【0067】
またコアシートの材料として、熱硬化性樹脂を使用することもできる。この場合には、熱硬化性樹脂が室温で柔らかい状態のままICチップ等を配置したシートとオーバーシート等とを重ねて加熱プレスし、硬化させる。このようにして、ICカードを作製することができる。ここで使用される熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0068】
なお、熱プレスの際の融着性、耐熱性等の材料設計の観点からは、熱圧着基材を構成する主成分の樹脂と同一の樹脂を使用することが望ましい。
【0069】
この発明において、オーバーシートとコアシート等を一体化する方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱融着、接着剤等を用いる方法等が挙げられる。本発明においては、熱融着により一体化することが好ましい。なお、オーバーシートに、予め磁気テープを貼っておいてもよい。
【実施例】
【0070】
[参考例1]
(1)転写シートの作製
離型性フィルムとして50μm厚のPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製:ダイアホイルMR)を用い、エポキシアクリレート系紫外線硬化樹脂からなる塗料をコーティングし、160W/cm×10m/minにて紫外線を照射し、層厚5μmの保護層を形成した。
【0071】
次いで、ウレタン系樹脂からなる塗料をコーティングし、100℃で1分間加熱乾燥し、層厚1μmの接着層を形成した。
【0072】
さらに下記の方法で得られた樹脂A:15重量部をメチルアルコール:85重量部に溶解させ、均一な溶液にして接着層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、保護層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0073】
〈樹脂A〉
エチレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した後、ブチレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得たポリアルキレンオキシドにオクタデカン−1,18−ジカルボン酸メチルを加えエステル交換反応を行って重量平均分子量15万の樹脂を得た。そして、これに熱安定剤としてトコフェロール(BASF製UVINUL2000AO)を1部添加して樹脂Aを作製した。
【0074】
(2)被転写材(可逆性感熱記録層付き基材シート)の作製
アルミニウムが蒸着されたPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−CHI、厚さ100μm)に下記の組成物をエチルアルコールに溶解して塗工し、100℃で5分間加熱乾燥し、層厚3μmの溶剤バリア性を有する接着層を形成した。
【0075】
〈接着層〉
アルコール可溶性ポリアミド樹脂(鉛市製:FR−101) 5重量部
エチルアルコール 25重量部
次に、この接着層の上に下記の組成物の可逆性感熱記録材料をTHFに溶解して塗工し、110℃で5分間加熱乾燥した後、160W/cm×10m/minにて紫外線照射し、層厚10μmの可逆性感熱記録層を形成した。
【0076】
〈可逆性感熱記録材料(I)〉
塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体(日信化学社製:ソルバインMF)
100重量部
テトラエチレングリコールアクリレート 50重量部
光重合開始剤(チバガイギー社製:イルガキュア184) 2重量部
ポリエステル系可塑剤(DIC社製:P−29) 25重量部
ベヘン酸ステアリル 40重量部
ドデカン2酸 8重量部
THF 800重量部
【0077】
(3)転写による保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層を有するシートの作成
(1)で得られた転写シートのインク受容層にインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製:PX−V700)で印刷を行い、(2)で得られた可逆性感熱記録材料付きフィルムの可逆性感熱記録材料の上に加熱ロール(ロール温度:150℃,ラミネート速度:2m/min,ロール線圧:20kg/cm)でラミネートし、離型フィルムを剥がして保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層を有するシート作成した。
【0078】
(4)カード状可逆性感熱記録媒体の作製
カード基材として、(3)で得られた保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層を有するシートと、オーバーシートとしてPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−CHI、厚さ100μm)とコアシートとしてPETG製シート(三菱樹脂製:ディアフィクスPG−WHI、厚さ560μm)を用いた。
【0079】
そして、各シートを300mm×300mmサイズに断裁し、保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層を有するシート、コアシート、オーバーシートの順に重ねた。次いで、各シートがずれないようにクロムメッキ板の間に挟み、温度120℃、圧力20kg/cm2の条件で20分間加熱加圧プレスして溶融一体化させた後、冷却してカード用基材を得た。そして、このカード用基材をカード形状に打ち抜き、保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層を有するカードを作製した。
【0080】
[参考例2]
可逆性感熱記録層付きフィルムの基材シートを、アルミニウムが蒸着されていないPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−CHI、厚さ100μm)を用いたことと、可逆性感熱記録材料の組成と製膜方法を以下の方法にしたこと以外は参考例1と全く同様にして保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層とを有するシートおよびカードを作製した。
【0081】
下記の組成物の可逆性感熱記録材料を下記の方法で調製した塗液を塗工し、130℃で5分間加熱乾燥した後、60℃で16時間エージングを行い、層厚10μmの可逆性感熱記録層を形成した。
【0082】
〈可逆性感熱記録材料の組成物(II)〉
下記の可逆性感熱記録材料の組成物をペイントシェーカーを用いて2時間分散した。
ロイコ染料:クリスタルバイオレットラクトン 10重量部
電子受容性化合物:ヒドロキシフェニルプロピオンノベヘニルヒドラジド 20重量部
樹脂:アクリルポリオール(三菱レーヨン社製:LR−1503) 50重量部
溶剤:トルエン 150重量部
上記の分散された塗液にさらに下記の硬化剤を加えてよく撹拌して塗液を調製した。
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製:コロネートL,固形分75%)
5重量部
【0083】
[参考例3]
可逆性感熱記録層の上に下記の組成物からなる光熱変換層材料を塗工し、130℃で5分間加熱乾燥し、層厚1μmの光熱変換層を形成したこと以外は参考例1と全く同様にして可逆性感熱記録層付きフィルムを作製し、カード状可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0084】
〈光熱変換層〉
ポリエステルウレタン(東洋紡績社製:バイロンUR−8200、固形分:30%)
257重量部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製:コロネートL,固形分:75%)
21重量部
フタロシアニン系色素(山本化成社製:D99−038) 7重量部
MIBK 170重量部
トルエン 170重量部
【0085】
[参考例4]
参考例2において、可逆性感熱記録層の上に参考例3で示した光熱変換層と同じ組成の光熱変換層を形成したこと以外は参考例2と同様にして、可逆性感熱記録材料付きフィルムを作製し、さらにカード状可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0086】
[参考例5]
参考例1において、樹脂AをT型マニホールドダイで100μm厚のポリエチレンフィルムの上に10μm厚に溶融成形を行い、熱ロールで保護層上の接着層の上にラミネートしてインク受容層を形成したこと以外は、参考例1と全く同様にして転写シートを作製し、さらにカード状の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0087】
[比較例1]
(転写シートの作製)
離型フィルムとして50μm厚のP E T フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製:ダイアホイルMR)を用い、エポキシアクリレート系紫外線硬化樹脂からなる塗料をコーティングし、160W/cm×10m/minにて紫外線を照射し、層厚5μmの保護層を形成した。
【0088】
次いで、ウレタン系樹脂からなる塗料をコーティングし、100℃で1分間加熱乾燥し、層厚1μmの接着層を形成した。
【0089】
次に、参考例1で用いた可逆性感熱記録材料(I)をTHFに溶解して塗工し、110℃で5分間加熱乾燥した後、160W/cm×10m/minにて紫外線照射し、層厚10μmの可逆性感熱記録層を形成し、その上の一部に真空蒸着法により0.05μm厚のアルミニウム蒸着層を形成した。
【0090】
さらに下記の組成物の昇華転写印刷受理層材料をTHFに溶解して塗工し、100℃で5分間加熱乾燥し、層厚3μmの昇華転写印刷受理層を形成し、可逆性感熱記録層と昇華転写印刷受理層を有する転写シートを作製した。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学社製:ソルバインC) 10重量部
THF 100重量部
【0091】
(カード基材の作製)
オーバーシートにPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−CHI、厚さ100μm)と、コアシートにPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−WHI、厚さ560μm)を用いた。
【0092】
各シートを300mm×300mmサイズに断裁し、オーバーシート、コアシート、オーバーシートの順に重ねた。次いで、各シートがずれないようにクロムメッキ板の間に挟み、温度120℃、圧力20kg/cmの条件で20分間加熱加圧プレスして溶融一体化させた後、冷却してカード用基材を得た。そして、このカード用基材をカード形状に打ち抜き、PETG製のカード形状のカード基材を作製した。
【0093】
(カードの作製)
得られた転写シートの昇華転写印刷受理層に昇華転写印刷プリンタで印刷を行った。次いで、ハーフカットを考慮して受理層をカード形状のカード基材に重ね合わせ、温度120℃、圧力10kg/cmで5分間プレスして転写した。その後、支持体を剥離してカード基材上に昇華転写印刷受理層、バリア層、可逆性感熱記録層、保護層をこの順に有するカードを作製した。
【0094】
[比較例2]
インク受容層を以下の処方に変更したこと以外は参考例1と全く同様にして保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層とを有するシートおよびカードを作製した。
〈処方を変更したインク受容層〉
【0095】
シリカ(水澤化学社製:ミズカシルP78A):5重量部とポリビニルアルコール(日本合成化学社製:ゴーセファイマーZ200):2重量部を蒸留水:100重量部に溶解させ、均一な溶液にして接着層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、保護層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0096】
[比較例3]
インク受容層を以下の処方に変更した以外は参考例1と全く同様にして保護層付きインク受容層と可逆性感熱記録層と有するシートおよびカードを作製した。
〈処方を変更したインク受容層〉
【0097】
飽和ポリエステル樹脂(日本合成化学社製:ポリエスターSP−170):10重量部をトルエン:9 0 0 重量部に溶解させ、均一な溶液にして接着層の上に塗工し、1 00℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、保護層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0098】
得られたカードについて下記の評価を行い、結果を表1中に示した。
(1)インク受容層の印刷適性
転写シートのインク受容層にインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製:PX−V700)で印刷を行い、印刷品位を目視で評価した。
【0099】
(2)カード化
参考例1の[(4)カード状可逆性感熱記録媒体の作製]に記載の加熱加圧プレス条件、または下記の転写(加熱加圧プレス)条件で転写されたカードをJISX6301(199 8年版)で規定されている方法を用いて層間剥離試験を行った。
【0100】
転写条件:転写シートのインク受容層にインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製:PX−V700)で印刷を行った。次いで、カード形状に合わせハーフカットを行い、位置を考慮してインク受容層をカード形状のカード基材に重ね合わせ、温度120℃、圧力10kg/cmで5分間プレスして転写した。
【0101】
(3)サーマルヘッド・ヒーターバーによる印字消去特性
得られたカードをサーマルヘッドで印字、ヒーターバーで消去できるカードリーダライタ(以下R/Wと表記)で印字消去を行い、印字濃度と消去濃度をマクベス反射濃度計(RD−918S)で測定した。そして、印字状態と消去状態の差(コントラスト)を評価した。
【0102】
(4)半導体レーザによる印字消去特性
得られたカードを800nmの発振波長の半導体レーザを照射し、印字消去を行い、印字濃度と消去濃度をマクベス反射濃度計(RD−918S)で測定した。そして、印字状態と消去状態の差(コントラスト)を評価した。
【0103】
(5)サーマルヘッド印字・ヒーターバー消去のR/Wによるリライト耐久性評価
得られたカードをR/Wで500回、1000回のリライト耐久性テストを行い、印字消去の品位と外観(表面キズ)を評価した。
【0104】
(6)半導体レーザによるリライト耐久性評価
得られたカード800nmの発振波長の半導体レーザを照射し、繰り返し印字消去を行い、1,000回、3,000回のリライト耐久性テストを行った。
それぞれ、3段階(○:良好,△:特性は低下したが使用可能、×:使用不可)で評価し、結果を表1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
表1の結果からも明らかなように、参考例1、2、5では接触式R/W(サーマルヘッド印字,ヒーターバー消去)では良好な印字消去特性を示した。また、500回のリライト耐久性で良好な結果を示したが、1000回では表面に劣化が発生した。しかしながら、記録(印字)は確認でき、実使用可能なレベルであった。
【0107】
次に参考例3〜4では光熱変換層があるため、接触式R/W、非接触式R/W(半導体レーザ)ともに良好な印字消去特性を示し、非接触式R/Wを用いると3,000回のリライト耐久性を示した。なお、参考例3〜4の光熱変換層は淡緑色を示すため、参考例1、2、5に比べ、印字部と消去部(地肌部)のコントラスト(反射濃度差)が小さいが、実使用上問題ないレベルであった。
【0108】
一方、比較例1は、可逆性感熱記録層の上に直接昇華転写印刷受理層を塗工したため、比較例1の場合は、可逆性感熱記録層に溶剤が浸透して記録特性を劣化させてしまった(印字できなくなった)。
【0109】
比較例2では印刷適性は満足できる品位であるが、加熱加圧プレスで一体化できず(接着できず)、層間で剥離が見られた。また、比較例3では加熱加圧プレスで一体化できる(接着できる)が、満足できる品位の印刷ができなかった。
【0110】
[実施例1]
(1)転写シートの作製
参考例1と全く同様にして離型性フィルムの上に、保護層および接着層を形成し、次に参考例1で用いた可逆性感熱記録材料組成物(I)をTHFに溶解して塗工し、110℃で5分間加熱乾燥した後、160W/cm×10m/minにて紫外線照射し、層厚10μmの可逆性感熱記録層を形成し、その上の一部に真空蒸着法により0.05μm厚のアルミニウム蒸着層を形成した。
【0111】
さらに参考例1に用いた樹脂A:15重量部をメチルアルコール:85重量部に溶解させ、均一な溶液にしてアルミニウム蒸着層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、可逆性感熱記録層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0112】
(2)カード基材の作製
オーバーシートにPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−CHI、厚さ100μm)を用い、コアシートにPETG製シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−WHI、厚さ560μm)を用いた。
【0113】
各シートを300mm×300mmサイズに裁断し、オーバーシート、コアシート、オーバーシートの順に重ねた。次いで、各シートがずれないようにクロムメッキ板の間に挟み、温度120℃、圧力20kg/cmの条件で20分間加熱加圧プレスして溶融一体化させた後、冷却してカード用基材を得た。そして、このカード用基材をカード形状に打ち抜き、PETG製のカード形状のカード基材を作製した。
【0114】
(3)カードの作製
得られた転写シートのインク受容層にインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製:PX−V700)で印刷を行った。次いで、カード形状に合わせハーフカットを行い、位置を考慮してインク受容層をカード形状のカード基材に重ね合わせ、温度120℃、圧力10kg/cmで5分間プレスして転写した。そして、離型フィルムを剥離してカード基材上に印刷されたインク受容層、可逆性感熱記録層、保護層が順次積層されたカードを作製した。
【0115】
[実施例2]
(1)転写シートの作製
離型性フィルムとして50μm厚のPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製:ダイアホイルMR)を用い、エポキシアクリレート系紫外線硬化樹脂からなる塗料をコーティングし、160W/cm×10m/minにて紫外線を照射し、層厚5μmの保護層を形成した。
【0116】
次いで、ウレタン系樹脂からなる塗料をコーティングし、100℃で1分間加熱乾燥し、層厚1μmの接着層を形成した。
【0117】
次に、参考例2で用いた可逆性感熱記録材料組成物(II)を塗工し、130℃で5分間加熱乾燥した後、60℃で16時間エージングを行い、層厚10μmの可逆性感熱記録層を形成した。
【0118】
さらに参考例1で用いた樹脂A:15重量部をメチルアルコール:85重量部に溶解させ、均一な溶液にして可逆性感熱記録層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、可逆性感熱記録層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0119】
(2)カード基材の作製
実施例1のとカード基材の作製工程と全く同様にして、カード基材を作製した。
【0120】
(3)カードの作製
実施例1のカードの作製工程と全く同様にして、カードを作製した。
【0121】
[実施例3]
保護層と可逆性感熱記録層の間の接着層の代わりに下記の組成物からなる光熱変換層材料を塗工し、130℃で5分間加熱乾燥し、層厚1μmの光熱変換層を保護層と可逆感熱記録層の間に形成したこと以外は実施例1と全く同様にして、転写シートとカード基材を作製し、さらにカードを作製した。なお、光熱変換層は接着層の機能も有する。
【0122】
〈光熱変換層材料の組成物〉
ポリエステルウレタン(東洋紡績社製:バイロンUR−8200,固形分:30%)
257重量部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製:コロネートL,固形分:75%)
21重量部
フタロシアニン系色素(山本化成社製:D99−038) 7重量部
MIB 170重量部
トルエン 170重量部
【0123】
[実施例4]
実施例2において、保護層と可逆性感熱記録層の間の接着層の代わりに実施例3で用いた光熱変換層材料の組成物を塗工し、130℃で5分間加熱乾燥し、層厚1μmの光熱変換層を保護層と可逆感熱記録層の間に形成したこと以外は実施例2と同様にして転写シートとカード基材を作製し、さらにカードを作製した。なお、光熱変換層は接着層の機能も有する。
【0124】
[実施例5]
参考例1で用いた樹脂AをT型マニホールドダイで100μm厚のポリエチレンフィルムの上に10μm厚に溶融成形を行い、熱ロールでアルミニウム蒸着層の上にラミネートしてインク受容層を形成したこと以外は実施例1と同様にして転写シートとカード基材を作製し、さらにカードを作製した。
【0125】
[比較例4]
実施例1において、インク受容層の代わりに下記組成の昇華転写印刷受理層材料をTHFに溶解してアルミニウム蒸着層の上に塗工し、100℃で5分間加熱乾燥し、層厚3μmの昇華転写印刷受理層を形成したことと昇華転写印刷プリンタで印刷したこと以外は実施例1と全く同様にして転写シートを作製し、カードを作製した。
【0126】
〈昇華転写印刷受理層〉
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学社製:ソルバインC) 10重量部THF 100重量部
【0127】
[比較例5]
実施例2において、インク受容層のかわりに比較例4で用いた組成の昇華転写印刷受理層材料をTHFに溶解して可逆性感熱記録層の上に塗工し、100℃で5分間加熱乾燥し、層厚3μmの昇華転写印刷受理層を形成したことと昇華転写プリンタで印刷したこと以外は実施例2と全く同様にして転写シートを作製し、カードを作製した。
【0128】
以上の実施例1〜5および比較例4〜7について得られたカードの評価(1)〜(6)を前記同様に行い、結果を表2に示した。なお、実施例1,3,5と比較例4,6,7はアルミニウム蒸着がされた部分について印字消去を行い、評価を行った。
【0129】
[比較例6]
インク受容層を以下の処方に変更した以外は実施例1と全く同様にして可逆性感熱記録層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
〈処方を変更したインク受容層〉
【0130】
シリカ(水澤化学社製:ミズカシルP78A):5重量部とポリビニルアルコール(日本合成化学社製:ゴーセファイマーZ200):2重量部を蒸留水:100重量部に溶解させ、均一な溶液にしてアルミニウム蒸着層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、保護層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0131】
[比較例7]
インク受容層を以下の処方に変更した以外は実施例1と全く同様にして可逆性感熱記録層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
〈処方を変更したインク受容層〉
【0132】
飽和ポリエステル樹脂(日本合成化学社製:ポリエスターSP−170):10重量部をトルエン:900重量部に溶解させ、均一な溶液にしてアルミニウム蒸着層の上に塗工し、100℃で10分間加熱乾燥し、層厚10μmのインク受容層を形成し、保護層とインク受容層を有する転写シートを作製した。
【0133】
【表2】

【0134】
表2の結果からも明らかなように、実施例1、2、5では接触式R/W(サーマルヘッド印字,ヒーターバー消去)では良好な印字消去特性を示した。また、500回のリライト耐久性で良好な結果を示したが、1000回では表面に劣化が発生する。しかし、記録(印字)は確認でき、実使用可能なレベルであった。
【0135】
また実施例3、4では光熱変換層があるため、接触式R/W、非接触式R/W(半導体レーザ)ともに良好な印字消去特性を示し、非接触式R/Wを用いると1000回のリライト耐久性を示す。なお、実施例3、4の光熱変換層は淡緑色を示すため、実施例1、2、5に比べ、印字部と消去部(地肌部)のコントラスト(反射濃度差)が小さいが、実使用上問題ないレベルであった。
【0136】
一方、比較例4,5は、可逆性感熱記録材料を溶解する溶剤を用いた昇華転写印刷受理層の塗液を直接塗工したため、比較例4の場合はアルミニウム蒸着層が劣化し、且つ、可逆性感熱記録層に溶剤が浸透して記録特性を劣化させてしまった(印字できなくなる)。
また、比較例5の場合も記録層の溶剤が浸透して、地肌にかぶりが発生し(地肌が発色してしまう)、印字部とのコントラスト(反射濃度差)が著しく低下してしまった。
【0137】
比較例6では印刷適性は満足できる品位であるが、加熱加圧プレスで一体化できず(接着できず)、層間で剥離が見られた。また、比較例7では加熱加圧プレスで一体化できる(接着できる)が、満足できる品位の印刷ができなかった。
【符号の説明】
【0138】
1 離型性フィルム
2 保護層
3 インクジェットインク受容層
4 インク
9 転写シート
6 基材シート
7 可逆性感熱記録層
8 被転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を重ねて一体化し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施してなる転写シートと、被転写材である基材シートとからなる可逆性感熱記録媒体の製造用転写セット。
【請求項2】
光熱変換層が可逆性感熱記録層に熱伝導可能な近接した位置に配置されている請求項1
に記載の可逆性感熱記録媒体の製造用転写セット。
【請求項3】
離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を、前記可逆性感熱記録層が不溶な溶剤を用いたコーティングにより形成し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法。
【請求項4】
離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、その上に親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を無溶剤コーティングにより形成し、前記インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法。
【請求項5】
離型性フィルムに保護層および可逆性感熱記録層を重ね、親水性の熱接着性樹脂からなるインクジェットインク受容層を別途フィルム化して形成し、このフィルムを前記可逆性感熱記録層の上に貼付し、当該インクジェットインク受容層の表面にはインクジェット印刷を施した転写シートを設け、この転写シートを被転写基材に転写することからなる可逆性感熱記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−806(P2010−806A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231787(P2009−231787)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2004−292904(P2004−292904)の分割
【原出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】