説明

可逆熱変色性水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具

【課題】 インキが凍結する環境下で放置したり、或いは、凍結する温度域で色変化するインキを収容して実用に供する場合であっても、インキ流出性が損なわれることなく、筆跡がかすれたり、淡色化することのない良好な筆記性能を示す可逆熱変色性水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具を提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水とから少なくともなり、インキ組成物のpHが3〜7の範囲にある可逆熱変色性水性インキ組成物、及びそれを用いた筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度変化により色調が変化する筆跡を形成できる可逆熱変色性水性インキと、それを充填した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記筆記具は、インキ中に高分子凝集剤を添加して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の凝集、沈降を抑制し、筆跡を形成できなかったり、或いは、筆跡が淡色化する不具合を防止できるインキ出が良好な筆記具であって、特に、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を収容し、前記インキ吸蔵体に可逆熱変色性水性インキ組成物を含浸するタイプの筆記具に有用である。
【特許文献1】特開平11−335613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記筆記具は、50℃、室温、0℃でそれぞれ放置する、所謂、経時試験では筆記性能に不具合を生じることがないものの、インキが凍結する0℃未満の温度域で放置したり、或いは、インキが凍結する温度域で色変化するインキを収容して実用に供する場合、該凍結したインキを再び解凍する過程でインキ流出性が損なわれることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記した従来の可逆熱変色性水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具の問題点を解消しようとするものであって、即ち、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水とから少なくともなり、インキ組成物のpHが3〜7の範囲にある可逆熱変色性水性インキ組成物を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体として、下記一般式(1)で示されるエステル化合物を含んでなる発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型のマイクロカプセル顔料であること、
【化1】

(式中、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
前記インキ組成物中に水溶性高分子凝集剤、或いは、剪断減粘性付与剤を含んでなることを要件とする。
更には、前記可逆熱変色性水性インキ組成物を収容してなるマーキングペン形態の筆記具、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を収容し、軸筒先端部にマーキングペンチップを固着し、前記インキ吸蔵体とマーキングペンチップは直接又は接続部材を介して連通してなり、前記インキ吸蔵体に可逆熱変色性水性インキ組成物を含浸してなるマーキングペン形態の筆記具、前記可逆熱変色性水性インキ組成物を収容してなるボールペン形態の筆記具等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、インキが凍結する0℃未満の環境下で放置したり、或いは、インキが凍結する温度域で色変化するインキを収容して実用に供する場合であっても、筆記時のインキ流出性を損なうことがなく、よって、筆跡がかすれたり、淡色化することのない良好な筆記性能を示す可逆熱変色性水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させたものが有効であり、発色状態からの加熱により消色する加熱消色型のマイクロカプセル顔料としては特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載のものが利用できる。
前記マイクロカプセル顔料は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、完全消色温度以上の温度域で消色状態、完全発色温度以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔHA =1〜7℃)を有する(図1参照)。
【0007】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB =8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1 )以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4 )以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2 〜t3 の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩を記憶保持できる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる(図2参照)。
なお、色彩を記憶保持できる加熱消色型のマイクロカプセル顔料としては、本出願人が先に出願した(ハ)成分として一般式(1)で示されるエステル化合物を用いたものが色濃度−温度曲線に関して広いヒステリシス幅(40〜70℃)を示して変色するため、好適である。
前記変色前後の両状態のうち常温域で特定の一方の状態のみ存在させるためには、ヒステリシス幅が40〜70℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃であり、完全消色温度(t4 )が45℃以上、好ましくは50℃以上であり、且つ、発色開始温度(t2 )が0℃以下、好ましくは−5℃以下である。
【化2】

前記エステル化合物は、分子内に芳香環を2個有するアルコール化合物と、炭素数4以上の飽和又は不飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。
式中のRは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数6〜20のアルキル基、更に好ましくは炭素数8〜18のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、ブタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、エイコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナコサン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリアコンタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘントリアコンタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0008】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型のマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いはインキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成となすこともできる。
【0009】
前記マイクロカプセル顔料は、円形断面の形態であっても非円形断面の形態であってもよい。
マイクロカプセル顔料の平均粒子径は0.5〜5.0μm、好ましくは0.5〜3μm、更に好ましくは1〜3μmである。
平均粒子径が5.0μmを越えるとインキ流出性が低下したり、筆記面に対する固着性が低下し易くなる。一方、平均粒子径が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
また、可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が大きくなると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を起こし、逆に、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が大きくなると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、よって、可逆熱変色性組成物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)が好適である。
【0010】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%配合することができる。
2重量%未満では発色濃度が不十分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性能が阻害される。
【0011】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲の、非円形断面形状のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
【0012】
前記インキに用いられる溶剤としては、水と必要により水溶性有機溶剤が用いられる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。
【0013】
前記インキ中に高分子凝集剤を添加することによって、前記凝集剤がマイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋かけ作用を生じさせ、ゆるい凝集状態を示す。このようなゆるい凝集状態を示すインキは繊維集束体からなるインキ吸蔵体(中綿)及び繊維の樹脂結束体からなるマーキングペン体の毛管状間隙においてマイクロカプセル顔料の分離が発生しない。
そのため、正立または倒立の放置によりマイクロカプセル顔料が分離し、筆跡の濃色化または淡色化が発生することを抑制し、染料インキを充填したマーキングペンと同等の保存性能を有するマーキングペンが得られる。
前記水溶性高分子凝集剤としては非イオン性水溶性高分子化合物が用いられ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明の可逆熱変色性水性インキ組成物においては、マイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも非イオン性水溶性セルロース誘導体が最も有効に作用する。
【0014】
前記インキ中に剪断減粘性付与剤を添加することによって、インキを充填するボールペンの不使用時にボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
なお、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキ組成物の粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S-1の剪断速度におけるインキ粘度が200〜3000mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.6を示すことが好ましい。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kjn (Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、アルカガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0015】
更に、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0016】
その他、必要に応じてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
【0017】
前記のようにして得られるインキ組成物は、pHを3〜7に調整してなる。
前述のようにインキ組成物を酸性域に調整することによって含有される可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の低温域での凝集、沈降を抑制できる。
pHが7を越えると、低温域、即ち、インキが凍結する温度域で放置した時のインキ流出性を損ない易く、また、pHが3未満では、カプセル中に内包した可逆熱変色性組成物の発色性が強くなり、消色時に色残りが発生する不具合を生じ易くなる。
【0018】
前記インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンに充填して実用に供される。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペンチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ボールペンチップを装着した筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内にインキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓を配設した構造のボールペンを例示できる。
【0019】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜3mm径程度のものが適用できる。
なお、本発明のインキを充填する筆記具は、ボールと同様の転動作用により筆跡を形成させる、ローラー等の転動機構を筆記先端部に備えたものを含む。
【0020】
インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる透明性成形体が好適に用いられる。
前記インキ収容管の透明性とは着色透明、半透明、着色半透明を含み、インキ色やインキ残量等を確認することができる。
前記インキ収容管には直接又は接続部材を介してチップを連結したレフィルとし、前記レフィルを軸筒内に収容して筆記具を構成できる。
また、先端部にチップを装着した軸筒自体に直接インキを充填して筆記具を構成することもできる。
前記軸筒は透明(着色透明、半透明、着色半透明を含む)にすることにより、インキ色やインキ残量等を確認することができる。
【0021】
前記インキ収容管又は軸筒に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填することもできる。
前記インキ逆流防止体は不揮発性液体及び/又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0022】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
なお、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン体を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン体を装着させたツインタイプの筆記具であってもよい。
【0023】
前記インキ組成物を収容した筆記具より形成される筆跡は、摩擦体による擦過によって変色させることもできる。
摩擦体は、プラスチック成形体、金属類、布帛、紙類、手指等であってもよいが、任意形象の消しゴム、エラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が弾性感に富み、使い勝手がよい。
前記摩擦体は、キャップの頂部に装着、或いは、軸筒の後部や尾栓に装着させて実用に供することができる。
また、筆記具本体、例えば、軸胴の後部や尾栓、キャップの一部(例えば、キャップの頂部)を摩擦体として機能させることもできる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸4−メチルベンジル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は3.0μmであり、42℃以上で無色、0℃以下で黒色に変色する。
【0025】
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.35部、更に、pH調整剤として10%希釈リン酸溶液を0.15部を加えて、均一に攪拌を行ない、インキのpHを5.5に調整して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
【0026】
筆記具の作製
前記インキ(予め0℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黒色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部に摩擦体としてシリコーンゴム製の摩擦体を装着してなる。
【0027】
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記して黒色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で黒色を呈しており、キャップに装着した摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は室温下では保持されており、0℃以下に冷却することにより、元の黒色に復色し、前記変色挙動は繰り返し再現された。
【0028】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−インドール−3−イル)−4−アザフタリド2.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、(ハ)成分としてカプリン酸ステアリル40.0部、カプリン酸セチル10.0部、ジヘプタデシルケトン1.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.5μmであり、36℃以上で無色、25℃以下で青色に変色する。
【0029】
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.3部、更に、pH調整剤として10%希釈乳酸溶液を0.2部を加えて、均一に攪拌を行ない、インキのpHを5.4に調整して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
【0030】
筆記具の作製
前記インキを、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
【0031】
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記し青色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で青色を呈しており、体温又は擦過により36℃以上に加温すると該文字は消色して無色となる。
25℃以下になると元の青色に復色し、前記変色挙動は繰り返し再現された。
【0032】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ブチルアミノ)−8−(ジフェニルアミノ)−4−メチルスピロ〔5H−〔1〕ベンゾピラノ〔2−3−g〕ピリミジン−5,1(3′H)−イソベンゾフラン〕−3−オン2.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、(ハ)成分としてステアリン酸ブチル50.0部、ジヘプタデシルケトン1.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.5μmであり、25℃以上で無色、15℃以下でピンク色に変色する。
【0033】
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.3部、更に、pH調整剤として10%希釈乳酸溶液を0.2部を加えて、均一に攪拌を行ない、インキのpHを5.7に調整して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
【0034】
筆記具の作製
前記インキを、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
【0035】
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記し無色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、15℃以下に冷却することにより筆跡がピンク色に発色し、15℃以下になると再び文字は消色して無色となる。
前記変色挙動は繰り返し再現された。
【0036】
実施例4
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、4−〔2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリニジル〕−N,N−ジメチルベンゼンアミン4.0部、(ロ)成分として、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.0μmであり、50℃以上で無色、−10℃以下で黄色に変色する。
【0037】
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料25.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水68.35部、更に、pH調整剤として10%希釈リン酸溶液を0.15部を加えて、均一に攪拌を行ない、インキのpHを5.4に調整して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
【0038】
筆記具の作製
前記インキ(予め0℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黄色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
なお、前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部にSEBS樹脂製の摩擦体を装着してなる。
【0039】
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記して黄色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で黄色を呈しており、キャップに装着した摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は室温下では保持されており、0℃以下に冷却することにより、元の黄色になった。
前記変色挙動は繰りし再現された。
【0040】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.0部、(ハ)成分としてステアリン酸ネオペンチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.0μmであり、35℃以上で無色、10℃以下で橙色に変色する。
【0041】
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.35部、更に、pH調整剤として10%希釈リン酸溶液を0.15部を加えて、均一に攪拌を行ない、インキのpHを5.5に調整して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
【0042】
筆記具の作製
前記インキ(予め5℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を橙色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
なお、前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部にSEBS樹脂製の擦過体を装着してなる。
【0043】
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記して橙色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で橙色を呈しており、キャップに装着した摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は室温下では保持されており、0℃以下に冷却することにより、元の橙色になった。
前記変色挙動は繰り返し再現された。
【0044】
比較例1
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
実施例1のマイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.5部を加えて均一に攪拌を行ない、可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
なお、前記インキ組成物のpHは8.5であった。
【0045】
筆記具の作製
前記インキ(予め0℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黒色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部にシリコーンゴム製の摩擦体を装着してなる。
【0046】
比較例2
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
実施例2のマイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.5部を加えて均一に攪拌を行ない、可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
なお、前記インキ組成物のpHは8.3であった。
【0047】
筆記具の作製
前記インキを、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
【0048】
比較例3
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
実施例3のマイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.5部を加えて均一に攪拌を行ない、可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
なお、インキ組成物のpHは8.4であった。
【0049】
筆記具の作製
前記インキを、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
【0050】
比較例4
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
実施例4のマイクロカプセル顔料25.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水68.5部を加えて均一に攪拌を行ない、可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
なお、インキ組成物のpHは8.5であった。
【0051】
筆記具の作製
前記インキ(予め0℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黄色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
なお、前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部にSEBS樹脂製の摩擦体を装着してなる。
【0052】
比較例5
可逆熱変色性水性インキ組成物の調製
実施例5のマイクロカプセル顔料20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09B〕0.4部、グリセリン5.0部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.1部、防腐剤1.0部、水73.5部を加えて均一に攪拌を行ない、可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。
なお、インキ組成物のpHは8.6であった。
【0053】
筆記具の作製
前記インキ(予め5℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を橙色に発色させた後、室温下で放置したもの)を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)に2.0g含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維ペン体(気孔率約50%)を取り付けてマーキングペンを得た。
なお、前記マーキングペンには着脱自在のキャップを備えてなり、前記キャップは頂部にSEBS樹脂製の擦過体を装着してなる。
【0054】
初期筆記試験
各実施例及び比較例で作製した初期の筆記具を用いて、白色レポート用紙に筆記を行った(各10行)。
経時筆記試験
各実施例及び比較例で作製した筆記具を40℃の恒温槽中に横置き状態で30日間放置した後、取り出して放冷し、次いで−36℃の冷凍庫で24時間放置(凍結)した。
冷凍庫から筆記具を取り出して解凍し、筆記できることを確認して白色レポート用紙に筆記を行った(各10行)。
初期筆記試験と経時筆記試験で得られた筆跡を目視により比較観察した。
【0055】
試験結果を以下の表に示す。
【表1】

【0056】
なお、表中の記号に関する評価は以下の通りである。
○:初期と経時後の発色状態の筆跡に濃度変化は見られない。
×:顔料が凝集し、初期と比較して経時後の発色状態の筆跡が淡色化している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
2 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
3 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
4 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
1 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
2 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
3 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
4 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水とから少なくともなり、インキ組成物のpHが3〜7の範囲にあることを特徴とする可逆熱変色性水性インキ組成物。
【請求項2】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体として、下記一般式(1)で示されるエステル化合物を含んでなる発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型のマイクロカプセル顔料である請求項1記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【請求項3】
水溶性高分子凝集剤を含んでなる請求項1又は2記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。
【請求項4】
剪断減粘性付与剤を含んでなる請求項1又は2記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。
【請求項5】
請求項3記載の可逆熱変色性水性インキ組成物を収容してなるマーキングペン形態の筆記具。
【請求項6】
軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を収容し、軸筒先端部にマーキングペンチップを固着し、前記インキ吸蔵体とマーキングペンチップは直接又は接続部材を介して連通してなり、前記インキ吸蔵体に可逆熱変色性水性インキ組成物を含浸してなる請求項5記載のマーキングペン形態の筆記具。
【請求項7】
請求項4記載の可逆熱変色性水性インキ組成物を収容してなるボールペン形態の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−117805(P2006−117805A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307340(P2004−307340)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】