説明

台紙なしラベルおよびその製造方法

【課題】台紙(剥離紙)を設けなくてもロール状に巻いた形態などとすることができる省資源タイプであって、ラベル基材2の表面に剥離剤層5が形成されていても、スタンプ方式の印字によりインキがラベル基材2に染み込みやすくして必要なスタンプ印字を行うことができる台紙なしラベルおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ラベル基材2の表面に設ける剥離剤層5に剥離剤の塗工領域12と非塗工領域13とを設けること、ラベル基材2の表面粗さないし平滑度を調整することによってインキの染み込み易さを制御することに着目し、剥離剤層5は、剥離剤の塗工領域12および非塗工領域13を有し、剥離剤層5における塗工領域12の面積割合を、70〜99%とするとともに、JISのP8119による平滑度試験方法により計測したラベル基材2の平滑度を、40〜1000秒とし、ラベル基材2と粘着剤層3との間にバリアー層11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は台紙なしラベルおよびその製造方法にかかるもので、とくに携帯式ラベル印字貼付け機などに装填し、移送および押印(スタンプ)方式による印字が可能な台紙なしラベルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯式ラベル印字貼付け機を用いて、各種商品その他の被貼付け体にラベルを貼り付け、商品の価格やその他必要な情報を表示することが行われている。
この携帯式ラベル印字貼付け機の使用にあたっては、ラベルをロール状に巻いた状態で、携帯式ラベル印字貼付け機における用紙ホルダーなどの保持部に装填保持するとともに、この用紙ホルダーからラベルを帯状に繰り出して、携帯式ラベル印字貼付け機内に挿通し、移送ないし印字することになる。
【0003】
このような携帯式ラベル印字貼付け機に装填する、従来のラベル連続体1について、図8にもとづき概説する。
図8は、ラベル連続体1をロール形態とした斜視図であって、ラベル連続体1は、帯状のラベル基材2と、ラベル基材2の裏面側に形成した粘着剤層3と、粘着剤層3に仮着するとともに台紙基材4に剥離剤層5を形成した台紙6(剥離紙)と、を有する。
【0004】
ラベル基材2および粘着剤層3には、所定のピッチで切り目7を形成することにより、単葉のラベル片8を形成可能としている。
【0005】
このような構成のラベル連続体1は、携帯式ラベル印字貼付け機に装填して、その内部に移送するとともに、印字部でスタンプ印字し、剥離部で台紙6のみを剥離することにより単葉のラベル片8を被貼付け体に貼り付け可能である。
【0006】
一方、携帯式ラベル印字貼付け機に装填する他の構成によるラベル連続体としては、帯状のラベル基材と、このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層を有する一方、粘着剤層に仮着状態とする台紙(剥離紙)を持たない台紙なしラベルがあり、台紙なしラベルは、台紙を持たないことから省資源にも寄与することができる。
ただし、台紙なしラベルは台紙による裏打ちがないことから、上記粘着剤層を内側にしてロール状に巻くと、ロールの上層側に位置することになる粘着剤層が下層側に位置することになるラベル基材と接着してしまうため、ラベル基材の表面側に剥離剤などによる剥離剤層を形成することが必要になる。もちろん、ラベル基材どうしを単純に上下に積層する積層状態としても、同様の剥離剤層が必要になる。
【0007】
しかしながら、ラベル基材の表面側に剥離剤層があると、一般的な携帯式ラベル印字貼付け機における印字器は、その印字用活字にインキローラーによりインキを塗布した上で、ラベル基材上に所定の押圧力でスタンプ(押印)する形式のものであり、剥離剤によりインキがはじかれて、印字がかすれる結果、印字を確実に行うことができないという問題がある。
【0008】
さらに、従来の台紙付きの一般的なラベル連続体1は、携帯式ラベル印字貼付け機内においてラベル基材2から台紙6を剥離した上で単葉のラベル片8を被貼付け体に貼り付けるため、不要となった台紙6が携帯式ラベル印字貼付け機から垂れ下がり、事後の作業の邪魔になるという問題もある。
もちろん、台紙6を必要とする分だけ積層厚さが増すため、ラベル連続体1としてのロールの巻き径が大きくなり、ロール一巻あたりのラベル片8の枚数を少なくせざるを得ないという問題がある。
【0009】
なおまた、あらかじめ販売促進情報や広告情報などを印刷したラベルを貼り付ける際には、印字部を設けず、操作レバーの操作のみで、ラベルを貼り付けることができるが、このように構成した携帯式台紙なしラベル貼付け機の場合であっても、台紙なしラベルをロール状に巻いて装填することに上述と同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−279840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、台紙(剥離紙)を設けなくてもロール状に巻いた形態、あるいは積層形態とすることができる省資源タイプの台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明は、ラベル基材の表面に剥離剤層が形成されていても、必要なスタンプ印字を行うことができる台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
また本発明は、ラベル基材の表面に剥離剤層が形成されていても、スタンプ方式の印字によりインキがラベル基材に染み込みやすくした台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
また本発明は、スタンプ方式による印字のインキがラベル基材に適正に分散して滞留することができるようにした台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
また本発明は、台紙を設けないために、作業性を向上可能な台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0016】
また本発明は、台紙を設けないために、ロール一巻あたりのラベル片の枚数を多くすることができる台紙なしラベルおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち本発明は、ラベル基材の表面に設ける剥離剤層に剥離剤の塗工領域と非塗工領域とを設けること、ラベル基材の表面粗さないし平滑度を調整することによってインキの染み込み易さを制御することに着目したもので、第一の発明は、ラベル基材と、このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層と、上記ラベル基材の表面に設けた剥離剤層と、を有する台紙なしラベルであって、上記剥離剤層は、剥離剤の塗工領域および非塗工領域を有し、上記剥離剤層におけるこの塗工領域の面積割合を、70〜99%とするとともに、JISのP8119による平滑度試験方法により計測した上記ラベル基材の平滑度を、40〜1000秒とし、さらに、上記ラベル基材と上記粘着剤層との間にバリアー層を設けたことを特徴とする台紙なしラベルである。
第二の発明は、帯状のラベル基材と、このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層と、上記ラベル基材の表面に設けた剥離剤層と、を有する台紙なしラベルの製造方法であって、上記ラベル基材は、JISのP8119による平滑度試験方法により計測したその平滑度を、40〜1000秒としているとともに、上記ラベル基材の表面に、剥離剤の塗工領域および非塗工領域を有するように上記剥離剤層を形成する剥離剤層形成工程と、上記ラベル基材の裏面にバリアー層を形成するバリアー層形成工程と、このバリアー層の裏面に上記粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、を有することを特徴とする台紙なしラベルの製造方法である。
上記剥離剤を塗工していない上記非塗工領域は、上記剥離剤の上記塗工領域に対してこれを均一に分散配置していることができる。
上記剥離剤層における上記塗工領域および非塗工領域の面積比は、99:1〜70:30としていることができる。
上記剥離剤層における上記塗工領域および非塗工領域は、上記剥離剤を上記ラベル基材の表面に網点印刷することにより、これを形成することができる。
上記剥離剤層における上記剥離剤の塗工量は、これを0.1〜3.0g/mとすることができる。
JISのP8122によるサイズ度試験方法により計測した上記ラベル基材のサイズ度を、10〜30秒とすることができる。
上記バリアー層は、紫外線硬化型樹脂によりこれを形成することができる。
上記ラベル基材は、これを帯状とするとともに、上記粘着剤層を内側にしてロール状に巻いていることができる。
上記ラベル基材に所定ピッチで移送用スリットを形成することにより当該台紙なしラベルを移送可能とするとともに、この移送用スリットの部分において上記ラベル基材を幅方向に切断して単葉のラベル片を形成可能としていることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による台紙なしラベルおよびその製造方法においては、ラベル基材の表面に設ける剥離剤層に剥離剤の塗工領域と非塗工領域とを設けるとともに、ラベル基材の平滑度をJISのP8119による平滑度試験方法により計測したその平滑度を、40〜1000秒と調整することによって、ラベル基材の内部にインキを染み込み易くしたので、ラベル基材をロール形態あるいは積層状態にしても、上層側と下層側とが互いに貼り付いてしまうことを防止可能であるとともに、携帯式ラベル印字貼付け機その他任意のシステムにおけるスタンプ(押印)方式による印字を行っても、ラベル基材の内部にインキを必要量だけ染み込ませることができ、適正な印字性能を付与することができる。
【0019】
とくに第一の発明の台紙なしラベルによれば、剥離剤の塗工領域と非塗工領域とを設けた剥離剤層と、平滑度を調整したラベル基材と、ラベル基材と粘着剤層との間のバリアー層と、を設けているので、ラベル基材の内部に浸透したインキが粘着剤層にまで至ることはなく、ラベル基材の移送、印字およびその定着を適正なレベルに納めて、携帯式ラベル印字貼付け機などに装填して使用することができる。
もちろん、浸透したインキが被貼付け体を汚すことはない。
【0020】
とくに第二の発明の台紙なしラベルの製造方法によれば、ラベル基材は、JISのP8119による平滑度試験方法により計測したその平滑度を、40〜1000秒とし、塗工領域および非塗工領域を有するように剥離剤層を形成する剥離剤層形成工程と、ラベル基材の裏面にバリアー層を形成するバリアー層形成工程と、このバリアー層の裏面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、を有するようにしたので、従来のラベル製造装置のわずかな変更で台紙なしラベルの製造が可能であるとともに、携帯式ラベル印字貼付け機などに装填して使用可能な帯状の台紙なしラベルをロール状に巻いた形態で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例による台紙なしラベル10をロール形態とした斜視図である。
【図2】同、台紙なしラベル10の平面図である。
【図3】同、図2のIII−III線断面図である。
【図4】同、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20の側面図である。
【図5】同、用紙ホルダー22およびプラテンユニット24を開放した状態の側面図である。
【図6】同、台紙なしラベル10を製造するための台紙なしラベル製造装置40の切り目形成工程までの概略側面図である。
【図7】同、台紙なしラベル製造装置40の最終巻き取り工程までの概略側面図である。
【図8】従来のラベル連続体1をロール形態とした斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、剥離剤の塗工領域および非塗工領域を有する剥離剤層における塗工領域の面積割合を、70〜99%とするとともに、JISのP8119による平滑度試験方法により計測したラベル基材の平滑度を、40〜1000秒とし、さらに、ラベル基材と粘着剤層との間にバリアー層を設けたので、台紙がなくても、その移送および印字に支障がない台紙なしラベルおよびその製造方法を実現した。
【実施例】
【0023】
つぎに本発明の実施例による台紙なしラベル10およびその製造方法を図1ないし図7にもとづき説明する。ただし、図8と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、台紙なしラベル10をロール形態とした斜視図、図2は、同、台紙なしラベル10の平面図、図3は、図2のIII−III線断面図である。
台紙なしラベル10は、前記ラベル基材2と、このラベル基材2の裏面に設けた粘着剤層3と、ラベル基材2の表面に設けた剥離剤層5と、ラベル基材2と粘着剤層3との間のバリアー層11と、を有する。
【0024】
ラベル基材2は、JISのP8119による平滑度試験方法により計測した、その平滑度を、40〜1000秒としている。
たとえば、ラベル基材2としては、その厚さが50〜120μmであって、表面が粗めのコート紙や、それより粗い紙などを採用することができる。
平滑度が40秒未満では、ラベル基材2が粗すぎて、スタンプ印字した際にインキがラベル基材2に染み込みすぎる結果、印字がにじむことになり、印字性能が低下してしまう。
平滑度が1000秒をこえると、スタンプ印字した際にインキがラベル基材2中に十分に浸透拡散することが困難となり、印字がかすれて、印字性能が低下してしまう。
【0025】
また、ラベル基材2は、インキの染み込み易さの指標として、JISのP8122によるサイズ度試験方法により計測したラベル基材2のサイズ度を、10〜30秒とすることもできる。
サイズ度が10秒未満では、ラベル基材2が粗すぎて、スタンプ印字した際にインキがラベル基材2に染み込みすぎる結果、印字がにじむことになり、印字性能が低下してしまう。
サイズ度が30秒をこえると、スタンプ印字した際にインキがラベル基材2中に十分に浸透拡散することが困難となり、印字がかすれて、印字性能が低下してしまう。
【0026】
粘着剤層3は、その厚さが10〜30μmであり、任意のタイプの粘着剤をラベル基材2の裏面側に塗工することができる。たとえば、ゴム系やアクリル系のホットメルト粘着剤あるいはエマルジョン粘着剤などを採用可能である。
なお、図1に示すように、帯状のラベル基材2については、粘着剤層3を内側にしてロール状に巻いている。
【0027】
剥離剤層5は、剥離剤として、たとえば紫外線硬化型のシリコーンを主成分とするものを採用可能である。
剥離剤層5は、この剥離剤の塗工領域12および非塗工領域13を有し、剥離剤層5におけるこの塗工領域12の面積割合を、70〜99%とするとともに、剥離剤を塗工していない非塗工領域13は、剥離剤の塗工領域12に対してこれを均一に分散配置している。
塗工領域12の面積割合が70%未満では、剥離剤層5による粘着剤層3の貼付き防止作用が低下するとともに、スタンプ印字した際のインキが比較的大きな面積でラベル基材2に供給されることになり、印字精度の低下はもちろん、印字がにじむことになり、印字性能が低下してしまう。
塗工領域12の面積割合が99%をこえると、剥離剤層5による粘着剤層3の貼付き防止作用を確保することはできるが、スタンプ印字した際のインキが十分な面積でラベル基材2に供給されずに、印字がかすれて、印字性能が低下してしまう。
【0028】
剥離剤層5における塗工領域12および非塗工領域13の面積比は、99:1〜70:30としている。
面積比が99:1をこえると、剥離剤層5による粘着剤層3の貼付き防止作用を確保することはできるが、スタンプ印字した際のインキが十分な面積でラベル基材2に供給されずに、印字がかすれて、印字性能が低下してしまう。
面積比が70:30未満では、剥離剤層5による粘着剤層3の貼付き防止作用が低下するとともに、スタンプ印字した際のインキが比較的大きな面積でラベル基材2に供給されることになり、印字精度の低下はもちろん、印字がにじむことになり、印字性能が低下してしまう。
【0029】
剥離剤層5における剥離剤の塗工量は、これを0.1〜3.0g/mとすることができる。
塗工量が0.1g/m未満では、剥離剤層5による粘着剤層3の貼付き防止作用が低下してしまう。
塗工量が3.0g/mをこえると、ラベル基材2の表面において、非塗工領域13の形成が困難となる結果、スタンプ印字した際のインキが剥離剤層5の内方部に染み込んでいかず、印字がかすれて、印字性能が低下してしまう。
【0030】
剥離剤層5における塗工領域12および非塗工領域13は、剥離剤をラベル基材2の表面に網点印刷することにより、これを形成することができる。
非塗工領域13の網点形状は、たとえば円形や楕円形はもちろん、三角形状や正方形状あるいは長方形状など任意の形状を採用可能である。
【0031】
バリアー層11は、非塗工領域13からラベル基材2の内部に浸透ないし染み込んでくるインキをラベル基材2の内部に止め、適正に分散して滞留することができるようにするとともに、インキが粘着剤層3側に浸透して、いわゆるブリードアウトすることを防止し、さらには粘着剤層3からさらに被貼付け体の表面にまで貫通してこれを汚してしまうことを防止するための層である。
バリアー層11を形成するバリアー剤としては、紫外線硬化型樹脂など、インキの粘着剤層3側への浸透を防止可能な任意のものを選択可能である。このほか、ポリエチレンやポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのフィルムをラミネートしてもよい。
【0032】
台紙なしラベル10には、所定のピッチで移送用スリット14を形成し、携帯式ラベル印字貼付け機(図4、図5、後述)内でこれを移送する際に、移送ローラー29(図4)による移送、および台紙なしラベル切断ユニット25(図4)による切断によって、帯状の台紙なしラベル10から単葉のラベル片10Aとすることができる。
なお、移送用スリット14に合わせて台紙なしラベル10の両端側から内方部に向かって任意の数の切り目から構成したミシン目15を形成し、台紙なしラベル切断ユニット25による切断作用をより容易にすることができる。
【0033】
図4は、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20の側面図、図5は、同、用紙ホルダー22およびプラテンユニット24を開放した状態の側面図である。
携帯式ラベル印字貼付け機20は、左右(紙面表裏)一対の側板21と、台紙なしラベル10の用紙ホルダー22と、操作レバー23と、プラテンユニット24と、台紙なしラベル切断ユニット25と、印字器26と、貼付けローラー27と、を有する。
【0034】
左右一対の側板21は、操作者が握持可能なグリップ28を一体に形成するとともに、このグリップ28とともに操作レバー23を握持および解放操作可能としている。
【0035】
用紙ホルダー22は、ロール状とした台紙なしラベル10を保持し、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20の機内に帯状に供給可能とする。
【0036】
プラテンユニット24は、移送ローラー29と、押付けユニット30と、移送用無端ベルト31と、を有し、移送ローラー29および押付けユニット30の間に台紙なしラベル10を挟持して、操作レバー23の操作とともに、台紙なしラベル10を移送用無端ベルト31の方向へ移送し、移送用無端ベルト31がさらに貼付けローラー27の下方部まで移送発行可能とする。
なお、一方の側板21に設けた開閉用つまみ32を操作することによりプラテンユニット24を側板21に対して開放状体とすることにより、台紙なしラベル10を携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20の内部に装填可能である。
【0037】
台紙なしラベル切断ユニット25は、切断コマ(図示せず)を台紙なしラベル10の幅方向に移動することにより、台紙なしラベル10の移送用スリット14およびミシン目15の間の接続部を切断して単葉の単葉のラベル片10Aとする。
【0038】
印字器26は、各種の文字および記号用の印字用活字33およびインキローラー34を有し、インキローラー34からのインキを印字用活字33に転写し、操作レバー23の握持により印字器26を移送用無端ベルト31上の台紙なしラベル10(ラベル片10A)に所定の押圧力で押し付けスタンプすることにより、印字を可能とする。
【0039】
貼付けローラー27は、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20の外部に印字発行されてきた単葉のラベル片10Aを所定の被貼付け体に貼り付け可能とする。
【0040】
操作者は、グリップ28および操作レバー23を握持操作して携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20内の印字器26および台紙なしラベル切断ユニット25を駆動するとともに、この握持操作を解放してプラテンユニット24により台紙なしラベル10を一ピッチ分だけ移送後、貼付けローラー27による台紙なしラベル10の貼付け操作を行うことになる。
【0041】
こうした構成の台紙なしラベル10および携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20において、とくに図3に示すように、印字器26ないしその印字用活字33による台紙なしラベル10表面への押当て動作により、印字用活字33のインキが台紙なしラベル10の最上層側の剥離剤層5に対向するが、剥離剤の塗工領域12に面する印字用活字33のインキは塗工領域12には付着しないとともにラベル基材2の内部には浸透しない。
一方、剥離剤の非塗工領域13に面した印字用活字33部分のみからインキがラベル基材2の内部に浸透して(図3中、仮想線で示した浸透インキ35、35Aを参照)、所定の印字を行うことができ、剥離剤は一般的には無色透明であるので、この印字内容を視認可能である。
しかも、浸透インキ35のうち、粘着剤層3まで到達しようとする部分(図3中、中央の浸透インキ35A)はバリアー層11によりその分散ないし貫通をブロックされるので、粘着剤層3を貫通して被貼付け体までに浸み出してこれを汚すおそれはないとともに、逆に粘着剤層3の成分がラベル基材2を通して上層のラベル基材2側に浸み出すことをも防止可能である。
【0042】
また、従来のラベル連続体1(図8)がラベル印字貼付け機に装填された場合には、ラベル片8の消費にともなって不要となった台紙6が長く伸びて作業の邪魔になるという問題があったが、本発明の台紙なしラベル10では、台紙6自体がないためにこのような問題は解消される。
さらに、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20に装填する台紙なしラベル10は、従来のような台紙6を積層する必要がないため、ロール形態としたときにその厚さ分だけ薄くすることが可能となり(台紙なしラベル10に設けられるバリアー層11の厚さは台紙6の厚さに比較しても十分に薄い)、したがって、ロール一巻あたりのラベル片8の枚数を増やすことができる。
【0043】
図6は、台紙なしラベル10を製造するための台紙なしラベル製造装置40の切り目形成工程までの概略側面図、図7は、台紙なしラベル製造装置40の最終巻き取り工程までの概略側面図である。
図6および図7に示すように、台紙なしラベル製造装置40は、ラベル基材一次供給部41と、印刷部42と、剥離剤塗工部43と、切り目形成部44と、一次巻取り部45と(以上、図6)、ラベル基材二次供給部46と、バリアー剤塗工部47と、粘着剤塗工部48と、最終巻取り部49と(以上、図7)、を有し、それぞれ必要な部位に複数本のガイドローラーを配置している。
【0044】
まず図6に示すように、ラベル基材一次供給部41は、一次供給ローラー50を有し、一次供給ローラー50からラベル基材2の原反を帯状に供給する。
【0045】
印刷部42は、印刷ユニット51と、印刷用版52と、印刷用圧胴53と、紫外線照射部54と、を有し、ラベル基材2の表面側に必要な情報(たとえば台紙なしラベル10を値札として利用する場合に、商品を販売する小売店の名称などの固定情報)をあらかじめ印刷する(固定情報印刷工程)。
【0046】
剥離剤塗工部43は、剥離剤塗工ユニット55と、網点印刷用版56と、網点印刷用圧胴57と、紫外線照射部58と、を有し、ラベル基材2の表面に剥離剤の塗工領域12および非塗工領域13を有するように剥離剤層5を形成する(剥離剤層形成工程)
【0047】
切り目形成部44は、ダイローラー59と、アンビルローラー60と、を有し、移送用スリット14およびミシン目15などを形成する(切り目形成工程)。
【0048】
一次巻取り部45は、巻取りローラー61を有し、ラベル基材2に剥離剤層5および移送用スリット14およびミシン目15などを形成した中間生成基材62を巻取りローラー61に巻き取る。
【0049】
つぎに図7に示すように、ラベル基材二次供給部46は、二次供給ローラー63を有し、二次供給ローラー63から上記中間生成基材62を帯状に供給する。
【0050】
バリアー剤塗工部47は、バリアー剤塗工ユニット64と、バリアー剤印刷用版65と、バリアー剤印刷用圧胴66と、紫外線照射部67と、を有し、ラベル基材2の裏面側にバリアー層11を形成する(バリアー層形成工程)。
【0051】
粘着剤塗工部48は、粘着剤タンク68と、ホットメルト塗工ヘッド69と、チルローラー70と、を有し、バリアー層11のさらに裏面側に粘着剤を塗工して、バリアー層11の裏面に粘着剤層3を形成する(粘着剤層形成工程)。
【0052】
最終巻取り部49は、最終巻取りローラー71を有し、台紙なしラベル10をロール状に巻き取る(最終巻取り工程)。
なお、ロール状の台紙なしラベル10を携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20などに装填可能とするために、最終巻取りローラー71から、小卷き工程(図示せず)を経て、図1に示したロール状の台紙なしラベル10のような最終製品とする。
【0053】
かくして、従来のラベル連続体1(図8)ように剥離紙としての台紙6を必要とせずにロール状ないしは積層状態に準備可能であり、携帯式台紙なしラベル印字貼付け機20(図4)に装填して、移送および印字を従来と同様に支障なく行うことができる台紙なしラベル10を製造することができる。
また、台紙なしラベル10を製造するための既述したラベル基材一次供給部41、印刷部42、剥離剤塗工部43、切り目形成部44、一次巻取り部45、ラベル基材二次供給部46、バリアー剤塗工部47、粘着剤塗工部48および最終巻取り部49は、従来のラベル製造装置のものを流用することができるので、製造コストが上昇することもない。
【0054】
なお、得られたロール状の台紙なしラベル10について、JIS Z 0237による低速巻戻し力は、5〜300gf/50mm(49〜2940mN/50mm)であることが好ましい。より好ましくは、30〜250gf/50mm(294〜2450mN/50mm)、さらに、より好ましくは、30〜100gf/50mm(294〜980mN/50mm)である。
低速巻戻し力が、5gf/50mm未満の場合には、台紙なしラベル10のロールが変形してしまうおそれがある。
低速巻戻し力、300gf/50mmをこえる場合には、台紙なしラベル10の巻出しの際に移送用スリット14やミシン目15の部分で切れたり破れるリスクが高くなる。
【0055】
また、台紙なしラベル製造装置40としては、上述の各工程を図6および図7に分離して示したような分離工程とせずに、一連の工程として台紙なしラベル10を製造するように構成、制御することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ラベル連続体(従来、図8)
2 ラベル基材
3 粘着剤層
4 台紙基材
5 剥離剤層
6 台紙
7 切り目
8 単葉のラベル片
10 台紙なしラベル(実施例、図1)
10A 台紙なしラベル10の単葉のラベル片
11 バリアー層
12 剥離剤層5の剥離剤の塗工領域
13 剥離剤層5の剥離剤の非塗工領域
14 移送用スリット
15 ミシン目
20 携帯式台紙なしラベル印字貼付け機(図4、図5)
21 側板
22 用紙ホルダー
23 操作レバー
24 プラテンユニット
25 台紙なしラベル切断ユニット
26 印字器
27 貼付けローラー
28 グリップ
29 移送ローラー
30 押付けユニット
31 移送用無端ベルト
32 開閉用つまみ
33 印字用活字
34 インキローラー
35 インキローラー35からラベル基材2への浸透インキ(図3)
35A インキローラー35から粘着剤層3まで到達しようとする、図3中、中央の浸透インキ
40 台紙なしラベル製造装置(図6、図7)
41 ラベル基材一次供給部(図6)
42 印刷部
43 剥離剤塗工部
44 切り目形成部
45 一次巻取り部
46 ラベル基材二次供給部(図7)
47 バリアー剤塗工部
48 粘着剤塗工部
49 最終巻取り部
50 一次供給ローラー(図6)
51 印刷ユニット
52 印刷用版
53 印刷用圧胴
54 紫外線照射部
55 剥離剤塗工ユニット
56 網点印刷用版
57 網点印刷用圧胴
58 紫外線照射部
59 ダイローラー
60 アンビルローラー
61 巻取りローラー
62 中間生成基材
63 二次供給ローラー(図7)
64 バリアー剤塗工ユニット
65 バリアー剤印刷用版
66 バリアー剤印刷用圧胴
67 紫外線照射部
68 粘着剤タンク
69 ホットメルト塗工ヘッド
70 チルローラー
71 最終巻取りローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル基材と、
このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層と、
前記ラベル基材の表面に設けた剥離剤層と、を有する台紙なしラベルであって、
前記剥離剤層は、剥離剤の塗工領域および非塗工領域を有し、
前記剥離剤層におけるこの塗工領域の面積割合を、70〜99%とするとともに、
JISのP8119による平滑度試験方法により計測した前記ラベル基材の平滑度を、40〜1000秒とし、さらに、
前記ラベル基材と前記粘着剤層との間にバリアー層を設けたことを特徴とする台紙なしラベル。
【請求項2】
前記剥離剤を塗工していない前記非塗工領域は、前記剥離剤の前記塗工領域に対してこれを均一に分散配置していることを特徴とする請求項1記載の台紙なしラベル。
【請求項3】
前記剥離剤層における前記塗工領域および非塗工領域の面積比は、99:1〜70:30としていることを特徴とする請求項1または2記載の台紙なしラベル。
【請求項4】
前記剥離剤層における前記塗工領域および非塗工領域は、前記剥離剤を前記ラベル基材の表面に網点印刷することにより、これを形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の台紙なしラベル。
【請求項5】
前記剥離剤層における前記剥離剤の塗工量は、これを0.1〜3.0g/mとしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の台紙なしラベル。
【請求項6】
JISのP8122によるサイズ度試験方法により計測した前記ラベル基材のサイズ度を、10〜30秒としたことを特徴とする1ないし5のいずれかに請求項記載の台紙なしラベル。
【請求項7】
前記バリアー層は、紫外線硬化型樹脂によりこれを形成したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の台紙なしラベル。
【請求項8】
前記ラベル基材は、これを帯状とするとともに、
前記粘着剤層を内側にしてロール状に巻いていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の台紙なしラベル。
【請求項9】
前記ラベル基材に所定ピッチで移送用スリットを形成することにより当該台紙なしラベルを移送可能とするとともに、
この移送用スリットの部分において前記ラベル基材を幅方向に切断して単葉のラベル片を形成可能としていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の台紙なしラベル。
【請求項10】
帯状のラベル基材と、
このラベル基材の裏面に設けた粘着剤層と、
前記ラベル基材の表面に設けた剥離剤層と、を有する台紙なしラベルの製造方法であって、
前記ラベル基材は、JISのP8119による平滑度試験方法により計測したその平滑度を、40〜1000秒としているとともに、
前記ラベル基材の表面に、剥離剤の塗工領域および非塗工領域を有するように前記剥離剤層を形成する剥離剤層形成工程と、
前記ラベル基材の裏面にバリアー層を形成するバリアー層形成工程と、
このバリアー層の裏面に前記粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
を有することを特徴とする台紙なしラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−76906(P2013−76906A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217533(P2011−217533)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】