説明

合せマークおよびその製造方法

【課題】合せマークの検出時における位置の特定を容易にする手段を提供する。
【解決手段】合せマークが、シリコン基板と、シリコン基板のおもて面に形成された凹部と、凹部のシリコン基板のおもて面との角部から離間して形成されたエピタキシャル層と、凹部の内面とエピタキシャル層のまでの間の前記シリコン基板のおもて面とに形成された酸化膜と、酸化膜上に形成された多結晶シリコン層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚の厚いエピタキシャル層を形成するシリコン基板のパターン合せに用いる合せマークおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動や各種電源用IC等のパワーデバイスにおいては、駆動に必要な耐圧の確保や寄生抵抗成分の削減のために膜厚の厚いエピタキシャル層が用いられている。
このような厚いエピタキシャル層を形成するシリコン基板においては、シリコン基板のおもて面にP型またはN型の高濃度埋込層を島状に形成しておき、エピタキシャル層の形成後に、エピタキシャル層上に形成される半導体素子と、高濃度埋込層との位置合せを正確に行う必要があり、シリコン基板に合せマークとなる凹部を形成してこれを基準に高濃度埋込層と、エピタキシャル層上に形成される半導体素子の各パターンとの位置合せを行っているが、エピタキシャル層が厚い場合には、シリコン基板上に形成された凹部とエピタキシャル成長後にエピタキシャル層上に形成される凹部との間に位置ずれ(パターンシフトという。)が生じ、正確な位置合せが困難になるという問題が生ずる。
【0003】
例えば、図6に示すように、シリコン基板51のおもて面に形成された高濃度埋込層52から離間させて合せマークとして用いる凹部53を形成した後に、厚いエピタキシャル層54を形成すると、エピタキシャル層54上に形成される凹部53aは、図6に破線の矢印で示す方向にシフトして形成され、パターンシフトが生ずる。
この場合に、シリコン基板のおもて面の結晶面が、<100>面に対して2〜5度のオフセットアングルが設定されたものである場合に、トリクロルシラン(SiHCl)をソースガスとした常圧条件でのエピタキシャル成長では、1μm当り0.3μm程度のシフト量が観測されている。
【0004】
このパターンシフトを防止するために、従来の合せマークは、シリコン基板上に合せマークとなる凹部を形成し、高濃度埋込層を形成した後に、比較的低温度で薄い第1のエピタキシャル層を形成し、その後に高温度で厚い第2のエピタキシャル層を形成して凹部のパターンシフトを防止している(例えば、特許文献1参照。)。
また、シリコン基板上に合せマークの形成に用いる多結晶シリコン層を形成し、多結晶シリコン層上にシリコン窒化膜を形成して合せマークに用いる多結晶シリコン層上の領域を除く領域のシリコン窒化膜を除去し、残留したシリコン窒化膜を基準に高濃度埋込層を形成した後に、残留させたシリコン窒化膜等を除去してシリコン基板および残留させたシリコン窒化膜下の多結晶シリコン層を露出させ、エピタキシャル成長により、シリコン基板上には単結晶シリコンからなるエピタキシャル層を形成し、残留させた多結晶シリコン層上に形成される多結晶シリコン層をエピタキシャル層から突出させて合せマークとして用いているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、シリコン基板上に部分的に酸化膜を残留させ、高濃度埋込層を形成した後に、酸化膜上を除くシリコン基板上の領域にエピタキシャル成長によりエピタキシャル層を形成して、シリコン基板上に部分的に残留させた酸化膜を合せマークとして用いているものもある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−343956号公報(第3頁段落0020−第4頁段落0024、第3図、第4図)
【特許文献2】特開平7−153669号公報(第3頁段落0013−第4頁段落0018、第1図)
【特許文献3】特開2001−168007号公報(第3頁段落0014−0027、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、エピタキシャル成長における成長速度は、結晶面毎に異なり、<100>面の成長速度が最も速く、<111>面の成長速度が最も遅い。
このため、図7に示すように、2点鎖線で示すシリコン基板51に形成した凹部53のシリコン基板51との角部には成長に伴って<111>面が現出し、図7に示す変形が生じ、エピタキシャル層54上に形成される凹部53aの角部にダレが形成される。
【0007】
しかしながら、上述した従来の特許文献1の技術においては、シリコン基板上に合せマークとなる凹部を形成し、薄い第1のエピタキシャル層を形成した後に高温度で厚い第2のエピタキシャル層を形成しているため、厚いエピタキシャル層を形成したときに、エピタキシャル層上に形成される凹部の角部に結晶面の成長速度の差に起因するダレが形成され、凹部の角部が不鮮明になって、レーザ光線等により合せマークを検出するときに正確な位置の特定が困難になるというという問題がある。
【0008】
また、一般にエピタキシャル成長における単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度は異なり、シリコン基板のおもて面が<100>面の場合は、単結晶シリコンが多結晶シリコンより速く成長する。また多結晶シリコンの成長方向は結晶粒により異なるので、厚いエピタキシャル層を形成すると、単結晶シリコンが多結晶シリコンを横方向に押し、その押圧量が多結晶シリコンの成長方向によりバラツキ、単結晶シリコンが多結晶シリコンとの界面に細かな凹凸が形成される。
【0009】
特許文献2の技術においては、残留させた多結晶シリコン層上にエピタキシャル成長時に形成される多結晶シリコン層を、単結晶シリコンからなるエピタキシャル層から突出させて合せマークを形成しているため、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差および多結晶シリコンの成長方向の多様性に起因して凸部の角部に細かな凹凸が形成され、突出させた単結晶シリコンの角部が不鮮明になって合せマークの検出時における正確な位置の特定が困難になるというという問題がある。
【0010】
特許文献3の技術においては、シリコン基板上の酸化膜上を除く領域にエピタキシャル成長によりエピタキシャル層を形成して、シリコン基板上に部分的に残留させた酸化膜を合せマーク形成しているため、ソースガスにモノシラン(SiH)等を用いた選択性のないエピタキシャル成長によりエピタキシャル層を形成すると、酸化膜上に多結晶シリコンが形成され、特許文献2と同様の問題が生ずる。
【0011】
また、ソースガスにジクロルシラン(SiHCl)等を用いたシリコン上にのみエピタキシャル層が形成される選択性を有するエピタキシャル成長によりエピタキシャル層を形成すると、エピタキシャルラテラルオーバーグロース(酸化膜上等へのエピタキシャル層の横成長)によって酸化膜の角部が覆われ、酸化膜の角部が不鮮明になって合せマークの検出時における正確な位置の特定が困難になるというという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、合せマークの検出時における位置の特定を容易にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、合せマークが、シリコン基板と、該シリコン基板のおもて面に形成された凹部と、該凹部の前記おもて面との角部から離間して形成されたエピタキシャル層と、前記凹部の内面と前記エピタキシャル層のまでの間の前記シリコン基板のおもて面とに形成された酸化膜とを備えることを特徴とする。
また、合せマークが、シリコン基板と、該シリコン基板のおもて面に形成された凹部と、該凹部の前記おもて面との角部から離間して形成されたエピタキシャル層と、前記凹部の内面と前記エピタキシャル層のまでの間の前記シリコン基板のおもて面とに形成された酸化膜とを備え、前記酸化膜上に、多結晶シリコン層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
これにより、本発明は、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差、多結晶シリコンの成長方向の多様性、および結晶面の成長速度の差による凹部への影響を確実に排除して、酸化膜に形成された凹部の角部を鮮明なものとすることができ、合せマークの検出時における正確な位置の特定を容易に行うことができるという効果が得られる。
また、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差、多結晶シリコンの成長方向の多様性、および結晶面の成長速度の差に起因する凹部の変形を排除して、酸化膜上の多結晶シリコン層に形成された凹部の角部を鮮明なものとすることができ、合せマークの検出時における正確な位置の特定を容易に行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明による合せマークおよびその製造方法の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1、図2は実施例1の合せマークの製造方法を示す説明図である。
本実施例の合せマークは、図2(P7)に示すように、シリコン基板1のおもて面1aに、P型またはN型の導電性不純物を高濃度に拡散させた高濃度埋込層2を形成し、高濃度埋込層2から所定の距離で離間させて凹部3を形成し、その凹部3の側面および底面(内面という。)と、その周囲のシリコン基板1のおもて面1a、つまり凹部3のシリコン基板1のおもて面1aとの角部から一定の間隔で離間させて形成されたエピタキシャル層4までの間のシリコン基板1のおもて面1aに酸化膜5を形成し、その酸化膜5上に多結晶シリコン層6を形成して構成され、凹部3により形成された多結晶シリコン層6の凹部3aの角部を基準として、その後の各工程における位置合せを行うものである。
【0017】
この場合に、凹部3のシリコン基板1のおもて面1aとの角部からエピタキシャル層4の端部までの一定の間隔は、形成されるエピタキシャル層4の膜厚以上の間隔に設定される。エピタキシャル層4の膜厚より狭い間隔で設定すると、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差および多結晶シリコンの成長方向の多様性に起因する歪みの影響が凹部3の角部により形成された多結晶シリコン層6の角部に及ぶ虞があるからである。
【0018】
なお、高濃度埋込層2の端部から凹部3の角部までの所定の距離は、これらの間が明確に離間しており、かつ凹部3の角部が基準として利用するに足る精度で形成されていればよい。
以下に、図1、図2を用い、Pで示す工程に従って本実施例の合せマークの製造方法について説明する。
【0019】
P1(図1)、おもて面1aの結晶面を<100>面(2〜5度程度のオフセットアングルを設けたものを含む。)としたシリコン基板1の所定の領域に高濃度埋込層2を形成し、熱酸化法によりシリコン基板1のおもて面1aに、膜厚500Å(オングストローム)程度の酸化シリコン(SiO)からなる熱酸化膜(第1のシリコン酸化膜)11を形成する。
【0020】
次いで、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により熱酸化膜11上に膜厚1000Å程度の窒化シリコン(Si)からなるシリコン窒化膜12を成膜し、そのシリコン窒化膜12上にプラズマCVD法により膜厚2000Å程度の酸化シリコンからなるプラズマ酸化膜(第2のシリコン酸化膜)13を形成する。
P2(図1)、プラズマ酸化膜13上に、フォトリソグラフィにより高濃度埋込層2から所定の距離で離間させて1辺30μm程度の矩形の開口を有するレジストマスクを形成し、これをマスクとして異方性エッチングにより、プラズマ酸化膜13、シリコン窒化膜12、熱酸化膜11、およびシリコン基板1のおもて面1aをエッチングしてシリコン基板1のおもて面1aに2μm程度の深さの凹部3を形成し、剥離剤により前記のレジストマスクを除去する。
【0021】
P3(図1)、熱燐酸(Hot−HPO)等を用いた窒化シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングにより、前記異方性エッチングにより形成されたシリコン窒化膜12の端面を選択的にサイドエッチングして、熱酸化膜11とプラズマ酸化膜13との間にシリコン窒化膜12を3μm程度エッチングした空洞14を形成する。
P4(図1)、空洞14の形成後に、フッ酸(HF)等の酸化シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングによりプラズマ酸化膜13を全て除去すると共に、シリコン窒化膜12下を含む熱酸化膜11を選択的にエッチングして、つまり空洞14に露出している熱酸化膜11のエッチングとその先のシリコン窒化膜12下の熱酸化膜11を選択的にサイドエッチングしてシリコン基板1のおもて面1aを凹部3の角部から10μm程度露出させる。
【0022】
P5(図1)、露出させたシリコン窒化膜12をマスクとして、熱酸化法により凹部3の内面および露出させたシリコン基板1のおもて面1aに、熱酸化膜11より厚い膜厚(本実施例では、2500Å程度)の酸化膜5を形成する。
P6(図2)、酸化膜5の形成後に、熱燐酸等によるウェットエッチングにより、シリコン窒化膜12を全て除去し、その後に、5%フッ酸に2分間浸漬するウェットエッチングにより酸化膜5および熱酸化膜11をエッチングして、熱酸化膜11下のシリコン基板1のおもて面1aを露出させる。
【0023】
このとき、本実施例の酸化膜5は、熱酸化膜11より厚い膜厚を有しているので、凹部3の内面およびその周囲のシリコン基板1のおもて面に酸化膜3が残留し、シリコン基板1に形成した凹部3により酸化膜5に凹部3bが形成される。
P7(図2)、熱酸化膜11下のシリコン基板1のおもて面1aを露出させた後に、ソースガスをモノシランまたはトリクロルシラン等とした水素ガス雰囲気中でのエピタキシャル成長により、露出させたシリコン基板1のおもて面1a上に単結晶シリコンからなる膜厚5μm程度のエピタキシャル層4を形成すると共に、酸化膜5上に多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層6を形成する。
【0024】
これにより、シリコン基板1に形成した凹部3により多結晶シリコン層6に凹部3aが形成され、この凹部3aの角部を基準に、その後の各工程における位置合せが行われる。
このように、本実施例の合せマークとして用いる凹部3aは、エピタキシャル層4の端部から一定の間隔を開けてシリコン基板1に形成された凹部3の内面およびその周囲に形成された酸化膜5上の多結晶シリコン層6に形成されているので、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差、および多結晶シリコンの成長方向の多様性に起因する歪みが凹部3aの角部に及ぶことはなく、結晶面の成長速度の差に起因する凹部3aの角部のダレが形成されることもないため、凹部3aの角部が鮮明になって合せマークの検出時における正確な位置の特定を容易に行うことができる。
【0025】
また、フォトリソグラフィ工程(上記工程P2)を1回行えば、その後は自己整合的に多結晶シリコン層6に凹部3aを形成することができるので、合せマークの形成における製造負荷を軽減することができ、製造コストの増加を最小限に抑制することができる。
以上説明したように、本実施例では、シリコン基板のおもて面に形成された凹部の角部から離間して形成されたエピタキシャル層のまでの間のシリコン基板のおもて面および凹部の内面に酸化膜を形成し、この酸化膜上に多結晶シリコン層を形成するようにしたことによって、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差、多結晶シリコンの成長方向の多様性、および結晶面の成長速度の差に起因する凹部の変形を排除して、酸化膜上の多結晶シリコン層に形成された凹部の角部を鮮明なものとすることができ、合せマークの検出時における正確な位置の特定を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0026】
図3は実施例2の合せマークを示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の合せマークは、図3に示すように、上記実施例1と同様にして形成された凹部3のシリコン基板1のおもて面1aとの角部から一定の間隔で離間させて形成されたエピタキシャル層4までの間のシリコン基板1のおもて面1aと、凹部3との内面に酸化膜5を形成して構成され、凹部3により形成された酸化膜5の凹部3b角部を基準として、その後の各工程における位置合せを行うものである。
【0027】
この場合に、凹部3のシリコン基板1のおもて面1aとの角部からエピタキシャル層4の端部までの一定の間隔は、実施例1と同様に設定される。エピタキシャル層4の膜厚より狭い間隔で設定すると、エピタキシャルラテラルオーバーグロースによって、凹部3の角部により形成された酸化膜5の角部が覆われてしまう虞があるからである。
なお、高濃度埋込層2の端部から凹部3の角部までの所定の距離は、実施例1と同様である。
【0028】
このような、酸化膜5の凹部3bは、以下のように製造される。
上記実施例1の工程P1〜P6と同様にして、熱酸化膜11下のシリコン基板1のおもて面1aを露出させると共に、凹部3の内面およびその周囲のシリコン基板1のおもて面に酸化膜3が残留させて、シリコン基板1に形成した凹部3により酸化膜5に凹部3b形成した後に、シリコン上にのみエピタキシャル層が選択的に形成される選択性を有するエピタキシャル成長(ソースガスをジクロルシラン等とした減圧下のエピタキシャル成長等)により、露出させたシリコン基板1のおもて面1a上に単結晶シリコンからなる膜厚5μm程度のエピタキシャル層4を形成する。
【0029】
このようにすれば、酸化膜5上には多結晶シリコンが形成されず、実施例1の工程P6で形成された酸化膜5の凹部3bをそのままの状態で残存させることができ、この凹部3bの角部を基準に、その後の各工程における位置合せを行うことができる。
このように、本実施例の合せマークとして用いる凹部3bは、エピタキシャル層4の端部から一定の間隔を開けてシリコン基板1に形成された凹部3の内面およびその周囲に形成された酸化膜5に形成されているので、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差や、多結晶シリコンの成長方向の多様性、結晶面の成長速度の差による影響を全く受けることがなく、凹部3bの鮮明な角部により合せマークの検出時における正確な位置の特定を更に容易に行うことができる。
【0030】
また、実施例1と同様にフォトリソグラフィ工程を1回行えば、その後は自己整合的に酸化膜5に凹部3bを形成することができるので、合せマークの形成における製造負荷を軽減することができ、製造コストの増加を最小限に抑制することができると共に、多結晶シリコン層6を除去するためのフォトリソグラフィ、エッチング工程が不要になり、合せマークの製造方法の簡素を図ることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施例では、シリコン基板のおもて面に形成された凹部の角部から離間して形成されたエピタキシャル層のまでの間のシリコン基板のおもて面および凹部の内面に酸化膜を形成するようにしたことによって、単結晶シリコンと多結晶シリコンとの成長速度の差、多結晶シリコンの成長方向の多様性、および結晶面の成長速度の差による凹部への影響を確実に排除して、酸化膜に形成された凹部の角部を鮮明なものとすることができ、合せマークの検出時における正確な位置の特定を、更に容易に行うことができる。
【0032】
なお、本実施例においては、おもて面1aの結晶面を<100>面としたシリコン基板1を例に説明したが、おもて面1aの結晶面を<111>面としたシリコン基板1の場合には、他の製造方法により、本実施例の合せマークを製造することが可能になる。
以下に、図4にPAで示す工程に従って、本実施例合せマークの他の製造方法について説明する。
【0033】
PA1、上記実施例1の工程P1〜P7と同様にして、熱酸化膜11下の露出させたシリコン基板1のおもて面1a上に単結晶シリコンからなる膜厚5μm程度のエピタキシャル層4を形成すると共に、酸化膜5上に多結晶シリコンからなる多結晶シリコン層6を形成して多結晶シリコン層6に凹部3aを形成する。
PA2、水酸化カリウム(KOH)またはヒドラジン(N・HXおよびN・2HX)の水溶液を用いた多結晶シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチング(例えば、水酸化カリウムを60℃で用いた場合の<111>面と多結晶シリコンのエッチングレートの選択比は1:60になる。)により多結晶シリコン層6を選択的にエッチングして、酸化膜5上の多結晶シリコン層6を全て除去する。
【0034】
これにより、酸化膜5の凹部3bを露出させることができ、露出させた凹部3bの角部を基準に、その後の各工程における位置合せを行うことができる。
このようにしても、フォトリソグラフィ工程を増加させることなく、おもて面1aの結晶面を<111>面としたシリコン基板1における本実施例の合せマークを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の合せマークの製造方法を示す説明図
【図2】実施例1の合せマークの製造方法を示す説明図
【図3】実施例2の合せマークを示す説明図
【図4】実施例2の合せマークの他の製造方法を示す説明図
【図5】エピタキシャル成長による凹部のパターンシフトを示す説明図
【図6】結晶面の成長速度の差に起因するダレを示す説明図
【符号の説明】
【0036】
1、51 シリコン基板
1a おもて面
2、52 高濃度埋込層
3、3a、3b、53、53a 凹部
4、54 エピタキシャル層
5 酸化膜
6 多結晶シリコン層
11 熱酸化膜(第1のシリコン酸化膜)
12 シリコン窒化膜
13 プラズマ酸化膜(第2のシリコン酸化膜)
14 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、該シリコン基板のおもて面に形成された凹部と、該凹部の前記おもて面との角部から離間して形成されたエピタキシャル層と、前記凹部の内面と前記エピタキシャル層のまでの間の前記シリコン基板のおもて面とに形成された酸化膜とを備えることを特徴とする合せマーク。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化膜上に、多結晶シリコン層が形成されていることを特徴とする合せマーク。
【請求項3】
シリコン基板のおもて面に、第1のシリコン酸化膜を形成する工程と、
該第1のシリコン酸化膜上に、シリコン窒化膜を形成する工程と、
該シリコン窒化膜上に、第2のシリコン酸化膜を形成する工程と、
異方性エッチングにより、前記第2のシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、第1のシリコン酸化膜、および前記シリコン基板のおもて面をエッチングしてシリコン基板のおもて面に凹部を形成する工程と、
窒化シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングにより、前記異方性エッチングにより形成されたシリコン窒化膜の端面を選択的にエッチングする工程と、
該シリコン窒化膜のエッチング後に、酸化シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングにより前記第2のシリコン酸化膜を除去すると共に、前記シリコン窒化膜下を含む前記第1のシリコン酸化膜を選択的にエッチングして前記シリコン基板のおもて面を露出させる工程と、
前記シリコン窒化膜をマスクとして、前記凹部の内面および露出させたシリコン基板のおもて面に、前記第1のシリコン酸化膜より厚い酸化膜を形成する工程と、
窒化シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングにより、前記シリコン窒化膜を除去する工程と、
該シリコン窒化膜の除去後に、ウェットエッチングにより前記酸化膜および第1のシリコン酸化膜をエッチングして、前記酸化膜を残留させると共に、前記第1のシリコン酸化膜下の前記シリコン基板のおもて面を露出させる工程と、を備えることを特徴とする合せマークの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
第1のシリコン酸化膜下の前記シリコン基板のおもて面を露出させた後に、エピタキシャル成長により、前記露出させたシリコン基板のおもて面上にエピタキシャル層を形成すると共に、前記酸化膜上に多結晶シリコン層を形成する工程を備えることを特徴とする合せマークの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記シリコン基板のおもて面の結晶面を<111>面とし、
前記酸化膜上の多結晶シリコン層を、多結晶シリコンを選択的にエッチングするウェットエッチングにより除去する工程を備えることを特徴とする合せマークの製造方法。
【請求項6】
請求項3において、
第1のシリコン酸化膜下の前記シリコン基板のおもて面を露出させた後に、シリコン上にのみエピタキシャル層が選択的に形成されるエピタキシャル成長により、前記露出させたシリコン基板のおもて面上にエピタキシャル層を形成する工程を備えることを特徴とする合せマークの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−192851(P2008−192851A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26044(P2007−26044)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】