説明

合わせガラス、窓材、及び窓付き壁面構造体

【課題】ガラス表面の一点に集中的に加えられる反復的な衝撃力に対しても高い耐貫通性や優れた耐衝撃性を有し、軽量で構造的に負担がかからず、経済性をも有する合わせガラスを提供する。
【解決手段】合わせガラス10は、厚さ0.7mmの薄板ガラスをガラス層11として7層積層し、各ガラス層11間にそれぞれ厚さ0.5mmのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を樹脂層12として介装したもので、ガラス層11と樹脂層12とを合わせて合計13層の積層体である。互いに隣接するガラス層11と樹脂層12において、ガラス層11の厚さに対する樹脂層12の厚さの比(樹脂層12の厚さ/ガラス層の厚さ11)は0.71である。また、樹脂層12の母材樹脂としてポリビニルブチラール(PVB)樹脂を使用したが、それ以外にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)やメタクリル樹脂(PMA)を使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建造物、自動車、鉄道車両等の窓材として好適な衝撃吸収性を有する合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に合わせガラスと呼ばれる2枚の板ガラスに中間層を介在させた積層ガラス体は、ガラスのみの構造では実現できない要求性能を満たすのに使用されている。このような合わせガラスの用途として、透視性を要する壁や床面等の構造部材、高い機械的耐久性を要する窓材、断熱性や耐熱性の高い窓材などが挙げられる。また、このような用途以外にも、液晶ディスプレイ等の画像表示用の電子デバイス部材としても用いられている。現在、ガラス積層体は、その用途が多様化しており、その製造、あるいは製品に関し、高度な技術を要するものも多い。そのため、合わせガラスについては、様々な要望を満たすために、これまで数多くの発明が行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも1層の合成樹脂組成物からなる中間膜によって接着されてなる合わせガラスであって、表裏のガラス板の厚さが異なり、その板厚の差が1mm以上である合わせガラスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、一方の面にガラスを、他方の面に耐衝撃性透明プラスチックを配置して一体的に構成される被覆透明体が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、一対のガラス板の間に、ポリエチレンテレフタレートからなるシートと加熱溶融によって粘着性を示す透明樹脂とからなる中間層を挿入し、接着一体化させてなる樹脂挿入合わせガラスが開示されている。
【特許文献1】特開2001−39743号公報
【特許文献2】特開2001−18326号公報
【特許文献3】特開2002−321948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の合わせガラスは、例えば鋭利な器具によりガラス表面の1点に集中的に反復して衝撃が加えられる場合など、集中的に反復して加えられる衝撃に対して、十分な耐貫通性を備えてない。
【0007】
また、合わせガラスは安全ガラスとしても用いられており、近年の社会構造の変化に伴い、高齢化世代の増加や家族構成人数の減少といったような多くの問題をはらんだ諸要因の影響にも配慮する必要がある。特に、高年齢の独り暮らしの場合、その居住空間には高い安全性が求められる。そのため、より高い安全性、より高度な信頼性を実現できる合わせガラスの要求が高まることが今後予測される。
【0008】
風冷強化などを施した強化ガラスは、一般には強度が高いとされる。しかし、上記のような反復的、かつ集中的に加えられる衝撃力に対しては、必ずしも強いものではない。表面の極小領域を陥没させるような外力が加わることによって、強化ガラス内の応力均衡が一旦崩れると、内部応力の解放により瞬時に完全崩壊してしまう。また、網入りガラスと呼ばれるものも、こじ開け、打破り等の犯罪予防には、大きな耐久効果を期待できない。網の存在による視角的な防犯性は有するが、破壊に必要な外力については、通常の窓板ガラスと大差はない。一点集中の反復衝撃への耐久性向上策としては、ガラス単板を単純に厚くする方法がある。しかし、耐久性向上の効果は確実に得られるものの、窓材の重量が非常に重くなり、特殊な窓枠が必要で施工が困難になる上、窓の開閉操作も困難となる。
【0009】
本発明は、ガラス表面の1点に集中的に加えられる反復的な衝撃力に対しても高い耐貫通性や耐衝撃性を有し、構造的に負担がかからない程度に軽量で経済性をも有し、各種建造物や車両といった用途に適した衝撃吸収性能に優れた合わせガラス、及びこの合わせガラスを使用した窓材及び窓付き壁面構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の合わせガラスは、ガラス層と樹脂層とが積層された合わせガラスであって、厚さ1mm以下のガラス層と厚さ1mm以下の樹脂層とが交互に積層された4層以上の積層構造部を有し、該積層構造部のガラス層の厚さに対する、該ガラス層に接する樹脂層の厚さの比が0.1から2.0の範囲内にあることを特徴とする。
【0011】
本発明の合わせガラスは、その全体が上記積層構造部によって構成されたものであってもよいし、その一部に上記積層構造部を含むものであってもよい。後者の場合、通常、合わせガラスの表裏の透光面のうち一方が上記積層構造部のガラス層によって形成され、他方が上記積層構造部以外のガラス層又は樹脂層によって形成された構造、または、表裏の透光面の双方が上記積層構造部以外のガラス層によって形成され、上記積層構造部は表裏の透光面から所定の深さ位置に在る構造、あるいは、表裏の透光面の双方が上記積層構造部のガラス層によって形成され、上記積層構造部の間に、上記積層構造部以外の樹脂層及び/又はガラス層が介装されている構造になる。また、本発明の合わせガラスは、上記積層構造部を2つ以上含んだものであっても良い。上記の何れの構造であっても、本発明の合わせガラスは透光面の同一点に衝撃を受けた際に、その表面又は内部に後述する衝撃吸収構造体を形成し、合わせガラスの耐衝撃性と耐貫通性の向上に寄与する。このような衝撃吸収構造体の機能をより効果的に発揮させるためには、上記積層構造部は、衝撃が加わる合わせガラスの透光面の近くに設けるのが好ましく、より好ましくは、衝撃が加わる合わせガラスの透光面を上記積層構造部のガラス層で形成することである。
【0012】
本発明の合わせガラスが、その一部に上記積層構造部を含むものである場合、上記積層構造部以外の部分は任意の形態及び材料で構成できる。例えば、上記積層構造部以外の部分を構成する樹脂層やガラス層の厚さは1mm以上であってもよく、また、2種類の樹脂層を互いに隣接させてもよい。さらに、上記積層構造部以外の部分は上記積層構造部に接着している必要はなく、両者の間に所定厚さの空間を設けてもよい。
【0013】
上記のガラス層は、無機ガラス材質を含むものであればよい。この無機ガラス以外に、結晶やセラミックス、金属、気泡等を適量含有していてもよい。例えば、ガラス層は、ガラスから板状物で構成する他、例えば結晶化ガラス(ガラスセラミックスともいう)からなる板状物で構成してもよい。
【0014】
上記の樹脂層は、樹脂を含有する材料で構成されたものであればよい。この樹脂層は、シート状又はフィルム状をなす樹脂材料を用いて形成したものであってもよいし、液状又はペースト状の樹脂材料を固化させて形成したものであってもよい。また、樹脂層は、母材樹脂に加え、他の種類の樹脂、金属、ガラス、カーボン、結晶等を含有したものであってもよい。ただし、樹脂層の母材樹脂の含有量は質量百分率で60%以上であることが好ましい。また、本発明の合わせガラスを建造物や車両の採光窓として使用する場合、ガラス層に加え、樹脂層にも可視光線の透過性が求められる。従って、母材樹脂の他、他の含有成分についても可視光透過性を著しく損なわない性質が求められる。また、母材樹脂と他の含有成分の濃度分布は均一であっても、不均一であってもよい。例えば、合わせガラスの透光面の外周近傍領域に、他の含有成分が多く分布するように濃度分布を付けてもよい。
【0015】
また、上記積層構造部におけるガラス層と樹脂層の厚さは何れも1mm以下であるが、各層の厚みが小さすぎると、安定した性能を実現するのに数多くの層を積層化する必要があり、合わせガラスの製造費用が嵩むものとなる。このため、ガラス層については、その厚さを0.05mm以上とすることが好ましく、0.1mm以上とするのがより好ましく、0.2mm以上とするのが一層好ましい。樹脂層については、その厚さを0.01mm以上とすることが好ましく、0.05mm以上とすることがより好ましく、0.1mm以上とすることが一層好ましい。
【0016】
本発明者は、透光面の1点(透光面の全面積に対して10%以下の面積を有する1つの領域内)に集中的に反復して衝撃力が加わるような過酷な条件下でも、充分に長い時間貫通されずに持ちこたえることができる構造の合わせガラスを得るため、研究を重ね、その結果、特定の構造条件を有する積層構造部を合わせガラスの全部又は一部に設けることにより、上記の衝撃力に対する緩和効果が得られ、高い耐貫通性や耐衝撃性が得られることを見出した。すなわち、本発明における積層構造部は、その表面の1点に反復して衝撃力が加わると、ガラス層の衝撃破壊で発生するガラス微粉が、衝撃による強い外力によって、隣接する樹脂層の樹脂と混練密着して混合物を形成し、その混合物が衝撃を吸収する衝撃吸収構造体として機能する。このような衝撃吸収構造体となる混合物は、衝撃力が加えられた透光面の部位の直下又はその近傍部で形成される。
【0017】
上記のように、本発明における積層構造部の構造上の第1の特徴は、交互に積層されたガラス層と樹脂層の厚さがそれぞれ1mm以下であり、かつ、積層数が4層以上であることである。このような構造とすることで、上記衝撃吸収構造体が反復衝撃によって生成され易くなる。また、積層構造部全体の厚さが比較的小さく、軽量で柔軟性を示す場合でも、高い耐貫通性と耐衝撃性が得られる。
【0018】
また、本発明における積層構造部の構造上の第2の特徴は、ガラス層の厚さとこれに接する樹脂層の厚さの比(樹脂層の厚さ/ガラス層の厚さ)が0.1から2.0の範囲内にあることである。このような構造とすることで、上記衝撃吸収構造体が確実に形成されると共に、耐貫通性等に関する充分な効果が得られ、かつ、ガラス層に対する樹脂層の接着力も十分に働く。
【0019】
本発明の合わせガラスは、表面及び/又は裏面の透光面を構成するガラス層の表面に、必要に応じて膜を被覆してよい。被覆できる膜の種類については、光学的な性能を変えるためのもの、表面の硬度を変更するためのもの、導電性や耐湿性などを調整して適宜改変するためのもの、等を任意に選択できる。
【0020】
表面に被覆できる膜としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、酸化タンタル(又はタンタラ)(Ta)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化クロム(Cr)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、酸化バナジウム(VO)、酸化チタンジルコニウム(ZrTiO)、硫化亜鉛(ZnS)、クリオライト(NaAlF)、チオライト(NaAlF1)、フッ化イットリウム(YF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化ガドリニウム(GdF)、フッ化ディスプロシウム(DyF)、フッ化鉛(PbF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)膜、酸化インジウム−スズ膜(ITO膜)、SiOとAlの多層膜、SiOx−TiOx系多層膜、SiO−Ta系多層膜、SiOx−LaOx−TiOx系列の多層膜、In−Y固容体膜、アルミナ固容体膜、金属薄膜、コロイド粒子分散膜、ポリメチルメタクリレート膜(PMMA膜)、ポリカーボネート膜(PC膜)、ポリスチレン膜、メチルメタクリレートスチレン共重合膜、ポリアクリレート膜等の組成を有するものが使用できる。
【0021】
被覆膜の形成方法については、所定の表面精度や機能を実現し、製造費用に支障のない方法であれば、任意の方法を採用できる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、あるいは熱CVD法、レーザーCVD法、プラズマCVD法、分子線エピタキシー法(MBE法)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、有機金属化学気相成長法(MOCVD)等の化学的気相成長法(またはCVD法)、さらにゾル−ゲル法、スピンコーティングやスクリーン印刷の塗布法、メッキ法等の液相成長法、が挙げられる。ただし、この中では特にCVD法は、低温で密着性の良い被覆膜が形成でき、種々の被膜に対応可能で、化合物の被膜形成にも適しているため好ましい方法である。
【0022】
また、本発明の合わせガラスは、上記積層構造部を構成する樹脂層の母材樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は材質によって様々な性質を有するため、用途に応じて適正な熱可塑性樹脂を選択することで、機械的強度や光透過率といった合わせガラスの各種の性質を調整できる。
【0023】
上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、セルロースアセテート(CA)、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ユリア樹脂(UP)、メラミン樹脂(MF)、不飽和ポリエステル(UP)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルアルコール(PVAL)、酢酸ビニル樹脂(PVAc)、アイオノマー(IO)、ポリメチルペンテン(TPX)、塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メタクリル−スチレン共重合樹脂(MS)、ポリアレート(PAR)、ポリアリルスルフォン(PASF)、ポリブタジエン(BR)、ポリエーテルスルフォン(PESF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用できる。
【0024】
上記の樹脂層に適用する樹脂材料は、衝撃力が加えられることによってガラス微粉と混ざり易く、さらに板ガラス(ガラス層)と接着し易い性質を有するものが求められる。このような性質を有する点において、熱可塑性樹脂は有用であり、ビニル系樹脂は概して好ましい。その中でも、ポリビニルブチラール(PVB)やエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)は、上記の樹脂層の母材樹脂として適している。この理由としては、これら樹脂材料が適度に柔らかく、ガラス材料に対する密着性が高いことが関係する。
【0025】
上記の衝撃吸収構造体の形成には、常温(25℃程度)における樹脂の柔らかさや、ガラスへの粘着性が関係する。これに加えて、衝撃時の発生熱による樹脂の軟化や粘着性増加も影響する。衝撃の際は、衝撃力の一部は熱に変換され、衝撃物の先端や被衝撃箇所の温度が上昇する。熱可塑性樹脂は、温度上昇によって、軟化が進むとともに、ガラスへの粘着性も増加する。これらの樹脂特性変化は、いずれも、衝撃時にガラス微粉と樹脂が機械的に混合されて混練密着物を形成するのを促進させる。また衝撃による温度上昇の度合いは、衝撃力がどのように加えられるか、あるいはその繰返し回数にもよるが、数℃から数十℃程度であり、熱可塑性樹脂は、この程度の温度上昇幅でも粘度の低下が生じる。そして、温度の上昇は、板ガラス(ガラス層)への粘着性を増加させるとともに、衝撃吸収物の混練形成に寄与することになる。
【0026】
一方、ポリカーボネートやポリイミド樹脂などの硬質樹脂では、樹脂の柔らかさや粘着性が不十分なため、衝撃吸収構造体が形成され難い。衝撃時の発生熱で多少温度が上昇しても、衝撃吸収構造体の形成を促進させるほどの粘性低下や粘着性増加は起こらない。
【0027】
ガラス材料については、通常、上記のガラス層に適用される厚さ1mm以下の薄板状態では、ガラス組成や構造に関係なく、衝撃破壊部で微粉が形成される。
【0028】
透光面の1点(透光面の全面積に対して10%以下の面積を有する1つの領域内)に集中的に反復して衝撃力が加えられ、上記積層構造部を構成する2以上のガラス層が破砕して上記衝撃吸収構造体が形成される場合、上記衝撃吸収体は、その30mmの容積当たりに、ガラス層の破砕によって生成された0.5mm以下のガラス粒子を少なくとも5個以上含むものであるならば、高い耐貫通性や耐衝撃性を確保するために好ましい。
【0029】
上記の衝撃力が加ええられた際、ガラス層は破壊されてクラック等の新生面を形成する。破壊されたガラス層の一部は、元のガラス層から解離してガラス粒子となる。そして、このガラス粒子は、隣接する樹脂層に埋没して混合され、衝撃吸収構造体を形成する。尚、衝撃吸収構造体の全容積は、合わせガラス全体の容積の10分の1以下であるのが好ましい。
【0030】
ここで、反復同一点衝撃の評価方法と評価装置について示す。試験装置の概略構成を、図3に示す。図3の装置図において、(A)は正面図、(B)は側面図であり、10aは合わせガラス、20は天井支持材、21は側面支持材、22はワイヤ材、23は合わせガラス固定用の前面枠体、24は枠体止め鋲、25は試料保持台、26は合わせガラスを固定用の後面枠体、27は枠体保護天井板、28は枠体保護側面板、Kはヘッド部分銅、Hはヘッド部先端、Lはヘッド部振上げ高さ、Pはヘッド部の振り子半径、Wはワイヤの固定間距離、をそれぞれ示す。この試験では、合わせガラス10aは、その周囲四辺の固定のため、前面枠体23と後面枠体26の間に挟み、枠体止め鋲24で固定する。また、合わせガラス10aは、そのガラス透光面が地面に垂直となるように試料保持台25で支持する。ヘッド部は、2本のワイヤ材22によって、天井支持材20にそれぞれ一端側が固定されている。ヘッド部の振り下ろしによって、ヘッド部の先端Hは、円弧状の軌跡を描いて合わせガラス10aのガラス透光面の所定領域に衝突する。この振り下ろしの動作を繰返し行うことで、ガラス透光面に反復同一点衝撃を加えることができる。
【0031】
合わせガラス10aを固定する枠体23、26には、コルク材等の柔らかい木材ではなく、樫材のような硬い木材を使用する。枠体23,26と合わせガラス10aが直接接触すると、その部分に応力が集中して割れが発生する虞があるため、枠体23,26と合わせガラス10aの接触部位には、厚さ3mmのブチルゴム製シートを挟む。これによって、枠体における衝撃の局所に集中を防止できる。枠体23、26の外形寸法は、内寸570×570mm、外寸800×730mmである。この衝撃試験に使用する合わせガラス10aは、枠体23、26の内寸よりも大きいガラス透光面を有するものであればよい。ワイヤ材22には、長さPが193cmのステンレス製のものを2本使用している。天井支持材20の2点に堅牢に固定したワイヤ材22の固定間距離Wは、1450mmである。合わせガラス10aを固定する枠体については、頑丈な構造とする必要があるため、枠体保護天井板27と枠体保護側面板28によって箱状の構造とし、ガラスが飛び散ったりしても安全に試験を行えるように配慮してある。
【0032】
ヘッド部は、鋼鉄製であり、その質量は6.1kgである。また、ヘッド部は、円柱形状分銅の円柱体Kの一方側底面に、半径3mmで先端加工した高さ450mmの鋼製円錐体Hをネジ構造で取り付けた構造を有している。ヘッド部は、天井面の異なる2箇所に固定した2本のワイヤ材22によって、合わせガラス10aの上方に保持されている。2本のワイヤ材22を使用するのは、ヘッド部がガラス表面に衝突する際に、衝突位置に対する横方向の位置ズレを防ぐためである。衝撃試験では、このヘッド部を振上げ高さLが700mmあるいは1400mmとなるように初期位置まで振上げ後、ヘッド部の保持を解除して降下させる。これによって、半径3mmのヘッド部の先端Hが、上方より弧を描きながら合わせガラスの所望箇所に衝突する。このような操作を繰返し行うことで、反復同一点衝撃に対する合わせガラスの耐久性を評価できる。
【0033】
この衝撃試験において、ヘッド部の振り上げ高さLとは、ガラス透光面に衝突するヘッド部の水平位置と、ワイヤが緊張した状態でガラス表面から遠ざけるように振上げたヘッド部の水平位置に対する高低差を示している。この試験では、この高低差を700mm、あるいは1400mmとしている。また、この試験では、一回の衝突でヘッド部先端Hが被試験体のガラス表面でバウンドして再度衝突するのを防止するため、再衝突防止機構(図示省略)が設けられている。この機構によって、この試験では衝突回数を正確に計測できるようになっている。
【0034】
この衝撃試験の試験環境については、通常は、室温の大気雰囲気で行う。そのとき、湿度は80%以下となるように配慮する。湿度がそれ以上に高いと、ガラスの破壊のし易さに影響して、試験体の評価結果に影響する可能性がある。ただし、高温や湿潤雰囲気等の特殊用途を想定して評価する場合は、それに合わせて試験雰囲気を調整するとよい。また、衝撃を受ける面の観察については、通常は肉眼によるものでよいが、微妙な判定を要する場合には、実体顕微鏡や撮影記録装置等を併用してもよい。
【0035】
このような極めて過酷な衝撃試験方法にて評価すると、既存の合わせガラスでは、合わせガラスの全ての層をヘッド部の先端Hが容易に貫通する。一方、本発明の合わせガラス10aでは、容易に貫通することはない。このため、ガラス透光面の同じ箇所をハンマーやバール等の鋭利な工具等を使用し、何度も繰返し打撃を加えて合わせガラスを破壊しようとしても、従来のように容易に2以上の板ガラスが破壊されて合わせガラスの全ての層が貫通されてしまうことがない。本発明の合わせガラスは、このような破壊防止効果を有するため、防犯に対して高い性能を発揮できる。
【0036】
反復同一点衝撃でガラス透光面に形成される衝撃吸収構造体について、その細部構造や組成等を把握するには、公知の分析方法や計測手段を使用できる。例えば、SEMやイオンクロマトグラフィー、IPC発光分析装置、画像解析装置、実体顕微鏡、蛍光X線分析装置、弾力測定装置、粘弾性計測装置等を適宜使用することで、衝撃吸収体の性状や組成を特定できる。
【0037】
本発明の窓材は、上記の合わせガラスの端面及び表裏の透光面の周辺部のうち少なくとも一方に保護部材が配設されてなることを特徴とする。
【0038】
上記の保護部材の施工目的の一つは、合わせガラスの運搬や建物等への施工において、端面や周辺部の打突損傷を保護することである。また、施工目的の二つ目は、樹脂層の変質を防ぐこと、さらに三つ目は、各接合層の界面の接着性低下による剥離を防ぐことである。
【0039】
また、本発明の窓材は、上述に加え、保護部材が板状、網状、フィルム状、ペースト状、布状、粒状、環状及び帯状の何れかの形態よりなる部材であるならば、端面や透光面周辺部を確実に保護することでき、用途に応じて最適な材料構成を選択できるため好ましい。
【0040】
本発明の窓材は、上述に加え、透光面の適所に取っ手等を取り付けるための貫通孔を有するものであってもよい。また、貫通孔に代えて、深さ方向の途中までに至る有底孔を設けても良い。透光面の表面には、凹凸状の彫刻や模様が施されていてもよい。凹凸状の模様は、膜付けやレーザー加工、プレス成形等を使用して形成したものを採用できる。
【0041】
本発明の窓付き壁面構造体は、上記の窓材を、採光用窓又は監視用窓として施工してなることを特徴とする。
【0042】
採光用窓又は監視用窓としては、具体的には、マンションや一戸建て住宅などの各種住宅建造物や、図書館、美術館、公衆便所、学校、警察、役所等の各種公共建造物等の窓材として利用できる。大型店舗、展示場、映画館等の多数の人が集う建造物にも利用できる。また、貴重品などを収納展示するショーケース材、屋内展示物等の透過遮蔽構造材、遊戯施設などのパーティション材、安全保護壁材等としても利用できる。さらには、各種実験施設等の制御監視窓、病院や介護施設等の監視窓、動物園や植物園等文化施設の採光窓や監視用仕切り窓などとしても、利用できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の合わせガラスは、以上説明したような構成を有するため、透光面の一点に集中して反復的に衝撃力が加えられる場合でも、高い耐貫通性や優れた耐衝撃性を実現し、かつ、構造的に負担がかからない程度に軽量な構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の合わせガラスと、この合わせガラスを使用する窓材、さらにこの窓材を施工した窓付き壁面構造体について、その詳細を具体的に説明する。
【実施例1】
【0045】
図1に、本発明の合わせガラスの部分断面図を示す。この実施例の合わせガラス10は、酸化物換算の質量百分率表示でSiO 45〜74%、B 2〜24%、RO 4〜30%(RO=MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)といった無アルカリホウ珪酸ガラスよりなる厚さ0.7mmの薄板ガラスをガラス層11として7層積層し、各ガラス層11間にそれぞれ厚さ0.5mmのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を樹脂層12として介装したもので、ガラス層11と樹脂層12とを合わせて合計13層の積層体である。互いに隣接するガラス層11と樹脂層12において、ガラス層11の厚さに対する樹脂層12の厚さの比(樹脂層12の厚さ/ガラス層の厚さ11)は0.71である。合わせガラス10は、厚さ0.7mmの薄板ガラスをガラス層11として7層積層し、各ガラス層11間にそれぞれ厚さ0.5mmのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を樹脂層12として介装したもので、ガラス層11と樹脂層12とを合わせて合計13層の積層体である。互いに隣接するガラス層11と樹脂層12において、ガラス層11の厚さに対する樹脂層12の厚さの比(樹脂層12の厚さ/ガラス層の厚さ11)は0.71である。
【0046】
また、この実施例では、樹脂層12の母材樹脂としてポリビニルブチラール(PVB)樹脂を使用したが、それ以外にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)やメタクリル樹脂(PMA)を使用してもよい。
【0047】
この合わせガラス10の用途例としては、半地下構造を有する住宅の半地下部屋内への採光を要する箇所への施工、が挙げられる。窓付き壁面構造体の天井材の一部を構成する窓材として使用することで、高い採光性が得られるとともに、衝撃力が加えられるような場合でも容易に貫通することがなく安全性を確保できる。
【0048】
この合わせガラス10は、次のようにして製造することができる。まず、ガラス層11を形成する所定寸法の清浄な薄板ガラスを所定枚数準備する。次に、樹脂層12を形成する樹脂材料、例えば上記の樹脂からなる所定寸法のフィルム状又はシート状の樹脂材を所定枚数準備する。そして、上記薄板ガラス間に上記樹脂材を介装して積層体を構成し、加熱圧着法によって成形する。ここでは、加熱圧着法を採用しているが、必要に応じて他の方法を適用してもよい。
【0049】
この合わせガラス10を、前記のような窓付き壁面構造体の天井材の一部に施工できる窓材とするため、図2に示すような保護構造を配した。ここでは、合わせガラス10の4つの平坦な端面の一部に、端面の幅に相当する7.9mm幅の厚さ0.5mmの帯状シート15を、保護部材として貼り付けた。帯状シート15の材料は、透明なポリエチレンシート材15である。帯状シート15の貼付けは、シート15の片面に粘着剤を塗布し、その面を合わせガラス10の端面に接着させた。このような構成とすることで、施工時に端面が壁面と擦れて生じる傷を効率よく防ぐことができる。また、施工後も長期に亘って安定した強度性能を実現できる。なお、この窓材の透光面の外形寸法は、横1000mm、縦1500mmであり、窓材全体の厚さは7.9mmである。そして、この窓材の透光面の角部は半径40mmにてR面加工されている。
【0050】
なお、この実施例では、保護部材として透明ポリエチレンの帯状シート材15を使用しているが、他のものでもよい。例えば、ガラス繊維を平織りした布状シートや網状シートを、端面に接着させた構造を採用できる。また、シリコン樹脂剤をペースト状にして端面に塗布することで、緩衝層とすることもできる。また、ガラス状カーボン粒子を端面に塗布してもよく、ポリプロピレン製の2.0mm厚の厚板を貼接した構造とすることもできる。これらの保護部材の貼接作業では、予め保護部材に適正な粘着剤を塗布したり、含浸させたりして、作業を簡便化してもよい。このとき、端面側に粘着剤を塗布しておくこともできる。また、加熱圧着などの手段を使用してもよい。
【実施例2】
【0051】
次に、本発明の合わせガラスと比較例の合わせガラスについて、その衝撃吸収性能を評価するために行った反復同一点衝撃試験について説明する。
【0052】
まず、反復同一点衝撃試験に使用する合わせガラスを構成するための板ガラスとして、日本電気硝子株式会社製の無アルカリガラス(ガラスコード OA−10)を、板厚0.7mmにてダウンドロー成形法で成形した。得られたこのOA−10の板ガラスを750mm×620mmに切断し、所定枚数を用意した。次いで、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)又はポリビニルブチラール(PVB)からなる所定厚さのフィルム状の樹脂材を所定枚数用意した。このフィルム状の樹脂材を、上記の各板ガラス間に介装し、その積層体を加熱圧着法にて成形した。
【0053】
上記の手順で得た合わせガラスを、前述した試験装置(図3参照)に取り付けて評価した。試験装置の構成及び試験方法は、前述のとおりである。ここでは、ヘッド部の繰り返し衝突操作において、毎回、ヘッド部が合わせガラスの全ての層を貫通するか否かを目視にて確認する。以上のような手順により、本発明の合わせガラスを実施例として評価し、比較例として従来使用されてきた市販の合わせガラスなどを用いて評価した。それらの結果を、表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例の試料No.1は、厚さ0.7mmのOA−10組成の無アルカリガラス板からなる6つのガラス層と、厚さ0.8mmのPVB樹脂からなる5つの樹脂層とが交互に積層された構造を有するものである。この試料No.1について、反復同一点衝撃試験を振上げ高さ700mmで実施すると、8回目の衝撃まで合わせガラスの全ての層をヘッド部先端Hが貫通せず、9回目にようやく貫通した。試料No.1の場合、3回目の衝撃後に、上記衝撃吸収構造体の形成が確認できた。この衝撃吸収構造体は、粘弾性を有するガラス粉とPVB樹脂の混合物よりなるものである。この混合物の性状を調べるために、PVB樹脂の溶剤(天然シトラスオイルや植物性界面活性剤を含有する溶剤等)を用いて、衝撃吸収構造体中の有機性成分を除去し、残留するガラス粒子をSEMや実体顕微鏡などを使用して確認した。この結果、上記の混合物(衝撃吸収構造体)は、容積30mm当たりガラス粒子を20個以上含んでいた。また、ガラス粒子の大きさは、0.1〜0.2mmであった。このガラス粒子がPVB樹脂と混合されて衝撃吸収構造体を形成し、衝撃を効率よく吸収できる構造になっていることが確認できた。また、蛍光X線分析や湿式化学分析からは、ガラス粒子がOA−10組成を有していることを確認できた。さらに、上記の混合物(衝撃吸収構造体)の容積を計測したところ、10mmであった。また、この実施例の試料No.1について、振り上げ高さを1400mmに倍増して、さらに評価を行った。その結果、試料No.1は、振り上げ高さを倍増しても、5回の衝撃後も貫通することがなく、十分な耐久性を有するものであった。
【0056】
実施例の試料No.2では、No.1と同様のガラス層と樹脂層{樹脂層はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)で形成している}を用い、8つのガラス層と7つの樹脂層とを交互に積層した。この試料No.2について、反復同一点衝撃試験を振上げ高さ700mmで実施したところ、この試料No.2は、9回の衝撃後もヘッド部先端Hが合わせガラスの全ての層が貫通されず、10回目で貫通した。この試料No.2では、5回目の衝撃後に、上記衝撃吸収構造体の形成が確認できた。図4及び図5に、10回目の衝撃を加えた後の合わせガラスをヘッド部が衝突したガラス透光面の側から撮影した拡大写真を示す。図5は、図4をネガポジ反転したものである。この写真では、試料の中央からは放射線状に細かい破面Tが形成され、中央部には衝撃吸収構造体Mが盛り上がって形成されていることがわかる。この衝撃吸収構造体M中のEVA樹脂を、溶剤溶解ではなく強熱加熱によって除去し、試料No.1と同様の手法で含まれているガラス粉を観察した。その結果、衝撃吸収構造体M中に含まれるガラス粒子の数は、衝撃吸収構造体Mの容積30mmについて50個以上であった。また、ガラス粒子の大きさは0.05〜0.3mmで、衝撃吸収構造体Mの容積は20mmであった。この衝撃吸収物Mの存在によって、効率よく衝撃力が吸収されていることを確認できた。
【0057】
この実施例の試料No.2についても、試料No.1と同様に、振り上げ高さを1400mmに倍増して、さらに評価を行った。その結果、振り上げ高さを倍増しても、15回の衝撃後も貫通することがなく、高い耐久性を有することがわかった。また、衝撃吸収構造体Mは、2回目の衝撃後に、2以上のガラス層が破砕された部位に形成されていることを確認した。衝撃吸収構造体Mの容積は、20mm以上であった。
【0058】
実施例の試料No.3では、No.1と同様のガラス層と樹脂層を用い、8つのガラス層と7つの樹脂層とを交互に積層した。この試料No.3について、反復同一点衝撃試験を振上げ高さが1400mmで実施したところ、6回の衝撃後も合わせガラスの全ての層が貫通されず、7回目で貫通した。またこの試料No.3では、衝撃を2回行った時点で、2以上のガラス層が破砕された部位に衝撃吸収構造体が形成された。
【0059】
実施例の試料No.4では、No.1と同様のガラス層と、No.1と同様の材料で厚さを0.4mmにした樹脂層とを用い、6つのガラス層と5つの樹脂層とを交互に積層した。この試料No.4について、反復同一点衝撃試験を振上げ高さが1400mmで実施したところ、4回の衝撃後も合わせガラスの全ての層が貫通されず、5回目で貫通した。また、この試料No.4では、衝撃を2回行った時点で、2以上のガラス層が破砕された部位に衝撃吸収構造体が形成された。
【0060】
比較例として、同じ反復同一点衝撃試験を試料No.101に行った。この試料は、通常の建造物などで使用される3.0mm厚のソーダ石灰ガラス製のガラス材からなる。樹脂層等を介した合わせガラスではなく、単純な板ガラスである。この試料No.101について、本発明の実施例と同様に評価したところ、700mmの振上げ高さ条件であっても、1回の衝撃で完全に貫通した(破壊した)。当然ながら、樹脂層等がないため、衝撃吸収構造体は形成されなかった。
【0061】
また、比較例である試料No.102は、3.0mm厚の2枚のソーダ石灰ガラス間に1.5mm厚のPVB層を介装したもので、一般的な合わせガラスである。この試料No.102について、振上げ高さ700mmの反復同一点衝撃試験を行ったところ、1回の衝撃にも持ちこたえられず、簡単に貫通孔が形成された。貫通部を調査したが、衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。さらに、振上げ高さ1400mmの条件で評価したところ、やはり1回目で貫通孔が形成され、衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。
【0062】
比較例である試料No.103は、3.0mm厚の2枚のソーダ石灰ガラス間に2.3mm厚のPVB層を介装したものである。この試料No.103について、振上げ高さ700mmにて反復同一点衝撃試験を行ったところ、1回目の衝撃には耐えたが、2回目の衝撃によって貫通孔が形成された。貫通孔の近傍を観察したが、衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。さらに、振上げ高さ1400mmの条件でも評価したが、1回目で貫通孔が形成され、衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。
【0063】
比較例である試料No.104は、3.0mm厚の2枚のソーダ石灰ガラス間に1.2mm厚のPC層を介装したものである。この試料No.104について、振上げ高さ700mmの反復同一点衝撃試験を行ったところ、試料No.103と同様、1回目の衝撃には耐えたが、2回目の衝撃によって貫通孔が形成された。衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。さらに、振上げ高さ1400mmの条件でも評価したが、1回目で貫通孔が形成され、やはり衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。
【0064】
比較例である試料No.105は、8mm厚の風冷強化ガラスと3mm厚のソーダ石灰ガラスの間に2.3mm厚のPVB層を介装したものである。この試料No.105について、振上げ高さ1400mmの反復同一点衝撃試験を行ったところ、7回までの衝撃には耐えたが、8回目の衝撃で貫通孔が形成された。これは、実施例の試料No.2よりも特性として劣る。そして、貫通孔の近傍を観察したが、衝撃吸収構造体の形成は見られなかった。
【0065】
以上のように、本発明の合わせガラスは、反復する同一点への衝撃に対して高い耐久性を有している。そのため、建造物等の住宅用窓材などに搭載される高い耐貫通性能を有する採光窓材として、優れた性能を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の合わせガラスの部分断面図。
【図2】本発明の合わせガラスを適用した窓材の斜視図。
【図3】反復点衝撃試験を行う装置の概念図であって(A)は正面図、(B)は側面図を表している。
【図4】本発明の合わせガラスの反復同一点衝撃試験で、実施例2のガラス表面の拡大写真。
【図5】本発明の合わせガラスの反復同一点衝撃試験で、実施例2のガラス表面の拡大写真のネガポジ反転像。
【符号の説明】
【0067】
10、10a 合わせガラス
11 ガラス層(薄板ガラス)
12 樹脂層
15 保護部材
100 窓材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス層と樹脂層とが積層された合わせガラスであって、
厚さ1mm以下のガラス層と厚さ1mm以下の樹脂層とが交互に積層された4層以上の積層構造部を有し、該積層構造部のガラス層の厚さに対する、該ガラス層に接する樹脂層の厚さの比が0.1から2.0の範囲内にあることを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
表裏の透光面のうち少なくとも一方が、前記積層構造部のガラス層によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記樹脂層の母材樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の合わせガラスの端面及び表裏の透光面の周辺部のうち少なくとも一方に保護部材が配設されてなることを特徴とする窓材。
【請求項5】
前記保護部材が、板状、網状、フィルム状、ペースト状、布状、粒状、環状及び帯状の中から選択される一の形態からなる部材であることを特徴とする請求項4に記載の窓材。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の窓材を採光用窓又は監視用窓として施工してなることを特徴とする窓付き壁面構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7243(P2009−7243A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139701(P2008−139701)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】