説明

合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液

【課題】遮熱粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液を提供する。
【解決手段】3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、熱可塑性樹脂と、分散剤と、可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、前記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である合わせガラス用中間膜。
[化1]


ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
[化2]


ただし、mは1〜100の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとしては、少なくとも一対のガラス間に、例えば、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂からなる合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
しかし、このような合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは安全性には優れているものの、遮熱性に劣るという問題点があった。光線のなかでも、可視光より長い780nm以上の波長を持つ赤外線は、紫外線と比較するとエネルギー量が約10%程度と小さいものの、熱的作用が大きく、いったん物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらすことから、一般に熱線と呼ばれている。従って、例えば、自動車のフロントガラスやサイドガラスから入射してくる光線のうち、熱的作用の大きな赤外線(熱線)を遮断できるようにすれば、遮熱性が高まり、自動車内部の温度上昇を抑えることができる。近年の傾向として、自動車等におけるガラス開口部面積が増大しており、合わせガラスの遮熱性を高くし、ガラス開口部に熱線カット機能を付与する必要が増大している。
【0004】
これに対して、特許文献1には、遮熱性能を有する錫ドープ酸化インジウム微粒子やアンチモンドープ酸化錫微粒子等の遮熱粒子をポリビニルアセタール樹脂に分散させてなる合わせガラス用中間膜が開示されている。このような合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは、遮熱性、電磁波透過性に優れる。
【0005】
しかしながら、近年、遮熱性能を有する錫ドープ酸化インジウム微粒子やアンチモンドープ酸化錫微粒子等の遮熱粒子の価格の高騰に伴い、これらの遮熱粒子の代わりに酸化亜鉛微粒子を用いることが検討されている。
しかし、酸化亜鉛微粒子は合わせガラス用中間膜中において分散性に劣るという問題があった。
遮熱粒子の分散性を高めるために、例えば、特許文献2には分散剤としてリン酸エステルを用いることが開示されている。しかしながら、酸化亜鉛微粒子とリン酸エステルとを組み合わせて用いても、酸化亜鉛微粒子の分散性は向上しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/25162号パンフレット
【特許文献2】特開2001−302288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、遮熱粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、熱可塑性樹脂と、分散剤と、可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、上記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である合わせガラス用中間膜である。
【0009】
【化1】

ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
【0010】
【化2】

ただし、mは1〜100の整数である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、特定の金属を含有する酸化亜鉛微粒子と、特定の分散剤とを組み合わせることにより、酸化亜鉛微粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜を得ることができ、このような合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスは遮熱性に優れるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の合わせガラス用中間膜は、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、熱可塑性樹脂と、分散剤と、可塑剤とを含有する。
【0013】
本発明の合わせガラス用中間膜は、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子を含有する。本発明の合わせガラス用中間膜においては、このような酸化亜鉛微粒子と、後述する特定の分散剤とを組み合わせることで、酸化亜鉛微粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0014】
上記3価の金属元素は特に限定されないが、ガリウム、アルミニウムが好適である。
【0015】
上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、共沈法、焼結法、アーク式放電気相法、噴霧熱分解法等が挙げられる。
【0016】
上記共沈法による場合は、例えば、水溶性の亜鉛化合物(例えば、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛等)と、3価の金属元素の水溶性の塩とを含有する水溶液を、アルカリ又は炭酸アルカリで中和することで共沈殿物を生成させ、その後還元雰囲気にて焼成することにより、酸化亜鉛微粒子を製造することができる。
【0017】
上記アーク式放電気相法による場合は、例えば、亜鉛蒸気と、3価の金属元素の蒸気とを酸化性ガスで反応させることにより、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子を製造することができる。
【0018】
上記噴霧熱分解法による場合は、例えば、水溶性亜鉛化合物と、3価の金属元素の水溶性の塩とを含む水溶液を、火炎、高温燃焼ガス又はプラズマ中にノズルを用いて微細に噴霧し、ついで、塩を熱分解するか、又は、金属イオンを酸化性ガスにより酸化させることにより、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子を製造することができる。
【0019】
上記3価の金属元素の水溶性の塩は、本発明の目的を阻害しなければ特に限定されず、該金属元素の無機塩、有機塩のいずれであってもよい。このような塩としては、例えば、該金属元素のハロゲン化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩や、これらの複塩等が挙げられる。
【0020】
上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子における上記3価の金属元素の含有量は特に限定されないが、亜鉛元素と3価の金属元素とのモル数の合計に占める3価の金属元素のモル数の割合の好ましい下限は1.0モル%、好ましい上限は10モル%である。上記3価の金属元素のモル数の割合が1.0モル%未満であると、得られる合わせガラス用中間膜を用いて製造される合わせガラスの赤外線透過率が低下しないことがある。上記3価の金属元素のモル数の割合が10モル%を超えると、酸化亜鉛微粒子の製造が困難になることがある。上記3価の金属元素のモル数の割合のより好ましい下限は1.5モル%、更に好ましい下限は2.0モル%であり、より好ましい上限は8.0モル%、更に好ましい上限は6.0モル%である。
【0021】
上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、合わせガラスの可視光透過率を高くするために、好ましい上限は500nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい上限は100nmである。
【0022】
本発明の合わせガラス用中間膜の上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は5.0重量部である。上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の含有量が0.01重量部未満であると、合わせガラスの赤外線透過率が低下しないことがある。上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の含有量が5.0重量部を超えると、合わせガラスの可視光線透過率が低下することがある。上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子の含有量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0023】
本発明の合わせガラス用中間膜は、分散剤を含有する。
また、上記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である。
【0024】
【化3】

ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
【0025】
【化4】

ただし、mは1〜100の整数である。
【0026】
本発明の合わせガラス用中間膜においては、このような分散剤と、上述した特定の酸化亜鉛微粒子とを組み合わせることで、酸化亜鉛微粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0027】
上記分散剤の数平均分子量Mnの下限は2000、上限は10000であることが好ましい。上記数平均分子量Mnを2000〜10000の範囲内とすることにより、酸化亜鉛微粒子の分散性により優れた合わせガラス用中間膜を得ることができる。上記数平均分子量Mnのより好ましい上限は8000、更に好ましい上限は6000である。
【0028】
上記分散剤のHLB値の下限は1、上限は3である。HLB値が1未満であると、上記分散剤の親油性が高くなるため、酸化亜鉛微粒子の表面への吸着が充分ではなく、酸化亜鉛微粒子の分散性が低下する。HLB値が3を超えると、上記分散剤の親水性が高くなるため、可塑剤との相溶性が低下する。HLB値の好ましい下限は1.1、好ましい上限は2.5である。
なお、本発明のHLB値は、グリフィン法により、以下の式で定義される。
HLB値=20×(分散剤の親水基の分子量/分散剤の分子量)
【0029】
上記分散剤は特に限定されず、例えば、SYグリスター(阪本薬品社製)、NIKKOL hexaglyn(日光ケミカル社製)、サンソフト(太陽化学社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明の合わせガラス用中間膜における上記分散剤の含有量は特に限定されないが、上記酸化亜鉛微粒子100重量部に対して好ましい下限が1.0重量部であり、好ましい上限が50重量部である。上記分散剤の含有量が1.0重量部未満であると、上記酸化亜鉛微粒子の分散性が低下するため、得られる合わせガラス用中間膜を用いて製造される合わせガラスの可視光線透過率が低下することがある。上記分散剤の含有量が50重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜を用いて製造される合わせガラスのヘーズが高くなったり、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力が低下したりすることがある。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は2.0重量部、更に好ましい下限は3.0重量部、より好ましい上限は40重量部、更に好ましい上限は35重量部である。
【0031】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有する。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。なかでも、可塑剤と併用するとガラスに対して優れた接着性を発揮する合わせガラス用中間膜が得られることから、ポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
【0032】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、水酸基量の好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%である。
水酸基量が15モル%未満であると、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下したり、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下したりすることがある。水酸基量が35モル%を超えると、得られる合わせガラス用中間膜が硬くなることがある。
【0034】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。上記重合度が200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記重合度が3000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は2500である。
【0035】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。
これらのアルデヒドは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑剤を含有する。
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられ、上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコールジアルキル酸エステル等が好適である。
【0037】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0038】
上記有機エステル可塑剤としては特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコールビス(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルの混合物、アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0039】
上記有機リン酸系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0040】
上記可塑剤は、特に加水分解を起こしにくいため、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、及び、トリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
本発明の合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましい下限が25重量部、好ましい上限が60重量部である。上記可塑剤の含有量が25重量部未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記可塑剤の含有量が60重量部を超えると、上記可塑剤がブリードアウトすることがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0042】
本発明の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、蛍光増白剤、青色顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0043】
上記熱線吸収剤は特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム微粒子、アンチモンドープ酸化錫微粒子、金属元素がドープされた酸化タングステン微粒子、6ホウ化ランタン微粒子、フタロシアニン化合物等が挙げられる。なかでも、上記熱線吸収剤は錫ドープ酸化インジウム微粒子であることが好ましい。
【0044】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子、分散剤、可塑剤と、必要に応じて配合する添加剤とを、上記熱可塑性樹脂に添加して混練し、成形する方法等が挙げられる。
上記混練の方法は特に限定されず、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー、カレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適することから、押出機を用いる方法が好適である。
また、上記成形する方法は特に限定されず、例えば、押し出し法、カレンダー法、プレス法等が挙げられる。
【0045】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記酸化亜鉛微粒子が微分散していることにより、得られる合わせガラスの可視光線透過率を高くし、赤外線透過率を低くすることができる。
本発明の合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスもまた、本発明の1つである。
【0046】
本発明の合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に本発明の合わせガラス用中間膜が挟持されている。
上記ガラスは特に限定されず、従来公知の透明板ガラス等を用いることができる。
また、ガラスの代わりにポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明プラスチック板を用いてもよい。
本発明の合わせガラスを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を用いてなることから、自動車等の車両のフロントガラス等に好適に用いることができる。
【0048】
また、本発明の合わせガラス用中間膜を製造する際に得られる酸化亜鉛微粒子分散液、すなわち、3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有する酸化亜鉛微粒子分散液であって、上記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である酸化亜鉛微粒子分散液もまた、本発明の1つである。
【0049】
【化5】

ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
【0050】
【化6】

ただし、mは1〜100の整数である。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、遮熱粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0053】
(実施例1)
(1)酸化亜鉛微粒子分散液の作製
3価の金属元素としてガリウムを含有する酸化亜鉛微粒子(ガリウムの含有量3モル%、BET値60m/g)30重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート267重量部と、分散剤としてSYグリスターCRED(阪本薬品社製、HLB値1.1、m及びnは1〜100の整数、数平均分子量(Mn)=5659)3重量部と、ジルコニアビーズ(体積平均粒子径0.1mm)1125重量部とを混合した後、800mlのバッチ式ビーズミルの分散容器に投入し、3時間分散させることにより酸化亜鉛微粒子分散液を作製した。
【0054】
(2)合わせガラス用中間膜の作製
得られた酸化亜鉛微粒子分散液10重量部と、熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂100重量部とを混合し、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを熱可塑性樹脂100重量部に対して可塑剤全量が40重量部となるように添加し、これらを混合することにより熱可塑性樹脂組成物を作製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物を、押出機を用いて成形し、膜厚が760μmの合わせガラス用中間膜を作製した。
【0055】
(3)合わせガラスの作製
得られた合わせガラス用中間膜を2枚の透明なフロートガラス(縦5cm×横5cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、真空バッグに入れ、933.2hPaまで真空バッグ内を脱気した。次いで、真空バッグを加熱し、真空バッグの内部が100℃に達した後20分間その温度を保持した。真空バッグを自然冷却させ、仮圧着された合わせガラスを取り出した。仮圧着された合わせガラスを、135℃、圧力1.2MPaで20分間オートクレーブを行うことにより合わせガラスを作製した。
【0056】
(実施例2)
分散剤として、SYグリスターCRS−75(阪本薬品社製、HLB値2.1、m及びnは1〜100の整数、数平均分子量(Mn)=2089)を用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化亜鉛微粒子分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0057】
(比較例1)
分散剤として、SYグリスターNE−750(阪本薬品社製、HLB値3.2、数平均分子量(Mn)=750)を用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化亜鉛微粒子分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0058】
(比較例2)
分散剤として、SYグリスターPO−5S(阪本薬品社製、HLB値4.9、数平均分子量(Mn)=2071)を用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化亜鉛微粒子分散液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0059】
<評価>
実施例及び比較例で得られた酸化亜鉛微粒子分散液、及び、合わせガラスについて以下の評価を行った。
結果を表1に示した。
【0060】
(1)酸化亜鉛微粒子分散液の物性評価
得られた酸化亜鉛微粒子分散液0.4重量部と、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート9.6重量部とを混合し、光路長1mm石英セル、分光光度計(日立ハイテク社製、「U−4100」)を用いて可視光透過率(Tv)、赤外線透過率(Tir)を測定した。
【0061】
(2)合わせガラスの物性評価
得られた合わせガラスについて、分光光度計(日立ハイテク社製、「U−4100」)を用いて可視光透過率(Tv)、赤外線透過率(Tir)を測定した。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、遮熱粒子の分散性に優れる合わせガラス用中間膜、合わせガラス、及び、酸化亜鉛微粒子分散液を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、熱可塑性樹脂と、分散剤と、可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜であって、
前記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【化1】

ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
【化2】

ただし、mは1〜100の整数である。
【請求項2】
3価の金属元素は、ガリウム又はアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
可塑剤は、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、及び、トリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
更に、熱線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
熱線吸収剤は、錫ドープ酸化インジウム微粒子であることを特徴とする請求項4記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項7】
3価の金属元素を含有する酸化亜鉛微粒子と、分散剤と、可塑剤とを含有する酸化亜鉛微粒子分散液であって、
前記分散剤は、下記一般式(1)で表される構造を有し、かつ、HLB値が1〜3である
ことを特徴とする酸化亜鉛微粒子分散液。
【化3】

ただし、nは1〜100の整数である。
R、R’及びR’’は水素原子又は下記化学式(2)で表される官能基を表す。
【化4】

ただし、mは1〜100の整数である。
【請求項8】
更に、熱線吸収剤を含有することを特徴とする請求項7記載の酸化亜鉛微粒子分散液。
【請求項9】
熱線吸収剤は、錫ドープ酸化インジウム微粒子であることを特徴とする請求項8記載の酸化亜鉛微粒子分散液。


【公開番号】特開2011−11932(P2011−11932A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155971(P2009−155971)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】