説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】遮熱性に優れた合わせガラスを得ることができ、かつ該合わせガラスの優れた遮熱性を長期間にわたり維持できる合わせガラス用中間膜、及び該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス用中間膜1は、遮熱層2と、紫外線遮蔽層3とを備える。遮熱層2は、熱可塑性樹脂と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含む。紫外線遮蔽層3は、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含む。本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備える。該中間膜が、本発明に係る合わせガラス用中間膜1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車又は建築物などの合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、合わせガラスの遮熱性を高めることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。このような車両及び建築物の開口部に用いられる合わせガラスには、高い遮熱性が求められる。
【0003】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。従って、合わせガラスの遮熱性を高めるためには、赤外線を十分に遮断する必要がある。
【0004】
上記赤外線(熱線)を効果的に遮断するために、下記の特許文献1には、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)又はアンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)などの遮熱粒子を含む合わせガラス用中間膜が開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、フタロシアニン系赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤の内の少なくとも一種を含む層を2層以上有する熱線遮蔽材が開示されている。この熱線遮蔽材は、紫外線吸収剤などを含む層が他の層よりも熱線が入射される側であるように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO01/25162A1
【特許文献2】特開平10−77360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ITO粒子又はATO粒子を含む従来の中間膜の遮熱性を更に高めることが要求されている。しかし、ITO粒子又はATO粒子は、近赤外線を充分に吸収しない。従って、特許文献1に記載のように、中間膜中にITO粒子又はATO粒子を添加しただけでは、合わせガラスの遮熱性を大きく高めることは困難である。
【0008】
例えば、米国において、カリフォルニア大気資源委員会(CARB(California Air Resources Board))は、温室効果ガスを削減するために、自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすことを提案していた。自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすために、上記CARBは、合わせガラスを透過して自動車内に流入する熱エネルギーを規制して、エアコンで消費される燃料を低減し、自動車の燃費を改善することを検討していた。具体的には、上記CARBは、クールカー規制(Cool Cars Standards)の導入を予定していた。
【0009】
上記クールカー規制では、具体的には、2012年に、自動車に用いられる合わせガラスのTts(Total Solar Transmittance)が50%以下であることが要求される予定であった。2016年には、上記合わせガラスの上記Ttsが40%以下であることが要求される予定であった。上記Ttsは、熱線の遮蔽性の指標である。
【0010】
なお、一般的に熱反タイプと呼ばれる、金属薄膜を蒸着したガラス又は熱線反射PETを用いた熱線反射合わせガラスは、赤外線だけでなく通信波長領域の通信波を反射する。熱線反射合わせガラスをウインドシールドに用いる場合、多くのセンサー類に対応するため、熱線反射部分をくり抜く必要がある。この結果、Ttsが50%である熱線反射合わせガラスを用いたウインドシールド全面の平均のTtsは約53%となる。従って、通信波を透過し、赤外線を吸収するタイプの合わせガラスでは、Ttsが53%まで許容される見通しであった。
【0011】
2010年8月の時点では、上記クールカー規制の導入は見送られたものの、上記Ttsが低い合わせガラスが求められる傾向にあることに変わりはない。
さらに、上記合わせガラスには、遮熱性が高いだけでなく、可視光線透過率(Visible Transmittance)が高いことも要求される。例えば、可視光線透過率は70%以上であることが望ましい。すなわち、上記可視光線透過率を高く維持したままで、遮熱性を高くすることが要求される。
【0012】
特許文献1に記載の遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜を用いた場合には、高い遮熱性と高い上記可視光線透過率とをいずれも満足する合わせガラスを得ることは極めて困難である。例えば、上記Tts53%以下及び上記可視光線透過率70%以上のいずれも満たす合わせガラスを得ることは極めて困難である。
【0013】
また、特許文献2に記載のように、フタロシアニン系赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤の内の少なくとも一種を用いた場合にも、高い遮熱性と高い上記可視光線透過率とをいずれも満足する合わせガラスを得ることは極めて困難である。
【0014】
本発明の目的は、遮熱性に優れた合わせガラスを得ることができ、かつ該合わせガラスの優れた遮熱性を長期間にわたり維持できる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、遮熱層と、第1の紫外線遮蔽層とを備え、該遮熱層が、熱可塑性樹脂と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有し、上記第1の紫外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含有する、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0016】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記第1の紫外線遮蔽層は、上記遮熱層の一方の表面に積層されている。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の紫外線遮蔽層が、上記遮熱層の一方の表面側に配置されており、上記遮熱層の一方の表面側とは反対の他方の表面側に配置された第2の紫外線遮蔽層がさらに備えられており、上記第2の紫外線遮蔽層は、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含有する。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第1の紫外線遮蔽層が、上記遮熱層の一方の表面に積層されており、上記第2の紫外線遮蔽層が、上記遮熱層の一方の表面とは反対の他方の表面に積層されている。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記紫外線遮蔽層の波長360〜390nmでの紫外線透過率が0.5%以下、又は、上記紫外線遮蔽層の波長380〜390nmでの紫外線透過率が0.8%以下である。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記成分は、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種である。
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記遮熱粒子は金属酸化物粒子である。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記遮熱粒子は、錫ドープ酸化インジウム粒子である。
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記遮熱層及び上記紫外線遮蔽層はそれぞれ、可塑剤をさらに含む。
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記紫外線遮蔽層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は0.2〜1.0重量%である。
【0023】
本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、特定の組成を有する上記遮熱層と、特定の組成を有する上記第1の紫外線遮蔽層とを備えるので、遮熱性に優れた合わせガラスを得ることができる。さらに、得られた合わせガラスの優れた遮熱性を、長期間にわたり維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜の一例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
(合わせガラス用中間膜)
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜の一例を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0027】
図1に示す中間膜1は、遮熱層2と、遮熱層2の一方の表面2a(第1の表面)側に配置された第1の紫外線遮蔽層3と、遮熱層2の他方の表面2b(第2の表面)側に配置された第2の紫外線遮蔽層4とを備える。第1の紫外線遮蔽層3は、遮熱層2の一方の表面2aに積層されている。第2の紫外線遮蔽層4は、遮熱層2の他方の表面2bに積層されている。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。
【0028】
第1の紫外線遮蔽層3及び第2の紫外線遮蔽層4はそれぞれ、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含有する。第1,第2の紫外線遮蔽層3,4は紫外線遮蔽剤を含有するため、紫外線の透過を効果的に抑制する層として機能する。
【0029】
第1の紫外線遮蔽層3は、波長360〜400nmでの紫外線透過率が4%以下であるか、又は中間膜1の波長360〜400nmでの紫外線透過率を0.5%以下にするための層であることが好ましい。第2の紫外線遮蔽層4は紫外線遮蔽剤を含むため、第2の紫外線遮蔽層4は、波長360〜400nmでの紫外線透過率が4%以下であるか、又は中間膜1の波長360〜400nmでの紫外線透過率を0.5%以下にするための層であることが好ましい。中間膜1は、波長360〜400nmでの紫外線透過率が0.5%以下であることが好ましい。このような紫外線透過率を満たすことにより、合わせガラスの優れた遮熱性を、より一層長期間にわたり維持できる。上記紫外線遮蔽層の波長360〜400nmでの紫外線透過率は3.6%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。上記中間膜の波長360〜400nmでの紫外線透過率は0.45%以下であることがより好ましく、0.4%以下であることがさらに好ましく、0.35%以下であることが特に好ましい。なお、上記「波長360〜400nmでの紫外線透過率」は、360nm、365nm、370nm、375nm、380nm、385nm、390nm、395nm及び400nmでの合わせガラスの各光線透過率の平均値を示す。
【0030】
また、第1の紫外線遮蔽層3は、波長360〜390nmでの紫外線透過率が0.5%以下であるか、又は中間膜1の波長360〜390nmでの紫外線透過率を0.05%以下にするための層であってもよい。第2の紫外線遮蔽層4は、波長360〜390nmでの紫外線透過率が0.5%以下であるか、又は中間膜1の波長360〜390nmでの紫外線透過率を0.05%以下にするための層であってもよい。中間膜1は、波長360〜390nmでの紫外線透過率が0.05%以下であることが好ましい。このような紫外線透過率を満たすことにより、合わせガラスの優れた遮熱性を、より一層長期間にわたり維持できる。上記紫外線遮蔽層の波長360〜390nmでの紫外線透過率は0.3%以下であることがより好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。上記中間膜の波長360〜390nmでの紫外線透過率は0.04%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましく、0.015%以下であることが特に好ましい。なお、上記「波長360〜390nmでの紫外線透過率」は、360nm、365nm、370nm、375nm、380nm、385nm及び、390nmでの合わせガラスの各光線透過率の平均値を示す。
【0031】
また、第1の紫外線遮蔽層3は、波長380〜390nmでの紫外線透過率が0.8%以下であるか、又は中間膜1の波長380〜390nmでの紫外線透過率を0.1%以下にするための層であってもよい。第2の紫外線遮蔽層4は、波長380〜390nmでの紫外線透過率が0.8%以下であるか、又は中間膜1の波長380〜390nmでの紫外線透過率を0.1%以下にするための層であってもよい。中間膜1は、波長380〜390nmでの紫外線透過率が0.1%以下であることが好ましい。このような紫外線透過率を満たすことにより、合わせガラスの優れた遮熱性を、より一層長期間にわたり維持できる。上記紫外線遮蔽層の波長380〜390nmでの紫外線透過率は0.7%以下であることがより好ましく、0.66%以下であることがさらに好ましく、0.2%以下であることが特に好ましい。上記中間膜の波長380〜390nmでの紫外線透過率は0.04%以下であることがより好ましく、0.03%以下であることがさらに好ましく、0.02%以下であることが特に好ましい。なお、上記「波長380〜390nmでの紫外線透過率」は、380nm、385nm及び、390nmでの合わせガラスの各光線透過率の平均値を示す。
【0032】
なお、上記「波長360〜400nmでの紫外線透過率」、上記「波長360〜390nmでの紫外線透過率」及び上記「波長380〜390nmでの紫外線透過率」は、JIS R3202に準拠した、厚さ2mmのフロートガラス2枚の間に紫外線遮蔽層又は中間膜を挟み込むことにより得られた合わせガラスを用いて測定することができる。
【0033】
遮熱層2は、熱可塑性樹脂と、遮熱粒子5と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有する。以下、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分を、「成分X」と記載することがある。
【0034】
従来、ITO粒子などの遮熱粒子を含む合わせガラス用中間膜を用いた場合には、合わせガラスの遮熱性が低いことがあり、更に低い日射透過率と高い可視光線透過率(Visible Transmittance)とを両立した合わせガラスを得ることは困難であるという問題があった。なお、上記日射透過率は、遮熱性の指標である。さらに、従来、ITO粒子などの遮熱粒子を含む合わせガラス用中間膜を用いた場合には、上記Tts(Total Solar Transmittance)が53%以下かつ上記可視光線透過率(Visible Transmittance)が70%以上のいずれも満たす合わせガラスを得ることは極めて困難であり、更に上記Ttsを50%以下にすることは更に一層困難であった。
【0035】
本発明の主な特徴の一つは、遮熱層が、遮熱粒子と、特定の上記成分Xとを含むことである。本発明者らは、遮熱粒子と特定の上記成分Xとの双方を含む遮熱層の使用により、合わせガラスの遮熱性と可視光線透過率との双方を高くすることができることを見出した。
【0036】
さらに、本発明者らが検討した結果、遮熱粒子と特定の上記成分Xとを含む中間膜を用いて合わせガラスを作製しただけでは、得られる合わせガラスが長期間使用されたときに、遮熱性が低下することがわかった。そこで、本発明者らが更に検討した結果、高い遮熱性を長期間維持することが可能な合わせガラス用中間膜の構成も見出した。
【0037】
本発明の他の主な特徴は、合わせガラス用中間膜を敢えて2層以上の多層にし、遮熱層と紫外線遮蔽剤を含む紫外線遮蔽層とを備える構成を採用したことである。これによって、紫外線遮蔽層側から中間膜に入射する光線の内、紫外線が効果的に遮蔽される。特に波長360〜400nm程度の紫外線が効果的に遮蔽される。このため、遮熱層に至る紫外線の量を低減でき、特に遮熱層に至る波長360〜400nmの紫外線、波長360〜390nmの紫外線又は波長380〜390nmの紫外線の量を低減できる。従って、遮熱層に含まれている上記成分Xの化学変化及び上記成分Xの化学変化に伴う樹脂の劣化を抑制できる。このため、優れた遮熱性を長期間にわたり維持できる。
【0038】
従って、成分Xと遮熱粒子とを併用した遮熱層とともに紫外線遮蔽層を用いることにより、中間膜及び合わせガラスの遮熱性を充分に高くすることができ、更に遮熱性の指標である日射透過率が低く、かつ可視光線透過率が高い合わせガラスを得ることができる。さらに、上記Ttsが充分に低く、かつ上記可視光線透過率が充分に高い合わせガラスを得ることができる。
【0039】
例えば、合わせガラスの波長300〜2500nmでの日射透過率(Ts2500)を65%以下にし、かつ可視光線透過率を65%以上にすることができる。さらに、日射透過率(Ts2500)を60%以下にすることができ、更に可視光線透過率を70%以上にすることができる。また、合わせガラスの上記Ttsを53%以下にし、合わせガラスの上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。さらに、上記Ttsを50%以下にすることもできる。従って、例えば、カリフォルニア大気資源委員会(CARB(California Air Resources Board))が、米国において導入を予定していたクールカー規制に対応した合わせガラスを得ることができる。
【0040】
なお、本明細書において、上記Tts及び上記可視光線透過率の性能は、上記クールカー規制で要求されていた性能である。上記Ttsは、例えば、導入が予定されていたクールカー規制により定められた測定方法により測定される。上記可視光線透過率は、例えば、JIS R3211(1998)に準拠して測定される。
【0041】
さらに、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、遮熱性と可視光線透過率との双方を高くすることができるだけでなく、高い遮熱性を長期間にわたり維持できる。優れた遮熱性を長期間にわたり維持するためには、第1の紫外線遮蔽層3又は中間膜1の波長360〜400nmでの紫外線透過率、波長360〜390nmでの紫外線透過率、又は、波長380〜390nmでの紫外線透過率を一定の値以下に制御することが好ましい。
【0042】
また、本発明では、透明性を高めることも可能であり、例えば、ヘーズ値を1%以下にすることができ、更に0.5%以下にすることもできる。
中間膜1は、第1の紫外線遮蔽層3と、遮熱層2と、第2の紫外線遮蔽層4とがこの順で積層された3層構造を有する。このように、遮熱層は、第1,第2の紫外線遮蔽層の間に配置されていることが好ましく、第1,第2の紫外線遮蔽層の間に挟み込まれていることがより好ましい。この場合には、中間膜の両面において、中間膜に入射する紫外線を、第1,第2の紫外線遮蔽層により効果的に遮蔽できる。
【0043】
ただし、第2の紫外線遮蔽層4は必ずしも用いられていなくてもよい。すなわち、遮熱層2の一方の表面2aのみに第1の紫外線遮蔽層3が積層されていてもよい。この場合には、中間膜1の第1の紫外線遮蔽層を、光線が入射される側に配置すればよい。例えば、中間膜を用いた合わせガラスを自動車に用いる場合には、第1の紫外線遮蔽層が自動車の外側に配置され、遮熱層が自動車の内側に配置される。また、中間膜は、4層以上の積層構造を有していてもよい。また、第1,第2の紫外線遮蔽層3,4は遮熱粒子と特定の上記成分Xを含有してもよい。
【0044】
また、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、遮熱層及び紫外線遮蔽層とは異なる他の層をさらに備えていてもよい。さらに、遮熱層と紫外線遮蔽層との間に、遮熱層及び紫外線遮蔽層とは異なる他の層が挟み込まれていてもよい。
【0045】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。上記中間膜の厚みは、中間膜を構成する各層の合計の厚みを示す。よって、中間膜1の場合には、該中間膜1の厚みは、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4の合計の厚みを示す。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、上記中間膜の厚みの好ましい下限は0.1mm、より好ましい下限は0.25mm、好ましい上限は3mm、より好ましい上限は1.5mmである。上記中間膜の厚みが薄すぎると、合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向がある。
【0046】
実用面の観点、並びに長期間にわたり遮熱性を充分に維持する観点からは、第1,第2の紫外線遮蔽層3,4の各厚みの好ましい下限は0.001mm、より好ましい下限は0.2mm、好ましい上限は0.8mm、より好ましい上限は0.6mmである。
【0047】
実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、遮熱層1の厚みの好ましい下限は0.001mm、より好ましい下限は0.05mm、好ましい上限は0.8mm、より好ましい上限は0.6mmである。
【0048】
以下、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4を構成する材料の詳細を説明する。
【0049】
(熱可塑性樹脂)
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0051】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている熱可塑性樹脂はそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている熱可塑性樹脂はいずれも、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。この場合には、遮熱層2と第1,第2の紫外線遮蔽層3,4との親和性が高められ、遮熱層2と第1,第2の紫外線遮蔽層3,4との密着性をより一層高めることができる。
【0052】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、後述の可塑剤を含有することが好ましい。遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4の接着力をより一層高めることができる。
【0053】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に80〜99.8モル%の範囲内である。
【0054】
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、好ましい上限は3,000、より好ましい上限は2,500である。上記重合度が低すぎると、合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向がある。上記重合度が高すぎると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。
【0055】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
各層の接着力をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、15〜40モル%の範囲内であることが好ましい。上記水酸基の含有率のより好ましい下限は18モル%、より好ましい上限は35モル%である。上記水酸基の含有率が低すぎると、各層の接着力が低くなることがある。また、上記水酸基の含有率が高すぎると、中間膜1の柔軟性が低くなり、中間膜1の取扱いに問題が生じやすい。
【0057】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、原料となるポリビニルアルコールの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0058】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.3モル%、さらに好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は25モル%、さらに好ましい上限は20モル%である。
【0059】
上記アセチル化度が低すぎると、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤との相溶性が低下することがある。上記アセチル化度が高すぎると、中間膜の耐湿性が低くなることがある。
【0060】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0061】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は63モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は75モル%、さらに好ましい上限は70モル%である。
【0062】
上記アセタール化度が低すぎると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が低いことがある。上記アセタール化度が高すぎると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が長くなることがある。
【0063】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル化度(アセチル基量)と水酸基の含有率(ビニルアルコール量)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0064】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度(アセチル基量)は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0065】
(可塑剤)
各層の接着力をより一層高める観点からは、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、可塑剤を含有することが好ましい。遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている熱可塑性樹脂がそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、可塑剤を含むことが特に好ましい。
【0066】
上記可塑剤は特に限定されない。可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0067】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0068】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0069】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0070】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0071】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも一種であることが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートであることがより好ましい。
【0072】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量の好ましい下限は25重量部、より好ましい下限は30重量部、好ましい上限は60重量部、より好ましい上限は50重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜1の透明性をより一層高めることができる。
【0073】
遮熱層2における上記可塑剤の含有量と第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における上記可塑剤の含有量は異なっていてもよい。例えば、遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4の内の少なくとも一層の上記可塑剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して55重量部以上である場合、合わせガラスの遮音性を高めることができる。
【0074】
(紫外線遮蔽剤)
第1,第2の紫外線遮蔽層3,4は、紫外線遮蔽剤を含有する。紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
従来広く知られている一般的な紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属系紫外線遮蔽剤、金属酸化物系紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤、トリアジン系紫外線遮蔽剤及びベンゾエート系紫外線遮蔽剤等が挙げられる。
【0075】
上記金属系紫外線吸収剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。紫外線遮蔽剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤、トリアジン系紫外線遮蔽剤又はベンゾエート系紫外線遮蔽剤であることが好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることがより好ましい。
【0076】
上記金属酸化物系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物系紫外線吸収剤として、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物系紫外線吸収剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0077】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤はハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることがより好ましい。
【0078】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製、「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0079】
上記ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製、「tinuvin120」)等が挙げられる。
【0080】
第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている紫外線遮蔽剤は、第1,第2の紫外線遮蔽層3,4又は中間膜1の紫外線透過率が好適な範囲内であるように、適宜の紫外線遮蔽剤が選択される。第1,第2の紫外線遮蔽層3,4に含まれている紫外線遮蔽剤は、第1,第2の紫外線遮蔽層3,4又は中間膜1の波長360〜400nmでの紫外線透過率、波長360〜390nmでの紫外線透過率、又は波長380〜390nmでの紫外線透過率が上述した値以下になるように、適宜の紫外線遮蔽剤が選択されて用いられることが好ましい。
【0081】
遮熱層2は、紫外線遮蔽剤3を含有していてもよく、含有していなくてもよい。中間膜1の波長360〜400nmでの紫外線透過率、波長360〜390nmでの紫外線透過率、又は波長380〜390nmでの紫外線透過率をより一層低くする観点からは、遮熱層2は、紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。
【0082】
第1,第2の紫外線遮蔽層3,4又は中間膜1の紫外線透過率をより一層低くする観点からは、紫外線遮蔽剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、又は2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)であることが好ましく、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであることがより好ましい。
【0083】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における紫外線遮蔽剤の含有量は特に限定されない。初期及び経時後の遮熱性をより一層高める観点からは、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、紫外線遮蔽剤の含有量の好ましい下限は0.3重量部、より好ましい下限は0.4重量部、さらに好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は3重量部、より好ましい上限は2.5重量部、さらに好ましい上限は2重量部である。
【0084】
初期及び経時後の遮熱性をより一層高める観点からは、紫外線遮蔽層100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、紫外線遮蔽層100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、合わせガラスの経時後の遮熱性の低下を顕著に抑制できる。
【0085】
初期及び経時後の遮熱性をより一層高める観点からは、遮熱層100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、遮熱層100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.3重量%以上であることにより、合わせガラスの経時後の遮熱性の低下を顕著に抑制できる。
【0086】
(遮熱粒子)
遮熱層2は、遮熱粒子を含有する。第1,第2の紫外線遮蔽層3,4は、遮熱粒子を含有していてもよく、含有していなくてもよい。合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、遮熱粒子を含有することが好ましい。
【0087】
上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子であることが好ましい。遮熱粒子は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収することが出来る粒子を意味する。
【0088】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、または、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。なかでも、熱線の遮蔽機能が高いため、遮熱粒子は金属酸化物粒子であることが好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子であることがより好ましく、ITO粒子がさらに好ましい。
【0089】
特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましい。
上記遮熱粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、より好ましい下限は0.02μm、好ましい上限は0.1μm、より好ましい上限は0.05μmである。平均粒子径が上記好ましい下限を満たすと、熱線の遮蔽性を充分に高めることができる。平均粒子径が上記好ましい上限を満たすと、遮熱粒子の分散性を高めることができる。
【0090】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における上記遮熱粒子の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記遮熱粒子の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は3重量部、より好ましい上限は2重量部である。遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における遮熱粒子の含有量が上記好ましい範囲内であると、遮熱性を充分に高めることができ、日射透過率(Ts2500)を充分に低くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、上記Ttsを50%以下にすることができ、かつ上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0091】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における上記遮熱粒子の含有量は特に限定されない。遮熱層及び第1,第2の紫外線遮蔽層100重量%中、遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3.0重量%以下である。遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における遮熱粒子の含有量が上記好ましい範囲内であると、遮熱性を充分に高めることができ、日射透過率(Ts2500)を充分に低くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、本発明の合わせガラス用中間膜を備える合わせガラスの可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0092】
(成分X)
遮熱層2は、上記成分Xを含有する。上記成分Xは、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分である。
上記成分Xは特に限定されない。上記成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記遮熱粒子と成分Xとの併用により、赤外線(熱線)を充分に遮断できる。上記金属酸化物粒子と成分Xとの併用により、赤外線をより一層効果的に遮断できる。上記ITO粒子と成分Xとの併用により、赤外線を更に一層効果的に遮断できる。
【0094】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0095】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くし、日射透過率(Ts2500)を充分に低くし、上記Ttsを充分に低くし、かつ上記可視光線透過率を充分に高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0096】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xはバナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましく、バナジウム原子を含有することがより好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体、バナジウム原子又は銅原子を含有するナフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも一種であることが好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性をさらに一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子を含有する構造を有することが好ましい。
【0097】
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4における成分Xの含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、成分Xの含有量の好ましい下限は0.0005重量部、より好ましい下限は0.003重量部、好ましい上限は0.1重量部、より好ましい上限は0.05重量部である。遮熱層2における成分Xの含有量が上記好ましい範囲内であると、遮熱性を充分に高めることができ、日射透過率(Ts2500)を充分に低くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、上記Ttsを50%以下にすることができ、かつ上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0098】
また、遮熱層及び第1,第2の紫外線遮蔽層100重量%中、成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.18重量%以下、さらに好ましくは0.16重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下である。第1の遮熱層における成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性を充分に高めることができ、日射透過率(Ts2500)を充分に低くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0099】
(他の成分)
遮熱層2及び第1,第2の紫外線遮蔽層3,4はそれぞれ、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、合わせガラスを得るために用いられる。
図2に、図1に示す中間膜1を用いた合わせガラスの一例を示す。
【0101】
図2に示す合わせガラス11は、中間膜1と、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13とを備える。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13の間に挟み込まれている。従って、合わせガラス11は、第1の合わせガラス構成部材12と、中間膜1と、第2の合わせガラス構成部材13とがこの順で積層されて構成されている。第1の合わせガラス構成部材12は、第1の紫外線遮蔽層3の外側の表面3aに積層されている。第2の合わせガラス構成部材13は、第2の紫外線遮蔽層4の外側の表面4aに積層されている。
【0102】
第1,第2の合わせガラス構成部材12,13としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラス11には、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラス11は、ガラス板含有積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0103】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。遮熱性が高いことから、上記無機ガラスは熱線吸収板ガラスであることが好ましい。なお、熱線吸収板ガラスに関しては、JIS R3208に規定されている。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0104】
第1,第2の合わせガラス構成部材12,13の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、合わせガラス構成部材12,13がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。合わせガラス構成部材12,13がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0105】
合わせガラス1の製造方法は特に限定されない。例えば、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13の間に、中間膜1を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13と中間膜1との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラス11を得ることができる。
【0106】
合わせガラス11は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラス11は、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。合わせガラス11は、これらの用途以外にも使用できる。遮熱性が高く、日射透過率(Ts2500)が低く、上記Ttsが低くかつ上記可視光線透過率が高いので、合わせガラス11は、自動車に好適に用いられる。
【0107】
遮熱性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラス11の上記Ttsは、53%以下であることが好ましく、50%以下であることが好ましく、40%以下であることが好ましい。
【0108】
透明性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラス11の上記可視光線透過率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。合わせガラスの可視光線透過率は、JIS R3211(1998)に準拠して測定できる。本発明の合わせガラス用中間膜を、JIS R3202に準拠した、厚さ2mmの2枚のフロートガラスの間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は70%以上であることが好ましい。
【0109】
合わせガラスの日射透過率(Ts2500)は、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下である。合わせガラスの日射透過率は、JIS R 3106(1998)に準拠して測定できる。本発明の合わせガラス用中間膜を、JIS R3202に準拠した、厚さ2mmの2枚のフロートガラスの間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの日射透過率は65%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0110】
合わせガラスのヘーズ値は、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.4%以下である。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、遮熱層と紫外線遮蔽層とを備えるので、合わせガラスのヘーズ値を低くすることができる。合わせガラスのヘーズ値は、JIS K6714に準拠して測定できる。
【0111】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0112】
熱可塑性樹脂:
PVB1(n−ブチルアルデヒドによりアセタール化されているポリビニルブチラール樹脂、平均重合度2300、水酸基の含有率22モル%、アセチル化度12モル%、ブチラール化度66モル%)
【0113】
PVB2(n−ブチルアルデヒドによりアセタール化されているポリビニルブチラール樹脂、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68.5モル%)
【0114】
可塑剤:
3GO(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート)
【0115】
遮熱粒子:
ITO(ITO粒子、三菱マテリアル社製)
ATO(ATO粒子、石原産業社製「SN−100P」、BET値 70m/g)
GZO(GZO粒子、堺化学社製 「FINEX−50」、BET値 50m/g)
【0116】
成分X:
IR−906(バナジウム原子に酸素原子を含有するバナジルフタロシアニン化合物、日本触媒社製「イーエクスカラー906」)
IR−915(バナジウム原子を含有するバナジルフタロシアニン化合物、日本触媒社製「イーエクスカラー915」)
IRSORB203(銅ナフタロシアニン化合物、富士フイルム社製)
【0117】
紫外線遮蔽剤:
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0118】
(実施例1)
(1)遮熱層の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部と、Tinuvin326を得られる遮熱層100重量%中で0.625重量%となる量と、ITOを得られる遮熱層100重量%中で1.52重量%となる量と、IR−906を得られる遮熱層100重量%中で0.122重量%となる量とを混合し、さらに、分散剤であるリン酸エステル化合物を添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。分散液中のITO粒子の体積平均粒径は35nmであった。なお、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の組成物を得た。
【0119】
(2)紫外線遮蔽層の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、Tinuvin326を得られる紫外線遮蔽層100重量%中で0.571重量%となる量とを、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の組成物を得た。
【0120】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
得られた第1の組成物及び第2の組成物を押出機を用いて共押出することにより、紫外線遮蔽層/遮熱層/紫外線遮蔽層の3層の積層構造を有する積層体を得た。なお、紫外線遮蔽層の厚みは330μm、遮熱層の厚みは100μmであり、厚み760μmの3層構造を有する中間膜を得た。
【0121】
(4)合わせガラスの作製
得られた中間膜を、縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、JIS R3202に準拠した2枚のフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚み2mm)を用意した。この2枚のフロートガラスの間に、得られた中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラス板からはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0122】
(実施例2〜10)
熱可塑性樹脂、可塑剤、遮熱粒子、成分X及び紫外線遮蔽剤の種類及び含有量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、遮熱層及び紫外線遮蔽層を作製した。得られた遮熱層と紫外線遮蔽層とを用いて、実施例1と同様にして、3層構造を有する中間膜を備えた合わせガラスを作製した。なお、実施例2〜10でも、遮熱層を作製する際に、リン酸エステルの含有量は遮熱粒子の1/10となるように調整した。
【0123】
(実施例11)
(1)遮熱層の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、Tinuvin326を得られる遮熱層100重量%中で0.571重量%となる量と、ITOを得られる遮熱層100重量%中で3.04重量%となる量と、IR−915を得られる遮熱層100重量%中で0.129重量%となる量とを混合し、さらに、分散剤であるリン酸エステル化合物を添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。分散液中のITO粒子の体積平均粒径は35nmであった。なお、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0124】
ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の組成物を得た。
【0125】
(2)紫外線遮蔽層の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、Tinuvin326を得られる紫外線遮蔽層100重量%中で0.714重量%となる量とを、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の組成物を得た。
【0126】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
得られた第1の組成物及び第2の組成物とを押出機を用いて共押出することにより、紫外線遮蔽層/遮熱層の2層の積層構造を有する積層体を得た。なお、紫外線遮蔽層の厚みは660μm、遮熱層の厚みは100μmであり、厚み760μmの2層構造を有する中間膜を得た。
【0127】
(4)合わせガラスの作製
得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0128】
(実施例12)
遮熱層及び紫外線遮蔽層の各厚みを下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、遮熱層及び紫外線遮蔽層を作製した。なお、実施例12でも、遮熱層を作製する際に、リン酸エステルの含有量は遮熱粒子の1/10となるように調整した。
得られた遮熱層及び紫外線遮蔽層を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、2層構造を有する中間膜及び合わせガラスを得た。
【0129】
(参考例1)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、ITOを得られる中間膜100重量%中で0.20重量%となる量と、Tinuvin326を得られる中間膜100重量%中で0.625重量%となる量と、IR−906を得られる中間膜100重量%中で0.016重量%となる量とを混合し、さらに、分散剤であるリン酸エステル化合物を添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。なお、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0130】
ポリビニルブチラール樹脂(PVB2)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
得られた組成物を押出することにより、厚み760μmの単層の中間膜を得た。
得られた中間膜を用いて、実施例1と同様にして、単層の中間膜を備えた合わせガラスを得た。
【0131】
(参考例2〜4、比較例1〜7及び参考例5)
熱可塑性樹脂、可塑剤、遮熱粒子、紫外線遮蔽剤及び成分Xの種類及び含有量を下記の表2に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして、中間膜を作製した。この中間膜を用いて、参考例1と同様にして、単層の中間膜を備えた合わせガラスを作製した。
なお、参考例2〜4、比較例6〜7及び参考例5でも、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。比較例1〜5では、リン酸エステル化合物を用いなかった。
【0132】
なお、参考例1〜5では、遮熱粒子と成分Xとが同じ層(中間膜)に含まれている。比較例1〜4では、遮熱粒子を配合せず、かつ成分Xを配合した。比較例5では、遮熱粒子及び成分Xをいずれも配合しなかった。比較例6〜7では、遮熱粒子を配合し、かつ成分Xを配合しなかった。
【0133】
(評価)
(1)紫外線透過率(360〜400nm)、(360〜390nm)及び(380〜390nm)の測定
実施例の中間膜を得るために用いた紫外線遮蔽層(1層)を作製した。また、実施例及び比較例の中間膜を用意した。分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、紫外線遮蔽層及び中間膜の波長360〜400nmにおける上記紫外線透過率、波長360〜390nmにおける上記紫外線透過率及び波長380〜390nmにおける上記紫外線透過率を測定した。
【0134】
(2)可視光線透過率(A光Y値、初期A−Y(380〜780nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定した。
【0135】
(3)日射透過率(初期Ts2500(300〜2500nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長300〜2500nmでの日射透過率Ts(Ts2500)を求めた。
【0136】
(4)光線透過率(初期T850(850nm)、初期T900(900nm)及び初期T950(nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R 3106(1998)に準拠した方法により、得られた合わせガラスの波長850nm、900nm及び950nmでの光線透過率(T850(850nm)、T900(900nm)及びT950(950nm))を測定した。
【0137】
(5)黄色度(C光YI:イエローインデックス)の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS K7105に準拠して、得られた合わせガラスの透過法による黄色度(イエローインデックス)を測定した。
【0138】
(6)へーズ値の測定
ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して、得られた合わせガラスのヘーズ値を測定した。
【0139】
(7)長期安定性(耐光性)
紫外線照射装置(スガ試験機社製「HLG−2S」)等を用いて、JIS R3205に準拠して、紫外線(石英ガラス水銀灯(750W))を、合わせガラスに500時間及び1000時間照射した。500時間照射後及び1000時間照射後の合わせガラスのA−Y、Ts2500、T850、T900、T950及びC光YIを上記の方法により測定した。なお、実施例11〜12では、紫外線を第1の紫外線遮蔽層側から照射した。
【0140】
得られた測定値から、ΔA−Y((紫外線の照射後のA−Y)−(初期のA−Y))、ΔTs2500(紫外線の照射後のTs2500−初期のTs2500)、ΔT850(紫外線の照射後のT850−初期のT850)、ΔT900(紫外線の照射後のT900−初期のT900)、ΔT950(紫外線の照射後のT950−初期のT950)及びC光ΔYI(紫外線の照射後のC光YI−初期のC光YI)を求めた。
【0141】
中間膜の組成を下記の表1〜2に示し、評価結果を下記の表3〜5に示す。表1〜2における可塑剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量(重量部)を示す。表1における遮熱粒子、成分X及び紫外線遮蔽剤の配合量は、遮熱層又は紫外線遮蔽層100重量%中の遮熱粒子、成分X及び紫外線遮蔽剤の含有量(重量%)を示す。表2における遮熱粒子、紫外線遮蔽剤及び成分Xの配合量は、中間膜100重量%中の遮熱粒子、紫外線遮蔽剤及び成分Xの含有量を示す。また、下記の表1〜2では、リン酸エステル化合物の含有量の記載は省略した。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
なお、参考例1〜5の合わせガラス用中間膜では、初期の遮熱性は十分に高かった。
【符号の説明】
【0148】
1…合わせガラス用中間膜
2…遮熱層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第1の紫外線遮蔽層
3a…外側の表面
4…第2の紫外線遮蔽層
4a…外側の表面
5…遮熱粒子
11…合わせガラス
12…第1の合わせガラス構成部材
13…第2の合わせガラス構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮熱層と、
第1の紫外線遮蔽層とを備え、
前記遮熱層が、熱可塑性樹脂と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有し、
前記第1の紫外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含有する、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の紫外線遮蔽層が、前記遮熱層の一方の表面に積層されている、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の紫外線遮蔽層が、前記遮熱層の一方の表面側に配置されており、
前記遮熱層の一方の表面側とは反対の他方の表面側に配置された第2の紫外線遮蔽層をさらに備え、
前記第2の紫外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、紫外線遮蔽剤とを含有する、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の紫外線遮蔽層が、前記遮熱層の一方の表面に積層されており、
前記第2の紫外線遮蔽層が、前記遮熱層の一方の表面とは反対の他方の表面に積層されている、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記紫外線遮蔽層の波長360〜390nmでの紫外線透過率が0.5%以下、又は、前記紫外線遮蔽層の波長380〜390nmでの紫外線透過率が0.8%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記成分が、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記遮熱粒子が金属酸化物粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である、請求項7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記遮熱層及び前記紫外線遮蔽層がそれぞれ、可塑剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記紫外線遮蔽層100重量%中、前記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2〜1.0重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−106931(P2012−106931A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32679(P2012−32679)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2010−533376(P2010−533376)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】