説明

合成ガスからのメタノール合成用触媒およびその製造方法

本発明は、合成ガスからメタノールを合成するための触媒およびその製造方法に関し、より詳しくは、CuO,ZnOおよびAlを所定の比で含有するCu−Zn−Al系酸化物またはCuO,ZnO,AlおよびZrOを所定の比で含有するCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体から構成される新規触媒系である。従来のCu−Zn−Al系単独で使用されたメタノール合成用触媒と比較して副産物の生成を抑制し、メタノールの収率を向上させ、メタノールの収率増加によるメタノール精製効率および炭素転換効率を大幅に向上させることのできる、合成ガスからのメタノール合成用触媒およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスからメタノールを合成するための触媒であって、Cu−Zn−Al系酸化物と、支持体として所定量のセリウム−ジルコニウム酸化物とを含有する触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学原料の主要出発物質であるメタノールを合成するための既存の商業的な方法としては、石炭やバイオマス(bio−mass)のガス化及び天然ガスの改質(reforming)を通じて生成される合成ガス(synthesis gas)を活用する方法が使用されている。石炭やバイオマスのガス化は、一般的に流動層反応器を使用しているが、原料中に含まれている硫黄化合物や窒素酸化物のみならず、粉塵を捕集するための集塵装置が必要である。したがって、現在までメタノールの大部分(70%以上)は、商業的には、天然ガスの改質から得られる合成ガスから製造されているのが実情である。韓国国内のメタノールの需要は年間約120万トン規模であり、合成樹脂、化繊原料、MTBE、酢酸等に使用され、その1トン当たりの価格は現在250〜500ドルで変動している。
【0003】
現在の全世界におけるメタノールの1年の生産量は2千万トンである。しかし、ガソリンやディーゼル燃料の部分的な代替物としてメタノールを使用する場合、メタノールの需要は今後さらに急増するものと予想される。また、液体燃料としてのメタノールは、ガソリンやディーゼル燃料に比べて有害物質である窒素酸化物(NOx)の排出が少ないため環境にやさしく、代替燃料としての産業的需要が期待される。現在、メタノールを代替燃料として使用するにあたっての障害は、高いメタノールの価格に起因するものであるが、最近の高油価により、非石油系代替燃料としてメタノールの商業化の可能性が注目されている。
【0004】
合成ガスからのメタノールは、次の各反応式のように、一酸化炭素や二酸化炭素の水素化反応によって生成される。
CO+2H⇔CHOH ΔH=−90.8kJ/mol (1)
CO+3H⇔CHOH+HO ΔH=−49.6kJ/mol (2)
CO+HO⇔CO+H ΔH=−41.2kJ/mol (3)
反応(1)と(2)は、発熱かつ体積減少反応であり、低い温度と高い圧力が熱力学的に有利であるが、反応速度は温度が高いほど速くなるため、適正反応温度でのメタノール合成反応が商業的に進められている。こうした理由により、実際に商業化された工程においては、反応熱の蓄積を避けるために、反応ガスのワン−パス(one−pass)転換率を15〜25%として運転している。低いメタノールのワン−パス転換率により生産価格が上昇するが、未反応ガスが再循環することとなる。このため、メタノールを生産する装置をさらに必要とする。反応式(2)が進行して水が発生する場合には、反応式(3)のような水−ガス転換反応(water gas shift reaction,WGS)が副反応として発生して余剰の水素が生成され、メタノール合成反応の速度を増加させる。
【0005】
合成ガスを利用する場合には、反応工程と触媒の種類に応じて製造される化学物質の種類は大きく変化する。南アフリカ所在のSasol社の方法のように、流動層反応器において鉄系触媒を利用するとガソリンを生産することができ(非特許文献1)、固定層反応器においてCu/Zn/Al系の触媒を使用すれば基礎化学物質であるメタノールを容易に生産することができる。このような反応を実施するために、高圧用メタノール合成用触媒として、ドイツ所在のBASF社で開発されたジンククロメート(Zinc chromate)系触媒がある。低圧用には銅系触媒がある。しかし、これらの触媒は1ppmの硫黄化合物に被毒しやすい。1996年にICI社でメタノールの生産のための改良された触媒が発表されて以降、多くの触媒企業で優れた触媒が開発されている。メタノールの合成のための商業的触媒を整理すると、次の表1に示すとおりである。
【0006】
【表1】

開発された低圧用触媒は、銅と亜鉛を主触媒として使用し、かつアルミニウムやクロムを助触媒として使用しており、Cu/Zn/Alのモル比が60/30/10のICI社の触媒が現在商業的に広く使用されている。1960年代にICI社で、石炭から得られる合成ガスから、三成分系触媒(Cu/Zn/Al)相において反応温度230〜280℃、圧力5.1〜10.1MPa(50〜100気圧)でメタノールを合成する方法が開発され、現在商業化されているメタノール合成方法は、天然ガスの水蒸気改質により得られた合成ガス(CO/CO/H)を利用して、Cu/Zn/Al触媒相において反応温度250℃、圧力5.1〜10.1MPa(50〜100気圧)で実施されている。
【0007】
このほかにも、メタノール合成のための触媒として、スラリー相において金属を共沈させた触媒(特許文献1および2)、既に報告されているCu−Zn−Alの成分を変形したCu−Zn−Zr(特許文献3)、Cu−Zn−Al−Ga(特許文献4)、Cu−Zn−Al−Zr−Mo(特許文献5)等の添加剤を追加してメタノールを合成する触媒系が報告されている。また、CuおよびZnが含まれていない粒子径が5ナノメートル以下の酸化セリウム(ceria)を担体としたPd/CeO触媒(特許文献6)系についての報告もある。
【0008】
メタノールの合成における適切な合成ガスでは、H/(2CO+3CO)の比が1.05付近であり、この比率が増加するほどメタノールの収率が増加するので、この比率を調整するために、さらに水素を添加するか、二酸化炭素を除去しなければならない。現在まで、メタノール触媒の性能向上のための研究に多くの研究者らが関与している。これまではメタノール合成のための触媒の活性部位(active site)についての完全な理解が不足していたが、Cuの酸化状態と還元された銅粒子のレドックス(redox)転換性質が重要な作用をすることが知られている。メタノール合成反応において、Cu触媒の活性は、金属成分のCuの比表面積に比例することが知られている。COの配位(coordination)、化学吸着(chemisorption)、活性化および均一なHの分割(splitting)はCuやCu位において発生し、また、ZnOを含む触媒を使用する触媒工程においてHδ+とHδ−を提供する不均一なHの分割はZnO位において発生するという報告がある(非特許文献2)。このとき、Cu/Znのモル比が8以上の場合、比表面積が急激に減少すると報告されている(非特許文献3)。これにより、触媒の製造時にCuとZnとを混合して使用する場合が多く、Cu/Znのモル比が3/7のとき活性が最も高くなることが知られている。しかしながら、COが存在していたり、Cu表面を覆っている酸素含有物質の割合が増加すると、触媒の活性はCuの表面積に依存しなくなることが知られている。こうした現象は、Cu活性部位がメタノール合成において活性部位として作用しているためであると報告されている。
【0009】
メタノール合成のための触媒の製造における担体は、ZnO,ZrO,CrおよびSiO等が使用されており、ZnOは、Znイオンが四面体の部位にO2−イオンによって配列されていて、ZnOはCu系触媒のCu粒子の分散を最適化させ、活性部位を安定化させる働きをする。また、ZnO自体が水素化反応の触媒としても作用する。
【0010】
Cu/SiOとZnO/SiOを単に混合した触媒を使用する場合、ZnOは、Cu部位の形態を変形させるのでなく、Cu−Zn活性部位を形成するのに寄与する。これと関連して、ZnOは、Cu粒子との相互作用と電子交換によりCu部位の電気的性質を変化させる。
【0011】
原油価格の上昇による高油価の時代が今後も持続的に維持される状況下においては、メタノールの代替燃料としての用途および燃料電池用反応物等としての用途が急増するものと予想されている。こうした状況下においては、合成ガスからメタノールをより低廉に生産することのできる効率的な反応工程のための触媒系の開発が重要である。
【0012】
また、メタノール合成用触媒相における副反応として進行する、一酸化炭素の酸化反応による二酸化炭素の生成や、炭化水素およびDMEの生成により、メタノールの収率が減少するという問題が提起されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,221,652号明細書
【特許文献2】欧州特許第0742193号明細書
【特許文献3】米国特許第6,054,497号明細書
【特許文献4】特開2002−60357号公報
【特許文献5】米国特許第5,254,520号明細書
【特許文献6】米国特許第6,342,538号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Fuel.Pro.Tech.48,1996,189
【非特許文献2】Appl.Catal.A25,1986,101
【非特許文献3】Appl.Catal.A139,1996,75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、CuO,ZnOおよびAlを所定の比で含有するCu−Zn−Al系酸化物またはCuO,ZnO,AlおよびZrOを所定の比で含有するCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体とから構成される触媒系であって、メタノール合成反応において炭素利用効率を増大させ、後続の目的生成物の分離工程の効率を向上させる新規な触媒系を提供する。
【0016】
したがって、本発明の目的は、セリウム−ジルコニウム酸化物支持体にCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物を含有させることにより製造されるメタノール合成用触媒およびその製造方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、前記触媒を用いたメタノール合成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、セリウム−ジルコニウム酸化物支持体にCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物を含有させることにより製造されるメタノール合成用触媒およびその製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、一酸化炭素および水素からなる合成ガスからメタノールを製造することが可能な触媒であって、具体的には、メタノール合成用触媒であるCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体とを所定量含有する触媒を提供する。
【0020】
合成ガスからのメタノール合成に使用されるCu−Zn−Al系またはCu−Zn−Al−Zr系触媒の製造方法は、
比表面積が100〜300m/gのセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造して100〜600℃の温度で焼成し、メタノール合成用支持体を製造する第1のステップと、
セリウム−ジルコニウム酸化物を含有する懸濁水溶液に、銅前駆体、亜鉛前駆体およびアルミナ前駆体の金属混合物、または銅前駆体、亜鉛前駆体、アルミナ前駆体およびジルコニウム前駆体の金属混合物と、塩基性沈殿剤とを加え、pH7〜8の水溶液下で共沈、熟成させ、形成された沈殿物を濾過、洗浄および200〜600℃の範囲で焼成する第2のステップと
を含む。
【0021】
本明細書において提示するメタノール合成に使用されるCu−Zn−Al系またはCu−Zn−Al−Zr系触媒を含有させるための、ゾル−ゲル法により製造されるセリウム−ジルコニウム酸化物の製造方法を以下に説明する。
【0022】
具体的には、セリウム−ジルコニウム酸化物の製造方法は、
クエン酸およびエチレングリコールの溶液に、水に溶解したセリウム前駆体およびジルコニウム前駆体を添加する第1のステップと、
得られた混合物を50〜100℃で攪拌した後、120〜130℃で5〜10時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去することにより、ゾルを製造する第2のステップと、
製造されたゾルを、3〜7℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃においてそれぞれ0.5〜2時間維持し、400℃において2〜10時間維持し、さらに500℃において3〜5時間焼成する第3のステップと、
を含む。
【0023】
上記のように製造された触媒を利用して合成ガスからメタノールを製造する方法は、次のとおりである。
本発明に係る触媒を固定層反応器中の200〜500℃の領域で水素雰囲気下において還元した後、触媒反応に使用する。前記還元された混成触媒は、固定層反応器上において一般的なメタノール合成反応と類似した反応条件下で使用されるが、具体的には、反応温度200〜400℃、反応圧力30〜60kg/cm、空間速度1000〜10000h−1で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、CuO,ZnOおよびAlを主成分として含有するCu−Zn−Al系酸化物またはCuO,ZnO,AlおよびZrOを主成分として含有するCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、ゾル−ゲル法により製造された支持体としてのセリウム−ジルコニウム酸化物とが所定の比で混合された触媒系を提供する。前記触媒をメタノール合成反応に使用する場合、合成ガスから高純度のメタノールを直接合成することが可能であるとともに、副産物であるDME、炭化水素および二酸化炭素の生成を抑制することができる。したがって、従来より知られている触媒群と比較して、ワン−パス転換時においてメタノールの収率増大により炭素利用効率を増大させることができ、かつ、後続の目的生成物の分離工程の効率を大きく向上させることができる。また、セリウム−ジルコニウム酸化物を支持体として使用して触媒を製造する場合、合成ガスの転換によるメタノール製造工程において、触媒の安定性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1、実施例2および比較例1において製造された、合成ガスからのメタノール合成用触媒相における、反応時間に対する一酸化炭素の転換率および触媒の安定性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
いくつかの実施形態において、セリウム−ジルコニウム酸化物支持体にCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物を含有させることにより製造されるメタノール合成用触媒およびその製造方法が提供される。
【0027】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書において提示する触媒は、一酸化炭素および水素からなる合成ガスからメタノールを製造することが可能である。具体的には、メタノール合成用触媒であるCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体とを所定量混合した触媒である。本明細書において提示する触媒は、既存のメタノール合成用触媒として知られているCu−Zn−Alと比較して、メタノールの合成反応における活性、安定性およびメタノールへの一回の処理の収率(one−throughput yield)に優れ、DME、二酸化炭素および炭化水素といった副産物の生成を抑制するとともに、長期安定性および性能に優れている。
【0028】
本明細書において提示する触媒は、比表面積が50〜250m/g、好ましくは80〜200m/gの範囲を示す。前記触媒の比表面積が50m/g未満であると、Cu−Zn−Al系酸化物によってセリウム−ジルコニウム酸化物の気孔が塞がれる現象が発生し、Cuの分散性が低下して活性部位が減少するので、メタノールへの転換率が低下する。一方、250m/gを超えると、メタノール合成反応に関与するCu−Zn−Al系酸化物の安定性が低下し、またメタノール合成反応に利用される活性部位が減少して一酸化炭素の転換率が低下するという問題が発生する。
【0029】
本発明の触媒を構成するCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物は、メタノール合成用触媒として広く使用されている。セリウムおよびジルコニウムは酸化物状態の支持体として、また、触媒を製造する際に前駆体に混合する添加剤として広く使用されている。しかし、本明細書において提示する触媒は、これらの既に知られた触媒を単に物理的に混合したものでなく、化学的反応により形成された新規な触媒であり、かつ、支持体として使用されるセリウム−ジルコニウム酸化物は、新規にゾル−ゲル法を利用して製造されるものである。
【0030】
Cu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物と、セリウム−ジルコニウム酸化物とを所定量混合した触媒は、メタノールの生成に有利となるようCuの分散性を向上させ、副産物であるDME、炭化水素および二酸化炭素の生成を抑制するとともに、メタノールへの選択性を向上させるという特性を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、合成ガスからのメタノール合成に使用されるCu−Zn−Al系またはCu−Zn−Al−Zr系触媒の製造方法が提供され、その方法は、比表面積が100〜300m/gのセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造して、100〜600℃の温度で焼成し、メタノール合成用支持体を製造する第1のステップと、
セリウム−ジルコニウム酸化物を含有する懸濁水溶液に、銅前駆体、亜鉛前駆体およびアルミナ前駆体の金属混合物または銅前駆体、亜鉛前駆体、アルミナ前駆体およびジルコニウム前駆体の金属混合物と、塩基性沈殿剤とを加え、pH7〜8の水溶液中で共沈、熟成させ、形成された沈殿物を濾過、洗浄および200〜600℃の範囲で焼成する第2のステップと
を含む。
【0032】
本発明において提供されるメタノール合成に使用されるCu−Zn−Al系またはCu−Zn−Al−Zr系触媒に含有させるための、ゾル−ゲル法により製造されるセリウム−ジルコニウム酸化物は、以下に説明する方法により製造される。
【0033】
言い換えると、セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の製造方法は、
クエン酸およびエチレングリコールの溶液に、水に溶解したセリウム前駆体およびジルコニウム前駆体を添加する第1のステップと、
得られた混合物を50〜100℃で攪拌した後、120〜130℃で5〜10時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去することにより、ゾルを製造する第2のステップと、
製造されたゾルを3〜7℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃においてそれぞれ0.5〜2時間維持し、400℃において2〜10時間維持し、さらに500℃において3〜5時間焼成する第3のステップと
を含む。
【0034】
前記ゾル−ゲル法により製造されるセリウム−ジルコニウム酸化物支持体における金属の重量比は0.02<Ce/Zr<0.5であることが適切である。Ce/Zr金属の重量比が0.02以下の場合には、ZrOの酸性部位の量が増加してDME等の副産物への選択性が増加するという問題が起こり得る。また、Ce/Zr金属の重量比が0.5以上の場合にも、副産物の生成に有利な酸性部位および塩基性部位の量が増加し、DMEおよび炭化水素等の副産物の生成が促進されるという問題が発生し得る。したがって、副産物の生成が抑制するために、Ce/Zrの金属重量比を上記の範囲に維持することが必要である。
【0035】
製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体相にCu系の活性成分を含有させて最終的なメタノール合成用触媒を製造する方法の代表的な実施形態を、以下に説明する。
まず、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物において、銅前駆体、亜鉛前駆体およびアルミニウム前駆体を使用した共沈を行う。その後、製造された触媒を250〜350℃で焼成する。
【0036】
前記において製造されるメタノール合成用触媒において、セリウム−ジルコニウム酸化物に対する金属酸化物(CuO,ZnOおよびAl、またはCuO,ZnO,AlおよびZrO)の重量比は0.1〜10の範囲であり得る。金属酸化物のうちCu−Zn−Alの組成は、CuOが40〜60重量%、ZnOが20〜35重量%、およびAlが5〜40重量%である。また、Cu−Zn−Al−Zrの組成は、CuOが40〜60重量%、ZnOが25〜35重量%、Alが5〜20重量%、ZrOが1〜10重量%である。このとき、CuOの含量が40重量%未満であると、メタノール合成に用いられる活性部位の減少により収率の低下が発生し、60重量%を超える場合には、他の金属との適切な触媒構造が形成されにくく、反応性が低下するという問題が発生する。また、ZnOの含量が20重量%未満であると、CuO,Alとの適切な多孔性物質の形成に障害が発生し、35重量%を超える場合には、活性成分であるCuOの減少によりメタノール合成反応速度が低下するという問題が発生する。また、Alの含量が5重量%未満であると、Cu−Zn−Al系メタノール合成用触媒の活性に有利な構造が形成されにくくなり、40重量%を超える場合には、メタノール合成のための活性部位の減少により反応性が低下するという問題が発生する。活性部位の分布を向上させるために添加されるZrOの含量が1重量%未満であると、活性成分の分散性向上の助けとならず、反応性の増加が少ないという問題が発生し、10重量%を超える場合には、活性部位の減少により反応性が低下するという問題が発生する。
【0037】
また、Cu−Zn−Al系酸化物は、セリウム−ジルコニウム酸化物に対して0.1〜10の重量比、好ましくは0.5〜8の重量比で含有される。前記重量比が0.1未満であると、メタノール合成反応に対する活性の低下およびCOへの転換率の増加により工程全体の収率が低下するという問題点が発生し、重量比が10を超える場合には、Cuの分散性が低下するためにメタノールの転換率が低下するという問題が発生するので、前記メタノール触媒の合成範囲を維持することが好ましい。
【0038】
本発明に係る、合成ガスからメタノールを合成することが可能な触媒を製造する方法をより具体的に説明すると、次のとおりである。
まず、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物を含有する懸濁水溶液に、銅前駆体、亜鉛前駆体およびアルミナ前駆体の金属混合物、または銅前駆体、亜鉛前駆体、アルミナ前駆体およびジルコニウム前駆体の金属混合物と、塩基性沈殿剤とを加え、pH7〜8の水溶液下で共沈、熟成させ、形成された沈殿物を濾過、洗浄する。
【0039】
前記金属混合物は、当分野において一般的に使用される各金属の前駆体であり、具体的には、酢酸塩、水酸化塩および硝酸塩等を使用することができる。
以上のように調製したセリウム−ジルコニウム酸化物を水溶液に混合して懸濁水溶液を製造した後、金属混合物および塩基性沈殿剤を加え、pH7〜8の水溶液下で共沈させる。前記塩基性沈殿剤は、当分野において一般的に使用されるものであり、具体的には、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)または炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等を使用することが好ましい。このとき、表面への含有がなされていないセリウム−ジルコニウム酸化物を使用する場合、共沈時にIIA族、IVB族およびランタン系から選択される1種または2種以上の金属の前駆体をさらに含有させることができる
共沈反応後、触媒の熟成過程を経て沈殿物を製造する。このとき、前記熟成は50〜90℃で2〜20時間以上、好ましくは2〜15時間維持することが適切であるが、これは、提示された熟成時間領域において、活性に優れたCu−Zn−Al系酸化物の触媒構造の形成を促進し、それにより合成ガスのメタノールへの転換反応が向上するためである。前記熟成過程において、熟成温度が50℃未満であると、Cu−Zn−Al系メタノール合成用触媒の構造が形成されにくくなり、90℃を超える場合には、Cu−Zn−Al系メタノール合成用触媒の粒子サイズが増大し、反応活性が減少し得るという問題が発生する。また、熟成時間が2時間未満であると、メタノール合成のための触媒構造が十分に発達せず、メタノール合成反応の面において不利であり、20時間を超えるとメタノール合成用触媒の粒子サイズが増大して活性部位が減少し、合成時間が増加して経済的でないため適切でない。
【0040】
洗浄過程を経た後に、前記沈殿物を100℃以上、具体的には100〜150℃の範囲のオーブンで12〜24時間乾燥させた後、200〜500℃の範囲、好ましくは300〜350℃の範囲で焼成させることにより触媒を製造する。前記焼成温度が200℃未満であると、金属前駆体が酸化物の形態へ転換されず、適切な構造が形成されずに活性が減少するという問題があり、500℃を超える場合には、銅の昇華および粒子サイズの成長による活性部位の減少により反応速度が著しく減少するという問題が発生する。
【0041】
上記のように製造された触媒を使用して合成ガスからメタノールを製造する方法は、次のとおりである。
本発明に係る触媒は、固定層反応器中の200〜500℃の領域において、水素雰囲気下で還元された後、触媒反応に使用される。前記還元された混成触媒は、固定層反応器において一般的なメタノール合成反応と類似した反応条件下で用いられる。具体的には、反応温度200〜400℃、反応圧力30〜60kg/cm、空間速度1000〜10000h−1で行うことが好ましい。前記方法により製造されたメタノール触媒は、合成ガスからメタノールの高い収率を提供するとともに全生成物中1.5%未満の副産物を生成するという長所を有しており、さらには、一回の処理での転換率を従来報告されている触媒系と比較して著しく増加させ、反応器の効率を改善するという長所を有する。
【0042】
ここで、本発明により製造される触媒は、前記実施形態に限定されるものでなく、固定層反応器、流動層反応器およびスラリー反応器などの様々な反応器において合成ガスからメタノールを製造するための転換反応にも使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を以下の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は次の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
合成ガスからメタノールを合成するための触媒を、次のような共沈法を利用して製造した。
【0044】
支持体であるセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造した。
初めに、クエン酸(Citric acid)12.06gとエチレングリコール(Ethylene glycol)14.32gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、セリウム前駆体として、硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO)2.50gを30ml以下の最少量の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Aを調製した。このとき、クエン酸は、カルシウムのモル数の10倍、エチレングリコールはカルシウムのモル数の40倍で使用した。同様の方法により、クエン酸213.01gとエチレングリコール252.89gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、Zr前駆体としてオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)23.56gを30ml以下の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Bを調製した。前記溶液AとBとを混合して60℃で30分間攪拌した後、溶液を120〜130℃で5時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去した。製造されたゾル状態の物質を、5℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃でそれぞれ1時間維持した。続いて、支持体の表面積が最大になるように400℃で2時間維持した。最後に、500℃で4時間維持しながら焼成した。このとき、前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の組成は、金属基準で8重量%Ceおよび92重量%Zr、比表面積は164.5m/gであった。
【0045】
前記製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体0.8gを粉末形態で、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体とともに使用した。銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.51g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.03gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)2.78gを、600mLの3次蒸留水に溶解させたpH5.1の金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.52gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用し、このときの溶液のpHは10.2であった。
【0046】
2000mLフラスコ内で、70℃において、3次蒸留水中でスラリー状にされたセリウム−ジルコニウム酸化物200mLに、上記のように製造した金属混合溶液と沈殿剤溶液を同時にゆっくりと注入し、最終pHを7.5〜8.0に維持した。このとき、前記混合溶液を、70℃の温度で3時間程度攪拌し、製造された触媒(CuZnAl/Ce0.08Zr0.92Ox)を2000mLの3次蒸留水で3回以上洗浄し、濾過した後に、100℃で12時間以上乾燥させ、合成ガスからのメタノール合成用触媒を製造した。最終のメタノール合成用触媒の比表面積は94.1m/gであった。
【0047】
その後、触媒の活性実験のために、触媒を1.2mm〜2.0mmの大きさのペレットに製造し、300℃で5時間、空気雰囲気下で焼成した後、反応器に導入した。焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO53.9重量%、ZnO27.6重量%、およびAl18.5重量%であり、セリウム−ジルコニウム酸化物に対するCu−Zn−Al系酸化物の重量比は5倍であった。
【0048】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[実施例2]
前記実施例1と同様の方法によりメタノール合成用触媒を製造したが、銅、亜鉛、アルミニウムおよびジルコニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.88g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.23g、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)1.38gおよびオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)0.28gを、600mLの3次蒸留水に溶解させて金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.43gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAlZr/Ce0.08Zr0.92Ox)を製造し、濾過および洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al−Zr系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO57.6重量%、ZnO29.5重量%、Al9.2重量%およびZrO3.7重量%であり、セリウム−ジルコニウム酸化物に対するCu−Zn−Al−Zr系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は123.0m/gであった。
【0049】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[実施例3]
支持体であるセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造したが、実施例1におけるセリウムおよびジルコニウムとは異なる組成とした。
【0050】
初めに、クエン酸12.06gとエチレングリコール14.32gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、セリウム前駆体として硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO)2.50gを30ml以下の最少量の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Aを調製した。このとき、クエン酸は、カルシウムのモル数の10倍、エチレングリコールはカルシウムのモル数の40倍で使用した。同様の方法により、クエン酸104.96gとエチレングリコール124.61gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた後、Zr前駆体としてオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)11.61gを30ml以下の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Bを調製した。前記溶液AとBとを混合して60℃で30分間攪拌した後、溶液を120〜130℃で5時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去した。製造されたゾル状態の物質を、5℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃でそれぞれ1時間維持した。続いて、支持体の表面積が最大になるように、400℃で2時間維持した。最後に、500℃で4時間維持しながら焼成した。このとき、前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の組成は、金属基準で15重量%Ceおよび85重量%Zrで、このときの前記支持体の比表面積は115.1m/gであった。
【0051】
上記のように製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体0.8gを、実施例1と同様の方法で、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体とともに使用した。具体的には、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.51g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.03gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)2.78gを、600mLの3次蒸留水に溶解させた金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.52gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAl/Ce0.15Zr0.85Ox)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO53.9重量%、ZnO27.6重量%およびAl18.5重量%であり、セリウム−ジルコニウム酸化物に対するCu−Zn−Al系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は98.4m/gであった。
【0052】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[実施例4]
支持体であるセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造したが、実施例1におけるセリウムおよびジルコニウムとは異なる組成とした。
【0053】
初めに、クエン酸12.06gとエチレングリコール14.32gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、セリウム前駆体として、硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO)2.50gを30ml以下の最少量の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Aを調製した。このとき、クエン酸は、カルシウムのモル数の10倍、エチレングリコールはカルシウムのモル数の40倍で使用した。同様の方法により、クエン酸351.93gとエチレングリコール417.82gとを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、Zr前駆体としてオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)38.92gを30ml以下の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Bを調製した。前記溶液AとBとを混合して60℃で30分間攪拌した後、溶液を120〜130℃で5時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去した。製造されたゾル状態の物質を、5℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃でそれぞれ1時間維持した。続いて、支持体の表面積が最大になるように、400℃で2時間維持した。最後に、500℃で4時間維持しながら焼成した。このとき、前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の組成は、金属基準で5重量%Ceおよび95重量%Zrで、このときの前記支持体の比表面積は118.6m/gであった。
【0054】
上記のように製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体0.8gを、実施例1と同様の方法で、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体とともに使用した。具体的には、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.51g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.03gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)2.78gを、600mLの3次蒸留水に溶解させた金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.52gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAl/Ce0.05Zr0.95Ox)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO53.9重量%、ZnO27.6重量%およびAl18.5重量%であり、セリウム−ジルコニウム酸化物に対するCu−Zn−Al系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は93.5m/gであった。
【0055】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[比較例1]
前記実施例1とは異なり、比較例1では、支持体を使用しなかった。
【0056】
銅、亜鉛、アルミニウムおよびジルコニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.92g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.25gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)1.85gを、600mLの3次蒸留水に溶解させた金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.46gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAlZr)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO58.0重量%、ZnO29.6重量%およびAl12.4重量%であり、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は106.9m/gであった。
【0057】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[比較例2]
前記実施例1とは異なり、比較例2では、支持体として、比表面積が350m/gと非常に大きいアルミナ(Al,high surface alumina)0.8gを使用した。銅、亜鉛、アルミニウムおよびジルコニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.88g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.23g、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)1.38gおよびオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)0.28gを、600mLの3次蒸留水に溶解させた金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤としては、炭酸ナトリウム5.43gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAl−Zr/Al)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al−Zr系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO57.6重量%、ZnO29.5重量%、Al9.2重量%およびZrO3.7重量%であり、アルミナ支持体に対するCu−Zn−Al−Zr系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は117.8m/gであった。
【0058】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[比較例3]
前記実施例1とは異なり、比較例3では、支持体として、KANTO社の酸化ジルコニウム(ZrO)0.8gを使用した。銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.51g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.03gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)2.78gを、600mLの3次蒸留水に溶解させた金属混合溶液を調製し、沈殿剤として、炭酸ナトリウム5.52gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAl/ZrO)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al−Zr系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO53.9重量%、ZnO27.6重量%およびAl18.5重量%であり、酸化ジルコニウム支持体に対するCu−Zn−Al系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は68.4m/gであった。
【0059】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
[比較例4]
支持体であるセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造したが、実施例1におけるセリウムおよびジルコニウムとは異なる組成とした。
【0060】
初めに、クエン酸12.06gとエチレングリコール14.32gを60℃で30分間攪拌して溶解させた。次に、セリウム前駆体として、硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO)2.50gを30ml以下の最少量の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Aを調製した。このとき、クエン酸は、カルシウムのモル数の10倍、エチレングリコールはカルシウムのモル数の40倍で使用した。同様の方法により、クエン酸18.5gとエチレングリコール22.0gを60℃で30分間溶攪拌して溶解させた。次に、Zr前駆体としてオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrClO・8HO;zirconium(IV) oxychloride octahydrate)2.05gを30ml以下の水に溶かして完全に溶解させた後、予め製造されたクエン酸とエチレングリコールとの混合溶液にゆっくりと添加して溶液Bを調製した。溶液AとBとを混合して60℃で30分間攪拌した後、溶液を120〜130℃で5時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去した。製造されたゾル状態の物質を、5℃/分の昇温速度で加熱し、100℃、150℃、200℃、300℃でそれぞれ1時間維持した。続いて、支持体の表面積が最大になるように、400℃で2時間維持した。最後に、最終温度の500℃で4時間維持しながら焼成した。このとき、前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の組成は、金属基準で50重量%Ceおよび50重量%Zrで、このときの前記支持体の比表面積は134.6m/gであった。
【0061】
続いて、上記のように製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物支持体0.8gを、実施例1と同様の方法で、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体とともに使用した。具体的には、銅、亜鉛およびアルミニウム前駆体として、酢酸銅一水和物(Cu(C・HO)5.51g、酢酸亜鉛二水和物(Zn(C・2HO)3.03gおよび硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO)2.78gを、600mLの3次蒸留水に溶解させて金属混合溶液を調製した。また、沈殿剤としては、炭酸ナトリウム5.52gを600mLの3次蒸留水に溶解させた溶液を使用した。共沈後、3時間の熟成時間を経て、触媒(CuZnAl/Ce0.5Zr0.5Ox)を製造し、濾過と洗浄過程を経た後に焼成してメタノール合成用触媒を製造した。このとき、焼成後の触媒相におけるCu−Zn−Al系酸化物の組成は、金属酸化物基準で、CuO53.9重量%、ZnO27.6重量%およびAl18.5重量%であり、セリウム−ジルコニウム酸化物に対するCu−Zn−Al系酸化物の重量比は5倍、最終のメタノール合成用触媒の比表面積は109.5m/gであった。
【0062】
反応を開始する前に、触媒を250℃の水素雰囲気下で4時間還元処理した後、反応温度250℃、反応圧力50kg/cm、空間速度4000h−1の条件で、反応物である一酸化炭素:水素のモル比を33.3%:66.7%の割合に固定して反応器へ注入し、反応を行った。反応8時間から14時間までの間の正常状態のCO転換率と選択性を平均して得られた結果を、表2に示す。
【0063】
【表2】

上の表2に見られるように、本発明に係るゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物相において、Cu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物の共沈により製造された触媒を使用した場合実施例1〜4、合成ガスからのメタノールの転換反応において、メタノールへの選択性および触媒の安定性を向上させることができた。
【0064】
また、比較例1〜4は、本発明のセリウム−ジルコニウムではなく他の種類の支持体を使用した場合、または支持体を使用しなかった場合のメタノール触媒の反応結果を示したものである。支持体を使用していないCu−Zn−Al触媒を使用した比較例1では、二酸化炭素は生成されなかったが、低い転換率と多量の副産物が生成されることが確認された。比較例2における触媒は、高比表面積のアルミナを支持体として使用し、共沈時にジルコニウムを添加した触媒である。比較例2の触媒は、アルミナの酸性部位に起因して、生成されたメタノールが次の段階であるジメチルエーテルへの脱水反応に利用されたため、実施例に比べて非常に高い転換率を示した。しかし、多量のジメチルエーテルおよび二酸化炭素が生成され、所望のメタノールの収率には及ばなかった。比較例3における触媒は、メタノール合成反応において支持体や添加剤として既に広く知られているKANTO社のジルコニアを支持体として使用した触媒である。比較例3の触媒は、一酸化炭素の転換率およびメタノールの収率において実施例の触媒よりも相当高い値を示した。しかしながら、生成物の選択性を見てみると、メタノールへの選択性が90.3%であり、9.7%の副産物が生成された。比較例4は、本明細書において提示するCe/Zr比を有しない支持体を使用した場合である。比較例4の支持体におけるセリウム:ジルコニウムの質量比は1:1であり、副産物の生成量が実施例と比較して増加した。本発明は、生成物中において副産物として生成されるDME、二酸化炭素および炭化水素の収率が2%未満の触媒を開発し、メタノール合成工程の炭素効率の増大および触媒の安定性の向上を目的とするものである。比較例3や4の結果のように副産物が多量に生成される場合には反応物の損失を引き起こすため、メタノール合成工程には適していない。前記結果から、セリウム−ジルコニウム酸化物はメタノール合成用触媒の支持体として十分に使用可能であるが、セリウムの含量があまりに高いと支持体の酸性部位が増加して多量の副産物が生成されてしまう。よって、ジルコニウムおよびセリウムを適切な量および重量比で使用することが必要である。
【0065】
一方、実施例1および実施例2においては、支持体としてセリウム−ジルコニウム酸化物を使用し、セリウムおよびジルコニウム金属の重量比は8:92であった。これらの実施例において、共沈の際に添加剤としてジルコニウムを追加すると転換率が0.1%上昇したが、メタノールへの選択性は変わらなかった。
【0066】
図1は、実施例1と実施例2、そして比較例1についてのメタノール合成反応の時間に対する転換率を示したものである。図1に見られるように、セリウム−ジルコニウム酸化物の支持体は、触媒の安定性を増加させる役割をすることが確認された。
【0067】
以上の結果から、ゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物に共沈させたCu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物を含有する触媒は、他の支持体を使用する触媒または金属酸化物支持体を使用しない触媒よりも、反応中に生成される炭化水素化合物、ジメチルエーテルおよび二酸化炭素といった副産物の生成を抑制する。このようにして、メタノール合成反応工程における炭素利用効率を向上させ、また後続の分離工程を実施するために必要な費用を削減することにより、工程全体の効率を向上させることが可能である。。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本明細書において提示する新規な触媒系は、これまでに報告されているCu−Zn−Al触媒系と比較して、副産物の生成を大幅に減少させることにより、炭素利用効率および後続の分離工程の効率を向上させるとともに、触媒の長期にわたる優れた性能を提供する。したがって、本明細書において提示する触媒を用いて合成ガスからメタノールを製造する方法は、非常に経済的である。本明細書において提示したゾル−ゲル法により製造されたセリウム−ジルコニウム酸化物を支持体として使用して製造される触媒は、反応物である一酸化炭素のワン−パス転換率を増大させるとともに、副産物の生成を最小化することができる。このようにして、分離工程に必要な費用を削減すると同時に炭素利用効率を向上させることが可能であり、したがって、経済的なメタノール合成方法を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム−ジルコニウム酸化物支持体とともに、Cu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物を含有することを特徴とする、メタノール合成用触媒。
【請求項2】
前記Cu−Zn−Al系酸化物またはCu−Zn−Al−Zr系酸化物は、セリウム−ジルコニウム酸化物支持体に対し0.1〜10の重量比で前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体と混合されることを特徴とする、請求項1記載のメタノール合成用触媒。
【請求項3】
前記Cu−Zn−Al系酸化物は、CuOを40〜60重量%、ZnOを20〜35重量%およびAlを5〜40重量%含有し、
前記Cu−Zn−Al−Zr系酸化物は、CuOを40〜60重量%、ZnOを25〜35重量%、Alを5〜20重量%およびZrOを1〜10重量%含有することを特徴とする、請求項1記載のメタノール合成用触媒。
【請求項4】
前記セリウム−ジルコニウム酸化物支持体の金属重量比が、0.02<Ce/Zr<0.5で維持されることを特徴とする、請求項1記載のメタノール合成用触媒。
【請求項5】
前記メタノール合成用触媒の比表面積は、50〜250m/gであること特徴とする、請求項1記載のメタノール合成用触媒。
【請求項6】
合成ガスからメタノールを合成するための触媒を製造する方法であって、
比表面積が100〜300m/gであるセリウム−ジルコニウム酸化物をゾル−ゲル法により製造することによりメタノール合成用触媒の支持体を製造する第1のステップ、および、
セリウム−ジルコニウム酸化物を含有する懸濁水溶液に、銅前駆体、亜鉛前駆体およびアルミナ前駆体の金属混合物と、塩基性沈殿剤とを加えてpH7〜8の水溶液中で共沈および熟成させ、形成された沈殿物を濾過、洗浄および200〜600℃の温度で焼成する第2のステップ、
を含む方法。
【請求項7】
前記支持体は、
クエン酸およびエチレングリコールの溶液に、水に溶解したセリウム前駆体およびジルコニウム前駆体を添加する第1のステップ、
得られた混合物を50〜100℃で攪拌した後、120〜130℃で5〜10時間加熱して溶液に含まれる水を完全に除去することにより、ゾルを製造する第2のステップ、および、
製造されたゾルを3〜7℃/分の昇温速度で加熱するとともに、100℃、150℃、200℃、300℃においてそれぞれ0.5〜2時間維持し、400℃において2〜10時間維持し、さらに500℃において3〜5時間焼成する第3のステップ、
を含む方法により製造されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記金属混合物は、IVB族およびランタン系から選択される1種または2種以上の金属をさらに含有することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記金属混合物は、ジルコニウム前駆体をさらに含み、かつ、前記金属の前駆体は、金属の酢酸塩および硝酸塩から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記塩基性沈殿剤は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項記載の触媒を使用して、合成ガスからメタノールを合成する方法。
【請求項12】
反応温度200〜400℃、反応圧力30〜60kg/cm、および空間速度1000〜10000h−1で実施されることを特徴とする、請求項11記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−528617(P2011−528617A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519994(P2011−519994)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004128
【国際公開番号】WO2010/011101
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(594006932)ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド (31)
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI HEAVY INDUSTRIES CO., LTD.
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【Fターム(参考)】