説明

合成セグメント

【課題】鋼材の使用量が少なく低コストであると共に薄肉で高強度である。
【解決手段】合成セグメント1は、鋼殻2が、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けた一対の第一鋼材10と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けた一対の第二鋼材13とを備えている。第一及び第二鋼材10、13の木端面10a、13aがそれぞれ外部に露出すると共にシール溝20、20を形成した。第一及び第二鋼材10、13の内側には、第三鋼材15と第四鋼材16をそれぞれ連結し、これら第三鋼材15及び第四鋼材16をラチス18で連結した。鋼殻2の内部にコンクリート3を打設し、外周面にスキンプレート23を溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の円弧板状枠体の内部にコンクリートを打設してなる合成セグメントの製造方法及び合成セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの構築に用いられる方法として、トンネル状の掘削穴を掘削しつつ、その内面に円弧板状のセグメントを複数連結して筒状の壁体を構築する、いわゆるシールド工法が一般的である。掘削穴内でのセグメントの連結に際しては、各セグメントのセグメント継手とリング継手を他のセグメントのセグメント継手とリング継手にそれぞれ連結させ、しかも掘削穴の軸方向に隣り合う各セグメントを周方向に例えば1/2の長さづつずらして連結するようにしている。
シールド工法に用いられるセグメントとして、例えばRC(鉄筋コンクリート製)セグメント、鋼製(スチール製)セグメント、鋼材(スチール)とコンクリートを複合使用した合成セグメントの3種類のセグメントが知られている。これらセグメントのうち、合成セグメントは鋼製の円弧板状枠体(鋼殻)内にコンクリートを充填して製造されている。
【0003】
ところで、今後、需要の増大が予測される道路用トンネルを構築する場合、工事全体としてコストの低減が要求されており、そのために掘削機の掘削外径の縮小や掘削土量の低減、工期の短縮等が必要とされている。このような要求を実現するためには、道路トンネルの桁高さを従来より低くすることが必要であり、トンネルの壁面を構成するセグメントも薄肉で高強度のものが開発されてきている。
このようなセグメントとしてRCセグメントを用いた場合、合成セグメントやスチールと同一強度を確保するためには厚みがより大きくなり、上述した薄肉高強度という要求に合致しないという欠点がある。また、RCセグメントを用いてトンネルを構築した場合、地下水等がトンネル内に侵入するのを防止するためのシール材用のシール溝を形成する必要があるが、RCセグメントの主桁面や継手面において外周面(地盤側の面)や内周面(内側)近傍にシール溝を形成するとクラックが入るおそれがあり、厚さ方向中央寄りに形成せざるを得なかった。そのため、RCセグメントの薄肉化は困難であった。しかもRCセグメント製造用の型枠は高価であった。
【0004】
また、鋼製セグメントを用いた場合、セグメント全面をスチールの枠で覆うために高強度で薄肉化を図ることはできるが、鋼材の使用量が多くコスト高になる欠点がある。しかもシール溝は鋼製の板材からなる主桁面や継手面に形成していた。また、セグメントが大型化すると溶接等による歪みが起き易く矯正が必要になる等、精度の低下を来すおそれが高かった。
これに対し、合成セグメントは、RCセグメントより高コストではあるが、鋼製セグメントより低コストで薄肉高強度のものを製造することができる。このような合成セグメントの一例として、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載の合成セグメントは、湾曲形成された主桁面や平面状の継手面が断面視コの字形状の鋼板で形成され、これらの主桁面や継手面に機械加工等でシール溝を形成していた。
また、他の合成セグメントとして先行する特願2004−207350号出願に記載されたものがある。この合成セグメントでは、鋼殻を構成する外周面と内周面の対向する角部の2辺に円弧状に湾曲する断面略L字形状の鋼材を対向配置させ、断面L字状の鋼材のうち主桁面に位置する一方の面にシール溝を形成するようにしている。そして主桁面の角部に設けた二つのL字状の鋼材の各一方の面の間に継手やほぞを設けていた。
【特許文献1】特開平11−159293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の合成セグメントは、主桁面と継手面の全面を覆う鋼板にシール溝を形成する構成であるため、セグメントにおける鋼材の使用面積が大きくなり、製造コストが増大する欠点がある。
また、先行する特願2004−207350号出願記載の他の合成セグメントでは、主桁面に断面L字状の鋼材の各一方の面が位置するために継手やほぞを設けるスペースが小さいという欠点がある。そのため、厚みの小さい薄肉のセグメントにおいては高い連結強度が得られないという不具合がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、鋼材の使用量が小さく低コストであると共に薄肉で高強度の合成セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による合成セグメントは、鋼殻の内部にコンクリートが打設されてなり、周方向及び軸方向に複数連結されることで筒状壁体を構成する略円弧板状に湾曲した合成セグメントであって、鋼殻は、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けた一対の第一鋼材と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けた一対の第二鋼材とを備えており、第一及び第二鋼材の木端面がそれぞれ外部に露出すると共に該木端面にシール溝が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、合成セグメントの構造体として外周面と内周面の各二辺に設けた第一及び第二鋼材の木端面にシール溝を形成したから、鋼殻として使用する鋼材が主桁面と継手面を覆うような従来のものと比較して少ないために低コストであり、しかも合成セグメントを薄肉構造にできると共に主桁面等におけるほぞや継手を設けるスペースを大きく設定できて高強度である。
【0008】
また、第一及び第二鋼材は長手方向に直交する断面が略四角形とされていることが好ましい。
第一及び第二鋼材を圧延加工等で容易に製造できると共に小型化できる。
また、鋼殻には、第一鋼材の両端と第二鋼材の両端をそれぞれ連結する継手部材が設けられ、該継手部材にそれぞれシール溝が形成されている。
第一鋼材及び第二鋼材のシール溝と共にシール材を装着することで、合成セグメントの全周をシールして漏水等を確実に防止できる。
【0009】
また、第一鋼材の内側には第一鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第三鋼材が設けられ、第二鋼材の内側には第二鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第四鋼材が設けられていてもよい。
第三及び第四鋼材は第一及び第二鋼材と共に合成セグメントの構造材を構成し、薄肉構造でも高強度にできる。
また、第三鋼材と第四鋼材は、それぞれ対向して配設されていて接続部材によって連結されていてもよい。
これによって一層合成セグメントの強度を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による合成セグメントによれば、鋼殻を構成する第一及び第二鋼材の木端面にシール溝を形成したため、鋼材の使用量が小さく低コストであると共に薄肉構造であっても第一及び第二鋼材間に所要の大きさの継手やほぞを設けることができ、高強度である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1乃至図4は第一の実施の形態による合成セグメントを示すもので、図1は合成セグメントの斜視図、図2は図1に示す合成セグメントのA−A線縦断面図、図3は鋼殻の斜視図、図4は合成セグメントからスキンプレートを分離した分解斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態による合成セグメント1は、例えばシールド工法によって大断面の道路用トンネルの内壁に構築されるトンネル覆工体を形成するもので、薄肉の略長方形板状のものを略円筒周面形状(以下、円弧板状という)に湾曲させている。図1乃至図3において、この合成セグメント1は鋼殻2とその内部に充填されるコンクリート3とを有している。
そして合成セグメント1の短辺側側面である継手面4にはトンネルの周方向の連結のためのセグメント間継手5が設けられ、このセグメント間継手5は中継継手部5aとインサート継手部5bとを有している。また長辺側側面である主桁面6にはトンネルの軸方向の連結のためのリング間継手7の雄部7aが例えば4個設けられ、対向する主桁面6には雄部7aが嵌合する雌部7bが設けられている。対向する各主桁面6、6には互いに嵌合するほぞ8としてほぞ凸部8aとほぞ凹部8bとが設けられている(図2参照)。
【0012】
次に合成セグメント1の鋼殻2について図2及び図3により説明する。図3に示す鋼殻2において、トンネル内に装着した状態で地山側に位置する外周面には、合成セグメント1の外周面の枠部を構成する四辺からなる外側枠体部9(第一枠体部)が形成されている。この外側枠体部9は長辺が略円筒周面形状に湾曲して形成されていて断面略長方形をなす一対の第一鋼材10、10とされている。一対の第一鋼材10,10の両側端部は継手面4に位置する板状の継手板11、11で連結されている。
また、合成セグメント1においてトンネル内に装着状態で内側に位置する内周面には、外側枠体部9に対向して内周面の枠部を構成する四辺からなる内側枠体部12(第二枠体部)が形成されている。この内側枠体部12は長辺が略円筒周面形状に湾曲して形成されていて断面略長方形をなす一対の第二鋼材13、13とされている。一対の第二鋼材13,13の両側端部は継手面4に位置する板状の継手板14、14で連結されている。継手板11、14は例えば第一及び第二鋼材10、13の厚みと同一幅に設定されている。
外側枠体部9と内側枠体部12はいずれも鋼材で構成されていて、好ましくは同一寸法とされている。
【0013】
各第一鋼材10、10間の内側には、各第一鋼材10に連結されて一体となる板状の第三鋼材15、15がそれぞれ設けられている。各第三鋼材15は好ましくは第一鋼材10と同様な断面形状で同様に湾曲して形成されている。また、各第二鋼材13、13の内側には、各第二鋼材13に連結されて一体となる板状の第四鋼材16、16が連結されている。各第四鋼材16も第二鋼材13と同様な断面形状で同様に湾曲して形成されている。
そして、鋼殻2の厚み方向に対向する第三鋼材15と第四鋼材16とは例えば略V字状をなすラチス18(接続部材)によって互いに連結されている。ラチス18は第三鋼材15と第四鋼材16の長手方向に連続して複数配列されている。
図2及び図3に示す外側枠体部9及び内側枠体部12において、第一鋼材10と第二鋼材13の各主桁板6に露出する木端面10a、13a(厚みに相当する)には、その長手方向に沿ってシール溝20、20が形成されている。同様に継手板11、14にも木端面10a、13aのシール溝20、20に連続するシール溝21、21が形成されているため、各シール溝20,21が四辺全周に亘って形成されている。これらのシール溝20、21には、シール材が嵌合する。
【0014】
そして、図4に示すように、外側枠体部9にはスキンプレート23が水密溶接により溶接されている。
なお、図2に示すリング間継手7は例えばプッシュグリップで構成され、雄部7aはピンボトル25、袋ナット部26、アンカー筋27等を備え、雌部7bはピンボトル25を嵌合係止させる楔部28、アンカー筋29等を備えている。
また、第一鋼材10及び第二鋼材13は例えば圧延によって製造される。即ち、板状の鋼材を加熱圧延ロール間で挟んで繰り出すことで、鋼材を第一鋼材10及び第二鋼材13の所定厚み及び幅寸法に引き延ばす。これと同時に、圧延時にこの鋼材からなる第一鋼材10及び第二鋼材13の厚み方向の側面である木端面10a、13aに木端面10a、13aの厚みよりわずかに幅の小さい車輪状の圧延部材を押し当てることで鋼材の長さ方向に凹溝を形成し、シール溝20とする。そしてこの鋼材を所定の曲率で湾曲させることで第一鋼材10及び第二鋼材13が形成される。
【0015】
本実施の形態による合成セグメント1は上述の構成を有しているから、鋼殻2を構成する第一鋼材10及び第二鋼材13は略板状の鋼材であって主桁面6,6に露出する木端面10a、13aにシール溝20、20を形成したから、従来の合成セグメントの鋼殻のように断面L字の鋼材の一方の面にシール溝を形成したものと比較して、鋼材の使用量が少なくてすみ、低コストである。
しかも、合成セグメント1の主桁面6において、長手方向の角部に第一及び第二鋼材10,13を配設してシール溝20を形成した木端面10a、13aを位置させたから、内外周面の角部からシール溝20までの距離が短く、木端面10a、13a間のほぞ8やリング間継手7を相対的に大きく形成することができ、合成セグメント1を厚みの小さい薄肉板状に形成してもセグメント1、1同士の連結強度が高い。
【0016】
また、合成セグメント1において、割れや欠けが生じやすい外周面及び内周面の四辺の角部を断面略長方形状の第一鋼材10及び第二鋼材13によって構成しているので、合成セグメント1の全体を鋼材で覆わなくても所望の強度を得ることができる。また、第一鋼材10及び第二鋼材13の内側に同様な湾曲形状を有する第三鋼材15及び第四鋼材16を一体形成したので、トンネルを形成した場合、地山側等からの円弧方向の外力及び合成セグメント1の外周面から内周面に向かう方向への外力に対し、更に高い強度を発揮することができる。
更に、第三鋼材15及び第四鋼材16をラチス18で接続すると共に、第一鋼材103と第三鋼材15、及び第二鋼材13と第四鋼材16をそれぞれ一体化する構成としているので、合成セグメント1の製造時に型枠内での構造部材の位置ずれを生じることが無く、合成セグメント1を安価に安定して製造することができる。
また、第一鋼材10及び第二鋼材13と継手板14、14にシール溝20、21をそれぞれ形成してシール材を設けることで、他の合成セグメント1と連結して道路用トンネル等の内側への地下水等の漏水を確実に防止することができる。しかもこの合成セグメント1を道路用トンネルに適用するとセグメント1の厚み分だけ桁高を小さくできる。
【0017】
次に、本発明の第二の実施形態を図2と同様な断面図である図5に基づいて説明する。なお、この第二の実施形態において、第一の実施形態と共通する部分には同一の符号を用いて説明を省略する。
第二実施形態による合成セグメント30において、第一実施形態と相違する点は第一鋼材10と第三鋼材15、そして第二鋼材13と第四鋼材16をそれぞれ分離した構成を採用したことである。
従って、本実施形態による合成セグメント30においては、中央部で発生する応力を、第一及び第二鋼材10,13とは分離して設けられた第三及び第四鋼材15、16によって分担させることができるので、幅広の合成セグメントへの適用に好適である。
【0018】
なお、上述した各実施形態において、第一鋼材10及び第二鋼材13、第三鋼材15及び第四鋼材16はそれぞれ合成セグメント1の構造材を構成する。また、ラチス18は、合成セグメント1の製造時に型枠内に鋼殻2を配置する際、第三鋼材15と第四鋼材16をつなぐために設けられるものであるが、必ずしも設けなくても良い。また第三鋼材15及び第四鋼材16自体も必ずしも設けなくてもよい。
また、上述の各実施形態では、第一鋼材10及び第二鋼材13の木端面10a、13aに設けたシール溝20は各鋼材10,13の圧延加工時に車輪状の部材で同時に圧延形成したが、これに代えて第一鋼材10及び第二鋼材13の形成後に切削等の機械加工によって形成してもよい。
また第一の実施形態においてラチス18は、複数の板状または棒状部材を略V字状に配列した構造とされているが、コンクリート3の充填性が良好な隙間を有する形状であれは、必ずしも当該形状である必要はなく、任意の形状の接続部材を採用できる。
また、主桁面6,6にほぞ8としてほぞ凸部8aとほぞ凹部8bを配設したが、リング間継手7だけでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の実施の形態による合成セグメントの斜視図である。
【図2】図1に示す合成セグメントのA−A線縦断面図である。
【図3】図1に示す合成セグメントの鋼殻を示す斜視図である。
【図4】図1に示す合成セグメントからスキンプレートを分離した分解斜視図である。
【図5】第二の実施の形態による合成セグメントの図2と同様な縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1、30 合成セグメント
2 鋼殻
3 コンクリート
4 継手面
6 主桁面
10 第一鋼材
10a、13a 木端面
13 第二鋼材
14 継手部材
15 第三鋼材
16 第四鋼材
18 ラチス(接続部材)
20、21 シール溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼殻の内部にコンクリートが打設されてなり、周方向及び軸方向に複数連結されることで筒状壁体を構成する略円弧板状に湾曲した合成セグメントであって、
前記鋼殻は、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けた一対の第一鋼材と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けた一対の第二鋼材とを備えており、
前記第一及び第二鋼材の木端面がそれぞれ外部に露出すると共に該木端面にシール溝が形成されていることを特徴とする合成セグメント。
【請求項2】
前記第一及び第二鋼材は長手方向に直交する断面が略四角形とされている請求項1に記載の合成セグメント。
【請求項3】
前記鋼殻には、一対の前記第一鋼材の両端と一対の前記第二鋼材の両端をそれぞれ連結する継手部材が設けられ、該継手部材にそれぞれシール溝が形成されている請求項1または2に記載の合成セグメント。
【請求項4】
前記第一鋼材の内側には、該第一鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第三鋼材が設けられ、
前記第二鋼材の内側には、該第二鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第四鋼材が設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の合成セグメント。
【請求項5】
前記第三鋼材と第四鋼材は、それぞれ対向して配設されていて接続部材によって連結されていることを特徴とする請求項4に記載の合成セグメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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