説明

合成樹脂ブロー成形容器及びその成形方法

【課題】 本発明は単純なグラデーション状の模様をさらに複雑に発展させて、色調を大理石調の模様等に見られるように多様に変化させたブロー成形容器を創出することを課題とする。
【解決手段】 基体層を形成する円筒状基体層流路と、この基体層の外側に比較的薄肉の着色した加飾層を形成する円筒状加飾層流路を有する多層共押出し成形用ダイスを用い、加飾層を形成する加飾層樹脂の供給速度を周期状に変動させて円筒状加飾層流路に供給し、加飾層樹脂の溶融粘度と、加飾層を形成する流路の形状と、加飾層樹脂の周期状の供給パターンの組み合わせにより、円筒状加飾層流路内での流動態様を軸方向及び周方向に変動させ、この変動により加飾層の層厚を多様に変化させた多層パリソンを成形し、加飾層の層厚が多様に変化し、この層厚変化により色調が多様に変化した模様を外側面に現出させた容器をブロー成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層に積層し、少なくとも一層の層厚を多様に変化させて色調に係る、多様な模様を現出したブロー成形容器及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂ブロー成形容器は従来より種々の用途に使用されているが、特に容器の装飾性が商品力の大きな部分を占める化粧料用、シャンプー用等の容器においては、塗装、印刷、ラベルの貼付等により装飾性を発揮させ、他社製品と差別化するようにしている。
【0003】
また、容器本体自体を着色により装飾する方法も各種試みられており、たとえば、特許文献1には内層樹脂と外層樹脂の間に着色層を間欠的に円筒状に積層したプリフォームを射出成形し、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して着色領域が横方向に展開した容器に係る記載があり、この着色領域の着色濃度をグラデーション状に変化させることもできるとしている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−89409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような単純なグラデーション状の模様をさらに、複雑に発展させて、色調を大理石調の模様等に見られるように多様に変化させたブロー成形容器を創出することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1〜4記載の発明は色調を大理石調の模様に見られるように多様に変化させた合成樹脂ブロー成形容器に関するものであり、この中で請求項1記載の発明の手段は、
ブロー成形容器において、少なくとも基体層と、この基体層の外側に比較的薄肉で着色した加飾層を有し、この加飾層の層厚が多様に変化し、この層厚変化により色調が多様に変化した模様を外側面に現出したこと、にある。
なおここで、色調とは色の配合、濃淡・強弱などの調子を表す。
【0007】
請求項1記載の上記構成により、基体層は容器としての機械的な強度を発揮すると共に、現出される模様における色調のベースとなるものであり、現出させる色調に応じて、無着色とすることもできるし、着色して使用することもできる。
【0008】
加飾層は、後述する請求項5〜10に記載のあるブロー成形方法により形成することができるが、着色した層であり、この加飾層の層厚が極く薄い箇所では基体層の色調が現出し、厚い箇所では加飾層の色調が現出し、層厚が変化する領域ではこの層厚の変化に応じて色調がグラデーション状に変化するので、加飾層の層厚の多様な変化により、多様に色調の変化を現出させることが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、模様を、大理石調の模様としたこと、にある。
【0010】
請求項2記載の上記構成は、色調が多様に変化する模様の具体例に係るものであり、大理石調の模様とすることにより、容器自体の着色態様により今までにない加飾性を発揮させ、高級なイメージを現出させ、他社製品と差別化することができる。
【0011】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1または2記載の発明において、模様を、軸方向に色調がグラデーション状に変化する帯状領域を、周方向に沿って、軸方向にうねるように波状に現出させたこと、にある。
【0012】
請求項3記載の上記構成も、色調が多様に変化した模様の具体例に係るものであり、軸方向に色調がグラデーション状に変化する帯状領域は、後述するように加飾層樹脂をパリソン用のダイスに周期状、若しくは間欠的に供給することにより、繰り返し現出させることができるので、複数の帯状領域を周方向に沿って、軸方向にうねるように波状に現出させることができ、全体として今までにない色調変化を現出させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明の手段は、請求項1、2または3記載の発明において、加飾層自体が着色濃度斑を有する構成としたこと、にある。
【0014】
加飾層を形成する加飾層樹脂を、溶融粘度の異なる樹脂をブレンドしたものとしたり、加飾層を形成するダイスの流路に着色樹脂と無着色樹脂を別々に供給する等の手段により、請求項4記載の上記構成のように加飾層自体を着色濃度斑を有するものとすることができ、これにより、色調を暈したり、より複雑に変化させることができる。
【0015】
ここで、加飾層は1層だけも、層厚の多様な変化により今までいない加飾効果を発揮させることができるが、加飾層を複数積層することもでき、たとえば異なる色で着色した加飾層を積層することにより、より多彩に色調を変化させることができる。
【0016】
本願発明に係る上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項5〜10記載の発明は、色調を大理石調の模様に見られるように多様に変化させるためのブロー成形方法に関するものであり、
この中で請求項5記載の発明の成形方法は、合成樹脂ブロー成形容器の成形方法において、
少なくとも、基体層を形成する円筒状基体層流路と、この基体層の外側に比較的薄肉の着色した加飾層を形成する円筒状加飾層流路を有する多層共押出し成形用ダイスを用いること、
加飾層を形成する加飾層樹脂の供給速度を周期状に変動させて円筒状加飾層流路に供給すること、
加飾層樹脂の溶融粘度と、加飾層を形成する流路の形状と、加飾層樹脂の周期状の供給パターンの組み合わせにより、円筒状加飾層流路内での流動態様を軸方向及び周方向に変動させること、
この変動により加飾層の層厚を多様に変化させた多層パリソンを成形すること、
この多層パリソンをブロー成形すること、
にある。
【0017】
本願発明者らは、基体層と比較的薄肉である加飾層から形成される多層パリソンをさまざまな成形条件で成形する際、加飾層を形成する加飾層樹脂の供給速度を周期状に変動させて(間欠的に供給する場合も含む)円筒状加飾層流路に供給すると、特に加飾層樹脂の溶融粘度と、加飾層を形成する流路の形状と、加飾層樹脂の周期状な供給パターンの組み合わせにより、パリソンにおいて加飾層の層厚を多様に変化させた多層パリソン形成することができることを見出し、上記請求項5記載の発明に至った。
なお、加飾層を形成する流路とは円筒状加飾層流路及びこの円筒状加飾層流路に溶融樹脂を分配供給するマニホールド、基体層樹脂との合流点近傍の流路等を含む加飾層樹脂が流動するダイス内の流路を指す。
【0018】
この請求項5の成形方法は加飾層樹脂の供給速度を周期状に変動させることにより、この周期状の供給パターンと、特に加飾層樹脂の溶融粘度と、加飾層を形成する流路の形状を組み合わせることにより、円筒状加飾層流路内での流動態様を軸方向だけでなく、周方向に変動させることができることを利用したものであり、これによりパリソンの押出し方向(軸方向)だけでなく周方向にも加飾層の厚さを多様に変動させることができ、このパリソンをブロー成形することにより、全体として色調が多様に変化する容器を得ることができる。
【0019】
また、溶融粘度の高い加飾層樹脂を使用することにより、円筒状加飾層流路の流動クリアランスが比較的小さいので、基体層との合流部における加飾層樹脂の合流点近傍における流動乱れを大きくして周方向での流動態様さらに複雑に変化させることも可能である。
【0020】
ここで、基体層の溶融粘度や、円筒状基体層流路の形状も加飾層の積層態様に影響を及ぼすものであるが、基体層はブロー成形性や、容器としての機械的性質や耐薬品性を担うものであるので、これら基体層の溶融粘度や、円筒状基体層流路の形状を大きく変えることはできない。そのため、請求項5の要件ではこれらの要素を除いて、「加飾層樹脂の溶融粘度と、加飾層を形成する流路の形状と、加飾層樹脂の周期状の供給パターンの組み合わせにより、」と云うように記載している。
【0021】
また、基体層樹脂と加飾層樹脂は同種の樹脂とすることにより、接着層を設ける必要もなく、パリソンの押出し成形、そのブロー成形に係る生産性の点で有利であるが、用途、性能、外観等を考慮して異種の樹脂を組み合わせて使用することもできる。また、基体層と加飾層の間に必要に応じて中間層を形成することもできる。
【0022】
請求項6記載の発明の方法は、請求項5記載の発明において、加飾層樹脂を間欠的に供給するようにすること、にある。
【0023】
この方法は、加飾層を形成する加飾層樹脂の供給速度を周期状に変動させて円筒状加飾層流路に供給すると云う、供給方法の一態様であるが、請求項6記載の上記方法により、加飾層樹脂を間欠的に供給するようにすることにより、加飾層の色調から基体層の色調までより広範囲にグラデーションの領域を広げることができると共に、加飾層樹脂の供給を一端停止して、再度開始するので、樹脂の粘弾性効果が相俟って、周方向における層厚の変動をより顕著に現出させることが可能となる。
【0024】
請求項7記載の発明の方法は、請求項5または6記載の発明において、加飾層樹脂を、中心軸対称に位置する2個所の樹脂流入口からマニホールドに供給し、このマニホールドを介して円筒状加飾層流路に分配供給すること、にある。
【0025】
マニホールドは押出機、あるいはアキュムレータ等の樹脂供給部から供給される溶融樹脂を円筒状流路に周方向に均一に分配供給するための流路であり、円筒状流路の上端部分に、その断面形状が略半円状の流路断面積を所定の割合で徐々に減少させつつ、押出し方向に所定の角度で、螺旋状に配置される。ここで、請求項7記載の上記方法により、中心軸対称に位置する2個所の樹脂流入口からマニホールドに加飾用樹脂を供給することにより、円筒状加飾層流路では、2箇所の流入口の略中間の中心角度位置の2箇所で、溶融樹脂が衝突状に合流し、所謂ウエルド部が押出し方向に形成される。
【0026】
請求項7記載の方法は、このウエルド部の近傍での溶融樹脂の特異的な流動挙動を利用するものであり、加飾層樹脂を周期状に変動させて供給することにより、周方向に沿って2周期分の大きな波状の変動を付与することができる。
なお、ダイスの樹脂流入口を3箇所や4箇所等多数にすることもでき、この数に応じて波の数を増やすことができる。
【0027】
ここでさらに言及すると、マニホールドは溶融樹脂を円筒状流路に周方向に均一に分配供給するための流路であるが、逆にマニホールドの流路設計により周方向に不均一に分配供給することもでき、これにより周方向の加飾層の層厚にかかる変動を付与することもできる。
【0028】
請求項8記載の発明の方法は、請求項5、6または7記載の発明において、加飾層樹脂を溶融粘度の異なる同種の合成樹脂をブレンドしたものとすること、にある。
【0029】
請求項8記載の上記方法により、加飾層樹脂を、たとえば同種で、溶融粘度の異なる合成樹脂と、着色用のマスターバッチをブレンドしたものとすると、着色のための顔料あるいは染料の分散状態が全体に均一にならず、加飾層自体を色調斑を有するものとすることができ、これによりこの加飾層の層厚の変化による色調を、暈すことができ、また、より複雑に変化させることができるのでより自然な大理石調の模様とすることができる。
【0030】
請求項9記載の発明の方法は、請求項5、6、7または8記載の発明において、加飾層樹脂として、色調及び/又は溶融粘度の異なる同種の合成樹脂を2個所の樹脂流入口から別々にマニホールドに供給すること、にある。
【0031】
請求項9記載の上記方法により、加飾層自体が着色斑模様を有するので、より多様に色調に係る模様を現出させることができる。
【0032】
ここで、加飾層は複数積層することもでき、たとえば異なる色で着色した加飾層を積層することにより、より多様に、多彩に色調を変化させることができる。
【0033】
請求項10記載の発明の方法は、請求項5、6、7、8または9記載の発明において、基体層への合流部の上流側近傍における、加飾層樹脂の流路のクリアランスを0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.5mmとすること、にある。
【0034】
請求項10記載の上記構成により、基体層への合流部上流側近傍における、加飾層樹脂の流路のクリアランスを0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.5mmとすることにより、周期状の供給量の変動に伴なって、周方向で流動挙動を大きく変化させることができる。
【発明の効果】
【0035】
請求項1〜4記載の発明は色調を大理石調の模様等に見られるように多様に変化させた合成樹脂ブロー成形容器に関するものであり、
この中で請求項1記載の発明にあっては、加飾層の層厚が極く薄い箇所には基体層の色調が現出し、厚い箇所には加飾層の色調が現出し、層厚が変化する領域では色調がグラデーション状に変化するので、加飾層の層厚の多様な変化により、多様に色調の変化を現出させることが可能となる。
【0036】
請求項2記載の発明にあっては、色調が多様に変化する大理石調の模様により、容器本体自体の着色態様により今までにない装飾性を発揮させ、高級なイメージを現出さて他社製品と差別化することができる。
【0037】
請求項3記載の発明にあっては、複数の、軸方向に色調がグラデーション状に変化する帯状領域を周方向に沿って、軸方向にうねるように波状に現出させることができ、全体として今までにない色調の変化を現出させることができる。
【0038】
請求項4記載の発明にあっては、加飾層自体が着色濃度斑を有する構成とすることにより、色調を、暈したり、あるいはより複雑に変化させることができる。
【0039】
請求項5〜10記載の発明は色調を大理石調の模様等に見られるように多様に変化させた合成樹脂ブロー成形容器の成形方法に関するものであり、
この中で請求項5記載の発明にあっては、周期状な供給パターンと、特に加飾層樹脂の溶融粘度と、その流路形状を組み合わせることにより、円筒状加飾層流路内での流動態様を軸方向だけでなく、周方向に変動させることができることを利用したものであり、これによりパリソンの押出し方向(軸方向)だけでなく周方向にも加飾層の厚さを多様に変動させることができる。
【0040】
請求項6記載の発明にあっては、加飾層樹脂を間欠的に供給するようにすることにより、加飾層の色調から基体層の色調までより広範囲にグラデーションの領域を広げることができると共に、加飾層樹脂の供給を一端停止して、再度開始するので、周方向における変動をより顕著に現出させることができる。
【0041】
請求項7記載の発明にあっては、ウエルド部の近傍での溶融樹脂の特異的な流動挙動を利用するものであり、加飾層樹脂を周期状に変動させて供給することにより、周方向に沿って流動態様に、2周期分の大きな波状の変動を付与することができる。
【0042】
請求項8記載の発明にあっては、加飾層自体を色調斑を有するものとすることができ、これによりこの加飾層の層厚の変化による色調を、暈すことができ、またより複雑に変化させることができるのでより自然な大理石調の模様とすることができる。
【0043】
請求項9記載の発明にあっては、一つの加飾層自体が着色模様を有するので、より多彩に色調に係る模様を現出させることができる。
【0044】
請求項10記載の発明にあっては、基体層への合流部上流側近傍における、加飾層樹脂の流路のクリアランスを0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.5mmとすることにより、周期状の供給量の変動に伴なって、周方向で流動挙動を大きく変化させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のブロー成形容器の一実施例を示す全体斜視図である。
【図2】図1の容器の胴部の縦断面を示す概略説明図である。
【図3】本発明の成形方法に用いる押出成形装置の一例を示す概略説明図である。
【図4】図3の押出成形装置における加飾層樹脂の供給パターンの一例を示す説明図である。
【図5】図4の押出成形装置により成形されるパリソンの一例を示す説明図で、(a)は平断面図、(b)は正面図である。
【図6】(a)は図4のパリソンの周方向への展開図であり、(b)は(a)中のB−B線に沿って縦断して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本願発明の合成樹脂製ブロー成形容器の一実施形態を示す全体斜視図であり、また図2は図1の容器の胴部7の縦断面を示す概略説明図である。
この容器1はシャンプー、リンス、ボディソープ用等のブロー成形容器であり、胴部7は、全体として扁平状であり、円弧状に湾曲した正面壁及び背面壁と、一対の平坦状の側壁から構成されており、上端部に口筒部6を起立設している。
【0047】
また、容器1は成形性、機械的性質、耐薬品性等の基本的な機能を担う基体層2の外側に、加飾層3を積層したものであり、基体層2は黄色に着色したポリプロピレン(以下、PPと記す。)樹脂製で、加飾層3はオレンジ色に着色したPP樹脂製である。
そして、本実施例の胴部7における基体層2の平均層厚は0.9mmであり、一方加飾層3の層厚は0〜0.1mm程度の範囲で多様に変化している。
【0048】
この加飾層3の層厚の多様な変化に対応して、すなわち層厚が0mmに近い部分では基体層2の色調である黄色Yが現出し、厚い部分では加飾層3の色調であるオレンジ色ORが現出し、加飾層3の層厚が徐々に減少する部分ではオレンジ色ORから黄色Yへとグラデーション状に変化している。
なお、図1で示される色調の変化は概略的なものであり、黄色Yの色調部分は白く、オレンジ色ORの色調部分は濃い灰色で示すようにしている。
【0049】
この実施例での、色調の変化の特徴を見ると、軸方向に色調がオレンジ色ORから黄色Yにグラデーション状に変化する略4ケの帯状領域Bが、周方向に沿って2周期分、軸方向にうねるように波状に並列して現出しているのが大きな特徴である。すなわち大きく捉えれば、4つの軸方向の周期状の変動と、2つの周方向の周期状の変動を重ねた模様Mとなっている。
【0050】
次に、図3は上記の容器1を成形するための多層パリソン11の押出成形に用いる押出成形装置を構成するダイス20に係る概略説明図である。
このダイス20では、下端部に縮径部分を有する円筒状のダイスハウジング21の中に、同軸状に円筒状の2ケのマンドレル22a、22bを挿入し、この2ケのマンドレル22a、22bの間に基体層12を形成する円筒状基体層流路26aを形成し、ダイスハウジング21と外側のマンドレル22bの間に加飾層13を形成する円筒状加飾層流路26bを形成している。
【0051】
また内側のマンドレル22aの内側には中心軸に沿って、先端部にパリソン11の肉厚を調整するパリソンコントロール用のコア29cを取り付けたロッド29が挿通配設している。
【0052】
パリソン11の成形に際し、樹脂供給部40aである押出機41aから供給される基体層樹脂Raは、導入流路23aを介して流入口24aから、半円断面状の断面の面積を所定の割合で減少させつつ、螺旋状に押出し方向に傾斜状に形成されるマニホールド25aに左右に分岐して流入するが、このマニホールド25aの機能により、溶融樹脂が下流に位置する円筒状基体層流路26aに分配供給され、この円筒状基体層流路26aで均一な円環流動が形成される。
【0053】
一方、加飾樹脂Rbの樹脂供給部40bは押出機41bと、その下流に位置するアキュムレータ42bから構成され、プランジャ43bの動作によりアキュムレータ42bに貯蔵された加飾層樹脂Rbを供給する。
このようにアキュムレータ42bから供給される加飾層樹脂Rbは、左右に分岐する導入流路23bを介して軸対称に配置される2ケの流入口24b1、24b2からマニホールド25bに流入し、さらに左右に分岐して、下流側に位置する円筒状加飾層流路26bに分配供給され、この円筒状加飾層流路26bで円環流動が形成される。
【0054】
ここで、この例ではマニホールド25bに2ケの流入口24b1、24b2から溶融樹脂が供給されるので、円筒状加飾層流路26bでは流入口24b1、24b2の間の中心角度位置に、流入口24b1、24b2から左右に分岐流入した樹脂が衝突状に合流する位置に、一対のウエルド部Wpが形成される。
なお、基体層12の場合は、流入口24aは1ケであるのでウエルド部は1ケだけ形成される。
【0055】
そして、このように形成される加飾層13の円環流動は縮径流路26bsを経て、合流部27で、基体層12の円環流動に外装状に合流して積層され、円筒状の先端流路28を経て多層パリソン11が押出し形成される。
この際、ロッド29を介してコア29cを上下させて、先端流路28のクリアランスを変えてパリソン11の肉厚を調整することができ、パリソンコントロラーとしての機能が発揮される。
【0056】
ここで、プランジャ43bの動作を制御して、加飾層樹脂Rbの供給速度を周期状に変動したり、さらには供給を間欠的にすると、合流点27の上流側の近傍の加飾層樹脂Rbの流路のクリアランスは高々0.8mm程度であることも相俟って、供給速度の変動に伴なって、合流部27における加飾層13の積層厚さを、軸方向と共に、周方向にも変動させることができる。
【0057】
[実施例]
図3に示したダイス20を用い、図1に示した容器1をブロー成形する場合には、下に示す合成樹脂を使用し、加飾層樹脂Rbを図4に示す供給圧力係るパターンで間欠的に供給してパリソン11を押出成形する。
基端層樹脂Ra:PP樹脂(MFR1.2)+黄色のマスターバッチ
加飾層樹脂Rb:PP樹脂(MFR1.2)+PP樹脂(MFR12)+オレンジ色のマスターバッチ(ブレンド後のMFRは6)
【0058】
一対の流入口24b1、24b2でそれぞれ分岐した溶融樹脂が衝突状に合流するウエルド部Wp近傍では流動が特異的であり、加飾層樹脂Rbの溶融粘度がMFR6程度と比較的低い場合には、プランジャ43bを動作させて加飾層樹脂Rbの供給を開始すると、まず合流部27のウエルド部Wp近傍(2箇所)の中心角度位置で加飾層樹脂Rbの基体層Raへの積層が開始し、その後この積層が左右方向に進展していく。
なお、本実施例の加飾層樹脂Rbのように、MFRの異なるPP樹脂と、着色のためのマスターバッチをブレンドする場合には、ブレンドの方法により樹脂同士、およびマスターバッチの混合状態が変化し、この混合状態に応じてブレンド後の溶融粘度や、着色剤の分散状態に係る均一性が大きく変化するが、後述するように樹脂同士の混合斑、あるいは着色剤の混合斑を利用して、色調変化をより複雑に現出させることも可能である。
【0059】
ここで、図5と図6は押出成形されたパリソン11の一例を示す説明図で、図5(a)は平断面図、図5(b)正面図、図6(a)は図5のパリソン11の展開図、そして図6(b)は図6(a)中のB−B線に沿って示す縦断面図であるが、上記のようなパリソン11の押出成形の結果、押出成形されたパリソン11では、図5と図6の説明図に示すように、図4に示した加飾層樹脂Rbの供給パターンに対応するように、加飾層13の層厚が軸方向にグラデーション状に変化する帯状領域Bpが、一対のウエルド部Wp近傍で押出し方向(下方)に大きく湾曲するように、全体として周方向に沿って軸方向にうねるように、波状に並列状に形成される。
【0060】
一つの帯状領域Bpは、図6(b)に示した加飾層13の層厚の変化に対応して、軸方向にオレンジの色調が強い部分ORから黄色Yの色調が強い部分まで色調がグラデーション状に変化すると共に、周方向に沿って、一対のウエルド部Wpに対応して図6(a)に示されるように2周期分、大きく波状にうねっている。
【0061】
そして、このように押出成形した多層パリソン11をブロー成形することにより、図1に示されるような色調に係る模様Mが現出した容器1を得ることができる。この容器1の模様Mは、図5、6で示したパリソン11の加飾層13の層厚の変化に対応して、前述したように大きく捉えれば、軸方向に色調がオレンジ色ORから黄色Yにグラデーション状に変化する略4ケの帯状領域Bが、並列して、周方向に沿って、2周期分、大きく波状にうねっている。
また、細かな部分では容器1自体の扁平で、角部を有する形状にも影響されており、角部近傍には小さな波状の変動も観察され、胴部7が円筒状の容器に比較してさらに複雑な模様となっている。
【0062】
さらに、上記実施例ではPP樹脂(MFR1.2)とPP樹脂(MFR12)とオレンジ色のマスターバッチを押出機41bにより溶融ブレンドし、アキュムレータ42bから加飾層樹脂Rbを供給するようにしているが、このように溶融粘度が大きく異なるPP樹脂をブレンドして使用することにより、着色のための顔料あるいは染料の分散状態が全体に均一にならず、加飾層3自体を色調斑を有するものとすることができ、加飾層3の層厚の変化による色調の変化を暈すようにして、より自然な色調変化を現出した模様Mとすることができる。
【0063】
なお、上記説明した実施例では、加飾層樹脂Rbとして、ブレンド後のMFRが6と、比較的溶融粘度の低いPP樹脂を使用した例を説明したが、一方、加飾層樹脂Rbの溶融粘度がたとえばMFRが1程度と、比較的高い場合には、図3と同じダイス20を使用しても、加飾層樹脂Rbの供給を開始すると、合流点27のウエルド部Wp近傍での積層は、時間的に遅れ、結果として、周方向のうねりのパターンは図6(a)に示したのとは逆位相となる。
これは、ウエルド部Wp近傍は、流入口24b1、24b2に対して下流側に位置するので、溶融粘度が比較的高い場合には粘弾性効果により、流動の開始が時間的に遅れるものと推察される。
このように、加飾層樹脂Rbの溶融粘度を変えることにより、加飾層Rbの層厚の変化の態様を様々に変えることもできる。
【0064】
また、図4に示した加飾層樹脂Rbの供給パターンはプランジャ43bの制御によるものであるが、供給圧力を0としても瞬間的には合流点への加飾層樹脂Rbの流入は停止しないので、その層厚は比較的緩やかにグラデーション状に減少していく。もちろん、加飾層樹脂Rbの流路にボール弁等の通路遮断のための部品を配設することによりこの流動を短時間に遮断するようにすることもできる。
【0065】
以上、実施例に沿って本発明の実施の形態を説明したが、本発明の作用効果はこれら実施例に限定されものではない。
たとえば、上記実施例では省略したが、加飾層13の外側に、さらに、MFRが12程度の溶融粘度の低い無着色のPP樹脂を薄肉に積層することにより、容器1ではこのPP樹脂による層がクリアトップ層としての機能を発揮して、容器全体を高品位な光沢状態とすることができる。
【0066】
また、加飾層を複数積層することにより、さらに色調の変化を多彩に現出させることができる。勿論、使用する合成樹脂はPP樹脂に限定されず、ポリエチレン樹脂等さまざまな合成樹脂を使用することがき、異種の合成樹脂を積層することもできる。また、ダイの構造、供給パターンも様々に組み合わせることができる。
【0067】
また、上記実施例では加飾層に溶融粘度が大きく異なるPP樹脂をブレンドして使用する例を説明したが、異なる着色状態の樹脂を別々に、加飾樹脂の流路に流入させて加飾層自体に色調斑を付与することもできる。勿論単独の樹脂を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のブロー成形容器は、容器自体が今までにない色調変化に係る模様を現出するものであり、他社製品と差別化することができ、化粧料用、シャンプー用等の容器において幅広い用途展開ができるものと期待される。
【符号の説明】
【0069】
1 ;容器
2 ;基体層
3 ;加飾層
6 ;口筒部
7 ;胴部
M ;模様
B ;帯状領域
W ;ウエルド部
11;パリソン
12;基体層
13;加飾層
Wp;ウエルド部
Bp;帯状領域
20;ダイス
21;ダイスハウジング
22a、22b;マンドレル
23a、23b;導入流路
24a、24b(24b1、24b2);流入口
25a、25b;マニホールド
26a;円筒状基体層流路
26b;円筒状加飾層流路
26bs;縮径流路
27;合流部
28;先端流路
29;ロッド
29c;コア
40a、40b;樹脂供給部
41a、41b;押出機
42b;アキュムレータ
43b;プランジャ
Ra;基体層樹脂
Rb;加飾層樹脂
Y ;黄色
OR;オレンジ色

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基体層(2)と該基体層(2)の外側に、比較的薄肉で着色した加飾層(3)を有し、該加飾層(3)の層厚が多様に変化し、該層厚変化により色調が多様に変化した模様(M)を外側面に現出したことを特徴とするブロー成形容器。
【請求項2】
模様(M)を、大理石調の模様とした請求項1記載のブロー成形容器。
【請求項3】
模様(M)を、軸方向に色調がグラデーション状に変化する帯状領域(B)を、周方向に沿って、軸方向にうねるように波状に現出させたものとした請求項1または2記載のブロー成形容器。
【請求項4】
加飾層(3)自体が着色濃度斑を有する構成とした請求項1、2または3記載のブロー成形容器。
【請求項5】
少なくとも、基体層(12)を形成する円筒状基体層流路(26a)と、該基体層(12)の外側に比較的薄肉の着色した加飾層(13)を形成する円筒状加飾層流路(26b)を有する多層共押出し成形用ダイス(20)を用い、前記加飾層(13)を形成する加飾層樹脂(Rb)の供給速度を周期状に変動させて前記円筒状加飾層流路(26b)に供給し、前記加飾層樹脂(Rb)の溶融粘度、前記加飾層(13)を形成する流路の形状、前記加飾層樹脂(Rb)の周期状の供給パターンの組み合わせにより、前記円筒状加飾層流路(26b)内での流動態様を軸方向及び周方向に変動させ、該変動により前記加飾層(13)の層厚を多様に変化させた多層パリソン(11)を成形し、該多層パリソン(11)をブロー成形することを特徴とする合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。
【請求項6】
加飾層樹脂(Rb)を間欠的に供給するようにした請求項5記載の合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。
【請求項7】
加飾層樹脂(Rb)を、中心軸対称に位置する2個所の流入口(24b)からマニホールド(25b)に供給し、該マニホールド(25b)を介して円筒状加飾層流路(26b)に分配供給するようにした請求項5または6記載の合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。
【請求項8】
加飾層樹脂(Rb)を溶融粘度の異なる同種の合成樹脂のブレンド物とした請求項5、6または7記載の合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。
【請求項9】
加飾層樹脂(Rb)として、色調及び/又は溶融粘度の異なる同種の合成樹脂を2個所の樹脂流入口(24b)から別々にマニホールド(25b)に供給した請求項5、6、7または8記載の合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。
【請求項10】
基体層(12)への合流部(27)の上流側近傍における、加飾層樹脂(Rb)の流路のクリアランスを0.2〜0.8mmとした請求項5、6、7、8または9記載の合成樹脂ブロー成形容器の成形方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−62121(P2012−62121A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265596(P2011−265596)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2007−22120(P2007−22120)の分割
【原出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】