説明

合成樹脂組成物、合成樹脂成形物、及び、材料識別方法

【課題】識別微粒子が導通回路を形成することを防止し且つ材質の種類を迅速且つ高精度で識別することで、成形物のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる合成樹脂組成物を提供する。
【解決手段】合成樹脂組成物10が、電気絶縁性の合成樹脂12と、前記合成樹脂12より高い融点を有する被覆材14が表面に被覆され且つ前記合成樹脂12の種類を識別する識別微粒子13と、を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂と識別微粒子とを含有する合成樹脂組成物と、該合成樹脂組成物で成形された合成樹脂成形物と、該合成樹脂成形物の材料識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。そして、プラスチックで成形されているコネクタが廃棄物となった場合、埋め立てによる処理では、埋め立て地の不足や環境問題が深刻な問題となっていた。
【0003】
このような問題を解消するために、プラスチックを分別してリサイクルする各種方法が提案されてきた。そして、特許文献1では、プラスチックの材料識別方法として、赤外線を識別化合物を含有するプラスチックに照射し、識別化合物で反射された反射光の波長特性から波長強度、赤外吸収スペクトル、ラマンスペクトルを測定し、プラスチックの材料を識別して分類する技術思想が提案されている。
【0004】
また、引用文献2には、上述した識別化合物として、識別化合物となる無機化合物が必要であり、無機化合物の中でも、貴金属であるルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスニウム、イリジウム、白金、金からなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属から構成される単体及び/又は無機化合物や、ルテニウム、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、ロジウム、酸化ロジウム、塩化ロジウム、パラジウム、酸化パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、銀、酸化銀、塩化銀、臭化銀、硫化銀、硝酸銀、オスニウム、イリジウム、酸化イリジウム、塩化イリジウム、硫化イリジウム、白金、酸化白金、金からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる点が記載されている。
【特許文献1】特開平8−300354号公報
【特許文献2】特開2002−167496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した材料識別方法の問題点としては、プラスチックの材質種類が例えばPBT、PC、PP、PE、ABS等であれば識別できるが、そのプラスチックに使用されている配合剤はそれぞれ異なっているため、より細かな識別ができず、リサイクルの障害となっていた。
【0006】
また、本発明者らは、上記背景技術に鑑み鋭意検討を行った結果、コネクタ等の絶縁性が必要な合成樹脂成形物の場合、識別に使用される無機化合物(識別微粒子)が直接ポリマー中に添加されていると、無機化合物が導通回路を形成してしまうという問題が発生していることを解明した。これは熱により溶融した場合も同様の問題が生じてしまう。なお、このような問題は、家電製品等に用いられるプラスチックで成形される合成樹脂成形物にも同様に生じる問題である。
【0007】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、識別微粒子が導通回路を形成することを防止すると共に、合成樹脂の種類を迅速且つ高精度で識別することができる合成樹脂組成物、合成樹脂成形物、及び、材料識別方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の合成樹脂組成物は、電気絶縁性の合成樹脂と、前記合成樹脂より高い融点を有する被覆材が表面に被覆され且つ前記合成樹脂の種類を識別する識別微粒子と、を含有していることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の合成樹脂組成物において、前記識別微粒子が、リチウム、マンガン、ゲルマニウム、インジウム、銀、ジルコニウム、白金、金からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属及び/又はそれらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属塩化物で構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の合成樹脂組成物において、前記識別微粒子が、1〜5重量%の割合で含有されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載の合成樹脂成形物は、請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂組成物で、前記合成樹脂組成物の成形温度より高い融点を有する被覆材を用いることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項5記載の材料識別方法は、請求項4に記載の合成樹脂成形物の材料を識別する材料識別方法であって、前記合成樹脂成形物に識別用光線を照射する照射工程と、前記照射した識別用光線が前記識別微粒子で反射した反射光又は透過した透過光を検知する検知工程と、前記検知した反射光又は透過光に基づいて前記合成樹脂成形物の材料を識別する材料識別工程と、前記識別した前記合成樹脂成形物の材料を分別する分別工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1に記載した本発明の合成樹脂組成物によれば、電気絶縁性の合成樹脂と該合成樹脂よりも高い融点を有する被覆材で表面が被覆された識別微粒子を含有しているので、成形時に被覆材が溶けて識別微粒子が成形物に導通回路を形成することを防ぐことができる。また、被覆材によって識別微粒子が溶融しないため、該識別微粒子に基づいて合成樹脂の材料、配合剤等の種類を迅速且つ高精度で識別することができる。従って、合成樹脂組成物で成形される合成樹脂成形物の材料、配合剤等を容易に識別することができるため、その成形物のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、識別微粒子をリチウム、マンガン、ゲルマニウム、インジウム、銀、ジルコニウム、白金、金からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属及び/又はそれらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属塩化物で構成するようにしたことから、それらの部材はプラスチックの配合剤、不可避不純物として使用混入する可能性が低いため、合成樹脂組成物で成形された合成樹脂の材質、配合剤等の種類をより一層迅速且つ高精度で識別することができる。また、複数種類の部材の各々を組み合わせて合成樹脂組成物に含有させることで、識別微粒子の組み合わせが可能となり、より多くの材質、配合剤等の種類を識別することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、識別微粒子を1〜5重量%の割合で含有させるようにしたことから、1重量%未満の場合は、正確に識別できず、また、5重量%より多い場合は、流動性、成形性が悪くなるという問題を回避して、合成樹脂の材質、配合剤等の種類をより一層迅速且つ高精度で識別することができるとともに、小型薄肉の精密成形を可能とすることができる。
【0016】
以上説明したように請求項4に記載した本発明の合成樹脂成形物によれば、合成樹脂組成物の成形温度より高い融点を有する被覆材を用いるようにしたことから、成形時に被覆材が溶けて識別微粒子が成形物に導通回路を形成することを防ぐことができる。また、被覆材によって識別微粒子が溶融しないため、該識別微粒子に基づいて合成樹脂の材料、配合剤等の種類を迅速且つ高精度で識別することができる。従って、合成樹脂組成物で成形される合成樹脂成形物の材料、配合剤等を容易に識別することができるため、その成形物のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる。
【0017】
以上説明したように請求項5に記載した本発明によれば、合成樹脂成形物に赤外線、X線等の識別用光線を照射し、該照射した識別用光線が合成樹脂成形物で反射した反射光又は透過した透過光を検知し、該検知した検知した反射光又は透過光に基づいて合成樹脂成形物の材料を識別して分解するようにしたことから、合成樹脂成形物は被覆材によって識別微粒子が溶融していないため、合成樹脂成形物の材料の種類を迅速且つ高精度で識別することができる。従って、合成樹脂成形物のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る合成樹脂組成物、合成樹脂成形物及びその材料識別方法の一実施の形態を、図1〜図3の図面を参照して説明する。
【0019】
コネクタ1は、図1(b)に示すように、本発明の合成樹脂成形物であり且つ電気絶縁性のコネクタハウジング10と、ロック20と、を有している。コネクタハウジング10は箱状に形成され、その上壁にはロック20が設けられている。ロック20は、コネクタ1が図示しない相手側コネクタに嵌合された際に、その相手側コネクタとコネクタ1をロックする。
【0020】
コネクタハウジング10の合成樹脂組成物11は、図1(a)及び図2に示すように、電気絶縁性の合成樹脂12と、前記合成樹脂12より高い融点を有する被覆材14が表面に被覆された前記合成樹脂12の種類を識別する識別微粒子13と、を含有している。そして、それらの合成樹脂組成物11で、合成樹脂組成物11の成形温度より高い融点を有する被覆材14を用いてコネクタハウジング10を成形している。
【0021】
合成樹脂12は、コネクタハウジング10に対応して任意に定められたベース樹脂12aと、該ベース樹脂12aに配合される配合剤12bと、を含有している。即ち、合成樹脂組成物11は、ベース樹脂12aと、配合材12bと、識別微粒子13と、を含有している。なお、本発明はこの構成に限定するものではなく、強化材、充填材等の他の部材を合成樹脂組成物11に含有させるなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0022】
ベース樹脂12aは、任意に選ばれた1種類の単体部材又は化合物が用いられ、例えばPBT、PA系樹脂、PP、POM、PET、SPS、PPS、LCP、PPA、PEI、PI、PES等であることが好ましい。また、配合剤12bは、ベース部材12aに基づいて任意に選ばれたものが用いられ、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニン顔料、ニトロソ顔料等の有機顔料、脂肪酸エステル系の滑剤、リン酸エステル系、臭素系の難燃剤、ヒンダートフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、P−フェニレンジアミン系、キノリン系等の老化防止剤等であることが好ましい。
【0023】
識別微粒子13は、ペレット(粒)状に成形する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、板状、柱状や粉末の集合体等に成形するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0024】
識別微粒子13は、リチウム、マンガン、ゲルマニウム、インジウム、銀、ジルコニウム、白金、金からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属、又はそれらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属塩化物であることが好ましい。なお、代表例としては、例えば、マンガン及びマンガン酸化物(Mn23)、Li及びLi化合物(Li2SO4、Li2CO3、2LiCl、Ge及びGe化合物(GeO2)、InCl3、ZrO2等が挙げられる。
【0025】
また、プラスチックの結晶核剤や滑剤、耐熱安定剤、強度向上充填剤、ソリ改良剤に使用される可能性の高い、タルク(Mg3Si410(OH)2)、雲母(Al、K、Na、Mg、Feのケイ酸化合物)、カーボン(C)、リン(P)、ガラス(SiO2)、着色無機顔料等に含まれる無機化合物を使用せず、プラスチックの配合剤及び不可避不純物として使用混入する可能性の低い、リチウム、マンガン、ゲルマニウム、インジウム、銀、ジルコニウム、白金、金からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属を用いることが好ましい。
【0026】
また、配合剤12bとしてポリマー系の耐熱安定剤等が添加される場合、識別微粒子13にポリマー(重合体)を使用すると、識別が困難になることを確認できた。そこで、ポリマーに使用する可能性が低い無機元素を識別微粒子13として使用することが必要になり、その中でもマンガンは、金、銀等の金属にに比べてコストが安いため、マンガンで識別微粒子13を成形することで、識別微粒子13を安価に提供することができる。
【0027】
被覆剤14は、図2に示すように、材料識別の際に照射される近赤外線、X線等の識別用光線を干渉、回折しない材料が好ましく、コーティング、焼結法等によって識別微粒子13の表面に施されている。被覆材14は、合成樹脂12及び成形温度よりも融点が高い合成樹脂コーティング材等であり、例えば、PTFE、PPS、LCP、PI、PEI等が用いられる。そして、融点が220℃のポリブチレンテレフタレート(PBT)、融点が300℃のポリカーボネート(PC)等を合成樹脂12に用いる場合、被覆剤14には融点が320〜400℃であるPTFEを用いることが好ましい。
【0028】
識別微粒子13の粒径は、被覆剤14が被覆された状態で、0.01〜20μmで成形することが好ましい。このように識別微粒子13を成形することで、微量でも確実に識別ができるため、合成樹脂組成物11における識別微粒子13の割合を小さくすることができる。そして、識別微粒子13が1重量%未満の場合は、正確に識別できず、また、5重量%より多い場合は、流動性、成形性が悪くなるという問題が生じるが、1〜5重量%の割合で合成樹脂組成物11に含有することで、合成樹脂の材料の種類をより一層迅速且つ高精度で識別することができるとともに、小型薄肉の精密成形を可能とすることができる。
【0029】
また、識別微粒子13を複数種類の部材で成形し、それらを合成樹脂12の材料に対応させて合成樹脂組成物11に含有させることで、識別微粒子12の組み合わせが可能となり、より多くの材質、配合剤等の種類を識別することができる。例えば、8種類の部材で識別微粒子13を成形した場合、255通りの組み合わせが可能となり、より詳細なリサイクルが可能となる。
【0030】
上述した本発明の合成樹脂組成物11は、コネクタハウジング10(合成樹脂成形物)に各種成形方法によって成形される。成形方法としては、一般の成形方法である例えば、射出成形法、熱成形法、BMC成形、圧縮成形などの中から合成樹脂成形体の形状等に適したものを適用することができる。
【0031】
このような成型方法によれば、合成樹脂組成物11は、合成樹脂12の融点よりも高く且つ識別微粒子13の被覆材14の融点よりも低い成形温度で加熱されることにより溶融し、その溶融樹脂を金型へ流し込み冷却固化させることで合成樹脂成形物であるコネクタハウジング10が成形される。
【0032】
以上説明した合成樹脂組成物11によれば、電気絶縁性の合成樹脂12と該合成樹脂12よりも高い融点を有する被覆材14で表面が被覆された識別微粒子13と含有しているので、成形時に被覆材14が溶けて識別微粒子13が成形物に導通回路を形成することを防ぐことができる。また、被覆材14によって識別微粒子13が溶融しないため、該識別微粒子13に基づいて合成樹脂12の材料、配合剤等の種類を迅速且つ高精度で識別することができる。また、合成樹脂成形物であるコネクタハウジング10によれば、合成樹脂組成物11をその被覆材14の融点よりも低い成形温度で成形するようにしたことから、成形時に被覆材14が溶けて識別微粒子13が成形物に導通回路を形成することを防ぐことができる。
【0033】
従って、合成樹脂組成物11で成形されるコネクタハウジング(合成樹脂成形物)10の材料、配合剤等の種類を容易に識別することができるため、その成形物のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる。
【0034】
次に、上述した合成樹脂成形物であるコネクタハウジング10の材料を識別する材料識別装置5の一例を以下に説明する。
【0035】
材料識別装置5は、上述した特許文献1等でも知られているように、搬送部51と、検知部52と、制御部53と、分別部54と、を有している。
【0036】
搬送部51は、廃棄する複数のコネクタハウジング10を検知部52を通り分別部54に向かうように搬送するベルトコンベア等である。なお、搬送部51が搬送するコネクタハウジング10は、粉砕されていてもいなくてもどちらでもよい。
【0037】
検知部52は、搬送部51で搬送しているコネクタハウジング10に識別用光線である赤外線L1を照射する照射部52aと、コネクタハウジング10で反射した赤外線反射光(スペクトル)L2を受光する受光部52bと、を有している。照射部52aが制御部53からの制御によって赤外線L1を照射し、その赤外線反射光L2を受光部52bが受光すると、その受光データを制御部53に出力する。なお、コネクタハウジング10に照射する識別用光線は、赤外線の他にもX線、近赤外レーザー光、近赤外線など種々異なる実施形態とすることができる。
【0038】
制御部53は、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)53a、CPU53aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM53b、各種のデータを格納するとともにCPU53aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM53c等を有して構成している。
【0039】
ROM53bには、入力された受光データに基づいて赤外吸収スペクトルを算出し、その赤外吸収スペクトルでプラスチック固有の吸収波長を認識して識別微粒子13を判別し、該識別微粒子13に基づいて合成樹脂12(プラスチック)の種類を識別するためのプログラムを記憶しており、CPU53aはそのプログラムを実行することで、識別微粒子13に基づいた合成樹脂12の種類の識別を行い、その識別結果に対応した合成樹脂12の種類を示す識別信号を分別部54に出力する。
【0040】
なお、識別方法についてはこれに限定するものではなく、例えば、識別微粒子13が無機化合物であれば、蛍光X線分析、原子吸光分析、誘導結合プラズマ発光分析、フーリエ変換赤外分光法等で金属成分を識別するなど種々異なる識別方法とすることができる。また、上述したプログラムの一例としては、Liであれば酸化チタンを含有した合成樹脂、Mnであれば炭酸カルシウムとヒンダート・フェノール系酸化防止剤を含有した合成樹脂等の配合表と照らし合わせることで、合成樹脂の種類を識別するものがある。
【0041】
分別部54は、制御部53から識別信号が入力された後、搬送部51からコネクタハウジング10が搬送されると、その識別信号に基づいてエアブローなどでコネクタハウジングを分別して然るべき収納箱に収納する。なお、この分別部54には、公知のものが使用される。
【0042】
次に、上述した構成の材料識別装置5でコネクタハウジング(合成樹脂成形物)10の材料を識別する場合の動作(作用)の一例を、以下に説明する。
【0043】
照射工程において、搬送部51が搬送しているコネクタハウジング10に照射部52aから赤外線L1が照射されると、その赤外線L1はハウジング10の識別微粒子13で反射する。そして、検知工程において、受光部52bがコネクタハウジング10で反射した赤外線反射光L2を受光すると、その受光データを制御部53に出力する。
【0044】
材料識別工程において、制御部53は上述したように入力された受光データに基づいて識別微粒子13を判別し、該判別結果に基づいて合成樹脂12(プラスチック)の種類を識別する。そして、分別工程において、識別結果に対応した識別信号が分別部54に入力されると、分別部54は搬送部51によって搬送されたコネクタハウジング10を分別する。
【0045】
以上説明した材料識別方法によれば、合成樹脂成形物に赤外線L1を照射し、該照射した赤外線L1がコネクタハウジング10で反射した赤外線反射光L2を検知し、該検知した検知した赤外線反射光L2に基づいてコネクタハウジング10の材料を識別するようにしたことから、コネクタハウジング10は被覆材14によって識別微粒子13が溶融していないため、合成樹脂12の材料の種類を迅速且つ高精度で識別することができる。従って、コネクタハウジング10のリサイクルを容易にして再利用を促進することができる。
【0046】
なお、上述したした実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述した実施形態では本発明の合成樹脂成形物がコネクタ1である場合について説明したが、廃棄、回収時等に材料を識別して分別される合成樹脂成形物であれば、家電製品、パーソナル・コンピュータ等に用いられる部材に、合成樹脂組成物、合成樹脂成形物を適用することができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、合成樹脂成形物であるコネクタハウジング10の廃棄に応じて、その合成樹脂12の種類を識別する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、合成樹脂成形物の検査時等の任意のタイミングで材料識別方法を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の合成樹脂組成物と合成樹脂成形物の一例を説明するための図であり、(a)は合成樹脂組成物、(b)は合成樹脂成形物をぞれぞれ示している。
【図2】図1中の本発明に係る識別微粒子の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の材料識別方法を適用した材料識別装置の概略構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1 コネクタ
5 材料識別装置
10 コネクタハウジング(合成樹脂成形物)
20 ロック
11 合成樹脂組成物
12 合成樹脂
13 識別微粒子
14 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の合成樹脂と、
前記合成樹脂より高い融点を有する被覆材が表面に被覆され且つ前記合成樹脂の種類を識別する識別微粒子と、
を含有していることを特徴とする合成樹脂組成物。
【請求項2】
前記識別微粒子が、リチウム、マンガン、ゲルマニウム、インジウム、銀、ジルコニウム、白金、金からなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属及び/又はそれらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属塩化物で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂組成物。
【請求項3】
前記識別微粒子が、1〜5重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂組成物で、前記合成樹脂組成物の成形温度より高い融点を有する被覆材を用いることを特徴とする合成樹脂成形物。
【請求項5】
請求項4に記載の合成樹脂成形物の材料を識別する材料識別方法であって、
前記合成樹脂成形物に識別用光線を照射する照射工程と、
前記照射した識別用光線が前記識別微粒子で反射した反射光又は透過した透過光を検知する検知工程と、
前記検知した反射光又は透過光に基づいて前記合成樹脂成形物の材料を識別する材料識別工程と、
前記識別した前記合成樹脂成形物の材料を分別する分別工程と、
を有することを特徴とする材料識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214370(P2008−214370A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49390(P2007−49390)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】