説明

合成樹脂製栓体

【課題】パッキンを介して容器の取出口を密封開放可能に密閉し、開放した時にこのパッキンが脱落せず、しかも外部からの衝撃や振動に曝されても亀裂を生じたり破断したりせず強固であって、簡便に製造できる合成樹脂性の成型栓を提供する。
【解決手段】成型栓1は、容器2に開けられた取出口と接するパッキン12を介して覆いつつ螺合又は嵌合して該容器2を密閉する合成樹脂製の成型栓であって、該パッキン12が、該成型栓1の天面内壁11で窪んだ収容スペース13に嵌り込んでおり、該収容スペース13の下縁に沿って、該収容スペース13の側面内壁15から断続的に突き出たパッキン係止突起16が、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や固体を充填し貯蔵したり運搬したりするのに用いられる容器の取出口を、密封開放可能に密閉する成型栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液や飲料のような液体、固体薬品や固形物のような固体等を充填し、貯蔵したり、運搬したりした後、それら内容物を取出すのに、合成樹脂性容器が用いられる。容器の取出口は、内容物が漏れ出さないように、適度な弾性と硬さとを有するパッキンを介して、合成樹脂性スクリュー栓等で覆われて、密封開放可能に密閉されている。
【0003】
このような栓からパッキンが脱落しないように、栓の内空にパッキンを押し込み栓の内壁に沿ってリング状に突き出したパッキン係止突起で支えている。
【0004】
例えば、特許文献1には、パッキン収容部の形状が金型通りにならず先細りとなりパッキンが圧迫されて脱落してしまうのを防ぐために、キャップ内面頂部に有するパッキン室の上部角部に溝部が設けられ、キャップ内面の全周に渡るリング状のパッキン係止凸条を有する合成樹脂性キャップが、開示されている。
【0005】
リング状のパッキン係止突起は、パッキンとの接触面積が広いうえ、均等にパッキンを支えることができる。しかし、外界の温度上昇によるパッキンの軟化や、温度下降によるパッキンの収縮や、内容物の揮発による内圧上昇や、輸送時の振動・衝撃の所為で、パッキンの一部が捩れてリング状のパッキン係止突起から外れてしまうと、摩擦のために元に戻り難くなり連鎖的にパッキンの全体が外れてしまう。その結果、パッキンが容易に脱落し、内容物が遺漏する。さらにパッキンの緩衝がなくなってキャップが、振動や衝撃によって破損し易くなる。
【0006】
パッキン係止突起を大きくしてパッキンを外れ難くすると、容器口に干渉し気密が保てなくなったり、形状が複雑となって成型し難くなったり、金型を引抜き難くなって引抜きによるパッキン係止突起を破損させたりする。パッキン係止突起に代えて接着剤でパッキンと栓とを直接接着させるのは、内容物の飲料や食品に臭いが移行したり、又は内容物の高純度薬品液に接着剤が混入したりするので、敬遠されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−165759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、パッキンを介して容器の取出口を密封開放可能に密閉し、開放した時にこのパッキンが脱落せず、しかも外部からの衝撃や振動に曝されても亀裂を生じたり破断したりせず強固であって、簡便に製造できる合成樹脂性の成型栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の成型栓は、容器に開けられた取出口と接するパッキンを介して覆いつつ螺合又は嵌合して該容器を密閉する合成樹脂製の成型栓であって、該パッキンが、該成型栓の天面内壁で窪んだ収容スペースに嵌り込んでおり、該収容スペースの下縁に沿って、該収容スペースの側面内壁から断続的に突き出たパッキン係止突起が、設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の成型栓は、請求項1に記載されたもので、該天面内壁とそれに直交する該側面内壁とで形成される該収容スペースのコーナーが、半径0.1〜1.0mmで湾曲していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の成型栓は、請求項1に記載されたもので、該パッキン係止突起の全長と、隣り合う該パッキン係止突起の間の距離との比が、1:10〜10:1であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の成型栓の金型は、容器に開けられる取出口と接するパッキンを介して覆いつつ螺合又は嵌合して該容器を密閉する合成樹脂製の成型栓を、成型する金型であって、該パッキンが該成型栓の天面内壁に嵌り込む収容スペースを形成させる凸部と、該収容スペースの側面内壁から断続的に突き出すパッキン係止突起を、該凸部の下縁に沿って形成させる凹部とを有し、該成型栓の内面を形作る雄金型、及び該雄金型を覆い該成型栓の外面を形作る雌金型からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の成型栓は、パッキンを介して容器の取出口を密封開放可能に、しっかりと密閉でき、内容物を容器内で貯蔵したり運搬したりする際に、遺漏させない。
【0014】
パッキンが断続的なパッキン係止突起で係止されているから、パッキンの一部がパッキン係止突起から外れてしまっても別なパッキン係止突起で係止し続ける結果、パッキンが脱落しない。そのため、栓で密閉して、静置している間でも、外部からの振動や衝撃に曝されている間でも、栓を開放した時でも、このパッキンが脱落しない。しかも振動や衝撃で、亀裂を生じたり破断したりしない。
【0015】
本発明の成型栓も金型も簡易な構成であるので、簡便かつ大量に、生産効率よく製造することができる。しかも製造過程で、成型栓は、その破損や劣化や不良品形成を惹き起こさないから、生産性の向上に資する。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の実施の一形態の成型栓1は、熱可塑性合成樹脂を金型で成型して、形成されたものである。成型栓1は、その一部切欠き側面図である図1のように、容器2に開けられた取出口3(図3参照)を覆いつつ螺合し、取出口3と接する円板状のパッキン12を介して、密封開放可能に容器2を密閉している。成型栓1は、略円筒形で、上端が塞がれている。その円筒の軸芯に対して垂直にその円筒上端を塞いでいる天面の内壁11が、窪んで、パッキン12を嵌め込む収容スペース13を形成している。収容スペース13の下縁の周囲に沿って、収容スペース13の側面内壁15から断続的に突き出たパッキン係止突起16が、設けられている。パッキン係止突起16(a)〜16(f)は、収容スペース13の下縁の周囲を均等に分割した夫々の区分毎に、一定間隔で、並んでいる。パッキン係止突起16の上面は水平となって、パッキン12に密着している。このパッキン係止突起16により、パッキン12が、脱落しないように支えられている。天面内壁11とそれに直交する側面内壁15とで形成される収容スペース13のコーナー14が、湾曲してアール形状を形成している。側面内壁15の下方に、雌ねじ17が設けられている。成型栓1の外壁には、縦突条18が設けられている。
【0018】
なお、成型栓1が螺合している例を示したが、嵌合するものであってもよい。
【0019】
パッキン係止突起16は、収容スペース13の下縁、例えばその円状周囲を均等に2〜12分割した夫々の区分毎に、並んでいてもよい。分割数は、2分割以上であればパッキン脱落防止に効果がある。12分割より多いと成型加工の難易度が非常に高くなってしまうため実用的ではない。好ましくは4〜10分割、より好ましくは4〜8分割である。
【0020】
パッキン係止突起16は、収容スペース13の下縁の周囲で、均等に並んで配置されることが好ましい。パッキン係止突起16の円弧状の全長Lと、隣り合うパッキン係止突起の円弧状間隙の距離Lとの比が、1:10〜10:1であることが好ましく、1:2〜2:1であるとより好ましい。パッキン係止突起16の全長が、パッキン係止突起16の間隙の1/10未満になると、パッキン係止が有効に機能しなくなってしまう。パッキン係止突起16の全長が、パッキン係止突起16の間隙の10倍を越えると、パッキンが捩れて一つのパッキン係止突起16から外れたときに、隣り合うパッキン係止突起16からもパッキンが外れ易くなってしまって、パッキン係止突起がリング状の場合と同様な結果をもたらしてしまう。
【0021】
成型栓1の天面内壁11は、収容スペース13の側面内壁15に対し、垂直であり、それらが接合されているコーナー14が、半径0.1〜1.0mmで湾曲していると、振動や衝撃による応力が分散され、亀裂を生じたり破断したりしない。このコーナー14が直角乃至は鋭角の断面を有していると、そこに振動や衝撃による応力が集中し、亀裂や破断を生じてしまう。
【0022】
このような湾曲に伴う収容スペース13の体積の減少により、パッキン12が幾分外れ易くなってしまうのを防止するために、収容スペース13の高さを、パッキン12の厚さ程度、例えば+20%〜−10%にすることが好ましい。この範囲を下回ると、パッキン12の遊びが大き過ぎて、熱や振動等によりパッキン12が脱落し易くなり、一方この範囲を超えると、パッキン12がパッキン係止突起16を乗り越えて脱落し易くなる。
【0023】
このような成型栓1は、図2に示す略円柱状で成型栓1の内面を形作る雄金型20(a)と、雄金型20(a)を覆い成型栓1の外面を形作る雌金型20(b)及び20(b)とからなる金型で形成されるキャビティ30で、熱可塑性合成樹脂を加熱しつつ充填することによって得られる。
【0024】
この雄金型20(a)は、パッキン12が成型栓1の天面内壁11に嵌り込む収容スペース13を形成(図1参照)させる凸部22と、収容スペース13の側面内壁15から断続的に突き出すパッキン係止突起16(図1参照)を、凸部22の下縁に沿って形成させる凹部26とを有している。凸部22の上端外周24は、成型栓1の内壁のコーナー14に対応して湾曲している。雄金型20(a)は、凹部26よりも下方にネジ山27が設けられている。
【0025】
雌金型20(b)及び20(b)は、雄金型20(a)を覆うように突き合わされて、それらの間に、成型栓1を成型するためのキャビティ30を形成する。
【0026】
成型栓1は、通常の成型方法、例えばこの間隙に、熱可塑性樹脂を加熱しながら充填させて成型した後、雌金型20(b)及び20(b)を外し、雄金型20(a)を引抜いたりねじ回して抜き取ったりすることによって得られる。成型栓1は、その半身毎に、別々に成型した後、接合したものであってもよい。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を適用する成型栓を試作した例を実施例1に示し、本発明を適用外の成型栓を試作した例を比較例1〜2に示す。
【0028】
(実施例1)
成型栓1の作製には、図2に示す雄金型20(a)と雌金型20(b)及び20(b)とを用いた。雄金型20(a)は、直径約45mmで高さ約25mmの略円柱のもので、成型栓1中のパッキン12が嵌り込む収容スペース13に対応する凸部22を有している。その凸部上端外周は、半径0.2mmで湾曲したアール形状となっている。雄金型20(a)は、成型栓1中の収容スペース13の側面内壁15から断続的に突き出すパッキン係止突起16を形成させる水平な上端平面を有する凹部26が、凸部22の下縁に沿って均等に6つ配列されている。その6つの凹部26は、パッキン係止突起16の円弧状の全長Lと隣り合うパッキン係止突起例えば16(a)・16(b)の間隙の円弧状の距離Lとの比3:2に相当する比で、配列されている。凹部26より下部方向に、成型栓1の雌ねじ17を形成するネジ山27が、ねじ切られている。
【0029】
雌金型20(b)及び20(b)は、雄金型20(a)を覆うように突き合わされて、それらの間に、成型栓1の側壁となる厚さ約2.3mmのキャビティ30を形成する。キャビティ30には、離型剤(不図示)が塗布される。
【0030】
熱可塑性合成樹脂である直鎖状低密度ポリエチレンを、加熱しながら、キャビティ30に充填し、放冷し、成型させてから、金型を外すと、前記側壁の厚さで、コーナー14が前記湾曲した成型栓外形が得られた。それのパッキン収容スペース13に、ゴム弾性を有するパッキン12を押し込み、パッキン係止突起例えば16で係止すると、成型栓1が得られた。
【0031】
得られた成型栓1の60検体について、60℃で、成型栓に配置されたパッキンに、水圧0.25MPaの水流を当てたとき、パッキンが脱落した成型栓は、60検体中、0検体であった。また、成型栓の10検体について、内容量5Lの容器に内容物として水を満量充填し、その取出口をこの型栓でしっかりしめた。成型栓を下側に向けて高さ1.5mから垂直に自然落下させたとき、このコーナーに亀裂が生じ成型栓が破損し内容物が遺漏した成型栓は、10検体中、0検体であった。
【0032】
(比較例1)
実施例1の断続的なパッキン係止突起に代えて、連続した一体のリング状のパッキン係止突起としたこと以外は、実施例1と同様にして、成型栓を得た。それの60検体について、60℃で、成型栓に配置されたパッキンに、水圧0.25MPaの水流を当てたとき、パッキンが脱落した成型栓は、60検体中、7検体であった。
【0033】
(比較例2)
実施例1の湾曲したコーナー14に代えて、角度が90°のコーナーを有すること以外は、実施例1と同様にして、成型栓を得た。その10検体について、内容量5Lの容器に内容物として水を満量充填し、その取出口をこの型栓でしっかりしめた。成型栓を下側に向けて高さ1.5mから垂直に自然落下させた。このコーナーに亀裂が生じ成型栓が破損し内容物が遺漏した成型栓は、10検体中、6検体であった。
【0034】
比較例1及び2の成型栓は、実施例1の成型栓よりも、パッキンが脱落したり内容物が遺漏したりするものの割合が高かった。
【0035】
(参考例1)
実施例1の6つのパッキン係止突起に代えて、14個のパッキン係止突起としたこと以外は、実施例1と同様にして、成型栓を得た。成型栓は、パッキン係止突起の数が多いことに起因して、成型が困難となり、所望の大きさのパッキン係止突起を有する成型栓は、8割程度しか得られなかった。それの60検体について、60℃で、成型栓に配置されたパッキンに、水圧0.25MPaの水流を当てたとき、パッキンが脱落した成型栓は、60検体中、12検体であった。
【0036】
参考例1のように、パッキン係止突起の数が多すぎると、パッキンが脱落するものの割合が増えた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の成型栓は、高純度のフォトレジスト液のような薬液、飲料やその原材料液等の液体、固形薬品や固形物等の固体を、密閉容器に充填し、貯蔵したり、運搬したりする際に、パッキンを介して容器の取出口を密封開放可能に密閉するのに用いられる。
【0038】
この成型栓の金型は、このような成型栓を簡便かつ大量に製造する際に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を適用する成型栓の一部を切り欠いた側面図である。
【図2】本発明を適用する成型栓の金型を示す側面図である。
【図3】本発明を適用する成型栓の使用途中を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1は成型栓、2は容器、3は取出口、11は天面内壁、12はパッキン、13は収容スペース、14はコーナー、15は側面内壁、16はパッキン係止突起、17は雌ねじ、18は縦突条、20(a)は雄金型、20(b)・20(b)は雌金型、22は金型凸部、24は凸部上端外周、26は金型凹部、27はネジ山、30はキャビティ、Lはパッキン係止突起の全長、Lは隣り合うパッキン係止突起の間隙の距離である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に開けられた取出口と接するパッキンを介して覆いつつ螺合又は嵌合して該容器を密閉する合成樹脂製の成型栓であって、該パッキンが、該成型栓の天面内壁で窪んだ収容スペースに嵌り込んでおり、該収容スペースの下縁に沿って、該収容スペースの側面内壁から断続的に突き出たパッキン係止突起が、設けられていることを特徴とする成型栓。
【請求項2】
該天面内壁とそれに直交する該側面内壁とで形成される該収容スペースのコーナーが、半径0.1〜1.0mmで湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の成型栓。
【請求項3】
該パッキン係止突起の全長と、隣り合う該パッキン係止突起の間の距離との比が、1:10〜10:1であることを特徴とする請求項1に記載の成型栓。
【請求項4】
容器に開けられる取出口と接するパッキンを介して覆いつつ螺合又は嵌合して該容器を密閉する合成樹脂製の成型栓を、成型する金型であって、該パッキンが該成型栓の天面内壁に嵌り込む収容スペースを形成させる凸部と、該収容スペースの側面内壁から断続的に突き出すパッキン係止突起を、該凸部の下縁に沿って形成させる凹部とを有し、該成型栓の内面を形作る雄金型、及び該雄金型を覆い該成型栓の外面を形作る雌金型からなることを特徴とする成型栓の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−222280(P2008−222280A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64780(P2007−64780)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000100849)アイセロ化学株式会社 (20)
【Fターム(参考)】