説明

合成紙をエンボスしてなるエンボス合成紙の製法及びそのエンボス装置

【課題】樹脂と自然繊維からなる合成紙をエンボスして、自然の繊維からなる紙のエンボス紙と同様なエンボス合成紙を製作する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】重さが20g/m2 〜210g/m2 である三層構造の合成紙を(1)石英電気オーブン,赤外線加熱器で65℃〜160℃,好ましくは115℃にて予熱及び加熱して,(2)少なくともショアA硬さが60〜90であるゴム製型押しロールと、表面に浮き彫り模様の型があるエンボスロールとからなるエンボス設備にてエンボスし,(3)上記エンボス設備は、エンボス加工中に、エンボスロールとゴム製型押しロールとを同調させて同時に冷却し、(4)更に左右一組の冷却ドラムで冷却し、合成紙上の浮き彫り模様を定着成形してエンボス合成紙となすことからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮き彫り図(エンボス図)のある紙に関し,更に詳しくは三層の構造からなる合成紙(Synthetic paper)を改良した、エンボス装置(Embossing device)にてエンボスしてなるエンボス合成紙に関する。
【背景技術】
【0002】
書き写し,印刷或いは包装用材として、現在最も大量に使用される資材の典型的なものの一つである紙は,各種の植物繊維又は合成繊維とを合成したものからなるものである。また、このような構造を持つ紙の代わりに紙状の外観及び機能を有するプラスチックフィルム(合成紙)を用いることは,古くから提案され実用化されている。
【0003】
このプラスチックフィルムの紙化技術の基本的なものをまとめて示せば、プラスチック自身の表面を;(1)紙状化にするため物理処理又は化学処理を行なう方法,(2)充てん剤配合プラスチックをフィルム状に形成するものからなる方法と,(3)表面に別に紙状層を設けるものとからなる方法等がある。だがこれらの方法で出来た合成紙(ポリオレフイン又はPE,ポリプロピレン)はそれぞれ何らかの欠点を有している。
【0004】
アメリカ特許5.536,468号は、単層のポリマーシートに透かしを入れる印刷技術に係る方法を開示しており、この方法は、互いに隣接したローラーの間にポリマーシートを通過させることであり、少なくとも1つのローラーは、通過するシートに凹みを形成するために凹模様および/または凸模様を有し、シートの凹みは、ローラーの凹模様および/または凸模様に対応し、シートは、シートを伸張させることによって配向させる。凹みがあり、配向させたシートは、模様の凸部に対応する暗色領域と、模様の凹部に対応する明色領域を有する。
【0005】
また、アメリカ特許第6,364,988B1(即ち特開2000-211008)は本願出願人が1999年9月13日に出願し、2002年4月2日に特許されたものである。この発明は三層共押出にてそれぞれ1台のフィーダ付ツインスクリユー(Twin Screw)の主押出機と,2台のフィーダ付ツインスクリユーの副押出機から押出されたポリプロピレン樹脂と無機物の押出物を合わせ,1つのT-ダイヘッド(T-dies head)を経て紙状層又は樹脂層/発砲中間層/紙状層又は樹脂層の三層シート(Sheet)となし,さらに冷却成形,二軸延伸(Biaxial orientation),コロナ(Corone)処理,巻き取り等を施して合成紙を作製したものである。
【0006】
また、特公昭46-40704,特開昭 56-118437,特開昭56-141339,及び特開平3-87255の合成紙は書き写し,印刷用,包装用材及び各種の紙用途に使用することが出来る。しかし、容易,且つ簡単に浮き彫り模樣(Emboss patterns)を合成紙上にエンボスして浮き彫り模様のある合成にすることは困難で難しかった。
【0007】
さらに、従来の技術では、3層の合成紙を、一枚(単層)のプラスチックフィルム或いは自然繊維からなる造紙の様に合成紙上にエンボスして浮き彫り模様のなる合成にすることは困難で難しかった。たとえエンボスはできてもエンボス模様の安定性が悪く使用性がないものであったからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記技術の困難性と安定性の向上の必要性,周知エンボス装置を使用することが出来ないことなどに鑑み,本願発明者等は多年の現場経験,実験と検討の結果,周知エンボス装置の型押しロールを少なくともショアA硬さ(ショアA硬度)が60〜90のゴム製型押しロールに入れ替え,合成紙は先に65℃〜最高160℃(より良きは115℃)で予熱して,毎分15〜18メートルの速度で型押しロールとエンボスロールの間を通過してエンボスし,7℃ 左右のドラム(1組)で急速冷却して浮き彫り模様を合成紙上に定着成形することにより、天然繊維からなる紙,例えば帆布(canvas)又は美術紙(art paper)と同様なエンボス合成紙を得ること出来ることを見出し,本発明を完成した。
【0009】
そこで、本発明は樹脂と自然繊維からなる合成紙をエンボスして、自然の繊維からなる紙のエンボス紙と同様なエンボス合成紙を製作する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を逹成するため、本発明は,合成紙の凹み(エンボス)構造の作成方法であって、
(1) 重さが20g/m2 〜210g/m2 である三層の合成紙を;
(2) 少なくともショア(Shore)A硬さが60〜90であるゴム製型押しロール(ゴムバックアップロール)と、表面に任意の浮き彫り模様が付されたエンボスロールとを備えたエンボス加工設備にて、前記合成紙を通過させてエンボス加工し:
(3) 上記エンボス設備は、エンボス加工中に、エンボスロールとゴム製型押しロールとを同調させて同時に冷却し;
(4) 更に左右の(1組の)冷却ドラムで冷却し(好ましくは7℃)、合成紙上の浮き彫り模様を定着成形してエンボス合成紙を作製することからなる。
また、上記エンボス設備にてエンボスした合成紙上の浮き彫り模様の深さは2μm〜1000μmであり,合成紙の流れ速度は毎分15〜18メートルであることが好適である。
【0011】
本発明はさらに、改良したエンボス装置を提供する。この改良したエンボス装置は;
(1) 少なくともショアA硬さが60〜90であるゴム製型押しロールと、表面に浮き彫り模様の型があり冷却設備のあるエンボスロールとからなるエンボス設備と,
(2) 合成紙を予熱,加熱する予熱用の予熱ロールと、石英電気オーブン(oven)と,赤外線加熱器と,
(3) 左右一組の冷却ドラム(好ましくは7℃で冷却)と,からなるもので,
前記(2)の石英電気オーブンは予熱ロールの片側にあって予熱ロールと一定の隙間を保ち,赤外線加熱器は石英電気オーブンの下側で,エンボスロールの前に設置してなる。
【0012】
本発明三層構造のエンボス合成紙は、周知の自然繊維からなる紙のエンボス装置を改良してなる(即ち装置の型押しロールを少なくとも硬さがショアA60〜A90を有するゴム製型押しロールにとりかえた)エンボス装置によって,重量が20g/m2〜210g/m2 の三層構造の合成紙を予熱し,加熱し,エンボスを施し,急速冷却し定型してなる。当該エンボス合成紙は、一定の粗さを有する,自然繊維からなる紙,或いは帆布(canvas)又は美術紙(art paper)と同様なものを提供するものである。
【0013】
上記改良したエンボス装置のゴム製型押しロールはエチレン−プロピレン−ジエン モノマー(Ethylene-Propylene-Diene Monomer,略称EPDM)のゴム製品である。合成紙を予熱、加熱する加熱器は石英電気オーブンと,赤外線加熱器とからなり,冷却は一組の冷却ドラム設備で冷却する。合成紙がこれらの設備を通過する速度は毎分15〜18メートルで,エンボス模様の深さは0.2μm〜1000μmである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明三層構造のエンボス合成紙の構成図である。
【図2】本発明に用いた三層構造の合成紙の製造過程の概略図である。
【図3】本発明が改良したエンボス装置の構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の三層構造のエンボス合成紙の構成図で,11と13は副層,12が主層,14はエンボス模様又は図案である。
三層構造のエンボス合成紙(3層共押出二軸配向ポリプロピレンパール合成紙)は、3層構造、たとえば、絹目紙シート層/発泡中間層/接着層もしくは光沢紙シート層/発泡中間層/接着層または樹脂層/樹脂層/接着層であり、接着層の材料は、PP、LPPEまたはHDPEである。
【0016】
図2は、3層構造の二軸配向ポリプロピレンパール合成紙の製造工程を示す図である。符号21は、合成紙加工用の副投入ホッパーを備える抽出可能な二軸押出装置を示す。押出装置21には、主投入ホッパーを備える1つの第1の抽出可能な二軸押出機211と、副投入ホッパーを備える2つの第2の抽出可能な二軸副押出機213a、213bとが含まれる。加工温度は、製品の樹脂組成物の原料、MFI、結晶度、製造速度および厚さによって異なる。
材料の押出成形後、冷却成形ドラム22によって冷却工程を実施して高温の3層共押出材料を冷却する。冷却成形ドラムには、水冷装置または空冷装置を導入することが可能である。この工程で冷却温度を制御することはかなり重要であり、次の工程を成功裏に導く。
さらに、冷却工程によって成形される材料は、縦方向延伸装置23(長手方向配向装置)に投入して長手方向配向処理を実施し、特定の予熱温度に設定して材料を軟化させる。次に、高速配向と低速配向との2つの処理で配向させ、長手方向の機械的強度を増大させ、焼き戻して形成する。
次に、長手方向配向装置によって形成された材料は、横方向延伸装置24(横手方向配向装置)に投入する。長手方向配向装置によって形成された薄手材料は、(紙シートの厚さおよび製造速度に応じた)特定の温度で予熱して軟化する。次に、横手方向に配向させ、最終的には焼き戻して形成してパール合成紙の寸法安定性を増大させる。
その後、印刷、コーティング、接着、ラミネート加工などに使用される紙シートおよび膜の表面の物理的特性を改善するために、コロナ放電処理加工にコロナ放電処理装置25を使用する。単相電力または二相電力による加工には、特定の高周波放電装置を使用し、特定の湿度で特定の引張速度を得る。
最後に、巻取機26によって成形し、コロナ放電処理後、必要に応じて、スリッティング、カッティングまたは紙片をパッキングして合成紙製品を形成することができる。
【0017】
図3は本発明が改良したエンボス装置の構成概略図である。この装置は;
(1)少なくともショアA硬さが60〜90を有するゴム製型押しロール35と、ロールの表面に浮き彫り模様の型があり冷却設備を有するエンボスロール36からなる一組のエンボス設備と;
(2)予熱用の予熱ロール32とこの予熱ロールの側に一定の隙間をもって配置される石英電気オーブン33と;
(3)最高160℃,好ましくは115℃にて加熱を行う赤外線加熱30と:
(4)好ましくは7℃で冷却を行う、左右一組の冷却ドラム31と,からなる。(合成紙は矢印16の方向に流れる)。
上記"冷却設備を有するエンボスロール"の記載に関して、図3にはその冷却設備を表示していないが、事実上冷却水にてエンボスロールを冷却するものであり、エンボス加工中に、エンボスロール36とゴム製型押しロール35とを同調させて同時に冷却できる。
合成紙のエンボス模様深度を0.2μm〜1000μmに限定したのは,このエンボスの深さにより合成紙がゴム製型押しロール35とエンボスロール36との間を通りエンボスすることが出来るからであり,必ずしもこの深さに限らず冷却定型してエンボス合成紙となるものであれば良い。
【0018】
以下実施例にて本発明を説明する,但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
曇り紙状層/発泡中間層/接着層からなる三層構造の合成紙1(ポリプロピレンパール合成紙)を、本発明のエンボス装置にて,まず65℃〜160℃(好ましくは115℃)で石英電気オーブン33にて予熱し,最高160℃(好ましくは115℃)にて加熱を行う赤外線加熱30で加熱し、毎分15〜18メートルの流れ速度でゴム製型押しロール35と表面に"帆布"模様の型があるエンボスロール36との間を深度5μm〜15μmにてエンボスしながら通過し,更に一組での左右の冷却ドラム31にて7℃で急速冷却及び定着成形してエンボス合成紙とした。この三層構造のエンボス合成紙は自然植物繊維からなるエンボス紙と同様のエンボス安定性を有する。
【0020】
実施例2
三層構造の合成紙の曇り紙状層/発泡中間層/接着層を、樹脂層/樹脂層/接着層の三層としたこと,合成紙の流れ速度を毎分18メートルとしたこと,エンボス模様は"インディアンペーパー"(indian paper)としたこと,深度は2μm〜10μmに代えたことを除き,実施例1と同様にして合成紙をエンボスしてエンボス合成紙を得た。
【0021】
実施例3
実施例2と同じく実施例1の曇り紙状層/発泡中間層/接着層の曇り紙状層を光沢のある紙状層に代えたこと,合成紙の流れ速度を毎分15メートルとしたこと,エンボス模様は「サメ皮」としたこと,深度は0.2μm〜0.4μmに代えたことを除き,実施例1と同様にして合成紙をエンボスしてエンボス合成紙を得た。
上記実施例2、3にて得られた三層構造の合成紙は一般の自然植物からなる造紙と同じくエンボス安定性を有する。
【符号の説明】
【0022】
1. 三層構造のエンボス合成紙
11. 合成紙の第1副層
12. 合成紙の主層
13. 合成紙の第2副層
14. 浮き彫り模様又は図案
16. 合成紙の流れ方向
21. 押出装置
211. 二軸主押出機
213a,213b二軸副押出機
22. 冷却成型ドラム
23. 縦方向延伸装置
24. 横方向延伸装置
25. コロナ放電処理装置
26. 巻取機
30. 赤外線加熱器
31. 冷却ドラム
32. 予熱ロール
33. 石英電気オーブン
34. エンボス合成紙
35. ゴム製型押しロール
36. エンボスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重さが20g/m2〜210g/m2 である三層構造の合成紙を;
(1)石英電気オーブン,赤外線加熱器で65℃〜160℃,好ましくは115℃にて予熱及び加熱して,
(2)少なくともショアA硬さが60〜90であるゴム製型押しロールと、表面に浮き彫り模様の型があるエンボスロールとからなるエンボス設備にてエンボスし,
(3)上記エンボス設備は、エンボス加工中に、エンボスロールとゴム製型押しロールとを同調させて同時に冷却し、
(4)更に左右一組の冷却ドラムで冷却し、合成紙上の浮き彫り模様を定着成形してエンボス合成紙となすことを特徴とする三層構造のエンボス合成紙の製造方法。
【請求項2】
上記三層構造の合成紙が、エンボス装置の石英電気オーブン、赤外線加熱器,エンボスロールとゴム製型押しロール、及び冷却ドラムを通過する速度が15m/min〜18m/minであることを特徴とする請求項1に記載の三層構造のエンボス合成紙の製造方法。
【請求項3】
上記三層構造の合成紙上に施される浮き彫り模様の深さが0.2μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の三層構造のエンボス合成紙の製造方法。
【請求項4】
三層構造の合成紙をエンボスしてエンボス合成紙を製造する装置であって;
(1)少なくともショアA硬さが60〜90であるゴム製型押しロールと表面に浮き彫り模様の型があるエンボスロールとからなるエンボス設備と,
(2)合成紙を予熱及び加熱する、石英電気オーブン及び赤外線加熱器と;
(3)一組の冷却ドラムと,からなることを特徴とする合成紙のエンボス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−158136(P2012−158136A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20548(P2011−20548)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(507024080)ナン ヤ プラスティクス コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】