説明

合金化された半導体量子ドットおよび合金化された濃度勾配量子ドット、これらの量子ドットを含むシリーズ、ならびにこれらに関する方法

【解決手段】少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドット(この
量子ドットは、均質な組成を有しかつ少なくとも2つの半導体のモル比に非線形に関連す
るバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる);それに関連する合金化された半
導体量子ドットのシリーズ;第1の半導体および第2の半導体の合金を含む濃度勾配量子ド
ット(第1の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に増大し、
第2の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少する);それに関連する濃度勾配量子ドットのシリーズ;in vitroおよびin vivoでの使用方法;ならび
に合金化された半導体量子ドットおよび濃度勾配量子ドットならびにそれらに関連する量子ドットのシリーズを作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、本明細書中で参考として援用される米国特許出願第60/468,729号(2003年5月7日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府により支援された研究および開発に関する陳述)
本発明は、National Institutes of Health助成金番号RO1 GM60562の下で合衆国政府の支援によりなされた。合衆国政府は本発明において特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、合金化された半導体量子ドット、合金化された濃度勾配量子ドット、これらの量子ドットのいずれかを含むシリーズ、これらを作製する方法、およびこれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
球状半導体ナノ結晶である量子ドットは、独立した原子またはバルク固体のいずれからも入手できない独自のサイズ依存的な特性に起因して、現在かなりの興味が持たれている(Alivisatos, J. Plays.Chem. 100: 13226- 13239 (1996); Nirmalら, Acc. Chem. Res. 32: 407-414 (1999)およびEychmuller, J Phys. Chem. B 32: 104: 6514-6528 (2000) )
。最近の研究により、種々のナノ結晶材料の光ルミネセンス(PL)が粒子サイズを変更することによって簡単に変調され得る広いスペクトル範囲が実証されている(Murrayら, J. Am. Chem. Soc. 115: 8706- 8715 (1993); Hinesら、J. Phys. Chem. 100: 468-471 (1996); Micicら, J. Phys. Chem. 101: 4904-4912 (1997); Harrisonら, J. Mater. Chem. 9: 2721-2722 (1999);およびTalapinら, J. Phys. Chem. B 105: 2260-2263 (2001) )。他の興味深い特性は、高い量子効率、狭く対称的な発光プロフィール、広い光吸収帯、ならびに大きいモル吸光係数である。さらに、これらの高度にルミネセンスのナノ結晶が、多色バイオラベリングおよびバイオセンシングのためにタンパク質および核酸のような生物学的分子にコンジュゲート化され得ることを、いくつかのグループが示している(Bruchezら, Science 281: 2013-2016 (1998); Chanら, Science 281: 2016-2018 (1998); Mitchellら, J. Am. Chem. Soc. 121:8122-8123 (2001); Mattoussiら, J. Am. Chem. Soc. 122: 12142-12150 (2000); Pathakら, J. Am. Chem. Soc. 123: 4103-4104 (2001); Dubertretら, Science 298: 1759-1762 (2002); Jaiswalら, Nat. Biotechnol. 21: 47-51 (2003); Wuら,Nat. Biotechnol. 21: 41-46 (2003); Akermanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 12617-12621 (2002)およびMurphy, Anal. Chem. 74: 520A-526A (2002) )。しかし、現在の研究は、粒子サイズを約1nmから8nmに変更することによって発光波長が変調される2成分半導体材料に主に基づいている。結果として、最大のナノ結晶は、最小の粒子よりも512倍の体積を有し、64倍の表面積を有すると予測される。これらの大きい差異は、バイオコンジュゲーションおよび表面化学、ならびに標的分子に対するナノ結晶の結合および反応速度論における主要な問題を引き起こし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Korgelらは、ZnyCd1-ySまたはHgyCd1-ySの合金(各シリーズ内で、サイズおよび組成調節可能に固定されている)を含む量子ドットのシリーズを生成することによってこれらの問題のうちいくつかを克服している(Korgelら, Langmuir 16: 3588-3594 (2000))。しかし、これらの量子ドットは各々、量子ドットを構成する半導体のモル比に線形に関連するバンドギャップエネルギーを有する。従って、これらの量子ドットのシリーズの発光ピーク波長の範囲が、対応する純粋な合金化されてない半導体量子ドット(すなわち、純粋なHgS、純粋なCdSまたは純粋なZnSからなる量子ドット)によって規定される波長範囲に限
定されるという点で、これらの量子ドットの光学特性はなお限定されている。従って、半導体の合金を含み、かつ純粋な合金化されていない形態によって設定される発光ピーク波長範囲に限定されない独自の光学特性を有する改善された量子ドットが、当該分野で必要とされている。
【0006】
本発明は、このような改善された量子ドット、ならびにこれらの量子ドットに関連するシリーズ、これらのいずれかを作製する方法およびこれらのいずれかを使用する方法を提供する。本発明のこれらおよび他の利点、ならびにさらなる発明的特徴は、本明細書中に提供される発明の記載から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドットを提供
し、この量子ドットは、均質な組成を有しかつ少なくとも2つの半導体のモル比に非線形
に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる。
【0008】
本発明はまた、合金化された半導体量子ドットのシリーズを提供し、ここで、シリーズの合金化された半導体量子ドットの各々は少なくとも2つの半導体の合金を含みかつ均質
な組成を有し、各量子ドットのサイズは平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内であり、シリーズの合金化された半導体量子ドットの各々は同じ合金を含むが少なくとも2つ
の半導体のモル比において変動し、かつシリーズの合金化された半導体量子ドットのうち少なくとも1つは、少なくとも2つの半導体のモル比に非線形に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる。
【0009】
本発明はさらに、少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドット
を提供し、この量子ドットは、少なくとも2つの半導体のうち1つのみからなる量子ドットの発光ピーク波長によって規定される波長範囲内にない発光ピーク波長を有する。
【0010】
本発明はさらに、第1の半導体および第2の半導体の合金を含む濃度勾配量子ドットを提供し、ここで、第1の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に
増大し、第2の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少す
る。
【0011】
本発明はまた、濃度勾配量子ドットのシリーズを提供し、ここで、各量子ドットは第1
の半導体および第2の半導体の合金を含み、各量子ドットについて、第1の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に増大し、第2の半導体の濃度は量子ド
ットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少し、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで第1の半導体の濃度が増大する勾配および量子ドットのコアから量子ドットの表
面まで第2の半導体の濃度が減少する勾配は、このシリーズの量子ドット間で変動し、各
量子ドットのサイズは平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内であり、かつ各量子ドットは同じ半導体を含む。
【0012】
本発明の量子ドットは、多数のin vitroおよびin vivoの方法において有用であり、特
に、量子ドットが生体分子のような生物学的因子にコンジュゲート化された場合に有用である。これらの方法は本発明によってさらに提供される。これに関して、本発明は、サンプル中の標的を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを
、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分
光シグネチャーを得る工程であって、この分光シグネチャーがサンプル中の標的の存在または非存在を示す工程。
【0013】
本発明はまた、サンプル内の標的の位置を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット
(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)サンプルまたはその切片を画像
化することによってサンプル内の標的の位置を検出する工程。
【0014】
本発明はまた、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾
配量子ドット(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合し、この標的は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に
、このサンプルまたはその切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0015】
本発明は、in vivoで標的の位置を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を
含む:(i)合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット(これらのうちいず
れかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子は宿主中の標的と特異的に結合する、工程、(ii)生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)この宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって
、in vivoで標的の位置を検出する工程。
【0016】
本発明は、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法
は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット(こ
れらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子が宿主中の標的と特異的に結合し、この標的は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、この宿主、その切片または細胞を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0017】
同様に、本発明の量子ドットのシリーズは、多数のin vitroおよびin vivoの方法にお
いて有用であり、特に、このシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されており、その結果、異なる生物学的因子の各々が独自のモル比の少なくとも2つの半導体を有する量子ドットに対応する場合に有用である。これに関して、本発明はまた、サンプル中の1つより多い標的を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシリーズまたは濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分光シグネチャーを得る工程であって、この分光シグネチャーがサンプル中の1つより多い標的の存在または非存在を示す、工程。
【0018】
本発明はまた、サンプル内の1つより多い標的の位置を検出する方法を提供する。この
方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシリーズま
たは濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによっ
てサンプル内の1つより多い標的の位置を検出する工程。
【0019】
本発明はさらに、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシリーズ
または濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合し、これらの標的の各々は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、このサン
プルまたはその切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0020】
in vivoで1つより多い標的の位置を検出する方法が本発明によって提供される。この方法は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットのシリーズまたは濃度勾配量
子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)この宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで1つより多い標的の位置を検出する工程。
【0021】
本発明はまた、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この
方法は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットのシリーズまたは濃度勾配
量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合し、これらの標的の各々は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、この宿主、そのサンプル
またはその切片を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリング
する工程。
【0022】
本発明はさらに、本発明の量子ドットを作製する方法および本発明の量子ドットを含むシリーズを作製する方法を提供する。これに関して、本発明はまた、少なくとも2つの半
導体の合金を含む量子ドットを作製する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、一定のモル比で少なくとも2つの半導体の前駆体を含む第2の溶液を提供する工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形
成を引き起こす工程、および(iv)その条件をさらなるナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。この方法により、少なくとも2つの半導体の合金を含む量子ド
ットが作製される。
【0023】
本発明はさらに、2つの半導体ABおよびACの合金を含む、三元合金化された半導体量子
ドットを作製する方法を提供し、この方法において、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。
【0024】
本発明はまた、三元合金化された半導体量子ドットのシリーズを作製する方法を提供し、この方法において、各量子ドットは2つの半導体ABおよびACの合金を含み、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、このシリーズ中に少なくとも1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、このシリーズの他の量子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程。
【0025】
第1の半導体ABおよび第2の半導体ACを含む、三元濃度勾配量子ドットを作製する方法であって、Aは第1の半導体および第2の半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のうち1つのみにおいて見出される種である方法もまた、本発明によって提供される。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条
件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、B
およびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、BおよびCの各々は、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加
することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、および(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。
【0026】
本発明は、三元濃度勾配量子ドットのシリーズを作製する方法を提供し、この方法において、各量子ドットは第1の半導体ABおよび第2の半導体ACを含み、Aは第1の半導体および第2の半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のう
ち1つのみにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさな
い条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、Bお
よびCの各々は、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液
を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv) ナノ結晶の形成を引き起こす条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、このシリーズの少なくと
も1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、このシリーズの他の量子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドットを提供
し、この量子ドットは、均質な組成を有しかつ少なくとも2つの半導体のモル比に非線形
に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる。
【0028】
本発明はさらに、少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドット
を提供し、この量子ドットは、少なくとも2つの半導体のうち1つのみからなる量子ドットの発光ピーク波長によって規定される波長範囲内にない発光ピーク波長を有する。
【0029】
本発明はさらに、第1の半導体および第2の半導体の合金を含む濃度勾配量子ドットを提供し、ここで、第1の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に
増大し、第2の半導体の濃度は量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少す
る。
【0030】
用語「量子ドット」とは、本明細書中で使用する場合、ナノ結晶の半径がその半導体材料についての励起ボーア半径のサイズ以下である、半導体材料の単一の球状ナノ結晶をいう(励起ボーア半径についての値は、半導体特性についての情報を含む手引書(例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 第83版, Lide, David R. (編者), CRC Press,
Boca Raton, FL (2002))中に見出されるデータから計算され得る)。量子ドットは、Weller, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32: 41-53 (1993)、Alivisatos, J. Phys. Chem. 100: 13226-13239 (1996)およびAlivisatos, Science 271: 933-937 (1996)のような参考文献中に記載されているので、当該分野で公知である。
【0031】
(合金および半導体の説明)
本発明の合金化された半導体量子ドットまたは本発明の合金化された半導体量子ドットのシリーズは、少なくとも2つの半導体の合金を含む。用語「合金化された」は、本明細
書中で使用する場合、2つ以上の半導体が完全にアマルガム化された固体を形成し、この2つ以上の半導体がこの固体中にランダムに分布していることを意味する。また、これに関して、用語「合金」とは、本明細書中で使用する場合、アマルガム化プロセスの生成物である任意の固体をいう。「半導体」は、本明細書中で使用する場合、約0.01eV〜約10eVの範囲内の有限のバンドギャップエネルギーを示す任意の材料を意味する。本発明の濃度勾配量子ドットまたは本発明の濃度勾配量子ドットのシリーズは、第1の半導体および第2の半導体の合金を含み、この量子ドットの組成は、量子ドットの半径の関数として、その中心での純粋な第1の半導体の材料から、その表面での純粋な第2の半導体の材料へと徐々に変化する。
【0032】
合金化された半導体量子ドットの少なくとも2つの半導体ならびに濃度勾配量子ドット
の第1の半導体および第2の半導体は、これらの半導体が合金化可能である限り任意の半導体であり得る。「合金化可能(alloyable)」は、本明細書中で使用する場合、量子ドッ
トを構成する半導体材料がアマルガム化された固体を形成でき、これらの半導体が固体中にランダムに分布していることを意味する。さらに、当業者は、合金化された半導体量子ドットの少なくとも2つの半導体の各々が互いに異なる半導体であることを認識している
。同様に、当業者は、濃度勾配量子ドットの第1の半導体および第2の半導体の各々が互いに異なることを認識している。
【0033】
本明細書中で記載される合金化された半導体量子ドットに関して、少なくとも2つの半
導体の各々が平均格子パラメータの約10%以内の格子パラメータを有することが好ましい
。用語「格子パラメータ」とは、本明細書中で使用する場合、結晶性材料の単位セルのサイズの物理的寸法(すなわち長さ)をいう。また、本明細書中で記載される濃度勾配量子ドットに関して、濃度勾配量子ドットの第1の半導体および第2の半導体の各々が、平均格子パラメータの約10%以内の格子パラメータを有することが好ましい。「平均格子パラメ
ータの約10%以内の格子パラメータ」とは、本明細書中で使用する場合、個々の半導体の
格子パラメータが、平均格子パラメータ±10%と同じであることを意味する。「平均格子
パラメータ」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットを構成する各半導体の格子パラメータの平均値をいう。このような半導体は当該分野で公知であり、例えば、CdS1-xSex、CdS1-xTex、CdSe1-xTex、Zn1-xCdxS、Zn1-xCdxSe、Zn1-xCdxTe、In1-xGaxAsおよびIn1-xGaxPが挙げられ、式中、xは0と1との間の任意の分率(fraction)である。さらに、半導体の格子パラメータが平均格子パラメータから変動する%を決定する方法は当該分野で
公知である。例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 第83版 , Lide, David R. (編者), CRC Press, Boca Raton, FL (2002)(これは、多数の半導体材料についての
格子パラメータ値を表にしている)を参照のこと。
【0034】
本明細書中で記載される合金化された半導体量子ドットに関して、この合金化された半導体量子ドットの少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つは、II族−VI族の半導体またはIII族−V族の半導体であることが好ましい。同様に、本明細書中で記載される濃度勾配量子ドットに関して、この濃度勾配量子ドットの第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つは、II族−VI族の半導体またはIII族−V族の半導体であることが好ましい
。「II族−VI族の半導体」は、本明細書中で使用する場合、元素周期表からの1つのII族
元素および1つのVI族元素から作製された半導体を意味し、ここで、「II族」および「VI
族」とは、元素周期表の伝統的な番号付けシステムをいう。同様に、用語「III族−V族の半導体」とは、本明細書中で使用する場合、元素周期表からの1つのIII族元素および1つ
のV族元素から作製された半導体をいい、ここで、「III族」および「V族」とは、元素周
期表の伝統的な番号付けシステムをいう。II族−VI族およびIII族−V族の半導体は当該分野で公知であり、例えば、CdS1-xSex、CdS1-xTex、CdSe1-xTex、ZnSe1-xTex、Zn1-xCdxTe、Cd1-xHgxS、Cd1-xHgxTe、In1-xGaxAs、Ga1-xAlxAsおよびIn1-xGaxPが挙げられる。本発明に関して、好ましいII族−VI族およびIII族−V族の半導体は、CdSe1-xTex、ZnSe1-xTex、Zn1-xCdxTe、Cd1-xHgxS、Cd1-xHgxTe、In1-xGaxAsおよびIn1-xGaxPであり、式中、xは0と1との間の任意の分率である。
【0035】
本明細書中に記載される量子ドットを構成する半導体のモル比は、量子ドットの分子式が任意のモル比を反映し得るような、任意のモル比であり得る。しかし、本発明の任意の量子ドットの合金がCdSSeを含む場合、この合金は分子式CdS1-xSexを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。また、本明細書中に記載される任意の量
子ドットの合金がCdSTeを含む場合、この合金は分子式CdS1-xTexを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。本明細書中に記載される任意の量子ドットの合金がZnSeTeを含む場合、この合金は分子式ZnSe1-xTexを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。本明細書中に記載される任意の量子ドットの合金がZnCdTeを含む場合、この合金は分子式Zn1-xCdxTeを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。本明細書中に記載される任意の量子ドットの合金がCdHgSを含む場合、この合金は分子式CdHg1-xSxを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。この合金がCdSeTeを含む場合、この合金は分子式CdSe1-xTexを有することが好ましく、式中、xは0と1との間の任意の分率である。
【0036】
本明細書中に記載される合金化された半導体量子ドットに関して、合金化された半導体量子ドットの少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体であることもまた好ましい。「化合物半導体」とは、本明細書中で使用する場合、元素周期表からの少なくとも2つの異なる元素を含む半導体を意味する。さらに、本明細書中に記載される濃度
勾配量子ドットに関して、濃度勾配量子ドットの第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体であることが好ましい。本発明の任意の量子ドットのために
好ましい化合物半導体には、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、GaP、GaAs、InPおよびInAsが挙げられる。合金化された半導体量子ドットの少なく
とも2つの半導体は、好ましくはCdSeおよびCdTeである。同様に、本明細書中に記載され
る濃度勾配量子ドットの合金は、好ましくはCdSeおよびCdTeを含む。
【0037】
(組成の型の説明)
【0038】
本発明の合金化された半導体量子ドットまたはこれらの半導体量子ドットを含むシリーズは、均質な組成を有する。「均質な組成」とは、量子ドットが量子ドット全体にわたって均一な組成を有し、その結果、その組成が量子ドットを構成する半導体および量子ドットを構成する半導体のモル比に関して同じであること、すなわち、この量子ドットの組成がコアから表面まで均一であることを意味する。
【0039】
本発明の合金化された半導体量子ドットとは異なり、第1の半導体および第2の半導体の合金を含む本明細書中に記載される濃度勾配量子ドットは、均質な組成を有さない。むしろ、第1の半導体の濃度は、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に増大し、
一方で第2の半導体の濃度は、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少す
る。用語「コア」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットの中心点をいう。用語「表面」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットの外面層を意味する。
【0040】
(サイズの説明)
【0041】
本発明の合金化された半導体量子ドットまたは本発明の合金化された半導体量子ドットのシリーズならびに本発明の濃度勾配量子ドットまたは本発明の濃度勾配ドットのシリーズは、任意の直径を有し得、従って、量子ドットの半径がこの量子ドットを構成する材料についてのボーア励起半径以下である限り任意のサイズのものであり得る。好ましくは、本明細書中に記載される量子ドットは、直径が15nm未満である。より好ましくは、本明細書中に記載される量子ドットは、直径が8nm未満である。
【0042】
(量子ドットの光学特性)
本発明の合金化された半導体量子ドットは独自の光学特性を有する。具体的には、合金化された半導体量子ドットの発光ピーク波長は、少なくとも2つの半導体のうち1つのみからなる量子ドットの発光ピーク波長によって規定される波長範囲内にない。例えば、合金化された半導体量子ドットが2つの半導体CdSeおよびCdTeの合金を含んだ場合、この量子
ドットの発光ピーク波長は、CdSeのみからなる量子ドットの発光ピーク波長およびCdTeのみからなる量子ドットの発光ピーク波長によって示される波長の範囲の外側にある。発光ピーク波長は吸収ピーク波長と関連するので、吸収ピーク波長に関して本発明の合金化された半導体量子ドットで同じことがいえ得る。すなわち、合金化された半導体量子ドットの吸収ピーク波長は、少なくとも2つの半導体のうち1つのみからなる量子ドットの吸収ピーク波長によって規定される波長範囲内にない。任意の特定の理論に拘束されることなく、本発明の合金化された半導体量子ドットは、バンドギャップエネルギーとこの量子ドットを構成する少なくとも2つの半導体のモル比との間の非線形の関係に起因して、これらの独自の光学特性を有する。用語「バンドギャップエネルギー」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットが光子を吸収または放射する最低のエネルギーをいう。この「バンドギャップエネルギー」の実際の値は、等式E=hc/λによって計算でき、式中、Eはバンドギャップエネルギーであり、hはPlank定数(自然界の基本的な物理定数)であり、cは真空中での光の速度(自然界の基本的な物理定数)であり、λは量子ドットによって吸収または放射される光子の波長である。量子ドットが、この量子ドットを構成する半導体のモル比に非線形に関連するバンドギャップエネルギーを有するか否かを決定する方法が、当該分野で公知である。例えば、以下に示される実施例4もまた参照のこと。本発明の量子ドットの独自の特性により、これらの量子ドットのあるものは、より大きい範囲の発光ピーク波長の検出を必要とする方法にとって特に有用となることを、当業者は理解している。また、本発明の量子ドットの独自の光学特性により、これらの量子ドットは、近赤外または遠赤色のスペクトル中に見出される発光ピーク波長の検出を必要とする方法にとって有用となる。
【0043】
(量子収率の説明)
【0044】
本発明の量子ドットは任意の量子収率のものであり得る。用語「量子ドット」とは、本明細書中で使用する場合、その量子ドットが吸収した光子をルミネセンスへと変換する効率を意味する。例えば、吸収された全ての光子が、ルミネセンスに帰される光子を生成する場合、その量子収率は100%である。しかし、10個の吸収された光子当たりたった1つの
光子がルミネセンスに帰される場合、その量子収率は10%である等。一般に、量子収率が
高いほど光学効率が高く、その結果高い量子収率を有する量子ドットが所望されることを、当業者は理解している。好ましくは、本明細書中に記載される任意の量子ドットの量子収率は少なくとも15%である。より好ましくは、この量子収率は約30%と約60%との範囲内であり、最も好ましくはこの量子収率は約40%と約60%との範囲内である。
【0045】
(コンジュゲート化およびカプセル化された量子ドット)
【0046】
本発明の量子ドットまたは本発明の量子ドットのシリーズは、生物学的因子にコンジュゲート化され得る。「コンジュゲート化」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットが任意の手段(例えば、化学結合、静電相互作用、架橋剤など)を介して生物学的因子に結合していることを意味する。本明細書中で使用する場合、用語「生物学的因子」とは、生物体全体にとって内因性であり、かつ/または生物体全体内で生物学的に活性である、
上記のいずれかの任意の分子、実体または部分をいう。本発明の量子ドットに対するコンジュゲート化のために適切な生物学的因子は当該分野で公知であり、例えば生体分子または薬物が挙げられる。好ましくは、この生物学的因子は生体分子であり、「生体分子」とは、生物体全体の身体内または生物体全体の身体上に天然に存在する任意の分子またはその一部をいう。本発明の量子ドットに対するコンジュゲート化のために好ましい生体分子には、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。この生物学的因子は薬物であることもまた好ましく、「薬物」とは、本明細書中で使用する場合、生物体全体の身体にとって外因性であり、典型的には当該分野で公知の手段によって合成される任意の化学的因子をいう。本明細書中に記載される量子ドットは任意の薬物にコンジュゲート化され得る。この薬物は、任意の生物体にとって治療的に有効であっても有効でなくてもよい。これに関して、これらの量子ドットは候補薬物にコンジュゲート化され得、適切な分野の当業者は、この候補薬物が、任意の生物体全体に対する治療効果または有益な効果を有し得ると、合理的に考える。
【0047】
本発明の量子ドットまたは本発明の量子ドットのシリーズは、半導体シェルを有し得る、すなわち、半導体を含むシェル内にカプセル化され得る。「半導体シェル」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットの外部表面上に堆積された半導体材料の薄層(典型的には1〜10原子の層厚)をいう。この「半導体シェル」は、量子ドット自体とは異なる半導体材料で構成される。この半導体シェルは任意の半導体を含み得る。好ましくは、この半導体シェルは、ZnS、CdS、CdSe、CdTe、GaAsまたはAlGaAsを含む。同様に、本発明の量子ドットまたは本発明の量子ドットのシリーズは、ポリマービーズ内にカプセル化され得る。このポリマービーズは任意のポリマーを含み得る。好ましくは、このポリマービーズは、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル(polyvinylbenzyl chloride)、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸) (poly (lactide-co-glycolide))、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリスルホンまたはそれらの組み合わせもしくはコポリマーのようなポリマーを含む。
【0048】
(量子ドットのシリーズの説明)
【0049】
本発明はまた、合金化された半導体量子ドットのシリーズを提供する。本明細書中で使用する場合、用語「シリーズ」とは、量子ドットの群をいう。量子ドットのシリーズは、任意の特定の数の個々の量子ドットに限定されない。これに関して、このシリーズは任意の数の量子ドットを含み得るが、但し、シリーズ中のドットの数は1より大きい。本発明
の合金化された半導体量子ドットのシリーズの合金化された半導体量子ドットの各々は、少なくとも2つの半導体の合金を含み、かつ均質な組成を有する。また、このシリーズの
合金化された半導体量子ドットの各々のサイズは、平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内である。用語「平均サイズの量子ドット」とは、本明細書中で使用する場合、所定のシリーズの量子ドットのサイズの全ての平均と等しいサイズを有する量子ドットをいう。平均サイズの量子ドットは、そのシリーズの量子ドットとして実際に存在していてもいなくてもよい。句「平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内」とは、本明細書中で使用する場合、そのシリーズの量子ドットが、平均サイズの量子ドットのサイズの±5%で、サイズが本質的に等しいことを意味する。シリーズの合金化された半導体量子ドットの各々は同じ合金を含むが、少なくとも2つの半導体のモル比において変動する。すなわち、これらの量子ドットは、それらを構成する半導体に関して同じ化学的組成を有するが、各量子ドットは、それを構成する異なるモル比の半導体を有する。例えば、CdTeおよびCdSeを含む量子ドットの所定のシリーズについて、全ての量子ドットがCdSeTeを含む。しかし、このシリーズの1つのドットのモル比は1:1であり得るが、一方で別の量子ドットのモル比は1:2であり得る等。さらに、このシリーズの合金化された半導体量子ドットに関して、そのシリーズの合金化された半導体量子ドットのうち少なくとも1つは、少なくとも2つの半導体のモル比に非線形に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる。
【0050】
本発明はまた、濃度勾配量子ドットのシリーズを提供する。このシリーズの各量子ドットは、第1の半導体および第2の半導体の合金を含む。各量子ドットについて、第1の半導
体の濃度は、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に増大し、第2の半導体の
濃度は、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで徐々に減少する。この様式で、二方向の濃度勾配が、量子ドットの半径に沿って確立される。本発明のシリーズの濃度勾配量子ドットに関して、量子ドットのコアから量子ドットの表面まで第1の半導体の濃度が増
大する勾配および量子ドットのコアから量子ドットの表面まで第2の半導体の濃度が減少
する勾配は、シリーズの量子ドット間で変動する。言い換えると、第2の半導体に対する
第1の半導体のモル比が1:1である、量子ドットの半径に沿った地点は、そのシリーズ内の濃度勾配量子ドットの各々について異なる。合金化された半導体量子ドットのシリーズと同様に、濃度勾配量子ドットのシリーズの各量子ドットのサイズは、平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内であり、各濃度勾配量子ドットは同じ半導体を含む。
【0051】
本明細書中に記載される本発明の量子ドットのシリーズに関して、当業者は、本明細書中に開示される本発明の個々の量子ドットに適用される限定および説明が、本発明のシリーズの量子ドットにも適用され得ることを認識している。
【0052】
(量子ドットを使用する方法)
【0053】
本発明の量子ドットは、多数のin vitroおよびin vivoの方法において有用であり、特
に、量子ドットが生体分子または任意の薬物のような生物学的因子にコンジュゲート化された場合に有用である。本明細書中で使用する場合、用語「in vitro」とは、その方法が宿主内で生じないことを意味する。本明細書中で使用する場合、用語「in vivo」とは、
その方法が宿主またはその任意の部分内で生じることを意味する。これらの方法は本発明によってさらに提供される。
【0054】
これに関して、本発明は、サンプル中の標的を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ド
ット(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)分光法を介してサンプルを分
析することによってサンプルの分光シグネチャーを得る工程であって、この分光シグネチャーがサンプル中の標的の存在または非存在を示す工程。
【0055】
本発明はまた、サンプル内の標的の位置を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット
(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)サンプルまたはその切片を画像
化することによってサンプル内の標的の位置を検出する工程。
【0056】
本発明はまた、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾
配量子ドット(これらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合し、この標的は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に
、このサンプルまたはその切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0057】
本発明は、in vivoで標的の位置を検出する方法を提供する。この方法は以下の工程を
含む:(i)合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット(これらのうちいず
れかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子は宿主中の標的と特異的に結合する、工程、(ii)生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)この宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって
、in vivoで標的の位置を検出する工程。
【0058】
本発明は、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法
は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドット(こ
れらのうちいずれかは生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子が宿主中の標的と特異的に結合し、この標的は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)この生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、この宿主、その切片または細胞を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0059】
同様に、本発明の量子ドットのシリーズは、多数のin vitroおよびin vivoの方法にお
いて有用であり、特に、このシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されており、その結果、異なる生物学的因子の各々が独自のモル比の少なくとも2つの半導体を有する量子ドットに対応する場合に有用である。当業者は、本発明の任意の量子ドットのシリーズの使用により、1つより多い標的の同時の検出またはモニタリングを提供できることを理解している。
【0060】
これに関して、本発明はまた、サンプル中の1つより多い標的を検出する方法を提供す
る。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシ
リーズまたは濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)分光法を介してサンプルを分析す
ることによってサンプルの分光シグネチャーを得る工程であって、この分光シグネチャーがサンプル中の1つより多い標的の存在または非存在を示し、それによってサンプル中の1つより多い標的を検出する、工程。
【0061】
本発明はまた、サンプル内の1つより多い標的の位置を検出する方法を提供する。この
方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシリーズま
たは濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによっ
てサンプル内の1つより多い標的の位置を検出する工程。
【0062】
本発明はさらに、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)サンプルを、合金化された半導体量子ドットのシリーズ
または濃度勾配量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)と接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合し、これらの標的の各々は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、このサン
プルまたはその切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程。
【0063】
in vivoで1つより多い標的の位置を検出する方法が本発明によって提供される。この方法は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットのシリーズまたは濃度勾配量
子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合する、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、(iii)この宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで1つより多い標的の位置を検出する工程。
【0064】
本発明はまた、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法を提供する。この
方法は以下の工程を含む:(i)合金化された半導体量子ドットのシリーズまたは濃度勾配
量子ドットのシリーズ(いずれかのシリーズの量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されている)を宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合し、これらの標的の各々は生物学的プロセスにおいて機能している、工程、(ii)これらの生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、この宿主、そのサンプル
またはその切片を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリング
する工程。
【0065】
本明細書中で使用する場合、用語「標的」とは、量子ドットにコンジュゲート化された生物学的因子に特異的に結合する任意の実体をいう。例えばこの標的は、タンパク質、核酸分子、それらのいずれかのフラグメント、低分子薬物、細胞、組織または薬物代謝産物であり得る。タンパク質である適切な標的には、抗体またはそのフラグメント、ペプチド、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、腫瘍関連タンパク質、細胞表面レセプター、凝固因子、疾患または状態に関連するタンパク質などが挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、句「〜に特異的に結合する」が、サンプルまたは宿主内の大部分の他の実体の結合を排除するような様式で結合が生じることを一般に意味することを認識している。標的-生物学的因子結合相互作用は典型的に、約マイクロモル濃度〜約ピコモル濃度の範囲内の解離定数KDを有する。句「生物学的因子を標的と特異的に結合させる(工程)」とは、本明細書中で使用する場合、生物学的因子が標的と特異的に結合する条件を提供することをいう。このような条件は、特定のパラメータ(例えば、塩濃度、pH、温度、標的の濃度、生物学的因子の濃度)を変動させることによって、当業者により経験的に決定される。当業者は、これらのパラメータが、標的に対する生物学的因子の特異的結合に影響を与えることを理解している。典型的には、常にではないが、この生物学的因子を標的と特異的に結合させるのに適切な条件は生理学的条件であり、その結果、本明細書中に記載されるin vivoの方法において、適切な条件とは、この生物学的因子が標的と特異的に結合するのに充分な時間期間を提供することであり得る。
【0066】
本発明のin vitroの方法(すなわち、サンプル中の標的を検出する方法、サンプル中の1つより多い標的を検出する方法、およびin vitroで生物学的プロセスをモニタリングす
る方法)に関して、このサンプルは、任意のサンプル(例えば、血液、リンパ、管流体(ductal fluid)、組織、細胞培養物、単一の細胞、尿、生検など)であり得る。このサンプルは、任意の供給源(例えば、宿主、動物、培養細胞株、植物および腫瘍)からも得ることができる。用語「宿主」および「生物体全体」とは、本明細書中で使用する場合、例えば細菌、酵母、真菌、植物および哺乳動物を含む、任意の生きた生物体をいう。好ましくはこの宿主は哺乳動物である。本発明の目的のために、哺乳動物にはRodentia目(例えばマウス)およびLogomorpha目(例えばウサギ)が挙げられるがこれらに限定されない。これらの哺乳動物は、Feline(ネコ)およびCanine(イヌ)を含むCarnivora目由来であることが好ましい。これらの哺乳動物は、Bovine(ウシ)およびSwine(ブタ)を含むArtiodactyla目由来、またはEquine(ウマ)を含むPerssodactyla目由来であることがより好ましい。これらの哺乳動物は、Primates目(CeboidもしくはSimoid(サル))のもの、またはAnthropoids目(ヒトおよび類人猿)のものであることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0067】
本発明の1実施形態において、この供給源は、正常な罹患していない状態を示し得る。
あるいは、哺乳動物のような供給源は疾患または状態を有し、その結果、この方法は、この疾患または状態の検出または予後を達成する。本発明の好ましい実施形態において、この疾患は、肺癌、脳癌、卵巣癌、子宮癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、乳癌、腺癌、グリオーマ、骨癌などが挙げられるがこれらに限定されない癌である。癌を検出する本発明の方法は、皮膚表面の近くに位置する皮膚および乳房の腫瘍を検出するために特に有用である。
【0068】
本明細書中に記載される本発明のin vitroの方法のいくつかにおいて、このサンプルは、分光シグネチャーを得るために、分光法を介して分析される。「分光法」とは、本明細書中で使用する場合、分子がどのように放射線を吸収するかに基づいて分子を分析するための任意の技術を意味する。当業者は、例えば、紫外-可視(UV-VIS)分光法、赤外(IR)分光法、蛍光分光法、ラマン分光法、質量分析法および核磁気共鳴(NMR)を含む多数の分光法が当該分野で公知であることを認識している。本発明の方法について、このサンプルは、好ましくは蛍光分光法を介して分析される。より好ましくは、このサンプルは、可視〜赤外蛍光分光法を介して分析され、最も好ましくは、このサンプルは、近赤外および遠赤色蛍光を介して分析される。用語「分光シグネチャー」とは、本明細書中で使用する場合、サンプルに対して分光法を実施した際に結果として得られるパターン、プロットまたはスペクトルをいう。標的に結合した生物学的因子を含むサンプルの得られた分光シグネチャーは、コントロール(ここで、この標的はサンプル中にも宿主中にも存在しない)の分光シグネチャーと比較され得る。
【0069】
本発明の、標的の位置を検出する方法または1つより多い標的の位置を検出する方法に
関して、用語「位置」とは、本明細書中で使用する場合、標的がサンプルまたは宿主内で見出される物理的な場所または部位をいう。この位置は、細胞に関する位置、すなわち細胞内の位置であり得る。あるいは、標的の位置は、組織または器官に関する位置であり得る。標的の位置はまた、生物体全体、植物全体または動物全体に関する位置であり得る。この位置は、宿主もしくは動物の表面上に存在し得るか、または宿主もしくは動物内に存在し得る。好ましくは、標的の位置は、動物または宿主内の深部、すなわち数層の組織の下に存在する。
【0070】
標的の位置は、標的に結合したコンジュゲート化された量子ドットを用いてサンプルを画像化する工程を介して決定される。例えば、X線コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像化(MRI)、ポジトロン断層撮影(PET)および光学画像化を含む、多数の画像化方法が当該分野で公知である。好ましくは、この画像化は蛍光を介して実施される。より好ましくは、この画像化は、可視〜赤外蛍光を介して実施され、最も好ましくは、この画像化は、近赤外および遠赤色蛍光を介して実施される。当業者は、全てではないものの大部分の画像化の形態が、量子ドットによって放出される波長の検出を含むことを認識している。本明細書中で議論したような独自の光学特性を有する本発明の量子ドットは、近赤外スペクトル内の発光ピーク波長を有し得る。これに関して、本発明の量子ドットの画像化を必要とする方法は、近赤外および遠赤色の発光ピーク波長の検出を含み得る。当業者はまた、量子ドットのこの特性が、宿主または動物内の深部に存在する標的の画像化を可能にすることを理解している。
【0071】
用語「生物学的プロセス」とは、本明細書中で使用する場合、宿主の身体中または身体上で生じる任意の生理学的または分子的な事象をいう。この生物学的プロセスは、例えば、分子的プロセス(例えば、シグナル伝達経路、化学反応、酵素反応、結合反応)、細胞性のプロセス(例えば、有糸分裂、細胞質分裂、細胞運動、細胞増殖、細胞分化、細胞溶解、エンドサイトーシス、食作用、エキソサイトーシス、細胞融合)、生理学的プロセス(例えば、血餅形成)などであり得る。生物学的プロセスは、刺激に応答して生じるプロセスであり得るか、または刺激なしに生じ一定の時間期間にわたって生じるプロセスであり得る。刺激は、生物体全体にとって外因性(天然に存在しない)または内因性(天然に存在する)であり得る。この刺激は持続時間において変動し得る。この刺激は、絶え間ないか、または一回だけ生じる短い事象であり得る。この刺激は、短い反復刺激でもあり得る。本発明の方法において使用するために適切な刺激には、薬物またはホルモンの注射、光への曝露、疼痛、電気パルス、磁場、温度などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書中に記載される量子ドットは、医薬組成物のような組成物として形成され得る。量子ドットを含む医薬組成物は、1つより多い活性成分(例えば、異なる生物学的因子にコンジュゲート化された1つより多い量子ドット)を含み得る。あるいは、この医薬組成物は、生物学的因子にコンジュゲート化された量子ドット以外に、医薬的に活性な因子または薬物と組み合わせて量子ドットを含み得る。
【0073】
量子ドットを含む医薬組成物は、担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。この担体は任意の適切な担体であり得る。好ましくは、この担体は医薬的に許容される担体である。医薬組成物に関して、この担体は、従来より使用される任意の担体であり得、化学-物理的
考慮事項(例えば、可溶性および活性化合物との反応性の欠如)および投与経路によってのみ限定される。以下に記載される医薬組成物に加えて、本発明の方法の量子ドットは、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)またはリポソームとして製剤化され得ることが、当業者により理解される。
【0074】
本明細書中に記載される医薬的に許容される担体(例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤および希釈剤)は当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。好ましい医薬的に許容される担体は、活性因子に対して化学的に不活性な担体および使用条件下で有害な副作用も毒性も有さない担体である。
【0075】
担体の選択は、特定の量子ドットおよびそれにコンジュゲート化された生物学的因子によって、ならびに化合物および/またはインヒビターを投与するために使用される特定の
方法によって一部決定される。従って、本発明の方法の医薬組成物の種々の適切な製剤が存在する。経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋内投与、腹腔内投与、直腸投与および膣投与のための以下の製剤は例示であり、決して限定するものではない。当業者は、本発明の量子ドットを投与するこれらの経路が公知であり、特定の量子ドットを投与するために1つより多い経路を使用することができるものの、特定の
経路が別の経路よりもより即座かつより有効な応答を提供し得ることを理解する。
【0076】
これらの製剤のうち、注射可能な製剤が本発明に従って好ましい。注射可能な組成物のための有効な医薬的担体の要件は当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, BankerおよびChalmers編,238-250ページ(1982)ならびにASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel,第4版,622-630ページ(1986)を参照のこと)。
【0077】
局所的製剤が当業者に周知である。このような製剤は、皮膚への適用のために本発明の状況において特に適切である。
【0078】
経口投与に適切な製剤は以下からなり得る:(a)希釈剤(例えば、水、生理食塩水また
はオレンジジュース)中に溶解された有効量の量子ドットのような、液体溶液;(b)各々が固体または顆粒として所定量の活性成分を含む、カプセル、サシェ剤(sachet)、錠剤、ロゼンジおよびトローチ;(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁物;および(e)適切なエマルジョン。液体製剤は、水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコール)のような希釈剤を、医薬的に許容される界面活性剤の添加ありまたはなしのいずれかで含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤および不活性フィラー(filler)(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびトウモロコシデンプン)を含む、通常の硬質の殻または軟質の殻のゼラチンタイプのものであり得る。錠剤形態は以下のうち1つより多くを含み得る:ラクトース、スクロース、
マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝化剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、および医薬的に適合性の賦形剤。ロゼンジ形態は、当該分野で公知のように、香料(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)、ならびに活性成分に加えてこのような賦形剤を含む、不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)、エマルジョン、ゲルなど中に活性成分を含む香剤中に活性成分を含み得る。
【0079】
単独または互いにおよび/もしくは他の適切な成分と組み合わせた量子ドットは、吸入
を介して投与されるエアロゾル製剤にされ得る。これらのエアロゾル製剤は、加圧された受容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。これらはまた、例えばネビュライザーまたはアトマイザー中の、加圧されない調製物のための医薬として製剤化され得る。このようなスプレー製剤はまた、粘膜にスプレーするために使用され得る。
【0080】
非経口投与に適切な製剤には、水性および非水性の等張の滅菌注射溶液(これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、およびこの製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)ならびに水性および非水性の滅菌懸濁物(これは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および防腐剤を含み得る)が挙げられる。量子ドットは、医薬的な担体中の生理学的に許容される希釈剤(例えば、医薬的に許容される界面活性剤(例えば、石鹸または洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー(carbomer)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤および他の医薬的アジュバントの添加ありまたはなしで、滅菌の液体または液体の混合物(水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連の糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリド))中で投与され得る。
【0081】
非経口製剤において使用され得る油には、石油、動物油、植物油または合成油が挙げられる。油の特定の例には、ピーナツ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、石油および鉱油が含まれる。非経口製剤における使用に適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルが、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0082】
非経口製剤における使用に適切な石鹸には、脂肪のアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤には以下が挙げられる:(a)カチオ
ン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライドおよびアルキルピリジニウムハライド)、(b)アニオン性洗剤(例えば、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリール
およびスルホン酸オレフィン、硫酸アルキル、硫酸オレフィン、硫酸エーテルおよび硫酸モノグリセリド、ならびにスルホコハク酸アルキル、スルホコハク酸オレフィン、スルホコハク酸エーテルおよびスルホコハク酸モノグリセリド)、(c)非イオン性洗剤(例えば
、脂肪アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、(d)両性洗剤(例えば、アルキル-b-アミノプロピオネートおよび2-アルキル-イミダゾリン第4級アンモニウム塩)、ならびに(e)これらの混合物。
【0083】
非経口製剤は典型的に、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の活性成分を含む。防腐剤お
よび緩衝剤が使用され得る。注射の部位での刺激を最小化または排除するために、このような組成物は、約12〜約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1種より多い非イオン性界面活性剤を含み得る。このような製剤中の界面活性剤の量は典型的に、約5重量%〜約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤には、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステ
ル(例えばモノオレイン酸ソルビタン)および酸化プロピレンとプロピレングリコールとの縮合によって形成される疎水性基部を有する酸化エチレンの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、単位用量または多用量の密封容器(例えば、アンプルおよびバイアル)で提示され得、使用の直前に注射のための滅菌液体賦形剤(例えば水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存され得る。即席の注射溶液および懸濁物は、上記の種類の滅菌の粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
【0084】
さらに、量子ドットまたはこのような化合物および/もしくはHsp90のインヒビターを含む組成物は、種々の基剤(例えば、乳化基剤または水溶性基剤)と混合することによって、坐剤にされ得る。膣投与に適切な製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーの製剤として調製できる。
【0085】
当業者は、本発明の方法の量子ドットが任意の数の方法で改変され得、その結果量子ドットの効力がこの改変を介して増大されることを容易に理解する。例えば、量子ドットまたはこの量子ドットにコンジュゲート化された生物学的因子は、直接的にかまたはリンカーを介して間接的にかのいずれかで、標的化部分にコンジュゲート化され得る。量子ドットまたは生物学的因子を標的化部分にコンジュゲート化させる実施は、当該分野で公知である。例えば、Wadwaら, J. Drug Targeting 3: 111 (1995)および米国特許第5,087,616号を参照のこと。用語「標的化部分」とは、本明細書中で使用する場合、細胞表面レセプターを特異的に認識してこれに結合し、その結果この標的化部分が、その表面上でレセプターが発現される細胞の集団への量子ドットおよび/または生物学的因子の送達を指向する、任意の分子または因子をいう。標的化部分には、抗体またはそのフラグメント、ペプチド、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、および細胞表面レセプターに結合する任意の他の天然に存在するリガンドまたは天然に存在しないリガンドが挙げられるがこれらに限定されない。用語「リンカー」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドットまたは生物学的因子を標的化部分に架橋する任意の因子または分子をいう。当業者は、量子ドットまたは生物学的因子の機能に必要でない量子ドットまたは生物学的因子上の部位が、リンカーおよび/または標的化部分を結合するのに理想的な部位であり、但し、このリンカーおよび/または標的化部分は、一旦量子ドットまたは生物学的因子に結合すると、その量子ドットまたは生物学的因子の機能(すなわち、検出可能なエネルギーを吸収および放射する能力または標的と特異的に結合する能力)を妨害しないことを認識している。
【0086】
あるいは、本発明の量子ドットは、デポー形態へと改変され得、その結果、量子ドットがそれを投与した身体中に放出される様式は、時間および身体内の位置に関して制御される(例えば、米国特許第4,450,150号を参照のこと)。デポー形態の量子ドットは、例え
ば、量子ドットおよび多孔性材料(例えばポリマー)を含む移植可能な組成物であり得、ここで、この量子ドットは、この多孔性材料によってカプセル化されるか、またはこの多孔性材料中に拡散される。次いで、このデポーは身体内の所望の位置へと移植され、その量子ドットが、多孔性材料を介して拡散することによって所定の速度でインプラントから放出される。
【0087】
さらに、本発明の方法は、その効力を増強する因子の存在下または非存在下での量子ドットの投与を含み得るか、あるいはこの方法は、他の適切な成分(例えば、量子ドットおよび/もしくは生物学的因子を宿主内での分解から保護し得る成分、または量子ドットの宿主からの排出もしくは細胞取り込みを防止し得る成分)の投与をさらに含み得る。
【0088】
本発明の方法の目的のために、投与される量子ドットの量または用量は、合理的な時間枠にわたって動物において応答をもたらすのに充分であるべきである。特に、量子ドットの用量は、投与の時点から約1〜2時間以内に、そうでない場合には3〜4時間以内に、生物学的因子をその標的と特異的に結合させるのに充分であるべきである。この用量は、特定の量子ドットおよび/または量子ドットにコンジュゲート化された生物学的因子の効力、
および動物(例えばヒト)の状態、ならびに処置すべき動物(例えばヒト)の体重によって決定される。投与される用量を決定するための多数のアッセイが当該分野で公知である。本発明の目的のために、所定用量の量子ドットの哺乳動物への投与の際に生物学的因子が宿主内のその標的と特異的に結合する程度を、異なる用量の量子ドットを各々が与えられた一組の哺乳動物中の哺乳動物の間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与すべき開始用量を決定するために使用され得る。特定用量の投与の際に量子ドットにコンジュゲート化された生物学的因子が宿主内のその標的と特異的に結合する程度は、宿主またはその切片を画像化することによって決定され得る。
【0089】
この用量はまた、特定の量子ドットの投与に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。最終的に、担当医が、種々の因子(例えば、年齢、体重、全般的健康状態、食事、性別、投与すべき量子ドットおよび投与経路)を考慮して、各個々の患者を処置するために用いる本発明の化合物またはインヒビターの投薬量を決定する。
【0090】
本明細書中に記載される量子ドットまたは量子ドットを含むシリーズを使用する本発明の方法に加えて、これらの量子ドットは、光電子的方法において、または光電子的デバイスとして使用され得る。例えば、これらの量子ドットは、発光ダイオードまたは太陽電池として使用され得る。例えば、Huynhら, Advanced Functional Materials, 13: 73-79 (2003)、Millironら, Advanced Materials, 15: 58-61 (2003)、Schlampら, Journal of Applied Physics, 82, 5837-5842 (1997)を参照のこと。所望の電子特性を有するバルク材料が利用可能でない場合、これらの量子ドットがバルク材料の代わりに使用され得る。この例において、これらの量子ドットは、基材上に整列または堆積される。例えば、支持体基材上の薄いフィルムもしくは薄いフィルムの層として、または別の電子材料上もしくはその周りのコーティングとしてアレイ中にある。引き続いて、支持体基材および層状量子ドットフィルムまたは他のコーティングされた電子材料は、必要に応じて、電子デバイスおよび光電子デバイスにおける使用のために現在利用可能な独自の特性の量子ドットを有するバルク半導体材料と類似の様式で処理され得る。
【0091】
(量子ドットを作製する方法)
【0092】
本発明はさらに、本発明の量子ドットを作製する方法および本発明の量子ドットを含むシリーズを作製する方法を提供する。これに関して、本発明は、少なくとも2つの半導体
の合金を含む量子ドットを作製する方法もまた提供する。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、一定のモル比で少なくとも2つの半導体の前駆体を含む第2の溶液を提供する工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形
成を引き起こす工程、および(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。この方法により、少なくとも2つの半導体の合金を含む量子ドットが作
製される。
【0093】
本発明は、2つの半導体ABおよびACの合金を含む、三元合金化された半導体量子ドット
を作製する方法をさらに提供し、この方法において、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。
【0094】
本発明はまた、三元合金化された半導体量子ドットのシリーズを作製する方法を提供し、この方法において、各量子ドットは2つの半導体ABおよびACの合金を含み、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、このシリーズ中に少なくとも1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、このシリーズの他の量子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程。
【0095】
第1の半導体ABおよび第2の半導体ACを含む、三元濃度勾配量子ドットを作製する方法もまた本発明によって提供され、この方法において、Aは第1の半導体および第2の半導体に
共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のうち1つのみにお
いて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こ
す条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、BおよびCの各々は
、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液を第1の溶液に
添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、および(iv)その条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程。
【0096】
本発明は、三元濃度勾配量子ドットのシリーズを作製する方法を提供し、この方法において、各量子ドットは第1の半導体ABおよび第2の半導体ACを含み、Aは第1の半導体および第2の半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のう
ち1つのみにおいて見出される種である。この方法は以下の工程を含む:(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさな
い条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、Bお
よびCの各々は、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、(iii)第2の溶液
を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程、(iv)その条件を
ナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、このシリーズの少なくとも1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、このシリーズの他の量
子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程。
【0097】
本発明の量子ドットを作製する方法に関して、句「ナノ結晶の形成を引き起こす条件」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドット(ナノ結晶)が形成する環境をいう。量子ドット(ナノ結晶)形成に適切な条件は当業者によって経験的に決定され得、この当業者は、この条件がその量子ドットを構成する半導体に一部依存することを認識している。この量子ドットが2つの半導体CdSeおよびCdTeを含む場合、適切な条件は、前駆体を合わせ
、それらを熱い(200℃より高い)溶媒(例えば、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド)中に激しく攪拌しながら導入することによって達成される。ナノ結晶の形成を引き起こす条件のさらなる説明については実施例1を参照のこと。句「ナノ結晶の成長および形成を
停止させる条件」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドット(ナノ結晶)が形成せず、以前に形成されたナノ結晶が成長を停止する環境を意味する。量子ドット(ナノ結晶)が形成しない適切な条件もまた、当業者によって経験的に決定され得、この当業者は、この条件がその量子ドットを構成する半導体に一部依存することを認識している。この量子ドットが2つの半導体CdSeおよびCdTeを含む場合、ナノ結晶の成長および形成が無視できるように溶媒温度が充分低い(典型的には、200℃未満の温度であり、理想的には100℃未満の温度である)場合に、適切な条件が達成される。ナノ結晶の成長および形成を停止させる条件のさらなる説明については、実施例1を参照のこと。
【0098】
用語「前駆体」とは、本明細書中で使用する場合、元素形態でかまたは化合物の一部としてかのいずれかの、半導体の元素をいう。例えば、2つの半導体CdSeおよびCdTeの前駆
体は、Cd、SeおよびTeである。これらの半導体を含む量子ドットを作製する方法において、SeおよびTeは、典型的にはそれらの元素状態で第2の溶液中に存在するが、Cdは一般に、酸化カドミウムまたはジメチルカドミウムのいずれかで、化合物として第2の溶液中に提供される。
【0099】
句「共通する種」および「2つの半導体のうち1つにおいて見出される種」は、例によって最良に説明される。例えば、2つの半導体CdSeおよびCdTeについて、共通する種はCdで
あり、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種は、SeおよびTeの両方である。
【0100】
句「反応を限定する濃度」とは、本明細書中で使用する場合、量子ドット(ナノ結晶)の形成である反応を限定する濃度をいう。反応を限定する濃度は、当業者によって経験的に決定され得る。任意の特定の理論に拘束されず、この方法によって作製される量子ドットは、どの前駆体が第2の溶媒中に反応を限定する濃度で存在するかに依存して、合金化
された半導体量子ドットまたは濃度勾配量子ドットのいずれかとなる。この前駆体が2つ
の半導体に共通する種である場合、合金化された半導体量子ドットが作製される。これらの前駆体の各々が2つの半導体のうち1つのみにおいて見出される種である場合、濃度勾配量子ドットが作製される。
【0101】
量子ドットのシリーズを作製する本発明の方法において、単一の量子ドットを生じる最初の4つの工程が少なくとも1回反復され、それによって少なくとも1つの他の量子ドット
が作製される。好ましくは、これらの工程は数回反復され、その結果数個の量子ドットが作製される。当業者は、各回においてこれらの工程が反復され、半導体の前駆体は、以前の回とは異なるモル比で第2の溶液中に存在し、その結果、作製された各量子ドットは独
自のモル比を有することを理解する。また、当業者は、量子ドットがバッチによって一般に作製され、その結果、特定のモル比を有する同じ量子ドットの数個のコピーが作製されることを理解している。
【0102】
以下の実施例は本発明をさらに例示するが、これらを本発明の範囲を限定すると解釈すべきでないことは当然である。
【実施例】
【0103】
(略号)
簡便さのために、以下の略号が本明細書中で使用されている:
CdO、酸化カドミウム;TOPO、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド;HAD、ヘキサデシル
アミン;TOP、トリ-n-オクチルホスフィン;TEM、透過型電子顕微鏡法;PL、光ルミネセンス;QD、量子ドット;CCD、電荷結合素子;x、0と1との間の任意の分率。
【0104】
(材料)
酸化カドミウム(CdO、99.99%)、セレンショット(Se、99.999%)、ビス(トリメチル
シリル)スルフィド(C6H18SSi2)、トリ-n-オクチルホスフィン(C24H51PすなわちTOP、90%)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(C24H51POすなわちTOPO、90%)およびヘキサデシルアミン(Cl6H35NすなわちHDA、90%)は、Aldrich(Milwaukee, WI)から購入した。
テルル粉末(Te、99.999%)は、Alfa Aesar (Ward Hill, MA)から購入した。ジメチルカ
ドミウム(C2H6Cd、97%)は、Strem(Newburyport, MA)から入手した。参照有機色素のAtto 565およびAtto 680は、Fluka(St Louis, MO)から購入した。使用した全ての他の溶媒はAldrichから購入した。透過型電子顕微鏡法(TEM)標本を調製するための炭素コーティングした銅グリッド(200メッシュ)は、Electron Microscopy Sciences(Fort Washington,
PA)から購入した。全ての材料は、供給者から受け取ったままで使用した。
【0105】
ストック溶液を調製し、他に示さない限り、乾燥ボックス中で室温にて窒素下で保存した。0.4Mのセレンストック溶液を、25mLのTOP中に0.79gのセレンショットを溶解することによって調製し、無色溶液を得た。同様に、0.4MのTeストック溶液を、25mLのTOP中に1.28gのテルル粉末を溶解することによって調製し、黄色の飽和溶液を得た。この溶液は、残留するテルル粉末を溶解するために、使用前に穏やかな加熱を必要とした。0.1MのCdSストック溶液を、25mLのTOP中に0.18mLのジメチルカドミウムおよび0.53mLのビス(トリメチルシリル)スルフィドを溶解することによって調製し、アルゴン下で保存し、冷蔵した。
【0106】
(実施例1)
この実施例は、合金化された半導体量子ドットのシリーズを作製する方法を実証する。
【0107】
全ての操作を、標準的な無気(エアレス)技術(Jolly, The Synthesis and Characterization of Inorganic Compounds, Waveland Press (1991) )を使用して、シュレンクラインでアルゴン下にて実施した。栓をしたサイドアームを備えた125mLの丸底フラスコに、9gのTOPO、3gのHDAおよび50mgのCdOを充填し、セプタムを嵌めた。このフラスコを加熱マントル中に配置し、シュレンクラインで排出した。このフラスコを150℃まで加熱し、20Paの減圧下で15分間脱気した。この時点でフラスコにアルゴンを満たし、温度を325℃まで上昇させた。CdOを完全に溶解した後、この温度を300℃まで下げ、数分間安定化させた。使用した総カルコゲナイドに関して2倍過剰のカドミウム前駆体を達成するように、シリンジに、所定の比率(すなわち、100:0、75:25、50:50、25:75または0:100)でセレンおよびテルルを含む、予め混合したSeおよびTeのストック溶液0.5mlを充填した。これは、0.4Mの総カルコゲン濃度を維持したが、100%のSeから100%のTeまで、SeおよびTeの相対量を変動させた。この溶液を迅速に(1秒未満で)、カドミウム前駆体を含む無色TOPO/HDA溶液に300℃で注入した。即座に、この溶液は無色から濃く着色した溶液へと変化し、その着色の程度は、ストック溶液の組成に依存した。所定の組成で所望のナノ結晶サイズを得るために必要とされる成長期間は、数回の試験の成長速度を観察した後に経験的に決定した。正確な成長時間が経過した後、反応混合物を冷(25℃)クロロホルム中でクエンチして、粒子のさらなる成長を停止させた。
【0108】
(実施例2)
この実施例は、コロイド安定性に対するカドミウム表面部位の役割の研究を実証する。
【0109】
コロイド安定性に対するカドミウム表面部位の役割を研究するために設計した実験について、添加されるカドミウム前駆体の量を所望のカドミウム:カルコゲン比を達成するよ
うに調整した変化のみを伴って、以前に記載された合成を利用した。水溶性量子ドット(QD)を、表面分子としてメルカプト酢酸を使用して、Chanら(Chanら, Science 281: 2016-2018 (1998) )が概略するとおりに調製した。
【0110】
(実施例3)
この実施例は、半導体シェル中にカプセル化された合金化された半導体量子ドットの合成を実証する。
【0111】
CdSe1-xTexのナノ結晶コアを、前記の節において概略した手順を使用して得た。これらのナノ結晶を、メタノールを用いた沈殿とその後の遠心分離とによって単離し、12gのTOPOを含む、栓をしたサイドアームを備えた125mLの丸底フラスコ中に配置した。この容器を加熱マントル中に配置し、シュレンクラインで排出した。次いで、このフラスコを75℃まで加熱し、20Paの減圧下で15分間脱気した。この時点でフラスコにアルゴンを満たし、温度を200℃まで上昇させた。CdSストック溶液の滴下によって、シェルをエピタキシャルに成長させた。最適なシェルの厚さは、CdSストック溶液を添加しながら、反応混合物からアリコートを周期的に採取し、PLピークの強度を観察することによって決定した。CdSストック溶液の添加を、PL発光強度の減衰が最初に示された時点で停止させた。CdSキャップされたCdSe1-xTexのナノ結晶を、メタノールを用いて沈殿させ、遠心分離し、上清をデカントし、保存のためにクロロホルム中に再分散させることによって、生の反応混合物から単離した。
【0112】
(実施例4)
この実施例は、合金化された半導体量子ドットの特徴を実証する。
【0113】
光ルミネセンススペクトルを、Spex FluoroMax-2分光計で獲得した。発光スペクトルを、475nmの励起波長を、2.0nmに設定した励起および発光のスリット幅と共に使用して取得した。記録したスペクトルを、波長依存的な検出器の応答について補正した。全てのサンプルの光学密度を、その励起波長において0.10と0.15との間に調整し、クロロホルムおよび水中の積分されたナノ結晶の発光をエタノールおよび水中の参照有機色素の発光と比較することによって、量子収率測定を行った。吸収スペクトルを、Shimadzu UV-2401PC走査型分光光度計を1.0nmのスリット幅で操作して記録した。透過型電子顕微鏡写真を、120kVの加速電圧で作動するPhilips CM200電子顕微鏡で得た。サンプルは、クロロホルム中のナノ結晶の希釈溶液5μLを炭素コーティングした銅グリッド上に配置し、減圧デシケータ中で一晩乾燥させることによって調製した。
【0114】
CdSe1-xTexナノ結晶の粉末サンプルを、クロロホルム中のナノ結晶をメタノールを用いて沈殿させ、その後遠心分離してナノ結晶のペレットを単離することによって得た。上清を廃棄し、各ペレットを一晩乾燥させ、次いで砕いて微細な粉末にし、この微細な粉末を0.5mmのキャピラリー中に密封し、キャピラリーの軸が主要な機器の軸と一致するように
、プラットホームの角度計に取り付けた。データを、0.71073Åの加重平均波長を有するMo Kα放射線を使用して収集した。これらのサンプルを、90秒間のデータ収集期間の間に
、機器の軸の周りで179°にわたって連続的に振動させた。データを、Bruker-AXS SMART6000 2次元CCD検出器回折システムを用いて記録し、BrukerのSMARTおよびGADDSソフトウェアを用いて処理して、標準強度 対 39.5°の最大回折角に対する回折角データ2θを得た。これらのデータを、バックグラウンドの低下を実施するために、PowderXソフトウェアプログラムを使用してさらに処理した。元素分析を、LECO Renaissance誘導結合プラズマ/飛行時間型質量分析計で実施した。希酸で処理した水性量子ドットコロイドを、微粒化チャンバ中に導入し、アルゴン緩衝ガスの流れによって、誘導結合型プラズマトーチへと運搬した。質量スペクトルを記録し、元素の存在量を、較正した標準データとの比較によって計算した。
【0115】
三元ナノ結晶を、所定の比率でセレンおよびテルルを含む予め混合されたストック溶液を、予め溶解させたカドミウム前駆体を含む配位溶媒中に注入することによって合成した。この組成範囲(x=0からx=1まで)にわたって固定したサイズを維持するために、Alivisatosおよび共同研究者らのストラテジーを、サイズの制御および集束のために使用した(Pengら, J. Am. Chem. Soc. 120: 5343-5344 (1998) )。これは、試薬の濃度および成長時間を注意深く制御することによって達成した。図1は、2.9±0.3nmの平均直径を有するCdSe1-xTexナノ結晶のシリーズについての光ルミネセンススペクトルを示す。この特定のサイズで、純粋なCdSeナノ結晶の発光波長は547nmであり、純粋なCdTeナノ結晶の発光波長は672nmである。三元ナノ結晶について、これらの発光波長は、テルルのモル分率が0.35と0.90との間である場合、二元ナノ結晶の発光波長よりもかなり長い。712nmでの最も長い発光波長および547nmでの最も短い波長に関して、発光最大は、粒子の実際のサイズを変化させずに、注入されたストック溶液のモル比を制御することによって、一方の端から他方の端まで連続的に変調され得る。組成が如何に発光波長を調節するかをさらに試験するために、テルル含量の関数としてPLエネルギー(図2)をプロットする。この曲線は、強い非線形の依存性を明らかにし、最も低い発光エネルギー(最も長い波長)が、その組成がテルルにおける約0.62のモル分率に対応するナノ結晶について生じることを明らかにしている。
【0116】
粒子サイズがサンプルシリーズを通じて一定であることを確認するために、ナノ結晶の透過型電子顕微鏡法(TEM)画像(図3)を得た。TEMデータの統計的分析は、2.9±0.3nm
(平均直径)の一定の粒子サイズを示している。粉末X線回折パターンは、これらの粒子が高度に結晶性であり、ウルツ(wurtzite)構造が、本発明者らの速い成長条件下で全ての組成について好まれることをさらに明らかにしている。さらに、元素分析を誘導結合型プラズマ質量分析法を使用することによって実施し、それにより、ナノ結晶の組成が、ストック溶液中のSe:Teモル比と比較してテルルに向けて傾斜していることが明らかとなっ
た。この組成の偏りは、テルルが、セレンと比較して、カドミウムに対するより高い反応性を有するという事実に起因している。
【0117】
粒子サイズの変動および測定誤差は、この非線形の関係を説明するほど充分大きいわけではなく、このことは、観察された波長の変化が組成の効果によって引き起こされることを示すことに留意することが重要である。この特定の系において、この組成依存性に寄与する2つの別個の源が存在する。第1はバルク材料において観察され得る現象から生じ、この場合、バンドギャップエネルギーは、合金の組成が変動する場合に変化する(Willardsonら, Compound Semiconductors, Reinhold, New York, (1962) )。他方は、このナノ結晶系の量子閉じ込め性質へと辿ることができる。最近、Poonらは、バルクCdSe1-xTexの組成依存的な光学特性を試験した(Poonら, J.Phys. : Condensed Matter 7: 2783-2799 (1995) )。彼らは、この特定の材料が、混合されたカルコゲナイド半導体ファミリーの他のメンバーよりも、かなり高い非線形効果を示すことに注目した。BernardおよびZunger(Bernardら, Phys. Rev. B 36: 3199-3226 (1987))によって開発されたモデルにおいて、以下の3つの因子が観察された非線形依存性に寄与すると考えられている:(i)変化する合金の組成の格子定数における変動から生じる体積変形(volume deformation)、(ii)化学-電気陰性度効果、および(iii)合金中のアニオン-カチオン結合長の内部緩和。このモデルは、合理的に成功して、バルクCdSe1-xTexの組成依存的な特性を説明するために使用されてきた(Poonら, J Phys. : Condensed Matter 7: 2783-2799 (1995) )。これらの結果は、三元ナノ結晶についての非線形の組成依存的なバンドギャップが、バルク系の挙動に関連することを示す。なぜなら、これらの微視的(microscopic)機構は両方の系について妥当であるからである。
【0118】
全てのサンプルのPL量子収率は、クロロホルム中のキャップされていないサンプルについて、約15%〜20%の範囲で、組成非依存的であるように見えた。三元ナノ結晶をCdSでキ
ャップした後、PL量子効率は、室温で約40%〜60%まで上昇する。ChanおよびNie(Chanら, Science 281: 2016-2018 (1998))によって報告された手順を使用することによって、水溶性CdSe1-xTexナノ結晶およびCdSキャップされたCdSe1-xTexナノ結晶を調製した。キャッ
プされていないサンプルは、水性コロイドを得るためにこのような手順を使用する場合のキャップされていないCdSeナノ結晶について充分特徴付けられた挙動と類似のPL量子効率の低下を示す(Aldanaら, J. Am. Chem. Soc. 123, 8844-8850 (2001) )。この問題は、キャップされた量子ドットの場合には見られない。図4中に示される画像中に示されるように、PL強度において検出可能な低下は見られなかった。
【0119】
これらのコア-シェルナノ結晶は、生物学的緩衝溶液中で高度にルミネセントであるが
、これらのコロイドは、2〜3週間後に溶液から沈殿する傾向を有し、これは、その表面を覆う親水性チオールの脱離に起因する可能性が最も高い。これらの水性コロイドの安定性を最大化するために、表面上のカドミウム部位の数が長期のコロイド安定性を増大させ得る程度を試験した。CdSe1-xTexナノ結晶のシリーズを、5:1、2:1、1:1、1:2および1:5の
カドミウム:カルコゲン反応体比で合成した。次いで、これらのナノ結晶を表面交換手順
(このとき、TOPO表面分子がメルカプト酢酸によって置換され、ナノ結晶が水性緩衝液(pH=8.5)中に再分散される)に供した。その粒子濃度を7.0μMに最初に調整し、同体積の開始サンプルを気密性のキュベット中に密封し、室温で暗中にて保存した。吸収測定を10週間の期間にわたって一定間隔で取得して、粒子濃度をモニタリングした。沈殿した粒子が、サンプルの取り扱いによって乱されることも溶媒中に再分散されることもないことを確実にするために注意を払った。粒子濃度を、吸収スペクトル中の第1の励起子ピークでの吸光度の値から計算した。
【0120】
全てのサンプルが数日間の初期期間の間に類似の沈殿傾向を示したが、安定な粒子濃度は、ナノ結晶表面上のカドミウム原子の豊富さと強い相関を示した(図5)。この結果は
、コロイド溶液および潜在的に光学特性を改善するために、ナノ結晶表面が合成の間に操作され得ることを示す。バイオコンジュゲート化された量子ドットを調製する方法の大多数がカドミウム-硫黄結合を介した表面誘導体化の1つまたは別の形態を利用しているという事実を考慮すると、ナノ結晶表面に関するこの知見は、明らかに実施上大きく重要なものである。
【0121】
結論として、広いスペクトル範囲にわたって高度にルミネセントな標識として作用し得る強固で高度に安定なコロイド状量子ドットを調製するための単純なストラテジーが本明細書中に報告される。非線形の関係が発光波長とナノ結晶の組成との間で見出される。この非線形の効果により、対応する二元の系で可能なものよりも広い範囲のスペクトル変調が可能であり、受容可能なPL発光波長の有用な範囲を有効に広げている(本発明者らの研究室における最近の研究は、粒子サイズを増大させることによって、変調可能な範囲を近赤外領域にまで広げることが可能であることを示している。本発明者らが観察した最も長い波長は約850nmである。なおより広いスペクトル範囲は、他の三元材料(例えば、CdS1-xSex、CdS1-xTex、ZnSe1-xTex、Zn1-xCdxTe、Cd1-xHgxSなど)を使用することによって得ることができた。)。結果として、CdS1-xTexナノ結晶は、近赤外領域まで充分に、全可視スペクトルをカバーするルミネセントな標識として利用され得る。粒子サイズを一定に保つことによって、これらのナノ結晶は同じ表面曲率、同じ表面積および同じ拡散速度を有し、これらは全て、多重化した測定における実験的変数の数を簡約化(simplify)するために有利である。ルミネセンスな三元半導体量子ドットは、医学的診断、高スループットのスクリーニング、多パラメータの細胞標識およびin vivoの光学画像化において適用を見出すことが予測される(Hanら, Nat. Biotechnol. 19: 631-635 (2001); Chanら, Curr. Opin. Biotechnol. 13: 40-46 (2002); Bremerら, Nat. Med. 7: 743-748 (2001); Beckerら, Nat. Biotechnol. 19: 327-331 (2001); Zaheerら, Nat. Biotechnol. 19: 1148-1154 (2001)およびSevick-Muracaら, Curr. Opin. Chem. Biol. 6: 642-650 (2002))。
【0122】
(実施例5)
この実施例は、濃度勾配量子ドットのシリーズを作製する方法を実証する。
【0123】
9gのTOPO、3gのHDAおよび16mgのCdOを含む125mLの丸底フラスコを約150℃に加熱し、20Paの減圧下で15分間脱気した。次いで、このフラスコにアルゴンガスを満たし、その温度を325℃まで上昇させた。前駆体CdOを溶媒中に完全に溶解した後、その温度を300℃まで下げ、数分間安定化させた。試薬のモル比の簡便な制御のために、5つの予め混合したSeおよびTeの溶液を、100:0、75:25、50:50、25:75または0:100のSe:Teモル比で、0.4Mの総濃度で個々のストック溶液から調製した。カドミウムが豊富な条件下で勾配量子ドットを調製するために、約2.5mL(0.25mmol)の予め混合したSeおよびTeのストック溶液(4倍希釈したもの)を、2.0mmolのカドミウムを含む無色のTOPO/HDA溶液中に300℃の温度で注入した。これらの条件下で、カドミウム前駆体は、注入したSeおよびTeの総量の8倍過剰であった。
【0124】
(実施例6)
この実施例は、濃度勾配量子ドットの特徴付けを実証する。
【0125】
UV-VIS吸収スペクトルを、Shimadzu UV-2401 PC走査型分光光度計を1.0nmのスリット幅で操作して記録した。バンドギャップエネルギーの決定を、Fendlerおよび共同研究者ら(Tianら, Phys. Chem. 100: 8927-8939 (1996) )によって概略された方法を使用して吸収データを分析することによって行い、吸収の立ち上がり(onset)についての値を抽出し
た。光ルミネセンススペクトルを、Spex FluoroMax分光計で獲得した。発光スペクトルを、475nmの励起波長を、2.0nmに設定した励起および発光のスリット幅と共に使用して取得した。記録したスペクトルを、波長依存的な検出器の応答について補正した。全てのサンプルの光学密度を、その励起波長において0.10と0.15との間に調整し、クロロホルム中の積分されたナノ結晶発光をエタノール中の蛍光色素(Atto 565およびAtto 680, Fluka, Milwaukee, WD)の発光と比較することによって、量子収率測定を行った。透過型電子顕
微鏡写真を、90kVの加速電圧で作動するJEOL 1210電子顕微鏡で得た。サンプルは、クロ
ロホルム中のナノ結晶の希釈溶液を炭素コーティングした銅グリッド上に配置し、減圧デシケータ中で一晩乾燥させることによって調製した。
【0126】
エネルギー分散型x線(EDX)データを、EDAX光素子検出器を備えたPhilips XL30 ESEM-FEGで獲得し、EDAX Phoenix X-ray Microanalysis Systemで処理した。x線回折データを
、ナノ結晶ペレットを単離するためにメタノールを用いてクロロホルム中で最初に沈殿させその後遠心分離したCdSe1-xTexナノ結晶の粉末サンプルから得た。上清を廃棄し、各ペレットを一晩乾燥させ、次いで砕いて微細な粉末にし、この微細な粉末を0.5mmのキャピ
ラリー中に密封し、キャピラリーの軸が主要な機器の軸と一致するように、プラットホームの角度計に取り付けた。データを、0.71073Åの加重平均波長を有するMo Kα放射線を
使用して収集した。これらのサンプルを、90秒間のデータ収集期間の間に、機器の軸の周りで179°にわたって連続的に振動させた。データを、Bruker-AXS SMART6000 2次元CCD検出器回折システムを用いて記録し、BrukerのSMARTおよびGADDSソフトウェアを用いて処理して、標準強度 対 39.5°の最大回折角に対する回折角データを得た。
【0127】
最近の研究により、元素テルルは、セレンよりも、迅速な核形成および成長の条件下でカドミウムに対してかなり反応性であることが示された。反応性におけるこの差異に起因して、CdTeの成長速度は、CdSeの成長速度の約2倍であった。これらのデータを使用して
、濃度勾配量子ドットを合成するためのストラテジーを創出した。全ての試薬を、Se:Te
のモル比を正確に制御して、「シングルポット(single pot)」中に添加した。注入したカドミウムの量は、SeおよびTeの総モル量に対して大過剰(約8倍)であった。これらの
条件下で、供給不足の試薬は完全に消費されたが、大過剰の試薬は、反応の全過程の間ほぼ一定の濃度を維持した。速度論的分析および実験的測定の両方から、勾配構造を有する量子ドットが、カドミウムの豊富な条件下で作製され得ることが示された(図6を参照の
こと)。
【0128】
カドミウムの豊富な条件下で、本来のSeおよびTeの反応性における差異により、勾配合金構造を有する量子ドットが生じると予測された。熱TOPO中での迅速な粒子の核形成および成長の間に(Dabbousiら, J. Plays. Chem. B 101: 9463-9475, (1997) )およびPengら,
Am. Chem. Soc. 119: 7019-7029 (1997) )、初期のコアは、カドミウムに対するそのよ
り速い反応速度に起因して、Teが豊富である。遊離Teが反応混合物から枯渇するにつれて、CdSeの堆積が、結晶の成長にとってより重要となる。混合物中の全ての遊離のSeおよびTeが消費されると、粒子の成長は停止して、コアから表面へのTe濃度勾配を有する合金化された量子ドットを生成する。外層は主にCdSeからなるので、この層は、CdTeが豊富なコアのためのカプセル化シェルとして作用する。しかし、2つの連続工程で合成される従来のコア-シェルナノ結晶(Dabbousiら, J. Phys. Chem. B 101: 9463-9475 (1997)); Pengら, Am. Chem. Soc. 119: 7019-7029 (1997) )とは異なり、合金化された勾配ドットは単一の工程で調製され、Teが豊富なコアとSeが豊富なシェルとの間にはっきりした境界を有さなかった。上記で考慮しなかった潜在的な問題は、小さい方の粒子またはクラスターが溶解して大きい方の粒子またはクラスターの成長に寄与する、いわゆる「オストワルド熟成(成長)」効果(Pengら, Am. Chem. Soc. 120,5343-5344, (1998); Desmetら, Langmuir, 75,2327-2332, (1999) )であった。正味の効果は、勾配ドットを、均質なドットとより同様のものにする組成の平均化であった。しかし、この機構が重要になる前に成長がクエンチされるので、この複雑さは、この研究の主な結果を変化させなかった。
【0129】
(実施例7)
この実施例は、合金化された半導体量子ドット、濃度勾配量子ドットおよびコア-シェ
ル量子ドットの比較研究を実証する。
【0130】
図6は、4つの異なる型の半導体量子ドットの模式的構造およびそれらの蛍光発光スペクトルを示す。従来のCdTeコア/CdSeシェルの量子ドット(図6(1))を2工程の手順で合成し、ここで、4.5nmのCdTeコアを、0.7nmのCdSeシェルでコーティングした。逆コア-シェ
ル構造(図6(2))について、4.9nmのCdSe量子ドットを、0.5nmのCdTe層でコーティングした。これらのコアサイズおよびシェル厚で、両方の型のコア-シェルドットは、5.9nmの同じ全体的直径を有し、60%のSeおよび40%のTeの同じ元素組成を有した。結晶格子パラメータまたはバルクのCdSeおよびSdTeの密度のいずれかに基づく計算31により、互いに優れた一致(5%)をみる組成の結果が得られた。これらのコア-シェル構造とは別に、三元合金化された量子ドット(図6(3、均質))を、上で考察したように酸化カドミウムおよび8倍過剰の75:25(モル比)のSe:Teストック溶液を使用することによって調製した。これらの反応条件下で、得られた量子ドットは、コア-シェル構造と同じ、60%のSeおよび40%のTeの元素組成を有することが見出された。三元量子ドットのサイズは、僅かに異なる温度で、核形成速度の微妙な変調と共に、成長時間によって主に制御した。60%のSeおよび40%のTeの新たなストック溶液ならびに8倍過剰の酸化カドミウムを使用して、第2の型の三元合金化された量子ドット(図6(4、勾配))を調製し、そのために、粒子のサイズを異なる温度で、核形成速度によって主に制御した。この反応は通常完了するまで進められるので、勾配量子ドットは、ストック溶液と同じSe:Te比を有する。
【0131】
これらのコア-シェル構造および合金構造は、二元金属Ag-Auナノ結晶の構造(Mulvany Langmuir 12: 788-800 (1996); Linkら, J. Phys. Chem. B 103: 3529-3533, (1999); Mallinら, NanoLett. 2: 1235-1237 (2002)) と類似であり、元素データおよび構造データの両方によって支持された。ほぼ同一のサイズおよび組成で、量子ドットの内部構造(例えば、コア-シェルおよび合金)がそれらの光学特性に如何に影響を与えるかを試験した。図6(b)中に示されるように、コア-シェルCdTe-CdSeナノ結晶は強烈に蛍光性であった(702nmで発光ピーク)が、逆コア-シェルCdSe-CdTe量子ドットは、バンド端蛍光をほとんど示さなかった。CdTeはCdSeよりも低いバンドギャップを有し、有効なシェルを提供しない(表面トラップ部位での励起子再結合を引き起こす)ので、これは驚くべきことではない(Pengら, Am. Chem. Soc. 123: 183-184 (2001)およびTalapinら, Colloid Surf A 202: 145-154 (2002) )。比較して、両方の型の合金化された量子ドットは高度に蛍光性であったが、それらの発光スペクトルは、勾配構造については741nmに、均質構造については757nmにシフトした。注目すべきことに、合金化された量子ドットは、従来のコア-シェルドット(FWHM=30〜35nm)と類似の蛍光効率(QE=30〜60%)およびスペクトル幅(FWHM=35nm)を示した。この高い量子収率および狭いスペクトル幅は、この合金化された量子ドットがアモルファスクラスターの不均質集団を含まないが、構造において高度に結晶性であり、サイズにおいて単分散であることを示した。実際、粉末x線回折データ(示さず)により、全ての組成で三元粒子についての結晶性ウルツ型構造が確認され、中間の組成での相変化の可能性が排除された。
【0132】
図7は、反応速度論、元素組成および透過型電子顕微鏡法(TEM)の研究から得られた結果を示す。速度論データ(図7(a))は、CdTeの成長速度がCdSeの成長速度のほぼ2倍で
あり、三元ドットが、正確な組成および反応条件に依存して、中間の速度で成長したことを示す。元素分析データ(図7(b))により、合金化されたドットについての組成が、その成長の全過程の間にほぼ一定であることが明らかとなった。実際、延長された粒子成長の期間の後に、Te組成における約2%の僅かな低下だけが観察され、この期間の間に、粒子サイズは2nmから8nmに増大した。SeおよびTeの総量はカドミウムの8倍過剰に過ぎない(
無限過剰ではない)ので反応時間と共にTeについて小さい枯渇が発生するため、この低下は合理的であった。この元素データのセットは、三元量子ドットが、粒子の成長の開始から停止までほぼ均一な均質な合金構造を有するという強力な証拠を提供する。さらに、TEMデータ(図7(c))は、66%のTeの一定の組成で、優れたサイズの制御およびサイズの単分散性が三元量子ドットについて達成できたことを実証している。実際、元素組成データは、ストックのSe/Teモル比およびそれらの反応速度から予測された理論値と優れた一致をみせた。例えば、カドミウムが限定された条件下で、75:25、50:50および25:75の注入されたSe/Te比は、61:39、34:66および15:85のナノ結晶組成を生じ、これは、60:40、33:67および14:86の予測値とほぼ同一であった。
【0133】
合金化された内部構造についてのさらなる証拠は、これらの量子ドットが、二元のCdSeナノ結晶およびCdTeナノ結晶によって規定される波長範囲の外側の光を放射するように変調できるというものであった。図8は、CdSe量子ドット、CdTe量子ドットおよびCdSe1-xTex量子ドットの3つのサイズのシリーズ(セット)から得られた蛍光スペクトルを示す。3.5nmのサイズのシリーズにおいて、合金化された勾配ドットは、二元CdSeドットより145nm長く二元CdTeドットより50nm長い蛍光を放射した。5.0nmおよび6.5nmのサイズのシリーズにおいて、均質な合金化されたドットの発光スペクトルはそれぞれ、約800nmおよび825nmへと赤方にシフトした。これらのサイズのシリーズの各々において、TEMデータ(図8(d))によって判断したところ、粒子サイズは5〜10%以内で一定であった。最悪の場合のシナリオにおいて、CdTeドットのサイズは、平均(5.0nm)よりも10%大きく、CdSeTeドットのサイズは平均よりも10%小さかった。最も大きいCdTeドット(5.5nm)の発光波長は730nmであると予測され、これは、最も小さいCdSe0.34Te0.66ドット(4.5nm)の発光ピーク(780nm)よりもなお短い。この単純な統計的分析により、図3において観察された大きいスペクトルシフトの原因としての粒子サイズの変動が排除された。
【0134】
より定量的な様式で組成の効果を調査するために、広い範囲のサイズおよび組成の合金化された量子ドットを調製して特徴付けた。図9は、これらのドットについての吸収スペ
クトルおよび蛍光スペクトルを比較し、組成と吸収/発光エネルギーとの間の関係をさら
に示している。バルクデータもまた比較のために含める(WillardsonおよびGoering(編) Compound Semiconductors, Reinhold, New York(1962))。吸収および発光のデータは、高
品質の二元量子ドットについて報告されたもの(Pengら, Am. Chem. Soc.123: 183-184 (2001)およびTalapinら, Colloid Surf. A 202: 145-154 (2002))と類似した、いくつかの分解された電子遷移および明確なバンド端蛍光発光を示した。しかし、これらのプロットにより、組成と励起子吸収およびバンド端発光との間の顕著な非線形の関係が明らかとなった。この非線形の関係は、図8において報告された非常に大きいスペクトルシフトを説明した。実際、30%と100%との間のテルル組成を有する合金化された量子ドットは、親のCdSeドットおよびCdTeドットよりも長い波長で光を放射する。また、全てのサイズの均質な合金化されたドットが類似の非線形曲線に従い、約60%のテルル含量で最も低いエネルギー点に到達したことが明らかであった。
【0135】
バルク半導体合金の以前の研究は、「光学ボーイング(optical bowing)」と称される類似の非線形効果を報告している(WillardsonおよびGoering(編)Compound Semiconductors, Reinhold, New York, (1962)ならびにPoonら, Phys. Condensed Matter 7: 2783-2799(1995) )。CdSeTeにおいて観察されたバンドギャップの低下は、この合金ファミリーの他のメンバーと比較して特に顕著である。従って、同じ機構が巨視的材料および微視的(nanoscopic)材料の両方において作用する可能性が高い。Zungerおよび共同研究者らによって開発された理論的モデル(Bernardら, A. Phys. Rev. B 36: 3199-3226 (1987)およびWeiら, Appl. Phys. 87: 1304-1311 (2000) )において、観察された非線形効果は、合金中の異なるイオンが異なる原子サイズ、異なる電気陰性度値および異なる格子定数を有することを考慮することによって説明でき、予測することさえできた。特に、その平衡位置へのアニオン-カチオン結合の緩和は、局所的な構造の整列および有意なバンドギャップの低下を導いた。
【0136】
バルク合金化が機械的適用(例えば航空機)のための高い強度の材料、医療用インプラントのための生体適合性材料および光電子適用のための広範な半導体材料(例えば、ダイオードレーザーおよび検出器)を開発するために使用されてきたことには、留意する価値がある。合金化されたナノ構造について、これらの結果は、3つの因子(粒子のサイズ、
組成および内部構造)が、量子閉じ込め効果を制御するために使用され、個々の成分から入手不能な新たな特性または新規特性を提供し得ることを実証している。この洞察は、II−VIおよびIII−VIの両方の材料に基づいて三元および四元の種々の半導体量子ドットを
開発する可能性を開く(WillardsonおよびGoering(編) Compound Semiconductors, Reinhold, New York, (1962))。
【0137】
その近赤外および遠赤色蛍光特性に起因して、これらの合金化された量子ドットは、in vivoでの分子画像化における適用(Weisslederら, NatureBiotechnol. 17: 375-378 (1999); Bremerら, Nat. Med. 7: 743-748 (2001); Beckerら, Nat. Biotechnol. 19: 327-331 (2001); Zaheerら, Nat. Biotechnol. 19: 1148-1154 (2001); Sevick-Muracaら, Curr. Opin. Chem. Biol. 6: 642-650 (2002))、ならびに超高感度のバイオマーカー検出における適用(McWhorterら, Electrophoresis 21: 1267-1280 (2000)およびPatonayら, Anal. Chem. 63: A321-A326 (1991) )に充分適している。可視光は、細胞の画像化および組織診断のために使用されてきたが(Sokolovら, Curr. Opin. Chem. Biol. 6: 651-658 (2002)およびBrownら, Nat. Med. 7: 886-870 (2001))、より深い組織(ミリメートル)の光学画像化は、650〜900nmのスペクトル範囲の近赤外光の使用を必要とする。この波長範囲は、血液および水の主要な吸収ピークとは離れているので、in vivoの光学画像化のための「クリアな」ウインドウを提供する。従来の有機フルオロフォア(Weisslederら, NatureBiotechnol. 17: 375-378 (1999); Bremerら, Nat. Med. 7: 743-748 (2001); Beckerら, Nat. Biotechnol. 19: 327-331 (2001); Zaheerら, Nat. Biotechnol. 19: 1148-1154 (2001); Sevick-Muracaら, Curr. Opin. Chem. Biol. 6: 651-658 (2002); McWhorterら, Electrophoresis 21: 1267-1280 (2000); Patonayら, Anal. Chem. 63: A321-A326 (1991); Sokolovら, Curr. Opin. Chem. Biol. 6: 651-658 (2002)およびBrownら, Nat. Med. 7:886-870 (2001))と比較して、近赤外発光量子ドットは、より高感度のバイオマーカー検出および多色光学画像化を可能にするはずである。光子が限定されたin vivo条件(この条件では、光強度は散乱および吸収によって厳しく減衰されている)下では、量子ドットの大きい吸収係数(106/cm/Mのオーダー、一般的な有機色素の吸収係数よりも約10〜20倍大きい)が、充分なプローブ励起のために必須である。現在の単色分子画像化とは異なり、量子ドットを用いた多波長の光学画像化は、単一の転移腫瘍部位での単一の解剖学的構造についての比演算(ratioing)、空間的同時局在および定量的標的測定を可能にする。これらの生物学的な適用のために、合金化された量子ドットは、CdSeおよびCdTeの二元量子ドットについて報告された表面改変および架橋の手順を使用することによって、水溶性かつ生体適合性にされ得ることが留意される(Bruchezら, Science 281: 2013-2015 (1998); Chanら, Science 281: 2016-2018 (1998); Akermanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 12617-12621 (2002); Dubertretら, Science 298: 1759-1762 (2002); Wuら, Nat. Biotechnol. 21: 41-46 (2003)およびJaiswalら, Nat. Biotechnol. 21: 47-51 (2003) )。それらの光学特性(例えば、スペクトル幅、量子収率および光安定性)は、元の材料の光学特性と類似である。
【0138】
結論として、粒子サイズを変化させることなく量子閉じ込めを継続的に変調するための、合金化された半導体量子ドット(CdSeTe)を大量に調製するための新規手順が本明細書中で報告される。粒子サイズに加えて、これらの結果は、2つの新たなパラメータ(組成および内部構造)が、合金化された半導体量子ドットの光学特性および電子特性を変調するために利用可能であることを実証している。組成の変調の概念はもちろん新しくはないが、本発明者らは、この概念がコロイド状の半導体系において如何に作用するかをおそらく初めて実証した。広範に変調可能な光学特性および電子特性により、この新たなクラスの合金化された量子ドットは、新規ナノ構造を設計することならびに多重光学コード化およびin vivoでの分子画像化のための近赤外発光プローブを開発することにおいて、刺激的な可能性を開くはずである。Hanら, Nat.Biotechnol.,19, 631-635 (2001); Chanら, Current Opinion Biotech. 13, 40-46 (2002)。
【0139】
本明細書中で引用された刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参考として援用されることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に示されるのと同じ範囲まで、参考として本明細書により援用される。
【0140】
本発明を説明することに関して、特に、添付の特許請求の範囲に関して、用語「1つの
(「a」および「an」および「the」ならびに類似の指示対象)」の使用は、本明細書中で他のように示されるか文脈によって明確に否定されるかしない限り、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、他のように示されない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で他のように示されない限り、その範囲内に入る各別個の値を個々に言及する簡略な方法として働くことが単に意図されるに過ぎず、各別個の値は、本明細書中で個々に列挙したかのように明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他のように示されるか文脈によって他のように明確に否定されるかしない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書中に提供される任意および全ての例または例示的な語句(例えば、「例えば、〜のような、〜など」)の使用は、単に本発明をよりよく例示することを意図しており、他のように特許請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中の語句は、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈すべきではない。
【0141】
本発明者らが知る本発明を実施するためのベストモードを含む本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に記載される。好ましい実施形態のバリエーションは、上記の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が適切な場合にこのようなバリエーションを使用することを予測しており、本明細書中に具体的に記載されたものとは異なったやり方で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法令によって許容される場合、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変および等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせは、本明細書中で他のように示されるか文脈によって他のように明確に否定されるかしない限り、本発明によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】純粋なCdSeから純粋なCdTeまでの範囲の組成にわたる、2.9±0.3nm(平均直径)の固定サイズでのCdSe1-xTexナノ結晶の光ルミネセンススペクトル。(A)x=0、(B)x=0.20、(C)x=0.37、(D)x=0.62、(E)x=0.91、(F)x=1.0。
【図2】2.9±0.3nm(平均直径)のCdSe1-xTexナノ結晶についての、組成の関数としての平均発光エネルギーのプロット。組成決定における不確定性は、エラーバーによって示されるとおり、±0.02単位である。
【図3】示されるとおりの種々の組成でのCdSe1-xTexナノ結晶の透過型電子顕微鏡写真。シリーズ中の各サンプルの合成は、可能な限り3nmに近い平均粒子サイズを確実にするように実施した。
【図4】(a)室内光および(b)紫外線照明下での、クロロホルム中に分散されたCdSキャップされたCdSe1-xTex量子ドットの画像(左側のバイアル)または水中に溶解されたCdSキャップされたCdSe1-xTex量子ドットの画像(右側のバイアル)。蛍光強度は、クロロホルム中および水中で類似であった。
【図5】粒子表面上に種々の程度の過剰なカドミウムを有する水溶性三元量子ドットの長期安定性の比較。5:1(カドミウム大過剰、紫色)、2:1(カドミウム過剰、青色)、1:1(等量のカドミウムおよびカルコゲン、緑色)、1:2(カドミウム不足、黄色)および1:5(大いに不足したカドミウム、赤色)の開始カドミウム:カルコゲン比でサンプルを合成した。
【図6】コア-シェルおよび合金化されたCdSe1-xTex量子ドットの内部構造および光学特性。(a)4つの異なる型の量子ドットの模式図;および(b)対応する蛍光発光スペクトル。(1)従来のコア-シェルCdTe-CdSeドット;(2)逆コア-シェルドット;(3)均質な合金化されたドット;および(4)合金化された勾配ドット。全てのドットを、約10%の相対的な標準偏差を伴い、5.9nm(コア+シェル)の平均直径およびCdSe0.6Te0.4の全体的組成を有するように合成した。ナノ結晶の各バッチ内で、サイズおよび組成の両方についての標準偏差は約5%であった。
【図7】ナノ結晶の成長の間の、均質なCdSe0.34Te0.66量子ドットから得られた成長速度論、元素組成およびTEMの構造データ。(a)時間に対する粒子体積のプロット;(b)時間に対する粒子組成のプロット;および(c)異なる成長時間で反応混合物から取り出した合金化された量子ドットのTEM画像。記号xは、合金中のテルルのモル分率である。詳細な考察については本文を参照のこと。
【図8−1】3つの粒子サイズでの、CdSe量子ドット、CdTe量子ドットおよびCdSe0.34Te0.66量子ドット間の発光スペクトルの比較。各サイズのシリーズ(a)〜(c)について、二元ドットおよび合金化されたドット(均質または勾配のいずれか)は、同じ全体的直径(正確に5〜10%以内)を有するように合成した。
【図8−2】(d):異なる組成を有する5nmの量子ドット(一定サイズ)のTEM画像。
【図9】異なるサイズの均質なCdSe1-xTex量子ドットについての組成と吸収/発光エネルギーとの間の関係。(a)2.7nm〜8.6nmのサイズ範囲でのCdSe0.34Te0.66量子ドットのUV-Vis吸収スペクトルおよび光ルミネセンススペクトル;(b)テルル含量の関数としての吸収立ち上がりエネルギー(eV)のプロット;および(c)テルル含量の関数としての発光ピーク波長(nm)のプロット。吸収立ち上がりは、発光最大よりもエネルギーにおいて僅かに低いことに留意のこと。
【図10】純粋なCdSe量子ドット、純粋なCdTe量子ドットおよび合金化されたCdSe1-xTex量子ドットから得られたx線粉末回折データ。全てのドットのサイズは直径約5nmであり、アスタリスク(*)は偽シグナルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドットであって、均質な
組成を有しかつ少なくとも2つの半導体のモル比に非線形に関連するバンドギャップエネ
ルギーによって特徴付けられる、半導体量子ドット。
【請求項2】
少なくとも約15%の量子収率を有する、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項3】
前記量子収率が約30%と約60%との範囲内である、請求項2に記載の合金化された半導体
量子ドット。
【請求項4】
前記量子収率が約40%と約60%との範囲内である、請求項3に記載の合金化された半導体
量子ドット。
【請求項5】
前記少なくとも2つの半導体の各々が、平均格子パラメータの約10%以内の格子パラメータを有する、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項6】
前記少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つが、II族−VI族の半導体またはIII族
−V族の半導体である、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項7】
CdSeTe、CdSSe、CdSTe、ZnSeTe、ZnCdTe、CdHgS、HgCdTe、InGaAs、GaAlAsおよびInGaNからなる群より選択される合金を含む、請求項6に記載の合金化された半導体量子ドット

【請求項8】
前記合金がCdSeTeを含みかつ分子式CdSe1-xTexを有するか、CdSSeを含みかつ分子式CdS1-xSexを有するか、CdSTeを含みかつ分子式CdS1-xTexを有するか、ZnSeTeを含みかつ分子式ZnSe1-xTexを有するか、ZnCdTeを含みかつ分子式Zn1-xCdxTeを有するか、CdHgSを含み
かつ分子式Cd1-xHgxSを有するか、HgCdTeを含みかつ分子式HgCdTeを有するか、InGaAsを
含みかつ分子式InGaAsを有するか、GaAlAsを含みかつ分子式GaAlAsを有するか、あるいは、InGaNを含みかつ分子式InGaNを有し、式中、xは0と1との間の任意の分率である、請求
項7に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項9】
前記少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体である、請求項1に記
載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項10】
前記化合物半導体がCdSeである、請求項9に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項11】
前記化合物半導体がCdTeである、請求項9に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項12】
前記少なくとも2つの半導体がCdSeおよびCdTeである、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項13】
直径が15nm未満である、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項14】
直径が8nm未満である、請求項13に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項15】
生物学的因子にコンジュゲート化されている、請求項1に記載の合金化された半導体量
子ドット。
【請求項16】
前記生物学的因子が生体分子または薬物である、請求項15に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項17】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項18】
半導体シェルを有する、請求項1に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項19】
前記半導体シェルが、ZnS、CdS、CdSe、CdTe、GaAsまたはAlGaAsを含む、請求項18に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項20】
ポリマービーズ内にカプセル化されている、請求項1に記載の合金化された半導体量子
ドット。
【請求項21】
前記ポリマービーズが、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリスルホンおよびそれらの組み合わせまたはコポリマーからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項20に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項22】
合金化された半導体量子ドットのシリーズであって、
シリーズの合金化された半導体量子ドットの各々が、少なくとも2つの半導体の合金を
含みかつ均質な組成を有し、
各量子ドットのサイズが平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内であり、
シリーズの合金化された半導体量子ドットの各々が同じ合金を含むが少なくとも2つの
半導体のモル比において変動し、かつ
シリーズの合金化された半導体量子ドットのうち少なくとも1つが、少なくとも2つの半導体のモル比に非線形に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる、合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項23】
前記シリーズの合金化された半導体量子ドットの全てが、少なくとも2つの半導体のモ
ル比に非線形に関連するバンドギャップエネルギーによって特徴付けられる、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項24】
前記合金化された半導体量子ドットが少なくとも約15%の量子収率を有する、請求項22
に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項25】
前記量子収率が約30%と約60%との範囲内である、請求項24に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項26】
前記量子収率が約40%と約60%との範囲内である、請求項25に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項27】
前記少なくとも2つの半導体の各々が、平均格子パラメータの約10%以内の格子パラメータを有する、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項28】
前記少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つが、II族−VI族の半導体またはIII族
−V族の半導体である、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項29】
前記量子ドットが、CdSeTe、CdSSe、CdSTe、ZnSeTe、ZnCdTe、CdHgS、HgCdTe、InGaAs
、GaAlAsおよびInGaNからなる群より選択される合金を含む、請求項28に記載の合金化さ
れた半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項30】
前記合金がCdSeTeを含みかつ分子式CdSe1-xTexを有するか、CdSSeを含みかつ分子式CdS1-xSexを有するか、CdSTeを含みかつ分子式CdS1-xTexを有するか、ZnSeTeを含みかつ分子式ZnSe1-xTexを有するか、ZnCdTeを含みかつ分子式Zn1-xCdxTeを有するか、CdHgSを含み
かつ分子式Cd1-xHgxSを有するか、HgCdTeを含みかつ分子式HgCdTeを有するか、InGaAsを
含みかつ分子式InGaAsを有するか、GaAlAsを含みかつ分子式GaAlAsを有するか、あるいは、InGaNを含みかつ分子式InGaNを有し、式中、xは0と1との間の任意の分率である、請求
項29に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項31】
前記少なくとも2つの半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体である、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項32】
前記化合物半導体がCdSeである、請求項31に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項33】
前記化合物半導体がCdTeである、請求項31に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項34】
前記少なくとも2つの半導体がCdSeおよびCdTeである、請求項22に記載の合金化された
半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項35】
前記半導体ドットの直径が15nm未満である、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項36】
前記半導体ドットの直径が8nm未満である、請求項35に記載の合金化された半導体量子
ドットのシリーズ。
【請求項37】
前記半導体ドットの各々が生物学的因子にコンジュゲート化されている、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項38】
前記生物学的因子が生体分子または薬物である、請求項37に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項39】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項38に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項40】
前記半導体ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されており、その結果、異なる生物学的因子の各々が、独自のモル比の少なくとも2つの半導体を有する量子
ドットに対応する、請求項37に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項41】
前記生物学的因子の各々が生体分子または薬物である、請求項40に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項42】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項41に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項43】
前記合金化された半導体量子ドットの各々が半導体シェルを有する、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項44】
前記半導体シェルが、ZnS、CdS、CdSe、CdTe、GaAsまたはAlGaAsを含む、請求項43に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項45】
前記量子ドットの各々がポリマービーズ内にカプセル化されている、請求項22に記載の合金化された半導体量子ドット。
【請求項46】
前記ポリマービーズが、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリスルホンおよびそれらの組み合わせまたはコポリマーからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項45に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズ。
【請求項47】
サンプル中の標的を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項15に記載の合金化された半導体量子ドットと接触させる工程であ
って、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分光シグネチャーを
得る工程であって、該分光シグネチャーがサンプル中の標的の存在または非存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項48】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記哺乳動物がヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出を達成する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
サンプル中の1つより多い標的を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項40に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズと接触させ
る工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分光シグネチャーを
得る工程であって、該分光シグネチャーがサンプル中の1つより多い標的の存在または非
存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項52】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳動物がヒトである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出を達成する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
サンプル内の標的の位置を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項15に記載の合金化された半導体量子ドットと接触させる工程であ
って、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによってサンプル内の標的の位置を検
出する工程、
を含む、方法。
【請求項56】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記哺乳動物がヒトである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記疾患が癌である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
サンプル内の1つより多い標的の位置を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項40に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズと接触させ
る工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによってサンプル内の1つより多い標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項61】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳動物がヒトである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記疾患が癌である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)サンプルを請求項15に記載の合金化された半導体量子ドットと接触させる工程であ
って、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合し、該標的が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該サンプルまたはその
切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程、を含む、方法。
【請求項66】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記哺乳動物がヒトである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)サンプルを請求項40に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズと接触させ
る工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合し、該標的の各々が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該サンプルまたはその
切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程、を含む、方法。
【請求項70】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記哺乳動物がヒトである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
in vivoで標的の位置を検出する方法であって、
(i)請求項15に記載の合金化された量子ドットを宿主に投与する工程であって、生物学
的因子が宿主中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)該宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項74】
前記宿主が哺乳動物である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記哺乳動物がヒトである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
in vivoで1つより多い標的の位置を検出する方法であって、
(i)請求項40に記載の合金化された量子ドットのシリーズを宿主に投与する工程であっ
て、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)該宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで1つより
多い標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項80】
前記宿主が哺乳動物である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記哺乳動物がヒトである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)請求項15に記載の合金化された半導体量子ドットを宿主に投与する工程であって、
生物学的因子が宿主中の標的と特異的に結合し、該標的が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該宿主、その切片また
は細胞を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする工程

を含む、方法。
【請求項86】
前記宿主が哺乳動物である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記哺乳動物がヒトである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)請求項40に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズを宿主に投与する工程
であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合し、該標的の各々が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該宿主、そのサンプル
またはその切片を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリング
する工程、
を含む、方法。
【請求項92】
前記宿主が哺乳動物である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記哺乳動物がヒトである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも2つの半導体の合金を含む量子ドットを作製する方法であって、
(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、
(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、一定のモル比で少なくとも2つの半導
体の前駆体を含む第2の溶液を提供する工程、
(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程

(iv)該条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、
を含み、その際、少なくとも2つの半導体の合金を含む量子ドットが作製される、方法。
【請求項98】
2つの半導体ABおよびACの合金を含む、三元合金化された半導体量子ドットを作製する
方法であって、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、2つの半導体のう
ち1つにおいて見出される種であり、該方法は、
(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、
(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、
(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程

(iv)該条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、
を含む、方法。
【請求項99】
三元合金化された半導体量子ドットのシリーズを作製する方法であって、各量子ドットは2つの半導体ABおよびACの合金を含み、Aは2つの半導体に共通する種であり、BおよびC
は各々、2つの半導体のうち1つにおいて見出される種であり、該方法は、
(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、
(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、Aは、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、
工程、
(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程

(iv)該条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および
(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、該シリーズ中に少なくとも1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、
該シリーズの他の量子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程、
を含む、方法。
【請求項100】
少なくとも2つの半導体の合金を含む合金化された半導体量子ドットであって、少なく
とも2つの半導体のうち1つのみからなる量子ドットの発光ピーク波長によって規定される波長範囲内にない発光ピーク波長を有する、半導体量子ドット。
【請求項101】
第1の半導体および第2の半導体の合金を含む濃度勾配量子ドットであって、第1の半導
体の濃度が、該量子ドットのコアから該量子ドットの表面まで徐々に増大し、第2の半導
体の濃度が、該量子ドットのコアから該量子ドットの表面まで徐々に減少する、濃度勾配量子ドット。
【請求項102】
少なくとも約15%の量子収率を有する、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項103】
前記量子収率が約30%と約60%との範囲内である、請求項102に記載の濃度勾配量子ドッ
ト。
【請求項104】
前記量子収率が約40%と約60%との範囲内である、請求項103に記載の濃度勾配量子ドッ
ト。
【請求項105】
前記第1の半導体および第2の半導体の各々が、平均格子パラメータの約10%以内の格子
パラメータを有する、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項106】
前記第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つが、II族−VI族の半導体また
はIII族−V族の半導体である、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項107】
CdSeTe、CdSSe、CdSTe、ZnSeTe、ZnCdTe、CdHgS、HgCdTe、InGaAs、GaAlAsおよびInGaNからなる群より選択される合金を含む、請求項106に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項108】
前記合金がCdSeTeを含みかつ分子式CdSe1-xTexを有するか、CdSSeを含みかつ分子式CdS1-xSexを有するか、CdSTeを含みかつ分子式CdS1-xTexを有するか、ZnSeTeを含みかつ分子式ZnSe1-xTexを有するか、ZnCdTeを含みかつ分子式Zn1-xCdxTeを有するか、CdHgSを含み
かつ分子式Cd1-xHgxSを有するか、HgCdTeを含みかつ分子式HgCdTeを有するか、InGaAsを
含みかつ分子式InGaAsを有するか、GaAlAsを含みかつ分子式GaAlAsを有するか、あるいは、InGaNを含みかつ分子式InGaNを有し、式中、xは0と1との間の任意の分率である、請求
項107に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項109】
前記第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体である、請求
項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項110】
前記化合物半導体がCdSeである、請求項109に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項111】
前記化合物半導体がCdTeである、請求項109に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項112】
前記合金がCdSeおよびCdTeを含む、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項113】
直径が15nm未満である、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項114】
直径が8nm未満である、請求項113に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項115】
生物学的因子にコンジュゲート化されている、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット

【請求項116】
前記生物学的因子が生体分子または薬物である、請求項115に記載の濃度勾配量子ドッ
ト。
【請求項117】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項116に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項118】
半導体シェルを有する、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項119】
前記半導体シェルが、ZnS、CdS、CdSe、CdTe、GaAsまたはAlGaAsを含む、請求項118に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項120】
ポリマービーズ内にカプセル化されている、請求項101に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項121】
前記ポリマービーズが、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリスルホンおよびそれらの組み合わせまたはコポリマーからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項120に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項122】
濃度勾配量子ドットのシリーズであって、
各量子ドットが第1の半導体および第2の半導体の合金を含み、
各量子ドットについて、第1の半導体の濃度が、該量子ドットのコアから該量子ドット
の表面まで徐々に増大し、第2の半導体の濃度が、該量子ドットのコアから該量子ドット
の表面まで徐々に減少し、
該量子ドットのコアから該量子ドットの表面まで第1の半導体の濃度が増大する勾配お
よび該量子ドットのコアから該量子ドットの表面まで第2の半導体の濃度が減少する勾配
は、該シリーズの量子ドット間で変動し、
各量子ドットのサイズが平均サイズの量子ドットのサイズの約5%以内であり、かつ
各量子ドットが同じ半導体を含む、
濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項123】
量子ドットの各々が少なくとも約15%の量子収率を有する、請求項122に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項124】
前記量子収率が約30%と約60%との範囲内である、請求項123に記載の濃度勾配量子ドッ
トのシリーズ。
【請求項125】
前記量子収率が約40%と約60%との範囲内である、請求項124に記載の濃度勾配量子ドッ
トのシリーズ。
【請求項126】
前記第1の半導体および第2の半導体の各々が、平均格子パラメータの約10%以内の格子
パラメータを有する、請求項122に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項127】
前記第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つが、II族−VI族の半導体また
はIII族−V族の半導体である、請求項122に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項128】
前記量子ドットが、CdSeTe、CdSSe、CdSTe、ZnSeTe、ZnCdTe、CdHgS、HgCdTe、InGaAs
、GaAlAsおよびInGaNからなる群より選択される合金を含む、請求項127に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項129】
前記合金がCdSeTeを含みかつ分子式CdSe1-xTexを有するか、CdSSeを含みかつ分子式CdS1-xSexを有するか、CdSTeを含みかつ分子式CdS1-xTexを有するか、ZnSeTeを含みかつ分子式ZnSe1-xTexを有するか、ZnCdTeを含みかつ分子式Zn1-xCdxTeを有するか、CdHgSを含み
かつ分子式Cd1-xHgxSを有するか、HgCdTeを含みかつ分子式HgCdTeを有するか、InGaAsを
含みかつ分子式InGaAsを有するか、GaAlAsを含みかつ分子式GaAlAsを有するか、あるいは、InGaNを含みかつ分子式InGaNを有し、式中、xは0と1との間の任意の分率である、請求
項128に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項130】
前記第1の半導体および第2の半導体のうち少なくとも1つが化合物半導体である、請求
項122に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項131】
前記化合物半導体がCdSeである、請求項130に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項132】
前記化合物半導体がCdTeである、請求項130に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項133】
前記合金がCdSeおよびCdTeを含む、請求項122に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ

【請求項134】
前記半導体ドットの各々の直径が15nm未満である、請求項122に記載の濃度勾配量子ド
ットのシリーズ。
【請求項135】
前記半導体ドットの各々の直径が8nm未満である、請求項134に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項136】
前記半導体ドットの各々が生物学的因子にコンジュゲート化されている、請求項122に
記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項137】
前記生物学的因子が生体分子または薬物である、請求項136に記載の濃度勾配量子ドッ
トのシリーズ。
【請求項138】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項137に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項139】
量子ドットの各々が異なる生物学的因子にコンジュゲート化されており、その結果、該異なる生物学的因子の各々が、第1の半導体および第2の半導体の独自の勾配を有する量子ドットに対応する、請求項136に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項140】
前記生物学的因子の各々が生体分子または薬物である、請求項139に記載の濃度勾配量
子ドットのシリーズ。
【請求項141】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項140に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項142】
前記濃度勾配量子ドットの各々が半導体シェルを有する、請求項122に記載の濃度勾配
量子ドットのシリーズ。
【請求項143】
前記半導体シェルが、ZnS、CdS、CdSe、CdTe、GaAsまたはAlGaAsを含む、請求項142に
記載の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項144】
前記量子ドットの各々がポリマービーズ内にカプセル化されている、請求項122に記載
の濃度勾配量子ドットのシリーズ。
【請求項145】
前記ポリマービーズが、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニルベンジル、ポリビニルトルエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリスルホンおよびそれらの組み合わせまたはコポリマーからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項144に記載の濃度勾配量子ドット。
【請求項146】
サンプル中の標的を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項115に記載の濃度勾配量子ドットと接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分光シグネチャーを
得る工程であって、該分光シグネチャーがサンプル中の標的の存在または非存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項147】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記哺乳動物がヒトである、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出を達成する、請求項147に記載の方法。
【請求項150】
サンプル中の1つより多い標的を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項139に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズと接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)分光法を介してサンプルを分析することによってサンプルの分光シグネチャーを
得る工程であって、該分光シグネチャーがサンプル中の1つより多い標的の存在または非
存在を示す、工程、
を含む、方法。
【請求項151】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記哺乳動物がヒトである、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出を達成する、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
サンプル内の標的の位置を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項115に記載の濃度勾配量子ドットと接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによってサンプル内の標的の位置を検
出する工程、
を含む、方法。
【請求項155】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記哺乳動物がヒトである、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
前記疾患が癌である、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
サンプル内の1つより多い標的の位置を検出する方法であって、
(i)サンプルを請求項139に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズと接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)サンプルまたはその切片を画像化することによってサンプル内の1つより多い標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項160】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記哺乳動物がヒトである、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項160に記載の方法。
【請求項163】
前記疾患が癌である、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)サンプルを請求項115に記載の濃度勾配量子ドットと接触させる工程であって、生物学的因子がサンプル中の標的と特異的に結合し、該標的が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該サンプルまたはその
切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程、を含む、方法。
【請求項165】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記哺乳動物がヒトである、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項165に記載の方法。
【請求項168】
in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)サンプルを請求項139に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズと接触させる工程であって、生物学的因子の各々がサンプル中の異なる標的と特異的に結合し、該標的の各々が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該サンプルまたはその
切片を画像化することによって、in vitroで生物学的プロセスをモニタリングする工程、を含む、方法。
【請求項169】
前記サンプルが哺乳動物から得られる、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
前記哺乳動物がヒトである、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項169に記載の方法。
【請求項172】
in vivoで標的の位置を検出する方法であって、
(i)請求項115に記載の濃度勾配ドットを宿主に投与する工程であって、生物学的因子が宿主中の標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)該宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項173】
前記宿主が哺乳動物である、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記哺乳動物がヒトである、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項172に記載の方法。
【請求項177】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項172に記載の方法。
【請求項178】
in vivoで1つより多い標的の位置を検出する方法であって、
(i)請求項139に記載の濃度勾配量子ドットのシリーズを宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合する、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、
(iii)該宿主、その切片またはその細胞を画像化することによって、in vivoで1つより
多い標的の位置を検出する工程、
を含む、方法。
【請求項179】
前記宿主が哺乳動物である、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
前記哺乳動物がヒトである、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の予後を達成する、請求項179に記載の方法。
【請求項182】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項178に記載の方法。
【請求項183】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項178に記載の方法。
【請求項184】
in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)請求項115に記載の濃度勾配量子ドットを宿主に投与する工程であって、生物学的因子が宿主中の標的と特異的に結合し、該標的が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該宿主、その切片または細胞を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする工程

を含む、方法。
【請求項185】
前記宿主が哺乳動物である、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記哺乳動物がヒトである、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項185に記載の方法。
【請求項188】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項184に記載の方法。
【請求項189】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項184に記載の方法。
【請求項190】
in vivoで生物学的プロセスをモニタリングする方法であって、
(i)請求項139に記載の合金化された半導体量子ドットのシリーズを宿主に投与する工程であって、生物学的因子の各々が宿主中の異なる標的と特異的に結合し、該標的の各々が生物学的プロセスにおいて機能している、工程、
(ii)該生物学的因子を標的と特異的に結合させる工程、および
(iii)一定の時間期間にわたってかまたは刺激の前および後に、該宿主、そのサンプル
またはその切片を画像化することによって、in vivoで生物学的プロセスをモニタリング
する工程、
を含む、方法。
【請求項191】
前記宿主が哺乳動物である、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
前記哺乳動物がヒトである、請求項191に記載の方法。
【請求項193】
前記哺乳動物が疾患または状態を有し、前記方法が該疾患または状態の検出または予後を達成する、請求項191に記載の方法。
【請求項194】
前記標的の位置が宿主内の深部に存在する、請求項190に記載の方法。
【請求項195】
前記画像化する工程が、近赤外または遠赤色の発光ピーク波長を検出することを含む、請求項190に記載の方法。
【請求項196】
第1の半導体ABおよび第2の半導体ACを含む、三元濃度勾配量子ドットを作製する方法であって、Aは第1の半導体および第2の半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のうち1つのみにおいて見出される種であり、該方法は、
(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、
(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、BおよびCの各々は、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、
(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程
、および
(iv)該条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、
を含む、方法。
【請求項197】
三元濃度勾配量子ドットのシリーズを作製する方法であって、各量子ドットは第1の半
導体ABおよび第2の半導体ACを含み、Aは第1の半導体および第2の半導体に共通する種であり、BおよびCは各々、第1の半導体および第2の半導体のうち1つのみにおいて見出される
種であり、該方法は、
(i)ナノ結晶の形成を引き起こす条件下に第1の溶液を提供する工程、
(ii)ナノ結晶の形成を引き起こさない条件下に、A、BおよびCを一定のモル比で含む第2の溶液を提供する工程であって、BおよびCの各々は、反応を限定する濃度で第2の溶液中に存在する、工程、
(iii)第2の溶液を第1の溶液に添加することによってナノ結晶の形成を引き起こす工程

(iv)該条件をナノ結晶の成長および形成を停止させる条件に変更する工程、および
(v)工程(i)〜(iv)を少なくとも1回反復することによって、該シリーズの少なくとも1つの他の量子ドットを作製する工程であって、各回において、A、BおよびCのモル比は、該
シリーズの他の量子ドットのA、BおよびCのモル比とは異なる、工程、
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−267989(P2010−267989A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−161981(P2010−161981)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2006−532489(P2006−532489)の分割
【原出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(505407553)インディアナ ユニヴァーシティ リサーチ アンド テクノロジー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】