説明

吊り天井用リスティングワイヤの固定構造

【課題】 吊り天井仕様車、ハーフトリム仕様車の双方にルーフサイドパネルを共用化でき、かつリスティングワイヤの固定作業が容易にできるリスティングワイヤの固定構造を提供する。
【解決手段】 ルーフサイドパネル10のフランジ11にパネル側に向く係合突片12を形成し、この係合突片12に切欠き13,14を形成し、係合突片12にホルダ20を係着し、ホルダ20にリスティングワイヤ30を固着することにより、ルーフサイドパネル10の共用化を図る。また、パネル10の切欠き13,14内に差し込む転び防止用リブ27,29をホルダ20に形成し、転び防止用リブ27,29と手前側脚部21とでルーフサイドパネル10を表裏側から挟み込んで車幅方向の位置ズレを確実に抑え、かつリスティングワイヤ30取付時の転び等の不具合を解消する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、吊り天井用リスティングワイヤの固定構造に係り、特に、吊り天井仕様車とハーフトリム仕様車との間でパネルの共用化を可能にするとともに、取付作業性を高めた吊り天井用リスティングワイヤの固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、同一車種で吊り天井仕様車と吊り天井を設定しないハーフトリム仕様車とが採用されている。例えば、図12,図13において、標準ルーフ車両における吊り天井の取付構造において説明すると、ルーフパネル1の室内面に吊り天井2を内装する場合、ルーフパネル1の室内面に車幅方向に沿って延びるリスティングワイヤ3を車両の長手方向に間隔をあけて複数箇所に取り付け、吊り天井2の裏面側に縫い付けたサポート用袋部2a内にリスティングワイヤ3を挿通し、リスティングワイヤ3により吊り天井2を支持している。
【0003】また、リスティングワイヤ3の固定構造としては、図13に示すように、ルーフパネル1の両側に位置するルーフサイドパネル4に取付孔5を開設し、この取付孔5内にリスティングワイヤ3の両端末を挿通固定している。
【0004】同様に、ハイルーフ車両においても、吊り天井2を設ける場合には、図14,図15に示すように、リスティングワイヤ3は、ルーフサイドパネル4の取付孔5に対してリスティングワイヤ3の端末部分に設けた取付孔3aを合致させて、リベット6により固定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、標準ルーフ車両、ハイルーフ車両の双方の車両において、吊り天井2を支持するためのリスティングワイヤ3を固定するには、ルーフサイドパネル4に取付孔5を開設する必要があるため、吊り天井仕様車と吊り天井を設置しないハーフトリム仕様車とではルーフサイドパネル4をそれぞれ別個に用意しなければならず、型費が嵩むとともに、取付孔5の打抜き加工等の後加工費や管理コストが多くかかるなど、コストアップを招来するという欠点が指摘されている。
【0006】この発明は、標準ルーフ、ハイルーフのいずれの車両においても、吊り天井仕様とハーフトリム仕様の双方において共通のルーフサイドパネルを使用できるとともに、取付作業性を高めた吊り天井用リスティングワイヤの固定構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願発明は、ルーフパネルの室内面に内装される吊り天井を支持するリスティングワイヤをルーフパネルの車幅方向に張設するとともに、このリスティングワイヤの両端末をルーフパネルの両側縁に位置するルーフサイドパネルに固定する吊り天井用リスティングワイヤの固定構造において、前記ルーフサイドパネルの上端縁に沿ってルーフパネル側に向けてフランジが折曲形成され、このフランジに係合突片を突設し、この係合突片に係着されるホルダを介してリスティングワイヤをルーフサイドパネルに間接的に取り付けるとともに、前記ルーフサイドパネルの係合突片に切欠きが形成され、この切欠き内にホルダに設けた転び防止用リブを挿入し、ホルダの手前側脚部と転び防止用リブにより、ルーフサイドパネルの両面を挟持固定したことを特徴とする。
【0008】以上の構成から明らかなように、本発明によれば、ルーフサイドパネルに設けた係合突片に係着されるホルダを介してリスティングワイヤを間接的に固着するという構成であるため、このルーフサイドパネルのフランジ先端縁にルーフ側に向けて突出する係合突片は車室内側から目立たないため、吊り天井仕様車とハーフトリム仕様車の双方に共通のルーフサイドパネルを使用できる。
【0009】更に、ルーフサイドパネルに固定されるホルダは、ルーフサイドパネルのフランジに形成される係合突片に係止爪を係着操作することにより取り付けられるとともに、係合突片に切欠きを設け、この切欠き内にホルダの転び防止用リブを挿入すれば、ホルダの転び防止用リブと手前側脚部間に形成されるパネル挟持用溝部内にルーフサイドパネルが挟持されるため、ホルダは車幅方向に沿って位置ズレや転びが生じることがなく、ルーフサイドパネルに確実にホルダを固定できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る吊り天井用リスティングワイヤの固定構造の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】図1乃至図8は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は吊り天井用リスティングワイヤの固定構造を示す全体図、図2は同リスティングワイヤの固定構造に使用するホルダを背面側からみた斜視図、図3は同リスティングワイヤの固定構造を示す断面図、図4は本発明に係るリスティングワイヤの固定構造に使用するホルダの背面図、図5,図6は同ホルダの断面図、図7は同リスティングワイヤを使用して吊り天井を内装した状態を示す断面図、図8は同リスティングワイヤを省略したハーフトリム仕様のルーフ部を示す断面図である。
【0012】また、図9乃至図11は本発明の第2実施形態を示すもので、図9は吊り天井用リスティングワイヤの固定構造を示す全体図、図10は同リスティングワイヤの固定構造に使用するホルダの背面図、図11は同ホルダの断面図である。
【0013】まず、図1乃至図8に基づいて本発明の第1実施形態について説明する。図1において、車両のルーフパネル(図1では図示せず)の両側縁に沿って設けられるルーフサイドパネル10の上端縁には、ルーフパネル側に略90°折曲されたフランジ11が形成され、このフランジ11に係合突片12が車両の長手方向に沿って所定間隔毎に設けられており、更に、この係合突片12の両側に切欠き13が形成されている。
【0014】そして、このルーフサイドパネル10のフランジ11に形成した係合突片12にホルダ20が係着固定され、このホルダ20にリスティングワイヤ30が取り付けられることにより、リスティングワイヤ30がホルダ20を介してルーフサイドパネル10に間接的に取り付けられる。尚、リスティングワイヤ30の端末部31には、ビス33を取り付ける取付孔32が開設されている。
【0015】上記ホルダ20の構成について図1,図2を基に詳細に説明すると、ホルダ20は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等、合成樹脂の射出成形体からなり、手前側脚部21と背面側脚部22と、それらと連接する上面壁23を備えた断面略コ字状をなしており、上面壁23の中央には、リスティングワイヤ30を固定する取付片24が突設され、この取付片24に取付孔25が開設されている。
【0016】また、背面側脚部22には、ルーフサイドパネル10の係合突片12と係合する係止爪26がその周囲に肉抜き部を形成することにより弾性変形可能に設けられている。
【0017】更に、背面側脚部22の両側には、手前側脚部21に向けて転び防止用リブ27が形成され、この転び防止用リブ27と手前側脚部21との間にルーフサイドパネル10の厚みに略等しい幅をもつパネル挟持用溝部28がスリット状に設けられている。
【0018】図3はルーフサイドパネル10にリスティングワイヤ30を取り付けた状態を示すもので、ルーフサイドパネル10のフランジ11に設けた係合突片12にホルダ20が係着固定され、このホルダ20にリスティングワイヤ30の端末部31がビス33により固定されている。
【0019】従って、ルーフサイドパネル10に対してリスティングワイヤ30は、間接的に取り付けられており、ルーフサイドパネル10には、従来の取付孔等が廃止されている。
【0020】そして、リスティングワイヤ30をルーフサイドパネル10に固定する作業の一例を示すと、まず、リスティングワイヤ30の一方側の端末31の取付孔32とホルダ20の取付孔25とを一致させて、ビス33を締付け固定することにより、リスティングワイヤ30とホルダ20を一体化して、左右側のルーフサイドパネル10の一方側の係合突片12にホルダ20を固定する。
【0021】次いで、他方側のルーフサイドパネル10には、リスティングワイヤ30を固定しないホルダ20のみを取り付けておき、ルーフサイドパネル10に取り付けたホルダ20に対してリスティングワイヤ30をルーフパネル室内面に沿って適正位置に回動操作して、端末部31の取付孔32にビス33をホルダ20の取付孔25に締め付けることにより、リスティングワイヤ30の取り付けを完了する。
【0022】ところで、本発明は、リスティングワイヤ30とホルダ20のビス止め固定時等、ホルダ20の位置ズレや転び等の不安定な要素をなくして確実かつ堅固にルーフサイドパネル10にホルダ20を支持固定することができる。
【0023】ホルダ20の背面図を図4、また、各断面図を図5,図6で示すように、ホルダ20は、ルーフサイドパネル10のフランジ11に対して左右側の転び防止用リブ27を切欠き13内に収容した状態でホルダ20を下方に押し下げれば、ホルダ20の係止爪26がルーフサイドパネル10の係合突片12の縁部に押圧され、外方に撓み、係止爪26が係合突片12を乗り上げることにより、図5に示すように、ホルダ20がルーフサイドパネル10のフランジ11に取り付けられ、取付完了時においては、係合突片12の上面にはホルダ20の上面壁23の内面が当接するとともに、係合突片12の下面には係止爪26の上面26aが位置し、ホルダ20が上下方向にガタツクことがない。
【0024】また、図4,図6に示すように、係合突片12の両側は、転び防止用リブの内面に挟み込まれており、ホルダ20に左右方向(車両の長手方向)の位置ズレが生じることがない。
【0025】更に、特筆すべきは、図6に示すように、ルーフサイドパネル10の切欠き13内に転び防止用リブ27が収容され、ルーフサイドパネル10の室内面、室外面をそれぞれ手前側脚部21の内面と転び防止用リブ27の縁部とで形成されるパネル挟持用溝部28により挟持でき、このことにより、前後方向(車幅方向)の位置ズレが生じることがなく、かつリスティングワイヤ30とホルダ20のビス止め固定時に図6中矢印A方向の外力が加わっても転びが生じることがないため、リスティングワイヤ30の取付作業を円滑に行なうことができる。
【0026】また、この実施形態においては、リスティングワイヤ30をホルダ20を介してルーフサイドパネル10に間接的に取り付けるというものであるから、例えば図7に示す吊り天井仕様車では、ルーフパネル40の室内面に取り付けられたリスティングワイヤ30に対して、吊り天井50の裏面に縫製加工されたサポート用袋部51を挿通支持させれば、吊り天井50をルーフパネル40の室内面側に設置できる。
【0027】また、吊り天井を設置しないハーフトリム仕様車においては、図8に示すように、ルーフサイドパネル10が露出するが、ルーフサイドパネル10には取付孔が廃止されており、上記ルーフサイドパネル10を共用化できるため、吊り天井仕様とハーフトリム仕様とで2種類のルーフサイドパネルを用意する必要がなく、ルーフサイドパネル10を共用化できることから、型費、あるいは後加工費を節約できる。
【0028】次いで、図9乃至図11は、本発明の第2実施形態を示すもので、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0029】この第2実施形態においては、図9に示すように、ルーフサイドパネル10のフランジ11に係合突片12が形成されているとともに、この係合突片12の中央に切欠き14が開設されている。一方、ホルダ20の中央に単一の転び防止用リブ29が設けられている。
【0030】従って、ルーフサイドパネル10にホルダ20を係着固定した状態は、図11に示すように、ホルダ20の中央部において転び防止用リブ29と手前側脚部21との間で形成されるパネル挟持用溝部28内にルーフサイドパネル10を挟持することにより、車幅方向に沿ってホルダ20に位置ズレが生じたり、また、転び等が生じることがなく、第1実施形態同様、ホルダ20とリスティングワイヤ30との取り付けを円滑に行え、かつ強固な取付強度が得られる。
【0031】尚、ホルダ20の中央及び両側の3ヶ所に転び防止用リブ27,29を併行して設けても良い。
【0032】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明に係る吊り天井用リスティングワイヤの固定構造によれば、ルーフサイドパネルに対してホルダを介してリスティングワイヤを固定するという構成であるため、ルーフサイドパネル自体に取付孔を開設する必要がなく、吊り天井仕様車、ハーフトリム仕様車、双方にルーフサイドパネルを共用化でき、パネルの型費、後加工費等が節約できることから、大幅なコストダウンが見込めるという効果を有する。
【0033】更に、本発明に係る吊り天井用リスティングワイヤの固定構造によれば、ホルダに設けた係止爪の係着構造に加えて、ルーフサイドパネルの係合突片に設けた切欠き内に転び防止用リブを挿入して、この転び防止用リブと手前側脚部との間でパネルを前後側から挟み付け、車幅方向の位置ズレやホルダの転びを可及的に防止できるため、ホルダとリスティングワイヤの固定作業を円滑に行なうことができ、取付作業性を高めることができるとともに、取付強度も強化できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吊り天井用リスティングワイヤの第1実施形態を示す全体図である。
【図2】図1に示す吊り天井用リスティングワイヤの固定構造に使用するホルダを背面側からみた斜視図である。
【図3】図1に示す吊り天井用リスティングワイヤの固定構造を示す断面図である。
【図4】図1に示す吊り天井用リスティングワイヤの固定構造に使用するホルダの背面図である。
【図5】図4中V −V 線断面図である。
【図6】図4中VI−VI線断面図である。
【図7】本発明に係るリスティングワイヤを使用して吊り天井を設置した状態を示す断面図である。
【図8】本発明に使用するルーフサイドパネルを適用したハーフトリム仕様車のルーフ部を示す断面図である。
【図9】本発明に係る吊り天井用リスティングワイヤの固定構造の第2実施形態を示す全体図である。
【図10】図9に示すリスティングワイヤの固定構造に使用するホルダを示す背面図である。
【図11】図10中XI−XI線断面図である。
【図12】標準ルーフ車両に吊り天井を設置した状態を示す断面図である。
【図13】図12に示す吊り天井におけるリスティングワイヤの固定構造を示す説明図である。
【図14】ハイルーフ車両に吊り天井を設置した状態を示す断面図である。
【図15】図14に示す吊り天井におけるリスティングワイヤの固定構造を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ルーフサイドパネル
11 フランジ
12 係合突片
13,14 切欠き
20 ホルダ
21 手前側脚部
22 背面側脚部
23 上面壁
24 取付片
25 取付孔
26 係止爪
27,29 転び防止用リブ
28 パネル挟持用溝部
30 リスティングワイヤ
31 端末部
32 取付孔
33 ビス
40 ルーフパネル
50 吊り天井
51 サポート用袋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ルーフパネル(40)の室内面に内装される吊り天井(50)を支持するリスティングワイヤ(30)をルーフパネル(40)の車幅方向に張設するとともに、このリスティングワイヤ(30)の両端末(31)をルーフパネル(40)の両側縁に位置するルーフサイドパネル(10)に固定する吊り天井用リスティングワイヤの固定構造において、前記ルーフサイドパネル(10)の上端縁に沿ってルーフパネル(40)側に向けてフランジ(11)が折曲形成され、このフランジ(11)に係合突片(12)を突設し、この係合突片(12)に係着されるホルダ(20)を介してリスティングワイヤ(30)をルーフサイドパネル(10)に間接的に取り付けるとともに、前記ルーフサイドパネル(10)の係合突片(12)に切欠き(13,14)が形成され、この切欠き(13,14)内にホルダ(20)に設けた転び防止用リブ(27,29)を挿入し、ホルダ(20)の手前側脚部(21)と転び防止用リブ(27,29)により、ルーフサイドパネル(10)の両面を挟持固定したことを特徴とする吊り天井用リスティングワイヤの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2002−114109(P2002−114109A)
【公開日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−308208(P2000−308208)
【出願日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】