説明

同時溶解及びゲル化錠剤型の口腔衛生組成物

口腔内に清涼感を提供し、口腔衛生剤有効成分の送達が容易な口腔衛生組成物が本明細書に開示されている。
本発明の錠剤型口腔衛生組成物は、多孔性プラスチック顆粒を500kg/cm以下の圧力で打錠して製造し、口腔内唾液又は水によるか、又は噛み砕きによって同時に溶解及びゲル化(in-situ melting & gelling)されることを特徴とする。本発明の錠剤型口腔衛生組成物は、直接口腔に投入することによって、口腔内の水又は唾液によるか、又は噛み砕きによって溶解及びゲル化して、うがい又は口すすぎを経て、口腔の健康を保つように働く。従って、既存の液状や軟膏状の口腔衛生剤の不便な点を軽減するのみならず、携帯にも容易であるとの利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内に清涼感を提供し口腔衛生剤有効成分の送達が容易な口腔衛生組成物に関し、特に本発明は、口腔内の水や唾液によるか又は噛み砕きによって同時溶解及びゲル化(in-situ melting and gelling)して、口すすぎ又はうがい可能な口腔衛生組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、口腔衛生剤は、歯磨き剤、口すすぎ液、フィルム及びスプレイなどの4つの種類に大きく分けられる。これらの口腔衛生用品は通常、歯の美白、プラーク及び歯石の沈着予防、口臭抑制など審美的な目的と、虫歯や歯周病の治療又は予防目的のために利用される。
【0003】
一方、製薬業界では医薬品及び健康補助剤などのような錠剤型製剤を容易に内服できるように、高溶解性錠剤を作っている。Toshihiro Shimizuらは、Chem.Pharm.Bull.51(10)(2003)において、高崩壊性錠剤が、通常の錠剤型薬物を飲みづらいという患者に大きな利点を提供することを指摘し、このような高崩壊性錠剤の製造には、錠剤モールディング、凍結乾燥、噴霧乾燥(spray-drying)、崩壊剤添加、昇華、糖類ベースの賦形剤(exipient)などの使用のような製造プロセスが含まれると述べている。
【0004】
高溶解性錠剤の製造には、凍結乾燥、モールディング、圧縮工程などの技術が用いられる。
まず、凍結乾燥は、冷凍された薬物溶液、又は賦形剤を含む冷凍された薬物懸濁液から溶媒を除去する工程である。凍結乾燥で得られた錠剤は、一般的に極めて軽く、多孔性とプラスチック構造を有しているので溶解し易い。しかし、凍結乾燥は、工程が相対的に高価な点と共に、最終服用錠剤形態が割れ易くて強度が低いことから、ブリスター包装を実施するには難しい。
【0005】
モールディング工程では、水又はエタノールに溶解された物質を湿ったまま、一般の打錠圧力より低い圧力で打錠した後、乾燥して高溶解性錠剤を得る。モールディングされた錠剤の主要構成成分は、一般に水溶性である。モールディングされた錠剤は、多孔性なので、このような多孔性構造が水の浸透を容易にして、溶解を促進する。一方、Van Scoikらのアメリカ特許第5,082,667号に開示されているように、モールディングされた錠剤は、強度が極めて低いので、取り扱い、輸送及び配達等の流通過程で問題を引き起こす短所がある。また、モールディング錠剤の製造は、既存の圧縮工程より複雑な工程を含んでいる。
【0006】
既存の錠剤化圧縮器の方法による高溶解性錠剤の製造は、製造費用及び技術移転の側面において極めて魅力的な方法である。既存の錠剤圧縮工程では、錠剤の多孔性が重要な要素ではなく、高圧で圧縮して錠剤の強度を高めるところにその目的があって、高溶解性錠剤を得ることは不可能である。高多孔性をもたらす方法の例として、顆粒化、特定溶解性物質の利用、そして最終的な錠剤を作ってから後処理する方法などがある。これらの方法の種類と特徴について簡単に後述する。
【0007】
まず、顆粒化法では、Bonadeoらのアメリカ特許第6,149,938号に開示されている流動層による湿式造粒法、Eogaらのアメリカ特許第5,939,091号に開示されている乾式造粒法、Allenらのアメリカ特許第6,207,199号に開示されている噴霧乾燥造粒法、及びFuisz Technologies Ltd.(Chantilly, VA)のアメリカ特許第6,048,541号に開示されている急速加熱法が高溶解性錠剤を製造するのに用いられている。
【0008】
特定の賦形剤を用いる方法では、水に溶けないカルシウム塩、特定の崩壊剤の組合せ、及び特定の糖類ベースの賦形剤を選定することが大事である。Dobettiらのアメリカ特許第6,596,311号では、水不溶性無機賦形剤を高溶解性錠剤の主な構成成分として用いている。糖又は糖誘導体の調整による方法としては、Chang,R.−K.らは、殆ど全ての高溶解性錠剤の処方に、糖又は糖誘導体を使用していると報告している(Pharmaceutical Development & Technology, 24: 52-58,2000)。次いで、崩壊剤を使用する方法において、殆ど全ての高溶解性錠剤の処方は、発泡性酸/塩基の組合わせを使用したり何種類かの非発泡性崩壊剤の組合わせを使用する。このような非発泡性崩壊剤の例には、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、澱粉、改質澱粉(modified starch)、カルボキシメチル化澱粉、微結晶セルロースなどがある。
【0009】
圧縮及び後処理法は、錠剤を低圧下で製造した後、昇華、焼結及び湿度処理などの多様な後処理工程により弱い錠剤を強くするように実施される。Roserらのアメリカ特許第5,762,961号では、揮発性物質を使って高溶解性錠剤の製造方法を開示している。湿度調節工程は、幾つかの糖がその溶液を噴霧乾燥するとき又は結合溶液として用いる場合に、無晶形から結晶形に転換されることを利用して実施される。すなわち、乾燥及び顆粒化工程中の湿度調節は、糖の無晶形から結晶形への変化となり、これが錠剤の強度を実質的に増加させる。Lagoviyerらのアメリカ特許第6,465,010号では、高温で錠剤成分を焼結してから常温に冷却して再び固めることによって錠剤の強度を増加させる方法を開示している。
【0010】
以上のような高溶解性錠剤の製造技術を口腔衛生剤に適用することに関する研究は、殆ど進んでいない。従来の口腔衛生剤において、発泡剤の組合わせ及び崩壊剤を用いて高溶解性錠剤を製造した例があるが、この場合発泡のために使った共役酸が、消費者の感性に不快な影響を与えるとの問題点があった。これにより使用感の面で改善が切実に要望されている。具体的に、Douglas C.S.らのアメリカ特許公開第2004/0101493A1号及び同第2004/0101494A1号は、噛める固形単位投与形態及び歯の咬合表面への活性剤の送達方法を開示している。これらの特許によれば、口腔衛生剤は歯間及び臼歯などの歯の咬合面に直接送達され残留するが、これは対象者が噛み砕き時に普通に生じることである。しかし、これらの製剤は、使用後に異物感を与える恐れがあって、消費者に不快な使用感をもたらす。さらに、これらの錠剤が高溶解性ではないので、数秒内に、通常の歯磨剤のようなゲル特性を示すことができない。従って、消費者の使用感と便宜性の改善が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、従来の高溶解性錠剤とは異なった、便宜性及び使用感に優れながら、噛砕き型錠剤、口腔内溶解ゲル化型錠剤、歯ブラシ付き溶解ゲル化型錠剤などの多様な用途で使用可能な錠剤型の同時溶解及びゲル化型口腔衛生組成物を提供しようとするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的等を達成するための本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第一の態様は、多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤及び水浸透促進剤を必須構成要素とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水によって同時溶解及びゲル化(in-situ melting & gelling)されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第二の態様は、多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤、水浸透促進剤及び歯牙付着防止剤を必須構成成分とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水の存在下で噛み砕きによって同時溶解及びゲル化されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第三の態様は、多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤、水浸透促進剤、歯牙付着防止剤及び保湿剤を必須構成成分とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水によって、あるいは噛み砕きによって同時溶解及びゲル化されることを特徴とする。
【0015】
歯磨き剤は、代表的な口腔衛生剤であって、歯ブラシに塗りつけて、歯をブラッシングして歯の衛生を具現化する。本発明は、錠剤の形態で、口腔内での噛み砕きによって、又は歯ブラシ上や口腔内で水又は唾液によって錠剤の同時溶解及びゲル化が行われて、歯のブラッシングと同様に、水ですすぐだけで口腔内を爽やかにし、口腔内疾患を緩和及び予防できるようにする錠剤型の口腔衛生剤を提供する。
【0016】
本発明に係る錠剤型口腔衛生剤は、既存の口腔衛生剤の持つ口腔洗浄、虫歯予防、歯周病予防の機能を全て持ち、さらには、水や唾液によって同時溶解及びゲル化が行われたり噛み砕きによって溶解及びゲル化が促進されるという点で、従来の口腔衛生剤とは異なる新概念の口腔衛生用品である。
【0017】
同時溶解及びゲル化錠剤に求められる物理的性質は、数秒内に水が錠剤の中心部に浸透するような水の浸透容易な高多孔性、及び容易に取り扱える適度な強度である。本発明の高溶解性錠剤は、高多孔性プラスチック顆粒材料、水/唾液の浸透促進剤、結合剤、ゲル化剤、歯牙付着防止剤、保湿剤、研磨剤、発泡剤、香料、甘味剤、有効成分などを包含する。
【0018】
一般的に、製薬業界において使われる高溶解性錠剤は、口腔内で薬物の吸収を迅速にするように設計されるので、歯磨き剤のように溶解及びゲル化を目的としていない。本発明では、錠剤型組成物が、一般の歯磨き剤と類似したゲル組織(gel texture)を有するように作り出した。
【0019】
溶解とゲル化は、共に水や唾液を必要とする競合的な過程であると言える。従って、使われる水や唾液の一部は、溶解のために使用されるべきであり、残りはゲル化のために使用されるべきである。しかしながら、技術的に溶解及びゲル化を同時に行うことが、極めて困難なことである。
【0020】
本発明では、同時溶解及びゲル化特性を得るため、錠剤の製造過程に、ゲル化及び溶解が確保できるように、顆粒化工程で多孔性プラスチック顆粒を製造すること、親水性の高い高分子を用いた迅速なゲル化を誘導すること、水浸透促進剤を使用すること、そして結合剤溶液を用いて低圧打錠による高強度錠剤を製造すること、を実施した。さらには、歯磨き剤の有する基本機能を確保するため、研磨剤、発泡剤、甘味剤及び香料などを含有させて消費者に優れた使用感を与えようとした。
【0021】
本発明の錠剤型口腔衛生剤において、高溶解性錠剤の製造技術及び高速ゲル化技術を活用している。高溶解性錠剤の製造技術は、多孔性プラスチック顆粒の製造、及び水浸透促進剤及び結合剤溶液を用いた低圧力での高強度錠剤を製造する技術を含む。
【0022】
多孔性プラスチック顆粒の製造には、水や唾液と接触すると素早く溶解する物質や分散できる物質を使用する。この際使われる物質は、薬品又は食品として、人体に全く無害で使用可能なものを用いなければならない。プラスチック顆粒を打錠機をもって打錠する際、各粒子間の接触によって顆粒のプラスチック塑性変形が極端に増加するようになる。
【0023】
本発明の組成物において多孔性プラスチック物質として高分子を使う場合は、錠剤が水に溶解する過程において、錠剤の表面で発生する粘度増加による水膜形成によって、水が錠剤の中心部へ浸透することが妨害されないようにすべきである。このような形態の錠剤の製造方法は、所定比率の水/唾液の浸透促進剤を使用することである。錠剤の表面での粘性の水の浸透阻害を防止する役割を果たすのが水浸透促進剤である。一般に、水/唾液の浸透促進剤と多孔性プラスチック顆粒は、異なる物質であるが、ある場合にはこれらは同じ物質であってよい。
【0024】
多孔性プラスチック顆粒と水/唾液の浸透促進剤の使用によって、プラスチック塑性変形を引き起こし、原料物質間の結合により錠剤を形成する場合もあるが、原料間の強い結合を誘導するためには、結合剤を使用するのが極めて重要である。結合剤は、多孔性プラスチック顆粒の多孔性構造と水/唾液の浸透促進剤の機能を安全に保つ役割を果たす。結合剤がない場合は、前記物質間で別々に分離する現象が起こる。一般的な結合剤は、液体や軟膏状の半固体状態であり、結合剤がこれら2つの原料の元々持っていた性質を保持することが極めて重要である。この目的を達成するために、実質的に水との反応性が殆どない高濃度結合剤を使用でき、また、相対的に低い濃度の結合剤及び短い混合時間を用いることによって、結合剤の使用によって起る多孔性プラスチック顆粒及び水/唾液の浸透促進剤の本来の性質の喪失を防止することもできる。
【0025】
多孔性プラスチック顆粒の製造及び押し出し成形時に、各構成成分の投入ポイントを変えて、得られる顆粒の物性に変化を与えることができ、また、顆粒の所望の物性によって、投入ポイントを変えることができる。
【0026】
以下、本発明に係る高溶解性錠剤型の同時溶解及びゲル化の口腔衛生剤の各構成成分について、より詳細に説明する。
【0027】
多孔性プラスチック顆粒材料
本発明の組成物に添加される高多孔性プラスチック顆粒は、外部圧力500kg/cmの圧力を受ける時も変性されないように製造される。
【0028】
多孔性プラスチック材料は、多孔率が0.14又はそれ以上であって、密度が0.86以下であるべきで、打錠機が、1.27cm直径の金型に500kg/cm以下の圧力で打錠した時に、元々の形態及び大きさを保持して、プラスチック塑性変形を受けるべきである。一般に、675kg/cm上の圧力で打錠する場合は、多孔性が破壊し、これによって高溶解性錠剤の性質を保持するのが不可能となる。
【0029】
多孔性プラスチック材料は、望ましくは水溶性のものが良い。水への高溶解性を有する多孔性プラスチック材料の含量は、錠剤の総重量に対して、1〜98重量%の範囲で含まれるのが望ましく、20〜95重量%がさらに好ましい。多孔性プラスチック材料の含量が1重量%より少ないと、他の成分と十分な接触ができないので、得られる錠剤の強度が極めて低くなる。一方、多孔性プラスチック材料の含量が98重量%より多いと、水浸透促進剤、結合剤、有効成分及びその他の添加剤のような、追加の成分を含むことができない。
【0030】
本発明の組成物に用いる多孔性プラスチック材料は、市販品を購入したり、種々の方法、例えば噴霧乾燥、流動層造粒などを用いて容易に製造可能である。本発明で使用できる溶解性多孔性プラスチック材料の例は、これらに限定されないが、フルクトース(fructose)、ラクチトール(lactitol)、マルチトール(maltitol)、マルトース(maltose)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、蔗糖、エリスリトール(erythritol)及びキシリトールのようなサッカライド、更にマルトデキストリン(maltodextrin)、デキストリン(dextrin)、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)及びアルファ化澱粉(例えば、LYCATAB(Roquette American Inc.))のような有機高分子を含む。これらの物質のうち、最も高い溶解速度のサッカライドはソルビトールであり、エリスリトールは溶解度は高くないが、水/唾液の浸透には理想的である。
【0031】
適した多孔性プラスチック構造を有するその他の物質としては、アラビアゴム、キサンタンゴムとその誘導体、グアーガムとその誘導体、海藻ガム、カラギーナン、デキストラン、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、澱粉及び澱粉誘導体(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉及びヒドロキシエチル澱粉)、セルロースエステル(例えば、カルボキシメチルセルロース及びセルロースエーテルヒドロキシエチル−メチルセルロース)、不飽和酸のホモあるいは共重合体(例えば、アクリル酸及びその塩)、不飽和アミドのホモあるいは共重合体(例えば、アクリルアミド)、アクリルイミンのホモあるいは共重合体、ビニル高分子(例えば、ポリビニルアルコール)、ビニルエステルのホモあるいは共重合体(例えば、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、ビニルアミン及びビニルピリジン)、アルキルグリコール、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、オキシエチレンアルキルエステル、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース(ブドウ糖)、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、粉末セルロース、酢酸セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩及びシリカが挙げられる。炭酸カルシウム、シリカのような無機物質は、水の吸収が早いものの、相互間の結合力が弱い。
【0032】
水/唾液の浸透促進剤
本発明の組成物において水/唾液の浸透促進剤は、錠剤を早く崩解させるために使用される。ここで、水/唾液の浸透促進剤を評価する方法は、200mgの候補原料を、直径1.27cmの鋳型中で135kgの力で打錠した後、得られた錠剤の表面に数滴の水をたらす。この際、水滴が錠剤の表面に拡散しない場合は、この候補原料は水/唾液の浸透促進剤として使用できない。60秒以内に水が錠剤の表面上に拡散するか又は吸収されれば、この候補原料は水/唾液の浸透促進剤として使用可能である。
【0033】
高溶解性錠剤の製造に用いるために、水浸透促進剤は、水に対する溶解性が高いか、又は、もし水に対する溶解性が不良ならば水を早く吸収して、少なくとも非常に分散しやすいものであるべきである。一般に、水/唾液の浸透促進剤は、賦形剤として使われ、水に対する溶解度に極めて優れた炭化水素である。特に限定されることなく、何れのタイプの炭化水素も本発明の組成物において使用できる。しかしながら、口腔衛生に関する処方には、ストレプトコッカス・ミュータンスの代謝で副産物として有機酸が作られ、虫歯を誘発する恐れのある成分は、その最小量を用いることが一般的である。このような炭化水素の例は、デキストレート、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、蔗糖、エリスリトール及びキシリトールを含む。水によく溶けないが、水に対する分散及び水の送達能力に優れた物質の例は、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、粉末セルロース、酢酸セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩及び架橋ポリビニルピロリドンを含む。炭化水素と高分子との種々の組み合わせが、使用可能である。水/唾液の浸透促進剤として好ましい原料は、直接打錠可能な多孔性物質である。また、炭酸カルシウム、シリカ及び第二リン酸カルシウムを含む無機物質、並びに架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、セルロース及びエリスリトールを含む有機物質のような水を送達できる物質も優れた水/唾液の浸透促進剤である。
【0034】
本発明の錠剤型組成物では、噛み砕き行為のような機械的な錠剤破砕作用と共に水浸透促進剤の作用が口腔内で行われる。従って、水又は唾液によってのみ同時溶解及びゲル化が行われる従来の錠剤に比べて、水浸透促進剤の含量が低い場合も、本発明の組成物は溶解及びゲル化の時間に差異を示さないこともある。水浸透促進剤の含量は、錠剤総重量に対して、1〜98重量%の範囲が好ましく、20〜80重量%がより好ましい。水浸透促進剤の含量が1重量%未満の場合は、水が錠剤の中心部に浸透できず、水浸透促進剤の含量が98重量%より多いと、水浸透促進剤以外の成分が錠剤成分に添加される余地がないのみならず、錠剤の高溶解性のために口腔内唾液の発生量より多くの唾液又は水を必要とするため、望ましくない。
【0035】
本発明の組成物において、同時溶解及びゲル化に噛み砕きが必ず必要な場合は、噛み砕きが不要な場合に比べて、少量の非水溶性の水浸透促進剤を用い、水溶性の水浸透促進剤の量を増やすことによって、消費者の嗜好度及び使用感を高めることができる。前述した水浸透促進剤のうち、非水溶性の水浸透促進剤を0.01〜7重量%の量で用いることが好ましい。
【0036】
一方、同時溶解及びゲル化に噛み砕きが必ずしも必要ではない場合は、比較的多量の非水溶性の水浸透促進剤を使用することが必要である。
【0037】
結合剤
本発明の結合剤は、既存の錠剤打錠工程において幅広く使用されるものである。本発明の組成物では、結合材の主な機能は、高多孔性プラスチック顆粒及び水/唾液の浸透促進剤を含む全原料間の結合力を増進させることによって各構成成分間の分離を防止して、低圧打錠においても強度が大きい同時溶解及びゲル形成錠剤を得ることである。結合剤の含量は、錠剤の総重量に対して、1〜90重量%の範囲である。
【0038】
結合剤は、採用する造粒方法の差異によって、液体又は半固体状であり得る。結合剤としての必要な要件のうち最も重要なことは、前記のようにして得られた多孔性プラスチック材料の多孔性構造の損傷を最小にすることである。この目的は例えば、水の溶解度以上に飽和された高濃度の結合剤を用いて単に水の活性度を下げることにより、又は低濃度の結合剤溶液を短時間に均一に分散させることによって達成される。多孔性及び溶解性に対する損傷の有無を判断するための簡単な試験を実施することができる:1mLの結合剤溶液を0.5gの多孔性プラスチック物質に添加し、もし10秒以内に多孔性物質が完全に溶解せずに元の多孔性構造を保持していれば、この結合剤溶液を本発明の組成物に使用することができる。
【0039】
湿った顆粒を乾燥した後、固化した結合剤は、水と接触して迅速に溶解することが好ましい。湿式造粒法においての結合剤の種類と量は、高いプラスチック性(可塑性)及び良好な結合性のような所望の物性によって調整することができる。エチルアルコールのような薬学的に許されるその他の有機溶媒も、多孔性構造の損傷を少なくできる結合剤溶液の溶媒として使用できる。結合剤の例は、水浸透促進剤で言及されている炭化水素類、及びアカシア、アルギン酸、カルボマー(カルボポール)、カルボキシメチルセルロース、セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン及びアルギン酸ナトリウムのような高分子を含む。
【0040】
ゲル化剤
本発明で使用できるゲル化剤は、水/唾液などによって容易に膨潤してゲル化する、水溶性高分子又はゴム(gum)のような天然高分子である。本発明の組成物におけるゲル化剤は、錠剤の高溶解性と共に錠剤の物性において最も重要なゲル組織に大きな影響を与え、最終製品の使用感において最も重要な因子である。ゲル化剤として必要な要件は、水/唾液の作用によって、数十秒以内にゲル組織を有することであり、これを確認するために次の方法を使用することができる:200mg重量のゲル化剤の錠剤上に1mLの水を滴下して、10秒以内に錠剤の表面においてゲルのような物性が観察されれば、このような物質を本発明のゲル化剤として使用することができる。ゲル化剤のもう一つの重要な要素は、ゲル化剤が水又は唾液と反応してゲル化された時に、錠剤の表面に水和膜を形成して水や唾液の浸透を妨害するのを、阻止することである。
【0041】
迅速なゲル化を行うには、ゲル化剤が親水性で、少量の水を吸収してゲル化されるべきである。湿式造粒過程においてゲル化剤が多孔性プラスチック顆粒の孔(空隙)を塞がないように、5分内に湿式造粒が行われるべきである。本発明で用いられるゲル化剤の例は、アカシアガム、寒天ガム、ジェランガム、グアーガム、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルマレイン酸/無水マレイン酸共重合体、カルボポール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタンゴム、カラギーナン、高多孔性ハイドロゲル(super porous hydrogel)などが含まれる。これらの物質は、単独又は何れかを組み合わせて使用できる。これらの物質のうち、キサンタンゴム(CP Kelco, USA)、カルボポール(Noveon, USA)及びカルボキシメチルセルロース(Hercules, USA)は市販品である。
【0042】
ゲル化剤は、錠剤の総重量に対して、0.1〜10.0重量%の量で使用するのが好ましい。ゲル化剤の含量が、0.1重量%未満の場合は十分な粘度を確保できず、溶解後に錠剤の形態及び大きさを保持することが困難であり、ゲル化剤の含量が10.0重量%より多い場合は、水が錠剤の中心部まで十分に浸透せず、錠剤の表面だけでゲル化が行われ、また噛み砕き時に結合剤が歯牙に固着することから望ましくない。
【0043】
歯牙付着防止剤
本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物において、錠剤の同時溶解及びゲル化に噛み砕きが必要とされる場合は、口腔衛生用品が歯間に残留して、消費者の使用感及び使用後の感触品質を低下させることになる。これを補うために、歯牙付着防止剤を添加して、噛み砕き時の歯牙への付着を最小化する。
【0044】
歯牙付着防止剤として使われる成分の例は、親水性の歯牙表面に錠剤成分が付着しないように使用することのできる、モノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤を含む。
【0045】
歯牙付着防止剤は、錠剤の総重量に対して、0.01〜10重量%の範囲で使用する。歯牙付着防止剤の含量が0.01重量%未満の場合は、付着防止特性を十分に発揮させることが困難である。一方、付着防止剤の含量が10重量%より多い場合は、錠剤の味と使用感において悪影響を及ぼす。
【0046】
保湿剤
本発明の錠剤型口腔衛生組成物では、多孔性プラスチック顆粒を使用するので、製品乾燥後に研磨剤などによる粉末状の感触が生じる。このような問題点を解決するために、顆粒の水分含量を一定レベルに保持できる成分である保湿剤が使用できる。保湿剤として使用可能な物質の例には、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトールなどが含まれる。
【0047】
保湿剤は、錠剤の総重量に対して、0.01〜20重量%の量で使用できる。保湿剤の含量が0.01重量%未満の場合は、保湿剤の付着防止特性を十分に発揮させることが困難である。一方、保湿剤の含量が20重量%より多い場合は、多孔性プラスチック顆粒の過剰な濡れ現象を引き起こす場合がある。
【0048】
滑剤
滑剤は、打錠過程において打錠機のパンチに異物が挟まることを防止するように添加される。滑剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを使用できる。一般的に、滑剤は、錠剤の総重量に対して、0.1〜5重量%の量で使用することができる。
【0049】
発泡剤/界面活性剤
口腔衛生剤における発泡剤及び界面活性剤は、歯牙を洗浄するだけでなく、口腔衛生剤において最も重要な属性の一つである気泡を発生させる役割を果たす。一般に、発泡剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び両性イオン性(Zwitterionic)界面活性剤を含む。発泡剤は、単一物質又は2種あるいはそれ以上の物質の組み合わせであってよい。本発明の組成物における気泡剤の含量は、錠剤の総重量に対して、約0.001〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲が望ましい。
【0050】
安全かつ有効な量で任意に使用可能な発泡剤として、陰イオン界面活性剤ではラウリル硫酸ナトリウム及びココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムが最も代表的である。その他の適合する陰イオン界面活性剤としては、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート(sarcosinate)、タウレート(taurate)、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがある。更に、コカミドプロピルベタイン、ポロキサマー(Poloxamer)、モノオレイン酸ソルビタン、PEG−40イソステアリン酸ソルビタン及びこれらの混合物も界面活性剤として使用可能である。
【0051】
研磨剤
研磨剤は、プラーク、食べ物の滓などの除去を含む、口腔衛生用品の洗浄作用において重要な役割を果たす。研磨剤は、歯牙のエナメル質を損傷することなく、また組成物の他の成分との相溶性が確保されるべきである。本発明の組成物における研磨剤は、象牙質を研磨しすぎて歯がしみることのない物質を選んで、適切な量で使用する。現在、口腔衛生用製剤への使用に適している研磨剤の例は、ゲル又は沈殿物の形態の、シリカ、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物及び無水物、並びに炭酸カルシウムなどを包む。これらの物質に加えて、セルロース及びその誘導体のような天然繊維質研磨剤、卵殻及び貝殻の粉砕粉のような天然物質も研磨剤として使用できる。本発明において、口腔衛生組成物中の研磨剤の含量は、組成物の総重量に対して、約5〜70重量%であり、好ましくは15〜50重量%の範囲である。
【0052】
着香剤及び甘味剤
本発明の組成物は、消費者の好みに適するように、着香剤と甘味剤を添加して製剤化することができる。着香剤としては、ペーパーミント及びスペアミントなどのミント、ウィンターグリーン(Wintergreen)、アニス(Anis)、メントール、チモール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、オイゲノール、ポリプロピレングリコール、メロン、イチゴ、オレンジ、バニリンなどが使用可能である。一般的に、着香剤は、組成物総重量の、0.001〜10重量%の範囲で使用可能である。
【0053】
また、本発明の組成物には、組成物が有する基本的な味をマスキングして口当たり及び味をよくするために甘味剤を添加することができる。甘味剤の例としては、サッカリン、スクラロース、蔗糖、キシリトール、ソルビトール、ラクトース、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、アスパルテーム、タウリン、サッカリン塩、D-トリプトファンなどを包む。これらの物質は、単独又はこれらの組み合わせの何れかで使用できる。サッカリン塩の中では、サッカリンナトリウムが甘味剤として最も多用される。甘味剤の量は、錠剤組成物の総重量に対して、0.001〜20重量%の範囲で使用する。
【0054】
有効成分
薬剤有効成分、また有効医薬成分(又はAPI)として、口腔衛生製剤の所望の使用目的に応じて、虫歯予防、歯茎及び歯周疾患予防、歯石沈着予防、美白などの効果のある多種の成分が使用可能である。
【0055】
虫歯予防の有効成分には、フッ素含有化合物を含む、アメリカFDA(食品医薬品局)において安全かつ有効な物質として認められた化合物が含まれる。フッ素イオンの供給源として使用できる化合物の例としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ及びアミンフッ化物が挙げられる。フッ素の含量は、国によって使用量の違いがありうるが、好ましくは850〜1500ppmのフッ素イオン濃度を有するように、単一のフッ素供給源又は2種以上の混合供給源の組み合わせを使用することが一般的である。
【0056】
再石灰化剤も、虫歯予防剤として働く。再石灰化は、歯の主な構成成分であるヒドロキシアパタイトを再生し復元させる役割を果たす。ヒドロキシアパタイトの主成分は、2価のカルシウム陽イオン(Ca2+)とリン酸陰イオン(PO−2)で構成されている。従って、カルシウムイオンとリン酸イオンを同時に供給したり、口腔内の化学平衡をヒドロキシアパタイトが生成される側になるように、カルシウム2価イオン及びリン酸陰イオンの片方又は両方を含有するものであるならば、再石灰化剤として使用できる。カルシウムイオンとリン酸イオンを提供する物質の例は、原料としてのヒドロキシアパタイト、第二リン酸カルシウム、塩化カルシウム、カゼインホスホペプチド、グリセロリン酸カルシウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウムなどを含む。一般に、再石灰化剤は、組成物の総重量に対して、0.001〜20重量%の量で使用することが好ましい。再石灰化剤の含量が、0.001重量%未満では、十分な再石灰化効果を達成することが難しい。再石灰化剤の含量が、20重量%より多いと、錠剤の元々有している特性を失うことになる。
【0057】
口腔衛生用品を使用する目的の一つは、口腔内に生存している有害な細菌に対する殺菌又は消炎作用によって、進行する歯茎及び歯周疾患の軽減だけではなく、そのような疾患の発症の予防をすることである。その目的のためには、抗菌剤として知られているチモール、シクロヘキシジン(cyclohexidine)、セチルピリジニウムクロライド、トリクロサン、キサントリゾール(xanthorrhizol)などが使用でき、また消炎作用のために、ビタミン類及び酵素なども使用可能である。
【0058】
歯の疾患の治療/予防効果に加えて、美白効果を示す物質、例えば、過酸化水素、過酸化カルバミド、過酸化カルシウムなどが使用可能である。歯石沈着抑制効果を得るために、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなども使用できる。これらの有効成分は、組成物の総重量に対して、0.001〜10重量%の量で使用することが一般的である。
【0059】
本発明に係る高溶解性錠剤型の同時溶解及びゲル化型の口腔衛生剤は、前述した成分を使って製造される。図1〜図4は、これら錠剤の製造過程を模式的に示した。図1は、本発明の同時溶解及びゲル化錠剤の一般的な製造方法であり、図2はゲル化剤を結合剤溶液と共に投入する方法であり、図3はゲル化剤を多孔性プラスチック顆粒の製造後に投入する方法であり、そして図4は2種の顆粒を製造してから錠剤を製造する方法である。
【0060】
以下に、本発明の口腔衛生製剤の製造工程を、図1の方法を参照して説明する。
【0061】
まず、多孔性プラスチック顆粒の製造に使われる固体状の原料の必要量を正確に秤量した後、製薬用高速混合機(High speed mixer)に入れて結合剤溶液を投入しつつ混合する。粒子の多孔性を損なわずに、全ての粉末原料が結合するまで混合を続ける。混合された原料は、10〜50メッシュの篩を通した後、水分含量が10%未満になるまで常温で又はコンベヤベルト内で乾燥する。乾燥された顆粒を、再び10〜50メッシュの篩を通すと、多孔性プラスチック顆粒が得られる。こうして得られたプラスチック顆粒に、着香剤、有効成分及び滑剤を投入して混合した後、得られた混合物を比較的低圧である500kg/cm以下の圧力で打錠して、多孔性プラスチック顆粒を含有する同時溶解及びゲル化口腔衛生錠剤が得られる。500kg/cmの打錠圧は、多孔性プラスチック顆粒の多孔性を維持しつつ、取り扱い、輸送及び配達等の流通に問題点のない顆粒を得るための最大の圧力である。
【0062】
図2及び図3は、図1の方法におけるゲル化剤の投入段階を変更したものであり、図4の方法では、2種の顆粒を製造し、この顆粒を低圧で打錠して同時溶解及びゲル化錠剤を得る。
【0063】
このような方法によって製造された本発明に係る錠剤型口腔衛生製剤は、口腔内で唾液によって30秒以内に溶解及びゲル化が行われる。本発明の口腔衛生製剤は、ゲル化速度を増大させるために噛み砕きも可能である。また、錠剤を歯ブラシなどに付着して、錠剤本来の形態を保持しつつ溶解及びゲル化することによって、口腔衛生のための口すすぎ又はうがいが可能である。
【0064】
本発明に係る錠剤型口腔衛生製剤の特徴は、次のように要約される。
【0065】
第一に、本発明の錠剤型口腔衛生製剤は、水と接触する前は錠剤の形態で存在し、口腔内で噛み砕きによるか、又は水若しくは唾液によって同時溶解及びゲル化が行われる。
【0066】
第二に、同時溶解及びゲル化が行われる錠剤は、高多孔性プラスチック顆粒の製造、水浸透促進剤の投入、錠剤強度の強化のための結合剤の追加、そしてゲル様組織を与えるためのゲル化剤の添加によって製造される。
【0067】
第三に、本発明の製剤は、口当たりをよくするために、甘味剤、着香剤などを使用する。また、口腔内薬物の送達によって、虫歯、歯周病、歯のプラーク、歯石沈着などを予防できるようにフッ素化合物を含む有効成分を使用する。
【実施例】
【0068】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。これらの実施例は、本発明を理解するために説明するように挙げられたものであり、本発明の範囲及び精神が何ら限定して解釈されるものではない。
【0069】
実施例及び比較実施例
本発明の同時溶解及びゲル化錠剤型口腔衛生剤を、図1に示した製造工程によって製造した。
下記の表1は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第一の態様において、多孔性プラスチック顆粒の製造に用いられた原料の組成比を示す。比較例1−1及び1−2は、ゲル化剤を使用しないものである。
【0070】
【表1】

【0071】
表2は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第二の態様において、多孔性プラスチック顆粒の製造に用いられた原料の組成比を示す。比較例2−1は、ゲル化剤と歯牙付着防止剤を使用しないものであり、比較例2−2は歯牙付着防止剤を使用しないものである。
【0072】
【表2】

【0073】
表3は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第三の態様において、多孔性プラスチック顆粒の製造に用いられた原料の組成比を示す。比較例3−1は、ゲル化剤と歯牙付着防止剤を使用しないものであり、比較例3−2は歯牙付着防止剤と保湿剤を使用しないものである。
【0074】
【表3】

【0075】
以下の表4に示すように4種類の結合剤溶液を用意した。
【0076】
【表4】

【0077】
前記表1〜3に示す多孔性プラスチック顆粒材料に、表4の結合剤溶液を下記の表5に示したようにそれぞれ混合して、実施例1−1〜1−5、2−1〜2−5及び3−1〜3−5の多孔性プラスチック顆粒、並びに比較例1−1〜1−2、2−1〜2−2及び3−1〜3−2の多孔性プラスチック顆粒を製造した。
【0078】
このようにして得られた多孔性プラスチック顆粒を、常温で2時間以上乾燥した後、打錠機を用いて打錠した。打錠時の円滑な打錠のために、滑剤を1〜2%の比率で添加した。滑剤の種類及び添加量を、下記の表5に示す。
【0079】
【表5】

【0080】
打錠工程で得られた実施例及び比較例の錠剤について、溶解/ゲル化時間を次のような方法で測定した。20mLの水で満たされている100mLのビーカーに、打錠された錠剤を入れた後、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒及び1分の時点で錠剤を取り出し、スパチュラで錠剤を押えて、水が錠剤の中心部に浸透する度合いを目視で測定した。また、錠剤を2回、4回、6回、10回及び15回の噛み砕きをした後、口腔内で感じられるゲル及び噛み砕き時の感触に対して、0〜5点の尺度で評価した。感触の尺度は、5点:極めて良好、4点:良好、3点:普通、2点:不良、そして1点:極めて不良、とした。
【0081】
錠剤の破砕性(friability)は、Electrolab Friabilator (USP:米国薬局方)を使って測定した。
次の表6は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第一の態様における錠剤の溶解/ゲル化時間及び破砕性を示したものである。
【0082】
【表6】

【0083】
表6から分かるように、実施例1−1〜1−5は全て良好な溶解/ゲル化時間を示し、破砕性も比較例1−1及び1−2に似たレベルであった。すなわち、比較例1−1及び1−2で製造された錠剤の場合は、溶解時間が30秒以上であり測定不可であったが、本発明の錠剤は15秒以内に溶解とゲル化が同時に起こることが確認できた。
【0084】
次の表7は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第二の態様における錠剤の溶解/ゲル化時間、噛み砕き時の感触及び破砕性を示したものである。
【0085】
【表7】

【0086】
表7から分かるように、実施例2−1〜2−5は全て良好な溶解/ゲル化時間を示し、破砕性も比較例2−1及び2−2に似たレベルであった。すなわち、比較例2−1及び2−2で製造された錠剤の場合は、溶解時間が30秒以上であり測定不可であったが、本発明の錠剤は30秒以内に溶解とゲル化が同時に起こることが確認できた。
【0087】
錠剤の噛み砕き時及び噛み砕き後の感触の評価において、実施例2−1〜2−5の製剤は全て良好以上の評価を得たが、歯牙付着防止剤が添加されていない比較例2−1及び2−2の製剤は、不良又は極めて不良の噛み砕き感触を示した。
【0088】
次の表8は、本発明に係る錠剤型口腔衛生組成物の第三の態様における錠剤の溶解/ゲル化時間、噛み砕き時の感触及び破砕性を示したものである。
【0089】
【表8】

【0090】
表8から分かるように、実施例3−1〜3−5は全て良好な溶解/ゲル化時間を示し、破砕性も比較例3−1及び3−2に似たレベルであった。すなわち、比較例3−1及び3−2で製造された錠剤の場合は、溶解時間が30秒以上であり測定不可であったが、本発明の錠剤は30秒以内に溶解とゲル化が同時に起こることが確認できた。
【0091】
錠剤の噛み砕き時及び噛み砕き後の感触の評価において、実施例3−1〜3−5の製剤は全て良好以上の評価を得たが、歯牙付着防止剤が添加されていない比較例3−1及び3−2の製剤は、不良又は極めて不良の噛み砕き感触を示した。特に、比較例3−2の製剤は、使用後に対象の錠剤が歯に挟まり、溶解時間も極めて遅いことを示した。
【0092】
次いで、実施例及び比較例で製造した錠剤の経時安定性に関して、錠剤の所定の温度での経時変化を目視観察による錠剤の状態にて確認し、これを下記の基準に基づき評価した結果を、表9〜11に示す:
◎:安定(外観上、変色、形状変化などが観察されない)
○:比較的安定(外観上やや変色があるものの、品質上の問題は観察されない)
△:比較的不安定(外観に変色があり、形状の変化が観察される)
×:極めて不安定
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
表9〜11から分かるように、本発明の実施例で製造した組成物の経時安定性は、比較例と同等なレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
上記から明らかなように、本発明に係る同時溶解及びゲル化口腔衛生剤は既存の軟膏状や液状製品と異なって、錠剤の剤型にされていることを特徴とする。本発明の錠剤型口腔衛生剤は、口腔の健康を保つために使用される。すなわち、口腔衛生剤は、直接口腔に投入することによって水又は唾液により、又は噛み砕きにより溶解及びゲル化されてうがい又は口すすぎに使用することができる。既存の口腔衛生用品のように、本発明の口腔衛生剤は、歯ブラシに載せておいて水を流すとゲル状の口腔衛生剤になるように製剤化することができる。このように本発明の製剤は、既存の液状や軟膏状の口腔衛生剤の不便な点を軽減するのみならず、携帯も容易であるとの利点がある。
【0098】
本発明の好ましい態様が、説明の目的で開示されているが、添付の特許請求の範囲に開示されているような本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の修正、付加及び置換が可能であることを、当業者は理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及びその他の有用性は、添付の図面と併せて詳細な説明から、より明確に理解されるであろう。
【図1】図1は、本発明の同時溶解及びゲル化錠剤の一般的な製造方法の模式図である。
【図2】図2は、本発明の同時溶解及びゲル化錠剤の製造において、ゲル化剤を結合剤溶液と共に投入する方法の模式図である。
【図3】図3は、本発明の同時溶解及びゲル化錠剤の製造において、ゲル化剤を多孔性プラスチック顆粒の製造後に投入する方法の模式図である。
【図4】図4は、本発明の同時溶解及びゲル化錠剤の製造において、2種の顆粒を製造した後に顆粒を打錠して錠剤を製造する方法の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤及び水浸透促進剤を必須構成成分とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水によって同時溶解及びゲル化(in-situ melting and gelling)されることを特徴とする、錠剤型口腔衛生組成物。
【請求項2】
多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤、水浸透促進剤及び歯牙付着防止剤を必須構成成分とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水の存在下での噛み砕きによって同時溶解及びゲル化されることを特徴とする錠剤型口腔衛生組成物。
【請求項3】
多孔性プラスチック顆粒材料、結合剤、ゲル化剤、水浸透促進剤、歯牙付着防止剤及び保湿剤を必須構成成分とする多孔性プラスチック顆粒が、500kg/cm以下の圧力で打錠して製造され、口腔内の唾液又は水によって、あるいは噛み砕きによって同時溶解及びゲル化されることを特徴とする錠剤型口腔衛生組成物。
【請求項4】
組成物が、口腔内で30秒内にゲル化が行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項5】
多孔性プラスチック顆粒材料の含量が、組成物の総重量に対して20〜95重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項6】
結合剤の含量が、組成物の総重量に対して1〜90重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項7】
ゲル化剤の含量が、組成物の総重量に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項8】
水浸透促進剤の含量が、組成物の総重量に対して20〜80重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項9】
歯牙付着防止剤の含量が、組成物の総重量に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の口腔衛生組成物。
【請求項10】
保湿剤の含量が、組成物の総重量に対して0.01〜20重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の口腔衛生組成物。
【請求項11】
多孔性プラスチック顆粒材料が、フルクトース(fructose)、ラクチトール(lactitol)、マルチトール(maltitol)、マルトース(maltose)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、蔗糖、エリスリトール(erythritol)、キシリトール、マルトデキストリン(maltodextrin)、デキストリン(dextrin)、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、アルファ化澱粉、アラビアゴム、キサンタンゴムとその誘導体、グアーガムとその誘導体、海藻ガム、カラギーナン、デキストラン、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、澱粉及び澱粉誘導体、セルロースエステル、不飽和酸のホモあるいは共重合体、不飽和アミドのホモあるいは共重合体、アクリルイミンのホモあるいは共重合体、ビニルポリマー、ビニルエステルのホモあるいは共重合体、アルキルグリコール、ポリアルキレンオキシド、オキシエチレンアルキルエステル、デキストレート、デキストリン、デキストロース(ブドウ糖)、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、粉末セルロース、酢酸セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、シリカ及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、 請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項12】
水浸透促進剤が、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース(ブドウ糖)、フルクトース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、蔗糖、エリスリトール、キシリトール、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、粉末セルロース、酢酸セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、架橋ポリビニルピロリドン及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項13】
結合剤が、デキストレート、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、蔗糖、エリスリトール、キシリトール、アカシア、アルギン酸、カルボマー(カルボポール)、カルボキシメチルセルロース、セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項14】
ゲル化剤が、アカシアガム、寒天ガム、ジェランガム、グアーガム、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルマレイン酸/無水マレイン酸共重合体、カルボポール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタンゴム、カラギーナン、高多孔性ハイドロゲル(super porous hydrogel)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項15】
歯牙付着防止剤が、モノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の口腔衛生組成物。
【請求項16】
保湿剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の口腔衛生組成物。
【請求項17】
虫歯予防剤、歯石沈着予防剤、歯周病予防剤、抗菌剤、抗炎剤及び歯の美白剤から選択される少なくとも1つが、0.001〜10重量%の量でさらに含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項18】
発泡剤が、0.001〜10重量%の量でさらに含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項19】
研磨剤が、5〜70重量%の量でさらに含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項20】
組成物の総重量に対して0.001〜10重量%の着香剤及び0.001〜20重量%の甘味剤の少なくとも1つが、さらに含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。
【請求項21】
滑剤が、0.1〜5重量%の量でさらに含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔衛生組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−526040(P2009−526040A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554143(P2008−554143)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000687
【国際公開番号】WO2007/091856
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(502178883)エル・ジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミティッド (6)
【Fターム(参考)】