説明

同時電源起動システム

【課題】従来のループ回路を用いた複数電源システムでは、1つでも電源モジュールに障害が発生すると、ループ回路が"開"となってしまい、電源が負荷に対して電力の供給を開始できない、もしくは供給を停止してしまう。
【解決手段】かかる課題を解決するために本発明は、上記問題点を解決するために、複数の電源部と、負荷に対して各電源を供給開始するための複数のスイッチと、電源供給可能な状態であるスタンバイ状態にある電源部の数を検知するスタンバイ数検知部と、検知結果に応じてスイッチをONとする命令であるON命令を出力する命令部と、を有する複数電源同時供給開始システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源モジュールで構成される電源システムにおいて、前記電源モジュールを同時に立ち上げる制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、交換機等の通信機器や放送用機器などの電源は、ラックマウント化に伴い小型化が要求されている。一つの負荷に対し複数の小型の電源を用いて電力を供給する。
【0003】
また、機器の消費電力増大化のため、小型の電源一台の電力供給容量では、負荷側が要求する電力の供給に対して不足してしまう場合が多い。よって、もし電源一台で電力供給が行われてしまうと、定格以上の負荷を電源が負担してしまうため、過負荷障害を起こし電源が停止してしまう。このことから、負荷側が要求する電力を供給可能にするため、複数の電源が用いられている。またこの場合、負荷が要求する電力を供給可能にするためには、ある一定の電源数が必要となるため、複数の電源を順に起動させ、ある一定の電源数に達した時点で電力供給を開始する必要がある。よって、従来技術では、負荷側が要求する電力を供給可能な電源数をN台とすると、起動した電源がN台未満の時点では、電力の供給を行わずスタンバイの状態とし、N台の電源が電力を供給可能状態となり負荷側が要求する電力を供給可能な状態となった時点でスタンバイ状態の電源から電力を同時供給するシステムが用いられている。
【0004】
ここで、図15に従来技術の複数台の電源モジュールを同時に立ち上げる制御システムの一例を示す。複数台の電源モジュールを同時に立ち上げる制御回路は、図15に示すようなループ回路において、N台の各電源モジュール内のスイッチ(1501、1502、1503)のループ接点情報を取り、N台全ての電源モジュールが立ち上がった際(図中の全電源モジュールが立ち上がり、ループ回路が閉じた場合にのみ)に全電源モジュールから負荷側に電力が供給されるようなシステムとなっている。
【特許文献1】特開平1−243823
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしここで、図15のような従来の電源同時起動システムでは、1つでも電源モジュールに障害が発生すると、前記ループ回路が"開"となってしまい、電源が負荷に対して電力の供給を開始できない、もしくは電力供給を停止してしまう。また、電源モジュールが全て停止してしまうため、どの電源に障害が発生したのかの判断がつかない。またさらに、電源の定期保守などで電源モジュールを交換する際に一台の電源モジュールを停止させるだけで装置自体が停止してしまい、装置の停止が許されない交換機等では採用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記問題点を解決するために、本件発明では、複数の電源部と、負荷に対して各電源部から電力を供給開始するための複数のスイッチと、電力供給可能な状態であるスタンバイ状態にある電源部の数を検知するスタンバイ数検知部と、検知結果に応じて前記複数のスイッチを同時にONとする命令であるON命令を出力する命令部と、を有する複数電源同時供給開始システムを提供する。また、スイッチと、命令部と、は電源部数と同数備えられ、電源部と、スイッチ部と、命令部とは、各一揃えがモジュール筐体に収納され、スタンバイ数検知部は、ボード上に一体的に備えられている複数電源同時供給システムを提供する。また、スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るためのスタンバイ数検知用抵抗と、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき第二電圧を生成する比較抵抗と、からなる複数電源同時供給システムを提供する。また、スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るための一のスタンバイ数検知用抵抗と、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき各電源部に対応した第二電圧を生成する比較抵抗と、からなる複数電源同時供給システムを提供する。また、各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値であり、電源部のスタンバイ数が第一電圧と比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなる複数電源同時供給システムを提供する。また、スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイに応じて得られる電圧の総和である第三電圧を得るためのスタンバイ数検知部であるスタンバイ数検知用電圧加算器と、命令部であるコンパレータにてこの第三電圧と比較すべき第四電圧を生成する比較抵抗と、からなる複数電源同時供給システムを提供する。また、各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値であり、電源部のスタンバイ数が第三電圧と比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなる請求項6に記載の複数電源同時供給システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上のような構成をとる本発明によって、従来技術で説明したようなループ接点情報のAND条件でなく、電源部のスタンバイ数に応じた多数決での同時起動が可能になる。また、一部の電源部(電源モジュール)に障害が発生しても、装置負荷に対し、他の電源部が電力供給を行うことができる。また、装置運用中に電源モジュールの交換が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、各発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0009】
なお、以下の実施形態と請求項の関係は次の通りである。実施形態1は、主に請求項1,請求項2などについて説明する。また、実施形態2は、主に請求項3などについて説明する。また、実施形態3は、請求項4、請求項5などについて説明する。また、実施形態4は、主に請求項6、請求項7などについて説明する。
【0010】
<<実施形態1>>
<実施形態1の概要>
本実施形態は、図1に示すように、装置電源(0100)が複数の電源モジュール(0101、0102、0103)を持ち、装置負荷(0190)に対し電力を供給するシステムにおいて、電源モジュールが電源供給可能な状態(スタンバイ状態)になったことを検知する検知部(0120)の結果により、装置電源が負荷に電力供給開始するシステムである。混乱回避のため図中には3台のみ電源モジュールを記載しているが、電源モジュール数は2台以上の任意の整数である。
【0011】
<実施形態1の構成>
本実施形態は、複数の電源部と、複数のスイッチと、スタンバイ数検知部と、命令部とを有する複数電源同時供給開始システムに関する。
【0012】
図2に本実施形態におけるブロック図の一例を示す。本実施形態の複数電源同時供給開始システムは、複数の「電源部」(0201、0202、0203)と、複数の「スイッチ」(0211、0212、0213)と、「スタンバイ数検知部」(0220)と、「命令部」(0230)とを有する。
【0013】
「電源部」(0201、0202、0203)は、前述したように装置負荷に対して電力を供給するよう構成されている。例えば、DC―DCコンバータやAC−DCコンバータなどで構成されてもよい。ここで、各電源部は、スタンバイ状態(負荷に対して電力供給可能な状態)になったとき、後述するスタンバイ数検知部に、自身がスタンバイ状態になったことを示す信号を出力するよう構成してもよい。またここで、本実施形態の複数電源同時供給開始システムでは電源部を複数(N台)利用しているが、図面上の混乱を避けるため、図中では電源部1(0201)、電源部2(0202)、電源部N(0203)のみを記載する。これは、電源部が3台のみで構成されるわけではなく、N台の電源部が存在することを意味しており、このことを念のため記述しておく(以下、スイッチ等でも同じ)。またここで、負荷が動作可能な電力を供給するのに必要な電源部数をM台とすると、N=M+1台もしくはN=M+X台(Xは任意の正の整数)を用意することで、負荷に対する電源の冗長化をすることもできる。
【0014】
「スイッチ」(0211、0212、0213)は、負荷に対して各電源部から電力を供給開始するよう構成されている。ここで、スイッチのON、OFFは後述する命令部の命令により決定される。ここで図3にスイッチと、電源部との接続の構成の具体的な一例を示す(電源部1台のみの構成)。ただしここで、この例に用いる電源部(0301)(ここではDC−DCコンバータとする)は、リモートコントロール端子(0341)を持ち、リモートコントロール端子にスイッチ(0311)が接続されているものとする。このリモートコントロール端子には、"Low"レベルの電圧(例えば、0Vから1.0V程度)が印加されるとDC−DCコンバータの出力電圧が負荷(0390)へ出力されるものとする。反対に"High"レベルの電圧(例えば、3.5Vから7.0V程度)が印加されると負荷への出力電圧はオフになるものとする。よって、図に示すようにDC−DCコンバータの前記リモートコントロール端子にスイッチ(ここではFETとする)が接続され、FETのドレインに電源端子Vccを接続する。また、FETのゲートに後述する命令部(0330)を接続する。この場合、スイッチがONになるとは、命令部からFETをオンにするハイレベルの電圧信号がゲートに印加されることを意味し、リモートコントロール端子にグランドレベルの"Low"レベルの電圧が印加され、DC−DCコンバータは出力電圧を負荷に出力することになる。
【0015】
「スタンバイ数検知部」(0203)は、電力供給可能な状態であるスタンバイ状態にある電源部の数を検知するよう構成されている。ここで、スタンバイ数検知部は、前述した各電源部がスタンバイ状態になった時に出力される信号を受け取り、その信号によりスタンバイ数を判断する制御回路等で構成されていてもよい。また、後述する命令部に、電源部のスタンバイ数が所定の数に達したと判断する場合に、命令部がON命令を出力するような信号を出力してもよい。
【0016】
「命令部」(0230)は、検知結果に応じて前記複数のスイッチを同時にONとする命令であるON命令を出力するよう構成されている。ここで、命令部は、前述したスタンバイ数検知部から出力される信号を受け取り、その信号により前述した各スイッチがONになる信号を出力する制御回路により構成してもよい。またここで、図4に示すように、命令部(0430)はN台ある複数の各電源部(0401、0402、0403)およびスイッチ(0411、0412、0413)と対応した、N個の命令部1(0431)、命令部2(0432)・・・命令部N(0433)で構成されてもよい。ここまでで各構成要件の説明を終わる。
【0017】
次に、図5に示すように、本発明の複数電源同時供給開始システムは、スイッチと、命令部と、は電源部数と同数備えられ、電源部(0501、0502、0503)と、スイッチ(0511、0512、0513)と、命令部(0531、0532、0533)とは、各一揃えがモジュール筐体に収納され、スタンバイ数検知部(0520)は、ボード上に一体的に備えられているよう構成されていてもよい。これにより、各電源部を有するモジュール筐体(電源モジュール1(0551)、電源モジュール2(0552)、・・・電源モジュールN(0553))と、スタンバイ検知部(0520)に接続される配線が前記モジュール毎に配線でき、シンプルな構成をとることができる。また各電源モジュールとスタンバイ数検知部ボードを分けて構成することから、故障等の障害が発生した場合、その障害の発生した電源モジュールのみを交換することで障害が回復し、スタンバイ検知部まで交換する必要がない。また、M+1台などのように負荷が要求する電力以上の電源モジュールが組み込まれ冗長化されている場合は、障害の発生したモジュールを取除いても負荷に対する電力供給が停止しないため、常時駆動が必要な機器に対して有効である。またここで、スイッチや命令部が電源モジュール筐体に収納されるのではなく、スタンバイ検知部ボード上に備えられてもかまわない。スイッチや命令部が信頼性の高い電子部品で構成される場合、特に交換を目的とした電源モジュール側に収納しなくてもよいと考えられるからである。
【0018】
<実施形態1の効果>
以上により本実施形態における複数電源同時供給開始システムは、従来技術で説明したようなループ接点情報のAND条件で電力を負荷に同時供給開始するのではなく、電源モジュールのスタンバイ数に応じた多数決での一斉起動が可能になる。また、一部の電源モジュールの障害が発生しても、装置負荷に電力供給が行え、装置の運用を停止することなしに障害の発生した電源モジュールの交換やメンテナンスが可能になる。また、電源モジュール筐体側にスイッチや命令部を収納し、電源モジュールとスタンバイ数検知部を別けて構成することで、電源モジュールに不具合が起こった場合、電源モジュールのみ交換し、スタンバイ数検知部とそれに接続されている不具合のない電源モジュールを交換させなくてよい。
【0019】
<<実施形態2>>
<実施形態2の概要>
本実施形態は、実施形態1で用いられた命令部にコンパレータを用い、そのコンパレータに入力する電圧を発生するためのスタンバイ数検知部にスタンバイ数検知用の抵抗と、閾値電圧を生成するための抵抗を用いている。
【0020】
<実施形態2の構成>
本実施形態は、スタンバイ数検知部が、スタンバイ数検知用抵抗と、比較抵抗とを有する複数電源同時供給開始システムに関する。
【0021】
図6に本実施形態における回路構成の一例を示す。本実施形態の複数電源同時供給開始システムは、スタンバイ数検知部(0620)が、スタンバイ数検知用抵抗(0621)と、比較抵抗(0622)とを有する。また、命令部がコンパレータ(0631、0632、0633)で構成されている。
【0022】
「スタンバイ数検知用抵抗」(0621)は、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るよう構成されている。ここで、図6に示すように、スタンバイ数検知用抵抗に第一電圧Vnを生成させる構成として、電源部が電力供給可能な状態であるスタンバイ状態になった場合に、電源部が有する電流源から所定の電流が供給されるようにしてもよい。この場合、図7に示すように、ノードAに階段状の電圧が現れることになる。ここで以下に、ノードAに階段状の電圧が生じる説明を行う。図7の領域0701では、電源部がスタンバイ状態にない場合であり、前記電流源からの電流がスタンバイ数検知用抵抗に出力されないため、ノードAには所定の電圧が生じない。次に、領域0702では、電源部一台がスタンバイ状態になった場合であり、一台の電流源からの電流がスタンバイ数検知用抵抗に出力され、ノードAには電圧V1が生じる。次に、領域0703では、電源部一台がスタンバイ状態になった場合であり、二台の電流源からの電流がスタンバイ数検知用抵抗に出力され、ノードAには電圧V2が生じる。以後、各電源部がスタンバイ状態になるにつれ、第一電圧Vnは階段状に増加していくことになる。
【0023】
「命令部」は、コンパレータ(0631、0632、0633)で構成されている。ここで、コンパレータとは、電圧比較器のことであり、二つの入力電圧を比較し、その大小により出力をハイレベルとローレベルの2値に変換する。コンパレータの例としては、図8(a)に示すような、オープンループのオペアンプ(0831)を利用した回路構成となる。通常、オペアンプは、2つの入力電圧(ここではVnとVth)の差を増幅するのに利用する。ただ、その増幅度が非常に大きいため普通は負帰還をかけて使うが、コンパレータとして使うときには負帰還をかけずオープンループで利用する。よって、入力電圧のわずかな差を非常に大きく増幅するため、入力電圧に少しでも差があると出力電圧は正か負(本例では0V)に飽和することになり、図8(b)に示すようなグラフとなる。例えば図に示すように、非反転端子の入力電圧Vthを基準にすると、反転端子の入力電圧Vnが電圧Vth以下だと、電圧V3の電圧出力になり、反転端子の入力電圧Vnが非反転端子の入力電圧Vth以上だと、0V付近の電圧出力となる。ただしここで出力される電圧は、オペアンプの増幅度に増幅された電圧が出力されるのではなく、オペアンプに印加される電源電圧Vcc付近で飽和してしまうため図のような出力図形になる。
【0024】
「比較抵抗」(0622)は、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき第二電圧を生成するよう構成されている。ここで例えば、図6に示すように、比較抵抗に第二電圧を生成させる構成として、電源電圧Vccを比較抵抗に印加するなどの方法がある。またこの場合、比較抵抗は、所定の電圧Vthを前述したコンパレータに入力するためには、電源からの電圧を分圧するための2つの抵抗(0622、0623)からなるように構成してもよい。
【0025】
図9に前述した図6の回路構成において、スタンバイ数検知用抵抗と比較抵抗によって生じ、コンパレータに入力される第一電圧Vnと第二電圧Vthの関係の一例を示す。まず、電源部が電力供給可能な状態であるスタンバイ状態になった場合に、そのスタンバイ数に応じて電流源から所定の電流が供給される。そして、階段状の第一電圧VnがノードAに表れ、その第一電圧Vnがコンパレータに入力される。またここで、コンパレータの他方の入力端には、比較抵抗により生じるノードBの電圧である第二電圧Vthが入力されることになる。
【0026】
ここで、各電源部を起動させ順次スタンバイ状態にしていく。まず、状態0901では、電源部が電力供給可能な状態であるスタンバイ状態に一台もない場合であり、電流源から電流がスタンバイ数検知抵抗に流れず、ノードAには電圧は生じない。このためため、コンパレータは、実施形態1で記載したようなスイッチをONにするON命令を出力しない。次に、状態0902では、電源部一台が電力供給可能な状態であるスタンバイ状態となり、電流源から電流がスタンバイ数検知抵抗に流れ、ノードAに電圧V4が生じる。そのため、電圧V4がコンパレータに入力される。しかし、コンパレータの他方の端子に入力されている基準電圧である第二電圧Vthよりも低いため、状態0901と同様に、コンパレータは、スイッチをONにするON命令を出力しない。次に、状態0903では、電源部二台がスタンバイ状態となり、二台分の電流源から電流がスタンバイ数検知抵抗に流れ、ノードAに電圧V5が生じる。この電圧は、コンパレータの他方の端子に入力されている基準電圧である第二電圧Vthよりも高いため、コンパレータはスイッチをONにするON命令を出力する。よって、この時点でスタンバイ状態の電源部が全て起動し、負荷に電力を供給することができるようになる。以上により、第一電圧と第二電圧の関係を調節することで、負荷に必要な電力を供給する複数の電源部を同時に起動させることができる。また、電源を冗長化する場合、続けて他の電源部を起動し、状態0904としてもよい。この時、ノードAに現れる電圧はV6になり、状態0903と同様にコンパレータの出力は、スイッチをONにするON命令を出力する。
【0027】
以上で、負荷が要求する電力が電源部2台以上からの電力供給が必要な場合を説明した。またさらに、負荷が要求する電力が電源部3台以上からの電力供給が必要な場合は、命令部であるコンパレータに入力される第一電圧Vnと第二電圧Vthとの関係を変えればよい。例えば、図10に示すように、第二電圧Vthを生じる比較抵抗の値を変え、VthをV5とV6間に設定すれば、電源部が3台スタンバイ状態になった状態で電源が同時起動できるようになる。また、スタンバイ数検知抵抗の値を変えることで、階段のステップ間隔Vstepを調節することが可能である。このため、第二電圧Vthを変化させず、Vstepを調節することで、電源部が3台スタンバイ状態になった状態で電源が同時起動できるようにしてもよい。以下、電源部が4台必要な場合も同様にそれぞれの抵抗値を変えればよい。
【0028】
<実施形態2の効果>
以上により本実施形態における複数電源同時供給開始システムは、従来技術で説明したようなループ接点情報のAND条件で電力を負荷に同時供給開始するのではなく、電源モジュールのスタンバイ数に応じた多数決での一斉起動が可能になる。また、スタンバイ数検知部に、電源(電源端子)と、スタンバイ数検知用抵抗と、比較抵抗の比較的簡単な回路構成ですむよう構成できる。
【0029】
<<実施形態3>>
<実施形態3の概要>
本実施形態は、実施形態2を基本とし、スタンバイ数検知部の比較抵抗が電源部数と同数あることを特徴とする。
【0030】
<実施形態3の構成>
本実施形態は、スタンバイ数検知部が、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るための一のスタンバイ数検知用抵抗と、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき各電源部に対応した第二電圧を生成する比較抵抗と、からなるよう構成されている。ここで、「スタンバイ数検知用抵抗」と「命令部」と「比較抵抗」は、実施形態2において既に記載済みのため、本実施形態では説明を省略する。
【0031】
図11に本実施形態における回路構成の一例を示す。基本的には実施形態2に記載した図6と類似な構成であるが、比較抵抗(1124、1125、1126)が各電源部に対応し、同数用意されている点等が異なる。ここで、ノードC、ノードD、ノードEに生じる第二電圧は、電源部がスタンバイ状態になった場合に、電源部が有する電流源(1171、1172、1173)から所定の電流が供給されるように構成されてもよい。また、図12に示すように、各比較抵抗に所定の電圧を出力する電源を繋ぎ、各2つの抵抗により分圧してノードF、ノードG、ノードHに第二電圧を生成させるようにしてもよい。また、比較抵抗は電源モジュール側に搭載されていてもよい。
【0032】
また、各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値(もしくは略同じ値)であり、電源部のスタンバイ数が第一電圧Vnと比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなるよう構成されてもよい。よって、結果としては、コンパレータに入力される電圧VnとVthは、図9と同様のグラフとなり、実施形態2で説明したのと同様に、スタンバイ数検知用抵抗と比較抵抗から生じる電圧の関係によって、複数の電源部の同時起動を可能にし、負荷に必要な電力を供給することができる。この場合、スタンバイ数検知部において構成される電子部品は、すべて受動電子部品となり回路の構成が簡単となる。
【0033】
またここで、実施形態1にも記載したように、電源部、命令部、スイッチは各一揃えが電源モジュール側に収納され、スタンバイ数検知部がボード上に一体的に備えられている場合を考える。この場合、スタンバイ数検知部のボード上に一体的に備えられているスタンバイ数検知抵抗と比較抵抗が受動電子部品のため、スタンバイ数検知部は故障が発生しにくい。よって、障害等によりスタンバイ数検知部のボードを交換することが非常に少なくなる。このことは、能動電子部品が収納されている電源モジュール側の方が、抵抗のみで構成されるスタンバイ数検知部のボード側よりも障害が発生する可能性が高いともいえる。よって、障害の発生の少ないスタンバイ数検知部のボードと電源モジュール側を分ける構成により、比較的障害の発生しやすい電源モジュールを交換可能とすることでシステムの信頼性を上げることができる。さらにこのとき、各電源モジュールはスタンバイ数検知部側から見た場合、個性がないため、どの電源モジュールからスタンバイ状態になったとしても問題がない。また、冗長化された電源の場合、ある電源モジュールに障害が発生し、その電源モジュールを取除いたとしても負荷に対する電力供給は変わらない。よって、装置の運用を停止することなく電源モジュールを挿抜することが可能である。
【0034】
<実施形態3の効果>
以上により本実施形態における複数電源同時供給開始システムは、従来技術で説明したようなループ接点情報のAND条件で電力を負荷に同時供給開始するのではなく、電源モジュールのスタンバイ数に応じた多数決での一斉起動が可能になる。また、実施形態2の構成に比べ、スタンバイ数検知部に電源が不要で、さらに全て抵抗などの受動部品で回路の構成ができシンプルな回路構成にすることができる。また、受動部品のみの構成は故障しにくいため信頼性をあげることができる。また、比較抵抗の値が全て同じ値とした場合、上記の効果に加え、冗長化された電源において、ある電源モジュールに障害が発生した場合、その電源モジュールを取除いたとしても装置の運用を停止することなく電源モジュールを挿抜することが可能である。
【0035】
<<実施形態4>>
<実施形態4の概要>
本実施形態は、実施形態3で用いられた電源部の電流源の代わりに電圧源を用いている。
【0036】
<実施形態4の構成>
本実施形態は、スタンバイ数検知部が、スタンバイ数検知用電圧加算器と、比較抵抗とを有する複数電源同時供給開始システムに関する。
【0037】
図13に本実施形態における回路構成の一例を示す。本実施形態の複数電源同時供給開始システムは、スタンバイ数検知部(1320)が、スタンバイ数検知用電圧加算器(1381)と、比較抵抗(1382、1383、1384)とを有する。ただし「コンパレータ」は実施形態2で既に記載ずみであり、本実施形態において説明は省略する。
【0038】
「スタンバイ数検知用電圧加算器」(1381)は、電源部のスタンバイに応じて得られる電圧の総和である第三電圧を得るよう構成されている。ここで、図13に示すように、スタンバイ数検知用電圧加算器に第三電圧Vnを生成させる構成として、電源部が電力供給可能な状態であるスタンバイ状態になった場合に、電源部から所定の電圧が出力されるようにしてもよい。よって、このような構成により、ノードIに第三電圧Vnが生成される。図14にスタンバイ数検知用電圧加算器の回路の構成の一例を示す。このように、オペアンプ(1401)を用いた電圧加算器により入力電圧の総和を得ることができる。ただし、オペアンプ(1401)の出力電圧は、入力電圧に対し反転した電圧が出力される。よって、後段にオペアンプ(1402)を用いた反転増幅器を組み合わせることで、入力電圧と同相の電圧を得ることができる(ただし、上記回路に用いている抵抗の値は全て同じ値となる)。
【0039】
「比較抵抗」(1382、1383、1384)は、命令部であるコンパレータにて第三電圧Vnと比較すべき第四電圧Vthを生成するよう構成されている。ここで例えば、図13に示すように、比較抵抗に第四電圧を生成させる構成として、各電源部(1301、1302、1303)からのスタンバイ検知部に出力される電圧を、所定の電圧に分圧するため、それぞれ2つの抵抗(1382と1385、1383と1386、1384と1387)からなるように構成してもよい。よって、これら2つの抵抗間に存在するノードJ、ノードK、ノードLに第四電圧が生成される。
【0040】
また、各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値であり、電源部のスタンバイ数が第三電圧と比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなるよう構成されていてもよい。このような構成をとる本実施形態により、コンパレータに入力される第三電圧Vnと第四電圧Vthの関係は、図9と同様なグラフとなり、実施形態2で説明したのと同様に、スタンバイ数検知用電圧加算器と比較抵抗から生じる電圧の関係によって、複数の電源部の同時起動を可能にし、負荷に必要な電力を供給することができる。
【0041】
<実施形態4の効果>
以上により本実施形態における複数電源同時供給開始システムは、従来技術で説明したようなループ接点情報のAND条件で電力を負荷に同時供給開始するのではなく、電源モジュールのスタンバイ数に応じた多数決での一斉起動が可能になる。また、実施形態2、実施形態3で用いた電流源を構成する回路が要らない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1における複数電源同時供給開始システムの構成の概略斜視図の一例
【図2】実施形態1における複数電源同時供給開始システムのブロック図の一例
【図3】実施形態1におけるスイッチの構成の一例
【図4】実施形態1における複数電源同時供給開始システムのブロック図の別の例
【図5】実施形態1における複数電源同時供給開始システムのブロック図の別の例
【図6】実施形態2における複数電源同時供給開始システムのブロック図兼回路図の一例
【図7】実施形態2におけるノードAに生じる電圧を表すグラフの一例
【図8】実施形態2における命令部を構成する回路の一例
【図9】実施形態2における第一電圧と第二電圧との関係を表すグラフの一例
【図10】実施形態2における第一電圧と第二電圧との関係を表すグラフの別の例
【図11】実施形態3における複数電源同時供給開始システムのブロック図兼回路図の一例
【図12】実施携帯3における複数電源同時供給開始システムのブロック図兼回路図の別の例
【図13】実施形態4における複数電源同時供給開始システムのブロック図兼回路図の一例
【図14】実施形態4における電圧加算器の回路の一例
【図15】従来技術の複数台の電源モジュールを同時に立ち上げる制御システムのブロック図の一例
【符号の説明】
【0043】
0201 電源部1
0202 電源部2
0203 電源部N
0211 スイッチ1
0212 スイッチ2
0213 スイッチN
0220 スタンバイ数検知部
0230 命令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源部と、
負荷に対して各電源部から電力を供給開始するための複数のスイッチと、
電力供給可能な状態であるスタンバイ状態にある電源部の数を検知するスタンバイ数検知部と、
検知結果に応じて前記複数のスイッチを同時にONとする命令であるON命令を出力する命令部と、
を有する複数電源同時供給開始システム。
【請求項2】
スイッチと、命令部と、は電源部数と同数備えられ、
電源部と、スイッチと、命令部とは、各一揃えがモジュール筐体に収納され、
スタンバイ数検知部は、ボード上に一体的に備えられている請求項1に記載の複数電源同時供給システム。
【請求項3】
スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るためのスタンバイ数検知用抵抗と、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき第二電圧を生成する比較抵抗と、からなる請求項1又は2に記載の複数電源同時供給システム。
【請求項4】
スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイ数に応じて得られる電流により第一電圧を得るための一のスタンバイ数検知用抵抗と、命令部であるコンパレータにてこの第一電圧と比較すべき各電源部に対応した第二電圧を生成する比較抵抗と、からなる請求項1又は2に記載の複数電源同時供給システム。
【請求項5】
各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値であり、電源部のスタンバイ数が第一電圧と比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなる請求項4に記載の複数電源同時供給システム。
【請求項6】
スタンバイ数検知部は、電源部のスタンバイに応じて得られる電圧の総和である第三電圧を得るためのスタンバイ数検知部であるスタンバイ数検知用電圧加算器と、命令部であるコンパレータにてこの第三電圧と比較すべき第四電圧を生成する比較抵抗と、からなる請求項1又は2に記載の複数電源同時供給システム。
【請求項7】
各電源部に対応した複数の比較抵抗値はすべて同じ値であり、電源部のスタンバイ数が第三電圧と比較して所定の関係となった場合には各スイッチがONとなる請求項6に記載の複数電源同時供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−141839(P2008−141839A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324232(P2006−324232)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(599083318)株式会社メディアグローバルリンクス (12)
【Fターム(参考)】