説明

吐出器

【課題】複数の内容物の混合比を高精度で調整できるようにする。
【解決手段】複数の容器の口部が各別に着脱自在とされた複数の装着筒部11,12を有する装着部材10と、複数の容器に各別に収納される複数の内容物が吐出される吐出口42を有するヘッド部材40と、軟質材によって形成されて複数の装着筒部11,12内と吐出口42とを各別に連通させる複数の連通管路60と、複数の連通管路60を挿通させた状態でこれらの連通管路60に対して回転自在に取り付けられる調整リング20と、を備える吐出器1を構成する。平面視円形状の調整リング20の内周縁21aの中心軸を調整リング20の回転中心軸Lに対しして偏心させる。また、調整リング20の回転位置に応じて一の連通管路60が調整リング20の内周縁に押し潰されることで、一の連通管路60の流路断面積が変化するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、接着剤、クリーム剤等の内容物には、複数の混合要素剤を混合させることで効力を発揮するものがある。そこで、従来では、例えば特許文献1のように、使用前には2種類の混合要素剤を各別のチューブ(収納部)に収納しておき、使用時において2種類の混合要素剤を各チューブから注出させると同時に混合させるように構成された混合吐出容器が使用されている。
ところで、薬剤、接着剤、クリーム剤等の内容物には、複数の混合要素剤の混合比を適正に調整することが要求されている。
そこで、特許文献1に記載の混合吐出容器においては、混合要素剤を注出するための注出口が形成された端板を一方のチューブに設け、さらに端板の上面に対して摺接状態で回転可能とされた円板を取り付けている。この円板には大小多数の円孔が形成されており、この円板を回転させることで注出口に重なる円孔が選択されるようになっている。すなわち、この混合吐出容器では、注出口に重なる大小多数の円孔を適宜選択することで、注出口の実質的な開口径を適宜変更することができ、一方のチューブから注出される混合要素剤の量を調整して、2つの混合要素剤の混合比の調整を図っている。
【特許文献1】実公昭57−28767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の混合吐出容器では、一方のチューブから混合要素剤を注出する際、あるいは、円板を回転させる際に、混合要素剤が端板と円板との間に漏れ出す虞がある。
すなわち、端板と円板との摺接面の気密性を確保することは困難であり、結果として、2つの混合要素剤の混合比を高精度に調整することが困難となる。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、個別に収納された複数の混合要素剤の混合比を高い精度で調整することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吐出器は、複数の容器の口部が各別に着脱自在とされた複数の装着筒部を有する装着部材と、前記複数の容器に各別に収納される複数の内容物が吐出される吐出口を有するヘッド部材と、前記複数の装着筒部内と前記吐出口とを各別に連通させる複数の連通管路と、前記複数の連通管路を挿通させた状態でこれらの連通管路に対して回転自在に取り付けられる調整リングと、を備え、前記複数の連通管路が、弾性変形可能な軟質材からなり、当該調整リングの内周縁が平面視円形状に形成されると共に当該内周縁の中心軸が前記調整リングの回転中心軸に対して偏心しており、当該調整リングの回転位置に応じて、少なくとも一の連通管路が前記調整リングの内周縁に押し潰されて、前記一の連通管路の流路断面積が変化することを特徴としている。
【0006】
この吐出器においては、各容器に収納された複数の内容物を、各容器の口部が接続された装着部材から複数の連通管路及び吐出口を介して吐出することができる。このように、内容物を吐出させるための流路が連通管路によって形成されているため、この流路の気密性を十分に確保することができる。
そして、調整リングを回転させることで一の連通管路の流路断面積が変化するため、すなわち、一の連通管路を通る一の内容物の流量が変化するため、これら複数の内容物の混合比を容易に変更することができる。ここで、前述したように、各容器の口部から吐出口に至るまでの流路の気密性は連通管路によって十分に確保されているため、内容物の混合比を高い精度で調整することが可能となる。
【0007】
また、本発明に係る吐出器は、前記調整リングを回転させるにしたがって、複数の連通管路のうち第一の連通管路の流路断面積が増加すると同時に、複数の連通管路のうち第二の連通管路の流路断面積が減少するように構成されてもよい。
【0008】
このように吐出器を構成した場合には、複数の内容物の各吐出量を同時に変更することができるため、吐出口から吐出される複数の内容物の混合比をさらに容易に調整することができる。
また、吐出口から吐出される複数の内容物の合計流量を大きく変化させること無く混合比を調整できるため、混合された複数の内容物を吐出させる操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の容器に各別に収納された複数の内容物を吐出させる際の混合比を高い精度で調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る吐出器の一実施形態について図1〜図4に基いて説明する。
なお、本実施形態では、吐出器1のうち2つの容器2,3の口部2a,3aが接続される側(図1における下側)を下方とし、吐出器1のうち2つの容器2,3に収納される2つの内容物を混合状態あるいは選択的に吐出させる側(図1における上側)を上方とする。また、上下方向に延在する図1に示す符号Lは、装着部材10、調整リング20、支持部材30、ヘッド部材40、及びカバー部材50に共通する中心軸線を示しており、以下、単に中心軸線Lと記す。
【0011】
図1及び図2に示すように、吐出器1は、2つの容器2,3の口部2a,3aが各別に着脱自在とされた2つの装着筒部11,12を有する装着部材10と、2つの容器2,3に各別に収納される内容物を吐出させる吐出口42が形成されたヘッド部材40と、2つの装着筒部11,12と吐出口42とを各別に連通させる2つの連通管路60,60と、これら2つの連通管路60,60を挿通させた状態で2つの連通管路60,60に対して回転自在に取り付けられる調整リング20と、装着部材10の上側に取り付けられて2つの連通管路60,60の長手方向の中途部を支持する支持部材30と、調整リング20よりも上方に位置するヘッド部材40、連通管路60,60及び支持部材30を覆うカバー部材50と、を備えている。
なお、前述したように、装着部材10、ヘッド部材40、調整リング20、支持部材30及びカバー部材50は、中心軸線Lを共通軸としてそれぞれ配設されている。
【0012】
装着部材10には、下方に向けて開口する装着穴13が2つ形成されており、2つの容器2,3の口部2a,3aは、これら2つの装着穴13,13に各別に着脱自在に嵌合されている。なお、各装着穴13は中心軸線Lに平行する中心線L1を中心とした平面視略円形状に形成されている。また、2つの装着穴13,13は、中心軸線Lに関して点対称となる位置に配されている。
2つの装着穴13,13の上端開口縁には、各装着穴13に容器2,3の口部2a,3aを嵌合した状態で口部2a,3aの上端開口縁が当接するフランジ状の天板部14が設けられている。各天板部14の内周縁には、下側接続筒部15が垂下されると共に、上側接続筒部16が立設されている。これら下側接続筒部15及び上側接続筒部16は、装着穴13の中心線L1を共通軸として配置されており、下側接続筒部15及び上側接続筒部16の各内径はほぼ同等になっている。そして、下側接続筒部15は、容器2,3の口部2a,3aを装着穴13に嵌合した状態で口部2a,3aの内側に嵌合されるようになっている。この状態においては、各容器2,3の口部2a,3aと装着穴13及び下側接続筒部15との気密性が十分に確保されることになる。
上述した装着穴13と、天板部14に形成された下側接続筒部15及び上側接続筒部16とが、前述した各装着筒部11,12を構成している。
【0013】
また、天板部14の上面を含む装着部材10の上端面には、中心軸線Lを中心とした大径円筒部17が立設されており、この大径円筒部17の内側に前述した上側接続筒部16が配されている。
なお、装着部材10の上端面には、中心軸線Lを中心とした不図示の小径円筒部が立設されている。この小径円筒部は2つの上側接続筒部16の間に配され、小径円筒部の周方向の一部が2つの上側接続筒部16に一体に形成されている。この小径円筒部は、後述する支持部材30を装着部材10に取り付けるために形成されている。
【0014】
調整リング20は、表裏面が中心軸線Lに直交する方向に延びるように配設された調整円環板部21と、調整円環板部21の外周縁から垂下された略円筒状の操作用周壁部22と、外周縁よりも径方向内側に位置する調整円環板部21の上面に立設された略円筒状の周壁部23と、を備えている。
調整円環板部21は、上側接続筒部16の上端上に配されるようになっており、調整円環板部21の外周縁は中心軸線Lを中心とした平面視略円形状に形成されている。また、調整円環板部21の内周縁21aは平面視略円形状に形成されているが、この内周縁21aの中心軸L2は中心軸線Lに対して偏心している。
操作用周壁部22は、大径円筒部17の外側に配され、大径円筒部17の外周面に対して周方向に摺動可能とされた状態で係合されている。これによって、調整リング20が装着部材10に取り付けられることになる。また、この係合状態においては、調整リング20が装着部材10に対して中心軸線Lを回転中心として回転自在とされている。
【0015】
なお、中心軸線Lに対する中心軸L2の位置や内周縁21aの内径寸法は、上記のように調整リング20を装着部材10に取り付けた状態において、装着部材10に対する調整リング20の回転位置に係わらず少なくとも各上側接続筒部16の内周面の周方向の一部が内周縁21aの内側に位置するように、すなわち、上側接続筒部16の上端が調整円環板部21によって完全には覆われないように設定されている。また、中心軸線Lに対する中心軸L2の位置や内周縁21aの内径寸法は、調整リング20の回転位置に応じて、調整円環板部21によって覆われる上側接続筒部16の上端の平面視面積が変化するようにも設定されている。なお、図示例における調整リング20の内周縁21aの中心軸L2の位置は、これと中心軸線Lとの距離が各上側接続筒部16の中心線L1と中心軸線Lとの距離よりも小さくなるように設定されている。
【0016】
支持部材30は、中心軸線Lに直交する方向に延びるように配設された支持円環板部31と、支持円環板部31の内周縁から垂下された取付筒部32と、を備えている。
支持円環板部31は、調整リング20の周壁部23の内側に挿入されると共に調整円環板部21上に配されるようになっている。そして、支持円環板部31には、2つの連通管路60,60を各別に挿通させるための2つの挿通孔33,33が形成されている。各挿通孔33の内径寸法は、装着部材10の上側接続筒部16の内径寸法と略等しくなるように形成されている。また、支持円環板部31は、この挿通孔33が上側接続筒部16に重なるように、すなわち、挿通孔33の中心線が上側接続筒部16の中心線L1に略一致するように配されている。
【0017】
取付筒部32は、支持円環板部31に連設された大径部34と、大径部34の下端に連設されて大径部34よりも一段小径とされた小径部35と、を有して形成されている。
小径部35は、装着部材10の小径円筒部(不図示)の内側に嵌合されるようになっており、この嵌合によって、支持部材30が装着部材10に対して位置決めされた状態で取り付けられることになる。また、小径部35を装着部材10の小径円筒部に嵌合させた状態では、大径部34の下端が上側接続筒部16の上端に突き当てられることになる。
なお、大径部34は上記の嵌合状態において大径部34の外周面が上側接続筒部16の内周面の内側に張り出さないように形成されており、この外周面の一部は上側接続筒部16の内周面に対して滑らかに連なっている。
【0018】
ヘッド部材40は、その下端に2つの連通管路60,60を各別に取り付けるための2つの接続孔41,41を形成すると共に、上端に開口して2つの接続孔41,41に連通する吐出口42を形成することで構成されている。
なお、このヘッド部材40においては、その上端に一体に立設された延長筒部43によって吐出口42の長さが中心軸線Lに沿って延長されている。また、ヘッド部材40では、2つの接続孔41,41を相互に隔てる壁部の一部(図1における符号44)が吐出口42の下端側に入り込んでいるため、2つの接続孔41,41からなる2つの流路は吐出口42内で合流することになる。また、前記壁部44の一部を吐出口42の上端まで延設し、吐出口42内では内容物を混合しない(合流しない)構成とすることもできる。
【0019】
さらに、ヘッド部材40には、接続孔41を形成した下端からさらに下方に延びる一対の取付板部45が形成されている。一対の取付板部45は、中心軸線Lの両側に配されており、2つの接続孔41,41の配列方向に直交する方向に並べられている。このため、図1においては一方の取付板部45だけが図示されている。
そして、これら一対の取付板部45は支持部材30の大径部34の内側に嵌合すると共に、各取付板部45の下端が小径部35の上端に突き当てられることで、ヘッド部材40が支持部材30に取り付けられることになる。
【0020】
各連通管路60は、シリコンゴムや熱可塑性エラストマー等のように容易に弾性変形可能な軟質材によって構成されており、支持部材30の各挿通孔33に挿通されている。そして、各連通管路60の下端が下側接続筒部15及び上側接続筒部16の内側に嵌合されると共に各連通管路60の上端がヘッド部材40の接続孔に嵌合されることで、2つの装着筒部11,12内と吐出口42とが各別に連通されることになる。
【0021】
カバー部材50は、調整リング20、支持部材30及びヘッド部材40の上方に配されてこれらを覆う天壁部51と、天壁部51の外周縁から下方に連設された嵌合周壁部52と、を備えている。
天壁部51は、上方に向けて膨出したドーム状に形成されており、その中央部には中心軸線L方向に貫通してヘッド部材40の延長筒部を嵌合させるための嵌合孔53が形成されている。したがって、カバー部材50をヘッド部材40に取り付けても吐出口42は外方に向けて開口することになる。
【0022】
嵌合周壁部52は、調整リング20の周壁部23の外周面に嵌合されるように形成されており、これによってカバー部材50を調整リング20に取り付けることができる。なお、この嵌合状態において、カバー部材50は調整リング20と共に一体に回転してもよいが、調整リング20のみが回転するように調整リング20の周壁部23が嵌合周壁部52の内周面に対して摺動してもよい。ただし、カバー部材50が調整リング20と一体に回転する場合には、天壁部51の内周縁が延長筒部43の外周面に対して摺動するように、天壁部51の嵌合孔53や延長筒部43を形成する必要がある。
以上のように構成されるカバー部材50は、支持部材30やヘッド部材40、連通管路60を保護するだけではなく、ヘッド部材40を調整リング20に対して取り付ける役割も果たしている。
【0023】
次に、上記した構成からなる吐出器1の作用について説明する。
【0024】
図1,2に示すように、内周縁21aの中心軸L2が中心軸線Lと第1の装着筒部11の中心線L1との間に配されるように、調整リング20の回転位置が設定されている状態においては、中心軸線Lから第1の装着筒部11の中心線L1に向かう線上で中心軸線Lから内周縁21aに至るまでの距離(以下、第1の距離と呼ぶ。)が最大となり、中心軸線Lから第2の装着筒部12の中心線L1に向かう線上で中心軸線Lから内周縁21aに至るまでの距離(以下、第2の距離と呼ぶ。)が最小となる。
この設定状態においては、第1の装着筒部11に接続された第1の連通管路60Aは押し潰されるような外力を受けない。そして、第1の連通管路60Aの流路断面は円形状となっており、その流路断面積が最大となる。
【0025】
一方、第2の装着筒部12に接続された第2の連通管路60Bは、調整リング20の内周縁21aによって完全に押し潰される。さらに詳述すれば、第2の連通管路60Bの長手方向の中途部が、調整リング20の内周縁21aと支持部材30の大径部34の外周面との間に挟み込まれて閉塞されている。すなわち、第2の連通管路60Bの流路断面積が0となっている。
したがって、この設定状態においては、第1の容器2に収納された内容物は吐出口42から吐出させることができるが、第2の容器3に収納された内容物は吐出することができない。
【0026】
そして、図1,2に示す状態から、例えば図3あるいは図4に示すように、調整リング20を時計回り(B方向)に回転させると、内周縁21aの中心軸L2が調整リング20の回転中心軸(中心軸線L)に対して偏心していることに基づいて、各連通管路60に対する調整リング20の内周縁の押し付け状態が連続的に変化し、これに伴って、各連通管路60の流路断面積が変化することになる。さらに詳述すれば、第1の連通管路60Aの流路断面積が減少すると同時に、第2の連通管路60Bの流路断面積が増加する。
【0027】
なお、図1,2に示す状態から、図3に示すように、調整リング20をB方向に90°だけ回転させた位置に設定した状態においては、中心軸線Lと内周縁21aの中心軸L2とを結ぶ線分が2つの中心線L1間の線分に対して直交する。
この設定状態においては第1の距離と第2の距離とが相互に等しくなる。このため、2つの連通管路60A,60Bの中途部は、調整リング20の内周縁21aによって同じ量だけ押し潰され、これらの流路断面積は互いに等しくなる。また、この状態における流路断面積は、押し潰されていない状態と比較して小さくなっている。
したがって、この設定状態においては、2つの容器2,3に収納された内容物を同じ量だけ吐出口42から吐出させることができる。
【0028】
また、図1,2に示す状態から、図4に示すように、調整リング20をB方向に180°だけ回転させた位置に設定した状態においては、内周縁21aの中心軸L2が中心軸線Lと第2の装着筒部12の中心線L1との間に配される。この設定状態においては、第1の距離が最小となると共に、第2の距離が最大となる。また、第1の距離と第2の距離との差が図1、2の場合と同様に最大となる。
この設定状態においては、第1の連通管路60Aが調整リング20の内周縁21aによって完全に押し潰される。すなわち、第1の連通管路60Aの長手方向の中途部が、調整リング20の内周縁21aと支持部材30の大径部34の外周面との間に挟み込まれて閉塞される。
一方、第2の連通管路60Bは押し潰されるような外力を受けないため、第2の連通管路60Bの流路断面が円形状となり、その流路断面積は最大となる。
したがって、この設定状態においては、第2の容器3に収納された内容物は吐出口42から吐出させることができるが、第1の容器2に収納された内容物は吐出することができない。
【0029】
以上説明したように、上記した構成からなる吐出器1によれば、2つの容器2,3に収納された2つの内容物を、各容器2,3の口部2a,3aが接続された装着部材10から2つの連通管路60A,60B及び吐出口42を介して吐出することができる。このように、内容物を吐出させるための流路が連通管路60によって形成されているため、この流路の気密性を十分に確保することができる。
そして、調整リング20を回転させることで2つの連通管路60A,60Bの流路断面積が連続的に変化するため、すなわち、各連通管路60A,60Bを通る各々の内容物の流量が変化するため、これら2つの内容物の混合比を容易に変更することができる。ここで、前述したように、各容器2,3の口部2a,3aから吐出口42に至るまでの流路の気密性は連通管路60によって十分に確保されているため、内容物の混合比を高い精度で調整することが可能となる。
【0030】
特に、この吐出器1においては、2つの内容物の各吐出量を同時に変更することができるため、吐出口42から吐出される2つの内容物の混合比をさらに容易に調整することができる。
さらに、混合状態で吐出口42から吐出される2つの内容物の合計流量を大きく変化させること無く混合比を調整できるため、混合された2つの内容物を吐出させる操作を容易に行うことができる。
また、この吐出器1によれば、調整リング20の回転位置に応じて、いずれか一方の連通管路60を閉塞させることができるため、いずれか他方の連通管路60を通る内容物のみを選択して吐出させることも可能である。
【0031】
以上、本発明に係る容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば吐出器1は、支持部材30及びカバー部材50を備えて構成されるとしたが、少なくとも装着部材10、調整リング20、ヘッド部材40及び連通管路60を備えていればよい。したがって、例えばヘッド部材40の下端側が装着部材10に直接取り付けられてもよい。
また、装着部材10は、装着筒部11,12用の装着穴13を複数形成して構成されるとしたが、これに限ることはなく、例えば円筒形状の外観を有する装着筒部を一体に固定して構成されてもよい。
【0032】
さらに、調整リング20を回転させるにしたがって、2つの連通管路60A,60Bの流路断面積が同時に変化するとしたが、少なくとも1つの連通管路60の流路断面積が変化すればよい。このように、調整リング20の回転位置に係わらず流路断面積が変化しない連通管路60を含めて吐出器が構成される場合、流路断面積が変化しない連通管路60は、調整リング20の回転位置に係わらず調整リング20の内周縁21aに接触しない位置に配されていればよい。
【0033】
また、2つの装着筒部11,12は、中心軸線Lに関して点対称となる位置に配されるとしたが、調整リング20の回転に伴って少なくとも1つの連通管路60の流路断面積が変化するような位置に配されていればよく、任意の位置に配することが可能である。したがって、2つの装着筒部11,12は、例えば点対称とはならない位置で中心軸線Lを中心とした同心円上に配されてもよい。
【0034】
そして、上記実施形態においては、2つの容器2,3に収納される内容物を混合状態で吐出させる構成の吐出器1について説明したが、本発明の吐出器は、例えば3つ以上の容器に収納される内容物を吐出させるように構成されてもよい。このような構成においては、調整リング20の回転位置に応じて、全ての連通管路60の流路断面積が変化してもよいが、少なくとも1つの連通管路60の流路断面積が変化すればよい。
また、このような構成においても、複数の装着筒部は任意の位置に配されてよいが、例えば上記実施形態と同様に中心軸線Lに関して点対称となる位置に配されてもよいし、例えば点対称とはならない位置で中心軸線Lを中心とした同心円上に配されてもよい。
【0035】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態である吐出器を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1に示す吐出器において図2の状態から調整リングを時計回りに90°回転させた状態を示す断面図である。
【図4】図1に示す吐出器において図2の状態から調整リングを時計回りに180°回転させた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 吐出器
2,3 容器
2a,3a 口部
10 装着部材
11,12 装着筒部
20 調整リング
21a 内周縁
40 ヘッド部材
42 吐出口
60A 第1の連通管路
60B 第2の連通管路
L 中心軸線(回転中心軸)
L2 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器の口部が各別に着脱自在とされた複数の装着筒部を有する装着部材と、
前記複数の容器に各別に収納される複数の内容物が吐出される吐出口を有するヘッド部材と、
前記複数の装着筒部内と前記吐出口とを各別に連通させる複数の連通管路と、
前記複数の連通管路を挿通させた状態でこれらの連通管路に対して回転自在に取り付けられる調整リングと、を備え、
前記複数の連通管路が、弾性変形可能な軟質材からなり、
当該調整リングの内周縁が平面視円形状に形成されると共に当該内周縁の中心軸が前記調整リングの回転中心軸に対して偏心しており、
当該調整リングの回転位置に応じて、少なくとも一の連通管路が前記調整リングの内周縁に押し潰されて、前記一の連通管路の流路断面積が変化することを特徴とする吐出器。
【請求項2】
前記調整リングを回転させるにしたがって、複数の連通管路のうち第1の連通管路の流路断面積が減少すると同時に、複数の連通管路のうち第2の連通管路の流路断面積が増加することを特徴とする請求項1に記載の吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−286475(P2009−286475A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143628(P2008−143628)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】