説明

吐水装置

【課題】操作ボタンの位置を変化させることなく吐水流量の調整操作を行うことができる吐水装置を提供する。
【解決手段】本発明の吐水装置1は、主弁体14a、パイロット弁32及びバルブ操作ユニット34を備えたバルブユニット14と、開閉操作ボタン6,10と、流量操作手段8,18と、を有し、バルブ操作ユニット34は、押圧操作ユニット36と、この押圧操作ユニット36の外周側に回転可能に取り付けられて流量操作手段に連結され、押圧操作により押圧操作手段と共に並進し、回転操作により押圧操作手段との軸方向の相対位置を変化させる回転操作ユニット40と、を備え、押圧操作ユニットは、パイロット弁が止水位置にあるときには、回転操作ユニットによる回転操作にかかわらず所定位置に保持され、使用者が上記開閉操作ボタン部を押圧すると、この開閉操作ボタン部が上記所定位置に保持された上記押圧操作手段を押圧するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に係わり、特に、押圧操作により吐水と止水を切り替え、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室やキッチン等に使用される吐水装置として、例えば、特許文献1〜4に記載されているように、押しボタン等を手で押圧操作して吐水と止水を切り替え、回転操作により吐水流量を調整することができる、いわゆる「タッチ水栓」と呼ばれる吐水装置が知られている。
特許文献1及び特許文献2に記載されている吐水装置では、吐水装置本体に内蔵されたパイロット弁を操作ボタンの操作により移動させることにより、パイロット弁の移動量に応じた主弁体の開度を調整して吐水流量を調整することができるようになっている。
また、特許文献3及び特許文献4に記載されている吐水装置は、上述した特許文献1及び特許文献2に記載されたようなパイロット弁の移動量に応じて主弁体の開度を調整して吐水流量を調整するものではなく、パイロット弁以外に別途に設けられた流量調節部材や流量調節弁による流量調節手段によって吐水流量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85525号公報
【特許文献2】特開2008−231686号公報
【特許文献3】特開2001−98596号公報
【特許文献4】特開2008−256141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の吐水装置においては、パイロット弁や流量調節手段に直接的又は間接的に連結されている操作ボタンが、吐水流量の調整操作に伴って、パイロット弁や流量調節手段と共に軸方向に移動し、操作ボタンの取付面に対して外側又は内側方向に移動する。このため、例えば、浴室や洗面台の壁面等に吐水装置の本体が埋め込まれているタイプの吐水装置の操作ボタンの場合には、操作ボタンが取り付けられる取付面と操作ボタン自体の表面が互いに面一に合わせることができず、このように操作ボタンの面が取付面と面一に合わない状態になると、突出した状態の操作ボタンに使用者から過大な押圧力や不意な力が加えられ、操作ボタンが破損したりするおそれがあるという問題がある。
同様に、例えば、シャワー吐水用とカラン吐水用の複数の操作ボタンを備えた吐水装置の場合にも、互いの操作ボタンの表面が面一に合わない状態になると、突出した状態の操作ボタンの方に使用者から過大な押圧力や不意な力が加えられ、操作ボタンが破損したりするおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、操作ボタンの位置を変化させることなく吐水流量の調整操作を行うことができる吐水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、押圧操作により吐水と止水を切り替え、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、主弁体と、押圧操作により軸方向に移動して上記主弁体を開閉させるパイロット弁と、このパイロット弁が上記主弁体を開弁させる吐水位置と上記パイロット弁が上記主弁体を閉弁させる止水位置を押圧操作により切り替え、回転操作により、上記主弁体が開弁時に上記パイロット弁の移動量を変化させ、上記主弁体の開度を調整して吐水流量を調整する操作手段と、を備えたバルブユニットと、使用者の押圧操作によって上記バルブユニットの主弁体を開閉させ、吐水と止水を切り替える開閉操作ボタン部と、上記バルブユニットの操作手段に連結され、上記開閉操作ボタン部からの押圧操作によって上記バルブユニットに対して並進移動して上記バルブユニットの主弁体を開閉させ、使用者の回転操作によって回転移動して吐水流量を調整する流量操作手段と、を有し、上記バルブユニットの操作手段は、上記パイロット弁の開閉操作ボタン部側の端部に連結され、上記開閉操作ボタン部からの押圧操作による押圧力を上記パイロット弁に伝達させる押圧操作手段と、この押圧操作手段の外周側に回転可能に取り付けられて上記流量操作手段に連結され、上記押圧操作により上記押圧操作手段と共に並進し、上記回転操作により上記押圧操作手段との軸方向の相対位置を変化させる回転操作手段と、を備え、上記押圧操作手段は、上記パイロット弁が上記止水位置にあるときには上記回転操作手段による回転操作にかかわらず所定位置に保持され、使用者が上記開閉操作ボタン部を押圧すると、この開閉操作ボタン部が上記所定位置に保持された上記押圧操作手段を押圧するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、パイロット弁が止水位置にあるときには回転操作手段による回転操作にかかわらず押圧操作手段が所定位置に保持され、使用者が開閉操作ボタン部を押圧操作すると、この開閉操作ボタン部が、所定位置に保持された押圧操作手段を押圧することができる。したがって、例えば、パイロット弁が止水位置にあるとき回転操作手段による回転操作を行っても、押圧操作手段が所定位置に保持されているため、開閉操作ボタン部が取り付けられる取付位置の面と開閉操作ボタン部の表面とを互いに面一に合わせることができ、開閉操作ボタン部に隣接して他の開閉操作ボタン部を設けた場合には、双方の開閉操作ボタン部の表面を互いに面一に合わせることもできる。これにより、開閉操作ボタン部が取付位置の面外に突出することを防ぎ、突出した状態の開閉操作ボタン部に不意な力が加わって開閉操作ボタン部が破損したりするのを未然に防ぐことができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記開閉操作ボタン部は、この開閉操作ボタン部のバルブユニット側の面からバルブユニットの操作手段の押圧操作手段に向けて延びて上記押圧操作による押圧力を上記押圧操作手段に伝達する押圧操作用突起を備え、上記流量操作手段は、上記開閉操作ボタン部の押圧操作用突起が挿入可能に形成され且つこの挿入された押圧操作用突起を上記押圧操作手段に当接可能に形成された挿入穴を備えている。
このように構成された本発明においては、使用者が開閉操作ボタン部を押圧すると、開閉操作ボタン部の押圧操作用突起が、流量操作手段の挿入穴を貫いてバルブユニットの操作手段の押圧操作手段に当接し、直接的に押圧することができる。したがって、バルブユニットの操作手段の大きさを小さくすることができ、吐水装置全体を小型化することができる。また、例えば、パイロット弁が止水位置にあるとき回転操作手段による回転操作を行っても、この回転操作の影響を受けることなく、確実な押圧操作を実現することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記バルブユニットは、更に、上記主弁体の開度を増加させる方向に上記押圧操作手段を付勢する付勢手段と、上記パイロット弁が上記止水位置にあるときに上記押圧操作手段を係止する係止手段と、上記パイロット弁が上記吐水位置にあるときに上記回転操作により上記回転操作手段が上記押圧操作手段に対して軸方向に相対的に移動する量を所定の範囲内に規制する規制手段と、を備え、この規制手段は、上記回転操作手段及び上記押圧操作手段のそれぞれの軸方向に対向する面に円周方向に沿ってほぼらせん状に形成され且つ上記付勢手段の付勢力により互いが当接する回転操作手段傾斜部及び押圧操作手段傾斜部をそれぞれ備えている。
このように構成された本発明においては、パイロット弁が吐水位置にあるときに、バルブユニットの操作手段の回転操作手段を回転操作すると、狭いスペース内で付勢手段の付勢力により押圧操作手段傾斜部が回転操作手段傾斜部に当接して押し付けられながら、バルブユニットの操作手段の押圧操作手段を回転操作手段に対して軸方向に相対的に移動させることができ、パイロット弁の移動量を変化させて、吐水流量を調整することができる。したがって、バルブユニットの操作手段とパイロット弁の大きさを小さくすることができ、吐水装置全体をさらに小型化することができる。また、例えば、パイロット弁が止水位置にあるとき回転操作手段による回転操作を行っても、この回転操作の影響を受けることなく、確実な押圧操作を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吐水装置によれば、操作ボタンの位置を変化させることなく吐水流量の調整操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による吐水装置の正面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による吐水装置の斜め正面側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による吐水装置の斜め背面側から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における平面断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における側面断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最小流量設定位置に設定した場合における側面断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による吐水装置の吐水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における側面断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による吐水装置の吐水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最小流量設定位置に設定した場合における側面断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットとこれに連結されているカラン用流調ダイヤルつまみの斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの分解斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットのカム溝形成部材を示す外観斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットのカム溝形成部材の内部の状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの回転操作部材を示す外観斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの回転操作部材の内部の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面により、本発明の一実施形態による吐水装置を説明する。
図1は本発明の一実施形態による吐水装置の正面側から見た斜視図であり、図2は本実施形態による吐水装置の斜め正面側から見た分解斜視図であり、図3は本実施形態による吐水装置の斜め背面側から見た分解斜視図である。
【0012】
また、図4は本実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における平面断面図であり、図5は本実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における側面断面図であり、図6は本実施形態による吐水装置の止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最小流量設定位置に設定した場合における断面図である。
【0013】
さらに、図7は本実施形態による吐水装置の吐水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最大流量設定位置に設定した場合における側面断面図であり、図8は本実施形態による吐水装置の吐水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみを最小流量設定位置に設定した場合における側面断面図である。
【0014】
また、図9は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットとこれに連結されているカラン用流調ダイヤルつまみの斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態による吐水装置1は、吐水装置本体2を有し、この吐水装置本体2は、浴室やキッチン等のカウンター板4の背面側に収納されている。
また、図1及び図2に示すように、吐水装置1は、カラン用開閉操作ボタン6、カラン用流調ダイヤルつまみ8、シャワー用開閉操作ボタン10、シャワー用流調ダイヤルつまみ12、カラン用流調バルブユニット14、シャワー用流調バルブユニット16、カラン用流調ダイヤル18、及び、シャワー用流調ダイヤル19を有する。
【0016】
カラン用開閉操作ボタン6は、使用者の押圧操作によってカラン用の吐水と止水を切り替える開閉操作ボタン部である。
また、カラン用流調ダイヤルつまみ8は、カラン用流調ダイヤル18に取り付けられ、このカラン用流調ダイヤル18は、カラン用の吐水流量を調整する流量操作手段として機能するようになっている。
【0017】
同様に、シャワー用開閉操作ボタン10は、使用者の押圧操作によってシャワー用の吐水と止水を切り替える開閉操作ボタン部である。
また、シャワー用流調ダイヤルつまみ12は、シャワー用流調ダイヤル19に取り付けられ、このシャワー用流調ダイヤル19は、シャワー用の吐水流量を調整する流量操作手段として機能するようになっている。
【0018】
また、カラン用開閉操作ボタン6とシャワー用開閉操作ボタン10の両部材は互いに隣接して並置された同一の構成部材であり、カラン用流調ダイヤルつまみ8とシャワー用流調ダイヤルつまみ12の両部材についても、互いに隣接して並置された同一の構成部材である。
なお、以下、シャワー用の吐水及び止水に関連する部材については、カラン用の吐水及び止水に関連する部材と同一であるため、説明を省略し、カラン用の吐水及び止水に関連する部材のみについて具体的に説明する。
【0019】
本実施形態による吐水装置1は、使用者が押圧操作によりカラン用開閉操作ボタン6を並進移動させると吐水と止水が切り替えられ、使用者がカラン用流調ダイヤルつまみ8のつまみ部8aをつまんで回転操作することにより、カラン用流調ダイヤルつまみ8を回転移動させると吐水流量が調整されるようになっている。
【0020】
図1、図2、図4及び図5に示すように、吐水装置本体2は、カウンター板4の背面側に配置されており、サーモ水栓(図示せず)によって温度調節された湯水が流入する本体流入口2aを備えている。
また、吐水装置本体2は、本体流入口2aから流入した湯水が、吐水装置本体2に内蔵されたカラン用流調バルブユニット14(図2〜4参照)を通過してカラン用の吐水として流出するカラン用本体流出口2bを備えている。
さらに、吐水装置本体2は、本体流入口2aから流入した湯水が、吐水装置本体2に内蔵されたシャワー用流調バルブユニット16(図2〜4参照)を通過してカラン用の吐水として流出するシャワー用本体流出口2cを備えている。
【0021】
図1〜3に示すように、カラン用開閉操作ボタン6は、使用者によって押圧される操作ボタン部材として機能し且つほぼ長方形の板状のドア部材6aと、このドア部材6aを回動可能に支持するヒンジ手段である回動軸部材6bを備えており、この回動軸部材6bは、カラン側操作ボタンユニット本体6cによって保持されている。ドア部材6aを使用者側から押圧すると、ドア部材6aが回動軸部材6bの回りを回動し、カウンター板4のカウンター面よりも奥行方向に押圧されるようになっている。
【0022】
また、ドア部材6aが回動軸部材6bの回りを回動する回動部には、ねじりばね6dが取り付けられ、使用者がドア部材6aを押圧していない状態で、カウンター板4のカウンター面とほぼ面一の状態となったときに、ねじりばね6dが、ドア部材6aをカウンター板4のカウンター面の奥行方向(背面側)に付勢するようになっている。
【0023】
さらに、カラン側操作ボタンユニット本体6cの前端部には、ロック部材6eが設けられ、使用者がドア部材6aを押圧していない状態で、カウンター板4のカウンター面とほぼ面一になったときは、ロック部材6eを所定の横方向にスライドさせることにより、ドア部材6aの下端がロック部材6eの凹部6fに係止されるようになっている。また、ドア部材6aを使用者が押圧する際には、ロック部材6eを上記所定の横方向とは逆の方向にスライドさせることにより、ロック部材6eの凹部6fとドア部材6aの下端の係止が解除されるようになっている。
【0024】
また、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの背面側には、後方に突出して延びるストライカー突起6gが形成され、このストライカー突起6gは、カラン用開閉操作ボタン6の背面側に配置されているカラン用流調バルブユニット14の押圧操作ユニット36(詳細は後述する)の前面まで延びて当接し、カラン用開閉操作ボタン6の押圧操作による押圧力を押圧操作ユニット36に直接的に伝達する押圧操作用突起として機能するようになっている。
【0025】
なお、シャワー用開閉操作ボタン10についても、上述したカラン用開閉操作ボタン6と同様に、ドア部材10a、回動軸部材10b、シャワー側操作ボタンユニット本体10c、ねじりばね10d、ロック部材10e、凹部10f、ストライカー突起10gを備えているが、カラン用開閉操作ボタン6の各構成と同一であるため、説明は省略する。
【0026】
つぎに、図2、図4、図5及び図9に示すように、カラン用流調ダイヤルつまみ8は、カラン用流調ダイヤル18に対して回動不能で、かつ押圧方向に摺動可能に結合されているが、このカラン用流調ダイヤル18は、カラン用流調バルブユニット14のカラン用開閉操作ボタン6側の端部に位置し且つカラン用流調バルブユニット14の構成の一部である回転操作部材20(詳細は後述する)に連結されている。
【0027】
また、カラン用流調ダイヤルつまみ8及びカラン用流調ダイヤル18は、カラン用開閉操作ボタン6からの押圧操作によってカラン用流調バルブユニット14に対して並進移動して、カラン用流調バルブユニット14の主弁体14aを開閉させ、使用者の回転操作によって回転移動してカラン用の吐水流量を調整する流量操作手段として機能している。
【0028】
さらに、図2〜図9に示すように、カラン用流調ダイヤル18の中央部には、正面側から背面側まで軸方向に貫いて延びて且つカラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが挿入可能なストライカー突起挿入穴18aが形成されている。
【0029】
また、図2、図4及び図5に示すように、カラン用流調バルブユニット14は、吐水装置本体2内に内蔵され、固定ナット22によって吐水装置本体2に固定されている。
カラン用流調バルブユニット14は、カラン用開閉操作ボタン6の押圧操作によって主弁体14aが開閉され、カラン用流調ダイヤルつまみ8の回転操作によって主弁体14aの開度が変化されるようになっている。
【0030】
つぎに、図4〜図13を参照して、吐水装置本体2に内蔵されているカラン用流調バルブユニット14の構成を具体的に説明する。
図10は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの分解斜視図であり、図11は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットのカム溝形成部材を示す外観斜視図であり、図12は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットのカム溝形成部材の内部の状態を示す斜視図である。
また、図13は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの回転操作部材を示す外観斜視図であり、図14は本実施形態による吐水装置に内蔵されているカラン用流調バルブユニットの回転操作部材の内部の状態を示す斜視図である。
【0031】
図4〜図10に示すように、カラン用流調バルブユニット14は、バルブ本体24と、このバルブ本体24に取り付けられて圧力室26を形成する圧力室形成部材28と、バルブ本体24と圧力室形成部材28の間に挟み込まれたダイヤフラム30を備え、このダイヤフラム30には、主弁体14aが取り付けられている。
バルブ本体24は、概ね円筒状の部材であり、外部側面のバルブ流入口24aから通水路24bに流入し、主弁座24cを通過した湯水を、バルブ流出口24dから流出させるようになっている。
【0032】
また、カラン用流調バルブユニット14は、使用者によるカラン用開閉操作ボタン6の押圧操作により、圧力室形成部材28のガイド部28aの内部を軸方向に摺動して主弁体14aを開閉させるパイロット弁32を備えている。
さらに、図9に示すように、カラン用流調バルブユニット14は、パイロット弁32が主弁体14aを開弁させる吐水位置とパイロット弁32が主弁体14aを閉弁させる止水位置を押圧操作により切り替え、主弁体14aが開弁時に回転操作によりパイロット弁32の移動量を変化させ、主弁体14aの開度を調整して吐水流量を調整する操作手段として、バルブ操作ユニット34を備えている。
【0033】
つぎに、図9及び図10に示すように、カラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34は、圧力室形成部材28のカラン用開閉操作ボタン6側に固定されて概ね円筒状のカム溝形成部材38と、このカム溝形成部材38と圧力室形成部材28との間に部分的に内蔵され且つカラン用開閉操作ボタン6からの押圧操作による押圧力をパイロット弁32に伝達させる押圧操作ユニット36(詳細は後述する)を備えている。
また、押圧操作ユニット36は、円筒状のカム溝形成部材38の中央部分を軸方向に貫く中央穴38dを通過する方向、すなわち、主弁体14aの開度を調整する方向に摺動可能に配置されており、カム溝形成部材38の内周部に形成された複数の浅溝38a及び深溝38bと押圧操作ユニット36の回動リング部材46の一部が係合可能になっている。
【0034】
また、図9に示すように、カラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34は、押圧操作ユニット36の外周側に回転可能に取り付けられると共に外周側がカラン用流調ダイヤル18に取り付けられた回転操作部材20を含む回転操作ユニット40(詳細は後述する)を備えている。この回転操作ユニット40は、カラン用開閉操作ボタン6からの押圧操作により、カラン用流調ダイヤル18及び押圧操作ユニット36と共に軸方向に並進し、回転操作部材20の回転操作により押圧操作ユニット36との軸方向の相対位置を変化させることができるようになっている。
【0035】
バルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36は、パイロット弁32のシャフト32aのカラン用開閉操作ボタン6側の端部に連結され、圧力室形成部材28のガイド部28aの外周部に軸方向に摺動可能に配置された概ね円筒状の摺動部材42を備えている。
さらに、摺動部材42の内周部には、突起(図示せず)等の回動係止手段が設けられている。この摺動部材42の突起(図示せず)等の回動係止手段は、圧力室形成部材28のガイド部28aの外周部に長手方向に延びるように設けられた複数のガイド溝28bに係合し、圧力室形成部材28の外周部に対する摺動部材42の周方向の回動を規制している。
また、押圧操作ユニット36は、圧力室形成部材28のガイド部28aの外周側且つ摺動部材42の内周側に配置された圧縮コイルばね44を備え、この圧縮コイルばね44は、摺動部材42及びパイロット弁32をカラン用開閉操作ボタン6側に移動させて主弁体14aの開度を増加させる方向に付勢する付勢手段として機能している。
【0036】
さらに、押圧操作ユニット36は、摺動部材42の外周側に回動可能に取り付けられ且つカム溝形成部材38の内周側に配置された概ね円環状の回動リング部材46を備えている。
また、回動リング部材46は、この内周部に形成され且つ圧縮コイルばね44の付勢力により摺動部材42の外周に沿って形成された段部42aと係合可能なフランジ部46aを備え、押圧操作ユニット36の圧縮コイルばね44の付勢により、摺動部材42の段部42aが回動リング部材46のフランジ部46aを押圧し、回動リング部材46及び摺動部材42が、圧力室形成部材28及びカム溝形成部材38に対して軸方向に移動可能となっている。
【0037】
さらに、回動リング部材46は、外周に沿って所定間隔を置いて配置された複数の係合突起46bを備え、これらの係合突起46bの各々が、カム溝形成部材38及び後述するクラッチリング部材48に対する回動リング部材46の回動角度に応じてカム溝形成部材38の浅溝38a又は深溝38bと係合可能となっている。
すなわち、詳細は後述するが、回動リング部材46の係合突起46bは、パイロット弁32が止水位置にあるときに、カム溝形成部材38の浅溝38aに係合し、パイロット弁32が吐水位置にあるときに、カム溝形成部材38の深溝38bに係合するようになっている。
【0038】
また、押圧操作ユニット36は、回動リング部材46と軸方向に対向するように、回動リング部材46に対してカラン用開閉操作ボタン6側に配置された概ね円環状のクラッチリング部材48を備え、このクラッチリング部材48は、回動リング部材46のクラッチリング部材48側の端部に形成されたクラッチ歯面46cと噛み合い可能なクラッチ歯面48aを備えている。
さらに、クラッチリング部材48は、このカラン用開閉操作ボタン6側の端面が円周方向に沿ってほぼらせん状に突出するように形成された複数の傾斜部48b,48cを備えており、これらのクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cは、対応する回転操作部材20の傾斜部20a,20bと接触するようになっている。
また、カラン用流調ダイヤル18の回転操作により回転操作部材20がクラッチリング部材48及び圧力室形成部材28に対して相対的に回動すると、回転操作部材20の傾斜部20a,20bとクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cとの接触位置が変化し、回転操作部材20が軸方向に移動してパイロット弁32の軸方向の位置が変化し、バルブ操作ユニット34の吐水流量の調整が行われるようになっている。
【0039】
さらに、クラッチリング部材48の内周面には、内方に向って突出する複数の回動係止用突起48dが円周方向に所定間隔を置いて配置され、摺動部材42の外周面には、長手方向に延びる複数のガイド溝42bが円周方向に所定間隔を置いて配置されている。
クラッチリング部材48の回動係止用突起48dのそれぞれは、摺動部材42のガイド溝42bのそれぞれに係合されており、クラッチリング部材48は、摺動部材42に対して回動が係止されているが、摺動部材42に対して軸方向に摺動可能となっている。
【0040】
また、回動リング部材46の係合突起46bがカム溝形成部材38の所定の浅溝38aに係合し、パイロット弁32が止水位置にある状態で、カラン用開閉操作ボタン6を押圧操作することにより、回転操作部材20、クラッチリング部材48及び回動リング部材46が主弁体14a側に所定距離以上並進移動させると、回動リング部材46の係合突起46bとカム溝形成部材38の所定の浅溝38aとの係合が一旦解除された後、回動リング部材46のクラッチ歯面46cがクラッチリング部材48のクラッチ歯面48aとの接触面に沿って摺動し、回動リング部材46がクラッチリング部材48及び圧力室形成部材28に対して回動するようになっている。そして、回動リング部材46の係合突起46bが、前回係合解除したカム溝形成部材38の所定の浅溝38aの隣に配置されている深溝38bに移動して係合し、パイロット弁32が吐水位置に切り替えられるようになっている。
【0041】
一方、回動リング部材46の係合突起46bがカム溝形成部材38の所定の深溝38bに係合し、パイロット弁32が吐水位置にある状態で、カラン用開閉操作ボタン6を押圧操作することにより、回転操作部材20、クラッチリング部材48及び回動リング部材46が主弁体14a側に所定距離以上並進移動させると、回動リング部材46の係合突起46bとカム溝形成部材38の所定の深溝38bとの係合が一旦解除された後、回動リング部材46のクラッチ歯面46cがクラッチリング部材48のクラッチ歯面48aとの接触面に沿って摺動し、回動リング部材46がクラッチリング部材48に対して回動し、回動リング部材46の係合突起46bが、前回係合解除したカム溝形成部材38の所定の深溝38bの隣に配置されている浅溝38aに移動して係合し、パイロット弁32が止水位置に切り替えられるようになっている。
【0042】
つぎに、バルブ操作ユニット34の回転操作ユニット40は、カム溝形成部材38の外周に回転可能に取り付けられた概ね円筒状の回転操作部材20を備えている。
図14に示すように、回転操作部材20の内側且つカラン用開閉操作ボタン6側の端部には、円周方向に沿ってほぼらせん状に突出するように形成された複数の傾斜部20a,20bを備えている。
回転操作部材20がカム溝形成部材38に取り付けられた状態では、回転操作部材20の傾斜部20a,20bのそれぞれが、カム溝形成部材38の中央穴38dを通過して押圧操作ユニット36のクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cのそれぞれと当接し、回転操作部材20の回転角度に応じて回転操作部材20の傾斜部20a,20bと押圧操作ユニット36のクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cとの互いの軸方向の距離が変化することにより、回転操作部材20とクラッチリング部材48との軸方向の相対位置が変化するようになっている。
すなわち、これらの回転操作部材20の傾斜部20a,20bと押圧操作ユニット36のクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cは、パイロット弁32が吐水位置にあるときに回転操作部材20の回転操作により回転操作部材20が押圧操作ユニット36に対して軸方向に相対的に移動する量を所定の範囲内に規制する規制手段として機能するようになっている。
【0043】
また、回転操作部材20の圧力室形成部材28側の端部には、外周から内周方向に突出する突起20cが設けられ、回転操作部材20がカム溝形成部材38に対して回転した際に、回転操作部材20の突起20cが、カム溝形成部材38の外周に形成されて軸方向に延びる突起38cと当接することにより回転が規制されるようになっている。
さらに、回転操作部材20のカラン用開閉操作ボタン6側の端部は、カラン用流調ダイヤル18の内周部が取り付けられるための概ね円環状のカラン用流調ダイヤル取付部20dが設けられている。
【0044】
また、図11及び図12に示すように、カム溝形成部材38のカラン用開閉操作ボタン6側の端部にはフランジ38eが設けられている。
特に、図5及び図6に示すように、パイロット弁32が止水位置にあるときには、回転操作部材20の傾斜部20a,20bと、これらに対向するクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cとが互いに接触しているが、カラン用流調ダイヤル18の回転操作にかかわらず、回転操作部材20の突起20cが、カム溝形成部材38のフランジ38eに当接しないようになっている。したがって、吐水装置1の止水時には、回転操作部材20の傾斜部20a,20bとクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cとの互いの接触による摩耗も少なく、カラン用流調ダイヤル18を比較的小さな回転操作力で操作することができるようになっている。
【0045】
一方、図7及び図8に示すように、パイロット弁32が吐水位置にあるときには、回転操作部材20の傾斜部20a,20bと、これらに対向するクラッチリング部材48の傾斜部48b,48cとが互いに接触していると共に、回転操作部材20の突起20cがカム溝形成部材38のフランジ38eに当接しており、図5及び図6に示すパイロット弁32が止水位置にあるときに比べて、カラン用流調ダイヤル18の回転操作時には大きな回転操作力を要するが、吐水装置1の吐水状態は、止水状態に比べると一時的であり、カラン用流調ダイヤル18の回転角度にかかわらず、回転操作力もほぼ一定となるため、カラン用流調ダイヤル18の良好な回転操作性を保つことができるようになっている。
【0046】
また、パイロット弁32のシャフト32aのカラン用開閉操作ボタン6側の端部に連結された押圧操作ユニット36の摺動部材42のカラン用開閉操作ボタン6側の端部には、パイロット弁32を摺動部材42に固定するためのキャップ50が取り付けられている。
さらに、バルブ操作ユニット34の回転操作ユニット40は、キャップ50と回転操作部材20のカラン用流調ダイヤル取付部20dの基端部20eとの間に配置された圧縮コイルばね52を備え、圧縮コイルばね52が回転操作部材20に向けて付勢する軸方向の付勢力により、回転操作部材20の押圧操作ユニット36に対する軸方向のがたつきを抑え、回転操作部材20の回転角度に応じて、キャップ50の軸方向の位置をカラン用流調ダイヤル取付部20dの基端部20eと先端部20fとの間の範囲内に常時位置させるようになっている。
【0047】
また、主弁体14aには、通水路24bの湯水を圧力室26内へ流入させるブリード孔14bと、圧力室26内の湯水を通水路24eへ排水する圧力開放孔14cが形成されている。
パイロット弁32のシャフト32aと弁部32bとの間には圧縮コイルばね32cが配置されている。
図5に示すように、吐水装置1が止水された状態では、圧縮コイルばね32cが圧縮されることによって生じた付勢力により、パイロット弁32の弁部32bが圧力開放孔14cを閉鎖すると共に、パイロット弁32のシャフト32aがカラン用開閉操作ボタン6側に付勢されるようになっている。
【0048】
つぎに、上述した本発明の一実施形態による吐水装置1の作用を説明する。
まず、図1及び図5に示すように、吐水装置1が止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合には、ダイヤフラム30が、バルブ本体24の主弁座24cに着座し、主弁座24cが閉鎖されている。
すなわち、吐水装置本体2の本体流入口2aからバルブ流入口24aを経て通水路24bに流入した湯水が、主弁体14aに設けられたブリード孔14bを通って圧力室26に流入し、圧力室26内の湯水の圧力により、ダイヤフラム30及び主弁体14aが主弁座24cに向けて押圧され、主弁座24cが閉鎖されている。
また、パイロット弁32の弁部32bが、圧縮された圧縮コイルばね32cの付勢力により圧力開放孔14cを閉鎖している。
【0049】
このとき、回転リング部材46の係合突起46bは、カム溝形成部材38の浅溝38aに係止されており、回転リング部材46のクラッチ歯面46cとクラッチリング部材48のクラッチ歯面48aが噛み合っているため、押圧操作ユニット36の摺動部材42、回転リング部材46及びクラッチリング部材48は、軸方向及び回転方向に移動することなく固定されている。
また、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gがカラン用流調ダイヤル18のストライカー突起挿入穴18aの中を通過し、このストライカー突起6gの先端部が、カラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36の一部であるキャップ50の正面に当接している。
このとき、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面は、カウンター板4のカウンター面とほぼ面一の状態となっている。
【0050】
つぎに、図6に示すように、吐水装置1が止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみ8を最小流量設定位置に設定した場合には、使用者がカラン用流調ダイヤルつまみ8を回転操作すると、カラン用流調ダイヤル18及び回転操作部材20のみがカラン用流調ダイヤルつまみ8と一体的に回動する。
このとき、回転操作部材20のそれぞれの傾斜部20a,20bが、カム溝形成部材38の中央穴38dを通過し、固定されている状態のクラッチリング部材48のそれぞれの傾斜部48b,48cに当接しながら回動し、回転操作部材20がクラッチリング部材48に対してカラン用開閉操作ボタン6側に軸方向に移動して、カラン用流調ダイヤル18も回転操作部材20と共にカラン用開閉操作ボタン6側に軸方向に移動する。
しかしながら、押圧操作ユニット36の摺動部材42、回転リング部材46及びクラッチリング部材48は、軸方向及び回転方向に移動することなく固定されているため、パイロット弁32の弁部32bも、圧力開放孔14cを閉鎖した状態のままとなり、ダイヤフラム30及び主弁体14aについても、主弁座24cを閉鎖した状態のままとなっている。
【0051】
ここで、カラン用流調ダイヤル18の回動に伴って、回転操作部材20がカラン用開閉操作ボタン6側に軸方向に移動しても、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが当接しているカラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36のキャップ50の位置は軸方向に移動していないため、図5に示す吐水装置1が止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合と同様に、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面は、カウンター板4のカウンター面とほぼ面一の状態となっている。
すなわち、図5及び図6に示すように、吐水装置1が止水状態でカラン用流調ダイヤルつまみ8の回転させて流量設定位置を変更しても、カラン用流調ダイヤルつまみ8の回転の回転角度にかかわらず、カラン用開閉操作ボタン6とカラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36との距離が一定になる。
【0052】
つぎに、図5に示す吐水装置1が止水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した状態で、使用者がカラン用開閉操作ボタン6を押圧操作すると、図7に示すように、吐水装置1が吐水状態に切り替わり、カラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した状態となる。
このとき、使用者の押圧操作により、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aが回動軸部材6bの回りを回動し、カラン用流調バルブユニット14側に押し込まれ、ドア部材6aのストライカー突起6gがバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36のキャップ50をカラン用流調バルブユニット14側に押圧する。
そして、バルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36の全体が背面側に押圧される。
また、バルブ操作ユニット34の回転操作ユニット40の回転操作部材20は、圧縮コイルばね52の付勢力により、押圧操作ユニット36のキャップ50側に押し付けられているため、押圧操作ユニット36の全体がカラン用流調バルブユニット14側に押圧されると、回転操作部材20も押圧操作ユニット36の全体と共に軸方向の主弁体14a側に移動する。したがって、カラン用流調ダイヤル18についても、回転操作部材20と共に、カラン用流調バルブユニット14側に軸方向に一体的に並進し、カラン用流調バルブユニット14側に押し込まれる。
【0053】
さらに、押圧操作ユニット36の摺動部材42、回転リング部材46及びクラッチリング部材48も軸方向の主弁体14a側に押し込まれると、回転リング部材46の係合突起46bとカム溝形成部材38の浅溝38aとの係止が解除されて回転リング部材46が所定角度回転し、回転リング部材46の係合突起46bがカム溝形成部材38の深溝38b内に移動し、圧縮コイルばね44の付勢力により、摺動部材42がカラン用開閉操作ボタン6側に摺動する。
この結果、回転操作部材20と押圧操作ユニット36の摺動部材42、回転リング部材46及びクラッチリング部材48が、一体的に軸方向のカラン用開閉操作ボタン6側に移動する。
【0054】
このとき、パイロット弁32のシャフト32aも摺動部材42と共にカラン用開閉操作ボタン6側に移動するため、パイロット弁32の弁部32bが圧力開放孔14cを開放し、圧力室26内の湯水が圧力開放孔14cから通水路24e内に流出し、圧力室26内部の圧力が低下する。そして、ダイヤフラム30及び主弁体14aが主弁座24cから離れ、吐水状態となる。
【0055】
また、図7に示すように、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gがバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36のキャップ50の正面に当接し、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面は、カウンター板4のカウンター面よりも僅かに正面側に突出した状態となっている。
【0056】
つぎに、図8に示すように、吐水装置1が吐水状態で且つカラン用流調ダイヤルつまみ8を最小流量設定位置に設定した場合には、使用者がカラン用流調ダイヤルつまみ8を回転操作すると、カラン用流調ダイヤル18及び回転操作部材20がカラン用流調ダイヤルつまみ8と一体的に回動する。
このとき、回転操作部材20は、クラッチリング部材48に対して軸方向に移動することなく、回転操作部材20のそれぞれの傾斜部20a,20b及びクラッチリング部材48のそれぞれの傾斜部48b,48cが互いに当接した状態で相対的に回動する。そして、クラッチリング部材48のそれぞれの傾斜部48b,48cが、当接している回転操作部材20のそれぞれの傾斜部20a,20bによって回動すると共に、クラッチリング部材48が軸方向の主弁体14a側に押し込まれる。
【0057】
また、クラッチリング部材48が軸方向の主弁体14a側に押し込まれると、回転リング部材46、摺動部材42及びキャップ50についても、クラッチリング部材48と一体的に軸方向の主弁体14a側に押し込まれる。
このとき、回転リング部材46の係合突起46bは、カム溝形成部材38の深溝38b内の途中に位置している。
【0058】
さらに、パイロット弁32のシャフト32aも摺動部材42と共に主弁体14a側に移動するため、パイロット弁32の弁部32bについても、圧縮コイルばね32cの付勢力により、図7に示すカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合に比べて、圧力開放孔14cに近づくため、圧力室26内部の圧力が上昇する。したがって、ダイヤフラム30及び主弁体14aが主弁座24cに近づき、図7に示すカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合に比べて、主弁体14aの開度が減少し、吐水流量が減少する。
【0059】
また、図8に示すように、図7に示すカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合に比べて、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが当接しているカラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36のキャップ50の位置が軸方向の主弁体14a側に押し込まれているため、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面は、図7に示すカラン用流調ダイヤルつまみ8を最大流量設定位置に設定した場合よりも、僅かに背面側に位置している。
【0060】
そして、使用者がカラン用開閉操作ボタン6を再び押圧操作すると、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが当接しているキャップ50を含む押圧操作ユニット36の全体が軸方向の主弁体14a側に再び押し込まれ、回転操作部材20、カラン用流調ダイヤルつまみ8及びカラン用流調ダイヤル18についても一体的に軸方向の主弁体14a側に再び押し込まれる。
これにより、回転リング部材46の係合突起46bとカム溝形成部材38の深溝38bとの整合が解除されて回転リング部材46が所定角度回転し、回転リング部材46の係合突起46bがカム溝形成部材38の浅溝38a内に係止される。そして、再び、パイロット弁32及び主弁体14aは、図5に示す止水位置に保持される。すなわち、パイロット弁32の弁部32bが主弁体14aの圧力開放孔14cを閉鎖し、圧力室26内の圧力が上昇することにより、ダイヤフラム30及び主弁体14aは主弁座24cに着座され、止水状態となる。
【0061】
上述した本発明の一実施形態による吐水装置1によれば、パイロット弁32が止水位置にあるときには、カラン用流調ダイヤルつまみ8、カラン用流調ダイヤル18及び回転操作部材20による回転操作にかかわらず、カラン用流調バルブユニット14の押圧操作ユニット36が所定位置に保持され、使用者がカラン用開閉操作ボタン6を押圧操作すると、このカラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが、所定位置に保持された押圧操作ユニット36のキャップ50の正面を押圧することができる。
したがって、カラン用開閉操作ボタン6の軸方向の位置を変化させることなくカラン用流調ダイヤルつまみ8の回転操作を行って、吐水流量の調整操作を行ったとしても、例えば、吐水装置1が止水状態においては、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面は、カウンター板4のカウンター面とほぼ面一となる状態が維持される。それゆえ、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aの正面側の表面と、これに隣接して並置されているシャワー用開閉操作ボタン10のドア部材10aの正面側の表面についても互いに面一に合わせることもできる。
さらに、吐水装置1が止水状態において、カラン用開閉操作ボタン6及びシャワー用開閉操作ボタン10がカウンター板4のカウンター面よりも正面側に突出することを防ぐことができ、突出した状態のカラン用開閉操作ボタン6及びシャワー用開閉操作ボタン10に不意な力が加わってカラン用開閉操作ボタン6及びシャワー用開閉操作ボタン10が破損したりするのを未然に防ぐことができる。
【0062】
また、本実施形態による吐水装置1によれば、使用者がカラン用開閉操作ボタン6を押圧すると、カラン用開閉操作ボタン6のドア部材6aのストライカー突起6gが、カラン用流調ダイヤル18のストライカー突起挿入穴18aを貫いてカラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36のキャップ50の正面に当接し、直接的に押圧することができる。したがって、バルブ操作ユニット34の大きさを小さくすることができ、吐水装置1の全体を小型化することができる。また、例えば、パイロット弁32が止水位置にあるときカラン用流調ダイヤルつまみ8、カラン用流調ダイヤル18及び回転操作部材20による回転操作を行っても、この回転操作の影響を受けることなく、確実な押圧操作を実現することができる。
【0063】
さらに、本実施形態による吐水装置1によれば、パイロット弁32が吐水位置にあるときに、カラン用流調ダイヤルつまみ8及びカラン用流調ダイヤル18を回転操作し、カラン用流調バルブユニット14のバルブ操作ユニット34の回転操作部材20を回転操作すると、狭いスペース内で圧縮コイルばね44の付勢力により、押圧操作ユニット36のクラッチリング部材48の各傾斜部48b,48cが、それぞれに対応する回転操作部材20の傾斜部20a,20bに当接して押し付けられながら、バルブ操作ユニット34の押圧操作ユニット36の全体を回転操作部材20に対して軸方向に相対的に移動させることができ、パイロット弁32の軸方向の移動量を変化させてパイロット弁32の開度を調整し、吐水流量を調整することができる。したがって、バルブ操作ユニット34とパイロット弁32の大きさを小さくすることができ、吐水装置1の全体を小型化することができる。
【0064】
なお、上述した本実施形態による吐水装置1においては、一例として、カラン用開閉操作ボタン6について、押圧操作により、ドア部材6aが回動軸部材6bの回りを回動するような形態について説明したが、このような形態に限定されず、押圧操作により、ドア部材6aが回動することなくカラン用流調バルブユニット側に向って軸方向に摺動するような形態にしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 吐水装置
2 吐水装置本体
2a 本体流入口
2b カラン用本体流出口
2c シャワー用本体流出口
4 カウンター板
6 カラン用開閉操作ボタン(開閉操作ボタン部)
6a ドア部材
6b 回動軸部材
6c カラン側操作ボタンユニット本体
6d ねじりばね
6e ロック部材
6f 凹部
6g ストライカー突起(押圧操作用突起)
8 カラン用流調ダイヤルつまみ(流量操作手段)
8a つまみ部
10 シャワー用開閉操作ボタン(開閉操作ボタン部)
10a ドア部材
10b 回動軸部材
10c シャワー側操作ボタンユニット本体
10d ねじりばね
10e ロック部材
10f 凹部
10g ストライカー突起(押圧操作用突起)
12 シャワー用流調ダイヤルつまみ
14 カラン用流調バルブユニット
14a 主弁体
14b ブリード孔
14c 圧力開放孔
16 シャワー用流調バルブユニット
18 カラン用流調ダイヤル(流量操作手段)
18a ストライカー突起挿入穴
19 シャワー用流調ダイヤル
20 回転操作部材(回転操作手段)
20a 傾斜部(回転操作手段傾斜部)
20b 傾斜部(回転操作手段傾斜部)
20c 突起
20d カラン用流調ダイヤル取付部
20e カラン用流調ダイヤル取付部の基端部
20f カラン用流調ダイヤル取付部の先端部
22 固定ナット
24 バルブ本体
24a バルブ流入口
24b 通水路
24c 主弁座
24d バルブ流出口
24e 通水路
26 圧力室
28 圧力室形成部材
28a ガイド部
28b ガイド溝
30 ダイヤフラム
32 パイロット弁
32a シャフト
32b 弁部
32c 圧縮コイルばね
34 バルブ操作ユニット(バルブユニットの操作手段)
36 押圧操作ユニット(押圧操作手段)
38 カム溝形成部材
38a 浅溝
38b 深溝
38c 突起
38d 中央穴
38e フランジ
40 回転操作ユニット(回転操作手段)
42 摺動部材
42a 段部
42b ガイド溝
44 圧縮コイルばね
46 回転リング部材
46a フランジ部
46b 係合突起
46c クラッチ歯面
48 クラッチリング部材
48a クラッチ歯面
48b 傾斜部(押圧操作手段傾斜部)
48c 傾斜部(押圧操作手段傾斜部)
48d 回動係止用突起
50 キャップ
52 圧縮コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作により吐水と止水を切り替え、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、
主弁体と、押圧操作により軸方向に移動して上記主弁体を開閉させるパイロット弁と、このパイロット弁が上記主弁体を開弁させる吐水位置と上記パイロット弁が上記主弁体を閉弁させる止水位置を押圧操作により切り替え、回転操作により、上記主弁体が開弁時に上記パイロット弁の移動量を変化させ、上記主弁体の開度を調整して吐水流量を調整する操作手段と、を備えたバルブユニットと、
使用者の押圧操作によって上記バルブユニットの主弁体を開閉させ、吐水と止水を切り替える開閉操作ボタン部と、
上記バルブユニットの操作手段に連結され、上記開閉操作ボタン部からの押圧操作によって上記バルブユニットに対して並進移動して上記バルブユニットの主弁体を開閉させ、使用者の回転操作によって回転移動して吐水流量を調整する流量操作手段と、を有し、
上記バルブユニットの操作手段は、上記パイロット弁の開閉操作ボタン部側の端部に連結され、上記開閉操作ボタン部からの押圧操作による押圧力を上記パイロット弁に伝達させる押圧操作手段と、この押圧操作手段の外周側に回転可能に取り付けられて上記流量操作手段に連結され、上記押圧操作により上記押圧操作手段と共に並進し、上記回転操作により上記押圧操作手段との軸方向の相対位置を変化させる回転操作手段と、を備え、上記押圧操作手段は、上記パイロット弁が上記止水位置にあるときには上記回転操作手段による回転操作にかかわらず所定位置に保持され、使用者が上記開閉操作ボタン部を押圧すると、この開閉操作ボタン部が上記所定位置に保持された上記押圧操作手段を押圧するように構成されていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
上記開閉操作ボタン部は、この開閉操作ボタン部のバルブユニット側の面からバルブユニットの操作手段の押圧操作手段に向けて延びて上記押圧操作による押圧力を上記押圧操作手段に伝達する押圧操作用突起を備え、上記流量操作手段は、上記開閉操作ボタン部の押圧操作用突起が挿入可能に形成され且つこの挿入された押圧操作用突起を上記押圧操作手段に当接可能に形成された挿入穴を備えている請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
上記バルブユニットは、更に、上記主弁体の開度を増加させる方向に上記押圧操作手段を付勢する付勢手段と、上記パイロット弁が上記止水位置にあるときに上記押圧操作手段を係止する係止手段と、上記パイロット弁が上記吐水位置にあるときに上記回転操作により上記回転操作手段が上記押圧操作手段に対して軸方向に相対的に移動する量を所定の範囲内に規制する規制手段と、を備え、この規制手段は、上記回転操作手段及び上記押圧操作手段のそれぞれの軸方向に対向する面に円周方向に沿ってほぼらせん状に形成され且つ上記付勢手段の付勢力により互いが当接する回転操作手段傾斜部及び押圧操作手段傾斜部をそれぞれ備えている請求項1又は2に記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−145145(P2012−145145A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2334(P2011−2334)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】