説明

向上した耐摩耗特性を有する添加剤および潤滑剤配合物

【課題】 潤滑面、表面を潤滑にする潤滑剤組成物、および潤滑剤の耐摩耗性を増加させる方法の提供。
【解決手段】 潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性を越えて、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物とを含んだ潤滑剤組成物によって、当潤滑面は提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施態様は、特定の油溶性のチタン添加剤と、潤滑油配合物中におけるそのようなチタン添加剤の用途、また特に潤滑剤配合物用の耐摩耗剤として使用される油溶性のチタン添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車や高荷重ディーゼルエンジンで使用される潤滑油は、長年の間に変化してきた。今日のエンジンは過去に比べてより熱くまた苛酷に運転されるように設計されている。可動部間の摩耗を低減させるため、様々な添加剤が潤滑剤調合物に加えられてきた。特に一般的な耐摩耗添加剤の一つに、ジンクジアルキルジチオホスフェート(「ZnDDP」)がある。このような亜鉛化合物は、耐摩耗剤として特に有用ではあるが、完成した潤滑剤中の硫黄および/またはリン濃度を増加させるなど、一つ以上の不利点を有する。
【0003】
硫黄およびリンを含んだ添加剤は公害防止装置の効果を害する、あるいは低減させることが知られているので、公害防止装置の保護のため、次世代の乗用車用モーターオイルおよび高荷重ディーゼルエンジンオイルには、完成したオイル中のリンおよび硫黄の量が低いことが必要とされる。例えば、現在のGF−4モーターオイルの仕様書では、完成したオイルのリンおよび硫黄の含有量が、それぞれに0.08重量%および0.7重量%未満であることを義務付けているし、また次世代高荷重ディーゼルエンジンオイルであるPC−10モーターオイルの仕様書では、オイル中のリンおよび硫黄の含有量はそれぞれ0.12重量%および0.4重量%未満、また硫酸塩灰分は1.0重量%であることを義務付けている。業界で知られているある種の耐摩耗添加剤には、公害防止装置の効果を低下させる量のリンおよび硫黄が含まれている。
【0004】
従って、耐摩耗特性を促進し、また自動車およびディーゼルエンジンに使用される公害防止装置との適合性がより高い、潤滑剤添加物および組成物が必要となる。また、完成した潤滑剤の油溶性や腐食、および/または色の黒ずみなどに悪影響を与えることがなく、このような公害防止装置との適合性がより高い潤滑剤添加物および組成物も必要とされる。このような添加剤は、リンおよび/または硫黄を含んでいる場合もあるし、また実質的にリンおよび/または硫黄を欠いている場合もある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の一つの実施態様では、潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物を含む潤滑剤組成物を含んだ、潤滑面が提示されている。
【0006】
別の実施態様では、可動部を有し、また当可動部を潤滑する潤滑剤を含んだ自動車が提供される。当潤滑剤には、摩擦調整剤と耐摩耗剤を含んだ、潤滑粘度のオイルが含まれる。摩擦調整剤は、主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群の中から選択される。耐摩耗剤には、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物が含まれている。炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的に硫黄およびリン原子を欠いている。
【0007】
さらに別の実施態様では、摩擦調整剤および耐摩耗剤を含む、潤滑粘度の基油成分を含
んだ、完全に調合された潤滑剤組成物が提供される。当摩擦調整剤は、主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択される。耐摩耗剤には、炭化水素に可溶なチタン含有化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な一定量のチタン含有化合物が含まれている。耐摩耗剤として使用されるチタン含有化合物は、実質的に硫黄およびリン原子を欠いている。
【0008】
本開示のさらなる実施態様では、潤滑油により可動部を潤滑する方法が提供される。当方法には、摩擦調整剤及び耐摩耗剤を含む基油を含んで成る潤滑剤組成物を、一つ以上の可動部の潤滑油として使用することが含まれる。当摩擦調整剤は、主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択される。耐摩耗剤は、チタンアルコキシドと、約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物である。このとき使用される耐摩耗剤には、約1ppmから約1500ppmのチタンを潤滑油中に供給する効果がある。別の実施態様では、耐摩耗剤には、例えば約1−1000ppm、50−1000ppm、50−1500ppm、100−1000ppm、100−1500ppm、5−1000ppm、5−1500ppm、20−1000ppm、20−1200ppm、20−1500ppm、35−1000ppm、あるいは35−1500ppmのチタンを潤滑油中に供給する効果がある。
【0009】
本発明で使用される油溶性の化合物を、チタンアルコキシドおよびカルボン酸から合成されたチタン化合物に限定する必要はない。通常、任意の好適なチタン試薬が、ジンクジアルキルジチオホスフェート;中性または過塩基性フェネート、中性または過塩基性サリチル酸塩、および中性または過塩基性スルホン酸塩などのような清浄剤;分散剤;または粘度指数向上剤;あるいはチタン化合物が完成したオイルに適切な属性を与えるように、任意のチタン試薬と反応してチタン化合物を油溶性にすることのできるような、酸素、窒素、硫黄あるいはリンを含んだその他任意の添加剤などを含み、またそれらに限定されない、任意の好適な化合物と反応することができる。
【0010】
上記に簡単に説明されたように、本開示の実施態様では、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を著しく向上させ、また同等の耐摩耗性向上特性に必要とされるリンおよび硫黄添加剤の量を低減することのできるような、炭化水素に可溶なチタン化合物が提供される。当添加剤は、可動部間の表面に塗布する油性の流体と混合される。別の用途では、当添加剤は、完全に調合された潤滑剤組成物中に供給される。当添加剤は、将来の乗用車やディーゼルエンジンオイルの仕様および基準だけではなく、現在提案されている、乗用車用モーターオイル用のGF−4基準、また高荷重ディーゼルエンジンオイル用のPC−10基準を満たすことを特に目指している。
【0011】
本明細書に記載の組成物および方法は、自動車の公害防止装置の効果の維持に特に適している。また一方では、当組成物および方法は、潤滑剤調合物の耐摩耗性を向上させるのに適している。本明細書に記載の組成物および方法のその他の特徴および利点は、本明細書に記載の実施態様を限定することなく実施態様を例示することを意図した、以下の詳細な説明を参照することにより明白である。
【0012】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示および請求された実施態様のさらなる説明を提供することを意図したものであると理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一つの実施態様では、潤滑油組成物内の成分として有用な、新規な組成物が提示される。当組成物は、リンおよび/または硫黄を含んだ従来の耐摩耗剤に加え、あるいはその部分的または完全な代用として使用し得る、炭化水素に可溶なチタン化合物を含んで成る。
【0014】
潤滑剤組成物に加えられる添加剤および濃縮物の主な成分は、炭化水素に可溶なチタン化合物である。「炭化水素に可溶な」という用語は、化合物が、反応性のあるチタン化合物と炭化水素物質との反応あるいは錯体形成により、炭化水素物質に実質的に懸濁あるいは溶解していることを意味する。本明細書で使用される、「炭化水素」という用語は、炭素、水素、および/または酸素を様々な組み合わせで含んでいる、任意の多数の化合物を意味する。
【0015】
「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基を変化させないような、非炭化水素基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)などを含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、望ましくは一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0016】
耐摩耗剤としての使用に適した炭化水素に可溶なチタン化合物は、チタンアルコキシドと、約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物から得られる。当反応生成物は以下の化学式で表され:
【0017】
【化1】

【0018】
式中、nは2、3、および4のなかから選ばれた整数であり、またRは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基であるか、あるいは以下の化学式で表され:
【0019】
【化2】

【0020】
式中R、R、R、およびRはそれぞれ、同一あるいは異なったものであり、約5つから約25の炭素原子を含むヒドロカルビル基のなかから選択される。上述の化学式の化合物は、本質的にリンおよび硫黄を欠いている。
【0021】
ある実施態様において、炭化水素に可溶なチタン化合物を含んで成る潤滑剤または調合された潤滑剤パッケージが、約0.7重量%以下の硫黄および約0.12重量%以下のリンを含むように、炭化水素に可溶なチタン化合物は、硫黄およびリン原子を実質的にまたは本質的に欠いている、あるいは含んでいない。
【0022】
別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的に活性硫黄を含んでいない。「活性」硫黄とは、完全に酸化されていない硫黄である。活性硫黄は使用中にさらに酸化され、オイル内でより酸性になる。
【0023】
さらに別の実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にすべての硫黄を含んでいない。さらなる実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にすべてのリンを含んでいない。またさらなる実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、実質的にすべての硫黄およびリンを含んでいない。例えば、中にチタン化合物が溶けているような基油には、一つの実施態様では約0.5重量%未満、また別の実施態様では約0.03重量%未満の硫黄(例えばグループIIの基油)というように、比較的少量の硫黄が含まれていることもあるし、またさらに別の実施態様では、硫黄および/またはリンの量は、所定の時間に適切なモーターオイルの硫黄および/またはリンの事実上の仕様を満たすことを可能にしながら、化合物を生成するために必要な量に制限されている。
【0024】
チタン/カルボン酸生成物の例としては、本質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などから成る群から選択された酸とチタンの反応生成物が含まれるが、これらに限定はされない。このようなチタン/カルボン酸生成物の製造方法は、例えば、その開示が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第5,260,466号に記載されている。
【0025】
本明細書に記載された実施態様の炭化水素に可溶なチタン化合物は、潤滑組成物に有利に組み込まれている。従って、炭化水素に可溶なチタン化合物を、潤滑油組成物に直接添加することができる。しかしながら、一つの実施態様では、炭化水素に可溶なチタン化合物は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル等)、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどのような、実質的に
不活性な、通常は液体である有機希釈剤で希釈され、金属添加剤濃縮物を形成する。チタン添加剤濃縮物は通常、約0重量%から約99重量%の希釈油を含有する。
【0026】
潤滑油調合物の調製の一般的な方法として、約1重量%から約99重量%の活性成分の濃縮物の形態のチタン添加剤濃縮物が、例えば鉱物潤滑油のような炭化水素油やその他の適切な溶媒に添加される。通常これらの濃縮物は、完成した潤滑剤、例えばクランクケースモーターオイルを形成するため、分散剤/阻害剤(DI)添加剤パッケージおよびDIパッケージの1重量部につき約0.01重量部から約50重量部の潤滑油を含んだ粘度指数(VI)向上剤と共に、潤滑油に添加される。好適なDIパッケージは、例えば、その開示が引用することにより本明細書に組み込まれている米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージに含まれているタイプの添加剤に、清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、摩擦調整剤、シール膨張剤、抗酸化剤、発泡防止剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、乳化破壊剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤その他がある。これらの成分のいくつかは当技術分野に精通した技術者には周知のものであり、本明細書に記載の添加剤および組成物と共に、通例の量で使用される。
【0027】
別の実施態様では、チタン添加剤濃縮物は、完全に調合されたモーターオイル、または完成した潤滑剤中にトップトリートされる。チタン添加剤濃縮物とDIパッケージとを組み合わせる目的は、もちろん、最終的な混合物中での溶解あるいは分散を促進するだけでなく、様々な物質の取り扱いをより簡易かつ円滑にすることにある。
【0028】
本明細書に記載の実施態様は、完成した潤滑剤組成物中に約1ppmから約1500ppmのチタンを供給する程度の、炭化水素に可溶なチタン化合物の濃度の比較的低い潤滑油および潤滑剤調合物を提供する。一つの実施態様では、約25ppmから約1000ppm以上のチタンを供給するのに十分な量で、金属化合物が潤滑油組成物中に存在する。別の実施態様では、完成した潤滑剤中のチタン化合物の量は、チタン化合物を欠いた潤滑剤組成物の耐摩耗特性が増加する以上に潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある量である。さらに別の実施態様では、チタン化合物は単独で、あるいは一つ以上の従来の耐摩耗剤との組み合わせで使用される。
【0029】
上述の炭化水素に可溶なチタン添加剤を用いて作られた潤滑剤組成物は、多種多様な用途で使用される。圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジン用としては、当潤滑剤組成物は、既報のGF−4あるいはAPI−CI−4基準に見合うか、またはそれ以上であることが望ましい。上述のGF−4またはAPI−CI−4基準に基づいた潤滑剤組成物には、完全に調合された潤滑剤を供給するため、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤が含まれている。本開示による潤滑剤用の基油は、本質的に鉱油、合成潤滑油、植物油、およびそれらの混合物から成る群から選択された、潤滑粘度のオイルである。このような基油として、乗用車やトラックのエンジン、また船舶や列車のディーゼルエンジンなどのような、火花点火および圧縮点火内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていたものが含まれる。このような基油は、一般的に、下記の表1に表わされるように、グループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVに分類される:
【0030】
【表1】

【0031】
分散剤成分
DIパッケージ中に含有される分散剤には、分散される粒子と結合することのできる官能基を有する、油溶性ポリマーの炭化水素骨格が含まれるが、これらに限定はされない。一般的に、当分散剤は、アミン、アルコール、アミド、または通常架橋基を介してポリマー骨格に接続しているエステルの極性部分を含んで成る。分散剤は、例えば、米国特許第3,697,574号および3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤;米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、また米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤などの中から選択される。
【0032】
酸化防止剤成分
酸化防止剤、または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減させる。劣化は、スラッジや、金属表面に堆積するワニス様の堆積物のような酸化の産物、および完成した潤滑剤の粘度の増加などによって証明される。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール;硫化ヒンダードフェノール;約Cから約C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩;硫化アルキルフェノール;例えば硫化カルシウムノニルフェノールなどの、硫化された、あるいは硫化されていないアルキルフェノールの金属塩;無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート;リン硫化、または硫化された炭化水素;リンエステル;金属チオカーバメート;および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0033】
使用されるその他の抗酸化剤には、立体障害フェノールおよびジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、また無灰ジアルキルジチオカーバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的な例には、2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;2,6ジ−第3級ブチルメチルフェノール;4−エチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−プロピル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ペンチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ヘキシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ヘプチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−オクチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ノニル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−デシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ウンデシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ドデシル2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4,4−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール),4,4−メチレンビス(2−t−アミル−o−クレゾール),2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール),および米国特許公報第2004/0266630号に記載の、それらの混合物を含むがそれらに限定されないようなメチレン架橋の立体障害フェノールなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0034】
ジアリールアミン抗酸化剤には、以下の化学式を有するジアリールアミンが含まれるが、これに限定はされない:
【0035】
【化3】

【0036】
式中R’およびR’’はそれぞれ独立して、約6から約30の炭素原子を有する、置換または非置換アリール基を表す。アリール基の置換基の具体例には、約1つから約30の炭素原子を有するアルキル基のような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、あるいはニトロ基などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0037】
アリール基は、置換されたまたは置換されていないフェニルあるいはナフチルである。一つの実施態様では、一つまたは両方のアリール基が、約4つから約30の炭素原子を有する、少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。別の実施態様では、一つまたは両方のアリール基が、約4つから約18の炭素原子を有する、少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。さらに別の実施態様では、一つまたは両方のアリール基が、約4つから約9つの炭素原子を有する、少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。またさらに別の実施態様では、一つまたは両方のアリール基が置換されている。例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、またはモノおよびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物である。
【0038】
ジアリールアミンは、分子内に一つ以上の窒素原子を含有する構造のものである。従って、ジアリールアミンには少なくとも二つの窒素原子が含有される。ここで、例えば一つの窒素原子に二つのアリールを有すると共に第二級窒素原子をも有しているような様々なジアミンの場合と同様に、少なくとも一つの窒素原子に二つのアリール基が結合している。
【0039】
使用されるジアリールアミンの例には以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:ジフェニルアミン;各種アルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニルアミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン;フェニル−アルファ−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン;フェニル−ベータ−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチルジフェニルアミン;p−配向スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジ−フェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンなど。
【0040】
別の種類のアミン系抗酸化剤には、フェノチアジンまたは以下の化学式のアルキル化フェノチアジンが含まれる:
【0041】
【化4】

【0042】
式中Rは直鎖または分岐鎖の約Cから約C24のアルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、またRは水素、または直鎖または分岐鎖の約Cから約C24のアルキル、ヘテロアルキル、あるいはアルキルアリール基である。アルキル化フェノチアジンは、実質的にモノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチル−フェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンから成る群から選択される。
【0043】
硫黄を含有した抗酸化剤には、それらの製造に使用されるオレフィンの種類と抗酸化剤の最終的な硫黄含有量を特徴とする硫化オレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。一つの実施態様では、高分子量のオレフィン、すなわち、平均分子量が約168g/モルから約351g/モルであるようなオレフィンが使用される。使用されるオレフィンの非限定的な例として、アルファオレフィン、異性化されたアルファオレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0044】
アルファオレフィンには、約Cから約C25の任意のアルファオレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。アルファオレフィンは、硫化反応の前、または硫化反応の最中に異性化される。内部に二重結合および/または分岐を有するアルファオレフィンの、構造および/または配座異性体もまた使用される。例えばイソブチレンは、アルファオレフィン−1−ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0045】
オレフィンの硫化反応で使用される硫黄源には、以下のものが含まれる:元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの同じ段階または別の段階で加えられたそれらの混合物。
【0046】
不飽和オイルもまた、それらが不飽和であるため、硫化され抗酸化剤として使用される。使用されるオイルまたは脂質の例に、コーン油、カノーラ油、綿実油、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、ピーナツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
完成した潤滑剤に供給される硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィ
ンあるいは脂肪油の硫黄含有量、および完成した潤滑剤に供給される希望の硫黄量に基づいている。例えば、約20重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、約1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されたとき、2,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。約10重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、約1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されたとき、1,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。一つの実施態様では、約200ppmから約2,000ppmの間の硫黄を完成した潤滑剤に供給するため、硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油が加えられる。上述のアミン系、フェノチアジン、および硫黄を含有した抗酸化剤は、例えば米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0048】
抗酸化添加剤として使用される無灰ジアルキルジチオカーバメートには、添加剤パッケージ内で可溶性または分散可能な化合物が含まれるが、それらに限定はされない。一つの実施態様では、無灰ジアルキルジチオカーバメートは、分子量が約250ダルトンを越える低揮発性のものである。さらに別の実施態様では、無灰ジアルキルジチオカーバメートの分子量は、約400ダルトンを越える。使用される無灰ジチオカーバメートの例には、メチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカーバメート)、ヒドロキシアルキル置換のジアルキルジチオカーバメート、不飽和化合物から調製されたジチオカーバメート、ノルボルニレンから調製されたジチオカーバメート、およびエポキシドから調製されたジチオカーバメートなどが含まれるが、それらに限定はされない。ある実施態様では、ジアルキルジチオカーバメートのアルキル基は、約1つから約16の炭素を有する。使用されるジアルキルジチオカーバメートの非限定的な例は、以下の特許に記載されている:米国特許第5,693,598号、4,876,375号、4,927,552号、4,957,643号、4,885,365号、5,789,357号、5,686,397号、5,902,776号、2,786,866号、2,710,872号、2,384,577号、2,897,152号、3,407,222号、3,867,359号、および4,758,362号。
【0049】
無灰ジチオカーバメートのさらなる例には以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:メチレンビス−(ジブチルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカーバメート)、ジブチルN,N−ジブチル(ジチオカーバミル)コハク酸エステル、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカーバメート、ブチル(ジブチルジチオカーバミル)アセテート、S−カーボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカーバメート。
【0050】
ジンクジアルキルジチオホスフェート(「Zn DDP」)はまた、潤滑油中で抗酸化剤として使用される。Zn DDPは、良好な耐摩耗および抗酸化剤特性を有し、またSeq.IVAおよびTU3摩耗試験のような、カムの摩耗試験に合格するために使用される。米国特許第4,904,401号、4,957,649号、および6,114,288号を含む多くの特許が、Zn DDPの製造および用途を扱っている。通常のZn DDPの非限定的な種類に、第一級、第二級、および第一級と第二級のZn DDPの混合物などがある。
【0051】
同様に、摩擦調整剤として使用される有機モリブデン含有化合物もまた、抗酸化剤および耐摩耗剤の機能を示す。米国特許第6,797,677号には、完成された潤滑剤調合物中で使用される、有機モリブデン化合物、アルキルフェノチジンおよびアルキルジフェニルアミンの組み合わせが記載されている。好適なモリブデンを含有した摩擦調整剤の非限定的な例は、下記の「摩擦調整剤成分」の項に記載する。
【0052】
本明細書に記載の炭化水素に可溶な金属化合物は、任意のすべての組み合わせおよび比
率で、上記の任意のあるいはすべての抗酸化剤と共に使用される。フェノール系添加剤、アミン系添加剤、硫黄含有添加剤およびモリブデン含有添加剤などの様々な組み合わせが、ベンチテストやエンジンテスト、または分散剤、VI向上剤、基油、あるいはその他の任意の添加剤の修正に基づいて、完成した潤滑剤調合物用に最適化されるものと考えられている。
【0053】
摩擦調整剤成分
摩擦調整剤として使用される、硫黄およびリンを含有しない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源を、アミノ基および/またはアルコール基を含有した有機化合物と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含有しないモリブデン源の非限定的な例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。アミノ基には、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンが含まれるが、これらに限定はされない。アルコール基には、一置換のアルコール、ジオールあるいはビスアルコール、またはポリアルコールが含まれるが、これらに限定はされない。ある例では、ジアミンと脂肪油の反応により、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源と反応し得る、アミノ基とアルコール基の両方を含有した生産物が生成される。
【0054】
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の非限定的な例には、以下のものが含まれる:
1. 特定の塩基性窒素化合物を、米国特許第4,259,195号および4,261,843号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
2. ヒドロカルビル置換のヒドロキシアルキル化アミンを、米国特許第4,164,473号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
3. フェノールアルデヒドの縮合生成物、モノアルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第4,266,945号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
4. 脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
5. 脂肪油または酸と、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、および米国特許第5,137,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
6. 第二級アミンを、米国特許第4,692,256号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
7. ジオール、ジアミノ、またはアミノアルコール化合物と、米国特許第5,412,130号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
8. 脂肪油、モノ−アルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第6,509,303号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
9. 脂肪酸、モノ−アルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、および米国特許第6,528,463号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
【0055】
これらの物質の正確な化学組成は完全には知られておらず、また事実上いくつかの有機モリブデン化合物の多成分混合物である可能性もあるが、脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製されるモリブデン化合物は、しばしば以下の構造式で例証され、式中Rは脂肪アルキル鎖である:
【0056】
【化5】

【0057】
硫黄を含有した有機モリブデン化合物は、多様な方法で使用され、また生成される。一つの方法には、硫黄およびリンを含まないモリブデン源を、アミノ基および一つ以上の硫黄源と反応させることが含まれる。硫黄源には、例えば二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび硫黄元素が含まれるが、これらに限定はされない。一方、硫黄を含有したモリブデン化合物は、硫黄を含有したモリブデン源を、アミノ基またはチウラム基、および任意的に第二の硫黄源と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが含まれる。アミノ基はモノアミン、ジアミン、あるいはポリアミンである。ある例では、三酸化モリブデンと、第二級アミンおよび二硫化炭素の反応により、モリブデンジチオカーバメートが生成される。一方、(NHMo13*n(HO)と二硫化テトラアルキルチウラムとの反応は、三核硫黄含有モリブデンジチオカーバメートを生成する。ここでnは0から2の間の数である。
【0058】
特許および特許出願に出てくる、硫黄を含有した有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1. 三酸化モリブデンと第二級アミンおよび米国特許第3,509,051号および3,356,702号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。2. 硫黄を含まないモリブデン源と、第二級アミン、二硫化炭素、および米国特許第4,098,705号に記載の追加的な硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
3. ハロゲン化モリブデンと、第二級アミンおよび米国特許第4,178,258号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
4. モリブデン源と、塩基性窒素化合物および米国特許第4,263,152号、4,265,773号、4,272,387号、4,285,822号、4,369,119号、および4,395,343号に記載の硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
5. テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、米国特許第4,283,295号に記載の塩基性窒素化合物とを反応させることによって調製される化合物。
6. オレフィン、硫黄、アミン、および米国特許第4,362,633号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
7. テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、塩基性窒素化合物および米国特許第4,402,840号に記載の有機硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
8. フェノール系化合物、アミン、およびモリブデン源を、米国特許第4,466,901号に記載の硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
9. トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン源、および米国特許第4,765,918号に記載の硫黄源を反応させることによって調製される化合物。
10. アルカリ金属アルキルチオキサントゲン酸塩と、米国特許第4,966,719号に記載のハロゲン化モリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
11. 二硫化テトラアルキルチウラムと、米国特許第4,978,464号に記載のモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
12. アルキルジキサントゲンと、米国特許第4,990,271号に記載のモリブデ
ンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
13. アルカリ金属アルキルキサントゲン酸塩と、米国特許第4,995,996号に記載のテトラ酢酸ジモリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
14. (NH Mo13*2HOと、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートまたは米国特許第6,232,276号に記載の二硫化テトラアルキルチウラムとを反応させることによって調製される化合物。
15. エステルまたは酸と、ジアミン、モリブデン源、および米国特許第6,103,674号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
16. 米国特許第6,117,826号に記載されるように、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートを、3−クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
【0059】
モリブデンジチオカーバメートは以下の構造式によって例証され:
【0060】
【化6】

【0061】
式中、Rは約4つから約18の炭素を含有するアルキル基あるいはHであり、またXはOあるいはSである。
【0062】
グリセリドは、単独で使用されることも、他の摩擦調整剤と組み合わせて使用されることもある。好適なグリセリドには以下の化学式のグリセリドが含まれるが、これらに限定はされない:
【0063】
【化7】

【0064】
式中、各Rは独立して、HおよびC(O)R’から成る群から選択され、式中R’は約3つから約23の炭素原子を有する、飽和または不飽和アルキル基である。使用されるグリセリドの非限定的な例に、モノラウリン酸グリセロール、モノミリスチン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、およびヤシ酸、獣脂酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などから得られるモノグリセリドが含まれる。一般的な市販のモノグリセリドには、相当量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドが含有されている。これらの物質がモリブデン化合物の生産に害を及ぼすことはなく、実際にはより活性である場合もある。モノグリセリドとジグリセリドは任意の比率で使用される。ある実施態様では、約30%から約70%の利用可能な位置に遊離ヒドロキシル基が含有される(すなわち上記の化学式で表されるグリセリドのR基全体の30%から70%は水素である)。別の実施態様では、当グリセリドは、通常オレイン酸および
グリセロールから得られたモノ、ジ、トリグリセリドの混合物である、モノオレイン酸グリセロールである。
【0065】
その他の成分
本質的に非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性のスルホン酸アルキルから成る群から選択された防錆剤が使用される。
【0066】
少量の乳化破壊成分が使用されることもある。好適な乳化破壊成分は、その開示が引用することによって本明細書に組み込まれている、欧州特許第330,522号に記載されている。このような乳化破壊成分は、酸化アルキレンを、ビスエポキシドと多価アルコールの反応から得られる付加化合物と反応させることによって得られる。乳化破壊剤は、活性成分が0.1質量%を上回らない量で使用しなくてはならない。ある実施態様では、約0.001質量%から約0.05質量%の活性成分の処理率が使用される。
【0067】
別名潤滑油の流動性向上剤としても知られる流動点降下剤は、流体が流動するまたは注ぐことができるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤は周知のものである。流体の低温での流動性を向上させる流動点降下剤の非限定的な例に、約Cから約C18のフマル酸/酢酸ビニルジアルキルコポリマーやメタクリル酸ポリアルキルなどがある。
【0068】
泡の制御は、例えばシリコンオイルやポリジメチルシロキサンなど、ポリシロキサンタイプの消泡剤を含むがこれらに限定されることのない、多くの化合物によってなされる。
【0069】
例えば米国特許第3,794,081号および4,029,587号に記載の、しかしこれらに限定されることのないシール膨張剤もまた使用される。
【0070】
粘度調整剤(VM)は、高温および低温での操作性を潤滑油に与えるために機能する。使用されるVMは、単一の機能性、あるいは複数の機能性を有する。
【0071】
分散剤としても機能する、多機能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤の非限定的な例に、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、またスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、およびブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーがある。
【0072】
使用される、機能化されたオレフィンコポリマーにはまた、無水マレイン酸のような活性モノマーでグラフト化され、次にアルコールあるいはアミンで誘導体化された、エチレンとプロピレンのインターポリマーが含まれる。その他のこのようなコポリマーに、窒素化合物でグラフト化された、エチレンとプロピレンのコポリマーがある。
【0073】
上述の各添加剤は、使用される場合、潤滑剤に希望の特性を与えるために機能的に有効な量で使用される。従って、例えば添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に希望の腐食防止特性を与えるのに十分なだけの量である。通常、これらの添加剤のそれぞれの使用時の濃度は、潤滑油組成物の重量に基づいて約20重量%までの範囲であり、一つの実施態様では、約0.001重量%から約20重量%、また一つの実施態様では、潤滑油組成物の重量に基づき、約0.01重量%から約10重量%である。
【0074】
炭化水素に可溶なチタン添加剤を、潤滑油組成物に直接添加することがある。しかしながら、一つの実施態様では、添加剤濃縮物を形成するため、これらは鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えばC10からC13のアルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどのような、実質的に不活性な、通常は液体である有機希釈剤で希釈される。これらの濃縮物には、通常約1重量%から約100重量%、また一つの実施態様では、約10重量%から約90重量%のチタン化合物が含有される。
【0075】
基油
本明細書に記載の組成物、添加剤および濃縮物の調合において使用するのに適した基油は、合成油、天然油、鉱油のいずれか、またはそれらの混合物の中から選択される。合成基油の非限定的な例に、ジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステル;末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化などによって変性された、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコンオイル、および酸化アルキレンポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体などを含むポリアルファオレフィンが含まれる。
【0076】
天然基油には、動物性油および植物性油(例えばキャスターオイル、ラードオイル)、石油、および水素化精製、溶媒処理あるいは酸処理されたパラフィン系、ナフテン系およびパラフィン・ナフテン混合系の鉱物潤滑油が含まれるが、これらに限定はされない。石炭あるいは頁岩から得られた、潤滑粘度のオイルもまた有用な基油である。ある実施態様では、当基油の粘度は、一般的に約2.5cStから約15cStである。別の実施態様では、当基油の粘度は、100℃で約2.5cStから約11cStである。このような基油には、乗用車やトラックのエンジン、船舶や鉄道のディーゼルエンジンなどのような、火花点火および圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていたものも含まれる。これらの基油は、一般にグループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVに分類される。上述の基油を表1に表す。
【0077】
以下の実施例は、実施態様を例示することを目的とするものであり、実施態様をいかようにも制限することは意図していない。
【実施例】
【0078】
例1
ネオデカン酸チタンの合成
ネオデカン酸(約600グラム)を、凝縮装置、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガス入口を備えた反応容器に加えた。酸の中に窒素ガスを泡立てた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約245グラム)を反応容器にゆっくりと加えた。反応物質を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られた塔頂製品および凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに約2時間、反応が終了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の約100℃での動粘度が約14.3cStであること、またチタン含有量は約6.4重量パーセントであることが示された。
【0079】
例2
オレイン酸チタンの合成
オレイン酸(約489グラム)を、凝縮装置、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガス入口を備えた反応容器に加えた。酸の中に窒素ガスを泡立てた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約122.7グラム)を反応容器にゆっくりと加えた。反応物質を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応により得られた塔頂製品および凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに約
2時間、反応が終了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の約100℃での動粘度が約7.0cStであること、またチタン含有量は約3.8重量パーセントであることが示された。
【0080】
例3
HFRR摩耗試験の比較
以下の実施例において、オレイン酸チタンをGF−4調合の潤滑剤組成物に加え、完成した潤滑剤に基づいて約0ppmから約1,000ppmの量のチタン金属を供給した。また、有機モリブデン化合物および/またはグリセロールエステルを含有した潤滑剤と含有していない潤滑剤の組み合わせも調製し、テストした。高周波往復試験装置(HFRR)内で、スチール製のボールを、1mmの経路に亘り、周波数20Hzで、潤滑剤に浸されたスチールのディスクの全域で振動させた。ディスクとボールの間の負荷は、7ニュートン(700グラム)であった。サンプルの温度は、ボールとディスクが60分間互いに振動している間、120℃で一定に保持された。60分間の試験の終わりに、ディスク上にできた摩耗傷の深さを測定した。摩耗傷の深さが小さいほど、潤滑剤の耐摩耗特性が優れている。各潤滑剤につき少なくとも二回試験を行い、試験された各潤滑剤の摩耗傷の深さの平均を測定した。完成した潤滑剤の動粘度は約100℃で約8.55cSt、コールドクランクスタート粘度(CCS)は約−30℃で約3,752センチポアズであり、また完成した潤滑剤には、以下の成分が表に示されている近似量で含有されていた:
【0081】
【表2】

【0082】
摩擦調整剤およびオレイン酸チタンを使用していない摩耗傷試験、また1000ppmのチタンを供給するのに十分な量のオレイン酸チタンを含んだ、また含んでいない一つ以上の摩擦調整剤を使用した摩耗傷試験の結果を以下の表に表す。モリブデン化合物は、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk,CT)の、R.T.バンダービルト社(R.T.Vanderbilt Company,Inc.)からMOLYVAN(R) 855(Mo)の商品名で市販されている有機モリブデン錯体であり、完成したオイル中に約0.05重量%存在した。モノオレイン酸グリセロール(GMO)を使用した際、これは完成したオイル中に約0.3重量%存在した。
【0083】
【表3】

【0084】
表3の結果に見られるように、MoおよびGMOとの組み合わせのオレイン酸チタン(試験4)は、摩擦調整剤あるいは耐摩耗剤を含有しない基油(試験1)と比べて、潤滑剤の耐摩耗特性が著しく増加(45%向上)している。試験2は、モリブデン化合物とモノオレイン酸グリセロール摩擦調整剤のみを含有した基油の例を表しており、また試験3ではオレイン酸チタン化合物のみが含有されている。試験2および試験3は、潤滑剤の耐摩耗特性に著しい向上は見られなかった。
【0085】
例4
この実施例では、完成した潤滑剤に約0ppmから約1,000ppmのチタン金属を供給するために表2に示された基油をオレイン酸チタンでスパイクし、またTiとGMOの比率が高くなるよう、GMOの量を減らした。当基油にはまた、MOLYVAN(R)
855も含有されていた。上述の要領で行われた試験の摩耗傷データの結果を、以下の表に表す:
【0086】
【表4】

【0087】
上記の結果に見られるように、試験4と試験5の比較に示される通り、GMOの量を減少させても摩耗傷の深さは変わらない。従って、基油(試験1)に比べ、耐摩耗特性を著しく向上させながらも、TiとGMOの比率を広範囲にわたって変化させることが可能であり、またGMOの濃度も広範囲にわたる変化が可能である。
【0088】
例5
この実施例の基油を表5に表す。当基油には0.38重量%のモノオレイン酸グリセロールが含有され、MOLYVAN(R) 855あるいはチタン化合物は含有されていない。表6に示されるように200ppmのチタンと100ppmのモリブデンを供給するため、当基油をネオデカン酸チタンおよびモリブデンでスパイクした。摩耗データの結果を表7に表す。
【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
上記の結果に見られるように、約200ppm(試験7および9)の量のチタンは、試験6と比較して、摩耗特性に著しい向上をもたらした。100ppmのモリブデンとモノオレイン酸グリセロールを含有した試験8は、試験6と比較して摩耗傷の深さに増加が見られた。従って、200ppmの量のチタンと、モノオレイン酸グリセロールとの組合せ、またモリブデン化合物およびモノオレイン酸グリセロールとの組み合わせは、潤滑剤の耐摩耗特性に著しい影響力を有すると考えられる。
【0093】
炭化水素に可溶なチタン化合物の形態で約1ppmから約1,500ppm、あるいはそれ以上のチタン金属を含有する調合物により、耐摩耗特性や長所を向上させ、またオイ
ルの腐食性への悪影響をわずかにするあるいはなくす一方、従来のリンおよび硫黄の耐摩耗剤を減少させ、それにより自動車の公害防止設備の性能効果の維持が可能となることが期待される。
【0094】
本明細書の全体にわたる数々の箇所で多くの米国特許および公報が引用されている。このような引用文献はすべて、当明細書に完全に記載されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0095】
上述の実施態様は、その実行において、かなり変更される可能性がある。従って当実施態様は、上記に説明された特定の例証に限定されることを意図したものではない。むしろ上述の実施態様は、法律上利用可能な均等の範囲も含んで、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0096】
当特許権者は、開示されたいかなる実施態様をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。
【0097】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1. 潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性を越える、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物とを含んだ潤滑剤組成物を含んで成る潤滑面。2. 潤滑面がエンジンドライブトレインを含んで成る、上記1に記載の潤滑面。
3. 潤滑面が、内燃エンジンの内側面または成分を含んで成る、上記1に記載の潤滑面。
4. 潤滑面が、圧縮点火エンジンの内側面または成分を含んで成る、上記1に記載の潤滑面。
5. 炭化水素に可溶なある量のチタン化合物が、潤滑剤組成物に約1ppmから約1500ppmの範囲のチタンを供給する、上記1に記載の潤滑面。
6. 炭化水素に可溶なある量のチタン化合物が、潤滑剤組成物に約50ppmから約1000ppmの範囲のチタンを供給する、上記1に記載の潤滑面。
7. 炭化水素に可溶なチタン化合物がカルボン酸チタンを含んで成り、ここで当カルボン酸チタンが実質的にリンおよび硫黄原子を欠いている、上記1に記載の潤滑面。
8. 炭化水素に可溶なチタン化合物が、少なくとも約6つの炭素原子を含み、またカルボキシル基に隣接する第一級、第二級、あるいは第三級炭素を有するモノカルボン酸から得られた、カルボン酸チタンを含んで成る、上記1に記載の潤滑面。
9. 炭化水素に可溶なチタン化合物が以下の構造式の化合物である、上記1に記載の潤滑面:
【0098】
【化8】

【0099】
式中、nは2、3、および4のなかから選ばれた整数であり、またRは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基である。
10. 上記1に記載の潤滑面を含んで成る自動車。
11. 炭化水素に可溶なある量の金属化合物が、潤滑剤に約1ppmから約1500p
pmの範囲のチタンを供給する、上記10に記載の自動車。
12. 炭化水素に可溶なある量の金属化合物が、潤滑剤に約50ppmから約1000ppmの範囲のチタンを供給する、上記10に記載の自動車。
13. 可動部を有し、また可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる自動車であって、当潤滑剤は、潤滑粘度のオイル;主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;および炭化水素に可溶なチタン含有化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性を越える、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少くとも一つの一定量のチタン含有化合物を含んでなる耐磨耗添加剤を含んで成り、ここで当化合物が実質的に硫黄およびリン化合物を欠いている、自動車。
14. 潤滑剤中のチタンとモリブデンの比率が、約0.5:1から約40:1である、上記13に記載の自動車。
15. 潤滑剤中のグリセロールエステルとチタンの比率が、約20:1から約1:1の範囲である、上記13に記載の自動車。
16. 炭化水素に可溶なチタン化合物が、約Cから約C25のカルボン酸チタンを含んで成る、上記13に記載の自動車。
17. 炭化水素に可溶なチタン化合物が以下の構造式の化合物を含んで成る、上記13に記載の自動車:
【0100】
【化9】

【0101】
式中、nは2、3、および4のなかから選ばれた整数であり、またRは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基である。
18. 可動部が高荷重ディーゼルエンジンを含んで成る、上記13に記載の自動車。
19. 潤滑粘度の基油成分;主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;および炭化水素に可溶なチタン含有化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な一定量のチタン含有化合物を含んで成り、ここで当化合物が実質的に硫黄およびリン化合物を欠いている耐摩耗添加剤を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物。
20. 潤滑剤組成物中のグリセロールエステルとモリブデンの比率が、約30:1から約75:1である、上記19に記載の完全に調合された潤滑剤組成物。
21. 潤滑剤組成物中のグリセロールエステルとチタンの比率が、約20:1から約1:1の範囲である、上記20に記載の完全に調合された潤滑剤組成物。
22. 潤滑剤組成物が、完成したオイルに0.7重量%以下の硫黄と約0.12重量%以下のリンが含まれる、圧縮点火エンジン用に適した、低灰分、低硫黄、および低リン潤滑剤組成物を含んで成る、上記19に記載の潤滑剤組成物。
23. 炭化水素に可溶なチタン含有化合物が、約Cから約C25のカルボン酸チタンを含んで成る、上記19に記載の潤滑剤組成物。
24. 炭化水素に可溶なチタン含有化合物が、以下の構造式の化合物を含んで成る、上記19に記載の自動車:
【0102】
【化10】

【0103】
式中、nは2、3、および4のなかから選ばれた整数であり、またRは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基である。
25. 炭化水素に可溶なある量の金属含有化合物が、潤滑剤組成物に約1ppmから約1500ppmの範囲のチタンを供給する、上記19に記載の潤滑剤組成物。
26. 炭化水素に可溶なある量の金属含有化合物が、潤滑剤組成物に約50ppmから約1000ppmの範囲のチタンを供給する、上記19に記載の潤滑剤組成物。
27. エンジンを、潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物を含んで成る潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの作動中に、エンジンの潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる方法。
28. エンジンが高荷重ディーゼルエンジンを含んで成る、上記27に記載の方法。
29. 炭化水素に可溶なチタン化合物が、約Cから約C25のカルボン酸チタンを含んで成り、当該の炭化水素に可溶なチタン化合物が実質的にリンおよび硫黄原子を欠いている、上記27に記載の方法。
30. 潤滑剤組成物が、さらに、主として有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤を含んで成る、上記27に記載の方法。
31. 潤滑油で可動部を潤滑する方法であって、基油;主として有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;およびチタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物を含んで成る耐摩耗剤であって、約5ppmから約1500ppmのチタンを潤滑油に供給する効果のある耐摩耗剤を含んで成る潤滑剤組成物を、一つ以上の可動部用の潤滑油として使用することを含んで成る方法。
32. 可動部がエンジンの可動部を含んで成る、上記31に記載の方法。
33. エンジンが、実質的に圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンから成る群から選択される、上記31に記載の方法。
34. エンジンが、クランクケースを有する内燃エンジンを含み、潤滑油がエンジンのクランクケース内に存在するクランクケースオイルを含んで成る、上記31に記載の方法。
35. 潤滑油が、エンジンを含んだ自動車のドライブトレインに存在するドライブトレイン潤滑剤を含んで成る、上記31に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性を越える、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物とを含んだ潤滑剤組成物を含んで成る潤滑面。
【請求項2】
炭化水素に可溶なある量のチタン化合物が、潤滑剤組成物に約1ppmから約1500ppmの範囲のチタンを供給する、請求項1に記載の潤滑面。
【請求項3】
請求項1に記載の潤滑面を含んで成る自動車。
【請求項4】
可動部を有し、また可動部を潤滑するための潤滑剤を含んでいる自動車であって、当潤滑剤は、潤滑粘度のオイル;主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;および炭化水素に可溶なチタン含有化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性を越える、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少くとも一つの一定量のチタン含有化合物を含んで成る耐磨耗添加剤を含んでなり、ここで当化合物が実質的に硫黄およびリン化合物を欠いている、自動車。
【請求項5】
潤滑剤中のチタンとモリブデンの比率が、約0.5:1から約40:1である、請求項4に記載の自動車。
【請求項6】
潤滑粘度の基油成分;主に有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;および炭化水素に可溶なチタン含有化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な一定量のチタン含有化合物を含んで成り、ここで当化合物が実質的に硫黄およびリン化合物を欠いている耐摩耗添加剤を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物。
【請求項7】
潤滑剤組成物中のグリセロールエステルとモリブデンの比率が、約30:1から約75:1である、請求項6に記載の完全に調合された潤滑剤組成物。
【請求項8】
潤滑剤組成物が、完成したオイルに0.7重量%以下の硫黄と約0.12重量%以下のリンが含まれるような、圧縮点火エンジン用に適した、低灰分、低硫黄、および低リン潤滑剤組成物を含んで成る、請求項6に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
エンジンを、潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶なチタン化合物を欠いている潤滑剤組成物の耐摩耗特性以上に、潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる効果のある、炭化水素に可溶な少なくとも一つの一定量のチタン化合物を含んで成る潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの作動中に、エンジンの潤滑剤組成物の耐摩耗特性を増加させる方法。
【請求項10】
潤滑油で可動部を潤滑する方法であって、基油;主として有機モリブデン摩擦調整剤、グリセロールエステル摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群から選択された摩擦調整剤;およびチタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物を含んで成る耐摩耗剤であって、約5ppmから約1500ppmのチタンを潤滑油に供給する効果のある耐摩耗剤、を含んで成る潤滑剤組成物を、一つ以上の可動部用の潤滑油として使用することを含んで成る方法。

【公開番号】特開2007−169635(P2007−169635A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340227(P2006−340227)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】