説明

向上した薬物動態特性を有する組成物

【課題】治療成分の薬物動態特性を向上させる組成物を提供する。
【解決手段】治療成分の薬物動態特性を向上させる、治療成分および効力増強成分を含んで成る組成物。治療成分はα−2−アドレナリン作動薬を包含してよく、効力増強成分は脂肪酸を包含してよい。1つの態様において、治療成分および効力増強成分は錯体を形成する。効力増強成分が、陰イオンポリマー、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸ならびにそれらの混合物から成る群から選択され、具体的にはリノレン酸であり、治療成分がブリモニジンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療成分(以下にTCと称す)、例えばα−2−アドレナリン作動薬を含有する組成物に関する。本発明は特に、そのようなTC、および有利には1つまたはそれ以上の他の成分を含有するそのような組成物であって、該組成物において、TCが好ましくは向上した薬物動態特性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
TCは、受容体に作用しおよび/または結合し、治療効果をもたらすのに有効なあらゆる化学物質、例えば、化合物、イオン、錯体等を包含する。TCは、作動薬、拮抗薬、それらの前駆物質、それらの代謝産物およびそれらの組合せであってよい。
【0003】
TCを含有する組成物の供給において常に存在する課題は、そのような組成物をさらに有効なものにすることである。TCをより有効なものにする1つの方法は、それらの薬物動態特性を向上させることである。例えば、調剤された、または投与されたTCは、好ましくは、作動薬が標的受容体に到達して治療効果を与えうるように脂質細胞膜に透過性であるべきである。特定のTCが脂質膜を充分に透過しない理由の1つとして考えられることは、これらの成分が生理的pHにおいて荷電イオンであることである。
【0004】
本明細書において使用される「薬物動態特性の向上」という用語は、透過性の増加を意味しうるが、薬物動態特性の向上は、例えば、TCの生物学的利用能、金属イオン封鎖特性および/または放出特性の向上も意味しうる。
【0005】
イオン化可能な分子の生体膜を通る移動を増加させる陽イオンと陰イオンとのイオン対形成または錯体生成が示されている(Nashら、Skin Pharmacol 5:160−170(1992)およびOgawaら、Jpn J Ophthalmol 37:47−55(1993))。しかし、従来のイオン錯体系は、特定の生物学的環境、例えば眼環境へのTCの輸送に使用するのに適さない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
治療成分の有効性を増加させる新規組成物が現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
新規TC含有組成物が見出された。本発明によれば、本発明組成物は、組成物のTCの有効性を増強するのに有効な特定の物質を含有する。本発明をいかなる特定の理論または作用機構にも限定するものではないが、TCの有効性は、向上した薬物動態、例えば、TCの脂質ニ重層への透過性の増加によって増強される考えられる。1つの態様において、これらの物質は眼におけるTCの生物学的利用能を向上させる。該物質は、生理的条件下、例えばpH約6.5〜約9において、TCの薬物動態を向上しうるのが好ましい。
【0008】
TCは、生理的pH、例えばpH約6.0〜約9.0において、イオン化されるかまたはイオン化可能であるのが有利である。1つの態様において、TCはpH約7においてイオン化されるかまたはイオン化可能である。
【0009】
本発明に使用されるTCは、患者、例えばヒト患者に投与した場合に、治療的利益または効果を与えるのに有用な化合物、化合物の混合物、他の物質の混合物を包含する。本発明に有用なTCは、NMDA拮抗薬、抗細菌薬、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、抗炎症薬、駆虫薬、縮瞳薬、抗コリン作動薬、アドレナリン作動薬、抗ウイルス薬、局所麻酔薬、抗真菌薬、殺アメーバ薬、殺トリコモナス薬、鎮痛薬、散瞳薬、抗緑内障薬、神経保護薬、アンティオーギオゲニック薬、眼科用診断薬、手術においてアジュバントとして使用される眼科用薬剤、キレート化剤、抗腫瘍薬、抗高血圧薬、筋弛緩薬、診断薬等、およびそれらの混合物を包含するが、それらに限定されない。そのようなTCの具体的な例は、一般的であり、当分野においてよく知られている。
【0010】
TCは、α−2−アドレナリン作動薬を包含しうる。α−2−アドレナリン作動薬は、イミノ−イミダゾリン、イミダゾリン、イミダゾール、アゼピン、チアジン、オキサゾリン、グアニジン、カテコールアミン、それらの生物学的に適合性の塩およびエステルならびにそれらの混合物を包含する。α−2−アドレナリン作動薬は、キノキサリン成分を包含しうる。キノキサリン成分は、キノキサリン、生物学的に適合性のその塩、エステル、他の誘導体等、ならびにそれらの混合物を包含する。キノキサリン誘導体の非制限的な例は、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、およびそれらの生物学的に適合性の塩およびエステル、例えば5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンの酒石酸塩等、ならびにそれらの混合物を包含する。以下では、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンは「ブリモニジン」と称し、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンの酒石酸塩は「ブリモニジンタータレート」と称す。
【0011】
前記のようなα−2−アドレナリン作動薬は、α−2A−アドレナリン受容体、α−2B−アドレナリン受容体、および/またはα−2D−アドレナリン受容体またはそれらの任意の組み合わせに特異的であると考えられる。
【0012】
TCの薬物動態を向上させる物質は、効力増強成分(以下にEECと称す)を包含する。1つの態様において、EECは、飽和および/または不飽和脂肪酸を包含する。本発明の脂肪酸は12個より多い炭素原子を有し、その例はドコサヘキサン酸およびリノレン酸である。1つの態様において、本発明の脂肪酸は、約12〜約26個の炭素原子を有する。他の態様において、本発明の脂肪酸は、約16〜約24個の炭素原子を有する。1つの態様において、EEC自体が、少なくとも1つの治療効果を与えるのに有効である。
【0013】
TCおよびEECは、本発明の組成物において、錯体を形成するか、および/または錯体の形態で存在する。1つの態様において、TCおよびEECは、溶液中で錯体を形成し、例えば、pH約5〜約9、例えばpH約7〜約9において、溶液中で錯体を形成しうる。1つの態様において、EECおよびTCは、例えば水性成分中において、イオン対である錯体を形成する。1つの態様において、TCおよびEECは、溶液の外部において、分離相、例えば塩様物質、および/または油相として存在する錯体を形成することができる。
【0014】
本発明の組成物は、担体成分を含有しうる。1つの態様において、組成物は約7またはそれ以上のpHを有する。例えば、組成物は約7〜約9のpHを有し、好ましくは眼用に許容される。
【0015】
有用な態様において、可溶化剤成分が本発明組成物に含有されうる。可溶化剤成分は、本発明組成物中において、錯体の溶解度を増加させるのに有効な量で存在する。あらゆる好適な可溶化剤成分を使用しうるが、可溶化剤成分は非イオン性であるのが好ましい。有用な可溶化剤成分の非制限的な例は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、およびそれらの混合物である。
【0016】
さらに本発明によれば、本発明組成物は、有効量の非イオン張度成分を含有しうる。有用な非イオン張度成分は、マンニトール、グリセリンおよびそれらの混合物である。
【0017】
EECおよびTCは、(EECからの電荷)対(TCからの電荷)の比が、約0.9〜約1.5であるような量で存在するのが好ましい。好ましい態様において、(EECからの電荷)対(TCからの電荷)の比は、約0.95〜約1.4、例えば約1.0〜約1.3である。
【0018】
本発明組成物は、緩衝剤成分を含有しうる。あらゆる好適な緩衝剤成分を含有しうるが、低濃度において、例えば本発明組成物のイオン濃度を減少させるのを助けるのに有効な緩衝剤成分を使用するのが好ましい。1つの態様において、緩衝剤成分は、約0.001モルまたは約0.005モル〜約0.05モルまたは約0.1モルで存在する。1つの有用な態様において、緩衝剤成分は燐酸塩緩衝剤成分である。
【0019】
本明細書に記載したあらゆる特徴、または特徴の組み合わせは、本発明に含まれるものとし、但し、あらゆるそのような組み合わせに含まれる特徴が、情況、本明細書および当業者の知識から判断して明らかに相互に矛盾しないことを条件とする。
【0020】
本発明の付加的な利益および局面は、下記の詳細な説明および請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
治療成分TCおよび効力増強成分EECを含んで成る組成物を提供する。本発明組成物に使用されるEECは、TCの薬物動態を向上させるのに有効でありうる。例えば、EECは、治療成分の治療作用を増加しうる。1つの態様において、本発明組成物は、液体担体成分をさらに含有してよく、液体、例えば、水性液、溶液の性質を有してよい。
【0022】
1つの態様において、TCおよびEECは錯体を形成する。形成された錯体は、「ゆるい」イオン対、または「緊密な」イオン対であってよい。1つの有用な態様において、本発明の錯体は「緊密な」イオン対である。例えば、本発明の錯体は、水または水溶液のような高誘電率溶媒中で解離しないような充分な「緊密さ」である。そのような「緊密な」イオン対の錯体の1つの長所は、眼環境において使用しうる食塩水のような水溶液に含有しうることである。
【0023】
1つの態様において、錯体は、特定条件下に解離することができる。例えば、錯体が脂質層を通った後に、TCは、EECと錯体形成していない場合には、より効果的に標的分子を活性化しうる。従って、1つの態様において、TCおよびEECは、TCの薬物動態特性を向上させるために錯体として存在し、後に解離して、TCが受容体においてより効果的に作用しうるようにする。
【0024】
1つの態様において、1つのTCが、2つ以上のEEC、例えば2つまたは3つのEECと錯体を形成してよい。他の態様において、1つのEECが、2つ以上のTC、例えば2つまたは3つのTCと錯体を形成してよい。
【0025】
1つの態様において、1つのTC分子が、1つまたはそれ以上のEEC分子と錯体を形成してよく、例えば、1つ、2つまたは3つのEEC分子が、1つのTC分子と錯体を形成してよい。他の態様において、1つのEEC分子が、2つ以上のTC分子と錯体を形成してよく、例えば、2つまたは3つのTC分子が1つのEEC分子と錯体を形成してよい。
【0026】
現在有用なTCは、EECの存在によって利益を得るように選択するのが好ましい。一般に、TCは、EECと錯体を形成している場合に、向上した脂質膜透過能力を与えられる。1つの態様において、TCは塩基性分子である。他の態様において、TCは陽イオンである。
【0027】
本組成物に含めることができるTCの例には、NMDA拮抗薬;β-ラクタム系抗生物質などの抗細菌物質、例えばセフォキシチン、n-ホルムアミドイルチエナマイシンおよび他のチエナマイシン誘導体、テトラサイクリン類、クロラムフェニコール、ネオマイシン、カルベニシリン、コリスチン、ペニシリンG、ポリミキシンB、バンコマイシン、セファゾリン、セファロリジン、チブロリファマイシン(chibrorifamycin)、グラミシジン、バシトラシンおよびスルホンアミド類;アミノグリコシド系抗生物質、例えばゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シソマイシンおよびトブラマイシン;ナリジクス酸およびその類似体、例えばノルフロキサシンおよび抗微生物複合薬フルオロアラニン/ペンチジドン(fluoroalanine/pentizidone)、ニトロフラゾン類、およびその類似体;抗ヒスタミン剤およびうっ血除去剤、例えばピリラミン、クロルフェニラミン、テトラヒドラゾリン、アンタゾリンおよびその類似体;マスト細胞ヒスタミン放出阻害剤、例えばクロモリン;
【0028】
抗炎症剤、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンエステル、ベタメタゾン、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メドリゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、インダインエタシン(indainethacin)、スリンダク、その塩および対応するスルフィド、ならびにその類似体;縮瞳剤および抗コリン作動剤、例えばエコチオフェート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、エピネフリン、ジピバロイルエピネフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、臭化デメカリム(demecarim bromide)、塩化カルバモイルコリン、メタコリン、ベタネコール、およびその類似体;散瞳剤、例えばアトロピン、ホマトロピン、スコポラミン、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェレフリン、シクロペントレート、オキシフェノニウム、ユーカトロピン;など、およびその混合物が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0029】
他のTCは、抗緑内障薬、例えばチモロール、特にそのマレイン酸塩およびR-チモロール、ならびにチモロールまたはR-チモロールとピロカルピンとの組合わせ;他のアドレナリン作動薬および/またはアドレナリン拮抗薬、例えばエピネフリンおよびエピネフリン複合体、またはプロドラッグ、例えば酒石酸水素塩、ホウ酸塩、塩酸塩およびジピベフリン誘導体;炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾラミド、ジクロルフェナミド、2-(p-ヒドロキシフェニル)チオチオフェンスルホンアミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、および6-ピバロイルオキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド;抗寄生虫化合物および/または抗原虫化合物、例えばイベルメクチン、ピリメタミン、トリスルファピリミジン、クリンダマイシンおよびコルチコステロイド製剤;抗ウイルス活性を持つ化合物、例えばアシクロビル、5-ヨード-2'-デオキシウリジン(IDU)、アデノシンアラビノシド(Ara-A)、トリフルオロチミジン、インターフェロン、およびインターフェロン誘導剤、例えばポリI:C;抗真菌剤、例えばアンホテリシンB、ニスタチン、フルシトシン、ナタマイシンおよびミコナゾール;
【0030】
麻酔剤、例えばエチドカイン、コカイン、ベノキシネート、塩酸ジブカイン、塩酸ジクロニン、ネパイン、塩酸フェナカイン、ピペロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸テトラカイン、ヘキシルカイン、ブピバカイン、リドカイン、メピバカインおよびプリロカイン;眼科診断薬、例えば(a)網膜の検査に使用されるもの、例えばフルオレセインナトリウムなど、(b)結膜、角膜および涙器の検査に使用されるもの、例えばフルオレセインおよびローズベンガル、および(c)異常瞳孔反応の検査に使用されるもの、例えばメタコリン、コカイン、アドレナリン、アトロピン、ヒドロキシアンフェタミンおよびピロカルピン;手術時に補助剤として使用される眼科薬、例えばα-キモトリプシンおよびヒアルロニダーゼ;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびデフェロキサミン;免疫抑制剤および代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、シクロホスファミド、6-メルカプトプリンおよびアザチオプリン、ならびに上述した化合物の組合わせ、例えば抗生物質/抗炎症剤の組合わせ、例えば硫酸ネオマイシンとリン酸デキサメタゾンナトリウムとの組合わせ、および緑内障の処置に併せて使用される組合わせ、例えばマレイン酸チモロールとアセクリジンとの組合わせ;など、ならびにその混合物である。
【0031】
好ましい態様として、有用なTCにはアドレナリン作動薬が含まれる。アドレナリン作動薬は、好ましくは、アミンを含有する分子である。また、アドレナリン作動薬は、好ましくは、7より高いpKa、好ましくは約7〜約9のpKaを持つアミン含有分子である。
【0032】
1つの態様において、有用なTCにはα-アドレナリン作動薬が含まれる。α-アドレナリン作動薬の例には、アドラフィニル、アドレノロン(adrenolone)、アミデフリン(amidephrine)、アプラクロニジン、ブドララジン、クロニジン、シクロペンタミン、デトミジン、ジメトフリン(dimetofrine)、ジピベフリン、エフェドリン、エピネフリン、フェノキサゾリン(fenoxazoline)、グアナベンズ、グアンファシン、ヒドロキシアンフェタミン、イボパミン、インダナゾリン(indanazoline)、イソメテプテン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、メチルヘキサネアミン、メチゾレン(metizolene)、ミドドリン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトドリン(octodrine)、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニルプロピルメチルアミン、フォレドリン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、リルメニジン、シネフリン、テトラヒドロゾリン、チアメニジン(tiamenidine)、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、チラミン、キシロメタゾリンなど、およびその混合物が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0033】
1つの有用な態様において、TCにはα−2−アドレナリン作動薬が含まれる。本明細書で使用する用語「α−2−アドレナリン作動薬」には、例えば節後交感神経終末のシナプス前α2受容体または例えば平滑筋細胞のシナプス後α2受容体に結合することなどによって、正味の交感神経遮断応答を引き起して、調節の増加をもたらす化合物、イオン、複合体などの化学物質が包含される。交感神経遮断応答は、交感神経系によって伝達されるインパルスの作用の阻害、低減または防止を特徴とする。本発明のα−2−アドレナリン作動薬は、α−2−アドレナリン受容体にシナプス前性に結合して、ニューロンノルエピネフリンの放出を減少させる負のフィードバックを引き起す。さらに、本発明のα−2−アドレナリン作動薬はα−2−アドレナリン受容体にシナプス後性にも結合して、β-アドレナリン受容体刺激によるサイクリックAMP形成を阻害する(毛様体筋の弛緩に寄与する)と共に、他の細胞内経路に対するシナプス後α−2−アドレナリン受容体の効果にも影響する。シナプス前またはシナプス後α−2−アドレナリン受容体での活性はアドレナリン作動性作用を低下させるだろう。アドレナリン作動性作用の低下は、コリン作動性神経支配がもたらす収縮を増加させる。α−2−アドレナリン作動薬には神経保護活性を持つ化合物も含まれる。例えば5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンは、未知の機序による神経保護活性を持つα−2−アドレナリン作動薬である。
【0034】
本発明に役立つ代表的α−2−アドレナリン作動薬を以下に列挙するが、本発明はここに挙げる特定の群および化合物に限定されない:イミノ-イミダゾリン類、例えばクロニジン、アプラクロニジン;イミダゾリン類、例えばナファゾリン、キシメタゾリン(xymetazoline)、テトラヒドロゾリン、およびトラマゾリン;イミダゾール類、例えばデトミジン、メデトミジン、およびデクスメデトミジン;アゼピン類、例えばB-HT 920(6-アリル-2-アミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ-4H-チアゾロ[4,5-d]アゼピン)およびB-HT 933;チアジン類、例えばキシラジン;オキサゾリン類、例えばリルメニジン;グアニジン類、例えばグアナベンズおよびグアンファシン;カテコールアミン類など。
【0035】
特に有用なα−2−アドレナリン作動薬にはキノキサリン成分が含まれる。一態様として、キノキサリン成分には、キノキサリン、その誘導体、およびその混合物が含まれる。キノキサリンの誘導体には、(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンが含まれるが、これに限定されない。1つの態様において、キノキサリンの誘導体には5-ハライド-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンが含まれる。5-ハライド-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンの「ハライド」はフッ素、塩素、ヨウ素であってよく、また好ましくは臭素であって5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンを形成してよい。
【0036】
他の有用なキノキサリン誘導体は周知である。例えば、有用なキノキサリン誘導体には、Burkeらの米国特許第5,703,077号に開示されているものが含まれる。Danielwiczらの第3,890,319号も参照されたい。BurkeらおよびDanielwiczらの開示内容はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0037】
キノキサリンおよびその誘導体、例えば酒石酸ブリモニジンは、アミン含有物質であり、好ましくは7より大きいpKa、より好ましくは約7.5〜9のpKaを持つ。
α−2−アドレナリン作動薬として機能する上記化合物の類似体も、特に本発明によって包含されるものとする。
α−2−アドレナリン作動薬、例えば上述のものは、α2Aアドレナリン受容体、α2Bアドレナリン受容体およびα2Dアドレナリン受容体の1または複数の活性化に有効である。
【0038】
1つの態様において、本発明の組成物には、α−2−アドレナリン作動薬以外のTCが含まれる。例えば、本発明の組成物は、キノキサリン、例えば5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリン(ブリモニジン)ではないTCを含むことができる。
【0039】
他の有用なTCには、眼圧降下剤(Woodwardら、米国特許第5,688,819号)、ピラノキノリノン誘導体(Cairnsら、米国特許第4,474,787号)、レチノイド様活性を持つ化合物(Chandraratnaら、米国特許第5,089,509号)、ケトロラク/ピロール-1-カルボン酸(Muchowskiら、米国特許第4,089,969号)、オフロキサシン類/ベンゾオキサジン誘導体(Hayakawaら、米国特許第4,382,892号)、メマンチン類(Liptonら、米国特許第5,922,773号)、上記特許に記載の内容は参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0040】
1つの有用な態様において、本発明の組成物中のTCの量は、約0.05%〜約30%(w/v)である。TCの量は、約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲であってよい。例えば、TCの量は、約0.1%(w/v)〜約0.6%(w/v)の範囲であってよい。1つの態様において、TCは、アドレナリン作動剤であり、組成物中に、約0.1%(w/v)〜約0.6%(w/v)の範囲、例えば約0.13%で存在する。
【0041】
あらゆる適当なEECを本発明に従って使用することができる。1つの態様において、EECは酸性分子である。他の態様において、EECは陰イオンである。1つの態様において、EECは脂肪酸またはその誘導体を含む。脂肪酸は、長い疎水性炭素鎖および末端カルボキシル基を有していてよい。炭素鎖は、飽和であっても、または1つまたはそれ以上の不飽和結合を有していてもよい。さらに、脂肪酸は三重結合を有していてよい。脂肪酸は、例えば鎖長並びに不飽和結合の数および位置に関して、異なっていてよい。飽和脂肪酸の非限定例には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、それらの誘導体およびそれらの混合物が包含される。不飽和脂肪酸の非限定例には、パルミトレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、それらの誘導体およびそれらの混合物が包含される。一般的でない脂肪酸の例には、トランス−バクセン酸(trans-Vaccenic acid)、ラクトバシリン(lactobacillic)酸、ツベルクロステアリン(tuberculostearic)酸、セレブロン(serebronic)酸、それらの誘導体およびそれらの混合物が包含される。
【0042】
1つの態様において、EECはドコサヘキサン酸を含む。他の態様において、EECはリノレン酸を含む。
【0043】
1つの態様において、本発明の脂肪酸は、約12〜約26個の炭素原子を含む。他の態様において、本発明の脂肪酸は、約16〜約24個の炭素原子を含む。
【0044】
1の態様において、EECは直接的な治療効果を有する。例えば、EECは、プロスタノイドのようなエイコサノイドを含んでいてよい。プロスタノイドは、内部5員または6員環を有する炭素数20であるアラキドン酸から誘導された脂肪酸複合体、例えばプロスタグランジン、プロタノン酸およびスロンボキサンである。プロスタノイドは、眼内圧を降下させることが知られている。1つの態様において、本発明の組成物は、TCおよび治療有効性EECの錯体を含んでなる。例えば、本発明の組成物は、アドレナリン作動剤とプロスタノイドの錯体を含んでいてよい。アドレナリン作動剤およびプロスタノイドの両方が異なる機序により作用して、付加的な治療作用をもたらす、例えば、眼内圧を低下させる。EECは、錯体に結合されている場合にその治療効果を発揮してよく、あるいは錯体から遊離した場合にその治療効果を発揮してよい。
【0045】
脂肪酸は、アドレナリン作動剤のようなTCと錯体を形成するための対イオンとして好ましいが、他の分子もTCと錯体を形成するための対イオンとして使用することができる。1つの態様において、形成された錯体は、脂質層を通るTCの移動を促進することができる。1つの態様において、このような錯体は、溶液中、好ましくは約7〜10のpHを有する溶液中でTCを可溶化することができる。
【0046】
脂肪酸以外のEECには、アニオンポリマー、それらの誘導体などおよびそれらの混合物が包含される。1つの態様において、アニオンポリマーは、TCを含む溶液に添加されて溶液中のTCと錯体を形成する。好ましくは、アニオンポリマーは、使用される濃度において眼科的に許容されるものである。加えて、アニオンポリマーは、1つまたはそれ以上の、例えば2つまたは3つの、アニオン(又は負)電荷を含んでよい。さらに、2つ以上のアニオンサイトを有するアニオンポリマーは、TCを含む溶液の浸透圧を低下させるのに使用することができる。例えば、1つのアニオンポリマーへの数個のTCの錯体を有する溶液は、TCが錯体化されていない同様の溶液よりも低い浸透圧を有する。
【0047】
複数のアニオン電荷を有することができるポリマーの例は、下記のとおりである:
金属カルボキシメチルスターチ、
金属カルボキシメチルヒドロキシエチルスターチ、
加水分解ポリアクリルアミドおよびポリアクリロニトリル、
ヘパリン、
1つまたはそれ以上の下記物質のホモポリマー及びコポリマー:
アクリル酸およびメタクリル酸、
アクリル酸金属塩およびメタクリル酸金属塩、
アルギン酸、
アルギン酸金属塩、
ビニルスルホン酸、
ビニルスルホン酸金属塩、
アミノ酸、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等、
アミノ酸の金属塩、
p−スチレンスルホン酸、
p−スチレンスルホン酸金属塩、
2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、
2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸金属塩、
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸、
3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸金属塩、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸金属塩、
アリルスルホン酸、
アリルスルホン酸金属塩等、
セルロース誘導体:
カルボキシメチルセルロース、
カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース金属塩、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【0048】
他の態様において、ポリアニオン成分は、より高いpH、例えば約7またはそれ以上のpHにおいて、イオン化形態で存在する傾向があるアニオン性多糖を包含する。本発明に使用しうるアニオン性多糖の例を以下に示す。
【0049】
ポリデキストロースは、哺乳動物によって部分的にのみ代謝される、デキストロースのランダム結合縮合ポリマーである。このポリマーは、少量の結合ソルビトール、クエン酸およびグルコースを含有することができる。ナトリウムコンドロイチンスルフェートとしても知られているコンドロイチン硫酸は、ヒト組織の全ての部分、特に、軟骨、骨、腱、靱帯および血管壁に見られるムコ多糖である。このムコ多糖は、サメの軟骨から抽出され精製される。
【0050】
カラゲーニンは、反復ガラクトース単位および3,6無水ガラクトース単位をする直鎖多糖であり、該単位の両方は、硫酸化されているかまたは硫酸化されていなくてもよく、交互1−3およびβ1−4グリコシド結合によって結合している。カラゲーニンは、紅藻およびトチャカの数種から加熱抽出されるヒドロコロイドである。
【0051】
麦芽デキストリンは、水の存在下での、澱粉と酸および/または酵素との反応によって形成される水溶性グルコースポリマーである。
【0052】
本発明で有用であることが見い出された他のアニオン性多糖は、親水性コロイド物質であり、天然ゴム、例えば、ゲラン(gellan)ゴム、アルギン酸塩ゴム、即ち、アルギン酸のアンモニウムおよびアルカリ金属塩、およびそれらの混合物を包含する。さらに、脱アセチルキチンの通称であるキトサンも有用である。キチンは、ポリ−(N−アセチル−D−グルコサミン)を含んで成る天然産物である。ゲランゴムは、細胞外ヘテロ多糖を産生するシュードモナス・エロデアの発酵によって産生される。アルギネートおよびキトサンは、Protan,Inc.,Commack,N.Y.から乾燥粉末として入手できる。ゲランゴムは、Kelco Division of Merk & Co.,Inc.,San Diego,Californiaから入手できる。
【0053】
一般に、アルギン酸塩は、アルギン酸アルカリ金属塩、例えば、アルギン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウムおよびセシウム塩ならびにアンモニウム塩、および有機塩基の可溶性アルギン酸塩、例えば、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンアルギネート、アルギン酸アニリン等を包含するどのような水溶性アルギン酸塩であってもよい。一般に、組成物の合計重量に基づいて、約0.2重量%〜約1重量%、好ましくは約0.5重量%〜約3.0重量%のゲラン、アルギン酸塩またはキトサンイオン性多糖を使用して、本発明のゲル組成物を得る。
【0054】
アニオン性多糖は環化されている。環化アニオン性多糖は10未満のモノマー単位を有する。例えば、環化多糖は6未満のモノマー単位を有する。
【0055】
1つの態様において、環化アニオン性多糖の特に有用な群は、シクロデキストリンである。シクロデキストリン群の例は、以下のものであるがそれらに限定されない:α−シクロデキストロリン、α−シクロデキストリンの誘導体、β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンの誘導体、γ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの誘導体、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、ジエチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ランダムメチル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン等、およびそれらの混合物。スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンは、本発明において好ましい環化アニオン性多糖である。本発明で使用される前記シクロデキストリンを包含するEECは、使用される濃度において、本発明の組成物を投与される動物、例えばヒトに非毒性であるのが有利である。シクロデキストリンに関連して本明細書で使用される「誘導体」なる用語は、シクロデキストリン成分として機能し、例えば、本明細書に記載したように、活性成分の溶解性および/または安定性を増し、および/または活性成分の好ましくない副作用を減少し、および/または活性成分との包括的(inclusive)複合体を形成するのに充分な、シクロデキストリンの特徴的化学構造を有する、あらゆる置換されたまたは修飾(改質)された化合物を意味する。
【0056】
シクロデキストリンおよび/またはそれらの誘導体をEECとして使用することができるが、本発明の1つの態様は、シクロデキストリン以外のEECおよび/またはそれらの誘導体も包含する。
【0057】
特に有用で、好ましい種類のポリアニオン成分は、アニオン性セルロース誘導体を包含する。アニオン性セルロース誘導体は、金属カルボキシメチルセルロース、金属カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにそれらの誘導体を包含する。
【0058】
1つの態様において、TCとEECの錯体は、溶液外で塩様物質および/または油相として存在していてよい。例えば、ブリモニジンとリノール酸の錯体は粉末である。さらに、この錯体は溶液、例えば塩溶液に添加することができる。好ましくは、TCおよびEECはなお錯体として存在する。1つの態様において、錯体、例えばブリモニジンとリノール酸の錯体を含む溶液は、緑内障を処置するために目に投与することができる。
【0059】
1つの態様において、錯体は、治療成分が治療効果を発揮しうる部位において、そのままで(無変化で)存在する。好ましい態様において、錯体は、治療成分が治療効果を発揮しうる部位でまたはその近傍で、解離する。例えば、ブルモニジンとリノール酸の錯体は、目の毛様体でたはその近傍で解離して、ブルモニジンを放出し、そこで、ブリモニジンは毛様体上に存在する受容体に作用して、水溶液の生成を減少させ、それにより緑内障は治療される。
【0060】
他の態様において、EECは、TCを含む溶液に添加されて、溶液中のTCと錯体を形成する。1つの態様において、錯体は溶液中においてのみ形成される。添加されるEECの量は、TCの薬物動態特性が少なくともいくらか増加するような量である。そのような量は、本発明の組成物中でおよび/またはヒト若しくは動物に投与した後に、所望の機能を発現するのに有効な量でなければならない。1つの態様において、1つまたはそれ以上のEEC(アニオンポリマーを含んでよい)は、本発明の組成物中にあるTCの少なくとも一部または実質的に全てと錯体を形成するのに十分な量で存在する。有利には、EECは、有効量ではあるが、例えば組成物中に存在する水とエマルジョンを形成するのに必要な量よりも少ない量で存在する。1つの有用な態様において、錯体はエマルジョン、例えばEEC/水エマルジョン中に存在しない。本発明の組成物は、好ましくは、本明細書に記載されたようにエマルジョンを含まない。本発明組成物中のTCの少なくとも約10%または約30%または約50%または約70%が、EECとの錯体の形で存在する。より好ましくは、存在するTCの約80または90%〜約100%がそのような錯体として存在する。
【0061】
1つ有用な態様において、本発明の組成物におけるEEC、例えばアニオンポリマーの量は、組成物の約0.1%〜約30%(w/v)またはそれ以上である。例えば、EECの量は、約0.2%(w/v)〜約10%(w/v)である。1つの態様において、EECの量は、約0.2%(w/v)〜約0.6%(w/v)である。他の態様において、EECはカルボキシメチルセルロースであり、組成物中に約0.2%(w/v)〜約0.6%(w/v)で存在する。本発明の組成物におけるカルボキシメチルセルロースの1つの有効な濃度は、約0.5%である。
【0062】
1つの態様において、TCおよびEECは、7より大きいpHで錯体を形成する。好ましくは、TCおよびEECは、約7〜約10のpHで錯体を形成する。
【0063】
本発明をいかなる特定の理論または作用機構にも限定するものではないが、錯体の安定化および/または錯体解離の抑制に寄与する少なくとも1つの要素は、EECの非極性または疎水性炭化水素部分または末端(tail)とTCとの相互作用である、と考えられる。この相互作用は、EECとTCとのイオン性相互作用と共同して、錯体の安定化を増長しおよび/または錯体解離を抑制するように、働くであろう。この相互作用は、錯体形成の促進にも関与しているであろう。疎水性相互作用およびイオン性相互作用の効果は相乗的である。
【0064】
本発明の組成物は、有利には、溶液中のまたは組成物に分散されたTC-EEC錯体を保持することを少なくとも補助する可溶化剤成分を含んでよい。例えば、可溶化剤成分は、可溶化剤成分が不存在ならTC-EEC錯体を不溶化および/または沈殿させるような条件下で、溶液中にTC-EEC錯体を保持するのに有用である。このような条件には、あるpH値、TCおよび/またはEECのある濃度、あるイオン濃度などが含まれる。好ましくは、可溶化剤成分の存在は、これら条件に対する本発明の錯体の溶解感受性を低減し、本発明の組成物を処方する場合の自由度を大きくする。
【0065】
本発明の組成物にイオンまたはイオン種を含ませると、錯体中でのTCとEECとの結合を弱めることがあり、不利なことに、無変化TC-EEC錯体の濃度低下を招くことになる。従って、1つの有用な態様において、可溶化剤成分は、本発明の組成物中でのイオン濃度を低下させ、可溶化剤成分により得られる利益をなお提供するために、非イオン性である。非イオン性可溶化剤成分の例には、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、およびそれらの混合物が包含される。
【0066】
1つの態様において、本発明の錯体は、TCおよび/またはEECの徐放システムとして機能することができる。例えば、TCは、錯体の一部である時には薬理学的に不活性であってよい。しかし、錯体が解離するにつれ、例えば生体環境中で時間をかけてゆっくり解離するにつれ、錯体は、TCを放出する、例えばゆっくり放出する。薬理学的に活性なTCがゆっくりおよび/または遅延して放出されることは有利である。例えばそのような徐放(遅延放出)は、適当な投与量を供給するのに役立つ。
【0067】
1つの態様において、TCとEECの錯体形成は、溶液中でのTCの可溶化に有用であり、好ましくは、TCが感受性(敏感)組織に投与された場合の刺激を低減する。例えば、約7のphを有する点眼薬溶液は、不溶性TCイオン、例えばブリモニジンタータレートイオンを含んでいてよい。そのような溶液を感受性組織である目に投与すると、不溶性TCイオンは不快感および刺激を与えることがある。しかしながら、TCとEECの錯体は、TCをそのような溶液に可溶化するのに役立ちうる。1つの態様において、可溶化されたTCを含む溶液は、感受性組織、例えば目に投与された場合、刺激を少なくする。より好ましい態様において、可溶化されたTCを含む溶液は、感受性組成機に投与された場合、刺激をほとんどまたは全く生じない。
【0068】
1つの態様において、組成物は、組成物の保存を助長する防腐剤成分も含有することができる。防腐剤成分は、本発明の組成物において、即ちEECの存在下で、防腐剤として有効であり、組成物をヒトまたは動物に投与した場合に、好ましくは低下した毒性を有し、より好ましくは実質的に毒性を有さないように、選択される。
【0069】
組成物の保存を助長する、医薬組成物に一般に使用される防腐剤または成分は、可溶化剤または可溶化成分の存在下に使用した場合に、硬化が低いことが多い。ある場合には、この低下した保存効果を、増加した量で防腐剤を使用することによって補うことができる。しかし、感受性または過敏性の体組織に関係する場合、組成物を投与されるヒトまたは動物において防腐剤自体がある種の不利な反応または感受性を誘発する場合があるので、この方法を使用することができない。
【0070】
組成物、好ましくは組成物中の例えば、TCおよび/またはEECの保存を助長する本発明の防腐剤成分は、約1%(w/v)未満または約0.8%(w/v)未満の濃度において有効であるのが好ましく、500ppm(w/v)またはそれ以下、例えば約10ppm(w/v)またはそれ以下から約200ppm(w/v)までであってよい。本発明の防腐剤成分は、好ましくは、塩化ベンザルコニウムよりも少ない程度でアニオンポリマーまたはEECと複合体を形成する防腐剤成分を包含するが、それらに限定されない。
【0071】
本発明の防腐剤成分の非常に有用な例は、酸化性防腐剤成分、例えば、オキシ−クロロ成分、過酸化物、過酸塩、過酸等およびそれらの混合物であるが、それらに限定されない。本発明の防腐剤として有用なオキシ−クロロ成分の例は、次亜塩素酸塩成分、例えば次亜塩素酸塩;塩素酸塩成分、例えば塩素酸塩;過塩素酸塩成分、例えば過塩素酸塩;および亜塩素酸成分を包含する。亜塩素酸塩成分の例は、安定化二酸化塩素(SCD)、亜塩素酸金属塩等、例えば亜塩素酸のアルカリ金属およびアルカル土類金属塩等およびそれらの混合物を包含する。工業グレード(またはUSP(米国薬局方)グレード)亜塩素酸ナトリウムは、極めて有用な防腐剤成分である。多くの亜塩素酸塩成分、例えばSCDの正確な化学組成は、充分には理解されていない。ある種の亜塩素酸塩成分の製造は、McNicholasの米国特許第3278447号に開示されており、そこに開示されている内容は全体として本発明の開示の一部を構成するものとする。有用なSCD製品の特定の例は、Rio Linda Chemical Company,Inc.から商標名Dura Klorで市販されているもの、およびInternational Dioxide,Inc.から商標名Anthium Dioxideで市販されているものを包含する。特に有用なSCDは、Allergan Inc.からPurite(登録商標)として市販されている製品である。酸化防腐剤成分の他の例は、パーオキシ成分を包含する。例えば、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)または1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のような、過酸化水素安定剤で安定化した微量のパーオキシ成分は、眼環境において使用するように設計された成分中で使用する防腐剤として使用することができる。さらに、水中で加水分解して過酸化水素を生成する限り、実質的にいかなるパーオキシ成分も使用することができる。有効量の過酸化水素を発生するそのような過酸化水素源の例は、過硼酸ナトリウム十水化物、過酸化ナトリウムおよび過酸化尿素を包含する。過酢酸、有機パーオキシ化合物は、本発明の系を使用して安定化されない。例えば、Martinらの米国特許第5725887号参照(そこに開示の内容は本発明の開示の一部を構成するものとする)。
【0072】
酸化性防腐剤成分以外の防腐剤を組成物に含ませることができる。防腐剤の選択は、投与経路に依存する。1つの経路によって投与される組成物に好適な防腐剤は、他の経路による該組成物の投与を不可能にする不利な特性を有する場合がある。鼻および眼用組成物について、好ましい防腐剤は、第四級アンモニウム化合物、特に、「塩化ベンザルコニウム」として総称的に知られているアルキルベンジルジメチルアンモニウム化合物の混合物等を包含する。しかし、吸入によって投与される組成物については、好ましい防腐剤はクロロブタノール等である。特に直腸投与される組成物に使用される他の防腐剤は、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルおよびそれらの混合物、例えば、「Nipastat」の商品名で市販されているメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル等の混合物を包含する。
【0073】
1つの広い態様において、TC-EEC錯体、組成物の保存を少なくとも助長するのに有効な量、好ましくは保存するのに有効な量の防腐剤成分、および液体担体成分を含んで成る組成物を提供する。好ましくは、防腐剤成分は、(1)組成物または組成物を投与される患者においてTCに実質的にまたは有意に不利な影響を与えず、(2)実質的に生物学的に許容され、化学的に安定な、化合物、イオン、複合体等のようなオキシ−クロロ成分を包含する。1つの態様において、本発明の組成物は、α−2−アドレナリンアゴニスト−リノール酸錯体、オキシ−クロロ成分および液体担体成分、例えば水性成分を含んで成る。
【0074】
本発明で有用な担体成分は、非毒性であり、好ましくは、本発明の組成物、本発明の組成物の使用、または組成物を投与されるヒトまたは動物に、実質的に不利な影響を与えないように選択される。1つの態様において、担体成分は液体担体である。好ましい態様において、担体成分は液性担体成分、たとえば水性成分である。特に有用な水性液体担体成分は、生理食塩水、例えば、従来の生理食塩水または従来の緩衝生理食塩水から誘導される。水性液体担体は、好ましくは約6〜約9または約10、より好ましくは約6〜約8、さらに好ましくは約7.5のpHを有する。液体媒体は、例えば少なくとも約200mOsmol/kg、より好ましくは約200〜約400mOsmol/kgの眼用に許容される張度(tonicity)レベルを有するのが好ましい。特に有用な態様において、担体成分のモル浸透圧濃度または張度は、眼、特にヒトの眼の液体の張度に実質的に相当する。他の有用な態様において、非毒性成分が使用される。
【0075】
1つの態様において、EECおよびTCを含有する担体成分は、25℃において約0.01センチポイズ(cps)より大きい、より好ましくは25℃において約1cpsより大きい、さらに好ましくは25℃において約10cpsより大きい粘度を有する。1つの態様において、組成物は、25℃において約50cpsの粘度を有し、従来の緩衝生理食塩水、カルボキシメチルセルロースおよびブリモニジンタータレートを含んで成る。1つの有用な態様において、生理食塩水に代えて、非毒性張度成分が使用される。
【0076】
液体担体成分のpH、従って組成物のpHを所望範囲に維持することを確実にするために、液体担体成分は、少なくとも1つの緩衝剤成分を含有する。あらゆる好適な緩衝剤成分を使用することができるが、有意な量の二酸化塩素を生じないか、または有意な量のCOのようなガスを発生しない成分を選択するのが好ましい。緩衝剤成分は無機である。アルカリ金属およびアルカリ土類金属緩衝剤成分を本発明に使用するのが有利である。例えばリン酸塩緩衝剤が、本発明において使用される。1種またはそれ以上の緩衝剤成分が本発明の組成物において使用される。
【0077】
本明細書で使用する場合、「錯体」なる用語は、1つまたはそれ以上のEECと、1つまたはそれ以上のTCとの緊密な会合体を意味する。例えば、溶液中のTCの電荷は、反対の電荷を含む1つまたはそれ以上のEECを緊密な会合状態で保持しうる。1つの態様において、本発明の錯体は、イオン対錯体であり、この錯体では、EECとTCの電荷は実質的にまたは完全に釣り合っている。しかしながら、本発明は、そのようなイオン対錯体のみに限定されるものではない。好ましくは水性環境中で実質的に変化を受けず、本明細書中に示した増強効果の1つまたはそれ以上を発揮する、EECとTCとのあらゆる錯体または関連する組み合わせも、本発明の範囲に含まれると考えるべきである。
【0078】
TC-EEC錯体の形成は、TCの正味電荷を全体として減少させうる。無変化TC-EEC錯体の形成を促進するするために、比較的大量のEECを供給するのが有利でありうる。例えば、EECからの電荷のTCからの電荷に対する比は、約0.9〜約1.5、好ましくは約1.0〜約1.3の範囲である。例えば、EECは1分子あたり1つの負電荷を有し、TCは1分子あたり2つの正電荷を有することがある。この場合、組成物中のEEC対TCのモル比が2であると、電荷の比は1となる。
【0079】
1つの態様において、本発明の組成物中のEEC濃度は、エマルジョン、例えば組成物中のEEC/水エマルジョンを形成するのに必要な濃度より小さい。換言すると、好ましくは、EECの量は、存在するTCの実質的に全てと錯体を形成するのに十分で、組成物中でエマルジョンを形成するのに必要とされるよりも少ない量のEECが存在するように、調整される。
【0080】
上記のように、高濃度のイオン種は、本発明の組成物中に存在する無変化TC-EEC錯体の濃度を低下させうる。逆に、低濃度のイオン種は、無変化TC-EEC錯体の濃度を増加しうる。1つの態様において、イオン種の濃度を低く保つために、本発明の組成物は低濃度の緩衝剤成分を含む。例えば、緩衝剤成分(例えば、燐酸塩緩衝剤)は、本発明の組成物中に、約0.0001モル(molar)〜約1.0モルの範囲の量で存在しうる。しかしながら、組成物中に存在するイオンの濃度を低下させるため、緩衝剤成分は、好ましくは約0.001モル〜約0.1モルまたは約0.2モルの範囲、より好ましくは約0.005モル〜約0.1モルの範囲の濃度で存在する。
【0081】
あらゆる好適な眼用に許容される張度成分を使用することができるが、但し、そのような成分は、液体水性担体成分の他の成分と相溶性であり、本発明の組成物を投与されるヒトまたは動物を害しうる有害なまたは毒性の特性を有してはならない。1つの態様において、張度成分は、無機塩およびそれらの混合物から選択される。有用な張度成分の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびそれらの混合物を包含する。
【0082】
本発明組成物のイオン濃度を低減し、それにより無変化EEC-TC錯体の保持を促進するためには、本発明組成物において非イオン性張度成分を用いることが好ましい。そのような非イオン性張度成分の例には、マンニトール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコールなど、およびそれらの混合物が包含されるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の組成物は、便利には、水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として、または水中油または油中水の液体エマルジョンとして存在し得る。本発明の組成物は、1つまたはそれ以上の付加成分、例えば、稀釈剤、香味剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、および同じ一般的なタイプの組成物に一般に使用される付加成分等を含有することができる。
【0084】
水性懸濁液の形態の本発明の組成物は、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤を含有することができる。そのような賦形剤は、沈殿防止剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチン、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等、およびそれらの混合物である。そのような水性懸濁液は、1つまたはそれ以上の着色剤、1つまたはそれ以上の香味剤、および1つまたはそれ以上の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリン等、およびそれらの混合物も含有することができる。
【0085】
油状懸濁液の形態の本発明の組成物は、植物油、例えば、オリーブ油、ゴマ油またはココナツ油、または流動パラフィンのような鉱油中で処方することができる。そのような懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。前記のような甘味剤、および香味剤を添加して、嗜好性経口製剤を得ることができる。
【0086】
本発明の組成物は、水中油エマルジョンの形態にすることもできる。油相は、植物油、例えば、オリーブ油または落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン等、およびそれらに混合物であってよい。好適な乳化剤は、天然ゴム、例えば、アカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば、大豆レシチン、および脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、および該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。エマルジョンは、甘味剤および香味剤も含有することができる。
【0087】
シロップ剤またはエリキシル剤の形態の本発明の組成物は、本明細書に記載したような甘味剤を使用して処方することができる。そのような組成物は、粘滑剤、香味剤および着色剤も含有することができる。
【0088】
特定のヒトまたは動物についての特定の投与量レベルは、使用される活性成分の活性、年齢、体重、全身的健康状態、性別、食事、投与時刻、投与経路、排泄速度、薬剤組合せ、および治療を受けている特定の疾患の重症度を包含する種々の要因に依存する。
【0089】
[実施例]
下記の非限定的な実施例は、本発明のある種の局面を説明するものである。
実施例1
眼内圧に対するブリモニジン−リノール酸の作用
下記のデータは、0時におけるブリモニジン−リノール酸投与後の、時間の経過に伴う眼内圧の変化割合を示す。処置は、0.131%ブリモニジンおよび0.126%リノール酸のイオン対配合物を使用して行った。
0時間 0.0 mmHg(複合体投与)
1時間 −10.4 mmHg
2時間 −16.0 mmHg
4時間 −9.5 mmHg
6時間 −9.4 mmHg
【0090】
実施例2
種々の化合物の相対鎮静作用
ブリモニジン−リノール酸(化合物65)の相対鎮静作用を、食塩水(化合物62)およびブリモニジンタータレート(化合物60)と比較した。この試験は、種々の化合物の投与間における、クロスオーバーおよび1週間の洗浄を含んでいた。
【0091】
以前の実験で行われたように、下記の方法に従った:
1.6匹の訓練したサルを椅子に載せ、約30分間順応させた。
2.各サルを「試験室」に入れ、そこで新しい環境に約2分間順応させた。この順応時間後に、サルを1〜2分間観察し、次に、鎮静評点を付けた。鎮静評点を観察シートに記録した。
3.サルを、この試験に割り当てた動物群に戻した。
4.2つの基準線の読み取りをT−0.5時間および0時間で行った。0時間の読み取り後に、1滴の被験化合物を右眼に投与した。
5.段階2および3を、T=0.5、1、2、3および4時間で繰り返した。
6.薬剤の作用から回復するまで、動物を監視した。
7.鎮静の評点は、下記の尺度に基づいた:
S=0 サルは静かであるが、僅かに活発である;
S=1 サルは静かであり、読取るのに扱いやすい;
S=2 サルは静かであり、くつろいでいるが、活発性が極めて低い;
S=3 サルは瞬きをし、あくびをする;
S=4 サルは眠そうであり、不活発であり、眼が重そうである。
8.被験化合物を符号化した:62−食塩水、65−ブリモニジンタータレート、60−ブリモニジン−リノール酸。
9.被験化合物投与:
動物# 第1週 第2週 第3週
19 62 65 60
24 62 65 60
42 65 60 62
50 65 60 62
57 60 62 65
58 60 62 65
【0092】
評点付けは、種々の被験化合物に関して各動物について行った。平均結果を表1に示す。
【0093】
ブリモニジン−リノール酸イオン対錯体(0.2%)と、ブリモニジンタータレート(0.2%)および食塩水との比較
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0094】
投与後の最初の読み取り、0.5時間の時点において、サルは静かであり、扱いやすかった。一般に、動物は、1時間の時点で試験室に入れた際に、低活発性を示し始めた。
【0095】
被験化合物ブリモニジン−リノール酸を投与されたサルの半数は、低活発性を示した(投与後1時間)が、19番のサルは例外であった。19番のサルは、眠そうでもなく、不活発でもなく、または眼が重そうにも見えず、全ての被験化合物に同様に反応しているように見えた。その雌ザルは、椅子において非常に気持ちよさそうに見え、気を散らすものがない場合は眼を閉じてリラックスする傾向があった。
【0096】
ブリモニジン−リノール酸錯体の投与は、食塩水を投与した場合より高い鎮静をサルにおいて生じると考えられる。一般に、サルに食塩水を投与した場合、サルは、全ての読み取りに関して静かであり扱いやすかった。しかし、ブリモニジンタータレートの投与は、ブリモニジン−リノール酸の投与より高い鎮静を生じる。ブリモニジンタータレートをサルに投与した場合、平均して、サルたちは眠くなり、不活発であり、重そうな眼をしていた。この観察は、一般に2時間の時点において見られ、ほとんどのサルは、観察が終わるまでこの状態を維持した。
【0097】
本発明をいかなる作用機序または理論にも限定するものではないが、ブリモニジン−リノール酸錯体が、ブリモニジンタータレートより低い鎮静を生じる理由の1つは、脂質区画においてより多く分配するからであると考えられる。言い換えれば、ブリモニジン−リノール酸錯体は、脂質区画により多く捕捉されるので、血流において循環して最終的に脳に行って鎮静を生じさせることに使用できない。
【0098】
実施例3
ウサギの眼内圧に対するブリモニジン−リノール酸イオン対錯体(0.2%)の作用
この試験において、年齢、大きさおよび性別の混合から成る3つの群に分けた。
【表2】

【0099】
動物(両方の性)の1つの群を、スクリーニング試験に使用した。被験化合物(0.2%のブリモニジン−リノール酸イオン対錯体20μL)を、自動ピペットまたは適切な装置を使用して角膜表面に投与した。
【0100】
この試験に使用される被験化合物を投与する一般手順を下記に示す:
1.0.25%のプロパラカインOpthetic(登録商標)混合物(局所麻酔薬)、被験化合物、および市販トリート(treats、餌)が準備されていることを確かめる。
2.Digilab Modular OneTM Pneuma Tonometer(気動眼圧計)(BioRad, Cambridge, MA)のスイッチを入れる;それは、約15分間のウォームアップを必要とする。気体供給または空気ポンプのスイッチを入れる。
3.プローブを、先端を下にして垂直に維持し、「キャリブレーションチェック」を押して「ゼロ」にする。
4.気動眼圧計プローブをアルコール綿棒で拭き、先端膜に穴がないか検査する。
5.外部校正装置(空気または水圧力計)を25mmHgに調整し、気動眼圧計ブローブを校正装置に入れて、25±2mmHgに対応するようにする。
6.ウサギを入手する。記録データシートが手元にあることを確かめる。
7.市販の拘束具または木綿のタオルを使用してウサギを優しく拘束する。瞳孔の直径を測定し、用意したシートに数値を記録する。眼が暗すぎてこの方法で数値が得られない場合、特殊ペンライトを使用してよい。角膜に1秒間ペンライトを照らすことによって瞳孔直径の測定値を得る。
8.親指で上眼瞼を上にそっと動かし、眼表面の赤みの程度を目視評価し評点付けする。各眼についての数値を、用意したシートに記録する。
9.1滴の0.25%プロパラカインOpthetic(登録商標)(0.5%プロパラカインOpthetic(登録商標)+Cellufresh(登録商標)の50:50混合物)を各眼の表面に投与する。Optheticが作用するまで1分間またはそれ以上待つ。
10.気動眼圧計の先端を、角膜の湾曲が最大になる位置に置く。プローブ軸が赤線でなく、黒線に来るようにする。標準偏差1.0未満での安定な読取りが得られるまで持続する。反対側の眼について前記手順を繰り返す。データを記録する(注意:動物が拘束によって動揺した場合、読取りは人為的に高くなり使用できない。優しい拘束を使用すること)。
11. 0、6、24、30、48、54、72、78および96時間での測定の終了時に、自動ピペットを使用して、片方の眼の角膜表面に被験化合物20μLを適用する。102時間での測定後に、Refresh(登録商標)およびPrefrin(登録商標)で眼を洗う。
12.動物にトリートを与え、動物をケージに戻す。
13.グループ中の残りの動物に段階7〜11を繰り返す。
【0101】
この試験に使用した被験化合物の作用を測定する一般手順を下記に示す:
0、2、4、6、24、26、28、30、48、50、52、54、72、74、76、78、96、98、100および102時間において読取りを行った。気動眼圧計を使用する前に、圧力計を使用して校正し、プローブ先端をアルコール綿棒で拭く。1滴の0.25%プロパラカインOpthetic(登録商標)を角膜に投与する。プローブを眼に配置する前に、角膜を麻酔するのに充分な時間(約1分間)を与える。眼圧計の読取りを行う人によって、眼を優しく開く。角膜の最大湾曲位置にプローブを配置し、安定な読取りを得る。床に平行、ウサギの視線に垂直に、プローブを維持する。妥当な読取りが得られるまで、読取りを繰り返す。ピストンは、プローブの赤線と黒線の間か、または黒線に位置すべきである。
【0102】
ブリモニジン−リノール酸イオン対錯体の作用を表3に示す。錯体は、少なくとも6時間にわたってウサギの眼内圧を減少させうると考えられる。例えば、0時間、24時間、48時間、72時間および96時間の時点で投与してから6時間にわたって、眼内圧が初期時より低く維持された。しかし、錯体の作用は18時間未満で失われることも明らかである。例えば、6時間の時点で錯体を投与してから18時間後に、眼内圧は、初期水準とほぼ同じ水準に戻った。
【表3】

これらの時点で、ブリモニジン−リノール酸イオン対を投与した。
数値は、平均値±S.E.Mである。n=8。
【0103】
実施例4
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表4】

【0104】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0105】
実施例5
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表5】

【0106】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0107】
実施例6
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表6】

【0108】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0109】
実施例7
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表7】

【0110】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0111】
実施例8
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表8】

【0112】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0113】
実施例9
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表9】

【0114】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0115】
実施例10
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表10】

【0116】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。
【0117】
実施例11
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表11】

【0118】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。この組成物は、(リノレン酸からの電荷)対(ブリモニジンからの電荷)の比1.0を生じる、リノレン酸/ブリモニジンのモル比2.0を例示している。
【0119】
実施例12
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表12】

【0120】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。この組成物は、(リノレン酸からの電荷)対(ブリモニジンからの電荷)の比1.1を生じる、リノレン酸/ブリモニジンのモル比2.2を例示している。
【0121】
実施例13
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表13】

【0122】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。この組成物は、(リノレン酸からの電荷)対(ブリモニジンからの電荷)の比1.2を生じる、リノレン酸/ブリモニジンのモル比2.4を例示している。
【0123】
実施例14
指定量の成分を混合することによって、下記組成物を製造する:
【表14】

【0124】
この組成物は、眼疾患の治療用に配合され、有効である。この組成物は、(リノレン酸からの電荷)対(ブリモニジンからの電荷)の比1.3を生じる、リノレン酸/ブリモニジンのモル比2.6を例示している。
【0125】
種々の特定実施例および態様に関して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず、請求の範囲内で種々の変更を加えて実施しうるものと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMDA拮抗薬、抗細菌薬、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、抗炎症薬、駆虫薬、縮瞳薬、抗コリン作動薬、アドレナリン作動薬、抗ウイルス薬、局所麻酔薬、抗真菌薬、殺アメーバ薬、殺トリコモナス薬、鎮痛薬、散瞳薬、抗緑内障薬、炭酸脱水酵素阻害薬、眼科用診断薬、手術においてアジュバントとして使用される眼科用薬剤、キレート化剤、抗腫瘍薬、抗高血圧薬、筋弛緩薬、診断薬、およびそれらの混合物から成る群から選択される、治療有効量の眼科的に許容される陽イオン性治療成分;
治療成分の薬物動態特性を向上させ、脂質膜または生理的条件下に生体膜を通る治療成分の移動を向上させ、また治療成分の透過性を向上させるのに有効な、0.2%(w/v)〜10%(w/v)の量の、1つ、2つまたは3つの負電荷を有する効力増強成分であって、治療成分とのモル比1:3、1:2、1:1、2:1または3:1のイオン対錯体として存在する効力増強成分(ここで、治療成分の80%〜100%が効力増強成分との錯体として存在し;イオン対錯体は水性環境中で実質的にそのままの状態を維持し;前記向上効果は、効力増強成分なしに治療成分を用いて得られる効果との比較において向上した効果である);および
溶液中のイオン対錯体の溶解度を増加するのに有効な量の可溶化剤成分
を含んで成る液体組成物。
【請求項2】
治療成分が、キノキサリン、(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリン、5−ブロモ−6−(2−イミドゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンおよびそれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
可溶化剤成分が非イオン性である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(効力増強成分からの電荷)対(治療成分からの電荷)の比が少なくとも1:1であるような量で、効力増強成分および治療成分が存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
有効量の非イオン張度成分をさらに含んで成る請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中に0.001モル〜0.1モルの濃度で、有効量の燐酸塩緩衝剤成分をさらに含んで成る請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
効力増強成分が、陰イオンポリマー、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸ならびにそれらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
治療成分がブリモニジンであり、効力増強成分がリノレン酸である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2010−132681(P2010−132681A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18776(P2010−18776)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願2002−586985(P2002−586985)の分割
【原出願日】平成14年5月3日(2002.5.3)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】