説明

含フッ素ポリマー水性分散液

【課題】生体蓄積性の低い乳化剤を用い、しかも機械的安定性にすぐれた含フッ素ポリマー水性分散液を提供する。
【解決手段】一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OM1)(OM2) 〔I〕
(ここで、M1は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、M2はアルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、nは1〜6の整数、aは1〜4の整数、bは1〜3の整数、cは1〜3の整数である)で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸塩を乳化剤として、含フッ素ポリマーを分散させた含フッ素ポリマー水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリマー水性分散液に関する。さらに詳しくは、生体蓄積性の低い乳化剤を用い、しかも機械的安定性にすぐれた含フッ素ポリマー水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルキル基含有カルボン酸(塩)は、乳化剤として作用するフッ素系界面活性剤として、含フッ素モノマーの乳化重合反応において広く用いられている。中でも、パーフルオロオクタン酸C7F15COOHまたはその塩(〔PFOA〕と総称する)は、モノマー乳化性やラテックス安定性にすぐれた界面活性剤であることが知られている。
【0003】
しかしながら、パーフルオロ化された化学物質は、自然環境中では分解され難く、またPFOAによって代表される炭素数8のパーフルオロ化された化合物は、ヒト体内への残留性が著しく強いことが昨今判明している。そこに加えて、PFOAはそれの有するすぐれたポリマーへの親和性のため、乳化重合法で得られたポリマーラテックスの凝集後において、含フッ素ポリマーへのPFOA付着量や残存量が多く、これを低減させることが強く望まれている。
【0004】
含フッ素乳化剤に環境分解性を付与する手段として、界面活性剤化合物のパーフルオロ化された疎水性基中に水素化された部分を設けることが考えられる。また、分解物の環境残留性を弱める手段としては、疎水性基中に CnF2n+1CpH2pCqF2q- (n,r:1〜7、p:1以上)基のように連続したパーフルオロ化された炭素原子数が8未満となる炭素鎖であることが望ましいと考えられる。
【0005】
特許文献1には、一般式
F(CF2CF2)nCH2CH2SO3M (M:1価カチオン)
で表わされ、集合数nが2〜8で、平均値が2〜6のものと集合数nが2〜6のものとの混合物を分散剤として使用することが記載されている。しかしながら、含フッ素界面活性剤としてこのパーフルオロアルキルエタンスルホン酸(塩)を用いた場合には、重合反応時に連鎖移動を起こすため、得られるポリマーが低分子量化するのを避けることができない。
【0006】
重合反応時の連鎖移動性の低い含水素フッ素系界面活性剤として、一般式
Rf(CH2)mR′fCOOM
Rf:C3〜C8のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシル基
R′f:C1〜C4のパーフルオロアルキレン基
M:NH4、Li、Na、K、H
m:1〜3
で表わされる化合物を用いることが、特許文献2で提案されている。しかしながら、この化合物をフッ素系モノマーの乳化重合の乳化剤として用いた場合には、モノマーの乳化性、ラテックスの安定の点でPFOAよりも劣るばかりではなく、フッ化ビニリデンの単独重合および共重合においては、モノマーであるフッ化ビニリデンのミセル溶解性が低いため重合速度が非常に遅くなり、さらに得られるポリマーラテックスの安定性も悪く、重合反応中に析出物がみられる場合もある。
【0007】
また、特許文献2に記載される含水素フッ素系界面活性剤Rf(CH2)mRf′COOMは、対応するカルボン酸エステルをアルカリ加水分解して遊離のカルボン酸として後、塩基と反応させてカルボン酸塩を形成させている。このカルボン酸エステルのアルカリ加水分解は、過剰量のアルカリの存在下で行われるので、分子中の-CH2CF2-基が脱HF化反応して-CH=CF-基に変換されたものを数%程度生成させるという副反応もみられる。
【0008】
さらに、従来より含フッ素ポリエーテル系のカルボン酸(塩)を乳化剤として用いる試みもなされているが(特許文献3参照)、この種の化合物は水性媒体への溶解度の低いものが多く、取り扱いが著しく困難であり、凝析後の洗浄も容易ではない。特に、ポリエーテル系カルボン酸(塩)乳化剤の内、側鎖を有するものあるいは長鎖を有するものは、このような傾向が顕著である。
【0009】
さらに、ポリエーテル系のカルボン酸(塩)は泡立ちし易く、重合反応で得られたラテックスの取り扱いも容易ではないばかりではなく、ラテックス中の凝集物量もPFOAと比較して多いという記載もみられる(特許文献3参照)。
【0010】
また、ポリフルオロアルキルホスホン酸エステルは、離型剤の合成原料として広く用いられている。離型剤としたときの離型性能は、パーフルオロアルキル基の炭素数が8〜12である化合物において最も発現し易く、特にC8のテロマー化合物である
CF3(CF2)7CH2CH2P(O)(OC2H5)2
が、この種の用途に好んで使用されている(特許文献4〜7参照)。
【0011】
ところで、炭素数8〜12のパーフルオロアルキル基を有するテロマー化合物は、環境中で生物分解されて、生体蓄積性、環境濃縮性が比較的高い化合物に変化することが報告されており、処理工程での暴露、廃棄物、処理基材等からの環境への放出、拡散などが懸念されている。また、パーフルオロアルキル基の炭素数が14以上の化合物では、それの物理的、化学的性状からそれの取扱いが非常に困難であり、実際には殆ど使用されていない。
【0012】
さらに、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有するテロマー化合物は、その製造プロセスにおいて、生体蓄積性の高いパーフルオロオクタン酸類の発生や混入が避けられない。そのため、このようなテロマー化合物の製造各社は、それの製造からの撤退や炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物への代替などを進めている。
【0013】
しかしながら、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下の化合物では、処理基材表面での配向性が著しく低下し、また融点、ガラス転移点Tgなどが炭素数8の化合物に比べて著しく低いため、温度、湿度、応力、有機溶剤の接触などの使用環境条件に大きな影響を受けることとなる。そのため、求められる十分な性能が得られず、また耐久性などにも影響がみられる。
【0014】
含フッ素ポリマーである含フッ素重合体樹脂は、そのすぐれた防汚性や耐候性から、コーティング材用途に広く用いられており、また含フッ素重合体エラストマーは、耐熱性、耐油性、耐薬品性などにすぐれており、その加硫成形品はオイルシール、Oリング、パッキン、ガスケット等の各種シール材として広く用いられている。
【0015】
この種の用途に用いられる含フッ素重合体水性分散液は、金属製ふるいを通すなどの機械的処理に対しても十分な安定性を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】USP4,380,618
【特許文献2】特開平10−212261号公報
【特許文献3】USP3,271,341
【特許文献4】特公平2−45572号公報
【特許文献5】特公平3−78244号公報
【特許文献6】特公平4−4923号公報
【特許文献7】特公平4−11366号公報
【特許文献8】WO 2007/105633 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、生体蓄積性の低い乳化剤を用い、しかも機械的安定性にすぐれた含フッ素ポリマー水性分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる本発明の目的は、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OM1)(OM2) 〔I〕
(ここで、M1は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、M2はアルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、nは1〜6の整数、aは1〜4の整数、bは1〜3の整数、cは1〜3の整数である)で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸塩を乳化剤として、含フッ素ポリマーを分散させた含フッ素ポリマー水性分散液によって達成される。
【0019】
この含フッ素ポリマー水性分散液は、好ましくは一般式〔I〕で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸塩乳化剤の水溶液の存在下で、含フッ素モノマーを乳化重合させることにより得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るポリフルオロアルキルホスホン酸塩乳化剤、特にアンモニウム塩乳化剤は、生体蓄積性が低いといわれる炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する化合物であって、乳化性能にすぐれたペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウムに匹敵する乳化性能を有しており、この乳化剤の水溶液を用いて製造される含フッ素ポリマー水性分散液は、安定なエマルジョンを形成させることができる。その乳化安定性は、室温条件下または40℃で1ヶ月間放置した後においても良好に維持されている。
【0021】
また、この含フッ素ポリマー水性分散液は、機械的安定性にすぐれ、例えば金属製ふるいを10回通過させた後でも、分散粒子径に殆ど変化はみられない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
塩を形成した上で乳化剤として用いられるポリフルオロアルキルホスホン酸は、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OH)2 〔II〕
(ここで、nは1〜6の整数、aは1〜4の整数、bは1〜3の整数、cは1〜3の整数である)で表わされ、この化合物は、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OR)2 〔III〕
(ここで、Rは炭素数1〜4のアルキル基である)で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステルを加水分解反応させることによって製造される。
【0023】
この反応の原料物質として用いられるポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル〔III〕は、ポリフルオロアルキルアイオダイド
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI 〔IV〕
とトリアルキルホスファイトP(OR)3を反応させることにより得られる。ポリフルオロアルキルアイオダイド〔IV〕は、公知の化合物であり、特許文献8に記載されている。
【0024】
ポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル〔III〕合成の出発原料となるポリフルオロアルキルアイオダイド〔IV〕は、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)bI 〔V〕
で表わされる末端ヨウ素化化合物にエチレンを付加反応させることにより製造される。エチレンの付加反応は、上記化合物〔V〕に過酸化物開始剤の存在下で加圧エチレンを付加反応させることにより行われ、その付加数は反応条件にもよるが、1〜3、好ましくは1である。なお、反応温度は用いられる開始剤の分解温度にも関係するが、反応は一般に約80〜120℃で行われ、低温で分解する過酸化物開始剤を用いた場合には80℃以下での反応が可能である。
【0025】
過酸化物開始剤としては、第3ブチルパーオキサイド、ジ(第3ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ第2ブチルパーオキシジカーボネート等が、反応の進歩性および制御性の点から、上記化合物〔IV〕に対して約1〜5モル%の割合で用いられる。
【0026】
なお、前記末端ヨウ素化化合物〔V〕は、次のような一連の工程を経て合成される。
(1)一般式
CnF2n+1I (n:1〜6)
で表わされるパーフルオロアルキルアイオダイドを、上記の如き過酸化物開始剤(原料化合物に対し約0.1〜0.5モル%の使用量)の存在下でフッ化ビニリデンと反応させ、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)aI 〔VI〕
で表わされる化合物を得る。
(2)上記一般式〔VI〕で表わされる化合物に、過酸化物開始剤の存在下でテトラフルオロエチレンを反応させることにより、前記一般式〔V〕で表わされる末端ヨウ素化化合物が得られる。この一般式〔V〕において、bは1〜3、好ましくは1〜2の整数である。この反応に用いられる過酸化物開始剤としては、前記の如き有機過酸化物開始剤が(1)と同様の割合で用いられる。
【0027】
フッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレン付加反応の反応温度は、用いられる開始剤の分解温度にも依存するが、低温で分解する過酸化物開始剤を用いることにより、低圧条件下でも80℃以下での反応が可能である。反応は、CnF2n+1Iまたは前記化合物〔VI〕をオートクレーブ内に入れ、その内温を昇温させて約10〜60℃、例えば50℃としたら、そこにCnF2n+1Iまたは化合物〔VI〕に溶解した過酸化物系開始剤を加え、内温が例えば55℃になったら、フッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレンを約0.1〜0.6MPaの圧力を保ちながら分添し、所望量を分添した後、例えば約55〜80℃の間の温度で約1時間程度エージングすることにより行われる。その添加量によって、反応によって付加したフッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレン骨格の数aまたはbが左右される。一般には、種々のa値およびb値の混合物として形成される。
【0028】
これらの反応が、低温で反応を行えるということは、エネルギーの使用量を減少させることが可能となるばかりではなく、設備内でのフッ酸等による腐食を抑制し、設備の更新頻度を減らすことができる。さらに、より廉価な材料の使用が可能となることから、更新頻度の減少と併せて、設備投資費用を廉価に抑えることができる。
【0029】
エチレンが付加される具体的な化合物〔V〕としては、次のような化合物が例示される。これらの化合物は、種々のa値およびb値を有するオリゴマーの混合物であり、特定のa値およびb値を有するオリゴマーは混合物を蒸留することにより単離することができる。なお、所定のa値およびb値を有しないオリゴマーは、それを単離してまたは混合物のまま、再度フッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレンとのオリゴマー数増加反応に用いることができる。
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)2I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)2I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)2I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)2I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)3I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)3I
【0030】
上記例示された如き化合物〔V〕に、エチレンを付加反応させたポリフルオロアルキルアイオダイド〔IV〕には、トリアルキルホスファイト、例えばトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト等の炭素数1〜4のアルキル基を有するトリアルキルホスファイトP(OR)3を反応させ、脱RI化反応させることにより、原料物質たるポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル〔III〕を得ることができる。なお、化合物〔V〕にエチレンを付加反応させないと、トリアルキルホスファイトとの脱RI化反応が進行しない。
【0031】
ポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル〔III〕の加水分解反応は、濃塩酸によって代表される無機酸等の酸性触媒の存在下で約90〜100℃で攪拌することにより容易に行われる。反応混合物は、減圧ロ過された後、水洗・ロ過、アセトン洗浄・ロ過する方法などにより、目的物たるポリフルオロアルキルホスホン酸〔II〕を90%台の好収率で得ることができる。
【0032】
乳化剤として用いられるポリフルオロアルキルホスホン酸塩
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OM1)(OM2) 〔I〕
は、ポリフルオロアルキルホスホン酸
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OH)2 〔II〕
に、アルカリ金属水酸化物水溶液、アンモニア水溶液または有機アミンを反応させることにより得られる。
【0033】
アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好んで用いられる。有機アミンとしては、例えばモノエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、ピリジン、モルホリンまたはこれらの誘導体等が好んで用いられる。アルカリ金属水酸化物、アンモニアまたは有機アミンは、ポリフルオロアルキルホスホン酸に対して等モル量用いられた場合にはモノ塩を形成させ、また2倍モル量用いられた場合にはジ塩を形成させる。一般には、必要理論モル数以上で用いられ、等モル量以上2倍モル量未満用いられた場合には、モノ塩とジ塩との混合物を形成させる。
【0034】
ポリフルオロアルキルホスホン酸塩は、水または水溶性有機溶媒水溶液である水性媒体に溶解させた水性溶液または有機溶媒に溶解させた有機溶媒溶液として用いられる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が用いられる。
【0035】
ポリフルオロアルキルホスホン酸塩の乳化能力は、例えば2-(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸アンモニウム水溶液の場合、その臨界ミセル濃度〔CMC〕は乳化剤濃度が0.8重量%付近にみられ、乳化剤濃度が約1.0重量%以上で一定の低い表面張力が示される。
【0036】
本発明の含フッ素ポリマー水性分散液は、好ましくは一般式〔I〕で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸塩乳化剤(フッ素化乳化剤)の水溶液の存在下で、含フッ素モノマーを乳化重合させることにより得られる。
【0037】
使用されるフッ素化乳化剤の量は、得られる水性分散液の固形分濃度や平均粒子径などの特性に応じて変化させ得る。一般的には、フッ素化乳化剤の量は重合反応に用いられる水性媒体重量を基準として、約0.001〜5重量%、好ましくは約0.005〜2重量%、特に好ましくは約0.005〜1重量%である。乳化重合反応は、かかるフッ素系乳化剤の存在下で開始され、重合反応中にさらに追加のフッ素系乳化剤を添付することもできる。また、このフッ素系乳化剤の他に、他のフッ素系乳化剤および非フッ素系乳化剤の少くとも一種を併用することもできる。
【0038】
この乳化剤を用いての含フッ素モノマーの乳化重合反応は、従来のパーフルオロオクタン酸(塩)であるPFOA乳化剤を用いた場合と同様の方法で行われる。乳化重合反応は、無機過酸化物、アゾ化合物、有機過酸化物等の存在下、好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の水溶性無機過酸化物またはそれと亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボキシラート等の還元剤とのレドックス系を触媒として行われ、その際重合系内のpHを調節するために、リン酸塩(Na2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4等)またはホウ酸塩(Na2B2O7等)の緩衝能を有する電解質物質あるいはNaOH等を添加して用いてもよい。乳化重合反応は、生成さるべき含フッ素ポリマーに対して約0.01〜1重量%、好ましくは約0.05〜0.5重量%、さらに好ましくは約0.05〜0.3重量%の重合開始剤を用い、約0〜100℃、好ましくは約5〜60℃で約1〜48時間程、約0.1〜10MPa、好ましくは約0.2〜5MPaの加圧条件下で行われる。重合開始剤は、必要に応じて、重合反応の途中で再度追加して用いてもよい。
【0039】
乳化重合される含フッ素モノマーとしては、フッ化ビニリデン〔VdF〕、フッ化ビニル〔VF〕ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ペンタフルオロプロピレン〔PFP〕、モノクロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、C1〜C3のアルキル基を有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔FAVE〕、パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)〔FOAVE〕等の少くとも1種、一般には2種または3種の共重合反応として行われ、1種のみが用いられる場合には、それの単独重合反応として行われる以外、にエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合反応としても行われる。なお、共重合反応は、得られる含フッ素ポリマー、特に含フッ素共重合体エラストマーの組成の均一性の点からは、分添法として行われることが好ましい。
【0040】
含フッ素モノマーの重合体としては、次のようなものが例示され、その共重合組成などによって樹脂状またはエラストマー状の含フッ素ポリマーを形成し得る。
VdF単独重合体
TFE単独重合体
VdF-TFE共重合体
VdF-HFP共重合体
VdF-TFE-FMVE3元共重合体
VdF-TFE-HFP3元共重合体
VdF-TFE-CTFE3元共重合体
VdF-CTFE共重合体
VdF-TFE-P 3元共重合体
TFE-P共重合体
TFE-E共重合体
TFE-CTFE共重合体
TFE-HFP共重合体
TFE-FMVE共重合体
TFE-FPVE共重合体
TFE-FMVE-FPVE3元共重合体
TFE-FEVE-FPVE3元共重合体
VdF-TFE-FMVE3元共重合体
好ましくはVdF-HFP共重合体、VdF-TFE-FMVE3元共重合体、VdF-TFE-HFP3元共重合体あるいはTFE-FMVE共重合体が用いられる。
注) E:エチレン
P:プロピレン
FMVE:パーフルオロ(メチルビニルエーテル)
FEVE:パーフルオロ(エチルビニルエーテル)
FPVE:パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)
【0041】
共重合反応に際しては、連鎖移動剤としてマロン酸エチル、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルエーテル、メチル・第3ブチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、C1〜C5のアルカン類、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類など種々のものが用いられる。さらに、ICF2CF2I、ICF2CF2CF2CF2I等の含ヨウ素化合物、ICF2CF2Br、ICF2CF2CF2CF2Br等の含ヨウ素臭素化合物を連鎖移動剤として用いることができ、これらの化合物はパーオキサイド架橋における架橋部位を形成させる役割を担うこともできる。
【0042】
架橋部位を形成させるために用いられる含臭素または含ヨウ素単量体化合物としては、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、1-ヨード-2,2-ジフルオロエチレン、1-ヨード-1,2,2-トリフルオロエチレン、パーフルオロアリルブロマイド、パーフルオロアリルアイオダイド、4-ブロモ-1,1,2-トリフルオロブテン、4-ヨード-1,1,2-トリフルオロブテン、4-ブロモ-3,3,4,4-テトラフルオロブテン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン等の臭素化またはヨウ素化ビニル化合物あるいは臭素化またはヨウ素化オレフィンを用いることができるが、さらに一般式
CR1R2=CR3XまたはCR1R2=CR3(R4−X)
R1,R2,R3:同一または互いに異なる基であり、H、F、Cl、炭素数1〜10のアルキ
ル基、フルオロアルキル基であり、これらの基はエーテル結合を含ん
でいてもよい
R4:炭素数1〜10のアルキル基、フルオロアルキル基であり、これらの基
はエーテル結合を含んでいてもよい
X:Br、I
で表される臭素化またはヨウ素化されたビニル化合物またはオレフィン化合物であってもよい。
【0043】
好ましくは次の一般式で表わされるような臭素基含有ビニルエーテルが用いられる。
BrRf−O−CF=CF2
BrRf:臭素基含有パーフルオロアルキル基
かかる臭素基含有ビニルエーテルとしては、例えば CF2BrCF2OCF=CF2、CF2Br(CF2)2OCF=CF2、CF2Br(CF2)3OCF=CF2、CF3CFBr(CF2)2OCF=CF2、CF2Br(CF2)4OCF=CF2等が用いられる。
【0044】
これら以外にも、一般式 ROCF=CFBr または ROCBr=CF2 (R:低級アルキル基またはフルオロアルキル基)で表わされる臭素基含有ビニルエーテル等を用いることもできる。
【0045】
また、含ヨウ素単量体化合物としては、一般式
IRf-O-CF=CF2
IRf:ヨウ素基含有パーフルオロアルキル基
で表わされるヨウ素基含有ビニルエーテルが用いられ、好ましくはパーフルオロ(2-ヨードエチルビニルエーテル)が用いられる。
【0046】
これらの含臭素または含ヨウ素単量体化合物は、架橋条件、これらの反応性などを考慮して単独または2種以上を組み合わせ、含フッ素モノマーの総量に対して、約0.001〜5モル%、好ましくは約0.01〜1モル%の割合で用いられる。これ以下の使用割合では、得られる加硫物の圧縮永久歪特性が悪化し、一方これ以上の割合で使用すると、加硫物の伸びが低下するようになる。
【0047】
得られた含フッ素ポリマーラテックスの凝析は、好ましくは塩析によって行われ、例えば約0.1〜5重量%、好ましくは約0.3〜3重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液が用いられる。凝析された含フッ素ポリマーには、ロ過、水洗および乾燥の各工程が適用される。
【0048】
これらの含フッ素ポリマーの分子量は、含フッ素樹脂にあっては、その重量平均分子量Mwが約10000〜1000000、好ましくは50000〜800000であり、また含フッ素エラストマーにあっては、その組成物の加工性や機械的特性などを考慮して、分子量の指標としての溶液粘度ηsp/c(1重量/容量%メチルエチルケトン溶液、35℃)が約0.3〜1.5dl/g、好ましくは約0.4〜1.3dl/gとされる。
【0049】
含フッ素エラストマーの加硫は、臭素基またはヨウ素基を有する場合には有機過酸化物によって、それ以外の場合にはポリオール加硫等によって行われる。
【0050】
パーオキサイド加硫法に用いられる有機過酸化物としては、例えば2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルピーオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ第3ブチルパーオキシド、第3ブチルクミルパーオキシド、第3ブチルパーオキシベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキシド、α,α´-ビス(第3ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が使用される。
【0051】
これらの有機過酸化物が用いられるパーオキサイド加硫法では、通常共架橋剤として多官能性不飽和化合物、例えばトリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N´-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等が併用される。
【0052】
パーオキサイド加硫系に配合される以上の各成分は、一般に含フッ素エラストマー100重量部当り有機過酸化物が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で、共架橋剤が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合でそれぞれ用いられる。
【0053】
また、ポリオール加硫の場合には、ポリオール系架橋剤として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン〔ビスフェノールAF〕、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル、4-4′-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン等のポリヒドロキシ芳香族化合物あるいはそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が用いられ、これらのポリオール系架橋剤は含フッ素エラストマー100重量部当り約0.5〜10重量部、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。
【0054】
また、ポリオール架橋反応の加硫促進剤として、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の4級オニウム塩が、含フッ素エラストマー100重量部当り約0.1〜30重量部、好ましくは約0.2〜20重量部の割合で用いられている。
【0055】
さらに、ポリオール系架橋剤または4級ホスホニウム塩として、あるいはこれら両者を兼ねて、ビスフェノール化合物に2モル量の4級ホスホニウムハライドを反応させた化合物、すなわち両末端に4級ホスホニウム塩基を有するビスフェノール化合物を単独であるいは他の加硫剤と併用して用いることもできる。
【0056】
以上の加硫系各成分は、そのまま含フッ素エラストマーに配合し、混練してもよいし、あるいはカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、けいそう土、硫酸バリウム等で希釈し、含フッ素エラストマーとのマスターバッチ分散物としても使用される。組成物中には、上記各成分に加えて、従来公知の充填剤または補強剤(カーボンブラック、シリカ、グラファイト、クレー、タルク、けいそう土、硫酸バリウム、酸化チタン、ウォラストナイト等)、可塑剤、滑剤、加工助剤、顔料などを適宜配合することもできる。
【0057】
加硫は、前記各成分をロール混合、ニーダー混合、バンバリー混合、溶液混合など一般に用いられている混合法によって混合した後、加熱することによって行われる。加硫は、一般には約100〜250℃で約1〜120分間程度行われる一次加硫および約150〜300℃で0〜30時間程度行われる二次加硫によって行われるが、射出成形でも可能である。
【実施例】
【0058】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0059】
参考例1
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)I (99GC%)
500g(0.78モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 181g(1.56モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に91g(0.78モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0060】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温160〜170℃、塔頂温度150〜155℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(96GC%)412g(収率78%)を得た。
【0061】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2
【0062】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2 (96GC%)
300g(0.44モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分276gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物242g(0.41モル、収率92%)を得た。
【0063】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OH)2 〔IIa〕
【0064】
参考例2
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (99GC%)
500g(0.92モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 213g(1.84モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に107g(0.92モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0065】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温145〜155℃、塔頂温度138〜142℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(98GC%)407g(収率79%)を得た。
【0066】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2
【0067】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2 (96GC%)
300g(0.53モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分287gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物240g(0.49モル、収率93%)を得た。
【0068】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OH)2 〔IIb〕
【0069】
参考例3
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)I (97GC%)
500g(0.76モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 176g(1.52モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に88g(0.76モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0070】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温160〜170℃、塔頂温度150〜155℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(96GC%)395g(収率77%)を得た。
【0071】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2
【0072】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2 (96GC%)
300g(0.44モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分276gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物237g(0.40モル、収率90%)を得た。
【0073】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)3(CH2CH2)P(O)(OH)2 〔IIc〕
【0074】
参考例4
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)I (97GC%)
500g(0.90モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 208g(1.80モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に104g(0.90モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0075】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温145〜155℃、塔頂温度138〜141℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(97GC%)397g(収率78%)を得た。
【0076】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2
【0077】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2 (95GC%)
300g(0.52モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分271gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物235g(0.48モル、収率92%)を得た。
【0078】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)P(O)(OH)2 〔IId〕
【0079】
参考例5
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)2I (97GC%)
500g(0.88モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 204g(1.76モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に104g(0.90モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0080】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温145〜155℃、塔頂温度140〜142℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(97GC%)410g(収率79%)を得た。
【0081】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)2P(O)(OCH2CH3)2
【0082】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)2P(O)(OCH2CH3)2 (97GC%)
300g(0.51モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分269gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物240g(0.46モル、収率90%)を得た。
【0083】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2(CH2CH2)2P(O)(OH)2 〔IIe〕
【0084】
参考例6
(1) 温度計および低沸物除去用レシーバーを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I (98GC%)
500g(1.12モル)およびトリエチルホスファイトP(OC2H5)3 259g(2.24モル)を仕込み、155℃で攪拌した。このとき、副生生物であるヨウ化エチルを反応系から除去するために、細管を使用して反応液中に窒素ガスをバブリングした。反応液を微量分取してガスクロマトグラフィー分析を行い、トリエチルホスファイトの残量を確認した後、さらにトリエチルホスファイトを1回に130g(1.12モル)宛4回分添し、合計18時間攪拌した。
【0085】
反応終了後、反応混合物を内圧0.2kPa、内温130〜140℃、塔頂温度128〜131℃の条件下で減圧単蒸留を行い、蒸留留分を水洗して、精製反応生成物(98GC%)405g(収率79%)を得た。
【0086】
得られた精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる化合物であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2
【0087】
(2) 温度計およびコンデンサを備えた容量1Lの四口フラスコ中に、得られたポリフルオロアルキルホスホン酸ジエステル
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OCH2CH3)2 (94GC%)
300g(0.63モル)および約35%濃塩酸300gを仕込み、100℃で12時間攪拌した。冷却後、減圧ロ過して、固形分262gを回収した。この固形分を水洗して再びロ過し、さらにアセトンで洗浄してロ過し、目的物229g(0.59モル、収率93%)を得た。
【0088】
得られた生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、次式で表わされる目的化合物(ポリフルオロアルキルホスホン酸)であることが確認された。
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)P(O)(OH)2 〔IIf〕
【0089】
参考例7
攪拌装置および滴下装置を備えた容量200mlに反応装置内に、40℃に加熱された水53.2gを保温しながら仕込み、参考例1で得られたポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIa〕5g(8.4ミリモル)を加えた後、濃度1.4重量%のアンモニア水溶液15.4g(12.7ミリモル)を加え、1時間攪拌を続けて中和反応を行った。これにより、pH8のポリフルオロアルキルホスホン酸アンモニウム塩の水溶液(有効成分濃度7.0重量%)が得られた〔乳化剤水溶液I〕。
【0090】
この乳化剤水溶液Iを水中に少量ずつ添加し、その水溶液の表面張力を測定するとそれの臨界ミセル濃度〔CMC〕は0.8重量%で、濃度2.0重量%での表面張力は17mN/mであった。表面張力の測定は、SITA製動的表面張力計を用い、20℃で、最大気泡法で測定した。
【0091】
比較例1
参考例7において、ポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIa〕に、アンモニア水溶液を加えることなく1時間攪拌した場合には、添加したポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIa〕は水に溶解せずに分離し、水溶液は得られなかった。
【0092】
参考例8〜12
参考例7において、水量および濃度1.4重量%アンモニア水溶液量をそれぞれ所定量に変更し、またポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIa〕の代りに同量(5g)の参考例2〜6で得られたポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIb〕〜〔IIf〕をそれぞれ用い、それらの水溶液(有効成分濃度7.0重量%)を得た〔乳化剤水溶液II〜VI〕。
【0093】
これらの乳化剤水溶液II〜VIについて、同様に表面張力(CMCおよび濃度2.0重量%での表面張力)を測定した。得られた結果は、乳化剤水溶液の組成と共に、次の表1に示される。なお、参考例7についても、併記されている。
表1
参考例7 参考例8 参考例9 参考例10 参考例11 参考例12
〔乳化剤水溶液〕
記号 I II III IV V VI
ホスホン酸
記号 IIa IIb IIc IId IIe IIf
g数 5 5 5 5 5 5
ミリモル数 8.4 10.2 8.4 10.2 9.6 17.1
アンモニア水溶液
g数 15.4 18.5 15.4 13.8 15.7 23.2
ミリモル数 12.7 15.2 12.7 15.2 14.4 25.7

g数 53.2 50.5 53.2 55.2 53.3 47.6
〔表面張力〕
CMC (重量%) 0.8 0.8 0.8 1.0 0.9 1.2
2%濃度時 (mN/m) 17.0 16.8 16.9 18.2 18.5 19.0
【0094】
参考例13
参考例7において、水量を66.4gに変更し、またポリフルオロアルキルホスホン酸〔IIa〕およびアンモニア水溶液の代りに、ペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウム塩C7F15COONH4(ジエムコ製品エフトップEF204)5g(11.6ミリモル)を用い、それの水溶液(有効成分濃度7.0重量%)を得た〔乳化剤水溶液VII〕。
【0095】
実施例1
攪拌機を備えた内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
水 2911g
乳化剤水溶液I 472g
NaOH 1.3g
マロン酸エチル 12.0g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ素ビニリデン〔VdF〕 435g(83モル%)
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 45g( 6モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 135g(11モル%)
の混合組成を有する混合ガスを初期仕込みガス(合計615g)として仕込み、反応器の内温を80℃に昇温させると、内圧は約2.4MPa・Gとなった。
【0096】
その後、過硫酸アンモニウム2.5gを水150g(合計水量3061g)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が2.35〜2.45MPa・Gとなるように、VdF/TFE/HFP(88/6/6モル%)混合ガスを2500g(VdF/TFE/HFP=1980/200/320g)追加分添し(合計仕込み量3115g)、反応器内の圧力を維持した。
【0097】
分添終了後、圧力反応器(オートクレーブ)の内圧が0.5MPa・Gになるまでエージングを行い、室温まで冷却して重合反応を完結させ、エマルジョンA(固形分濃度45.2重量%)6420g(全仕込み量6663.8gに対する回収率96.3%)を得た。
【0098】
また、エマルジョンAの平均粒子径を日機装製マイクロドラック粒度分布計UPA150を用い、動的光散乱法によって測定すると、115nmであった。このエマルジョンAを、それぞれ室温条件下および40℃に1ヶ月放置した後の平均粒子径を測定すると、118nm(増加率3%)および120nm(増加率4%)と安定なエマルジョンが形成されていることが確認された。さらに、水性分散液の機械的安定性として、水性分散液を325メッシュの金属製ふるいを10回通過させた後の水性分散液について、その平均粒子径を測定すると125nm(増加率9%)という値が得られ、安定なエマルジョンであることが確認された。なお、平均粒子径増加率は、平均粒子径について次の式から算出される。
増加率=(試験後−初期)/初期×100(%)
【0099】
得られたエマルジョンAを、0.5重量%塩化カルシウム水溶液中に攪拌しながら滴下し、凝析した生成物をロ別し、イオン交換水で十分に攪拌洗し、ロ過、乾燥させると、白色粉末状の含フッ素共重合体が1995g(重合率95%)得られた。この含フッ素共重合体の共重合組成を19F-NMRから求めると、VdF/TFE/HFP=88/6/6(モル%)であった。また、この含フッ素共重合体の1重量/容量%メチルエチルケトン溶液を調製し、35℃での溶液粘度ηsp/cを測定すると、その値は、1.2g/dlであった。
【0100】
実施例2〜6、比較例2
実施例1において、乳化剤水溶液Iの代りに、それぞれ同量(472g)の乳化剤水溶液II〜VIIが用いられた。得られたエマルジョンB〜Fおよびaについて、回収量、回収率、固形分濃度および各種平均粒子径、その増加時の測定を、実施例1と同様に行った。得られた結果は、次の表2に示される。なお、実施例1についての結果も、併記されている。
表2
実−1 実−2 実−3 実−4 実−5 実−6 比−2
〔乳化剤水溶液〕
記号 I II III IV V VI VII
〔エマルジョン〕
記号 A B C D E F a
回収量 (g) 6420 6415 6422 6415 6413 6420 6425
固形分濃度(重量%) 45.2 45.1 45.0 45.5 45.6 44.9 45.5
回収率 (%) 96.3 96.3 96.4 96.3 96.2 96.3 96.4
〔平均粒子径〕
初期 (nm) 115 110 107 125 120 130 115
室温、1ヶ月 (nm) 118 112 110 130 122 135 120
同増加率 (%) 3 2 3 4 2 4 4
40℃、1ヶ月 (nm) 120 115 113 135 126 140 125
同増加率 (%) 4 5 6 8 5 8 9
ふるい通過後 (nm) 125 117 115 139 130 145 132
同増加率 (%) 9 6 7 11 8 12 15
【0101】
実施例7
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
イオン交換水 4500g
乳化剤水溶液I 250g
Na2HPO4・12H2O 15g
マロン酸エチル 1.8g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ素ビニリデン〔VdF〕 180g(69モル%)
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 126g(31モル%)
の混合組成を有する混合ガスを初期仕込みガス(合計306g)として仕込み、反応器の内温を80℃に昇温させると、内圧は約2.1MPa・Gとなった。
【0102】
その後、過硫酸アンモニウム3.0gを水150g(合計水量4650g)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が2.0〜2.1MPa・Gとなるように、VdF/TFE=(69/31モル%)混合ガスを1230g(VdF/TFE=723/507g)追加分添し(合計仕込み量1536g)、反応器内の圧力を維持した。
【0103】
分添終了後、圧力反応器(オートクレーブ)の内圧が0.5MPa・Gになるまでエージングを行い、室温まで冷却して重合反応を完結させ、エマルジョンG(固形分濃度23.2重量%)6200g(全仕込み量6455.8gに対する回収率96.0%)を得た。
【0104】
このエマルジョンGについて、各種平均粒子径、その増加率の測定を、実施例1と同様に行った。
【0105】
得られたエマルジョンGからの共重合体の分離を実施例1と同様に行い、白色粉末状の含フッ素共重合体1330g(重合率87%)を得た。この含フッ素共重合体の共重合組成を19F-NMRおよびFT-IRから求めると、VdF/TFE=70/30(モル%)であった。また、重量平均分子量Mw(Shodex GPC KD806M+KD-802+KD-Gを用い、溶出液を10ミリモルLiBr/ジメチルホルムアミド、温度50℃、溶出速度0.5ml/分によるGPC測定により行い、その際検出器として視差屈折計を用い、解析はSIC製Labchat 180により行った)は460,000、融点(セイコーインスツルメント社製DSC220C型を用い、30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで試料を加熱した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度250℃まで10℃/分の昇温速度で昇温するという温度プログラムで昇温および冷却をくり返し、その際の発熱ピーク頂点の温度を測定した)は140℃であった。
【0106】
実施例8
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
イオン交換水 4950g
乳化剤水溶液I 720g
Na2HPO4・12H2O 3.4g
メタノール 5g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 130g(52モル%)
パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔FEVE〕 260g(48モル%)
の混合組成を有する混合ガスを初期仕込みガス(合計390g)として仕込み、反応器の内温を80℃に昇温させると、内圧は約2.1MPa・Gとなった。
【0107】
その後、過硫酸アンモニウム3.4gおよびをNaHSO3 0.5gを水150g(合計水量5100g)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が0.78〜0.85MPa・Gとなるように、TFE/FEVE=(78/22モル%)混合ガスを1620g(VdF/FEVE=1000/620g)追加分添し(合計仕込み量2010g)、反応器内の圧力を維持した。
【0108】
分添終了後、圧力反応器(オートクレーブ)の内圧が0.5MPa・Gになるまでエージングを行い、室温まで冷却して重合反応を完結させ、エマルジョンH(固形分濃度20.1重量%)7250g(全仕込み量7842.3gに対する回収率92.4%)を得た。
【0109】
このエマルジョンHについて、各種平均粒子径、その増加率の測定を、実施例1と同様に行った。
【0110】
得られたエマルジョンHからの共重合体の分離を実施例1と同様に行い、白色粉末状の含フッ素共重合体1320g(重合率66%)を得た。この含フッ素共重合体の共重合組成を19F-NMRおよびFT-IRから求めると、TFE/FEVE=82/18(モル%)であった。
【0111】
実施例9
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
イオン交換水 4835g
乳化剤水溶液I 285g
Na2HPO4・12H2O 20g
マロン酸エチル 2.6g
1,4-ジョードパーフルオロブタンI(CF2)4I 20g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ素ビニリデン〔VdF〕 183g(32モル%)
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 105g(12モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 750g(56モル%)
の混合組成を有する混合ガスを初期仕込みガス(合計1038g)として仕込み、反応器の内温を70℃に昇温させると、内圧は約3.1MPa・Gとなった。
【0112】
その後、過硫酸アンモニウム0.5gを水100g(合計水量4935g)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が2.9〜3.0MPa・Gとなるように、VdF/TFE/HFP=(53.0/21.7/25.3モル%)混合ガスを1872g(VdF/TFE/HFP=679/434/759g)追加分添し(合計仕込み量2910g)、反応器内の圧力を維持した。
【0113】
分添終了後、圧力反応器(オートクレーブ)の内圧が1.7MPa・Gになるまでエージングを行い、室温まで冷却して重合反応を完結させ、エマルジョンI(固形分濃度35.2重量%)7800g(全仕込み量8173.1gに対する回収率95.4%)を得た。
【0114】
このエマルジョンIについて、各種平均粒子径、その増加率の測定を、実施例1と同様に行った。
【0115】
得られたエマルジョンIからの共重合体の分離を実施例1と同様に行い、白色粉末状の含フッ素共重合体2440g(重合率84%)を得た。この含フッ素共重合体の共重合組成を19F-NMRおよびFT-IRから求めると、VdF/TFE/HFP=67/16/17(モル%)であった。また、ηsp/c(1重量/容量%メチルエチルケトン溶液、35℃)の値は、1.2dl/gであった。
【0116】
以上の実施例7〜9で得られたエマルジョンの各種平均粒子径およびその増加率は、次の表3に示される。
表3
平均粒子径 実施例7 実施例8 実施例9
初期 (nm) 120 109 125
室温、1ヶ月 (nm) 122 110 125
同増加率 (%) 2 1 0
40℃、1ヶ月 (nm) 125 110 126
同増加率 (%) 4 1 1
ふるい通過後 (nm) 130 120 133
同増加率 (%) 8 10 6
【0117】
参考例14
実施例9で得られた3元共重合体 100重量部
MTカーボンブラック 20 〃
ZnO 5 〃
トリアリルイソシアヌレート 5 〃
(日本化成製品TAIC M60)
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B) 3.5 〃
以上の各成分を8インチオープンロールを用いて混練し、混練物を180℃で10分間プレス加硫し、次いで230℃で22時間オーブン加硫(二次加硫)した。
【0118】
加硫物について、諸特性を測定し、次のような値を得た。なお、圧縮永久歪は、ASTM Method Bに準拠し、P-24 Oリングについて測定された。
100%モジュラス 4.3MPa
破断時伸び 220%
破断時強度 18.2MPa
圧縮永久歪
150℃、70時間 9%
200℃、70時間 23%
230℃、70時間 40%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cP(O)(OM1)(OM2) 〔I〕
(ここで、M1は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、M2はアルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、nは1〜6の整数、aは1〜4の整数、bは1〜3の整数、cは1〜3の整数である)で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸塩を乳化剤として、含フッ素ポリマーを分散させた含フッ素ポリマー水性分散液。
【請求項2】
一般式〔I〕で表わされるポリフルオロアルキルホスホン酸乳化剤の水溶液の存在下で、含フッ素モノマーを乳化重合させて得られた請求項1記載の含フッ素ポリマー水性分散液。
【請求項3】
請求項2記載の含フッ素ポリマー水性分散液を凝析して得られた含フッ素ポリマー。
【請求項4】
含フッ素ポリマー水性分散液を塩析して得られた請求項3記載の含フッ素ポリマー。
【請求項5】
ポリマー分子中に含臭素または含ヨウ素単量体化合物、あるいは含ヨウ素臭素化合物に由来する臭素基および/またはヨウ素基を架橋性基として有する請求項3または4記載の含フッ素ポリマー。

【公開番号】特開2011−246532(P2011−246532A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118951(P2010−118951)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】