説明

含水ゲルシート

【課題】 製造効率を低下させることなく、高い透明性を有し、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れた含水ゲルシートを提供すること。
【解決手段】 プラスチックフィルムからなる支持体と、少なくとも片側表面に積層される含水ゲル層からなり、前記支持体は改質剤が含有されてなり、前記改質剤がフタル酸エステル誘導体であることを特徴とする含水ゲルシートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水ゲルシートに関し、詳細には、高い透明性、清涼感、美観性、みずみずしさを有する含水ゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容用、治療用等の目的で皮膚に貼り付けて使用される含水ゲルシートは、一般的に不織布、布等で構成される支持体と、該支持体に積層され、水分、化粧料や薬剤等を含有するゲル層と、ゲル層の表面に剥離可能に貼着されるフィルムとで構成されている。このように形成される含水ゲルシートは、使用する際、フィルムをゲル層から剥離して取り除き、ゲル層の表面を皮膚に貼着し、ゲル層が含有する化粧料や薬剤を皮膚に浸透させて用いられる。
【0003】
一般的にゲルシートは、その薬用効果、保湿効果、美肌効果、美白効果等の、種々の効果の向上も重要であるが、一方で、その美観性、即ち、高い透明性、清涼感、みずみずしさ等も兼ね備えることを望まれてきた。これは、使用者が心地よく、快適に使用できるよう、また、使用時の違和感を低減するためにも重要な要素とされる。
【0004】
ゲルシートに透明感を与える一つの手段として、支持体に、例えばポリエチレンフィルムや塩化ビニルフィルム等の透明なプラスチックフィルムを用いることが考えられる。しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、含水ゲル層との投錨性が悪く、剥離時にいわゆる糊残り現象、つまり剥離後の皮膚面にゲルが残ってしまうという問題あった。
【0005】
例えば、特許文献1には、投錨性を低下させることなく、貼付時に透明感を与えて目立たない化粧用ゲルシートが開示されている。この技術によると、パルプ又はレーヨンからなる繊維層と透明なフィルムとを積層した支持体を用いることにより、ゲルシートを貼付した際に透明感を引き出すことが可能となる。しかしながら、このように新たな層をも設けることは、製造工程や製造コストを増やすこととなり、製造効率に劣るものであった。また、支持体と含水ゲル層との投錨性を得るための、その他の方法として、前処理、例えばブラスト加工やプラズマ処理等の表面改質、或いは別物質、例えば不織布や紙、親水性フィルムとの積層を必要とし、特許文献1同様、効率のよい方法とは言い難いものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−119128公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、即ち、製造効率を低下させることなく、高い透明性を有し、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れた含水ゲルシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、プラスチックフィルムからなる支持体と、少なくとも片側表面に積層される含水ゲル層からなり、前記支持体は改質剤が含有されてなり、前記改質剤がフタル酸エステル誘導体であることを特徴とする含水ゲルシートに関する。
請求項2に係る発明は、前記改質剤が、支持体中0.1〜50重量%含有されることを特徴とする請求項1記載の含水ゲルシートに関する。
請求項3に係る発明は、前記プラスチックフィルムからなる支持体がポリウレタンフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の含水ゲルシートに関する。
請求項4に係る発明は、前記ポリウレタンフィルムが、イソシアネート成分とポリオール成分との反応によって得られるポリウレタンフィルムであって、
前記イソシアネート成分が、脂肪族系イソシアネートであり、
前記ポリオール成分が、ポリエステル系及び/又はポリエーテル系のポリオールであることを特徴とする請求項3に記載の含水ゲルシートに関する。
請求項5に係る発明は、前記含水ゲル層が、多価アルコール、水、及び、ポリアクリル酸及び/又はその塩からなる請求項1乃至4いずれかに記載の含水ゲルシートに関する。
請求項6に係る発明は、前記含水ゲル層が2価以上の金属イオンによる架橋構造を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の含水ゲルシートに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含水ゲルシートは、高い透明性を有し、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れる。
詳細には、本発明の含水ゲルシートの支持体には、フタル酸エステル誘導体からなる改質剤が含まれているため、これにより、支持体と含水ゲル層の投錨性を強化することができる。これにより、本発明の含水ゲルシートは、高い透明性を有し、貼付時においても透明感が著しく向上する。さらに、本発明の含水ゲルシートは、前処理、或いは別物質の積層を必要としないため、その製造工程の効率化にもつながり、製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の含水ゲルシートは、プラスチックフィルムからなる支持体と少なくともその片側表面に積層される含水ゲル層からなり、前記支持体は改質剤が含有されてなり、前記改質剤がフタル酸エステル誘導体であることを特徴とする。
即ち、本発明の含水ゲルシートは少なくとも改質剤を含む支持体及び含水ゲル層の2層で構成される。
【0011】
以下、本発明に係る改質剤を含む支持体について詳説する。
本発明に係る改質剤は、フタル酸エステル誘導体であり、含水ゲル層との投錨性の強化のために含まれる。フタル酸エステル誘導体としては、例えば、フタル酸ジエステル化合物、又はフタル酸モノエステル化合物が好適に用いられる。詳細には、フタル酸ジー2−エチルへキシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジルが挙げられ、好ましくは、フタル酸ビス‐2‐n‐ブトキシエチル(Bis (2-n-butoxyethl)phthalate)及び/又はフタル酸ジエチル(diethylphtalate)が用いられる。
【0012】
本発明に係る支持体中の改質剤の含量は、好ましくは、0.1〜50重量%、より望ましくは8〜25重量%とされる。これは、0.1重量%未満の場合、含水ゲル層との投錨性を十分に発揮することができず、50重量%を超えると、支持体の機械的物性の低下により支持体の機能に影響を与えるためいずれの場合も好ましくないからである。
【0013】
本発明に係る支持体は、プラスチックフィルムからなり、伸縮性があって、強度の高いものが好ましい。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。本発明においては、好ましくは、ポリウレタンフィルムを用いる。本発明に係る支持体としてポリウレタンフィルムを用いた場合、脂肪族系イソシアネート成分とポリオール成分との反応によって得られるポリウレタンフィルムが好ましく用いられる。詳細には、脂肪族系イソシアネートのイソシアネート成分とポリエステル系及び/又はポリエーテル系のポリオール成分を反応させて生成されたポリウレタンフィルムが好適に使用される。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びポリエステル系ポリオール成分が用いられ、この組み合わせにおける含水ゲルシートは、黄変性を示さないため好ましい。また本発明においては、係るプラスチックフィルムとしては、黄変性がないものが好適に用いられる。
【0014】
本発明に係る含水ゲル層を以下に詳説する。
本発明に係る含水ゲル層は、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、水、多価アルコール等からなり、所望の条件で含水ゲル層を熟成、架橋を行わせることにより生成される。
前記架橋する製造工程において、好ましくは、2価以上の金属イオンが用いられ、例えばアルミニウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0015】
含水ゲル層には、香料、界面活性剤、薬理成分、消臭剤、防腐剤、溶剤、或いはL-メントールのような冷感剤などを必要に応じて適宜添加することができる。
【0016】
本発明の含水ゲル層の生成方法は、例えばあらかじめ水酸化アルミゲル0.2部とポリアクリル酸ナトリウム4部と多価アルコール30部を混合攪拌した後、精製水60部に酒石酸0.4部を溶解した水溶液を徐々に添加した後10分間撹拌し所定の厚みに設定したプレスでシート化する方法が挙げられる。
【0017】
本発明の含水ゲルシートについて図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の含水ゲルシートの斜視図である。図1中(1)は支持体、(2)は含水ゲル層を示す。図1においては、本発明の含水ゲルシートは四角形であるが、その形状は特に限定されず、用途、適用部位に応じて適宜決定すればよい。また、図1中においては、支持体(1)表面の大部分が、含水ゲル層(2)で覆われているが、例えば、支持体表面のほんの一部分だけに含水ゲル層が積層していてもよく、用途、適用部位に応じて決定すればよい。
【0018】
本発明に係る支持体の厚みは材質によって任意であるが、好ましくは5〜500μm、より望ましくは10〜250μmとされる。これは10μm未満であれば強度に劣り、500μmを超えると着用時に重量感、違和感を生じるためいずれの場合も望ましくないからである。
【0019】
本発明に係る含水ゲル層の厚みは材質によって任意であるが、好ましくは100〜5,000μm、より望ましくは500〜3,000μmとされる。これは100μm未満であればゲル自体に、こしが無く着用しにくい問題があり、5,000μmを超えると着用時に重量感、違和感を生じるためいずれの場合も望ましくないからである。
【0020】
図1中(3)は、ペットフィルムを示す。これは、本発明の含水ゲルシートの含水ゲル層表面に、任意に敷かれるものであり、含水ゲルの乾燥、汚染等を防ぐ効果がある。その材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、OPPフィルム、ポリエチレンをラミネートした紙など挙げられる。
【0021】
図2は、図1のA‐A拡大断面図である。図2中(1)は支持体、(2)は含水ゲル層を示す。図2が示すように、本発明の含水ゲルシートは、支持体表面上に含水ゲルが積層される。
【0022】
本発明の含水ゲルシートの適用部位としては、顔(唇、頬部、目元部、目の上下部、鼻部、額部)、腕部、脚部、胸部、腹部、背部、首部等が挙げられる。本発明の含水ゲルシートの形状、面積、厚み、粘着面の粘着特性等は、適用部位に応じて適宜選択できる。また、化粧品、医薬品、医薬部外品、衛生材料として、好適に用いられる。
【実施例】
【0023】
以下に掲げる実施例及び比較例に基づいて、本発明について更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
表1に従い支持体A〜Fを生成し、この支持体表面に表2に示す配合において常法にて調整した含水ゲルを塗工し、常温下、3日間養生したものを、実施例1〜3及び比較例1〜3とした(支持体A→実施例1、支持体B→実施例2、支持体C→実施例3、支持体D→比較例1、支持体E→比較例2、支持体F→比較例3)。投錨性試験を行い、以下の評価基準に基づき点数をつけ、結果を表3に示す。また、各実施例及び比較例の黄変性についても観察した。
【0024】
(含水ゲルシートの生成)
含水ゲル層の生成は、表2の組成に従い行った。即ち、ポリアクリル酸ナトリウム、水酸化アルミゲル、金属イオン封鎖剤をグリセリンに懸濁させた後、精製水と酒石酸を配合してゲル状組成物を得た。表1に示す実施例1〜3及び比較例1〜3の支持体に含水ゲル層厚が1mmとなるように、バーコータを用いて製膜した後、125μmのペットフィルムを張り合わせ、25℃で3日間エージングして、実施例1〜3、比較例1〜3の含水ゲルシートを得た。
【0025】
(投錨性試験)
実施例1〜3及び比較例1〜3において、支持体と含水ゲル層の投錨性を確認する為、両者を引き剥がす試験を行った。詳細には、実施例1〜3及び比較例1〜3を40℃で3時間エージングして180度剥離を行い、以下の評価基準により5段階評価した。
(評価基準)
容易に且つ完全に支持体と含水ゲル層が剥離した場合・・・・・「1」
剥離するが支持体に含水ゲルが20%程残存する場合・・・・・「2」
剥離するが支持体に含水ゲルが50%程残存する場合・・・・・「3」
剥離するが支持体に含水ゲルが80%程残存する場合・・・・・「4」
全く剥離しない場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「5」
【0026】
(黄変性の観察)
実施例1〜3及び比較例1〜3において、含水ゲルシートの黄変性について観察した。
実施例1〜3及び比較例1〜3を70℃で8時間、さらに50℃で4時間養成し、UVランプ(UV‐B,313nm)の光源、0.59Wの照射エネルギーにおいて、製品を目視してすることにより行った。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
上記結果より、本発明の含水ゲルシートである実施例1〜3は、含水ゲル層と支持体の投錨性に優れる。詳細には、実施例1は、上記試験において、全く剥離することなく、さらに黄変性も認められなかった。実施例2においても、ほぼ剥離することなく、優れた投錨性を示し、また、黄変性も認められなかった。実施例3においては、わずかながら黄変性を示すものの、含水ゲル層と支持体が全く剥離することなく優れた投錨性を有することが分かった。したがって、本発明の実施例1〜3は、優れた投錨性を有するため好適に使用される。
【0031】
一方、比較例に関しては、比較例3のみが黄変性を示すものの、その他の比較例1及び2は、ほぼ黄変性を示さなかった。しかしながら、比較例1〜3は、容易に且つ完全に支持体と含水ゲル層が剥離してしまい、投錨性に劣る。これら実施例及び比較例における試験からも明らかであるように、本発明の改質剤を含む支持体を含む含水ゲルシートは、改質剤の添加により、優れた投錨性をもたらすことができる。結果として、本発明によって、高い透明性を有し、貼付時の視覚的違和感が著しく低く、見た目にみずみずしく、清涼感、美観性に優れた含水ゲルシートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の含水ゲルシートの斜視図である。
【図2】図1における本発明の含水ゲルシートのA‐A拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・・支持体
2・・・・含水ゲル層
3・・・・ペットフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる支持体と、少なくとも片側表面に積層される含水ゲル層からなり、前記支持体は改質剤が含有されてなり、前記改質剤がフタル酸エステル誘導体であることを特徴とする含水ゲルシート。
【請求項2】
前記改質剤が、支持体中0.1〜50重量%含有されることを特徴とする請求項1記載の含水ゲルシート。
【請求項3】
前記プラスチックフィルムからなる支持体がポリウレタンフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の含水ゲルシート。
【請求項4】
前記ポリウレタンフィルムが、イソシアネート成分とポリオール成分との反応によって得られるポリウレタンフィルムであって、
前記イソシアネート成分が、脂肪族系イソシアネートであり、
前記ポリオール成分が、ポリエステル系及び/又はポリエーテル系のポリオールであることを特徴とする請求項3に記載の含水ゲルシート。
【請求項5】
前記含水ゲル層が、多価アルコール、水、及び、ポリアクリル酸及び/又はその塩からなる請求項1乃至4いずれかに記載の含水ゲルシート。
【請求項6】
前記含水ゲル層が2価以上の金属イオンによる架橋構造を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の含水ゲルシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−347895(P2006−347895A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172302(P2005−172302)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(593008427)日本電子精機株式会社 (12)
【出願人】(000219015)島貿易株式会社 (2)
【Fターム(参考)】