説明

含酸劣質原油改質触媒、その製造方法、およびその応用

本発明は、含酸劣質原油改質触媒の中孔材料に関する。上記中孔材料は、アルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.3)Na2 O・(1〜50)MO・(6〜58)Al2 3 ・(40〜92)SiO2 (式中、Mは、Mg、Ca、およびBaから選択される一つまたは複数の元素を示す)を有し、比表面積が200〜400m2 /gであり、孔容積が0.5〜2.0ml/gであり、平均孔径が8〜20nmであり、最確孔径(most probable pore size) が5〜15nmであることを特徴とする。また、本発明は、上記中孔材料の製造方法およびその使用に関する。本発明の中孔材料から調製された触媒は、含酸劣質原油の改質と原油中の有機酸、残留炭素、および金属の除去に好適であり、非常に大きな経済的利益をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油改質触媒材料およびその調製方法、並びに含酸劣質原油を前処理して接触改質する工程における、上記触媒材料から調製された触媒の応用に関する。より具体的には、本発明は、水素不在下で含酸劣質原油を接触改質する触媒材料およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油に対する需要の増加に伴い、継続的な原油の採掘が行われており、軽質原油資源が徐々に減少し、重質で劣質な含酸原油の比率が増加している。世界における原油の質は、一般的な重質化および劣質化傾向にあり、硫黄分、全酸価、金属含有量、および残留炭素の高い原油の産量が、急速に増加している。予測によると、世界における含酸劣質原油の産量は、現在の16%から、2010年には20%に増加するものと見込まれる。こうした状況では、接触分解装置を用いて含酸劣質原油を加工することは、取り組まなければならない課題である。
【0003】
含酸劣質原油は、水素含有量が低く、ニッケル、バナジウム等の金属含有量、縮合芳香族化合物の含有量、硫黄、窒素の含有量、密度、およびコンラドソン炭素数(conradson carbon number)が高く、上記含酸劣質原油を分解するのは困難である。上記含酸劣質原油を分解するのは困難であるため、そのような原油を加工するための接触分解機器は、大量のスラリーを捨てなければならず、その結果、液体製品(液化ガス、ガソリン、軽油)の全収率が減少する。ニッケルやバナジウムの含有量が高ければ高いほど、製品の水素含有量が大きく増加し、触媒に対しても強い破壊作用がある。触媒の平衡活性を維持するために、触媒の単位消費を増やす必要がある。そして、金属不活性化剤の添加によっても、所望の効果を得るのは困難である。よって、そのような含酸劣質原油を加工前に改質または前処理し、当該原油の水素/炭素比を増加させ、金属含有量とコンラドソン炭素数を減少させることが望ましい。
【0004】
原油の性質を改善し、コンラドソン炭素数と金属含有量とを減少させるために、非接触前処理方法は、相当するコンラドソン炭素数と金属含有量とを有する原油を流動接触分解装置の脱金属・脱炭素帯(zone)に導入することで、不活性の可流動固体粒子と接触させる。少なくとも480℃で接触時間が2秒未満の条件下で、原油中の高沸点化合物と金属とが、不活性の可流動固体粒子上に沈積される。これらの粒子は、燃焼帯へと再循環され、可燃沈積物が取り除かれる。可燃沈積物が焼き払われた不活性粒子は、脱金属・脱炭素帯へと再循環され、再び原油と接触する。このような方法で処理された原油は、FCCの原料油として用いることができる。
【0005】
近年、含酸劣質原油の加工への注目度が徐々に増している。国際市場における強酸性原油量も徐々に増している。2005年には、世界における強酸性原油の産量が、原油総産量の5.5%を占めるまでになった。原油中の酸性物質としては、無機酸、フェノール、メルカプタン、脂肪族カルボン酸、ナフテン酸等がある。中でも、ナフテン酸は、原油中で最上位の酸性酸化物であり、酸性酸化物の約90重量%を占める。研究によると、原油中の全酸価が0.5mgKOH/gになると、製油設備に顕著な腐食がもたらされるということが判った。よって、全酸価が0.5mgKOH/g以上の原油を強酸性原油と呼ぶ。原油加工中、原油中のナフテン酸が鉄と直接反応し、それによって煙管や熱交換器、その他の製油設備に腐蝕をもたらすおそれがある。また、ナフテン酸は、石油装置上の保護膜FeSと直接反応し、金属設備に新たな表面を露出させ、新たな腐食をもたらすおそれがある。ガソリンや軽油、灯油等の一般的な石油製品は、その品質指数のうち、酸価に対する要求が常にある。酸価が高過ぎると、最終顧客にも同様に腐蝕の問題をもたらすことになる。
【0006】
文献や特許に開示された方法としては、さらに、物理吸着法、熱処理、熱分解法、および接触水素化法がある。しかしながら、これらの方法は、実際の応用には到っていない。
【0007】
物理吸着法:吸着剤の存在下、含酸原油または分留を250〜350℃で熱処理することで、含酸原油中の含酸化合物を吸着して転移させる。ここで、上記吸着剤としては、廃接触分解触媒を用いることができる。あるいは、原油とアルカリ土類金属酸化物との混合物を100〜300℃で加熱し、上記アルカリ土類金属酸化物を原油中の有機酸または硫化物と反応させ、アルカリ土類金属炭酸塩とアルカリ土類金属硫化物との沈殿物を生成する。分離後、ナフテン酸と硫化物とが取り除かれた原油が得られる。
【0008】
接触水素化法:水素分圧が2〜3MPa、反応温度が250℃の条件下で、アルミナをキャリアに持つNi−MoまたはNi−Co水素化精製触媒を用いることによって、含酸原油を水素化することで、ナフテン酸をCO、CO2 、H2 O、および低分子量の石油炭化水素に分解し、原油の全酸価を2.6mgKOH/gから0.15mgKOH/gに下げる。接触水素化法は、脱酸効果が高いが、高耐圧・高耐温度装置と水素ガスとを必要とする。また、上記装置は、多額の設備・技術投資を必要とする。水素ガスが無い場合は、285〜345℃でNi−MoまたはNi−Co水素化精製触媒を用いて強酸性原油を処理することで、原油の全酸価を4.0mgKOH/gから1.8mgKOH/gに下げることができる。
【0009】
熱処理および熱分解法(接触熱分解を含む):US5,891,325には、多段式熱反応によって原油の全酸価を下げる方法が開示されている。上記方法における熱反応は、複数の段階を備えており、熱反応の各段階において、一定の温度と圧力とで石油酸の一部を分解し、揮発性有機酸、石油炭化水素、および不揮発性石油炭化水素を生成する。反応と同時に、上記方法は、さらに、不活性ガスで反応系を吹掃し、揮発性化合物を回収し、CaO、Ca(OH)2 、CaCO3 、MgO等のIIA族金属の塩基性塩で有機酸の大部分を中和することで、揮発性石油炭化水素を生成する。そして、上記揮発性石油炭化水素と不揮発性石油炭化水素とを混合することで、石油酸が取り除かれた原油が得られる。
【0010】
CN1827744Aには、高全酸価の原油を加工する方法が開示されている。この方法は、全酸価が0.5mgKOH/gを超える原油を前処理後に予熱し、流動接触分解装置に注入して触媒と接触させ、接触分解反応条件で反応し、原油中のナフテン酸を炭化水素とCO2 に分解し、分離反応後の石油およびガスと触媒を分離し、分離中、反応石油およびガスを後続の分離系統に送りながら、反応後の触媒を回収・再生後に循環使用することができる。
【0011】
現在、含酸劣質原油の加工は、一般的に、酸度が低い原油と混ぜることで行われる。一般的に、混合原油の全酸価は、含酸原油の混合比が或る程度制限されるように、0.5mgKOH/gを超えないことが必要とされる。含酸原油は、その全酸価、密度、および残留炭素が高ければ高いほど、その加工がより困難になる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、含酸劣質原油中、特に、全酸価が0.5mgKOH/gを超える原油中の有機酸を分解し、含酸劣質原油中の残留炭素と金属とを吸着することで、上記含酸劣質原油を改質することができる中孔材料(mesopore material) を提供することである。
【0013】
本発明の第二の目的は、上記中孔材料の調製方法を提供することである。
【0014】
本発明の第三の目的は、上記中孔材料を含有する触媒を提供することである。
【0015】
本発明の第四の目的は、上記中孔材料を含有する触媒を用いて、含酸劣質原油を接触改質し、原油中の有機酸、残留炭素、および金属を取り除く方法を提供することである。
【0016】
本発明の中孔材料は、アルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.3)Na2 O・(1〜50)MO・(6〜58)Al2 3 ・(40〜92)SiO2 (式中、Mは、Mg、Ca、およびBa、好ましくはMgおよび/またはCaから選択される一つまたは複数の元素を示す)を有し、比表面積が200〜400m2 /gであり、孔容積が0.5〜2.0ml/g、好ましくは1.0〜2.0ml/gであり、平均孔径が8〜20nm、好ましくは10〜20nmであり、最確孔径(most probable pore size) が5〜15nm、好ましくは10〜15nmであることを特徴とする。
【0017】
好ましい実施形態において、上記中孔材料は、酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.2)Na2 O・(2〜30)MO・(6〜35)Al2 3 ・(60〜92)SiO2 を有する。
【0018】
好ましくは、上記無水中孔材料は、酸化物の重量パーセントに基づいて、Na2 Oを0.1〜0.2重量%、SiO2 を60〜85重量%、Al2 3 を6〜20重量%含む。
【0019】
好ましくは、上記無水中孔材料は、酸化物の重量パーセントに基づいて、MOを5〜30重量%含む。
【0020】
本発明の中孔材料の製造方法は、室温から85℃の範囲の温度でアルミ源、シリカ源、およびアルカリ土類金属溶液を中和してゲルを形成する工程と、酸またはアルカリを用いてゲルの終末pH(final pH)を7〜9に調整する工程と、室温から90℃の範囲の温度で1〜10時間熟成させる工程と、得られた固体沈殿物のアンモニア交換によって不純物イオンを取り除いてアンモニア交換ゲルを得る工程と、またはさらに乾燥して焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の中孔材料の調製方法において、上記アルミ源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、上記シリカ源は、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルシラン(silicon tetraethyl)、およびシリカからなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、上記酸は、硫酸、塩酸、および硝酸からなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、上記アルカリは、アンモニア水、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類である。
【0022】
本発明は、含酸劣質原油を接触改質するための触媒を提供し、上記触媒は、全量に対して、中孔材料を1〜95重量%、耐熱性無機酸化物を0〜99重量%、粘土を0〜70重量%含み、上記中孔材料は、前述のようにアルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、中孔材料に対する各成分の含有量は前述のように任意であり、Mは、Mg、Ca、およびBaから選択される一つまたは複数の元素を示し、比表面積が200〜400m2 /gであり、孔容積が0.5〜2.0ml/g、好ましくは1.0〜2.0ml/gであり、平均孔径が8〜20nm、好ましくは10〜20nmであり、最確孔径が5〜15nm、好ましくは10〜15nmであることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、上記触媒は、全量に対して、上記中孔材料を10〜50重量%、耐熱性無機酸化物を10〜70重量%、粘土を0〜60重量%含む。より好ましくは、上記触媒は、全量に対して、上記中孔材料を30〜50重量%、耐熱性無機酸化物を20〜40重量%、粘土を30〜50重量%含む。
【0024】
本発明の触媒の調製方法は、耐熱性無機酸化物の全部または一部および/またはその前駆体と水とを混合してスラリーにする工程と、粘土を添加するまたは添加しない工程と、中孔材料を添加する工程と、得られたスラリーを乾燥させる工程と、焼成する工程とを備え、中孔材料の添加前、粘土の添加前または添加後に酸を添加し、30〜90℃で0.1〜10時間熟成させ、熟成工程後、残存耐熱性無機酸化物および/またはその前駆体を添加し、上記中孔材料は、前述のようにアルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、中孔材料に対する各成分の含有量は前述のように任意であり、Mは、Mg、Ca、およびBa、好ましくはMgおよび/またはCaから選択される一つまたは複数の元素を示し、比表面積が200〜400m2 /gであり、孔容積が0.5〜2.0ml/g、好ましくは1.0〜2.0ml/gであり、平均孔径が8〜20nm、好ましくは10〜20nmであり、最確孔径が5〜15nm、好ましくは10〜15nmであり、各成分の量によって、最終触媒が、全量に対して、上記中孔材料を1〜95重量%、耐熱性無機酸化物を0〜99重量%、粘土を0〜70重量%含むようになることを特徴とする。より好ましくは、上記触媒は、上記中孔材料を30〜50重量%、耐熱性無機酸化物を20〜40重量%、粘土を30〜50重量%含む。
【0025】
本発明の含酸劣質原油を改質する方法では、原油を100〜250℃に予熱する工程と、反応炉に導入して上記接触改質触媒と接触させて、接触改質を行う工程と、反応後、反応石油およびガスとコークス化触媒とに分離する工程とを備え、分離反応石油およびガスに対して後続の分離を行い、軽産物分と脱酸化・脱金属化された原油を得ると共に、分離触媒を回収・炭化によって再生した後に再循環させることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、上記接触改質は、反応温度が300〜600℃、反応圧力が0.15〜0.4MPa、重量空間速度が1〜150h-1、炭化水素原料油に対する触媒の質量比が1〜30で行われる。より好ましくは、上記接触改質は、反応温度が350〜520℃、反応圧力が0.15〜0.35MPa、重量空間速度が1〜100h-1、炭化水素油に対する触媒の質量比が2〜15で行われる。
【0027】
好ましくは、上記反応炉は、ライザー反応炉および/または流動床反応炉である。
【0028】
含酸原油を接触改質するための触媒およびその調製方法がもたらす有益な効果は、以下のように反映される。
【0029】
本発明の触媒は、アルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する中孔材料を含有し、比表面積が200〜400m2 /gであり、孔容積が0.5〜2.0ml/gであり、平均孔径が8〜20nmである。アルカリ土類金属酸化物の存在は、含酸劣質原油中における有機酸の接触分解の促進にとって好都合である。一方、比表面積、孔容積、および中孔径が大きいため、含酸劣質原油中の重金属キレート錯体および樹脂の導入(entry) ・吸着に好適である。本発明の接触改質触媒は、含酸劣質原油の全酸価、残留炭素、および金属含有量を効果的に低減することができ、接触分解用の原料油として利用されるように原油の品質を改善することができる。
【0030】
従来技術に対して、本発明の含酸劣質原油を改質する方法がもたらす有益な効果は、以下のように反映される。
【0031】
含酸劣質原油は、全酸価が高く、減圧蒸留中、設備に対して深刻な腐蝕をもたらす。残留炭素および金属含有量が高いため、含酸劣質原油は、そのままでは接触分解用の原料油として利用できない。本発明の含酸劣質原油を改質する方法を用いれば、原油中の有機酸を分解し、ナフテン酸中のカルボキシル基を一酸化炭素または二酸化炭素に変換し、アルキル基を炭化水素物質に変換して、90%を超える脱酸率と原油の全酸価の低減を実現できる。一方、残留炭素および金属含有量は、触媒の吸着によって低減され、原油の品質が改善される。本発明の方法を用いて改質された原油は、そのまま接触分解用または減圧装置用の原料油として利用でき、設備投資と設備防腐費用とを減少させ、経済的利益を増大させる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の中孔材料は、アルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.3)Na2 O・(1〜50)MO・(6〜58)Al2 3 ・(40〜92)SiO2 、好ましくは(0〜0.2)Na2 O・(2〜30)MO・(6〜35)Al2 3 ・(60〜92)SiO2 を有する。上記アルカリ土類金属Mは、Mg、Ca、およびBa、好ましくはMgおよび/またはCaから選択される一つまたは複数の元素を示す。好ましくは、上記無形性物質は、酸化物の重量パーセントに基づいて、Na2 Oを0.1〜0.2重量%、SiO2 を60〜85重量%、Al2 3 を6〜20重量%含む。好ましくは、上記無形性物質は、酸化物の重量パーセントに基づいて、MOを5〜30重量%含む。
【0033】
本発明の接触改質触媒は、上記中孔材料、および任意で耐熱性無機酸化物と粘土とを含む。触媒の全量に対して、上記中孔材料が1〜95重量%、上記耐熱性無機酸化物が0〜99重量%、上記粘土が0〜70重量%含まれる。好ましくは、上記中孔材料が10〜50重量%、上記耐熱性無機酸化物が10〜70重量%、上記粘土が0〜60重量%含まれる。
【0034】
本発明の触媒において、上記耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカ、および無定形シリカ−アルミナからなる群から選択される一つまたは複数の種類のような、クラッキング触媒の基質・結合成分としての一つまたは複数の種類の耐熱性無機酸化物である。これらの耐熱性無機酸化物は、当業者に周知のものである。
【0035】
上記粘土は、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、珪藻岩、エンデライト、サポナイト、レクトライト、海泡石、アタパルガイト、水滑石、およびベントナイトのような、クラッキング触媒の活性成分としての粘土から選択される一つまたは複数の種類の混合物、好ましくは、カオリン、ハロイサイト、およびモンモリロナイトから選択される一つまたは複数の種類の混合物である。これらの粘土は、当業者に周知のものである。
【0036】
上記触媒において、上記耐熱性無機酸化物は、好ましくは、SiO2 またはAl2 3 であり、上記粘土は、好ましくは、カオリンである。
【0037】
本発明の触媒の調製方法において、耐熱性無機酸化物の全部または一部および/またはその前駆体を熟成工程の前に添加してもよい。触媒の摩耗抵抗能を向上させるために、好ましくは、熟成工程前に耐熱性無機酸化物の一部および/またはその前駆体を添加し、熟成工程後に残存耐熱性無機酸化物および/またはその前駆体を添加し、先に添加した一部と後で添加した一部によって、先に添加した耐熱性無機酸化物と後で添加した耐熱性無機酸化物との重量比を、触媒中で1:0.1〜10、好ましくは1:0.1〜5とする。
【0038】
本発明の触媒の調製方法において、上記粘土を熟成工程の前または後に添加してもよい。上記粘土の添加順序は、触媒の性能に影響がない。
【0039】
本発明の触媒の調製方法において、中孔材料の添加前、粘土の添加前または添加後に酸を添加してスラリーのpHを1〜5に調整する。次いで、スラリーを30〜90℃で0.1〜10時間熟成させる。上記酸は、可溶性無機酸および有機酸からなる群から選択される一つまたは複数の種類、好ましくは、塩酸、硝酸、リン酸、および炭素分子数が1〜10のカルボン酸から選択される一つまたは複数の種類の混合物である。酸の量によって、スラリーのpHを1〜5、好ましくは、1.5〜4の範囲にできる。
【0040】
上記熟成温度は、30〜90℃、好ましくは、40〜80℃の範囲である。熟成時間は、0.1〜10時間、好ましくは、0.5〜8時間である。
【0041】
本発明の触媒の調製方法において、上記耐熱性無機酸化物の前駆体は、触媒調製中に上記耐熱性無機酸化物を形成可能な一つまたは複数の物質を示す。例えば、アルミナの前駆体は、水酸化アルミナおよび/またはアルミナゾルから選択してもよく、上記水酸化アルミナは、ベーム石、擬似ベーム石、三水和アルミナ(aluminum trihydrate) 、および非晶質水酸化アルミニウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類である。シリカの前駆体は、シリカゾル、シリカゲル、および水ガラスからなる群から選択される一つまたは複数の種類であってもよい。無定形シリカ−アルミナの前駆体は、シリカ−アルミナゾル、シリカゾルとアルミナゾルとの混合物、およびシリカ−アルミナゲルからなる群から選択される一つまたは複数の種類であってもよい。これら耐熱性無機酸化物の前駆体は、当業者に周知のものである。
【0042】
各成分の量によって、本発明の触媒の調製方法における最終触媒は、全量に対して、中孔材料を1〜95重量%、耐熱性無機酸化物を0〜99重量%、粘土を0〜70重量%含む。好ましくは、本発明の触媒の調製方法における最終触媒は、全量に対して、中孔材料を10〜50重量%、耐熱性無機酸化物を10〜70重量%、粘土を0〜60重量%含む。より好ましくは、本発明の触媒の調製方法における最終触媒は、全量に対して、中孔材料を30〜50重量%、耐熱性無機酸化物を20〜40重量%、粘土を30〜50重量%含む。
【0043】
本発明の触媒の調製方法において、スラリーを乾燥させる方法および条件は、当業者に周知のものである。例えば、乾燥は、空気乾燥、焼き付け、強制空気乾燥、または噴霧乾燥、好ましくは噴霧乾燥である。乾燥温度は、室温から400℃、好ましくは、100〜350℃の範囲でよい。噴霧乾燥を好適に行うには、乾燥前のスラリーの固形成分は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜50重量%である。
【0044】
上記スラリー乾燥後の焼成条件も当業者に周知のものである。一般に、上記乾燥後のスラリーの焼成温度は、400〜700℃、好ましくは、450〜650℃の範囲であり、焼成時間は、少なくとも0.5時間、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは0.5〜10時間である。
【0045】
本発明の中孔材料の製造方法は、室温から85℃の範囲の温度でアルミ源、シリカ源、およびアルカリ土類金属溶液を中和してゲルを形成する工程と、酸またはアルカリを用いてゲルの終末pHを7〜9に調整する工程と、室温から90℃の範囲の温度で1〜10時間熟成させる工程と、得られた固体沈殿物のアンモニア交換によって不純物イオンを取り除いてアンモニア交換ゲルを得る工程と、またはさらに乾燥して焼成する工程とを備える。
【0046】
上記アルミ源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類の混合物であり、上記シリカ源は、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルシラン、およびシリカからなる群から選択される一つまたは複数の種類の混合物であり、上記酸は、硫酸、塩酸、および硝酸からなる群から選択される一つまたは複数の種類の混合物であり、上記アルカリは、アンモニア水、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類の混合物である。
【0047】
沈殿物(無水ベース):アンモニウム塩:H2 Oの重量比=1:(0.1〜1):(10〜30)に基づき、ここでいうアンモニア交換は、室温から100℃の範囲の温度で、1〜3回、各回0.3〜1時間、沈殿物(無水ベース)のナトリウム量が0.2重量%より低くなるまで熟成固体沈殿物を交換する工程を備える。交換で使用するアンモニウム塩は、塩化アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、および重炭酸アンモニウムからなる群から選択される何れか一つである。
【0048】
上記中孔材料は、触媒調製中にゲルとして、もしくは乾燥または焼成固体として添加してもよい。そして、上記中孔材料の添加方法は、触媒の性能に影響がない。
【0049】
本発明の触媒は、全酸価が0.5mgKOH/gを超え、コンラドソン炭素数が3重量%を超える原油の改質に好適である。好ましくは、全酸価が1mgKOH/gを超え、コンラドソン炭素数が5重量%を超え、Ni含有量が10ppmを超え、Fe含有量が10ppmを超え、Ca含有量が10ppmを超える原油が、本発明の触媒によって好適に改質される。本発明の触媒は、含酸原油の全酸価、残留炭素、および重金属含有量を効果的に低減することができ、接触分解用の原料油として利用されるように原油の品質を改善することができ、非常に大きな経済的利益をもたらすことができる。
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。中孔材料の無水化学式は、X線蛍光分光分析法、次いで変換によってその元素組成を定量することで得られる。
【実施例】
【0051】
実施例および比較例で使用した材料は、以下の通りである。
【0052】
塩酸:Beijing Chemical Works製、化学的に純粋、濃度36〜38重量%
ナトリウム水ガラス:市販品、SiO2 濃度26.0重量%、モジュール(module)3.2
ハロイサイト:Suzhou Kaolin Company製、固形成分含有量74.0重量%
擬似ベーム石:Shandong Aluminum Plant製工業製品、固形成分含有量62.0重量%
アルミナゾル:Sinopec Catalyst Company Qilu Division製、Al2 3 含有量21.5重量%
実施例1〜6によれば、本発明が、耐熱性無機酸化物も粘土も含まない劣質原油接触改質触媒、並びにその調製方法を提供することが判る。
【実施例1】
【0053】
濃度4重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1750gをビーカーに添加した。攪拌しながら、濃度4重量%(Al2 3 ベース)のアルミン酸ナトリウム溶液350g、濃度4重量%(Al2 3 ベース)の硫酸アルミニウム溶液150g、および濃度4重量%(CaOベース)の塩化カルシウム溶液250gを同時に上記水ガラス溶液に添加し、80℃に加熱し、4時間熟成した。アンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N1と略す)を得た。
【0054】
アンモニウムイオン交換:沈殿物(無水ベース):アンモニウム塩:H2 Oの重量比=1:0.8:15に基づき、温度60℃で2回、各回0.5時間、NH4 Cl溶液で沈殿物のアンモニウムイオン交換を行って、中に含まれるナトリウムイオンを除去した。各交換後、洗浄ろ過を行った。
【0055】
次いで、N1を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C1と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.2Na2 O・9.8CaO・19.8Al2 3 ・70.2SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【実施例2】
【0056】
濃度4重量%(CaOベース)の塩化カルシウム溶液125gを、濃度2.5重量%(Al2 3 ベース)の硫酸アルミニウム溶液400gに添加した。攪拌しながら、上記混合溶液を濃度5重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1700gに添加し、80℃に加熱し、4時間熟成した。実施例1の方法でアンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N2と略す)を得た。次いで、N2を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C2と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.1Na2 O・5.1CaO・9.8Al2 3 ・85.0SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【実施例3】
【0057】
濃度4重量%(MgOベース)の硫酸マグネシウム溶液500gをビーカーに添加した。攪拌しながら、濃度5重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1300gを上記硫酸マグネシウム溶液に添加し、さらに、濃度3重量%(Al2 3 ベース)のアルミン酸ナトリウム溶液500gをその中に添加した。次いで、上記混合溶液を80℃に加熱し、4時間熟成した。実施例1の方法でアンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N3と略す)を得た。次いで、N3を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C3と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.1Na2 O・21.5MgO・12.3Al2 3 ・66.1SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【実施例4】
【0058】
濃度5重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1210gをビーカーに添加した。攪拌しながら、濃度5重量%(Al2 3 ベース)のアルミン酸ナトリウム溶液400g、濃度5重量%(Al2 3 ベース)の硫酸アルミニウム溶液300g、および濃度1重量%(BaOベース)の硝酸バリウム溶液450gを上記水ガラス溶液に添加し、80℃に加熱し、4時間熟成した。実施例1の方法でアンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N4と略す)を得た。次いで、N4を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C4と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.1Na2 O・4.5BaO・34.8Al2 3 ・60.6SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【実施例5】
【0059】
濃度4重量%(MgOベース)の硫酸マグネシウム溶液750gをビーカーに添加した。攪拌しながら、濃度4重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1600gを上記硫酸マグネシウム溶液に添加し、さらに、濃度4重量%(Al2 3 ベース)のアルミン酸ナトリウム溶液150gをその中に添加した。次いで、上記混合溶液を80℃に加熱し、4時間熟成した。実施例1の方法でアンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N5と略す)を得た。次いで、N5を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C5と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.1Na2 O・29.8MgO・6.2Al2 3 ・63.9SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【実施例6】
【0060】
濃度1重量%(BaOベース)の硝酸バリウム溶液300gを、濃度3重量%(Al2 3 ベース)の硫酸アルミニウム溶液200gに添加した。攪拌しながら、上記混合溶液を濃度5重量%(SiO2 ベース)の水ガラス溶液1800gに添加し、80℃に加熱し、4時間熟成した。実施例1の方法でアンモニウムイオン交換を行ってゲル状の中孔材料(以下、N6と略す)を得た。次いで、N6を120℃で15時間乾燥させ、600℃で3時間焼成し、中孔材料を100重量%含有する改質触媒(以下、C6と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.1Na2 O・3.1BaO・6.1Al2 3 ・90.7SiO2 であり、その比表面積や孔容積等の物理化学的パラメーターを表1に示す。
【0061】
【表1】

【比較例1】
【0062】
本比較例では、V2 5 含有中孔材料の比較触媒とその調製方法を示す。
【0063】
塩化カルシウムをシュウ酸塩バナジウムに置き換えた以外は、実施例1に記載の方法と同様に触媒を調製し、バナジウム含有中孔材料を100重量%含有する比較触媒(以下、CB1と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.2Na2 O・9.8V2 5 ・19.8Al2 3 ・70.2SiO2 である。
【比較例2】
【0064】
本比較例では、TiO2 含有中孔材料の比較触媒とその調製方法を示す。
【0065】
塩化カルシウムを四塩化チタンに置き換えた以外は、実施例1に記載の方法と同様に触媒を調製し、チタン含有中孔材料を100重量%含有する比較触媒(以下、CB2と略す)を得た。そのような試料の元素解析重量化学式は、0.2Na2 O・9.8TiO2 ・19.8Al2 3 ・70.2SiO2 である。
【0066】
実施例7〜9では、本発明の劣質原油接触改質触媒、並びにその調製方法を示す。
【実施例7】
【0067】
塩酸1.7Lを脱カチオン化水8.0kgで希釈した。ナトリウム水ガラス7.7kgを脱カチオン化水8.0kgで希釈した。攪拌しながら、希釈したナトリウム水ガラスを上記希釈した塩酸溶液にゆっくりと添加し、SiO2 濃度が7.8重量%でpHが2.8のシリカゾルを得た。ハロイサイト5.4kgを上記シリカゾルに添加し、1時間攪拌してカオリンを充分に分散させた。
【0068】
実施例1で調製した中孔材料C1(無水ベースで)4.0kgを脱カチオン化水6.8kgに添加した。次いで、ホモジナイザーで溶液を充分に分散させ、希釈塩酸でpHを3.5に調整した。中孔材料スラリーを上記シリカゾル−粘土スラリーに添加し、0.5時間攪拌して、固形成分含有量22.3重量%でpHが2.9の触媒スラリーを得た。そのようなスラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄、乾燥および焼成して、中孔材料40重量%、カオリン40重量%、SiO2 結合剤20重量%からなる改質触媒(以下、C7と略す)を得た。
【実施例8】
【0069】
ハロイサイト4.1kgを脱カチオン化水18kgに添加し、スラリー化した。擬似ベーム石4.8kgをその中に添加し、塩酸を用いてそのpHを2に調整した。均一になるまで攪拌した後、その混合物を70℃で保持し、1時間熟成した。次いで、アルミナゾル4.7kgを添加し、均一になるまで攪拌し、熟成工程の前後に耐熱性無機酸化物の前駆体を加えて、熟成工程の前後における耐熱性無機酸化物の重量比を1:0.33とした。
【0070】
実施例2で調製した中孔材料C2(無水ベースで)3.0kgを脱カチオン化水5.5kgに添加した。次いで、ホモジナイザーで溶液を充分に分散させ、希釈塩酸でpHを3.5に調整した。中孔材料スラリーを上記アルミナ−粘土スラリーに添加し、0.5時間攪拌して、固形成分含有量23.5重量%の触媒スラリーを得た。そのようなスラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄、乾燥および焼成して、中孔材料30重量%、カオリン30重量%、Al2 3 結合剤40重量%からなる改質触媒(以下、C8と略す)を得た。
【実施例9】
【0071】
ハロイサイト6.8kgを脱カチオン化水24kgに添加し、スラリー化した。擬似ベーム石4.8kgをその中に添加し、塩酸を用いてそのpHを2に調整した。均一になるまで攪拌した後、その混合物を70℃で保持し、1時間熟成した。実施例3で調製したゲル状の中孔材料C3(無水ベースで)2.0kgを添加し、均一になるまで攪拌して、固形成分含有量18.3重量%のスラリーを得た。そのようなスラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄、乾燥および焼成して、中孔材料20重量%、カオリン50重量%、Al2 3 結合剤30重量%からなる改質触媒(以下、C9と略す)を得た。
【比較例3】
【0072】
本比較例では、中孔材料を含まない比較触媒とその調製方法を示す。
【0073】
中孔材料を添加しなかったこと以外は、実施例7に記載の方法と同様に触媒を調製した。ハロイサイトの量は10.8kgであった。このようにして、カオリンを80重量%、SiO2 結合剤を20重量%含有する比較触媒(以下、CB3と略す)を得た。
【0074】
[実施例10〜12]
実施例10〜12では、本発明の接触改質触媒の接触改質効果を示す。
【0075】
100%蒸気で、改質触媒C1〜C3を800℃で17時間熟成し、小規模固定流動床装置の反応炉に仕込んだ。表2に示す原油Aを導入し、反応温度400℃、触媒/油重量比5、重量空間速度が16h-1で反応させた。反応後、液相生成物を回収した。次いで、製品分布、酸価、残留炭素、および金属含有量を分析し、改質触媒の改質効果を検討した。表3に結果を示す。
【0076】
下記の式に従って、脱酸率を計算した。
【0077】
脱酸率=((強酸性原油の全酸価−得られた液相生成物の全酸価)/強酸性原油の全酸価)×100%
【比較例4〜5】
【0078】
比較例4〜5では、比較触媒の接触改質効果を示す。
【0079】
本発明の触媒C1を比較例1,2に記載の比較触媒CB1,CB2にそれぞれ置き換えた以外は、実施例10の方法と同様に熟成を行い、触媒の触媒性能を評価した。表3に結果を示す。
【0080】
[実施例13〜15]
実施例13〜15では、本発明の接触改質触媒の接触改質効果を示す。
【0081】
改質触媒C4〜C6にそれぞれ金属を混入した。混入物質量は、それぞれ、Feが20000ppm、Niが30000ppm、Caが10000ppmとした。金属を混入した改質触媒を100%蒸気、800℃で8時間熟成し、小規模固定流動床装置の反応炉に仕込んだ。表2に示す原油Bを導入し、反応温度400℃、触媒/油重量比5、重量空間速度が16h-1で反応させた。反応後、液相生成物を回収した。次いで、製品分布、酸価、残留炭素、および金属含有量を分析し、改質触媒の改質効果を検討した。表4に結果を示す。
【0082】
[実施例16〜18]
実施例16〜18では、本発明の接触改質触媒の接触改質効果を示す。
【0083】
改質触媒C7〜C9にそれぞれ金属を混入した。混入物質量は、それぞれ、Feが20000ppm、Niが30000ppm、Caが10000ppmとした。金属を混入した改質触媒を100%蒸気、800℃で17時間熟成し、小規模固定流動床装置の反応炉に仕込んだ。表2に示す原油Aを導入し、反応温度450℃、触媒/油重量比5、重量空間速度が10h-1で反応させた。反応後、液相生成物を回収した。次いで、製品分布、酸価、残留炭素、および金属含有量を分析し、改質触媒の改質効果を検討した。表5に結果を示す。
【比較例6】
【0084】
比較例6では、比較触媒の接触改質効果を示す。
【0085】
本発明の触媒C7を比較例3に記載の比較触媒CB3に置き換えた以外は、実施例16の方法と同様に混入・熟成を行い、触媒の触媒性能を評価した。表5に結果を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
表3によれば、本発明の接触改質触媒で劣質原油を前処理した後、改質された原油は、脱酸率が90%を超え、コンラドソン炭素数の減少率が72.3%を超え、Ni除去率が93.2%であり、Fe除去率が91.5%を超え、Ca除去率が44.1%を超えることが判る。
【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
表5によれば、本発明の接触改質触媒に金属を混入した後でも、脱酸率が95.5%を超え、比較例の47.5%よりもはるかに高いことが判る。また、コンラドソン炭素数の減少率が68.6%と、比較例よりも40.7%高く、Ni除去率が91.3%と、比較例よりも30.9%高く、Fe除去率が89.5%を超え、比較例よりも32.5%高く、Ca除去率が52.3%を超え、比較例よりも38.7%高いことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属酸化物と、シリカと、アルミナとを含有する無形性物質であり、
酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.3)Na2 O・(1〜50)MO・(6〜58)Al2 3 ・(40〜92)SiO2 (式中、Mは、Mg、Ca、およびBaから選択される一つまたは複数の元素を示す)を有し、
比表面積が200〜400m2 /gであり、
孔容積が0.5〜2.0ml/gであり、
平均孔径が8〜20nmであり、
最確孔径が5〜15nmであることを特徴とする中孔材料。
【請求項2】
酸化物の重量パーセントに基づいて、無水化学式(0〜0.2)Na2 O・(2〜30)MO・(6〜35)Al2 3 ・(60〜92)SiO2 を有することを特徴とする請求項1に記載の中孔材料。
【請求項3】
酸化物の重量パーセントに基づいて、Na2 Oを0.1〜0.2重量%、SiO2 を60〜85重量%、Al2 3 を6〜20重量%含むことを特徴とする請求項2に記載の中孔材料。
【請求項4】
酸化物の重量パーセントに基づいて、MOを5〜30重量%含むことを特徴とする請求項2に記載の中孔材料。
【請求項5】
上記アルカリ土類金属Mは、MgおよびCaからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の中孔材料。
【請求項6】
上記孔容積が1.0〜2.0ml/gであり、
上記平均孔径が10〜20nmであり、
上記最確孔径が10〜15nmであることを特徴とする請求項1に記載の中孔材料。
【請求項7】
室温から85℃の範囲の温度でアルミ源、シリカ源、およびアルカリ土類金属溶液を中和してゲルを形成する工程と、
酸またはアルカリを用いてゲルの終末pHを7〜9に調整する工程と、
室温から90℃の範囲の温度で1〜10時間熟成させる工程と、
得られた固体沈殿物のアンモニア交換によって不純物イオンを取り除いてアンモニア交換ゲルを得る工程と、
またはさらに乾燥して焼成する工程とを備えることを特徴とする請求項1に記載の中孔材料の調製方法。
【請求項8】
上記アルミ源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、
上記シリカ源は、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルシラン(silicon tetraethyl)、およびシリカからなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、
上記酸は、硫酸、塩酸、および硝酸からなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、
上記アルカリは、アンモニア水、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される一つまたは複数の種類であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
全量に対して、請求項1〜6の何れか一項に記載の中孔材料を1〜95重量%、耐熱性無機酸化物を0〜99重量%、粘土を0〜70重量%含むことを特徴とする接触改質触媒。
【請求項10】
全量に対して、上記中孔材料を10〜50重量%、耐熱性無機酸化物を10〜70重量%、粘土を0〜60重量%含むことを特徴とする請求項9に記載の接触改質触媒。
【請求項11】
全量に対して、上記中孔材料を30〜50重量%、耐熱性無機酸化物を20〜40重量%、粘土を30〜50重量%含むことを特徴とする請求項10に記載の接触改質触媒。
【請求項12】
上記耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカ、および無定形シリカ−アルミナからなる群から選択される一つまたは複数の種類であり、
上記粘土は、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、珪藻岩、エンデライト、サポナイト、レクトライト、海泡石、アタパルガイト、水滑石、およびベントナイトからなる群から選択される一つまたは複数の種類の混合物であることを特徴とする請求項9に記載の接触改質触媒。
【請求項13】
耐熱性無機酸化物の全部または一部および/またはその前駆体と水とを混合してスラリーにする工程と、
粘土を添加するまたは添加しない工程と、
中孔材料を添加する工程と、
得られたスラリーを乾燥させる工程と、
焼成する工程とを備え、
中孔材料の添加前、粘土の添加前または添加後に酸を添加してスラリーのpHを1〜5に調整し、
スラリーを30〜90℃で0.1〜10時間熟成させ、
熟成工程後、残存耐熱性無機酸化物および/またはその前駆体を添加し、
各成分の量によって、最終触媒が、全量に対して、上記中孔材料を1〜95重量%、耐熱性無機酸化物を0〜99重量%、粘土を0〜70重量%含むようになることを特徴とする請求項9に記載の触媒の調製方法。
【請求項14】
熟成工程前、耐熱性無機酸化物の一部および/またはその前駆体を添加し、
熟成工程後、残存耐熱性無機酸化物および/またはその前駆体を添加し、
先に添加した一部と後で添加した一部によって、先に添加した耐熱性無機酸化物と後で添加した耐熱性無機酸化物との重量比が、触媒中で1:0.1〜10となることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の中孔材料または請求項9〜12の何れか一項に記載の接触改質触媒を用いて含酸劣質原油を改質する方法であって、
原油を100〜250℃に予熱する工程と、
反応炉に導入して請求項1に記載の中孔材料または請求項9〜12の何れか一項に記載の接触改質触媒と接触させて、接触改質を行う工程と、
反応後、反応石油およびガスとコークス化触媒とに分離する工程とを備え、
分離反応石油およびガスに対して後続の分離を行い、軽産物分と脱酸化・脱金属化された原油を得ると共に、
分離触媒を回収・炭化によって再生した後に再循環させることを特徴とする方法。
【請求項16】
上記接触改質は、反応温度が300〜600℃、反応圧力が0.15〜0.4MPa、重量空間速度が1〜150h-1、炭化水素油に対する触媒の質量比が1〜30で行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記接触改質は、反応温度が350〜520℃、反応圧力が0.15〜0.35MPa、重量空間速度が1〜100h-1、炭化水素油に対する触媒の質量比が2〜15で行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記原油は、全酸価が0.5mgKOH/gを超え、コンラドソン炭素数(conradson carbon number) が3重量%を超えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記原油は、全酸価が1mgKOH/gを超え、コンラドソン炭素数が5重量%を超え、Ni含有量が10μg/gを超え、Fe含有量が10μg/gを超え、Ca含有量が10μg/gを超えることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2011−522688(P2011−522688A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509840(P2011−509840)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000031
【国際公開番号】WO2009/140847
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】