説明

吸収性物品用の不織布

【課題】肌触りが良好で柔らかく、液の透過性に優れ、表面材をはじめとする吸収性物品の各種部材として有用な不織布を提供すること。
【解決手段】本発明の不織布は、繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、前記繊維層の構成繊維の一部又は全部が、オキシメチレン構造単位を有する重合体を含むポリアセタール繊維である。前記重合体は、前記オキシメチレン構造単位と該オキシメチレン構造単位に共重合可能な成分からなる構造単位との共重合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に好適に用いられる吸収性物品用の不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、おむつやナプキン等の吸収性物品は、尿血、液等の体液を吸収する吸収体と、該吸収体を覆い肌に当接する表面材と、上記吸収体の裏面を覆い液漏れを防ぐ裏面材とからなっている。吸収性物品の表面材は、血液、尿等の体液を速やかに吸収体に移行させるために液透過性が要求される他、肌に密着して不快感を与えないこと、及び体液を肌側に戻さない液戻り防止性等が要望される。
【0003】
従来、吸収性物品の表面材として、ポリオレフィン繊維を主体とした不織布状の繊維シートが使用されている(例えば特許文献1参照)。ポリオレフィン繊維は、表面材に求められる柔らかさの特性の他、成形性、加工性等の点でも優れており、表面材の形成材料として各種特性のバランスが良好なものである。
しかし、近年、表面材の肌当たりの柔らかさの更なる向上が求められるようになり、ポリオレフィン繊維ではこの要望に十分に応えられない場合があった。表面材の肌当たりの柔らかさを高める方法として、表面材の肌当接面(肌と接触する面)側を従来のポリオレフィン繊維より細い繊維で構成し、その構造を緻密化する方法があるが、斯かる方法は、表面材の構成繊維の繊維間空隙が狭まるため、液の透過性が低下し、液残りし易くなる傾向があり、液吸収性の点で問題があった。
【0004】
表面材の肌当たりの柔らかさを高める別の方法として、1)表面材の坪量を低減させて繊維集合密度を下げる方法や、2)比重が大きく剛性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製の繊維を利用する方法がある。
しかし、上記1)の方法は、坪量の低減により加工性や生産性の低下を招くおそれがあるため、坪量を肌当たりの柔らかさの向上に有効な程度まで低減させることが難しく、表面材の肌当たりの柔らかさを高める方法としては有効ではない。
また、上記2)の方法で使用するPET樹脂は、融点が高いため熱融着加工しにくく、またポリオレフィン樹脂より硬く摩擦が大きいため、表面材の主たる形成材料としては利用し難い面がある。上述したPET樹脂の長所を採り入れた方法として、PET樹脂とポリオレフィン樹脂との複合繊維を用いる方法もあるが、斯かる複合繊維は、表面材の肌当たりの柔らかさの追求に重要な、繊維径の極細化が難しく、肌当たりの柔らかさの向上にも限界がある。
【0005】
また、肌当たりの柔らかさを高め得る表面材として、特許文献2には、肌当接面側が立体的な凹凸形状を有し且つ該肌当接面側と非肌当接面側との間に空隙構造を有する立体シート材料が開示されている。しかし、このような立体シート材料は、上記のような構造を作るための構成上、製造上の制約があり、汎用性の点で課題が残る。
【0006】
【特許文献1】特開平6−70954号公報
【特許文献2】特開2004−345357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、肌触りが良好で柔らかく、液の透過性に優れ、表面材をはじめとする吸収性物品の各種部材として有用な不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、前記繊維層の構成繊維の一部又は全部が、オキシメチレン構造単位を有する重合体を含むポリアセタール繊維である不織布を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、前記繊維層が、オキシメチレン構造単位を有する重合体を含むポリアセタール繊維を主体とする第1層と、該第1層上に積層され且つ該第1層と部分的に接合され且つ該ポリアセタール繊維より伸長回復率の低い繊維を主体とする第2層とを有し、該第2層の表面に凹凸形状が形成されている不織布を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
また本発明は、体液を吸収する吸収体を覆う吸収性物品の表面材であって、前記不織布からなる吸収性物品の表面材を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、体液を吸収する吸収体を具備する吸収性本体の非肌当接面側を覆う吸収性物品の外装材であって、前記不織布からなる吸収性物品の外装材を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品用の不織布は、肌触りが良好で柔らかく、液の透過性に優れ、表面材をはじめとする吸収性物品の各種部材として有用である。
また本発明の吸収性物品の表面材は、肌触りが良好で柔らかく、液の透過性に優れ、液残り(液が透過されずに表面に残る現象)や液戻り(吸収体に一旦吸収された液が肌当接面側に戻る現象)を効果的に抑制することができる。
また本発明の吸収性物品の外装材は、肌触り、強度、耐摩耗性、熱シール性等の点で良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、先ず、本発明の吸収性物品用の不織布について説明する。
本発明の不織布は、繊維層からなり、該繊維層の構成繊維の一部又は全部が、オキシメチレン構造単位(−OCH2−)を有する重合体(オキシメチレン重合体)を含むポリアセタール繊維である。
【0012】
オキシメチレン重合体(ポリアセタール)は、非晶部分と結晶部分とを有しているために強度、弾性率、耐衝撃性、摺動特性等に優れており、従来、射出成形品を中心としたエンジニアリング・プラスチック用途に利用されている。このような特性を有するオキシメチレン重合体を含んで構成されるポリアセタール繊維は、下記(イ)〜(ヘ)の特長を有している。
(イ)密度が高く、また、この種の不織布の構成繊維として汎用されているポリエステル繊維やポリプロピレン繊維と同等以上の強度を有しているため、不織布の構成繊維として用いた場合は、嵩高になり、構成繊維の繊維間空隙(目開き)を大きく形成することができる。繊維間空隙の大きな不織布は、液の透過性が高く、吸収性物品の表面材等として好適である。
(ロ)摩擦性が低い(繊維表面が滑らかで滑りやすい)ため、不織布の構成繊維として用いた場合は、肌に優しい不織布が得られる。
(ハ)ポリアセタールは、公定水分率が比較的高い(ポリオレフィンよりも高い)ため、親水化処理を施し易く、親水性の耐久性向上などの効果がある
(ニ)ポリアセタールは、溶解度パラメーター(SP値)が比較的高く、水との相溶性がポリオレフィンやポリエステルより良い。このため、合成繊維として用いた場合は、前記(ハ)と同様に親水化処理を施し易く、親水性の耐久性向上や経時安定性向上の効果が得られる。
(ホ)ポリアセタールは、融点が比較低く(ポリプロピレンと同等、ポリエチレンテレフタレートよりも低い)、熱融着や熱シールなどの加工がし易いため、吸収性物品の表面材、外装材などとして利用し易い。
(ヘ)伸長回復性が良好なため、歪み難く、不織布の構成繊維として用いた場合は、しわが生じにくく、よれにくい。
【0013】
オキシメチレン重合体としては、ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーを用いることもできるが、曳糸性、紡糸性、延伸性等を考慮すると、オキシメチレン構造単位(−OCH2−)と該オキシメチレン構造単位に共重合可能な成分からなる構造単位との共重合体(オキシメチレン共重合体)を用いることが好ましい。
【0014】
本発明で用いられるオキシメチレン共重合体は、オキシメチレン構造単位を主たる繰り返し単位とし、これに共重合可能なコモノマー成分からなる他の繰り返し単位(他の構造単位)を含むものである。本発明においては、この他の構造単位として一般式(1): −[−(CR12)n−O−]m− で示されるオキシアルキレン構造単位を含む、オキシメチレン共重合体を用いることが好ましい。上記式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示す。
【0015】
本発明で用いられるオキシメチレン共重合体としては、オキシメチレン構造単位(−OCH2−)を、該重合体の全構造単位に対して好ましくは85〜99mol%、更に好ましくは90〜98mol%含有し、更に、前記一般式(1)で示されるオキシアルキレン構造単位を、全構造単位に対して好ましくは1〜15mol%、更に好ましくは2〜10mol%含有するものが好ましい。オキシアルキレン構造単位の導入割合が少なすぎると、オキシメチレン共重合体の結晶化速度が早くなり、紡糸時の断糸発生が増大し、延伸性が低下するおそれがある。導入するオキシアルキレン構造単位が過多になると、結晶化速度が低下し高強度繊維を得られないため好ましくない。
【0016】
本発明で用いられるオキシメチレン共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、一般的にはトリオキサンとコモノマーである環状エーテル化合物を、主としてカチオン重合触媒を用いて塊状重合させる方法が利用される。重合装置としては、バッチ式、連続式等の公知の装置がいずれも使用できる。コモノマーとして用いられる環状エーテル化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、その中でもエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。これら環状エーテル化合物の使用量は、上述した好ましいオキシアルキレン構造単位の導入割合等を考慮して、適宜調整する。重合によって得たオキシメチレン共重合体の後処理及び安定化、例えば触媒の失活化処理、未反応モノマーの除去、重合体の洗浄、乾燥、不安定末端部の安定化処理、更には各種安定剤の配合による安定化処理等は、公知の方法で行なえばよい。
【0017】
本発明で用いられるオキシメチレン重合体(オキシメチレン共重合体を含む。以下、特に断りが無い限り、同じ。)は、そのメルトインデックス(MI)が、好ましくは2.5〜90g/10分、更に好ましくは5〜80g/10分である。MIは、ASTM D−1238に従い、190℃、2160gの荷重下で測定される値である。MIが斯かる範囲にあるオキシメチレン重合体は、溶融紡糸等により工業的に安定した品質の繊維を提供し得る。MIは、重合時に使用する連鎖移動剤(例えばメチラール等)の添加量により調整することができる。
【0018】
本発明で用いられるポリアセタール繊維は、樹脂成分として上述したオキシメチレン重合体のみから構成されていてもよく、あるいはオキシメチレン重合体と該オキシメチレン重合体以外の他の樹脂の1種以上とを含有して構成されていてもよい。ポリアセタール繊維におけるオキシメチレン重合体の含有量は、繊維重量に対して、好ましくは30〜100重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
前記繊維層には、ポリアセタール繊維として、オキシメチレン重合体のみから構成されているポリアセタール繊維のみが含まれていてもよく、あるいはオキシメチレン重合体と他の樹脂とを含有しているポリアセタール繊維のみが含まれていてもよく、あるいはこれら両繊維が含まれていてもよい。
【0019】
オキシメチレン重合体と併用される前記他の樹脂としては、例えば、ゴム、又はポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、熱可塑性エラストマー以外の樹脂、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
本発明で用いられるポリアセタール繊維が、上述したようにオキシメチレン重合体に加えて他の樹脂を含有する場合、該ポリアセタール繊維の繊維形態(樹脂の含有形態)としては、オキシメチレン重合体と他の樹脂とのブレンドポリマーからなる単一繊維、あるいは、オキシメチレン重合体と他の樹脂とが混ざり合わずに含有されている複合繊維の形態が挙げられる。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる繊維で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維には、並列型複合繊維、芯鞘型複合繊維などがある。
前記繊維層においては、オキシメチレン重合体と他の樹脂とを含有しているポリアセタール繊維として、前記単一繊維のみが含まれていてもよく、あるいは前記複合繊維のみが含まれていてもよく、あるいはこれら両繊維が含まれていてもよい。
【0021】
本発明においては、ポリアセタール繊維として、前記複合繊維の形態をとるポリアセタール繊維(以下、複合型ポリアセタール繊維ともいう)を用いることが、不織布形成のし易さ、不織布の嵩高性、及び熱シールに対する耐熱性の点で好ましい。本発明で用いられる複合型ポリアセタール繊維の繊維形態としては、並列型(サイド・バイ・サイド型)、鞘芯型(シース・コア型)等が挙げられる。鞘芯型には、同心円型、偏芯型が含まれる。これらの複合繊維は、公知の紡糸方法により製造することができる。本発明においては、特に、鞘芯型の複合型ポリアセタール繊維が、上記した効果を確実に奏させる点で好ましい。
【0022】
複合型ポリアセタール繊維において、オキシメチレン重合体と併用される他の樹脂としては、オキシメチレン重合体より融点の高い熱可塑性樹脂(高融点熱可塑性樹脂)が好ましく用いられる。即ち、オキシメチレン重合体と高融点熱可塑性樹脂との複合型繊維ポリアセタール繊維は、主としてオキシメチレン重合体の作用により高強度を有し、且つ主として高融点熱可塑性樹脂の作用により耐熱性に優れているため、該複合型ポリアセタール繊維を用いた不織布は、熱シール融着、高温シールに対して安定である。また、一般的に、高融点熱可塑性樹脂は、樹脂の強度やヤング率なども高い特性を持つため、高融点熱可塑性樹脂を含有する複合型ポリアセタール繊維を用いた場合、高融点熱可塑性樹脂の斯かる特性とオキシメチレン重合体の強度・弾性との相乗効果により、嵩高でクッション性に優れ、構成繊維の繊維間空隙が大きく液透過性に優れた不織布が得られる。また、高融点熱可塑性樹脂を含む複合型ポリアセタール繊維を用いることにより、特殊な樹脂や製造法を利用しなくても、このような優れた特性を有する不織布が得られるという利点もある。
【0023】
オキシメチレン重合体と高融点熱可塑性樹脂との複合型繊維ポリアセタール繊維において、オキシメチレン重合体と高融点熱可塑性樹脂との融点の差は、好ましくは30℃以上、更に好ましくは60〜110℃である。オキシメチレン重合体の融点は通常、160〜180℃である。このような高融点熱可塑性樹脂としては、例えばポリメチルペンテン、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、特にポリエステルが好ましい。ポリアセタール繊維における高融点熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜60重量%である。
【0024】
一方、本発明において複合型ポリアセタール繊維を用いる場合、オキシメチレン重合体と併用される他の樹脂としては、オキシメチレン重合体より融点の低い熱可塑性樹脂(低融点熱可塑性樹脂)を用いることもできる。オキシメチレン重合体と低融点熱可塑性樹脂との複合型ポリアセタール繊維は、前述のオキシメチレン重合体と高融点熱可塑性樹脂との複合型ポリアセタール繊維に比較し、耐熱性及び嵩高性に劣るものの、不織布形成において低温加工が可能で、製造のし易さ、不織布の嵩高性の点で好ましい。オキシメチレン重合体と低融点熱可塑性樹脂との融点の差は、好ましくは20℃以上、更に好ましくは30〜60℃である。このような低融点熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、ポリプロピレンとエチレン等との共重合体等が挙げられ、特にポリエチレンが低温加工性と強度の点で好ましい。
【0025】
オキシメチレン重合体と高融点熱可塑性樹脂との複合型ポリアセタール繊維が、鞘芯型(偏芯型)の複合繊維である場合、オキシメチレン重合体が鞘、高融点熱可塑性樹脂が芯であることが好ましい。鞘芯型の複合繊維を構成する高融点熱可塑性樹脂としては、上述したものの中から不織布の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、強度や弾性、汎用性、耐熱性の観点から、ポリエステルが特に好ましい。
また、オキシメチレン重合体と低融点熱可塑性樹脂との複合型ポリアセタール繊維が、鞘芯型(偏芯型)の複合繊維である場合、オキシメチレン重合体が芯、低融点熱可塑性樹脂が鞘であることが好ましい。鞘芯型の複合繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂としては、上述したものの中から不織布の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、熱溶融特性(低温溶融)、加工性、汎用性、風合いの観点から、ポリエチレンが特に好ましい。
【0026】
本発明で用いられるポリアセタール繊維は、長繊維及び短繊維の何れの形態であってもよい。長繊維とは100mm以上の長さのものをいい、連続繊維も含むものである。短繊維とは、100mm未満の長さのものをいう。
また、本発明で用いられるポリアセタール繊維の平均繊度は、不織布の用途によって適宜選択され、特に制限はないが、風合い、肌触りの観点からは、好ましくは2dtex以下、更に好ましくは0.1〜1.7dtexである。特に、本発明の不織布が吸収性物品の表面材として用いられる場合には、ポリアセタール繊維の平均繊度が上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明で用いられるポリアセタール繊維には、オキシメチレン重合体等の樹脂成分以外に、必要に応じ、各種添加剤、例えば、染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは有機高分子材料、無機または有機の繊維状、板状、粉粒状の充填剤等の1種または2種以上を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0028】
これらの添加剤の中でも、特に滑剤は、ポリアセタール繊維の表面に低摩擦性を付与してこれを滑らかにし、その結果、肌への負担の少ない肌触りの良好な不織布が得られるため、本発明で好ましく用いられる。滑剤としては、例えば、流動パラフィンやポリエチレンワックス等の炭化水素系、ステアリン酸アミドやオレイン酸アミド等の脂肪酸系等が挙げられる。滑剤の含有量は、ポリアセタール繊維に含まれる樹脂成分の全重量に対して、好ましくは0.01〜1.5重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0029】
本発明で用いられるポリアセタール繊維は、公知の紡糸方法により製造することができる。例えば、溶融した樹脂をノズル孔より押し出し、この押し出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン法や、半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法によって製造することができる。また、溶融紡糸法の一種であるスピニングブローン法によってポリアセタール繊維を製造することもできる。
【0030】
本発明の不織布を構成する繊維層は、構成繊維として、上述したポリアセタール繊維のみを含んでいてもよく(構成繊維の全部がポリアセタール繊維)、又はポリアセタール繊維及び/若しくは他の繊維を含んでいてもよい(構成繊維の一部がポリアセタール繊維)。他の繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明に係る繊維層に含ませることのできる他の繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びナイロンからなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂からなる繊維;これらの樹脂と他の樹脂との共重合体からなる繊維等が挙げられ、2種以上の樹脂からなる場合は単一繊維でも複合繊維でも良い。繊維層が、ポリアセタール繊維と他の繊維とを含んで構成されている場合、両者の含有重量比は、(ポリアセタール繊維):(他の繊維)=20:80〜90:10であることが好ましい。また、繊維層が、他の繊維として、ポリアセタールの融点より低い融点を有する樹脂からなる繊維(低融点樹脂繊維)を含んでいる場合、ポリアセタール繊維と低融点樹脂繊維との含有重量比は、(ポリアセタール繊維):(低融点樹脂繊維)=30:70〜70:30であることが、低温熱シールの加工性の点で特に好ましい。また、繊維層が、他の繊維として、ポリアセタールの融点では溶融しない繊維を含んでいる場合、ポリアセタール繊維と該繊維との含有重量比が30:70〜70:30に調整されていることにより、耐熱性向上という利点が得られる。
【0032】
前記他の繊維の平均繊度は、不織布の加工性、肌触り、不織布の均一性の観点から、好ましくは12dtex未満、更に好ましくは1〜8dtexである。また、他の繊維は、長繊維及び短繊維の何れの形態であってもよい。
【0033】
本発明に係る繊維層の構成繊維(ポリアセタール繊維、他の繊維)は、親水性油剤で処理されていても良い。構成繊維を親水性油剤で処理すると、繊維層の液吸収速度が速くなる。特に、不織布(繊維層)が、吸収性物品の表面材として使用される場合に、あるいは吸収性物品における吸収体と表面材との間に配置されるセカンドシート(サブレイヤーシート)として使用される場合に、その繊維層の構成繊維が親水性油剤で処理されていることは、モレ防止の点で有効である。繊維層の構成繊維の中でも特に、ポリアセタール繊維が親水性油剤で処理されていると、液吸収速度及びモレ防止の点で効果的である。親水性油剤としては、例えば硫酸エステル塩基、C8〜C30のアルキルリン酸エステル塩基、スルホン酸塩基等を含むアニオン系活性剤、ベタイン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ソルビタンモノオレートやポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン、アルキロールアミド型化合物とポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとの配合物、ポリグリセリン脂肪酸エステル或いはこれとポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとの配合物、ポリエーテルポリエステルブロック共重合体或いはこれとポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとの配合物、炭素数28以上の炭化水素基を疎水基とする界面活性剤とポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとの配合物等を用いることができる。親水性油剤による繊維の処理は、例えば親水性油剤の入ったオイルバスに浸漬する方法や、親水性油剤のキスロールによる塗工、スプレーによる吹きつけなどで繊維を処理し、必要に応じマングルなどで絞ることによって行なうことができる。
【0034】
また、本発明に係る繊維層の構成繊維(ポリアセタール繊維、他の繊維)は、捲縮を有する捲縮繊維であっても良い。捲縮繊維を用いることにより、不織布の空隙が増加する、荷重に対するクッション性が向上し、潰れ難くなり、風合いが良くなるという効果が得られる。特に、ポリアセタール繊維が捲縮繊維であると効果的である。繊維層に含まれる捲縮繊維の割合は、該繊維層の全構成繊維に対して、好ましくは30〜100重量%、更に好ましくは50〜100重量%である。
【0035】
本発明においては、捲縮繊維として、二次元的な捲縮を有する機械捲縮繊維、三次元的な捲縮を有する立体捲縮繊維、あるいは、熱の付与によってコイル状に三次元的に捲縮する繊維(潜在捲縮繊維)等を用いることができる。一般に、機械捲縮繊維及び立体捲縮繊維それぞれにおける捲縮の大きさは、潜在捲縮繊維が熱の付与により捲縮を有するようになったときの該捲縮の大きさに比較して大きい。従って、より嵩高な不織布を得やすくする観点からは、捲縮繊維として、潜在捲縮繊維ではなく、機械捲縮繊維や立体捲縮繊維を用いることが好ましい。
【0036】
特に、ポリアセタール繊維として、並列型又は偏芯型の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維)で且つ三次元的な顕在捲縮を発現しているものは、より大きな繊維占有体積を作れるので不織布の空隙、クッション性の点で好ましい。ここで、「三次元的な顕在捲縮を発現している複合型ポリアセタール繊維」は、当初から三次元的な捲縮を有している前記立体捲縮繊維であってもよく、熱の付与によって初めて三次元的に捲縮する前記潜在捲縮繊維であってもよいが、より大きな三次元的顕在捲縮を発現させる観点から、前記立体捲縮繊維であることが好ましい。
こうした立体捲縮は、繊維の構成する複合形状による発現のほか、樹脂の物理特性、熱特性などによって発現する。特にオキシメチレン重合体は伸長回復性が高いという樹脂特性を持っているため、他の樹脂と複合繊維を形成したときに、緊張処理をすることにより三次元の捲縮を発現させ易く、前記樹脂特性との相乗効果で、繊維の回復性や弾性が高く、不織布の空隙形成、荷重を受けた時のクッション特性、回復性などに顕著な効果を発揮する。
【0037】
本発明の不織布は、公知の不織布製造法を利用して前記繊維層を製造することにより得られる。
本発明に係る繊維層は、(A)構成繊維どうしが融着されている形態でもよく、又は(B)構成繊維どうしが絡合されている形態でもよい。不織布の用途に応じて(A)又は(B)の何れかの形態を選択すればよい。(A)の形態の繊維層は、構成繊維どうしの交点が熱の付与によって融着することで繊維層の形態を保っている。(B)の形態の繊維層は、構成繊維どうしの絡み合いによって繊維層の形態を保っており、繊維どうしの交点は融着されていない。
【0038】
前記(A)の形態の繊維層は、その製造工程において、該繊維層の前駆体(繊維層になる前の物体)である繊維ウエブを加熱し、該繊維ウエブの構成繊維どうしを融着させることにより形成される。前記(A)の形態の繊維層とする場合、構成繊維としては、オキシメチレン重合体が芯、前記低融点熱可塑性樹脂(好ましくはポリエチレン)が鞘である鞘芯型複合繊維の形態をとるポリアセタール繊維を用いることが、不織布形成において低温加工が可能で、製造のし易さ、不織布の嵩高性の点で好ましい。繊維ウエブは、紡糸ノズルから直接紡糸された繊維をイジェクタ等で延伸しコンベアベルト上に堆積させるスパンボンド方法や紡糸、延伸したステープル繊維をカード機を用いてウエブ形成するカード法、紡糸、延伸した繊維をショートカットして、エアーの力でスクリーンから繊維を通過させ集積するエアレイド法などによって形成することができる。繊維ウエブを加熱する手段としては、熱風を通過させる方法(エアスルー法)、スチーム加熱する方法、ヒートロール間を通す方法、遠赤外線等の幅射熱による方法等が挙げられる。特に、エアスルー法は、嵩高で繊維間空隙が大きい繊維層(不織布)の製造に適している。また、ポリアセタール繊維の主成分であるオキシメチレン重合体は、融点が比較的高いため、スチーム加熱による短時間加熱処理は、本発明で好ましく用いられる。前記(A)の形態の繊維層(不織布)は、なかでも、エアスルー法によって繊維ウエブの加熱が行われた繊維層は、嵩高で、高空隙構造でかつ高反発性(クッション性)であるため、吸収性物品の構成部材としてそのような特性が要望される用途、例えば、表面材や拡散シート(サブレイヤーシート)、クッション材、ファスナー材等に特に好適である。
【0039】
前記(B)の形態の繊維層は、その製造工程において、該繊維層の前駆体である繊維ウエブの構成繊維の繊維間を絡合させることにより形成される。前記(B)の形態の繊維層とする場合、構成繊維としては、オキシメチレン重合体の単一構成からなる繊維を用いることが、低摩擦特性、風合い肌触りの点で好ましく、とりわけ、オキシメチレン重合体及び前記低融点熱可塑性樹脂(好ましくはポリエチレン)から構成される分割型複合繊維の形態をとるポリアセタール繊維を用いることが、不織布の強度の増加、低摩擦特性、風合い・肌触り向上、低温シール加工の点で好ましい。繊維ウエブは前記(A)と同様にして形成することができる。繊維ウエブの絡合手段としては、公知のウォーターニードリンク法(水流交絡法)が挙げられる。前記(B)の形態の繊維層(不織布)は、特に柔軟性、柔らかさに富んでおり、吸収性物品の構成部材としてそのような特性が要望される用途、例えば、表面材や外装材、個装材等に特に好適である。
【0040】
本発明の不織布を構成する繊維層の坪量は、好ましくは25g/m2以下、更に好ましくは10〜18g/m2である。本発明の不織布が2層以上の繊維層の積層体からなる場合は、各繊維層の坪量が前記範囲にあることが好ましい。
特に、本発明においては、繊維層を構成するポリアセタール繊維の平均繊度が上述したように2dtex以下であり、且つ繊維層の坪量が25g/m2以下あることが好ましい。これらの条件を満たすことにより、不織布が嵩高となり、繊維間空隙が大きくなるため、より良好な液透過性及び風合いが得られるようになり、特に吸収性物品の表面材として好適なものとなる。
【0041】
本発明に係る繊維層の厚みに関しては、好ましくは0.3〜4mm、更に好ましくは0.5〜3mmである。本発明の不織布が2層以上の繊維層の積層体からなる場合は、各繊維層の厚みが前記範囲にあることが好ましい。厚みの測定は、繊維層を20±2℃、65±2%RHの環境下に無荷重にて2日以上放置した後、次の方法1又は方法2の何れかによって求める。
方法1:繊維層(測定サンプル)を0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟む。その状態下に、繊維層断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求める。3視野の厚みの平均値を、繊維層の厚みとする。
方法2:定盤上にレーザー式変位計のセンサーを垂直方向に変位測定ができるよう固定する。次に、変形し難く白色で平滑な板状の材料を準備し、測定圧が0.5cN/cm2の荷重になるようなサイズに切り、測定荷重板とする。定盤上に測定荷重版を置いて、該荷重板に変位センサーのレーザースポットを当てた時、0になるように変位センサーを校正しセットする。レーザーのスポットが当たる部分付近で繊維層(測定サンプル)を定盤の上に置き、次にレーザースポットが当たっている繊維層上に測定荷重板をそっと載せ、変位量を読み取る。これを3回繰り返し、平均値を繊維層の厚みとする。
【0042】
本発明の不織布は、1層の繊維層のみからなる単層構造でもよく、2層以上の繊維層の積層体からなる多層構造でもよい。後者の場合、同一組成・物性の繊維層の積層体でもよく、組成・物性の異なる2種類以上の繊維層の積層体でもよい。これらの形態は、不織布の用途に応じて適宜選択される。
【0043】
本発明の不織布が2層以上の繊維層の積層体からなる場合の好ましい形態としては、例えば次のようなものが挙げられる。
即ち、繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、この繊維層が、前記ポリアセタール繊維を主体とする第1層と、該第1層上に積層され且つ該第1層と部分的に接合され且つ該ポリアセタール繊維より伸長回復率の低い繊維を主体とする第2層とを有し、該第2層の表面(第1層との対向面とは反対側の面)に凹凸形状が形成されている不織布(凹凸不織布)である。この凹凸不織布は、肌当接面として機能する第2層の表面に、凹凸形状が形成されていることにより、該表面の肌等への接触面積が低く、また凹凸による優れたクッション性を有しているため、肌に優しく、吸収性物品の表面材として好適である。また、凹凸不織布は、液残りや液戻りの低減効果にも優れており、肌荒れを防止して肌をさらさらに保つことができる。
【0044】
前記第1層におけるポリアセタール繊維の含有量は、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは100重量%である。
前記第2層に用いられる、ポリアセタール繊維より伸長回復率の低い繊維(低伸長回復率繊維)としては、その20%伸長時の伸長回復率が70%以下である繊維が好ましく用いられる。ポリアセタール繊維の20%伸長時の伸長回復率は通常、70〜85%である。低伸長回復率繊維としては、具体的には、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系樹脂からなる繊維やこれらの共重合体繊維、これらの樹脂の組み合わせからなる複合繊維等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。第2層における低伸長回復率繊維の含有量は、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは100重量%である。
【0045】
前記第1層の坪量は、伸長回復性発現の観点から、好ましくは5〜50g/m2、更に好ましくは7〜25g/m2である。
前記第2層の坪量は、肌触り、クッション性、液戻りの観点から、好ましくは5〜40g/m2、更に好ましくは7〜25g/m2である。
【0046】
前記凹凸不織布は、前記ポリアセタール繊維を主体とする第1層前駆体と該ポリアセタール繊維より伸長回復率の低い繊維を主体とする第2層前駆体とが積層され且つこれら前駆体の間が部分的に接合されてなる積層シートに、引張荷重を付与して該積層シートをその平面方向に伸長させた後、該引張荷重を除去することにより得られる。即ち、上述した第2層の表面の凹凸形状は、第1層前駆体と第2層前駆体との伸長回復率の差(第1層の方が伸長回復率が高い)を利用して形成されている。前記積層シートに引張荷重を付与して該積層シートをその平面方向に伸長させた後、該引張荷重を除去すると、伸長回復率が相対的に高い第1層前駆体は、しわや凹凸がほとんど発生せず伸長前と略同様の状態に回復するが、伸長回復率が相対的に低い第2層前駆体は、伸長によって生じた歪みが完全には除去されず、その表面に凹凸形状が形成されるのである。
【0047】
前記第1層前駆体及び第2層前駆体は、それぞれ、上述した前記(A)又は(B)の繊維層の製造法と同様の方法で製造することができる。
第1層前駆体と第2層前駆体とを部分的に接合して前記積層シートとする手段としては、例えば熱エンボス、超音波エンボス、接着剤による接着などの各種接合手段を用いることができる。また、積層シートにおける接合部の形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、菱形、ハート形又はこれらの組み合わせ、あるいは連続した形状、例えば直線や曲線などの線状、格子状等にすることができる。また、積層シートに付与する引張荷重は、該積層シートを平面方向に20%伸長させるように調整される。
【0048】
本発明の不織布は、吸収性物品の構成部材として好適であり、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面材(表面シート)、該吸収性物品における吸収体と表面材との間に配置されるセカンドシート(サブレイヤーシート)、吸収体の非肌当接面側を覆う外装材などとして好適に用いられる。本発明の不織布は、前述した(イ)〜(ヘ)の特長を有するポリアセタール繊維を含んで構成されているため、例えば吸収性物品の表面材として用いた場合には、肌触りが良好で柔らかく、嵩高で、しわやよれが生じにくく、液の透過性に優れ、液残りや液戻りを効果的に低減させることができる。また、吸収性物品の外装材として用いた場合には、肌触り、強度、対磨耗性、熱シール性等の点で良好な結果が得られる。
【0049】
本発明の不織布は、少なくとも下記(1)〜(9)の何れか1つを備えていることが好ましい。下記(1)〜(9)の組み合わせに制限は無い。尚、下記(1)〜(9)の詳細については、それぞれ前述した通りである。
(1)繊維層の構成繊維(ポリアセタール繊維、他の繊維)が親水性油剤で処理されている。
(2)繊維層の構成繊維(ポリアセタール繊維、他の繊維)が捲縮繊維である。
(3)繊維層の構成繊維どうしが融着されている(前記(A)の形態の繊維層を有している)。
(4)繊維層にヒートエンボス処理等の公知のエンボス処理が施されている。
(5)繊維層の構成繊維どうしが交絡されている(前記(B)の形態の繊維層を有している)。
(6)繊維層に含まれているポリアセタール繊維が、オキシメチレン重合体と該オキシメチレン重合体以外の他の樹脂との並列型又は鞘芯型(偏芯型)の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維)で且つ三次元的な顕在捲縮を発現している。
(7)繊維層に含まれているポリアセタール繊維が、オキシメチレン重合体と該重合体より融点の高い熱可塑性樹脂(高融点熱可塑性樹脂)とから構成されている。
(8)繊維層の構成繊維(ポリアセタール繊維、他の繊維)に滑剤が添加されている。
(9)繊維層を構成する繊維の平均繊度が2dtex以下であり、坪量が25g/m2以下である。
【0050】
特に、本発明の不織布を吸収性物品の表面材として用いる場合、表面材としての該不織布は、少なくとも前記(1)〜(4)の何れか1つを備えていることが好ましく、前記(1)〜(4)の全てを備えていることが更に好ましい。
【0051】
また、本発明の不織布を吸収性物品のセカンドシートとして用いる場合、セカンドシートとしての該不織布は、少なくとも前記(1)、(6)、(7)の何れか1つを備えていることが好ましい。セカンドシートとしての本発明の不織布において、特に好ましい組み合わせとしては、例えば、前記(1)、(3)、(6)の組み合わせ;前記(1)、(2)、(3)、(6)、(7)の組み合わせ;前記(1)、(2)、(4)、(6)の組み合わせが挙げられる。
セカンドシートは、上述したように、吸収性物品において吸収体と表面材との間に配置されるシートであり、吸収体へ液を効率的に移動させると共に、吸収体に一旦吸収された液が表面材側に戻る、いわゆる液戻りを防止する役割を担うものである。前記の組み合わせを備えた本発明の不織布は、斯かる役割を充分に担うことができる。
【0052】
また、本発明の不織布を吸収性物品の外装材として用いる場合、外装材としての該不織布は、少なくとも前記(3)、(4)、(5)、(8)、(9)の何れか1つを備えていることが好ましい。外装材としての本発明の不織布において、特に好ましい組み合わせとしては、例えば、前記(3)、(8)、(9)の組み合わせ;前記(4)、(8)、(9)の組み合わせが挙げられる。
外装材は、吸収性物品において裏面材等と共に吸収体の非肌当接面側を覆うシート材であり、外装材には、通気性があること、触ったときの感触が良いこと、耐摩耗性に優れること、ヒートシールが可能であること等が求められる。一方、オキシメチレン重合体はつるつるした滑らかな感触を有し、摩耗にも強い特性があるため、該オキシメチレン重合体を用いる本発明の不織布は、外装材としての要求特性を満たし得るものであり、中でも、前記の組み合わせを備えた本発明の不織布は外装材として好適である。
【0053】
表面材として好適な本発明の不織布としては、例えば下記不織布A、B、Cがある。
【0054】
不織布A:親水性油剤で処理され且つ三次元的な捲縮(立体捲縮)を有するオキシメチレン重合体(オキシメチレン共重合体も含む。以下同じ)のみからなるポリアセタール繊維(繊度2dtex、繊維長51mm)のみを用いて、カード法にて繊維ウエブを形成し、該繊維ウエブにエンボス率20%のヒートエンボス処理を施してなる、坪量25g/m2の不織布。
【0055】
不織布B:親水性油剤で処理され且つ三次元的な捲縮(立体捲縮)を有する、オキシメチレン重合体とPET(他の樹脂)との並列型の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維、繊度2dtex、繊維長51mm)のみからなる第1層(坪量15g/m2)と、親水性油剤で処理され且つ二次元的な捲縮(機械捲縮)を有する、オキシメチレン重合体とPET(他の樹脂)との鞘芯型の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維、繊度1.9dtex、繊維長51mm)のみからなる第2層(坪量10g/m2)とを重ね合わせ、熱風にて該第1層と該第2層とを融着してなる、坪量25g/m2の2層型のエアスルー不織布。第1層における親水性油剤は、第2層における親水性油剤よりも親水性が低いものが好ましい。
【0056】
不織布C:親水性油剤で処理され且つ二次元的な捲縮(機械捲縮)を有する、オキシメチレン重合体のみからなるポリアセタール繊維(繊度1.5dtex、繊維長51mm)のみで構成された第1のカードウエブ層に、親水性油剤で処理されたPP/PE複合繊維(並列型の複合繊維、繊度1.5dtex、繊維長51mm)のみで構成された第2のカードウエブ層を重ねて積層体とし、該積層体に、1ドット面積が1.5mm2のエンボス率16%でヒートエンボス処理を施して、坪量27g/m2の予備不織布を得、該予備不織布を一対の刃溝型の雄雌ロール間に通し、該予備不織布を破壊しない程度にシェア加工を行ってなる不織布。この不織布Cは、前記凹凸不織布の一例であり、第2のカードウエブ層の表面に、凹凸形状(微小な凸状の盛り上がり)が形成されている。
【0057】
不織布Aは、構成繊維(ポリアセタール繊維)の弾性が高いため嵩高く、また、構成繊維がポリオレフィンと同等かそれ以上の低摩擦のため、滑らかで肌に優しい。また、オキシメチレン重合体が親水性油剤との相溶性が良いため、不織布Aを吸収性物品の表面材として用いた場合には、繰り返し吸収性の高い表面材となり、液漏れを起し難い。
【0058】
不織布Bは、構成繊維の弾性が高いため嵩高く、オキシメチレン重合体がオレフィンと同等以上の低摩擦のため、滑らかで肌に優しい。不織布Bを吸収性物品の表面材とした場合、繊維間の空隙が大きいので、吸収時間が短く、また、オキシメチレン重合体が親水性油剤との相溶性が良く、親水性油剤の親水性レベルを制御し易いので、第1層と第2層との間での親水勾配を作り易く、これにより、繰り返し吸収性が高い、液残りや液戻りの抑制効果に優れ肌をさらさらに保つ、などの効果を生む。
【0059】
不織布Cは、第2のカードウエブ層が肌当接面側となるように表面材として用いられると、第2のカードウエブ層が非常に柔らかい触感で、しかも凸構造が通気性を高めるので、肌の蒸れを抑制する。また、不織布Cに、第2のカードウエブ層に用いられているPEの融点以上で且つ第1のカードウエブ層に用いられているオキシメチレン重合体の融点未満の温度(例えば132℃)で、エアスルードライヤーによって熱融着処理を施した場合には、表面の毛羽立ちが抑えられ、凸構造の保形性が一層強化されるため、よりクッション性を高めることができ、これにより、液戻りをさらに抑制できる。
【0060】
セカンドシートとして好適な本発明の不織布としては、例えば下記不織布Dがある。
【0061】
不織布D:三次元的な捲縮(立体捲縮)を有する、オキシメチレン重合体とPE(他の樹脂)との並列型の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維、繊度4dtex、繊維長51mm)のみを用いて、カード法にて繊維ウエブを形成し、該繊維ウエブにドライヤーで熱処理を施してなるエアスルー不織布。
【0062】
不織布Dは、嵩高いので、吸収性物品のセカンドシートとした場合、軟便や高粘性の経血・おりものなどの吸収性に優れる。また、構成繊維の弾性が高いため、クッション性が高く、セカンドシートに用いるとヨレや折れの防止に有効である。特に、他の樹脂として、例えばシングルサイト触媒を用いた密度0.9以下の低密度ポリエチレンの如きエラストマー樹脂を用いたものは、ヨレや折れの防止効果が更に高い。
【0063】
外装材として好適な本発明の不織布としては、例えば下記不織布E、F、Gがある。
【0064】
不織布E:オキシメチレン重合体のみからなるポリアセタール繊維(繊度1.5dtex)を溶融紡糸し、直接コンベアベルト上に堆積させて(即ち、スパンボンド法によって)繊維ウエブを形成し、該繊維ウエブにエンボス率20%のヒートエンボス処理を施してなる、坪量15g/m2の不織布。尚、不織布Eにおいては、構成繊維(ポリアセタール繊維)は油剤で処理されていない。
【0065】
不織布F:二次元的な捲縮(機械捲縮)を有する、オキシメチレン重合体のみからなるポリアセタール繊維(繊度1.5dtex、繊維長51mm)のみで構成されたカードウエブ層に、水流交絡処理を施し、乾燥させてなる、坪量35g/m2のスパンレース不織布。
【0066】
不織布G:オキシメチレン重合体とPE(他の樹脂)との並列型の複合繊維(複合型ポリアセタール繊維、繊度2dtex、繊維長51mm)のみで構成されたカードウエブ層に、1ドット面積が1.5mm2のエンボス率20%でヒートエンボス処理を施して、坪量18g/m2の予備不織布を得、該予備不織布を一対の刃溝型の雄雌ロール間に通し、該予備不織布を破壊しない程度にシェア加工を行ってなる不織布。この不織布Gにおいては、シェア加工により、複合繊維を構成する各樹脂(オキシメチレン重合体、PE)間に剥離が生じている。
【0067】
不織布Eは、滑らかで肌触りがよく、繊維強度由来の不織布強度が高く、破れにくい。また、オキシメチレン重合体は比重が大きいので、PPを用いたスパンボンド不織布に較べ、不織布Eは、同じ繊度でも実質繊維径が小さいため、不織布の細口径が大きくなり、このため通気性にも優れる。
【0068】
不織布Fは、滑らかでドレープ性が非常に高い。また、構成繊維が高弾性の反面、表面摩擦が低いため、通常では嵩が出ないスパンレース不織布に較べ、繊維の交絡が進みすぎず、嵩高な特徴を有し、ふっくら感があり肌触りがよい。
【0069】
不織布Gは、構成繊維が少なくとも一部剥離し、極細化しているため、非常に風合いの良い感触を与える。
【0070】
次に、本発明の吸収性物品の表面材を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の実施例にかかわる表面材を具備した吸収性物品(生理用ナプキン)の肌当接面側を一部を切欠して示した斜視図が示されている。
本実施例の吸収性物品の表面材1は、体液を吸収する吸収体2を覆うナプキン10の表面材であって、上述した本発明の不織布からなるものである。
【0071】
ナプキン10は、液透過性の表面材1と、液保持性の吸収体2と、液不透過性ないし撥水性の裏面材3とを備えた縦長形状をしている。表面材1の外面はナプキン10の装着時に肌に当接する肌当接面となっている。吸収体2は、フラッフパルプ及び高吸収性ポリマーを含む積繊体をティッシュペーパー等の吸収紙で包んでなる構造を有しているが、これに限られない。裏面材3の外面は、ナプキン10が衣類に当接する衣類当接面(非肌当接面)となっている。裏面材3の外面には、ナプキン10を下着へ固定するための粘着剤層(図示省略)が設けられている。該粘着剤層は、例えば長方形形状に形成され且つその長手方向をナプキン10の長手方向に一致させて、裏面材3の外面に配されており、ナプキン10の使用前においては、該粘着剤層を保護するための剥離シート(図示省略)で被覆されているか、又は剥離処理された包装シート(図示省略)で被覆されている。このようなナプキン10の構成自体は、従来公知のものと同様である。吸収体2、裏面シート3、粘着剤層としては、当該技術分野において通常用いられるものと同様のものを用いることができる。吸収体32は、液保持性を有していれば、この種の物品に通常用いられている材料を特に制限なく用いることができる。
【0072】
本実施例のナプキン10によれば、表面材1が上述した本発明の不織布から形成されているため、肌触りが良好で柔らかく、しわやよれが生じにくく、液の透過性に優れ、液残りや液戻りを生じさせない。
【0073】
次に、本発明の吸収性物品の外装材を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図2には、本発明の実施例にかかわる外装材を具備した吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)の展開状態における肌当接面側(表面シート側)を示す平面図が示されている。
本実施例の吸収性物品の外装材23は、体液を吸収する吸収体25を具備する吸収性本体26の非肌当接面側を覆うパンツ型おむつ20の外装材であって、上述した本発明の不織布からなるものである。
【0074】
おむつ20は、基材シート21に弾性部材22a,22b,22cが伸長状態で配設された外装材23と、外装材23の内側(肌当接面側)に取り付けられた、液透過性の表面シート24、液不透過性の裏面シート(図示せず)、及びこれらのシートの間に介在する液保持性の吸収体25からなる縦長の吸収性本体26とによって構成されるものである。そして、おむつ20は、吸収性本体26と共に外装材23を、腹側部Aと背側部Bとを重ね合わせるように二つ折りにすると共に、サイドシール部27をシールすることによってパンツ型に形成されることになる。このようなおむつ20の構成自体は、従来公知のものと同様である。弾性部材22a,22b,22c、表面シート24、吸収体25としては、当該技術分野において通常用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0075】
外装材23を構成する基材シート21は、上述した本発明の不織布から形成されている。外装材23は、身体からの排出物等を漏出させることなく強固に保持するための構成部材である。
本実施例のおむつ20によれば、外装材23(基材シート21)が上述した本発明の不織布から形成されているため、滑らかで、肌触りがよい。また、不織布の強度も高いので破れにくい。
【0076】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の表面材の適用例の一つとして生理用ナプキンを挙げたが、本発明の表面材は他の吸収性物品にも同様に適用できる。例えば使い捨ておむつ、パンティライナ、失禁ライナ、失禁パッド等にも本発明の表面材を適用できる。
また、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の外装材の適用例の一つとしてパンツ型の使い捨ておむつを挙げたが、本発明の外装材は、外装材を有する他の吸収性物品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例にかかわる表面材を具備した吸収性物品(生理用ナプキン)の肌当接面側を一部を切欠して示した斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかわる外装材を具備した吸収性物品(パンツ型使い捨ておむつ)の展開状態における肌当接面側(表面シート側)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 表面材(不織布)
2 吸収体
3 裏面材
10 生理用ナプキン
20 パンツ型使い捨ておむつ
21 基材シート(不織布)
22a,22b,22c 弾性部材
23 外装材
24 表面シート
25 吸収体
26 吸収性本体
27 サイドシール部27
A 腹側部
B 背側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、前記繊維層の構成繊維の一部又は全部が、オキシメチレン構造単位を有する重合体を含むポリアセタール繊維である不織布。
【請求項2】
前記重合体が、前記オキシメチレン構造単位と該オキシメチレン構造単位に共重合可能な成分からなる構造単位との共重合体である請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記繊維層に含まれている前記ポリアセタール繊維の一部又は全部が、前記重合体と該重合体以外の他の樹脂との複合繊維である請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
前記複合繊維が、並列型又は偏芯型の複合繊維で且つ三次元的な顕在捲縮を発現している請求項3記載の不織布。
【請求項5】
前記他の樹脂が、前記重合体より融点の高い熱可塑性樹脂である請求項3又は4記載の不織布。
【請求項6】
前記他の樹脂が、前記重合体より融点の低い熱可塑性樹脂である請求項3又は4記載の不織布。
【請求項7】
前記ポリアセタール繊維の平均繊度が2dtex以下であり、前記繊維層の坪量が25g/m2以下である請求項1〜6の何れかに記載の不織布。
【請求項8】
前記繊維層が、該繊維層の前駆体である繊維ウエブを加熱し、該繊維ウエブの構成繊維どうしを融着させることにより形成されたものである請求項1〜7の何れに記載の不織布。
【請求項9】
前記繊維層が、該繊維層の前駆体である繊維ウエブの構成繊維どうしを絡合させることにより形成されたものである請求項1〜7の何れに記載の不織布。
【請求項10】
繊維層からなる吸収性物品用の不織布であって、前記繊維層が、オキシメチレン構造単位を有する重合体を含むポリアセタール繊維を主体とする第1層と、該第1層上に積層され且つ該第1層と部分的に接合され且つ該ポリアセタール繊維より伸長回復率の低い繊維を主体とする第2層とを有し、該第2層の表面に凹凸形状が形成されている不織布。
【請求項11】
体液を吸収する吸収体を覆う吸収性物品の表面材であって、請求項1〜10の何れかに記載の不織布からなる吸収性物品の表面材。
【請求項12】
体液を吸収する吸収体を具備する吸収性本体の非肌当接面側を覆う吸収性物品の外装材であって、請求項1〜10の何れかに記載の不織布からなる吸収性物品の外装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−1930(P2009−1930A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163107(P2007−163107)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】