説明

吸引回収装置

【課題】貯溜タンク内の貯溜物の液分や固形分が気体中に混入して負圧発生装置に吸引される逆流現象を防止する。
【解決手段】吸引回収装置は、吸引した汚泥等の対象物を貯留する貯留タンク1と、貯留タンク1内に一端部が挿入された吸入管2と、貯留タンク1の上部に設けられた連通弁部3と、連通弁部3に吸引管4を介して接続される真空ポンプ5とを備えている。連通弁部3は、気体の旋回流を発生させる環状空間10を有する旋回流発生部11と、旋回流発生部11から下方に延びた遠心分離部12と、旋回流発生部11に気体を導入する気体導入部13と、旋回流発生部11の内径側に形成される排気空間部14と、排気空間部14と貯留タンク1の内部空間との間の連通を遮断可能な弁体15と、排気空間部14内に一端が挿入され、他端が吸引管4に接続される気体排出部16とを備えている。気体導入部13の気体導入口13aと遠心分離部12の下端開口部12aは、ともに貯留タンク1の内部に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水、汚泥、沈砂、土砂、スラッジ、スケール、廃液、ダスト、粉塵等の産業廃棄物やその他の流動性のある対象物を吸引して貯留タンク内に回収する吸引回収装置に関する。この種の吸引回収装置の多くは車両に搭載されており、吸引回収装置を搭載した車両は一般に吸引車と呼ばれている。
【背景技術】
【0002】
この種の吸引回収装置は、貯留タンクと、貯留タンク内に一端部が挿入された吸入管と、貯留タンク内に負圧を発生させる負圧発生装置とを主体として構成される(下記の特許文献1〜3)。貯留タンクの上部にはフロートを備えた連通弁部が設けられており、この連通弁部は吸引管を介して負圧発生装置に接続される。図5〜図7は、このような連通弁部30を備えた従来の貯留タンク31を示している。
【0003】
図5に示すように、吸入管32の一端部は貯留タンク31の側方下方部分から斜め上方に向けて貯留タンク31内に挿入されている。連通弁部30は、貯留タンク31の外部に位置する排気空間部33、排気空間部33内に一端が挿入され、他端が吸引管34に接続される気体排出部35と、排気空間部33と貯留タンク31の内部空間との間の連通を遮断可能な弁体36とを備え、弁体36は、排気空間部33の下端部に設けられた弁座部36aと、弁座部36aの弁孔36bを閉塞可能なフロート36cと、フロート36cを上下動自在に支持する支持体36dとで構成される。支持体36dは複数の支持棒で構成されており、通気は妨げない。また、支持体36dの下部に、フロート36cの落下を防止する落下防止部36eが設けられている。
【0004】
負圧発生装置37が作動すると、吸引管34及び連通弁部30を介して貯留タンク31内の気体(空気)が吸引され、貯留タンク31内に負圧が発生する。そして、吸入管32に接続された吸入コック(図示省略)を開くと、貯溜タンク31内から吸入管32に作用する負圧によって対象物が吸引され、吸入管32の一端部から貯溜タンク31内に噴出する。貯溜タンク31内に噴出した対象物は吸入管32の傾斜方向上方に設置されたバッフルプレート38に衝突して流速が低下し、比重の大きい気体中の液分や固形分は落下して貯溜タンク31内に溜まる。このようにして液分や固形分が分離された気体は連通弁部30を通って排気空間部33に入り、排気空間部33から気体排出部35を介して吸引管34に排気される。連通弁部30のフロート36cは、貯留タンク31内の貯留物Gの界面(液面)Gaがフロート36cの下端位置まで上昇した後は、界面Gaの上昇に伴って上昇し、貯留物Gが満杯になると、弁座部36aに着座して弁孔36bを閉塞する。これにより、貯留タンク31内の貯溜物G中の液分や固形分が排気空間部33に流入することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−96509号公報
【特許文献2】特開昭58−95033号公報
【特許文献3】特開昭58−138841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6及び図7に示すように、貯留タンク31内の貯留物Gの容積が増え、その界面Gaが上昇すると、貯留物Gの界面Ga近傍の液分や固形分が、弁体36を通って排気空間部33に流入する気体の流れに巻き込まれ、気体と伴に吸引管34を介して負圧発生装置37に吸引されてしまうことがある(以下、このような現象を「逆流現象」という。)。この逆流現象は、貯溜物Gの界面Gaが上昇する程、起こりやすくなり、気体中に混入した液分や固形分が吸引管34を介して負圧発生装置37に吸引されると、負圧発生装置37の破損、耐久性低下や周囲環境汚染の原因になることがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、貯溜タンク内の貯溜物の液分や固形分が気体中に混入して負圧発生装置に吸引される逆流現象を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、吸引した対象物を貯留する貯留タンクと、貯留タンク内に一端部が挿入された吸入管と、貯留タンクの上部に設けられた連通弁部と、連通弁部に吸引管を介して接続される負圧発生装置とを備えた吸引回収装置において、連通弁部は、気体の旋回流を発生させる環状空間を有する旋回流発生部と、旋回流発生部から下方に延びた遠心分離部と、旋回流発生部に気体を導入する気体導入部と、旋回流発生部の内径側に形成される排気空間部と、排気空間部と貯留タンクの内部空間との間の連通を遮断可能な弁体と、排気空間部内に一端が挿入され、他端が吸引管に接続される気体排出部とを備え、気体導入部の気体導入口が貯留タンクの内部に位置し、貯留タンク内の気体が気体導入部を介して旋回流発生部に導入されると共に、遠心分離部の下端開口部が貯留タンクの内部に位置し、遠心分離部で気体から分離された分離物が下端開口部から貯溜タンクの内部に戻される構成を提供する。
【0009】
上記構成において、弁体は、排気空間部の下端部に設けられた弁座部と、弁座部の弁孔を閉塞可能なフロートと、フロートを上下動自在に支持する支持体とを備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貯溜タンク内の貯溜物の液分や固形分が気体中に混入して負圧発生装置に吸引される逆流現象を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る吸引回収装置を示す断面図である。
【図2】連通弁部を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)及び(c)は側面図である。
【図3】実施形態に係る吸引回収装置を示す断面図である。
【図4】実施形態に係る吸引回収装置を示す断面図である。
【図5】従来の吸引回収装置を示す断面図である。
【図6】従来の吸引回収装置を示す断面図である。
【図7】従来の吸引回収装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、この実施形態に係る吸引回収装置を示している。この実施形態の吸引回収装置は、図示されていない吸引車の車体に傾動可能に搭載され、吸引した汚泥等の対象物を貯留する貯留タンク1と、貯留タンク1内に一端部が挿入された吸入管2と、貯留タンク1の上部に設けられた連通弁部3と、連通弁部3に吸引管4を介して接続される負圧発生装置、例えば真空ポンプ5とを備えている。貯留タンク1は車体の後部に搭載され、貯溜タンク1と車体前方の運転席との間に真空ポンプ5の他、セパレータ、水切装置、バルブ及び計器類などの装置及び機器類が配設されている。
【0014】
吸入管2の一端部は貯留タンク1の側方下方部分から斜め上方に向けて貯留タンク内に挿入され、吸入管2の傾斜方向上方にバッフルプレート6が設置されている。
【0015】
図2に示すように、連通弁部3は、気体の旋回流を発生させる環状空間10を有する旋回流発生部11と、旋回流発生部11から下方に延びた遠心分離部12と、旋回流発生部11に気体を導入する気体導入部13と、旋回流発生部11の内径側に形成される排気空間部14と、排気空間部14と貯留タンク1の内部空間との間の連通を遮断可能な弁体15と、排気空間部14内に一端が挿入され、他端が吸引管4に接続される気体排出部16とを備えている。
【0016】
旋回流発生部11は、円筒状の外筒11aと内筒11bとの間に形成される環状空間10を有し、環状空間10に気体を接線方向に導入する気体導入部13が外筒11aに装着されている。外筒11aと内筒11bの上端部は閉塞板11cによって閉塞されている。また、内筒11bの下端には弁孔15bを有する弁座部15aが固定され、内筒11bの内部に排気空間部14が形成される。気体排出部16は、外筒11aと内筒11bを貫通した状態で装着されている。さらに、この実施形態では、環状空間10の一部に、流れ規制板10aを旋回流の流れ方向に下り勾配となるように設置している。図2(a)及び(b)に示すように、流れ規制板10aの始端は、気体導入部13から環状空間10に導入される気体の導入方向前方で、かつ、気体導入部13より上方の位置{図2(a)のX位置}、流れ規制板10aの終端は、気体排出部16の下方を通過した位置である{図2(b)のY位置}。気体導入部13から環状空間10に導入された気体は、流れ規制板10aの下面に沿って環状空間10内を流れ、気体排出部16の下方を通過しながら遠心分離部12に入る。これにより、環状空間10内に形成される気体の旋回流が気体排出部16によって妨げられることが防止される。
【0017】
遠心分離部12は、下方に向かって漸次縮径した円錐筒で構成され、外筒11aの下端部に固定され、あるいは、外筒11aと一体に形成される。
【0018】
弁体15は、遠心分離部12の内部に収容され、上記の弁座部15aと、樹脂、金属、又はゴム材で形成され、弁座部15aの弁孔15bを閉塞可能なフロート15cと、フロート15cを上下動自在に支持する支持体15dとで構成される。この実施形態において、支持体15cは複数(この実施形態では3本)の支持棒で構成されており、隣接する支持棒間は間隔が空いている。支持体15dの上端部は弁座部15aに固定され、支持体15dの下端部には、フロート15cの落下を防止する落下防止部15eが固定されている。
【0019】
図1に示すように、気体導入部13の気体導入口13aは貯留タンク1の内部に位置し、貯留タンク1内の気体が気体導入部13を介して旋回流発生部11に導入される。また、遠心分離部12の下端開口部12aも貯留タンク1の内部に位置し、遠心分離部12で気体から分離された液分又は固形分(分離物)は下端開口部12aから貯溜タンク1の内部に戻される。
【0020】
負圧発生装置5が作動すると、吸引管4及び連通弁部3を介して貯留タンク1内の気体(空気)が吸引され、貯留タンク1内に負圧が発生する。そして、吸入管2に接続された吸入コック(図示省略)を開くと、貯溜タンク1内から吸入管2に作用する負圧によって対象物が吸引され、吸入管2の一端部から貯溜タンク1内に噴出する。貯溜タンク1内に噴出した対象物は吸入管2の傾斜方向上方に設置されたバッフルプレート6に衝突して流速が低下し、比重の大きい気体中の液分や固形分は落下して貯溜タンク1内に溜まる。
【0021】
図1に示すように、貯溜タンク1内に貯留された貯溜物Gの容積が少なく、その界面(液面)Gaが低い間は、上記ようにして貯溜タンク1内で液分や固形分が分離された気体は、主に遠心分離部12の下端開口部12aから連通弁部3に流入し、遠心分離部12及びその内部の弁体15を通って排気空間部14に入る。そして、排気空間部14に流入した気体は、気体排出部16及び吸引管4を通って真空ポンプ5に吸引される。
【0022】
一方、貯溜タンク1内に貯留された貯溜物Gの容積が多くなり、その界面Gaが上昇すると、遠心分離部12の下端開口部12aと界面Gaとの間の隙間が小さくなるので、貯溜タンク1内の気体は界面Gaの上昇に伴い、気体導入口13aから気体導入部13に流入する割合が増加する。特に、図2、図3に示すように、遠心分離部12の下端開口部12aが貯溜物G中に沈没した状態になると、貯溜タンク1内の気体は全量、気体導入口13aから気体導入部13に流入する。
【0023】
図2、図3に示すように、気体導入部13に流入した気体は、気体導入部13から旋回流発生部11の環状空間10に導入され、環状空間10を通過する間に旋回流に変換される。そして、旋回流となった気体は、旋回流発生部11から下方に延びた遠心分離部12に入り、旋回状態を保ったまま遠心分離部12内を螺旋旋回して下方に進む。その際、気体中に混入した液分や固形分は旋回時の遠心力を受けて遠心分離部12の内壁面側に押し遣られ、該内壁面との接触により流速が低下し、該内壁面に沿って流下して、下端開口部12aから貯溜物G中に落下する。一方、液分や固形分が分離された気体は遠心分離部12をある程度旋回下降して流速が低下すると、排気空間部14から弁座部15aの弁孔15bを介して作用する負圧に引かれ、遠心分離部12(弁体15)の中心部を上昇して、排気空間部14に入り、気体排出部16及び吸引管4を通って真空ポンプ5に吸引される。
【0024】
上記のように、貯溜タンク1内から真空ポンプ5に吸引される気体中の液分や固形分を連通弁部3で分離することにより、対象物の回収効率を高めることができると共に、真空ポンプ5の破損、耐久性低下や周囲環境汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 貯溜タンク
2 吸入管
3 連通弁部
4 吸引管
5 真空ポンプ
10 環状空間
11 旋回流発生部
12 遠心分離部
12a 下端開口部
13 気体導入部
13a 気体導入口
14 排気空間部
15 弁体
15a 弁座部
15b 弁孔
15c フロート
15d 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引した対象物を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク内に一端部が挿入された吸入管と、該貯留タンクの上部に設けられた連通弁部と、前記連通弁部に吸引管を介して接続される負圧発生装置とを備えた吸引回収装置において、
前記連通弁部は、気体の旋回流を発生させる環状空間を有する旋回流発生部と、該旋回流発生部から下方に延びた遠心分離部と、前記旋回流発生部に気体を導入する気体導入部と、前記旋回流発生部の内径側に形成される排気空間部と、該排気空間部と前記貯留タンクの内部空間との間の連通を遮断可能な弁体と、前記排気空間部内に一端が挿入され、他端が前記吸引管に接続される気体排出部とを備え、
前記気体導入部の気体導入口が前記貯留タンクの内部に位置し、前記貯留タンク内の気体が前記気体導入部を介して前記旋回流発生部に導入されると共に、前記遠心分離部の下端開口部が前記貯留タンクの内部に位置し、前記遠心分離部で前記気体から分離された分離物が前記下端開口部から前記貯溜タンクの内部に戻されること特徴とする吸引回収装置。
【請求項2】
前記弁体は、前記排気空間部の下端部に設けられた弁座部と、該弁座部の弁孔を閉塞可能なフロートと、該フロートを上下動自在に支持する支持体とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の吸引回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202409(P2011−202409A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70831(P2010−70831)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】