説明

吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置及び排気処理方法

【課題】小型且つ低消費エネルギで十分な脱臭が可能であり、継続処理時のメンテナンス性が良く、アンモニア成分を液肥として回収でき、好気発酵を維持した状態での堆肥化処理を継続させて排気熱を有効利用する吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置及び排気処理方法を提供する。
【解決手段】堆肥発酵槽1に設けられた吸引管2からの排気を集水処理する集水処理部3とアンモニア成分回収部4と排気熱利用部5と吸引管2から排気熱利用部5に至る排気流路6と吸引手段7とを備え、アンモニア成分回収部4は薬液槽40と気液反応室41と薬液循環手段42,43と薬液加熱手段44とを備え、排気温センサ8Bの検出温度が入気温センサ8Aの検出温度に近づくように、薬液加熱手段44を制御すると共に、入気温センサ8Aの検出温度に基づいて求められる堆肥原料の発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように吸引手段4の出力を制御する制御手段10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥発酵槽内に堆積した堆肥原料内部の通気を堆肥発酵槽からの吸引によって行う吸引通気式堆肥製造施設に装備されるものであって、吸引によって堆肥発酵槽から排出される排気を脱臭処理する過程で、肥料成分の回収を行うと共に排気熱の有効利用を可能にした排気処理装置及びこれを用いた排気処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜ふん尿等の堆肥原料の堆肥化処理では、堆肥原料内を通気して好気発酵を促す処理が一般に行われている。この好気発酵による堆肥化処理は、発酵に伴う原料の昇温によって殺菌及び雑草種子死滅効果が得られると共に、水分蒸発及び有機物分解による減量・減容効果が得られることから、低コストで衛生的且つハンドリンク性が良好な堆肥を製造することができる。
【0003】
好気発酵を促すためには、堆肥原料の内部を大気に曝すための攪拌や切り返しを行うことが一般になされているが、それ加えて、送風機等を用いて堆肥原料内を積極的に通気する装備を併設した施設が増加している。この際の通気方式としては、送風機等によって加圧空気を堆肥原料内に送り込む圧送通気式と堆肥原料が堆積された発酵槽の底部から吸引ファン等で空気を吸引して堆肥原料内部に上方から下方に向けた通気経路を形成する吸引通気式がある。
【0004】
既存の施設では前者の圧送通気式が主流であるが、これによると、アンモニアを主成分とする大量の臭気が堆肥原料表面から放散されることになるので、悪臭対策のための脱臭装置を装備するのに、空気で希釈された大量の臭気を回収して処理するための大がかりな装置が必要になる。これに対して、前述した吸引通気式では、吸引によって臭気を集約して排気できるので効率的な脱臭が可能になる利点はあるが、高濃度の臭気成分が排気中に含まれるのでそれを処理するために脱臭能力の高い脱臭装置が必要になる。
【0005】
下記特許文献1には、吸引通気式の堆肥化処理装置が示されている。これによると、図1に示すように、堆肥原料が堆積された発酵槽J1の底部に吸引管J2を配備し、吸引ファンJ9による吸引によって、上方から堆肥原料内に導入される吸引通気が吸引管J3に引き込まれ、通気管J4,J6,J8によって接続された第1ドレイントラップJ3,アンモニアトラップJ5,第2ドレイントラップJ7を介して吸引ファンJ9の排気口から排気されるようになっている。ここで、第1ドレイントラップJ3及び第2ドレイントラップJ7は、吸引管J2に進入するれき汁や結露水を集水する機能を有し、アンモニアトラップJ5は充填材5a内に吸引通気を通過させることでアンモニア成分を吸着させ、これを固形肥料として回収する機能を有するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−35811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の吸引通気式堆肥化装置では、おが屑や籾殻といったバイオマスにリン酸を添加した充填材にアンモニア成分を吸収・固化させることで脱臭処理を行っていた。しかしながら、これによって十分な脱臭機能を得るためには、充填材層の通過幅を大きくする必要があり、脱臭装置の大型化と吸引通気抵抗の増大に伴う吸引ファンの出力増大を招く問題があった。
【0008】
また、多量の堆肥原料を処理する際には、充填材を頻繁に交換する必要があり、堆肥化処理完了までの間のメンテナンス性にも問題があった。更には、充填材に吸収・固化されて回収されるアンモニア成分は固形状肥料になるため、その用途が限定されてしまい、汎用性の高い形態で肥料の回収ができない、という問題もあった。
【0009】
また、吸引通気流量が設定された一定値になっているので、肥料原料の通気性が高い場合や外気温が低い場合には、通気量多加になって肥料原料の温度が低下し、好気発酵の進行が抑制されてしまうという問題もあった。
【0010】
更に、発酵槽からの排気は良好な好気発酵が進行している場合には暖房等に利用可能な熱を有することになるが、これを有効利用しようとしても、好気発酵の進行が抑制されると脱臭装置で除去可能なアンモニア成分以外に、嫌気性発酵で発生する有機酸や硫化水素等のガス成分が排気中に含まれることになるので、室内暖房などに排気熱を直接利用することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に対処するためのものであって、吸引通気式の堆肥製造施設における排気処理に際して、多量の堆肥原料を処理する場合にも小型且つ低消費エネルギで十分な脱臭が可能であり、継続処理時のメンテナンス性が良く、アンモニア成分を汎用性のある液肥として回収できること、更には、良好な好気発酵を維持した状態での堆肥化処理を継続させて、排気熱の有効利用を可能にすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を具備するものである。
【0013】
一つには、堆肥発酵槽内に堆積した堆肥原料内部の通気を堆肥発酵槽からの吸引によって行う吸引通気式堆肥製造施設に装備される排気処理装置であって、前記堆肥発酵槽に設けられた吸引管から排出される排気の集水処理を行う集水処理部と、前記集水処理部で処理された前記排気からアンモニア成分を回収処理するアンモニア成分回収部と、前記アンモニア成分回収部で回収処理された前記排気が導入される排気熱利用部と、前記吸引管から前記集水処理部,前記アンモニア成分回収部を経由して前記排気熱利用部に至る排気流路と、前記排気流路に配備される吸引手段とを備え、前記アンモニア成分回収部は、前記排気中のアンモニア成分を化学反応によって回収処理する薬液を溜めた気密容器からなり、前記排熱利用部に至る排気流路の端部が前記薬液の液面上部空間に連通する薬液槽と、前記液面上部空間に連通して、前記集水処理部から前記排気流路を介して供給される排気と前記薬液との気液反応を行う気液反応室と、前記薬液を前記薬液槽から前記気液反応室に供給することで薬液の循環を行う薬液循環手段と、前記薬液槽内の薬液を加熱する薬液加熱手段とを備え、前記アンモニア成分回収部より上流側の前記排気流路に排気温度を検出する入気温センサを設けると共に、前記アンモニア成分回収部より下流側の前記排気流路に排気温度を検出する排気温センサを設け、前記排気温センサの検出温度が前記入気温センサの検出温度に近づくように、前記薬液加熱手段を制御すると共に、前記入気温センサの検出温度に基づいて求められる前記堆肥原料の発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように前記吸引手段の出力を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記排気流路内の圧力を検出する圧力センサと前記排気流路内の風量を検出する風量センサを更に備え、前記制御手段は、前記入気温センサの検出温度と前記圧力センサ及び前記風量センサの検出値から前記排気の熱流量を求め、前記堆肥原料の発酵熱量、外気の温湿度、前記堆肥発酵槽からの放熱及び蒸発による潜熱の推定値から熱収支を推定し、前記堆肥原料を所定の発酵温度に維持するために必要な前記吸引手段の出力を算出することを特徴とする。
【0015】
また一つには、前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、前記制御手段は、前記圧力センサ及び/又は前記風量センサの検出値に基づいて、吸引抵抗の上昇を検知し、前記堆肥原料内部が通気されていないことを推定して、前記切り返し装置を作動させることを制御することを特徴とする。
【0016】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記薬液槽内の液面水位を検出する水位センサを更に備え、前記制御手段は、前記水位センサの検出値に基づいて、設定水位を超えた場合には前記薬液加熱手段によって前記薬液を加熱し、設定水位より低い場合には前記薬液加熱手段を停止させることを特徴する。
【0017】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記アンモニア成分回収部より下流側の前記排気流路内にガス成分濃度を検出する排気ガス濃度センサを更に備え、前記制御手段は、前記排気ガス濃度センサの検出値に基づいて、前記排気中のアンモニアガス濃度が設定以下になるように前記薬液循環手段の循環量を制御することを特徴とする。
【0018】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、前記制御手段は、前記排気ガス濃度センサの検出値に基づいて、前記排気中に嫌気発酵によって発生するガス成分が設定値以上検出された場合には、前記切り返し装置を作動させると共に前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする。
【0019】
また一つには、前述した特徴に加えて、前記排気熱利用部は、熱利用室と該熱利用室の下に形成された土壌槽とを備え、前記排気流路の排出端を前記土壌槽の下層に配置し、前記土壌槽を介して前記排出端からの排気を前記熱利用室に導くことを特徴とする。
【0020】
また、堆肥発酵槽内に堆積した堆肥原料内部の通気を堆肥発酵槽からの吸引によって行う吸引通気式堆肥製造施設の排気処理方法であって、前記堆肥発酵槽に設けられた吸引管に接続される排気流路に吸引手段を配備し、該吸引手段の出力に応じた吸引通気を行う吸引通気工程と、前記吸引管から排出される排気の集水処理を行う集水処理工程と、前記集水処理工程で処理された前記排気からアンモニア成分を回収処理するアンモニア成分回収工程と、前記アンモニア成分回収工程で回収処理された前記排気の熱を利用する排気熱利用工程とを有し、前記アンモニア成分回収工程は、前記排気と当該排気中のアンモニア成分を化学反応によって回収処理する薬液との気液反応によってなされ、前記アンモニア成分回収工程前の排気温度を検出すると共に、前記アンモニア成分回収工程後の排気温度を検出し、前記アンモニア成分回収工程後の排気温度を前記アンモニア成分回収工程前の排気温度に近づけるように、前記薬液を加熱する薬液加熱手段を制御すると共に、前記アンモニア成分回収工程前の排気温度に基づいて求められる前記堆肥原料の発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする。
【0021】
また一つには、前述した排気処理方法の特徴に加えて、前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、前記アンモニア回収工程後の排気流路内のガス成分濃度を検出し、前記ガス成分濃度の検出値に基づいて、前記排気中に嫌気発酵によって発生するガス成分が設定値以上検出された場合には、前記切り返し装置を作動させると共に前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
このような特徴によると、吸引通気式の堆肥製造施設における排気処理に際して、多量の堆肥原料を処理する場合にも小型且つ低消費エネルギで十分な脱臭が可能であり、継続処理時のメンテナンス性が良く、アンモニア成分を汎用性のある液肥として回収できる。更には、良好な好気発酵を維持した状態での堆肥化処理を継続させて、排気熱の有効利用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置を説明する説明図である。
【0024】
吸引通気式堆肥製造施設は、堆肥発酵槽1内の底部に吸引管2を配備し、吸引管2の所定間隔毎に吸引口2Aを形成し、吸引管2を介した吸引通気によって堆肥発酵槽1内に堆積された家畜ふん尿等の堆肥原料M内に上方から下方に至る通気経路を形成するものである。ここに示す実施形態では、堆肥発酵槽1は上方開放の槽であって所定の方向に沿って延設されており、その延設方向に直交する方向に吸引管2が所定間隔で複数本配備され、これらの吸引管2が並列的に連結されて後述する排気流路に接続されている。
【0025】
また、堆肥発酵槽1の上部にはクレーン式堆肥切り返し装置9が装備されており、この堆肥切り返し装置9が堆肥発酵槽1の長手方向に沿って移動しながら、堆肥発酵槽1内の堆肥原料Mを切り返し処理して、その堆積位置を移動させるようにしている。
【0026】
ここで、吸引口2Aの直径は30cm程度の大口径として、吸引口2A内を木質系チップで充填することで目詰まりしない構造にしている。また、吸引口2Aの間隔を3〜7m2につき1つと分散配置することで、重力で沈降するれき汁が吸引口2Aに集水され難く、れき汁の吸引管2への吸引を大幅に減らしている。また、クレーン式堆肥切り返し装置9を装備して、堆肥原料Mの切り返し処理を自動化することができ、複数に区切られた堆肥発酵槽1の間で堆肥原料Mを移動させながら切り返すバッチ式搬送処理を行うことで、堆肥発酵槽1内の所定の箇所を空にすることができるので、吸引口2Aの詰まり除去処理を簡易に行うことができる。また、バッチ式搬送処理で開放した吸引口2Aを1〜2日間程度乾燥させることで、長期間目詰まり無く継続利用することができる。
【0027】
ここで説明している堆肥発酵槽1の形態、吸引管2の配置状態、切り返し装置の装備などは、あくまで一例を示すもので、本発明の実施形態としては特にこれに限定されるものではない。
【0028】
そして、本発明の実施形態に係る排気処理装置は、集水処理部3と、アンモニア成分回収部4と、排気熱利用部5と、吸引管2から集水処理部3,アンモニア成分回収部4を経由して排気熱利用部5に至る排気流路6(吸引管2と集水処理部3とを連結する排気流路6A、集水処理部3とアンモニア成分回収部4とを連結する排気流路6B、アンモニア成分回収部4と排気熱利用部5とを連結する排気流路6Cを備えている)と、排気流路6に配備される吸引手段としての送風機7とを備えている。また、アンモニア成分回収部4の作動や送風機7の作動、更には必要に応じて切り返し装置9の作動を制御する制御部10を備えている。
【0029】
ここで、集水処理部3は、排気中の水分が少ない場合には省略することができ、また、集水処理部3に換えて排気中の排塵を除去するフィルタを設けたものであっても良い。また、排気流路6には、排気状態を検出する検出手段8(入気温センサ8A、排気温センサ8B、圧力センサ8C、風量センサ8D、排気ガス濃度センサ8E)が設けられている。
【0030】
以下に、各部の構成を詳細に説明する。
【0031】
[集水処理部]
集水処理部3は、吸引管2から排出される排気の集水処理を行うもので、吸引管2或いは排気流路6A内で発生する結露水を一次貯留するドレイントラップ30、ドレイントラップ30に溜まった水を集水・貯留するドレインタンク31、ドレインタンク31に貯留された水を堆肥発酵槽1内の堆肥原料表面に散水するドレイン散水装置からなる。
【0032】
吸引管2の端部に接続された排気流路6Aの下流側端部は気密容器からなるドレイントラップ30の上部空間に連通されて、そのドレイントラップ30の上部空間にはアンモニア成分回収部4に向かう排気流路6Bの上流側端部が連通されている。これによって、吸引管2或いは排気流路6Aで発生した結露水をドレイントラップ30内に溜めることできる。
【0033】
本発明の実施形態では、前述した吸引口2Aの形態によって吸引管2内に堆肥原料Mのれき汁が入り込むのを抑えることができ、また、適量の副資材を堆肥原料Mに混合することでれき汁の発生量を減らすこともできるので、ドレイントラップ30内には少量の結露水のみが溜まることになる。ドレイントラップ30には、満水センサ30Aが設けられ、ドレイントラップ30に溜まった水が満水センサ30Aで所定の水位を超えたら、送水ポンプ30Bが作動して溜まった水をドレインタンク31に搬送する。
【0034】
れき汁がほとんど混入されていない結露水は透明度の高いアンモニア水であり、堆肥原料Mに掛け戻すことで肥料成分として利用することができる。そこで、ドレインタンク31にも満水センサ31Aを設け、ドレインタンク31内に溜まった水が所定の量に達したら満水センサ31Aがそれを検知して警報を発し、加えてドレインタンク31内の水を送水ポンプ31Bで散水管32に送り込み、散水管32に設けられた散水ノズル32Aから堆肥原料Mの表面に掛け戻すようにしている。散水時には、3方弁34は散水管32に向かう流れのみを許容するように切り換えられている。
【0035】
また、3方弁33を切り換えてドレインタンク31内の水を別途設けた排液口(図示省略)へ送ることもできる。これら集水処理部3の動作は、満水センサ30A,31Aの検出によって自動で送水ポンプ30A,30Bを作動させることで自動化することができる。
【0036】
吸引管2或いは排気流路6A内で発生した結露水を堆肥原料M上に掛け戻すことで、堆肥への肥料成分の追加と堆肥原料Mが過乾燥したときの水分調整を行うことが可能になるが、集水処理部3の基本機能はドレイントラップ30或いはドレインタンク31による結露水の集水・貯留にあるので、前述した送水ポンプ31B,散水管32,散水ノズル32A等からなるドレイン散水装置は付属的な構成である。
【0037】
[アンモニア成分回収部]
アンモニア成分回収部4は、集水処理部3で処理された排気からアンモニア成分を回収処理するもので、排気中のアンモニア成分を化学反応によって回収処理する薬液を溜めた気密容器からなる薬液槽40、集水処理部から排気流路6Bを介して供給される排気と薬液との気液反応を行う気液反応室41、薬液を薬液槽40から気液反応室41に供給することで薬液の循環を行う薬液循環手段(循環ポンプ42,循環路43)、薬液槽内の薬液を加熱する薬液加熱手段である薬液ヒータ44を備える。
【0038】
薬液槽40内の薬液は、リン酸,硫酸等の酸性溶液であり、気密容器である薬液槽40の液面上部空間40Aに気液反応室41が連通し、この気液反応室41に排気流路6Bの下流側端部が連通している。そして、薬液槽40の底部に接続された循環ポンプ42によって循環路43を介して気液反応室41に薬液が供給され、この供給された薬液と排気流路6Bから供給される排気とが気液反応室41内で反応してアンモニア成分の回収がなされる。この際、3方弁45は循環路43から気液反応室41へ至る流路のみが確保されている。
【0039】
気液反応室41内では、薬液が上方からノズルで微小な液滴として散水され、樹脂製の網を層状に重ねた滞留層内を通過しながら細滴となり減速され、気液反応室41の側方から供給される排気中のアンモニアガスと薬液のリン酸,硫酸等が化学反応して、安定した液肥(リン酸アンモニウム,硫酸アンモニウム等)が生成されて薬液槽40内に回収される。なお、アンモニアガスと酸性溶液の反応は気液反応室41の内部に留まらず、気液反応室41から流下する細滴が排気流と混合・攪拌される液面上部空間40A、及び液面が排気流と細滴で攪乱されて発生する細かい気泡が時間を掛けて浮遊する液面上層においても反応が促進される。
【0040】
薬液槽40内に流下した薬液は、再度循環ポンプ42で循環され、薬液(酸性溶液)がアンモニアと反応できる能力を失うまで、循環して使用することができる。また、薬液槽40内の薬液は薬液ヒータ44によって温度制御がなされており、循環路43に設けられた薬液温度センサ46からの出力に応じて設定された基準温度に制御されている。
【0041】
そして、薬液槽40の液面上部空間40Aには、排熱利用部5に至る排気流路6Cの下流側端部が連通しており、アンモニア成分の回収処理がなされた排気が排気流路6Cを介して排熱利用部5に導入されることになる。
【0042】
[制御部]
制御部10は、排気流路6に設けられた検出手段8(入気温センサ8A、排気温センサ8B、圧力センサ8C、風量センサ8D、排気ガス濃度センサ8E)からの検出信号8a,8b,8c,8d,8eと薬液槽40内の薬液水位を検出する水位センサ47の検出信号47a、或いは堆肥発酵槽1周囲の外気温センサ(図示省略)等からの検出信号が必要に応じて選択入力され、その入力に基づいて、送風機7,循環ポンプ42,薬液ヒータ44,切り返し装置9の作動を必要に応じて選択的に制御するものであって、図3に示すように、制御部10に組み込まれる制御プログラムとして、薬液加温制御手段11、吸引力制御手段12、薬液循環制御手段13、切り返し装置作動制御手段14からなるものである。
【0043】
ここで、入気温センサ8Aは、アンモニア成分回収部4よりも上流側の排気流路6B内での排気温度を検出するものであり、排気温センサ8Bは、アンモニア成分回収部4より下流側の排気流路6C内での排気温度を検出するものであり、圧力センサ8Cは、排気流路6B内の圧力を検出するものであり、風量センサ8Dは、排気流路6B内の風量を検出するものであり、排気ガス濃度センサ8Eは、アンモニア成分回収部4の下流側の排気流路6C内でのガス成分濃度を検出するものである。
【0044】
以下、制御部10による各種制御を個々に説明するが、これらの制御は単独又は全ての組み合わせで複合して制御がなされるものであって、その主要な制御目的は、排気流路6内の排気から回収されるアンモニア成分を有効な液肥として適正に回収すること、及び/又は、排気流路6内の排気からアンモニア成分と他の有害成分を除き、排気自体を活用する排気熱利用部5で有効な熱利用を可能にすることにある。
【0045】
薬液加温制御手段11;
薬液とアンモニアガスの反応後に結晶が生じると、前述した循環ポンプ42による薬液の循環を円滑に行うことができなくなり、排気処理を連続的且つ継続的に行うことができなくなる。結晶が生じないようにするためには、薬液の濃度を低くすればよいが、薬液濃度を低くすると脱臭能力が低下するので、吸引通気式による高濃度のアンモニアガスを含む排気を処理するためには、気液反応室41の大型化或いは循環量の増大が必要になり、小型且つ低消費エネルギでの脱臭装置を得ることができなくなる。また、アンモニア成分回収部4で処理される排気は湿度が飽和状態であるため、薬液槽40内で結露水が溜まることがあり、これによって、回収された液肥のアンモニア成分濃度が低くなる問題が生じる。
【0046】
これに対処するために、本発明の実施形態では、薬液槽40内に薬液ヒータ44を装備し、入気温センサ8Aと排気温センサ8Bから入排気の温度差を常時検出し、所定の温度差が生じた場合には、薬液ヒータ44を起動させて薬液槽40内での薬液温度を上昇させる。気液反応室41内に供給された排気が加温された薬液の熱を受け取ることで排気温度が上昇することになり、排気温センサ8Bの検出温度が入気温センサ8Aの検出温度に近づくように薬液ヒータ44を制御する。
【0047】
これによると、薬液が比較的高温に維持されるため、薬液の溶解度が上がって結晶が生じ難くなる。これによって、高濃度の薬液を使用することでき、高温化と高濃度化の相乗効果によって、アンモニアガスと薬液の反応速度が向上し、気液反応室41の小型化が可能になる。また、結晶を生じなくすることで、薬液循環手段の継続動作が可能になり、薬液がアンモニア回収能力を失うまで連続的且つ継続的な処理を行うことができる。更に、薬液槽40内が上流側の排気温度とほぼ同じに制御されるため、結露水が溜まり難くなり、回収される液肥のアンモニア成分濃度が低下するのを防ぐことができる。
【0048】
また、この制御に対して付加的に、水位センサ47によって薬液槽40内の水位を検出し、最適水位より増水傾向であれば薬液ヒータ44で薬液を加温し、最適水位より減水傾向であれば薬液ヒータ44を止めて薬液槽40内での結露水を発生させることで最適水位を維持するようにする。すなわち、制御部10は、水位センサ47の検出値に基づいて、設定水位を超えた場合には薬液ヒータ44によって薬液を加熱し、設定水位より低い場合には薬液ヒータ44を停止させる制御を行う。更に、この水位センサ47で検出される水位が所定の上限を超えたとき或いは下限より下回ったときに警報を発する制御を行うようにしても良い。
【0049】
吸引力制御手段12;
堆肥原料Mに対する通気性が高すぎる場合或いは外気温が低い場合等は、通気量過多によって堆肥原料Mの温度が低下して発酵が抑制されることがある。また、通気性が低い場合には好気発酵を十分に促すことができない。このように堆肥原料Mに対して適正な好気発酵を継続することができない場合には、吸引管2内に引き込む排気中に嫌気発酵によって発生する有機酸や硫化水素等のガス成分が含まれることになり、この排気を直接利用する排気熱利用部5に悪影響が出る。
【0050】
そこで、本発明の実施形態では、入気温センサ8Aの検出温度に基づいて求められる堆肥原料Mの発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように送風機7の出力を制御する。詳しくは、圧力センサ8C,風量センサ8D及び入気温センサ8Aの出力値から吸引している熱流量を求め、堆肥原料Mの発酵熱量、外気の温湿度、発酵槽周面からの放熱及び蒸発による潜熱等の推定値から熱収支を推定し、堆肥原料を所定の発酵温度に維持するための送風機7の送風量を計算している。
【0051】
これによると、発酵促進によって堆肥製造の生産性が向上すると共に、排気中に嫌気発酵によって発生する有機酸や硫化水素等のガス成分が含まれることがないので、排気熱利用部5で効率的に排気の熱を活用することができる。
【0052】
薬液循環制御手段13;
更に、アンモニア成分回収部4の下流側の排気流路6C内に排気ガス濃度センサ8Eを備えており、これによって検出される排気中のアンモニアガス濃度に基づいて、アンモニア成分回収部4の回収能力を制御する。すなわち、排気ガス濃度センサ8Eの検出値に基づいて、排気中のアンモニア濃度が設定以下になるように循環ポンプ42の循環量を制御する。
【0053】
また、循環量の制御によっても排気中のアンモニア濃度が低下しない場合には、薬液のアンモニア成分回収能力が低下したと判断できるので、循環ポンプ42による循環量の増大制御後にアンモニア濃度の低下が生じないことを検知して、薬液を交換する時期を推測・通報する破知検知を行うようにしてもよい。
【0054】
切り返し装置作動制御手段14;
更に、アンモニア成分回収部4の下流側の排気流路6C内に設けられた排気ガス濃度センサ8Eによって検出される排気中の嫌気発酵によって発生するガス成分濃度に基づいて、切り返し装置9の作動を制御する。これによって、嫌気発酵によって発生するガス成分濃度が所定量検出された場合に、堆肥原料Mを積極的に切り返すことで好気発酵を良好に促す。併せて、送風機7の出力も制御して、適正な好気発酵の維持を図る。
【0055】
また、圧力センサ8C及び/又は風量センサ8Dの検出値に基づいて、吸引抵抗の上昇を検知し、堆肥原料M内部が通気されていないことを推定して、切り返し装置9を作動させるようにすることもできる。これによると、嫌気発酵によって発生する有機酸や硫化水素等のガスの発生を未然に防止することができる。
【0056】
[排気熱利用部]
排気熱利用部5は、基本的には排気流路6Cから排出される排気自体を利用することで効率的な排熱利用ができるものであればどのような形態であってもよい。図4は、排気熱利用部5の一例を示したものである。ここでは、熱利用室50とこの熱利用室50の下に形成された土壌槽51とを備え、排気流路6Cの排出端を土壌槽51の下層に配置し、土壌槽51を介して排出端からの排気を熱利用室50に導くようにしている。この土壌槽51は、排気中に含まれる微量の臭気を脱臭するためのものである。
【0057】
また、付属的な設備として、排気の一部を分岐して廃棄するためのダンパ52、排気の熱を外気の空気に与える熱交換器53、熱交換器53を通して外気を熱利用室50内に導入する送風機54等を備えるものであってもよい。
【0058】
本発明の実施形態では、吸引通気によって堆肥原料M内を通過する加熱された排気をすべて捕集しており、また、臭気の主成分であるアンモニアガスをアンモニア成分回収部4でほぼ全量回収しながら、排気温度が低下しないように薬液ヒータ44による加温制御を行っているので、臭気がほとんどない高温の飽和水蒸気によって大きな熱量が得られる利点がある。
【0059】
この実施形態での熱利用室50は、冬期は施設園芸の温室として利用し、夏期は製品堆肥や堆肥原料Mの通気性確保に用いられる副資材の乾燥、或いは牧草の乾燥等に利用することができる。このためには、ダンパ52からの廃棄流量と送風機54による送風量或いは熱交換器53での熱交換率を適宜制御して、送風機54からの乾燥温風及び排気流路6Cからの湿潤温風の流量比を制御することで、熱利用室50内の温湿度を制御する。なお、乾燥温風のみが必要な場合には、排気流路6Cの排出端を土壌槽51の外に向けて、湿潤温風を全て熱利用室50外に直接放出する。また、熱利用室50内の温度が不足する場合には、別途ヒータ等で加熱しても良い。
【0060】
[排気処理方法]
このような構成の排気処理装置を用いた処理方法は、堆肥発酵槽1に設けられた吸引管2に接続される排気流路6に吸引手段となる送風機7を配備し、この送風機7の出力に応じた吸引通気を行う吸引通気工程、吸引管2から排出される排気の集水処理を集水処理部3で行う集水処理工程、アンモニア成分回収部4において、集水処理工程で処理された排気からアンモニア成分を回収処理するアンモニア成分回収工程、アンモニア成分回収工程で回収処理され、アンモニア成分が除去された排気の熱を利用する排気熱利用工程を有する。
【0061】
吸引通気工程では、送風機7の吸引力によって、堆肥発酵槽1内の堆肥原料M上方から空気を堆肥原料M内部に引き込み、堆肥原料M内部を通過した臭気成分を含む排気が吸引口2Aから吸引管2内に引き込まれる。
【0062】
そして、制御部10によって、送風機7の吸引力はアンモニア成分回収工程前の排気温度に基づいて求められる堆肥原料Mの発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように制御されるので、堆肥原料Mは好気発酵に適した状態で適正な吸引通気がなされる。
【0063】
また、堆肥原料Mに対しては、所定の時間間隔でのバッチ処理で切り返し装置9による切り返し処理がなされるので、堆肥原料M内部をムラ無く吸引通気することができる。更には、この切り返し装置9の作動も制御部10によって制御されるので、排気中に嫌気発酵によって発生する有機酸や硫化水素等のガス成分が含まれることがない。
【0064】
集水処理工程では、吸引管2内に引き込まれた排気が排気流路6Aを介してドレイントラップ30の上部空間に導かれ、その間に発生する結露水がドレイントラップ30内に溜められる。ドレイントラップ30が満水状態になると、満水センサ30Aがこれを検出して送水ポンプ30Bを作動させ、ドレイントラップ30内に溜められた水がドレインタンク31内に送られる。更にドレインタンク31が満水状態になると、満水センサ31Aがこれを検出して送水ポンプ31Bを作動させ、散水管32を介して散水ノズル32Aから溜められた水を堆肥原料M上に散水する。結露水が多量に溜まった場合は、3方弁33を切り換えてドレインタンク31内の水を別途設けた排液口に放出する。
【0065】
アンモニア成分回収工程では、排気流路6Bを介してドレイントラップ30を通過した排気を気液反応室41に導き、薬液槽40内の薬液を気液反応室41に循環供給することで、排気中のアンモニア成分と薬液の酸性成分とを化学反応させ安定した液肥を生成し、これを薬液槽40内に回収する。
【0066】
この際、制御部10によって薬液ヒータ44が制御されるので、薬液槽40内の薬液は適温に加温され、薬液槽40内に結晶が生じることがない。また、加温された薬液が排気と接するので、排気の温度を低下させることもない。更には、制御部10によって循環ポンプ42が制御されるので、排気に対して適量の薬液供給がなされ、排気中の高濃度アンモニア成分をほぼ完全に回収することができる。また、制御部10によって薬液槽40内の水位が最適水位に制御されるので、薬液槽40内に適正濃度の良質な液肥を回収することができる。
【0067】
そして、排気熱利用工程では、有害成分が無く、ほぼ完全にアンモニア成分が除去された高温・高湿の排気が得られるので、この排気を直接室内暖房などに利用することで、効率的な排熱利用を実現することができる。
【0068】
このような実施形態によると、吸引通気式の堆肥製造施設における排気処理に際して、多量の堆肥原料を処理する場合にも小型且つ低消費エネルギで十分な脱臭が可能であり、継続処理時のメンテナンス性が良く、アンモニア成分を汎用性のある液肥として回収できる。更には、良好な好気発酵を維持した状態での堆肥化処理を継続させながら、排気熱を有効利用することができる。
【0069】
これによると、従来の堆肥化製造施設が臭気と排熱を周辺環境に拡散していたのに対して、良質の液肥と熱を回収することができることになり、環境保全に加えて資源とエネルギを有効利用できる堆肥化技術を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態における制御部を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施形態における排気熱利用部の一例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 堆肥発酵槽
2 吸引管
2A 吸引口
3 集水処理部
30 ドレイントラップ
31 ドレインタンク
30A,31A 満水センサ
30B,31A 送水ポンプ
32 散水管
32A 散水ノズル
33,34 3方弁
4 アンモニア成分回収部
40 薬液槽
41 気液反応室
42 循環ポンプ(薬液循環手段)
43 循環路(薬液循環手段)
44 薬液ヒータ(薬液加熱手段)
45 3方弁
46 薬液温度センサ
47 水位センサ
5 排気熱利用部
50 熱利用室
51 土壌槽
52 ダンパ
53 熱交換器
54 送風機
6,6A,6B,6C 排気流路
7 送風機(吸引手段)
8 検出手段
8A 入気温センサ
8B 排気温センサ
8C 圧力センサ
8D 風量センサ
8E 排気ガス濃度センサ
9 切り返し装置
10 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥発酵槽内に堆積した堆肥原料内部の通気を堆肥発酵槽からの吸引によって行う吸引通気式堆肥製造施設に装備される排気処理装置であって、
前記堆肥発酵槽に設けられた吸引管から排出される排気の集水処理を行う集水処理部と、
前記集水処理部で処理された前記排気からアンモニア成分を回収処理するアンモニア成分回収部と、
前記アンモニア成分回収部で回収処理された前記排気が導入される排気熱利用部と、
前記吸引管から前記集水処理部,前記アンモニア成分回収部を経由して前記排気熱利用部に至る排気流路と、
前記排気流路に配備される吸引手段とを備え、
前記アンモニア成分回収部は、
前記排気中のアンモニア成分を化学反応によって回収処理する薬液を溜めた気密容器からなり、前記排熱利用部に至る排気流路の端部が前記薬液の液面上部空間に連通する薬液槽と、
前記液面上部空間に連通して、前記集水処理部から前記排気流路を介して供給される排気と前記薬液との気液反応を行う気液反応室と、
前記薬液を前記薬液槽から前記気液反応室に供給することで薬液の循環を行う薬液循環手段と、
前記薬液槽内の薬液を加熱する薬液加熱手段とを備え、
前記アンモニア成分回収部より上流側の前記排気流路に排気温度を検出する入気温センサを設けると共に、前記アンモニア成分回収部より下流側の前記排気流路に排気温度を検出する排気温センサを設け、
前記排気温センサの検出温度が前記入気温センサの検出温度に近づくように、前記薬液加熱手段を制御すると共に、前記入気温センサの検出温度に基づいて求められる前記堆肥原料の発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように前記吸引手段の出力を制御する制御手段を備えることを特徴とする吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項2】
前記排気流路内の圧力を検出する圧力センサと前記排気流路内の風量を検出する風量センサを更に備え、
前記制御手段は、前記入気温センサの検出温度と前記圧力センサ及び前記風量センサの検出値から前記排気の熱流量を求め、前記堆肥原料の発酵熱量、外気の温湿度、前記堆肥発酵槽からの放熱及び蒸発による潜熱の推定値から熱収支を推定し、前記堆肥原料を所定の発酵温度に維持するために必要な前記吸引手段の出力を算出することを特徴とする請求項1に記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項3】
前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、
前記制御手段は、前記圧力センサ及び/又は前記風量センサの検出値に基づいて、吸引抵抗の上昇を検知し、前記堆肥原料内部が通気されていないことを推定して、前記切り返し装置を作動させることを制御することを特徴とする請求項2に記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項4】
前記薬液槽内の液面水位を検出する水位センサを更に備え、
前記制御手段は、前記水位センサの検出値に基づいて、設定水位を超えた場合には前記薬液加熱手段によって前記薬液を加熱し、設定水位より低い場合には前記薬液加熱手段を停止させることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項5】
前記アンモニア成分回収部より下流側の前記排気流路内にガス成分濃度を検出する排気ガス濃度センサを更に備え、
前記制御手段は、前記排気ガス濃度センサの検出値に基づいて、前記排気中のアンモニアガス濃度が設定以下になるように前記薬液循環手段の循環量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項6】
前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、
前記制御手段は、前記排気ガス濃度センサの検出値に基づいて、前記排気中に嫌気発酵によって発生するガス成分が設定値以上検出された場合には、前記切り返し装置を作動させると共に前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする請求項5に記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項7】
前記排気熱利用部は、熱利用室と該熱利用室の下に形成された土壌槽とを備え、前記排気流路の排出端を前記土壌槽の下層に配置し、前記土壌槽を介して前記排出端からの排気を前記熱利用室に導くことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理装置。
【請求項8】
堆肥発酵槽内に堆積した堆肥原料内部の通気を堆肥発酵槽からの吸引によって行う吸引通気式堆肥製造施設の排気処理方法であって、
前記堆肥発酵槽に設けられた吸引管に接続される排気流路に吸引手段を配備し、該吸引手段の出力に応じた吸引通気を行う吸引通気工程と、
前記吸引管から排出される排気の集水処理を行う集水処理工程と、
前記集水処理工程で処理された前記排気からアンモニア成分を回収処理するアンモニア成分回収工程と、
前記アンモニア成分回収工程で回収処理された前記排気の熱を利用する排気熱利用工程とを有し、
前記アンモニア成分回収工程は、前記排気と当該排気中のアンモニア成分を化学反応によって回収処理する薬液との気液反応によってなされ、
前記アンモニア成分回収工程前の排気温度を検出すると共に、前記アンモニア成分回収工程後の排気温度を検出し、
前記アンモニア成分回収工程後の排気温度を前記アンモニア成分回収工程前の排気温度に近づけるように、前記薬液を加熱する薬液加熱手段を制御すると共に、前記アンモニア成分回収工程前の排気温度に基づいて求められる前記堆肥原料の発酵温度が好気発酵進行状態に維持されるように前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする吸引通気式堆肥製造施設の排気処理方法。
【請求項9】
前記堆肥発酵槽上部に該堆肥発酵槽内の堆肥原料の切り返し処理を行う切り返し装置を設け、
前記アンモニア回収工程後の排気流路内のガス成分濃度を検出し、前記ガス成分濃度の検出値に基づいて、前記排気中に嫌気発酵によって発生するガス成分が設定値以上検出された場合には、前記切り返し装置を作動させると共に前記吸引手段の出力を制御することを特徴とする請求項8に記載された吸引通気式堆肥製造施設の排気処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−269517(P2007−269517A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94900(P2006−94900)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000237824)富士平工業株式会社 (14)
【出願人】(503255936)有限会社 岡本製作所 (2)
【Fターム(参考)】