説明

吸気ダクト

【課題】吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路に分割して多室化を図り得るようにした吸気ダクトを提供する。
【解決手段】運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクト8を、型抜き方向を前後方向として成形されたダクト本体9と、該ダクト本体9内を前後に分割し且つその前後に分割されたダクト本体9内を更に左右方向にも分割して前記空気取入口まで到る複数の流路A,B,C,D,E,Fを区画形成する内部仕切り部品10とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、図8に一例を示すように、エアクリーナ1に直立するよう接続したエアクリーナ入口ダクト2に対し、キャブ3の後面に据え付けられた吸気ダクト4を可撓性のブーツ5を介して接続し、前記吸気ダクト4の上側に開口した空気取入口6から外気を取り入れ得るようにしてある。
【0004】
斯かる吸気ダクト4に関し、空気取入口6から吸引される外気の流速(流量)について本発明者らが調べたところ、いくら空気取入口6が大きな開口面積で形成されていても、外気は空気取入口6の下側から偏って吸引されていて、該空気取入口6の上側からは殆ど吸引されていないことが判明しており、このように空気取入口6の下側に外気の吸引が偏ることで流速が上昇し、空気取入口6の下側から雨や雪、埃を吸い込み易くなることが懸念された。
【0005】
そこで、空気取入口6から吸引される外気の流速分布を均一化するため、吸気ダクト4内を複数の流路に分割して多室化を図ることが検討されているが、従来においては、吸気ダクト4内を複数の流路に分割するに際し、図9に断面図で示す如く、ブロー成形時に吸気ダクト4の一部を金型(図示せず)で挟み付けて潰すことで仕切壁7を作り、この仕切壁7により流路A,Bを分割することが行われている。
【0006】
尚、一般的な吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−317720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如きブロー成形時に吸気ダクト4の一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁7を作るという従来の手法では、吸気ダクト4の一部を潰すことにより流路断面積が小さくなってしまい、吸気抵抗の増加を招いてしまうという問題があり、また、型抜き方向に対し直角な向き(図9中の左右方向)にしか流路数を増やせないという制約があった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路に分割して多室化を図り得るようにした吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、型抜き方向を前後方向として成形されたダクト本体と、該ダクト本体内を前後に分割し且つその前後に分割されたダクト本体内を更に左右方向にも分割して前記空気取入口まで到る複数の流路を区画形成する内部仕切り部品とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、別途製作された内部仕切り部品をダクト本体に内蔵させることで該ダクト本体内を複数の流路に区画形成することが可能となり、従来の如き吸気ダクトの一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁を作る手法と比較して、流路断面積を大きく保つことが可能となるため、吸気抵抗の増加を回避することが可能となり、また、型抜き方向となる前後方向以外にも左右方向に流路数を増やすことが可能となる。
【0012】
更に、本発明においては、内部仕切り部品に各流路の音圧の高い箇所を隣の流路へ連通せしめる連通部を開口することが好ましく、このようにすれば、連通部を通じて圧力を隣の流路に逃がすことで気柱共鳴が抑制されるので、吸気脈動に起因した気柱共鳴による異音が低減されることになる。
【0013】
また、本発明においては、内部仕切り部品により区画形成された複数の流路のうちの一部を空気取入口に連通させずにレゾネータとして構成することも可能であり、このようにすれば、ヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数の音を低減させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ダクト本体内の流路断面積を大きく保ったまま内部を複数の流路に区画形成することができるので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路に分割して多室化を図ることができ、また、型抜き方向となる前後方向以外にも左右方向に流路数を増やすことができるので、ダクト本体を左右方向に必要以上に大きくすることなく複数の流路を効率良く区画形成することができる。
【0016】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、各流路の音圧の高い箇所に隣の流路への連通部を開口しているので、この連通部を通じて圧力を隣の流路に逃がすことで気柱共鳴を抑制することができ、吸気脈動に起因した気柱共鳴による異音を著しく低減することができる。
【0017】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、内部仕切り部品により区画形成された複数の流路のうちの一部をレゾネータとして構成しているので、ヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数の音を低減させることができ、吸気脈動に起因した気柱共鳴による異音を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のダクト本体に内蔵される内部仕切り部品の斜視図である。
【図3】図1のIII−III矢視の断面図である。
【図4】図1の空気取入口の前面をルーバーで被覆した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の別の形態例を示す斜視図である。
【図6】本発明の更に別の形態例を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視の断面図である。
【図8】一般的な吸気ダクトの一例を示す概略図である。
【図9】吸気ダクトの一部を潰して流路を分割した従来構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1及び図2に示す如く、本形態例における吸気ダクト8は、型抜き方向を前後方向として成形され且つその上側に空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fを開口したダクト本体9(図1参照)に、該ダクト本体9内を前後に分割し且つその前後に分割されたダクト本体9内を更に左右方向にも分割して前記空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fまで到る複数の流路A,B,C,D,E,F(図3参照)を区画形成する内部仕切り部品10(図2参照)を内蔵させた構造となっている。
【0022】
即ち、前記内部仕切り部品10は、ダクト本体9内を前後に分割する縦隔壁11と、該縦隔壁11により前後に分割されたダクト本体9内を更に左右方向に分割する側壁12とを備えた射出成形品として別途製作されたもので、前記ダクト本体9のブロー成形時に該ダクト本体9に内蔵させることで六つの流路A,B,C,D,E,F(図3参照)を前記ダクト本体9内に区画形成し得るようにしてある。
【0023】
また、前記内部仕切り部品10には、各流路A,B,C,D,E,Fの夫々を各空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6fの夫々に個別に連通せしめ得るようガイド部13,14,15,16,17が形成されており、ここに図示している例では、縦隔壁11で分割された後側の流路A,B,Cが上段側の空気取入口6a,6b,6cと連通し、縦隔壁11で分割された前側の流路D,E,Fが下段側の空気取入口6d,6e,6fと連通するようになっている。尚、図4に示す如く、前記各空気取入口6a,6b,6c,6d,6e,6f(図1参照)の前面には、雨や雪の吸い込みを極力回避し得るようルーバー18を被覆しておくことが好ましい。
【0024】
而して、このように吸気ダクト8を構成すれば、別途製作された内部仕切り部品10をダクト本体9に内蔵させることで該ダクト本体9内を複数の流路A,B,C,D,E,Fに区画形成することが可能となり、従来の如き吸気ダクトの一部を金型で挟み付けて潰すことで仕切壁を作る手法と比較して、流路断面積を大きく保つことが可能となるため、吸気抵抗の増加を回避することが可能となり、また、型抜き方向となる前後方向以外にも左右方向に流路数を増やすことが可能となる。
【0025】
従って、上記形態例によれば、ダクト本体9内の流路断面積を大きく保ったまま内部を複数の流路A,B,C,D,E,Fに区画形成することができるので、吸気抵抗の増加を招くことなく内部を複数の流路A,B,C,D,E,Fに分割して多室化を図ることができ、また、型抜き方向となる前後方向以外にも左右方向に流路数を増やすことができるので、ダクト本体9を左右方向に必要以上に大きくすることなく複数の流路A,B,C,D,E,Fを効率良く区画形成することができる。
【0026】
図5は本発明の別の形態例を示すもので、内部仕切り部品10の適宜位置に各流路A,B,C,D,E,Fの音圧の高い箇所を隣の流路A,B,C,D,E,Fへ連通せしめる連通部19を開口したものであり、このようにすれば、連通部19を通じて圧力を隣の流路A,B,C,D,E,Fに逃がすことで気柱共鳴を抑制することができ、吸気脈動に起因した気柱共鳴による異音を著しく低減することができる。
【0027】
ここで、内部仕切り部品10の適宜位置に連通部19を開口するにあたり、型抜き方向と直角な面については貫通孔として連通部19を形成すれば良く、型抜き方向と平行な面については切欠き部として連通部19を形成すれば良い。
【0028】
図6及び図7は本発明の更に別の形態例を示すもので、内部仕切り部品10により区画形成された複数の流路A,B,C,D,E,Fのうちの流路Aを空気取入口に連通させずにレゾネータ20として構成したものであり、ここに図示している例では、先に説明した図1における空気取入口6aを封じ且つここに対応していた流路Aを上方に開放すると共に、該流路Aの下部を接続口21を有する底板22で塞いで該底板22より上方に広がる空洞部分をレゾネータ20としている。
【0029】
このようにすれば、内部仕切り部品10により区画形成された複数の流路A,B,C,D,E,Fのうちの一つの流路Aをレゾネータ20として構成しているので、ヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数の音を低減させることができ、吸気脈動に起因した気柱共鳴による異音を著しく低減することができる。
【0030】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、ダクト本体内の分割形式には図示以外の形式を採用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
3 キャブ
6a,6b,6c,6d,6e,6f 空気取入口
8 吸気ダクト
9 ダクト本体
10 内部仕切り部品
19 連通部
20 レゾネータ
A,B,C,D,E,F 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、型抜き方向を前後方向として成形されたダクト本体と、該ダクト本体内を前後に分割し且つその前後に分割されたダクト本体内を更に左右方向にも分割して前記空気取入口まで到る複数の流路を区画形成する内部仕切り部品とを備えたことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
内部仕切り部品に各流路の音圧の高い箇所を隣の流路へ連通せしめる連通部を開口したことを特徴とする請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項3】
内部仕切り部品により区画形成された複数の流路のうちの一部を空気取入口に連通させずにレゾネータとして構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸気ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−132913(P2011−132913A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294602(P2009−294602)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】