説明

吸気マニホールド

【課題】EGRパイプを外殻の一部に対して、簡単な構造で容易に接続組み付けすることができるとともに、外殻におけるEGRパイプの接続部分に熱変形が生じるおそれを抑制することができる吸気マニホールドを提供する。
【解決手段】吸気マニホールドの外殻11を構成するサージタンク12のタンク壁17aの一部に、サージタンク12内へEGRガスを還流するためのEGRパイプ18を接続する。タンク壁17aのEGRパイプ18が接続される部分及びEGRパイプ18から還流されるガスが当たる部分を、他の部分に比して高耐熱性の材料で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用エンジンの吸気系に設けられる吸気マニホールドに関するものであって、特に、吸気マニホールドの外殻の一部にEGR(Exhaust Gas Recirculation)パイプを接続して、そのEGRパイプを介して吸気マニホールド内へEGRガスを還流するようにした吸気マニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸気マニホールドとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、合成樹脂よりなる吸気マニホールドの外殻の一部にEGRパイプが断熱材を介して接続されている。そして、高温のEGRガスがEGRパイプから吸気マニホールド内に還流される際に、断熱材によって、合成樹脂製の外殻におけるEGRパイプの接続部分が熱変形しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−317579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来構成においては、EGRパイプの接続部分に断熱材が必要であるため、構造が複雑で部品点数が多くなるとともに、組み付けが面倒になるという問題があった。また、この従来構成では、外殻におけるEGRパイプの接続部分に断熱構造が施されているが、EGRパイプから高温のEGRガスが吹き付けられる外殻の内壁部分には耐熱処理が施されていない。このため、合成樹脂製の外殻におけるEGRガスの吹き付け部分に熱変形を生じるおそれがあるという問題もあった。加えて、断熱材として、適切なものを選定しないと、断熱材がEGRパイプの組み付け圧力等によって変形してしまい、EGRパイプの組み付け状態にガタ付きが生じるおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、EGRパイプを外殻の一部に対して、簡単な構造で容易に組み付けることができるとともに、外殻におけるEGRパイプの接続部分に熱変形が生じたりするおそれを防止することができる吸気マニホールドを提供することにある。また、この発明の別の目的は、外殻においてEGRパイプから還流されるガスが当たる部分に熱変形が生じるおそれを防止することができる吸気マニホールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、吸気マニホールドの外殻の一部に、同吸気マニホールド内へEGRガスを還流するためのEGRパイプを接続した吸気マニホールドにおいて、前記外殻のEGRパイプが接続される部分を、外殻の他の部分に比して高耐熱性の材料で構成したことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の吸気マニホールドでは、高温のEGRガスがEGRパイプから吸気マニホールド内に還流される際に、外殻におけるEGRパイプの接続部分が熱変形するおそれを抑制することができる。また、従来構成とは異なり、外殻におけるEGRパイプの接続部分に断熱材を介装する必要がないため、構造が簡単で部品点数を削減することができるとともに、外殻に対するEGRパイプの接続組み付けを容易に行うことができる。しかも、圧力によって変形するおそれがある断熱材を用いる必要がないため、EGRパイプにガタ付きが生じるおそれを防止できる。さらに、EGRパイプからの高温のEGRガスが吸気マニホールドの内面に直接当たると、吸気マニホールドが熱変形するおそれがある。このため、高温のEGRガスが吸気マニホールドの内面に直接当たらないようにEGRパイプの先端部を湾曲加工したり、あるいはEGRガスクーラーを設けたりする必要があって、面倒な加工を強いられたり、余分な装置により構造が複雑になったりするものであった。
【0008】
前記の構成において、前記外殻においてEGRパイプから還流されるEGRガスが当たる部分を、外殻の他の部分に比して高耐熱性の材料で構成するとよい。
前記の構成において、前記外殻を構成するサージタンクのタンク壁の一部にEGRパイプを接続し、このタンク壁を高耐熱性の材料で構成するとよい。
【0009】
前記の構成において、前記高耐熱性の材料を合成樹脂により構成するとよい。
前記の構成において、前記高耐熱性の材料を金属により構成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、EGRパイプを外殻の一部に対して、簡単な構造で容易に接続組み付けすることができるとともに、外殻におけるEGRパイプの接続部分に熱変形が生じたりするおそれを抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の吸気マニホールドを示す分解斜視図。
【図2】図1の吸気マニホールドの要部拡大平断面図。
【図3】第2実施形態の吸気マニホールドを示す部分平断面図。
【図4】第3実施形態の吸気マニホールドを示す部分平断面図。
【図5】第4実施形態の吸気マニホールドを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した吸気マニホールドの第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の吸気マニホールドの外殻11は、耐熱性合成樹脂(例えば、ポリアミド樹脂)により一体的に形成されている。外殻11の中央部には、サージタンク12が設けられている。サージタンク12の左右両側には、複数の導入管13がその内側の導入口をサージタンク12に接続した状態で左右ほぼ対称状に突設されている。サージタンク12の前面には、エアを取り入れるための開口14が形成されている。この開口14には、図示しないエアクリーナによって濾過されたエアを取り入れるための図示しないエアダクトが接続される。
【0014】
前記導入管13は、水平対向エンジンの両側の各一対の燃焼室と対応するように、図1において左右各一対設けられている。前後に隣接する各一対の導入管13の先端部間には、取付座15が一体に形成されている。各取付座15には、吸気マニホールドの外殻11の全体を図示しないボルトにより同じく図示しないエンジンヘッドに固定するための複数の取付孔16が形成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、前記サージタンク12の下部には、サージタンク12の一部を構成するガス導入部17が一体に突出形成されており、このガス導入部17はタンク状をなして、サージタンク12の内部空間と一体の内部空間を備えている。このガス導入部17を構成するタンク壁としての周壁17a及び底壁17bは、前記外殻11のガス導入部17の他の部分を構成する耐熱性合成樹脂に比してさらに耐熱性の高い合成樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の合成樹脂を用いている。このガス導入部17は、前記外殻11と同時に二色成形されたり、外殻11の射出成形時にインサートされたりすることにより、サージタンク12の下部に一体に設けられる。
【0016】
前記ガス導入部17の周壁17aの前面には、サージタンク12内にEGRガスを還流するためのEGRパイプ18が接続されている。すなわち、ガス導入部17の周壁17aの前面には、挿通孔19及びガスケット溝20が形成されるとともに、一対のナット21がインサート成形により埋設されている。EGRパイプ18の中間部の外周には取付板22が固定され、その取付板22にはナット21に対応する一対の取付孔23が形成されている。EGRパイプ18の内端には、EGRパイプ18からサージタンク12内へのEGRガスの吹き出し方向を規制するための湾曲部18aが形成されている。なお、この湾曲部18aは、EGRガスを吸気に対して適切に混合させるために形成されたものである。
【0017】
そして、前記ガスケット溝20内にガスケット24が収容された状態で、EGRパイプ18が挿通孔19内に挿通されるとともに、取付板22がガス導入部17の周壁17aの前面に位置されている。この状態で、取付板22の取付孔23からナット21に対して一対のボルト25が螺合されることにより、取付板22がガスケット24に圧接されてEGRパイプ18がガス導入部17の周壁17aの前面に接続固定されている。
【0018】
次に、前記のように構成された吸気マニホールドの作用を説明する。
この吸気マニホールドの外殻11がエンジンに装着された状態で、そのサージタンク12の開口14にエアダクトが接続されるとともに、各導入管13の先端部がエンジンの吸気側に接続される。この状態で、エンジンが運転されると、開口14からサージタンク12内にエアが取り込まれ、そのエアが各導入管13内に分岐されて、エンジンの吸気系に供給される。このとき、EGRパイプ18からガス導入部17を介してサージタンク12内にEGRガスが還流されて、そのEGRガスが吸気エア中に取り込まれる。
【0019】
この場合、サージタンク12におけるガス導入部17の周壁17a及び底壁17bの全体が、EGRパイプ18の接続される部分及びEGRパイプ18から還流されるガスの当たる部分を含めて、サージタンク12及び導入管13よりなる外殻11の他の部分に比して高耐熱性の合成樹脂材料により構成されている。このため、高温のEGRガスがEGRパイプ18からサージタンク12内に還流される際に、ガス導入部17の周壁17aにおけるEGRパイプ18の接続部分や、EGRパイプ18から還流されるガスの当たる部分に熱変形が生じるおそれはない。
【0020】
また、前記のようにガス導入部17の底壁17bが高耐熱性の合成樹脂材料で構成されている。このため、エンジンに対する吸気マニホールドの装着状態において、ガス導入部17の底壁17bが図示しないエンジンヘッドと隣接した位置に対向配置された場合でも、その底壁17bがエンジンからの輻射熱により変形するおそれはない。
【0021】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この吸気マニホールドでは、外殻11におけるEGRパイプ18の接続部分を構成するガス導入部17が、外殻11の他の部分に比して高耐熱性の材料で構成されている。このため、高温のEGRガスがEGRパイプ18から吸気マニホールドの外殻11内に還流される際に、外殻11におけるEGRパイプ18の接続部分が熱変形するおそれを抑制することができる。しかも、EGRパイプ18から放出されるEGRガスがガス導入部17の内面に当たったとしても、その部分に熱変形が生じるおそれを抑制することもできる。
【0022】
(2) この吸気マニホールドでは、従来構成とは異なり、外殻11におけるEGRパイプ18の接続部分に断熱材を介装する必要がないため、構造が簡単で部品点数を削減することができるとともに、外殻11に対するEGRパイプ18の接続組み付けを容易に行うことができる。しかも、変形のおそれがある断熱材を用いる必要がないため、EGRパイプ18がガタついたりするおそれはない。
【0023】
(3) この吸気マニホールドでは、EGRパイプ18からのEGRガスが吸気マニホールドの内面に吹き付けられないように、同パイプ18の先端部を湾曲させたり、EGRガスのクーラーを設けたりする必要がないため、面倒な加工が不要で、構成も簡単になる。
【0024】
(4) この吸気マニホールドでは、前記高耐熱性の材料が合成樹脂により構成されている。このため、吸気マニホールドの外殻11を耐熱性の異なった合成樹脂材料の二色同時成形やインサート成形等により容易に成形することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した吸気マニホールドの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
この第2実施形態では、図3に示すように、サージタンク12におけるガス導入部17の周壁17a及び底壁17bが高耐熱性の合成樹脂材料により構成されている。ガス導入部17の周壁17aの前面内側には、接続ボス28が突設されている。接続ボス28内にはナット29がインサート成形により埋設され、そのナット29の外端内周縁には位置決め溝30が形成されている。EGRパイプ18の内端外周には、ナット29に螺合可能なネジ部31が形成されている。EGRパイプ18の中間部の外周には、ガス導入部17の周壁17aの前面に当接可能なフランジ部32が突設されている。フランジ部32の外面には、位置決め溝30に係合可能な位置決め部33が突設されている。
【0027】
そして、前記EGRパイプ18のネジ部31がナット29に螺合されることによって、EGRパイプ18がガス導入部17の周壁17aの前面に接続されている。このとき、フランジ部32がガス導入部17の周壁17aの前面に当接されることにより、EGRパイプ18が接続状態で気密に保持されている。また、位置決め部33が位置決め溝30に係合されることにより、EGRパイプ18が接続位置において緩みを生じないように位置決め保持されている。
【0028】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。この実施形態ではさらに以下の効果がある。
【0029】
(5) EGRパイプ18とナット29とがそれらのネジ部を介して結合されているため、EGRパイプ18を固定するための別部品のネジが不要になるばかりでなく、ガスケットが不要になり、部品点数を少なくすることができる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した吸気マニホールドの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
この第3実施形態では、図4に示すように、サージタンク12におけるガス導入部17が金属材料により構成されている。ガス導入部17はインサート成形されている。ガス導入部17の周壁17aの前面内側には接続ボス28が突設されている。接続ボス28の内周には雌ネジ部34が形成されるとともに、接続ボス28の外端内周縁には位置決め溝30が形成されている。
【0032】
そして、前記第1実施形態の場合とほぼ同様に、EGRパイプ18のネジ部31が接続ボス28の雌ネジ部34に螺合されることによって、EGRパイプ18がガス導入部17の周壁17aの前面に接続されている。このとき、フランジ部32と周壁17aの前面との当接により、EGRパイプ18が接続状態で気密に保持されるとともに、位置決め部33と位置決め溝30との係合により、EGRパイプ18が接続位置に緩み止め保持されている。
【0033】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)及び第2実施形態の効果に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6) この吸気マニホールドでは、ガス導入部17が金属により構成されている。このため、EGRパイプ18の接続部分及びEGRガスの当たる部分を、熱変形しないように強固に構成することができる。
【0034】
(7) この吸気マニホールドでは、ガス導入部17の接続ボス28の内周に雌ネジ部34が形成されているため、別部品のナットが不要になり、部品点数を少なくすることができる。
【0035】
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化した吸気マニホールドの第4実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。この第4実施形態は、直列4気筒エンジンの吸気マニホールドにおいて本発明が具体化されたものである。
【0036】
この第4実施形態においては、図5に示すように、外殻11の一部を構成する円筒状のサージタンク12の下部外周に4本の導入管13が一側方に向かって突出形成されている。各導入管13の先端部間には取付座15が一体に形成され、その取付座15にはエンジンヘッド等に固定するための複数の取付孔16が形成されている。
【0037】
前記サージタンク12の開口14の上方において、サージタンク12の上部外周にはガス導入部17が突設されている。このガス導入部17の周壁17a及び頂壁17cは、前記第1実施形態の場合と同様に、外殻11の他の部分を構成する合成樹脂に比して耐熱性の高い合成樹脂を用いて、二色同時成形等により一体に形成されている。そして、第1実施形態の場合と同様の構成によって、ガス導入部17の周壁17aの前面に、EGRパイプ18が接続固定されるようになっている。
【0038】
従って、この第4実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0039】
・ この発明を前記各実施形態のエンジン以外の他のエンジン,例えば直列6気筒,V型,水平対向6気筒,ロータリー等の各エンジンにおいて具体化すること。
・ ガス導入部17が外殻11の他の部分と同系材質の場合、ガス導入部17を外殻11の他の部分に対して振動(超音波を含む)溶着させること。
【0040】
・ 前記各実施形態において、外殻11のEGRパイプ18が接続される部分及びEGRパイプ18から還流されるガスが当たる部分のみを、高耐熱性の材料で構成すること。例えば、サージタンク12を高耐熱性の材料で構成し、EGRパイプ18をそのサージタンク12に接続すること。
【0041】
・ 図2に2点鎖線で示すように、EGRパイプ18の先端部の湾曲部18aを省略し、その先端部を直線状にすること。
・ 耐熱性合成樹脂よりなるガス導入部17の壁部に直接雌ネジを切り、EGRパイプ18の外周のネジ部をその雌ネジに螺合すること。
【符号の説明】
【0042】
11…吸気マニホールドの外殻、12…サージタンク、13…導入管、17…ガス導入部、17a…タンク壁としての周壁、17b…底壁、18…EGRパイプ、21…ナット、22…取付板、25…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気マニホールドの外殻の一部に、同吸気マニホールド内へEGRガスを還流するためのEGRパイプを接続した吸気マニホールドにおいて、
前記外殻のEGRパイプが接続される部分を、外殻の他の部分に比して高耐熱性の材料で構成したことを特徴とする吸気マニホールド。
【請求項2】
前記外殻においてEGRパイプから還流されるEGRガスが当たる部分を、外殻の他の部分に比して高耐熱性の材料で構成したことを特徴とする請求項1に記載の吸気マニホールド。
【請求項3】
前記外殻を構成するサージタンクのタンク壁の一部にEGRパイプを接続し、このタンク壁を高耐熱性の材料で構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の吸気マニホールド。
【請求項4】
前記高耐熱性の材料を合成樹脂により構成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の吸気マニホールド。
【請求項5】
前記高耐熱性の材料を金属により構成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の吸気マニホールド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−24090(P2013−24090A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158203(P2011−158203)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】