説明

吸気音伝達装置及び吸気音伝達方法

【課題】吸気音の増幅代が大きな吸気音伝達装置及び方法を提供する。
【解決手段】エンジン1の吸気口2と外気導入口3とを連通する吸気管4に介挿したエアクリーナボックス5にエンジンフード10に面した開口7を設け、その開口7を通じて、吸気管4内の圧力変動をエンジンフード10に伝達して当該エンジンフード10を振動させ吸気音を増幅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気音を車室内に伝達する吸気音伝達装置及び吸気音伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気音は車外騒音となるため低減する対象であったが、近年、吸気音を乗員に積極的に聞かせて、スポーティなサウンドを演出するという試みがなされている。
そのためのエンジン吸気音を車室内に伝達する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術では、エンジンルーム内を、ダッシュパネル側の第2エンジンルームとその前方の第1エンジンルームとに区画し、第1エンジンルームに配置されたエンジンの吸気口と外気導入口とを連通する吸気管における外気導入口側の側壁開口部と、運転席側ダッシュパネルの上部パネルとを、前記第1エンジンルームからフェンダー内部を経て第2エンジンルーム内を通るフレキシブルチューブで連通するものである。そして、前記チューブを介して吸気通路内の吸気音の圧力変動でダッシュパネルを振動させて、車室内に吸気音を伝達する。
【特許文献1】特開2004−218458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来技術では、音を増幅できる範囲が小さく、所望の音の大きさに達しない場合があった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、吸気音の増幅代が大きな吸気音伝達装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気通路内の圧力変動に基づいてエンジンフードの易振動部位を振動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、エンジンフードの易振動部位を振動させて広い面積で空気に圧力変動を加える事で、吸気音の増幅代が大きい吸気音伝達装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態を説明する概要構成を示す平面図である。
まず構成について説明すると、エンジンルーム11内にエンジン1が配置され、そのエンジン1の左右の各吸気口2と、車体前側に設けられた左右の外気導入口3とが、左右の吸気管4を介してそれぞれ接続されている。各吸気管4の途中には、吸気管4よりも大きな中空断面を有する拡張部としてのエアクリーナボックス5が介挿されている。そのエアクリーナボックス5内には、エンジン1側への異物の侵入を防止するためのフィルタ6が内装されている。そして、吸気管4とエアクリーナボックス5とで吸気経路が構成されている。
【0007】
また、図1及び図2に示すように、前記エアクリーナボックス5の上板5a、つまり上方のエンジンフード10と対向する板に、振動伝達用の開口7が開設されている。その開口7は、前記上板5aにおける、前記フィルタ6の配置位置よりも外気導入口3側の位置に設けられている。
また、前記開口7の周縁全周を囲む筒状の弾性体8を備える。その筒状の弾性体8は、軸を上下に向けて配置され、下端部をエアクリーナボックス5に固定すると共に上方にあるエンジンフード10に向けて突出している。その弾性体8の高さ方向の長さは、弾性体8の上端開口面が、閉じた状態のエンジンフード10に当接するだけの上下方向長さとなっている。エンジンフード10の内側(エンジンルーム11側)には、エンジンフード10を補強する補強部材14が設けられており、剛性が高くなっている。そこで、振動伝達用の開口7の位置、弾性体8の上端開口面の位置を車両上面視において、補強部材14と重ならない位置、すなわち、エンジンフード10の剛性が低い位置に設けている。
【0008】
なお、弾性体8の上端開口面が閉じた状態のエンジンフード10に当接した状態では、エンジンフード10に下方へ押されて当該弾性体8が上下方向に若干圧縮された状態となる長さに設定しておく方が、エンジンフード10との密着性が向上して好ましい。
なお、前記筒状の弾性体8の下端部は、エアクリーナボックス5の上板5aの上面に取付けブラケット若しくは固着などによって固定されていても良いし、前記開口7内に一部若しくは全部が圧入された状態で固定されていても良い。
【0009】
また、前記開口7及び筒状の弾性体8の中空断面形状は円形である必要はないし、開口7の形状と弾性体8の中空断面形状とが同じ形状である必要もない。また、前記弾性体8の中空断面は上下方向に沿って一定である必要はなく、例えばエンジンフード10側に向けて中空断面が大きくなるコーン状となっていても良い。また、弾性体8の上下に延びる軸は鉛直方向である必要はなく、例えば上側がダッシュパネル側に倒れるように鉛直軸から前後左右のいずれかの方向に傾いていても良い。
【0010】
また、エンジンフード10に面した開口7を直接、吸気管4に設ける必要はない。例えば、図4及び図5に示すように、吸気管4(本実施形態ではエアクリーナボックス5)に連通し、先端の開口7がエンジンフード10に対向した吸気経路の一部を構成する分岐管13(分岐路)を設けることで、分岐管13を介して開口7をエンジンフード10に面するように配置しても良い。そして図4に示すように、弾性体8の上端開口面の位置、分岐管13の先端の開口7の位置を車両上面視において、補強部材14と重ならない位置、すなわち、エンジンフード10の剛性が低い位置に設けている。
【0011】
この場合には、分岐管13が接続される吸気管の部分はエンジンフード10に対向している必要は無い。このように、分岐管13を用いる異により、吸気管4にエンジンフード10に面した開口7を直接設けることが困難な場合であっても、圧力変動をエンジンフード10に伝達することが可能となる。
前記構成では、エンジン1の稼働中は、吸気管4を通じてエンジン1に空気が吸入され、各気筒のシリンダ内部への空気流入が間欠的に発生することで、吸気管4内の吸入空気に脈動が発生し吸気管4内に気中共鳴が発生する。特に加速時にはエンジン1吸気量が増えて大きくなる。
【0012】
前記気中共鳴により発生する吸気管4中の圧力変動は、前記開口7から上方に位置するエンジンフード10の下面に伝達されることで、前記圧力変動によってエンジンフード10が上下に振動することになる。このエンジンフード10は広い面積を有しているので、エンジンフード10が振動することで、広い面積で空気に圧力変動を加えて大きな音を発生可能となる。前記機序によって、エンジンルーム11内で増幅された吸気音が、車室内に伝達されて、乗員に認知される。その際に、エンジンフード10は一般的に吸気管4の近傍に位置するため、長いフレキシブルチューブを使用する必要が無く、空間の有効利用が図られる。
【0013】
また、振動伝達用の開口7の位置、弾性体8の上端開口面の位置、または、分岐管13の先端の開口7の位置を、車両上面視において、補強部材14と重ならない位置、すなわち、エンジンフード10の剛性が低い位置に設けているため、エンジンフード10の振動をより大きくすることができ、吸気音の増幅効率を向上することが出来る。
図3に、前記開口7を設ける場合と設けない場合の音圧レベルを示す。
【0014】
ここで、前記伝達用の開口7を、エンジンフード10に向けることで、吸気管4中の圧力変動を直接エンジンフード10に与えることが出来る。前記開口7ができるだけエンジンフード10に近くなるように、前記開口7を設ける位置をエンジンフード10側に近づけ配置することが好ましい。よりエンジンフード10を振動させやすくなる。
さらに、弾性体8内の中空部を通過することで、開口7からの圧力変動を、外周に拡散することなく効率よくエンジンフード10に伝達することが出来る。
【0015】
また、吸気管4に開口7を設けても、開口7の外周とエンジンフード10とに間に前記弾性体8を配置することで、エンジン1の熱気を前記開口7から吸気管4内に吸い込んで吸気の温度が上昇することが防止される。なお、吸気の温度が上昇するとエンジン1の出力低下に繋がる。
また、車体外側から水がエンジンルームに侵入する場合も想定されるが、前記弾性体8によって侵入した水が前記開口7から吸気管4内に侵入することが回避される。吸気管4に水が侵入すると、その水によってエンジン1に悪影響がでるおそれがある。また、弾性体8によって開口7から吸気管4内に異物が侵入することも防止される。
【0016】
更に、開口7から吸気管4内に異物が侵入しても、フィルタ6よりも外気導入口3側に前記開口7があることで、侵入された異物はフィルタ6に捕捉されて、エンジン1の吸気口2に吸い込まれることが回避、つまりエンジン故障の原因となることが抑制される。
また、前記エアクリーナボックス5は、吸気管4よりも断面が大きい拡張部であることで、拡張室の機能を有し、吸気管4中の圧力変動が増幅されている。従って、その拡張部に開口7を設けることで、増幅された圧力変動でエンジンフード10を振動させることができるため、増幅効率を大きくすることが出来る。特に、エアクリーナ5に開口7を設けたので、拡張部を別途追加で設ける必要も無い。
【0017】
ここで、前記実施形態では、エアクリーナボックス5に開口7を設けた例を説明したが、吸気管4に開口7を形成することも可能である。また、前記開口7は2以上あっても構わない。また、フィルタ6位置よりもエンジン1吸気口2に開口7を配置することも可能である。弾性体8で開口7への異物や水などの侵入を防止可能であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る構成を示す平面図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る構成を示す図1のA−A視の図である。
【図3】音圧レベルと爆発回転1次成分の関係を示す図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る構成の別例を示す平面図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係る構成の別例を示す図4のB−B視の図である。
【符号の説明】
【0019】
1 エンジン
2 吸入口
3 外気導入口
4 吸気管(吸気通路)
5 エアクリーナボックス
7 開口
8 弾性体
10 エンジンフード
11 エンジンルーム
13 分岐管(分岐路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気口と外気導入口とを連通する吸気通路の途中にエンジンフードに面した開口を設け、その開口を通じて前記吸気通路内の圧力変動をエンジンフードの易振動部位に伝達して該エンジンフードの易振動部位を振動させることを特徴とする吸気音伝達装置。
【請求項2】
前記吸気通路の途中に拡張部が介挿され、該拡張部に前記開口を連通させたことを特徴とする請求項1に記載した吸気音伝達装置。
【請求項3】
前記拡張部はフィルタを内装したエアクリーナであることを特徴とする請求項2に記載した吸気音伝達装置。
【請求項4】
吸気通路の途中にフィルタが介挿され、そのフィルタよりも外気導入口側に前記開口を連通したことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載した吸気音伝達装置。
【請求項5】
前記吸気通路は、先端部に前記開口を有する分岐路を有することを特徴とする請求項1に記載した吸気音伝達装置。
【請求項6】
吸気通路の途中に拡張部が介挿され、該拡張部に前記分岐路の基部を連接させたことを特徴とする請求項5に記載した吸気音伝達装置。
【請求項7】
前記拡張部は、フィルタを内装したエアクリーナボックスであることを特徴とする請求項6に記載した吸気音伝達装置。
【請求項8】
前記開口の周縁全周を囲むように配置されると共に前記エンジンフードに向けて突出し、かつ先端部をエンジンフードに当接する弾性体を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した吸気音伝達装置。
【請求項9】
前記易振動部位は、エンジンフードの低剛性部位であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載した吸気音伝達装置。
【請求項10】
エンジンの吸気口と外気導入口とを連通する吸気通路内の圧力変動をエンジンフードの易振動部位に伝達して当該エンジンフードの易振動部位を振動させることを特徴とする吸気音伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−231931(P2007−231931A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333379(P2006−333379)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】