説明

吸水剤組成物およびその製造方法

従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を実現する。本発明の吸水剤組成物は、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、(a)液拡散速度(LDV)低下率が30%以下、(b)食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7cm・s/g)以上、(c)質量平均粒子径(D50)が200〜420μm、(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40、(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下、の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボン酸系吸水剤を主成分とする吸水剤組成物およびその製造方法に関するものである。更に詳しくは、通液性および液吸い上げ特性に優れた吸水剤組成物およびその製法方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸水剤組成物は、体液(尿や血液)を吸収させることを目的として、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等などの衛生材料(吸収性物品)において、その主要な構成材料として幅広く利用されている。
【0003】
上記吸水剤組成物としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマー重合体の架橋体、架橋イソブチレン−マレイン酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体等が知られている。
【0004】
上記吸水剤組成物に望まれる吸水特性としては、体液等の水性液体に接した際の高い吸水倍率、優れた吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引量等が挙げられる。
【0005】
近年、紙おむつなど衛生材料では高機能化および薄型化が進み、吸水剤組成物の使用量や使用比率(質量%/吸収性物品中での比率)を高めることで、吸収量の増大や漏れ防止性を確保しながら薄型化を図っている。
【0006】
このように、吸水剤組成物を増加させた衛生材料は単純に液体を貯蔵するという観点からは好ましい方向である。しかしながら、実際のおむつの使用では吸水剤組成物は吸水により膨潤し柔らかいゲル状となり、いわゆるおむつ中でゲルブロッキングを起こし、吸収量低下や漏れを起こすという問題が生じる。
【0007】
そこで、吸水剤組成物の通液性が近年注目され、通液性を高めた吸水剤組成物が報告されている(例えば、特許文献1〜7参照)。しかし、従来の吸水剤組成物で高い通液性を発現しようとする場合、粒子径を大きくしてゲル隙間を大きくする必要があるため、一般に高い通液性の吸水剤組成物では、吸水剤組成物における粒子若しくはゲル間の隙間が大きい(通液性は粒子間の隙間の大きさと正の相関がある)。一方で、液の吸い上げ特性は粒子のキャピラリー力と正の相関があり、粒子間の隙間が大きい方がキャピラリー力が小さくなることが知られているから、液の吸い上げ特性は粒子若しくはゲル間の隙間の大きさと負の相関があると言える。よって、粒子間の隙間を大きくすることで通液性を向上させると、液吸い上げ特性が低下するという問題が生じる。
【0008】
また、粒度分布が通液性に非常に寄与することも知られており、吸水剤組成物の粒度を制御する技術も検討されている(例えば、特許文献8〜11参照)が、粒度を大きくすると液吸い上げ特性が低下するという問題を有している。液吸い上げ特性は従来から知られている重要な特性である(例えば、特許文献12、13参照)が、吸水剤組成物の通液性と液吸い上げ特性とをともに向上させた吸水剤組成物を得ることは、両者が相反する物性であるため、非常に困難である。
【0009】
最近、上記相反する通液性と液吸い上げ特性とをともに向上させた吸水剤組成物として、特定の粒度分布を有する吸水剤組成物の表面に4価以上のポリオールを含有させたものが報告されている(例えば、特許文献14参照)。
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、保管状態や吸水剤を原料として使用するおむつ等の衛生材料メーカーでのプロセスダメージなどによっては吸水剤組成物の液吸い上げ特性が低下してしまうという問題を生じる。
【0011】
〔特許文献1〕国際公開第95/26209号パンフレット(1995年10月5日公開)
〔特許文献2〕欧州特許第0951913号明細書(1999年10月27日公開)
〔特許文献3〕欧州特許第0640330号明細書(1995年3月1日公開)
〔特許文献4〕国際公開第2001/066056号パンフレット(2001年9月13日公開)
〔特許文献5〕国際公開第98/47454号パンフレット(1998年10月29日公開)
〔特許文献6〕米国特許第6414214号明細書(2002年7月2日公開)
〔特許文献7〕米国公開2002/128618号明細書(2002年9月12日公開)
〔特許文献8〕米国特許第5051259号明細書(1991年9月24日公開)
〔特許文献9〕欧州特許第0349240号明細書(1990年1月3日公開)
〔特許文献10〕欧州特許第0579764号明細書(1994年1月26日公開)
〔特許文献11〕欧州特許第0629411号明細書(1994年12月21日公開)
〔特許文献12〕欧州特許第0532002号明細書(1993年3月17日公開)
〔特許文献13〕米国特許第6399668号明細書(1993年3月17日公開)
〔特許文献14〕特開2005−154758号公報(平成17年6月16日公開)
【発明の開示】
【0012】
本発明の目的は、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を提供することである。
【0013】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、特定粒度に制御された吸水剤組成物であって、特定の水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する場合に、通液性および液吸い上げ特性に優れた吸水剤組成物となることを見出した。また、このような通液性および液吸い上げ特性に優れた吸水剤組成物は、特定粒度および特定の通液性に制御された吸水剤に水不溶性の有機若しくは無機微粒子スラリーを混合すれば容易に製造することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る吸水剤組成物は、上記の目的を達成するために、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、下記(a)〜(e)の条件
(a)液拡散速度(LDV)低下率が30%以下
(b)食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7cm・s/g)以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜420μm
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40
(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下
を満たすことを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、本発明に係る吸水剤組成物は、微粉が少なく、通液性および液吸い上げ特性に適した粒度を有する。また、本発明に係る吸水剤組成物は、特定の水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有しているため、LDVが大きく、優れた液吸い上げ特性を示す。また、上記吸水剤組成物は、LDV低下率が低いため、保管条件や吸水剤を原料として使用するおむつ等の衛生材料メーカーでのプロセスダメージなどによる環境の変化に対して液吸い上げ特性が低下し難い。さらには、上記吸水剤組成物は、SFCが高いため、液吸収後の通液性に優れている。よって、上記構成によれば、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない高性能なオムツでの使用に適した吸水剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る吸水剤組成物は、上記の目的を達成するために、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、下記(a’)〜(d’)の条件
(a’)粒子径が300〜600μmの粒子の含有率が30質量%以上
(b’)無加圧下平均隙間半径指数が310μm未満
(c’)液拡散速度(LDV)が2.0mm/s以上
(d’)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7cm・s/g)以上
を満たすことを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、本発明に係る吸水剤組成物は、微粉が少なく、通液性および液吸い上げ特性に適した粒度を有する。また、本発明に係る吸水剤組成物は、特定の水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有しているため、無加圧下平均隙間半径指数が小さい。このため、キャピラリー力が大きく、優れた液吸い上げ特性を示す。また、LDVが高いことによりさらに優れた液吸い上げ特性を示す。さらには、上記吸水剤組成物は、SFCが高いため、液吸収後の通液性に優れている。よって、上記構成によれば、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない高性能なオムツの使用に適した吸水剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る吸水剤組成物の製造方法は、上記の目的を達成するために、アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を架橋処理して、下記(i)〜(iv)の条件
(i)質量平均粒子径(D50)が200〜500μm
(ii)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の5質量%以下
(iii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(iv)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7×cm×s×g−1)以上
を満たす吸水剤を得る工程と、
上記得られた吸水剤に、平均粒子径が1〜100nmの水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加混合する工程とを含み、且つ、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固形分0.1〜50質量%のスラリーの状態で添加されることを特徴としている。
【0019】
上記製造方法によれば、吸水剤に、水不溶性の有機若しくは無機微粒子をスラリーの状態で添加することにより吸水剤組成物を製造するため、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を固体で添加する場合と比べて上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の凝集がほぐれた状態で上記吸水剤に添加される。つまり、1次粒子が単独で存在する状態に近い状態で上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子は上記吸水剤に添加される。粒子径が小さい状態で水不溶性の有機若しくは無機微粒子が吸水剤に導入されるため、吸水剤における吸水剤の粒子間の隙間を広げ難い。
【0020】
また、スラリー状(または分散状)の水不溶性微粒子として親水性の有機若しくは無機微粒子を選択することで、吸水剤のキャピラリー力を低下させることなく、吸水剤表面の親水性を向上させることができるため、液吸い上げ特性を更に向上させることができる。
【0021】
さらには、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加する際、同時に水などの液体が上記吸水剤に添加されることになる。このため、吸水剤におけるポリマー分子が僅かに膨張し、ポリマーの網目が開いた状態で上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が導入される。よって、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子は上記吸水剤の表面から少し内部側に取り込まれるため、吸水剤組成物から上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の乖離(剥離)が起こり難い。従って、上記吸水剤から製造した吸水剤組成物は保管条件や吸水剤を原料として使用するおむつ等の衛生材料メーカーでのプロセスダメージなどによる環境の変化に対して液吸い上げ特性が低下し難い。
【0022】
また、上記吸水剤は、微粉が少なく、通液性および液吸い上げ特性に適した粒度を有するため、上記吸水剤から製造した吸水剤組成物は優れた通液性を示す。従って、上記製造方法によれば、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を製造することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0025】
なお、以下の説明において、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。また、「主成分」とは50重量%以上、好ましくは70重量%以上100重量%以下含有しているという意味として扱う。
【0026】
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であり、下記(a)〜(e)の条件
(a)液拡散速度(LDV)低下率が30%以下
(b)食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7×cm×s×g−1)以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜420μm
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40
(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下
を満たしている、または下記(a’)〜(d’)の条件
(a’)粒子径が300〜600μmの粒子の含有率が30質量%以上
(b’)無加圧下平均隙間半径指数が310μm未満
(c’)液拡散速度(LDV)(LDV耐性試験前のLDV)が2.0mm/s以上
(d’)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7cm・s/g)以上
を満たしている。
【0027】
(1)吸水剤
本実施の形態に係る吸水剤とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性であり、且つ水不溶性の架橋重合体のことである。水膨潤性の架橋重合体とは、例えば、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍の水を吸収するものを指す。また、水不溶性の架橋重合体とは、例えば、吸水剤中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは0〜50質量%、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のものを指す。なお、これらの測定法は後述する実施例で規定する。
【0028】
上記吸水剤としては、通液性および液吸い上げ特性の面から、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水剤が好ましく用いられ、より好ましくは、架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤(吸水性ポリマー)である。
【0029】
上記吸水剤として、具体的には、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、またはこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等の1種または2種以上の混合物が挙げられる。上記吸水剤としては、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合および架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体が好ましい。
【0030】
なお、上記酸基含有不飽和単量体としては、アクリロニトリルなど重合後の加水分解によって酸基となる単量体も酸基含有不飽和単量体とするが、好ましくは、重合時に酸基を含有する酸基含有不飽和単量体が用いられる。
【0031】
上記単量体としてアクリル酸および/またはその塩を主成分とする場合、他の単量体を併用してもよい。併用される他の単量体としては、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等が挙げられる。
【0032】
単量体としてアクリル酸(塩)以外を用いる場合には、アクリル酸(塩)以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸および/またはその塩の合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%の割合で用いられる。アクリル酸(塩)以外の単量体を上記割合で使用することにより、最終的に得られる吸水剤(および吸水剤組成物)の吸収特性がより一層向上すると共に、吸水剤(および吸水剤組成物)をより一層安価に得ることができる。
【0033】
上記吸水剤は架橋構造を必須とする。吸水剤に架橋構造を形成させるためには、内部架橋剤を使用してもよいし、内部架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよい。上記架橋形成方法としては、一分子中に、2個以上の重合性不飽和基または2個以上の反応性基を有する内部架橋剤(吸水剤の内部架橋剤)を共重合または反応させたものがより好ましい。
【0034】
上記内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、メソエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、上記内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水剤や吸水剤組成物の吸収特性等を考慮して、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0036】
上記内部架橋剤の使用量は上記単量体(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜1モル%、さらに好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.2モル%、最も好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内とされる。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%よりも多い場合には、水可溶成分が多くなったり、あるいは吸水倍率が低くなること等、充分な吸収特性が得られないおそれがある。
【0037】
上記内部架橋剤を用いた重合体内部への架橋構造の導入の時期は、特に限定されず、例えば、上記内部架橋剤を上記単量体の重合前、重合途中、重合後、または中和後に反応系に添加することにより行うことができる。
【0038】
本実施の形態に係る吸水剤を得るための上記単量体の重合方法としては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さ、さらには吸水剤若しくは吸水剤組成物の吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液として用いる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0039】
単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と記す)中における単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類などによって決定され、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されない。
【0040】
上記逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号明細書、同4367323号明細書、同4446261号明細書、同4683274号明細書、同5244735号明細書などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号明細書、同4873299号明細書、同4286082号明細書、同4973632号明細書、同4985518号明細書、同5124416号明細書、同5250640号明細書、同5264495号明細書、同5145906号明細書、同5380808号明細書などの米国特許や、欧州特許0811636号明細書、同0955086号明細書、同0922717号明細書などの欧州特許に記載されている方法により行うことができる。上記重合法に例示の単量体や開始剤なども適用することができる。
【0041】
上記重合を開始させる際には、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤、および/または2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は重合後の吸水剤の物性を考慮して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%(対全単量体)である。
【0042】
重合後、重合体は通常、含水ゲル状架橋重合体であり、必要に応じて乾燥し、乾燥の前および/または後で通常粉砕することにより吸水剤とする。また、乾燥は通常60〜250℃、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率(吸水剤や吸水剤組成物中に含まれる水分量で規定/180℃で3時間の乾燥減量で測定)、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう設定される。
【0043】
本実施の形態に係る吸水剤の含水率は特に限定されないが、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜25質量%、さらに好ましくは3〜15質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。含水率が30質量%を超えると、粉体としての流動性に乏しくなり、後に続く工程での取り扱いが困難になるため好ましくない。また、含水率が1質量%未満であると、乾燥時間の長期化などにより製造コストが増加してしまうため好ましくない。
【0044】
上記の方法により得られる吸水剤は、無加圧下での生理食塩水に対する無加圧下吸収倍率(CRC)(測定法は後述する実施例で規定)が、好ましくは8〜50g/g、より好ましくは10〜50g/g、さらに好ましくは20〜40g/g、最も好ましくは25〜35g/gの範囲である。この無加圧下吸収倍率(CRC)などの物性は目的に応じて適宜調整されるが、8g/g未満や50g/gを超えるような場合には、本発明の吸水剤組成物が得られなくなる恐れがある。
【0045】
本実施の形態に係る吸水剤は、上述したように、酸基含有不飽和単量体を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を架橋処理する工程とによって製造することができる。
【0046】
平均粒径(D50)、対数標準偏差(σζ)および粒子径150μm未満の粒子の割合等の上記吸水剤の粒度は、吸水剤組成物とした後に分級などで調整することができるため、特に限定はされない。しかしながら、吸水剤組成物とした後の手間を省くことができるため、平均粒径(D50)は、200〜500μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは200〜450μmの範囲内であり、さらに好ましくは220〜450μmの範囲内であり、特に好ましくは250〜430μmの範囲内であり、最も好ましくは300〜400μmの範囲内に調整される。また吸水剤粒子全量に対する粒子径が300μm以上600μm以下の粒子の含有率は好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上である。
【0047】
上記吸水剤を上記範囲内に製粒(粒度調整)するためには、逆相懸濁重合で製造した場合、粒子状で分散重合および分散乾燥させて調整してもよい。
【0048】
また、水溶液重合の場合には、乾燥後に粉砕および分級を行うことにより調整することができる。上記粉砕および分級による調整では、相反する質量平均粒子径D50と粒子径150μm未満の粒子の割合とを制御しながら、特定の粒度分布に調整される。例えば、質量平均粒子径D50を450μm以下と小さくしながら150μm未満の微粒子量を少なくするという特定粒度への調整では、必要により上記粉砕後に粗粒子と微粒子とを篩などの一般的な分級装置で除去すればよい。その際に除去される粗粒子としては好ましくは500μm〜5000μmの粒子径を有する粒子、より好ましくは450μm〜5000μmの粒子径を有する粒子、さらに好ましくは450μm〜2000μmの粒子径を有する粒子、特に好ましくは450μm〜1000μmの粒子径を有する粒子である。また、粒度調整により除去される微粒子としては、好ましくは200μm未満の粒子径を有する粒子、より好ましくは150μm未満の粒子径を有する粒子である。
【0049】
尚、除去した粗粒子はそのまま廃棄してもよいが、一般的には、再度上記粉砕工程にリサイクルされて粉砕される。また、除去された微粒子はそのまま廃棄してもよいが、後述する微粒子の凝集化を行えば、収率のロスを低減することができる。
【0050】
このようにして粉砕工程を経て特定の粒度分布に調整して得られた吸水剤の形状は不定形破砕状の形状を示す。
【0051】
粉砕・分級などの粒度制御によって除去された微粒子は、より大きな粒子または粒子状凝集物に再生し、本実施の形態係る吸水剤として用いることができる。米国特許6228930号、同5264495号、同4950692号、同5478879号および欧州特許844270号などに記載の分離された微粒子と水性液とを特定の条件下で接触増粘させて凝集させる方法を用いることで微粒子をより大きな粒子または粒子状凝集物に再生することが可能であり、このように再生された吸水剤は実質的に多孔質構造を有する。
【0052】
本実施の形態に係る吸水剤に含まれる、上述した粗粒子および微粒子から再生された吸水剤の割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、最も好ましくは10〜30質量%である。
【0053】
上記再生された吸水剤の微粒子を本発明の吸水剤として用いた場合、同じ粒子径を有する1次粒子と比べて表面積が大きいため、より速い吸収速度が得られ、性能的に有利である。このように微粒子が凝集することにより再生された吸水剤は、一般には、粉砕および・分級および粒度制御を行う前に、上記乾燥工程で得た吸水剤と混合される。
【0054】
また、本実施の形態に係る吸水剤の粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.25〜0.45の範囲内であり、より好ましくは0.25〜0.43の範囲内であり、さらに好ましくは0.25〜0.40の範囲内であり、特に好ましくは0.26〜0.38の範囲内である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さいほど粒度分布が狭いことを表すが、本実施の形態に係る吸水剤組成物では粒度分布が単に狭いのではなく、ある程度の広がりをもつことが重要となる。対数標準偏差(σζ)が0.25未満の場合は、工程内でのロスやリサイクル工程の増加により、生産性が著しく低下してしまう。0.40を超える場合には粒度分布が広がりすぎて、目的とする性能が得られない恐れがある。
【0055】
また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0〜4.5質量%であり、さらに好ましくは0〜4.0質量%であり、特に好ましくは0〜3.5質量%である。また、粒子径850μm以上粒子の割合は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0〜4.5質量%であり、さらに好ましくは0〜4.0質量%であり、特に好ましくは0〜3.5質量%である。上記粒子径150μm未満の粒子の割合並びに粒子径850μm以上粒子の割合が両方上記範囲内であることが最も好ましい。
【0056】
なお、ここで全体とは、吸水剤全体を意味する。また、本実施の形態では、「150μm未満の粒子」とは後述する篩分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有するJIS標準篩のメッシュを通過した粒子を指す。また、「150μm以上の粒子」とは同様に後述する分級方法で分級された後に、測定される150μmの目開きを有するJIS標準篩の上に残った粒子を指す。他の目開きの大きさについても同様である。また、150μmの目開きを有するメッシュで粒子の50質量%が分級される場合、その重量平均粒子径(D50)は150μmである。
【0057】
本発明に係る吸水剤組成物に用いられる吸水剤は、特に限定は無いが、上記の架橋重合および乾燥して得られたものを、さらに、表面架橋(二次架橋)したものが好ましく用いられる。
【0058】
上記表面架橋を行うための表面架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、一般的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ,ジ,またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、オキセタン化合物、環状尿素化合物等が用いられる。
【0059】
上記表面架橋剤としては、具体的には、米国特許6228930号明細書、同6071976号明細書、同6254990号明細書などに例示されている。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、メソエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの多価アルコール化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物(US6559239);オキセタン化合物;環状尿素化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物(US5409771)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。吸水剤の液吸い上げ特性をより向上させるために、これらの架橋剤の中でも少なくともオキセタン化合物(US2002/72471)、環状尿素化合物、多価アルコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10のオキセタン化合物あるいは多価アルコールから選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられる。
【0060】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水剤100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部の範囲内が好ましく、0.01質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。
【0061】
表面架橋には水を用いることができる。この際、使用する水の量は、使用する吸水剤の含水率にもよるが、通常、好ましくは吸水剤100質量部に対し0.5〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。また、水以外の親水性有機溶媒を用いてもよく、吸水剤100質量部に対して好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0〜5質量部、さらに好ましくは0〜3質量部の範囲である。
【0062】
さらに、表面架橋剤の混合方法としては、必要により水および/または親水性有機溶媒とを予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水剤に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で1〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。また混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲で水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。
【0063】
上記表面架橋剤と混合後の吸水剤は、好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、加熱温度(熱媒温度で規定)は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。温度と時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0064】
本発明に係る吸水剤は、上記表面架橋剤に加えて、さらに3価以上のポリカチオンで表面架橋させることが好ましい。3価以上のポリカチオンを少なくとも表面に含有することによって、吸水剤組成物とした場合の通液性がより向上する。
【0065】
3価以上のポリカチオンとは、高分子ポリアミンあるいは多価金属から選ばれる3価以上のポリカチオンである。高分子ポリアミンとは、3個以上のカチオン性基を分子中に有するアミン化合物である。3価以上のポリカチオンは水溶性が好ましい。水溶性とは、25℃の水100gに対して、好ましくは0.5g以上、より好ましくは1g以上溶解することをいう。また、水不溶性とは、25℃の水100gに対して溶解する物質が0以上0.5g未満であることをいう。
【0066】
3価以上のポリカチオンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンや、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等のカチオン性高分子や、多価金属塩が挙げられ、カチオン性高分子の重量平均分子量は好ましくは1000〜100万、さらに好ましくは1万〜50万である。その使用量は、吸水剤および/または吸水剤組成物との組み合わせにもよるが、例えば、吸水剤組成物100質量部に対し、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.001〜8質量部、さらに好ましくは0.01〜5質量部の範囲である。
【0067】
3価以上の多価金属としては、特に限定はされないが、好ましくは3価若しくは4価の金属であり、例えば、Al、Fe、Ti、Hf、Zr、ならびにその他の遷移金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子が好ましい。これらの中でも、カルボキシル基との結合性が強い、Al、Fe、Ti、Hf、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子がより好ましく、Al、Zrがさらに好ましい。
【0068】
本発明に係る吸水剤においては、3価以上の多価金属の含有量は、吸水剤に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.2〜2.0質量%であることがさらに好ましい。
【0069】
3価以上の多価金属は、水溶性の化合物として用いる範囲であれば特に限定されないが、カウンターアニオンとして、例えば、OH、CO2−、SO2−を有する無機化合物、酢酸やプロピオン酸等の有機酸、および、ハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物として用いることが好ましい。これらのような化合物としては、例えば、硫酸アルミニウム(水和物も含む)、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、水酸化アルミニウム、アセチルアセトンジルコニウム錯体、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、6フッ化ジルコニウムカリウム、6フッ化ジルコニウムナトリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウムが好ましく例示され、中でも、水溶性の化合物であることがより好ましい。
【0070】
3価以上の多価金属は、吸水剤の表面架橋前に添加してもよいし、表面架橋と同時に添加してもよいし、表面架橋後の吸水剤に添加してもよい。中でも、表面架橋と同時あるいは表面架橋後の吸水剤に添加することが好ましく、表面架橋後の吸水剤に添加することが特に好ましい。
【0071】
3価以上の多価金属は、粉体(粉末状の粒子)の状態や、水や有機溶媒などに分散したスラリーの状態で添加してもよいが、水溶液あるいは水/有機溶媒の混合溶媒に溶解した溶液など、多価金属の溶液とした状態で添加することが好ましい。ここで用いることができる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルアルコールなどの1価のアルコール;プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;酢酸、乳酸などの有機酸;アセトン、テトラヒドロフランなどの水と混合性の良い有機溶媒;などが好ましい。さらに、上記多価金属の溶液は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の3価より価数の少ない金属化合物を含んでいてもよい。
【0072】
また、上記表面架橋後の吸水剤は、食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)が30(単位:10−7×cm×s×g−1)以上であることが好ましい。SFCとは、吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値であり、SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。試験方法の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0073】
吸水剤のSFCは、より好ましくは40(単位:10−7×cm×s×g−1)以上であり、さらに好ましくは50(単位:10−7×cm×s×g−1)以上であり、特に好ましくは60(単位:10−7×cm×s×g−1)以上であり、最も好ましくは70(単位:10−7×cm×s×g−1)以上である。
【0074】
吸水剤のSFCが30(単位:10−7×cm×s×g−1)未満であると、吸水剤を吸水剤組成物とした場合に、吸水剤組成物に体重などの荷重がかかった場合における液体の液拡散および吸収力が劣ってしまう。このため、吸水剤組成物を紙おむつ等の吸収性物品における吸収体に適用した場合に、吸収体中で液体の拡散が行なわれず液がブロッキングを起こし、紙おむつでの実使用で、漏れ、肌のかぶれ等の問題が生じてしまう。
【0075】
一方、SFCの上限は特に限定されないが、一般に1000若しくは2000(単位:10−7×cm×s×g−1)程度あれば十分であり、それ以上の達成は製造コストの増加を招く恐れがある。
【0076】
また、上記表面架橋後の吸水剤は、無加圧下吸収倍率(CRC)が、好ましくは10〜40g/g、より好ましくは15〜35g/g、さらに好ましくは18〜33g/g、特に好ましくは20〜30g/gである。吸水剤のCRCが上記範囲の下限から外れる場合、紙おむつ等の衛生材料に用いる場合に、所望の吸収量を得るために多量の吸水剤が必要となるため好ましくない。また、吸水剤のCRCが上記範囲の上限から外れる場合、ゲル強度が弱くなり、上述したSFCが所望の範囲の吸水剤を得ることが困難となるため好ましくない。
【0077】
(2)水不溶性の有機若しくは無機微粒子
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、高い液拡散速度(LDV)を達成することを目的に水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有している。用いられる水不溶性の有機若しくは無機微粒子としては、水不溶性有機微粒子の場合には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエーテル、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエポキシ、ポリアセタール、セルロース誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリスルホン等の球状単粒子およびその派生物が挙げられる。
【0078】
また、水不溶性無機微粒子の場合には、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられる。
【0079】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子のうち、好ましくは水不溶性無機微粒子であり、より好ましくは二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくは二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズから選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくは非晶質の二酸化ケイ素である。また、これらは二種以上併用してもよく、二種以上を複合化させたものであってもよい。
【0080】
また、上記不溶性の有機若しくは無機微粒子は親水性を示すことが好ましい。ここで言う親水性とは水溶液とのなじみが良いことをいい、該微粒子を水溶液と混合する際に懸濁状態(またはコロイド溶液状態など均質な溶液)になるものであることが好ましい。
【0081】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の平均粒子径は、特に限定はされないが、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは1〜80nmであり、さらに好ましくは5〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の平均粒子径が上記の範囲内であれば、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子添加後における吸水剤組成物の粒子間の隙間が広がることを抑制できるため、吸水剤組成物の液吸い上げ特性が低下し難い。
【0082】
尚、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の平均粒子径の測定は従来公知の方法で行なえばよく、例えば、透過型電子顕微鏡での5万倍の画像から100個以上の粒子について個々の粒子の最長径と最短径との平均から粒子径を実測してその平均値を求める方法や、動的光散乱法やレーザー回折法を用いた散乱式粒度分布測定装置を用いる方法等が挙げられる。また、市販の微粒子を使用する場合には、そのカタログ値等を代表値としてもよい。
【0083】
上記平均粒子径は、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の1次粒子径に近い粒子径であることが好ましい。
【0084】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子と上記吸水剤との混合において、水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固体粒子である場合、粉体同士を混合するドライブレンド法、湿式混合等を採用することができる。しかしながら、粉体同士を混合した場合、吸水剤に対して水不溶性の有機若しくは無機微粒子が均一に混合されないことや、水不溶性の有機若しくは無機微粒子と吸水剤との接着あるいは結合が不十分であることがある。このようにして製造した吸水剤組成物をおむつなどの吸収性物品における吸収体に使用した場合、その製造過程等で、吸水剤組成物から水不溶性の有機若しくは無機微粒子が分離、偏析することで、均一な性能を持つおむつなどの吸収性物品を得ることが困難となり、好ましくない場合がある。
【0085】
上記現象は、例えば、液拡散速度(LDV)を吸水剤組成物の粒度そのまま(Bulk)で測定した値と、500〜300μmの範囲に分級して測定した値との差が大きいことからも確認することができる。また、上記現象は、本実施の形態で初めて提案する液拡散速度(LDV)耐性試験を行うことで確認することができる。上記液拡散速度(LDV)耐性試験は、後述する実施例にて詳細に説明する。
【0086】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子は、上記観点から、固形分が0.1〜50質量%のスラリーの状態で、吸水剤に添加されることが好ましい。より好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜45質量%であり、特に好ましくは10〜45質量%である。上記スラリーの状態で水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加することにより、1次粒子径に近い粒径を保持した状態で、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を吸水剤に混合することができる。なお、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を上記スラリーの状態(または懸濁状態若しくはコロイド溶液状態)などの均質な分散状態とするために、例えば、分散剤や安定化剤として溶液全量に対して5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の界面活性剤、アンモニア、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸などの酸性化合物、ポリアクリル酸あるいはそのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0087】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の添加量は、吸水剤および/または吸水剤組成物の組み合わせにもよるが、例えば、吸水剤組成物100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の添加量が10質量部より多い場合、吸水剤組成物の液吸い上げ速度(液拡散速度)が低下してしまうため、均一な性能を持つおむつなどの吸収性物品を得ることが困難となるおそれがある。また、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の添加量が0.01質量部より少ない場合、LDVが所望の範囲の吸水剤が得られなくなるため好ましくない。
【0088】
上記スラリーにおける分散媒としては、水、電解質水溶液、有機溶媒やその水溶液等が挙げられ、特に限定されるものではない。また、市販のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルチタニア等を上記スラリーとして用いれば、ほぼ1次粒子に近い状態で微粒子が分散しているため好ましい。
【0089】
尚、水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固体粒子である場合には、粒子間の凝集により平均粒子径が大きくなっている可能性がある。一般的に、上記固体粒子を水などで分散させても1次粒子の状態で分散させることは困難である場合がある。例えば、親水性シリカを用いた場合には、粒子表面に存在するシラノール基同士の水素結合により凝集し易くなっており、一旦凝集してしまった場合には凝集前の状態の粒子に戻すことは困難である。そのような場合では、該固体粒子を溶媒に分散させても上述した水不溶性の有機若しくは無機微粒子の平均粒子径の範囲外になる可能性があり、本発明に係る吸水剤組成物を得られないことがある。このため、上述したように、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子をスラリーの状態で使用することで、1次粒子径に近い粒径を保持した状態で水不溶性の有機若しくは無機微粒子を吸水剤に混合することができる。
【0090】
上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子と混合後の吸水剤は、好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、加熱温度(熱媒温度で規定)は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜100℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。温度と時間の組み合わせの好適な例としては、60℃で0.1〜1.5時間、80℃で0.1〜1.0時間である。上記加熱処理が上記範囲を超える場合、つまり120℃を超える高温であったり、二時間を越える長時間である場合には、上記微粒子の親水性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。
【0091】
以上のように、本発明に係る吸水剤組成物は、1次粒子の粒径をほぼ保った状態で上述した水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有するため、吸水剤組成物の液吸い上げ特性を低下させることなく、吸水剤組成物の表面の親水性や、液拡散速度(LDV)を高めることができる。
【0092】
(3)吸水剤組成物
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、上述した吸水剤に、上述した水不溶性の有機若しくは無機微粒子(好ましくは親水性の水不溶性の有機若しくは無機微粒子)を添加混合することにより製造することができる。
【0093】
つまり、本実施の形態に係る吸水剤組成物の製造方法では、アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を表面架橋処理して、食塩水流れ誘導性(SFC)が30(より好ましくは40)(単位:10−7×cm×s×g−1)以上である吸水剤を得る工程と、上記得られた吸水剤に平均粒子径が1〜100nmの水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加混合する工程とを含み、且つ、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固形分0.1〜50質量%のスラリーの状態(または分散状態若しくはコロイド溶液状態)で添加される。
【0094】
上記製造方法によれば、固体で添加する場合と比べて上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子がより分散した状態で吸水剤に添加される。粒子径が小さい状態で上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が吸水剤に導入されるため、吸水剤における粒子間の隙間を広げ難い。よって、吸水剤のキャピラリー力を低下させることなく、吸水剤表面の親水性を向上させることができるため、吸水剤組成物の液吸い上げ特性を向上させることができる。
【0095】
また、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加する際、同時に水などの液体が上記吸水剤に添加されることになる。このため、吸水剤におけるポリマー分子が僅かに膨張し、該ポリマーの網目が開いた状態で上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が導入される。よって、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の一部は上記吸水剤の表面から少し内部側に取り込まれるため、吸水剤から上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子の乖離(剥離)が起こり難い。従って、保管条件などによる環境の変化や吸水剤を原料として使用するおむつ等の衛生材料メーカーでのプロセスダメージなどに対して吸水剤組成物の液吸い上げ特性が低下し難い。
【0096】
また、上記吸水剤は表面架橋処理されているため、優れた通液性を示す。従って、上記製造方法によれば、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を製造することができる。
【0097】
また、上記吸水剤が特定の粒度を有するものであることがより好ましい。つまり、本実施の形態に係る吸水剤組成物の製造方法では、アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を架橋処理して下記(i)〜(iv)の条件
(i)質量平均粒子径(D50)が200〜500μm(より好ましくは200〜450μm)
(ii)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の5質量%以下
(iii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(iv)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(より好ましくは40)(単位:10−7×cm×s×g−1)以上
を満たす吸水剤を得る工程と、上記得られた吸水剤に平均粒子径が1〜100nmの水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加混合する工程とを含み、且つ、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固形分0.1〜50質量%のスラリーの状態で添加される方法であることがより好ましい。
【0098】
これにより、上記吸水剤が上記粒度分布を有しているため、吸水剤組成物とした後の粒度調整のための操作が容易となる。
【0099】
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、上述した好ましい範囲で示された条件(a)〜(e)、若しくは上述した好ましい範囲で示された条件(a’)〜(d’)を満たすことにより、吸水剤組成物粒子間の隙間の大きさを高度に制御し、通液性能と液吸い上げ特性とに優れた吸水剤組成物となり得る。
【0100】
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、通液性と液吸い上げ特性とを両立させるために特定の粒度に調整される。上記吸水剤組成物の上記条件(c)における質量平均粒径(D50)は、200〜420μmの範囲内であり、より好ましくは220〜420μmの範囲内であり、さらに好ましくは250〜420μmの範囲内であり、特に好ましくは300〜420μmの範囲内である。
【0101】
また、上記条件(d)における粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、0.25〜0.40の範囲内であり、より好ましくは0.25〜0.39の範囲内であり、さらに好ましくは0.25〜0.38の範囲内であり、最も好ましくは0.28〜0.35の範囲内である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さいほど粒度分布が狭いことを表すが、本実施の形態に係る吸水剤組成物では粒度分布が単に狭いのではなく、ある程度の広がりをもつことが重要となる。対数標準偏差(σζ)が0.25未満の場合は、工程内でのロスやリサイクル工程の増加により、生産性が著しく低下してしまう。対数標準偏差(σζ)が0.40を超える場合には粒度分布が広がりすぎて、目的とする性能が得られない恐れがある。
【0102】
また、上記条件(e)における粒子径150μm未満の粒子の割合は全体の3質量%以下であり、より好ましくは0〜2.5質量%であり、さらに好ましくは0〜2.0質量%であり、特に好ましくは0〜1.5質量%である。粒子径が150μ未満の割合が全体の3質量%以上であると、吸水速度の速い微粒子がゲルブロッキングを引き起こして、通液性を阻害し、SFCを低下させたり、微粒子の飛散による作業環境の悪化を引き起こすため好ましくない。このようにして本発明に係る上記条件(a)〜(e)を満たす吸水剤組成物は高いLDVと高いSFCを両立させるために、平均粒子径が200〜420μmで、かつ粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40と粒度分布が高度に制御されている。このため、比較的粒度の粗い部分の含有割合を少なくする必要がある。具体的には、JIS標準ふるいで測定される粒子径850μm以上の粒子の割合が全体の3質量%以下であり、より好ましくは0〜2.5質量%であり、さらに好ましくは0〜2.0質量%であり、特に好ましくは0〜1.5質量%である。上記粒子径150μm未満の粒子の割合並びに粒子径850μm以上粒子の割合が両方上記範囲内であることが最も好ましい。また、JIS標準ふるいで測定される粒子径710μm以上の粒子の割合が全体の0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。尚、ここで全体とは、吸水剤組成物全体を意味する。
【0103】
また、高いLDVと高いSFCを両立させるために、上記条件(a’)における粒子径が300〜600μmの粒子の含有率は、30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。尚、粒子径が300〜600μmの粒子の含有率の上限は100質量%であるが、生産性の観点より、通常90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0104】
上記条件(b’)における無加圧下平均隙間半径指数は、310μm未満であり、好ましくは300μm未満であり、より好ましくは280μm未満、さらに好ましくは250μm未満であり、特に好ましくは200μm未満である。無加圧下平均隙間半径指数が310μm以上である場合、キャピラリー力の低下による液吸い上げ特性が著しく低下することにより、オムツなどにした場合の性能低下を引き起こす可能性がある。尚、無加圧下平均隙間半径指数の下限は特には限定されないが、好ましくは30μmである。
【0105】
上記吸水剤組成物の粒子形状は、球状、破砕状、不定形状等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。さらに、その嵩比重(JIS K−3362:1998で規定)は、通液性と液吸い上げ特性とのバランスから、好ましくは0.40〜0.80g/ml、より好ましくは0.50〜0.75g/ml、さらに好ましくは0.60〜0.73g/mlの範囲である。
【0106】
なお、粒度調整は、重合、ゲル粉砕(別称:ゲル細分化)、乾燥、粉砕、分級、造粒、複数の吸水剤および/または吸水剤組成物の粒子の混合などで、適宜調整することができる。
【0107】
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、上記条件(a)における液拡散速度(LDV:Liquid Distribution Velocity)低下率が30%以下である。尚、LDV低下率の下限は負の値であってもよく、通常−10%であり、より好ましくは0%である。LDV低下率は、吸水剤組成物の液拡散速度の耐衝撃性を測定する指標であり、LDV耐性試験前後のLDVの低下率として下記式
LDV低下率(%)={(LDV−LDV)/LDV}×100
から求められる。尚、上記式において、LDVはLDV耐性試験前のLDV(mm/s)であり、LDVはLDV耐性試験後のLDV(mm/s)である。
【0108】
上記LDVとは、後述の実施例において説明する測定方法によって求められる、液吸い上げ特性を示すパラメータであり、下記式
LDV(mm/s)=100(mm)/WR(s)
から求めることができる。尚、上記式において、WR(wicking rate)は液吸い上げ速度であり、WRの試験方法の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0109】
紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の性能を向上させる上で、LDVは、主に吸収性物品における吸収体中において、液が拡散する速度に関係し、特に、初期の液を吸収する速度に関係する。
【0110】
なお、上記LDV耐性試験とは、所定の容器の中に吸水剤組成物を入れ、一定時間振動を与える試験である。試験方法の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0111】
上記条件(a)における吸水剤組成物のLDV低下率は、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、特に好ましくは15%以下である。
【0112】
LDV低下率が30%以下であることによって、吸水剤組成物のLDVが機械的ダメージ(プロセスダメージ)や経時と共に低下し難いため、吸水性物品に使用した後も、液吸い上げ特性を長期間良好な状態で維持することができる。
【0113】
また、本実施の形態に係る吸水剤組成物(上記条件(a)〜(e)を満たす吸水剤組成物並びに上記条件(a’)〜(d’)を満たす吸水剤組成物)のLDV耐性試験後のLDVは、1.3mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは1.5mm/s以上であり、さらに好ましくは1.7mm/s以上であり、特に好ましくは2.0mm/s以上であり、最も好ましくは2.5mm/s以上である。上記LDV耐性試験後のLDVが1.3mm/s未満であると、吸収性組成物を紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品における吸収体に適用した場合、実使用においてお尻に沿って装着された吸収性物品中で液が吸い上げられないため、吸収性物品の実使用に向かない。
【0114】
また、上記条件(c’)におけるLDV耐性試験前のLDVは、2.0mm/s以上であり、好ましくは2.1mm/s以上であり、より好ましくは2.2mm/s以上であり、さらに好ましくは2.3mm/s以上であり、特に好ましくは2.5mm/s以上である。上記条件(a)〜(e)を満たす場合における上記吸水剤組成物のLDV耐性試験前のLDVは、2.0mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは2.1mm/s以上であり、さらに好ましくは2.2mm/s以上であり、特に好ましくは2.3mm/s以上であり、最も好ましくは2.5mm/s以上である。
【0115】
上記LDV耐性試験前のLDVが2.0mm/s未満であると、吸収性組成物を紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品における吸収体に適用する場合に、吸収性物品の製造工程におけるプロセスダメージや経時変化等による吸収性組成物の液吸い上げ性の悪化によって、吸収性物品に要求される液吸い上げ性を確保することができない恐れがある。尚、LDVの上限は、特には限定されないが、通常10mm/s程度で十分である。
【0116】
本実施の形態に係る吸水剤組成物は、上記条件(b)における食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7cm・s/g)以上であり、より好ましくは70(単位:10−7cm・s/g)以上であり、さらに好ましくは80(単位:10−7cm・s/g)以上であり、特に好ましくは90(単位:10−7cm・s/g)以上である。
【0117】
また、上記条件(d’)における食塩水流れ誘導性(SFC)は30(単位:10−7cm・s/g)以上であり、好ましくは40(単位:10−7cm・s/g)以上であり、より好ましくは60(単位:10−7cm・s/g)以上であり、さらに好ましくは70(単位:10−7cm・s/g)以上であり、特に好ましくは80(単位:10−7cm・s/g)以上であり、最も好ましくは90(単位:10−7cm・s/g)以上である。
【0118】
SFCが30(単位:10−7cm・s/g)未満であると、吸水剤組成物に体重などの荷重がかかった場合における液体の液拡散および吸収力が劣るため、吸水剤組成物を紙おむつなどの吸収性物品における吸収体に適用した場合に、吸収性物品で液体の拡散が行なわれず液がブロッキングを起こし、紙おむつでの実使用で、漏れ、肌のかぶれ等の問題が生じてしまう。
【0119】
尚、上記条件(a)〜(e)を満たす吸水剤組成物は、上記条件(a’)〜(d’)の少なくも1つの条件をさらに満たすことがより好ましい。また同様に、上記条件(a’)〜(d’)を満たす吸水剤組成物は、上記条件(a)〜(e)の少なくも1つの条件をさらに満たすことがより好ましい。
【0120】
また、上記吸水剤組成物は毛管吸引指数(CSI:Capillary Suction Index)が85以上であることが好ましい。上記CSIとは、吸水剤組成物の毛管吸引力を表す指標であり、0cm、10cm、20cmおよび30cmの負の圧力勾配における吸水剤組成物の毛管吸収倍率(CSF:Capillary Suction Force)の和として求めることができる。試験方法の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0121】
吸水剤組成物のCSIは、より好ましくは88以上であり、さらに好ましくは90以上であり、特に好ましくは95以上である。尚、CSIの上限は特には限定されないが、通常200程度である。
【0122】
上記CSIが85未満であると、吸収性組成物を紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品における吸収体に適用した場合に液の吸引力が不十分となり、吸収性物品の実使用、特に吸収性物品の装着時の垂直方向の吸い上げが不十分となり、好ましくない。
【0123】
また、上記吸水剤組成物は、加圧下吸水倍率(AAP:Absorbency Against Pressure)が22g/g以上であることが好ましい。AAPとは、加圧下における吸水剤組成物の吸収倍率であり、試験方法の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0124】
吸水剤組成物のAAPは、より好ましくは23g/g以上であり、さらに好ましくは24g/g以上であり、特に好ましくは25g/g以上である。尚、AAPの上限は通常35g/g程度である。
【0125】
上記AAPが22g/g未満であると、吸水剤組成物に体重などの荷重がかかった場合における液体の液拡散および吸収力が劣るため、吸水剤組成物を紙おむつなどの吸収性物品における吸収体に適用した場合に、吸収性物品中で液体の拡散が行なわれず液がブロッキングを起こし、例えば、紙おむつでの実使用で、漏れ、肌のかぶれ等の問題が生じてしまう。
【0126】
また、上記吸水剤組成物は、無加圧下吸収倍率(CRC)が、好ましくは10〜40g/g、より好ましくは15〜35g/g、さらに好ましくは18〜33g/g、特に好ましくは20〜30g/gである。吸水剤のCRCが上記範囲の下限未満となる場合、紙おむつ等の衛生材料に用いる場合に、所望の吸収量を得るために多量の吸水剤が必要となるため好ましくない。また、吸水剤のCRCが上記範囲の上限を超える場合、ゲル強度が弱くなり、上述したSFCが所望の範囲の吸水剤を得ることが困難となるため好ましくない。
【0127】
また、従来、通液性と液吸い上げ特性とは相反する物性であったのに対して、本発明に係る吸水剤組成物では、両方の特性をバランスよく高められており、AAPやSFCに比べて、WRが非常に速い。
【0128】
すなわち、吸水剤組成物の通液性と液吸い上げ特性とのバランスは、通液性/液吸い上げ速度、すなわちSFC/WRで規定される通液吸い上げ効率で表現される。本発明に係る吸水剤組成物は、通液吸い上げ効率(SFC/WR)が、好ましくは0.50〜100(単位:10−7×cm×g−1)、さらに好ましくは0.70〜100(単位:10−7×cm×g−1)、特に好ましくは1.00〜100(単位:10−7×cm×g−1)であり、通液性と液吸い上げ特性とのバランスに優れており、衛生材料として好適である。
【0129】
また、本発明に係る吸水剤組成物は、無加圧下吸水倍率と液吸い上げ特性とのバランスも優れており、そのバランスは無加圧下吸水倍率/液吸い上げ速度、すなわちCRC/WRで規定される無加圧倍率吸い上げ効率で表現される。本発明の吸水剤組成物は無加圧倍率吸い上げ効率(CRC/WR)が、好ましくは0.15〜2(g/g/s)、さらに好ましくは0.20〜2(g/g/s)、特に好ましくは0.25〜2(g/g/s)であり、無加圧下吸水倍率と液吸い上げ特性とのバランスに優れて、衛生材料として好適である。
【0130】
また、本発明に係る吸水剤組成物は、加圧下吸水倍率と液吸い上げ特性とのバランスも優れており、そのバランスは加圧下吸水倍率/液吸い上げ速度、すなわちAAP(g/g)/WR(s)で規定される加圧倍率吸い上げ効率で表現される。吸水剤組成物は加圧倍率吸い上げ効率(AAP/WR)は、好ましくは0.15〜2(g/g/s)、さらに好ましくは0.20〜2(g/g/s)、特に好ましくは0.25〜2(g/g/s)であり、加圧下吸水倍率と液吸い上げ特性とのバランスに優れて、衛生材料として好適である。
【0131】
また、本発明に係る吸水剤組成物は、含水量が1〜15%であることが好ましく、より好ましくは2.5〜15%であり、さらに好ましくは2.5〜13%であり、最も好ましくは2.5〜10%である。
【0132】
上記含水率が15質量%よりも多い場合には、吸水剤組成物の吸水倍率の低下を招く場合があり、含水率が1質量%よりも少ない場合には吸水剤組成物のLDVが低下する場合がある。
【0133】
本発明に係る吸水剤組成物の水可溶分量は、好ましくは25質量%以下(下限0質量%)、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0134】
また、本発明に係る吸水剤組成物の着色状態は、YI値(Yellow Index/欧州特許942014号明細書および同1108745号明細書参照)で好ましくは0〜15、より好ましくは0〜13、さらに好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。さらに、残存モノマー含有量は、好ましくは0〜400ppm、より好ましくは0〜300ppmである。
【0135】
また、本発明に係る吸水剤組成物およびその製造方法においては、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィン、疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を液吸い上げ速度(液拡散速度)が低下しない範囲、例えば、吸水剤および/または吸水剤組成物100質量部に対して0〜10質量部程度、吸水剤および/または吸水剤組成物に添加してもよい。
【0136】
本発明に係る吸水剤組成物は吸湿若しくは吸水特性に優れており、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品などの従来の吸水剤の用途に広く使用できるが、おむつなど吸収性物品における吸収体の必要物性である通液性と液吸い上げ特性とを兼ね備えているため、尿、糞ないし血液の固化剤(吸収ゲル化剤)としても好適に使用される。
【0137】
通常、上記吸収体は、上記吸水剤組成物を含んで成型される。上記吸収体は、吸水剤組成物と親水性繊維との合計重量に対する吸水剤組成物の含有量(コア濃度)が20〜100%質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量%、さらに好ましくは30〜90質量%、特に好ましくは40〜80質量%の範囲である。コア濃度が20質量%未満の場合は、吸水剤組成物の特性が活かされ難い。
【0138】
なお、本発明に係る吸水剤組成物の吸収体での好ましい使用例の一例は、米国特許5853867号明細書に例示された膨張異方性(厚み方向での膨張性)の吸水性複合体への適用であり、本発明に係る拡散性の優れた吸水剤組成物を用いることで、厚さ方向の膨張のみならず、横方向(平面方向)の液拡散が格段に改善された吸収体を得ることができる。
【0139】
上記吸収体は、好ましくは、密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cmの範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が挙げられる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0140】
さらに、本発明に係る吸収性物品は、例えば、上記した吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備える吸収性物品である。吸収性物品としては具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられる。
【0141】
本発明に係る吸水剤組成物は、以上のように、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、(a)液拡散速度(LDV)低下率が30%以下、(b)食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7cm・s/g)以上、(c)質量平均粒子径(D50)が200〜420μm、(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40、(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下、の条件を満たすことを特徴としている。
【0142】
これにより、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0143】
本発明に係る吸水剤組成物では、液拡散速度耐性試験前の液拡散速度(LDV)が2.0mm/s以上であることが好ましい。
【0144】
上記構成によれば、吸水剤組成物の製造直後における液拡散速度(LDV)が大きいため、十分な液吸い上げ特性を確保することができる。
【0145】
また、本発明に係る吸水剤組成物は、酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、(a’)粒子径が300〜600μmの粒子の含有率が30質量%以上、(b’)無加圧下平均隙間半径指数が310μm未満、(c’)液拡散速度(LDV)が2.0mm/s以上、(d’)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7cm・s/g)以上、の条件を満たすことを特徴としている。
【0146】
これにより、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0147】
本発明に係る吸水剤組成物では、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子は、親水性の無機微粒子であることが好ましい。
【0148】
また、本発明に係る吸水剤組成物では、親水性の上記無機微粒子は、平均粒子径が1〜100nmの非晶質二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミナから選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0149】
上記構成によれば、非晶質二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミナから選択される少なくとも1つである親水性の上記無機微粒子の平均粒子径が1〜100nmと非常に小さい。また、上記無機微粒子は、1次粒子同士の結合力が比較的弱く、シェアを加えたり、特定の条件を選んで溶液に分散させると、凝集粒子であっても1次粒子に近い状態まで粒子径を小さくすることができる。このため、上記無機微粒子は吸水剤表面への分散性が良く、1次粒子に近い状態で吸水剤組成物における吸水剤の粒子表面、および吸水剤の粒子表面近傍の吸水剤粒子間の隙間に導入され易い。粒子径が小さい状態で吸水剤組成物に上記無機微粒子が導入されるため、該無機微粒子は吸水剤組成物における吸水剤の粒子間の隙間を広げ難い。キャピラリー力は粒子間の隙間径の大きさに反比例する。よって、吸水剤の粒子間の隙間径を広げ難い本発明に係る吸水剤組成物は、吸水剤組成物のキャピラリー力の低下がより抑制されると共に吸水剤組成物表面の親水性を向上させることができるため、吸水剤組成物の液吸い上げ特性をより向上させることができるという更なる効果を奏する。
【0150】
また、本発明に係る吸水剤組成物では、液拡散速度耐性試験後の液拡散速度(LDV)が1.3mm/s以上であることが好ましい。
【0151】
上記構成によれば、吸水剤組成物が保管条件や吸水剤を原料として使用するおむつ等の衛生材料メーカーでのプロセスダメージなどによる環境の変化の影響を受けたとしても、十分な液吸い上げ特性を確保することができる。
【0152】
また、本発明に係る吸水剤組成物では、毛管吸引指数(CSI)が85以上であることが好ましい。
【0153】
上記構成によれば、LDVよりも測定条件の厳しい加圧条件下で且つ垂直方向の吸水剤組成物の液吸い上げ特性がより向上するという更なる効果を奏する。
【0154】
また、本発明に係る吸水剤組成物では、荷重下吸収倍率(AAP)が22g/g以上であることが好ましい。
【0155】
上記構成によれば、吸水剤組成物は体重などの荷重がかかった場合における液体の液拡散および吸収力に優れるため、吸水剤組成物での液のブロッキングを防止することができる。よって、紙おむつなどの吸収性物品における吸収体に適用した場合に、漏れ、肌のかぶれ等のない吸収性物品を提供することができるという更なる効果を奏する。
【0156】
また、本発明に係る吸水剤組成物では、含水率が1〜15質量%(より好ましくは2.5〜15質量%)であることが好ましい。
【0157】
上記構成により、吸水剤の親水性を向上させることができ、且つ上記含水率が高いために生じる粉体取り扱い性の悪化や、含水率が低いために生じる液拡散速度の低下を防止することができるという更なる効果を奏する。
【0158】
また、本発明に係る吸水剤組成物の製造方法は、アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程と、得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を架橋処理して、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜500μm、(ii)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の5質量%以下、(iii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45、(iv)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7×cm×s×g−1)以上、の条件を満たす吸水剤を得る工程と、上記得られた吸水剤に、平均粒子径が1〜100nmの水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加混合する工程とを含み、且つ、上記水不溶性の有機若しくは無機微粒子が固形分0.1〜50質量%のスラリーの状態で添加されることを特徴としている。
【0159】
これにより、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を製造することができるという効果を奏する。
【0160】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、吸水剤組成物(又は吸水剤)の諸性能は以下の方法で測定した。また実施例において使用される電気機器はすべて200Vまたは100V、60Hzの条件で使用した。さらに、吸水剤組成物、吸水剤は、特に指定がない限り、25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。また、生理食塩水として0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0161】
尚、オムツなどから取り出した吸水剤若しくは吸水剤組成物などの含水率が5質量%よりも高い場合には、100℃で減圧乾燥を行い含水率を5質量%以下とした後に以下に示す性能測定を行う。
【0162】
また、下記測定法や実施例に例示の試薬や器具は適宜相当品で代替してもよい。
【0163】
<無加圧下吸収倍率(CRC)>
後述する実施例および比較例で得られた吸水剤組成物(又は吸水剤)W(g)(約0.20g)を不織布製の袋(60mm×85mm、材質はEDANA ERT 441.1−99に準拠)に均一に入れシールして、25±2℃に調温した0.90質量%生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s)で3分間水切りを行った後、袋の質量W2(g)を測定した。また、吸水剤組成物(又は吸水剤)を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1(g)を測定した。そして、上記質量W、W1、W2から、次式に従って、CRC(g/g)を算出した。
【0164】
CRC(g/g)={(質量W2(g)−質量W1(g))/W(g)}−1
<加圧下吸収倍率(AAP)>
内径60mmのプラスチック製支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目開き38μm)を融着させ、該網上に吸水剤組成物(または吸水剤)W(g)(約0.90g)を均一に散布し、その上に、吸水剤組成物(または吸水剤)に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置した。この際、荷重を載せる前に、荷重以外の測定装置一式の質量W3(g)(支持円筒と吸水剤組成物(又は吸水剤)とピストンの質量)を測定した。
【0165】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径100〜120μm)を置き、0.90質量%生理食塩水を上記ガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙(トーヨー濾紙社製、ADVANTEC;No.2、JIS P 3801)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0166】
上記測定装置一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。この際、液面がガラスフィルターの上面より低下した場合には液を追加して、液面レベルを一定に保った。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、荷重を取り除いた質量W4(g)(支持円筒と膨潤した吸水剤組成物(又は吸水剤)とピストンの質量)を再測定した。そして、これら質量W、W3、W4から、次式に従ってAAP(g/g)を算出した。
【0167】
AAP(g/g)=(質量W4(g)−質量W3(g))/W(g)
<質量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)>
吸水剤組成物(または吸水剤)を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0168】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒径)
質量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水剤組成物(または吸水剤)10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50%RHの条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間分級させることにより行った。
【0169】
<生理食塩水流れ誘導性(SFC)>
SFCは吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
【0170】
特表平9−509591の生理食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0171】
SFC試験で使用する装置について、図1を用いて以下に説明する。
【0172】
図1に示す装置は、タンク31にガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69質量%生理食塩水33をセル39中の膨潤したゲル37の底部から、5cmの高さに維持できるように配置している。タンク31中の0.69質量%生理食塩水33は、コック35付きL字管34を通じてセル39へ供給される。セル39の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、容器48は上皿天秤49の上に設置されている。セル39の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)38が設置されている。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水剤組成物(または吸水剤)あるいはその膨潤ゲルが穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けられている。セル39は、セル39を乗せるための台の上に置かれ、セル39と接する台の面に、液の透過を妨げないステンレス製の金網を設置した。
【0173】
図1に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水剤(0.900g)を人工尿中で2.07kPa(約0.3psi)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル37のゲル層の高さを記録し、次に2.07kPa(約0.3psi)の加圧下、0.69質量%生理食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(25℃±2℃)で行った。コンピューターと上皿天秤49とを用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル37(主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータのみを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算する。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。なお、SFC値の単位は(10−7・cm・s・g−1)である。
【0174】
SFC=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A:セル39中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
なお、SFC試験で使用する人工尿は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0175】
<毛管吸引指数(CSI)>
CSIは吸水剤組成物(または吸水剤)の毛管吸引力をあらわす指標であり、0cmおよび10cm、20cm、30cmの負の圧力勾配における吸水剤組成物の毛管吸収倍率(CSF)の和として求められる。
【0176】
上記CSFは、1.93kPa(約0.28psi)荷重下での上記所定の圧力勾配における所定時間での吸水剤組成物の吸収能力である。以下、図2を用いて、上記CSFの測定方法を説明する。
【0177】
多孔質ガラス板1(グラスフィルター粒子番号#3;(株)相互理化学硝子製作所製のBuchner型フィルター TOP 17G‐3(code no.1175−03))における液吸収面を有する直径60mmのグラスフィルター2の下部に導管3をつなぎ、直径10cmの液溜容器4の下部に備え付けられた取り付け口に導管3を接続した。上記多孔質ガラス板1は平均孔径が20〜30μmであって、その毛管力によって60cmの液面高さの差を付けた状態でも水柱の負圧に抗して多孔質ガラス板1内に水を保持することができ、且つ空気の導入が無い状態を保つことができるものである。グラスフィルター2に高さを上下させるための支持リング5を取り付け、系(液溜容器4、導管3、および多孔質ガラス板1)に0.90質量%生理食塩水6を満たし、液溜容器4を天秤上7に載せた。導管3中、および多孔質ガラス板1の下部に空気がないことを確認してから液溜容器4中の0.90質量%生理食塩水6上部の液面レベルと多孔質ガラス板1の上面の高低差が所定の高さになるように調節してグラスフィルター2をスタンド8に固定した。
【0178】
多孔質ガラス板1におけるグラスフィルター2上に、測定試料9(吸水剤組成物または吸水剤)W(g)(約0.90g)を均一にすばやく散布し、その上に直径59mmの荷重10(1.93kPa(約0.28psi))を載せ、60分後に測定試料9に吸収された0.90質量%生理食塩水の質量W5(g)を測定した。
【0179】
各圧力勾配でのCSFは以下の式で求められる。
【0180】
CSF(g/g)=W5(g)/W(g)
0cmおよび10cm、20cm、30cmの負の圧力勾配における吸水剤のCSFをそれぞれ、CSF−0cm、CSF−10cm、CSF−20cm、CSF−30cmとすると、CSIは以下の式で求められる。
【0181】
CSI=(CSF−0cm)+(CSF−10cm)+(CSF−20cm)+(CSF−30cm)
<液拡散速度(LDV)>
LDVは、液吸い上げ速度(WR)から計算により求めることができる。WRは特開平5−200068号公報(EP532002)記載の吸い上げ指数測定装置を用いて行った。
【0182】
上記吸い上げ指数測定装置は、図3に示すように、硬質金属からなる6つのトラフ溝52を持つトラフ・シート51(SUS304のステンレス鋼グレード2B仕上げ)の一端が、100メッシュのステンレス鋼のスクリーン53(150ミクロンの開口部を持つ)で密閉されており、スクリーン53はトラフ・シート51にハンダ付けによって試験中の吸水剤組成物を保持している。上記トラフ溝52は各々90度のサイドアングルを有し、少なくとも長さ20cm以上必要である。各トラフ溝52の頂点間の幅は5.5cmであり、深さは4cmである。なお、スクリーン53は人工尿を透過できるようになっている。トラフ・シート51に取り付けた横木54は、クランプなどの適当な固定手段を備えた実験用スタンド55によって、トラフ・シート51を支持している。液体リザーバ層56は、トラフ・シート51のスクリーン53を付けた端を密閉するのに十分な大きさであり、人工尿57が充填されている。実験用ジャッキ58は液体リザーバ層56を上下させて液体の液面の高さを調整するためのものである。
【0183】
また、図4に示すように、上記吸い上げ指数測定装置では、トラフ・シート51は水平面に対して20度の角度で実験用スタンド55によって支持されている。
【0184】
以下に、上記吸い上げ指数測定装置を用いたWRの測定方法を説明する。
【0185】
まず、20°の角度で設置したトラフ・シート51のトラフ溝52に、1.00g±0.005gの吸水剤組成物59を0〜20cmの目盛り間に均等に散布した。さらに、へらを用いて吸水剤組成物をより均等に分散させた。
【0186】
人工尿57としては、1Lの0.9質量%生理食塩水(塩化ナトリウム水溶液)に対して、食用青色1号(東京化成工業株式会社)0.01gの割合で着色した生理食塩水を用いた。
【0187】
WRの測定は、液体リザーバ層56の液面がトラフ・シート51の最も低い位置から0.5cm上になるように調整した後、スクリーン53が液と接触すると同時に開始した。WRは、液体が10cmに目盛り位置まで吸い上げられた時間(sec)を表す。なお、液体リザーバ層56中の液とスクリーン53がトラフ・シート51の最も低い位置から0.5cm上まで浸漬する速度は、液面から垂直方向に1.35〜1.40mm/sであった。LDVは、次式により算出される。
【0188】
LDV(mm/s)=100(mm)/WR(s)
<液拡散速度低下率(LDV低下率)>
LDV低下率は、吸水剤組成物の液拡散速度の耐衝撃性を測定する指標であり、後述するLDV耐性試験において、該試験前のLDV値からの低下率として以下の式で求める。
【0189】
LDV低下率(%)={(試験前のLDV(mm/s)−試験後のLDV(mm/s))/試験前のLDV(mm/s)}×100
なお、測定試料の種類によっては、該試験前のLDV値より該試験後のLDV値が高くなる場合がある。その場合は、低下率0%とした。
【0190】
<液拡散速度(LDV)耐性試験>
LDV耐性試験は、吸水剤組成物を図5に示す容器41に入れ、図6(a)に示すように、上記容器41の縦中心線と鉛直線とのなす角度が、鉛直線の左右各々に12.5度であり、図6(b)に示すように上記容器41の水平方向への移動が、上記容器41の静止位置を基準として前後に各々8mmであり、振動速度回転数が750c.p.m.となるように、楕円状の振動を一定時間与えるものである。以下に具体的に試験方法を説明する。
【0191】
吸水剤組成物30.0gを、図5に示す内容量225gの容器41に入れ、内蓋41b及び外蓋41aを閉める。そして、この容器41を図7に示す分散機(株式会社東洋精機製作所、No488試験用分散機)42に、該分散機42に備えられた上クランプ43および下クランプ44で挟んで固定し、100V/60Hzで振動回転数750c.p.m.の振動を50分間与えた。これにより、上記分散機42に固定された容器41は、上記分散機42における上クランプ43および下クランプ44の取り付け面45に対して左右に各々12.5度(合計25度)傾斜運動すると同時に、前後に各々8mm(合計16mm)振動することにより、容器41内部の吸水剤組成物に衝撃力を与える。そして、上記振動付与後、吸水剤組成物を容器41から取り出して、LDV(試験後のLDV)を測定した。
【0192】
さらに、容器41の軌跡についてより詳細に説明する。図8に示すように、クランプ60(上クランプ43、下クランプ44)に、重力に対して垂直となるように固定された棒47の任意の位置における鉛直線の軌跡によって容易に確認することができる。上記クランプ60に固定された棒47の任意の位置における鉛直線は、棒47がその静止状態から左右に各々12.5度傾斜すると同時に、前後に各々8mm移動することにより、図8に示すような楕円状の軌跡を描く。つまり容器41は図8に示すような楕円状の振動を受ける。
【0193】
<含水率>
吸水剤組成物(または吸水剤)の含水率は以下のようにして乾燥減量から求めた。
【0194】
吸水剤組成物W(g)(約2.00g)を底面直径52mmのアルミカップに広げ、吸水剤組成物(または吸水剤)とアルミカップとの総質量W6(g)を測定した。その後、上記吸水剤組成物(または吸水剤)を広げたアルミカップを雰囲気温度180℃の静置乾燥機で3時間乾燥した。乾燥機から上記アルミカップを取り出した後、室温(25℃±2℃)のデシケーター内に5分間静置して、吸水剤組成物(または吸水剤)を自然冷却した。その後、乾燥後の吸水剤組成物(または吸水剤)とアルミカップとの総質量W7(g)を測定した。そして上記W、W6、W7から次式に従って、含水率(質量%)を求めた。
【0195】
含水率(質量%)={(W6(g)−W7(g))/W(g)}×100
<無加圧下平均隙間半径指数>
図9に示す測定装置を用いて吸水剤粒子若しくは吸水剤組成物粒子の飽和膨潤時の無加圧下平均隙間指数(無加圧下ゲル間隙間指数)を測定した。
【0196】
毛細管力で半径Rの管を液体が上昇する高さhは、液体の表面張力をγ、接触角をθ、重力加速度をg、液体の密度をρとすると、h=2γcosθ/ρgRと表される(P.K.Chatterjee、B.S.Gupta編、「TEXTILE SCIENCE AND TECHNOLOGY 13 ABSORBENT TECHNOLOGY 2002」(ELSEVIER)、p428の式(35)参照)。
【0197】
図9の装置において液タンク中の液面レベルとフィルターロート61のガラスフィルター62とのヘッド差を0からh(cm)まで持ち上げることにより、膨潤ゲルや吸収体において、そのゲル粒子間や吸収体の隙間に存在していた液体のうちR(μm)という毛細管半径(隙間)より大きい径に保持されていた隙間水が放出されて抜け出ていく。従って、飽和膨潤され、隙間空間を完全に液で満たされたゲルを高さ0cmから上昇させていき、それぞれ所定の高さでのゲル層の残存隙間液量を測定することで、膨潤ゲル中の隙間半径(毛細管半径)の分布が求められる。
【0198】
ここで、h=2γcosθ/ρgRの式を用いて各々の高さhにおいて求められるサンプルの毛細管半径Rの値をサンプルの隙間半径と定義する。液タンク中の液面高さとグラスフィルターの厚み方向における中間位置との差を0から60(cm)まで1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cmと段階的に持ち上げることで、それぞれの高さに対応するRの値を有する隙間に保持されていた液が排出されていく。この排出液量を測定することでサンプルの隙間半径(毛細管半径)の分布を計算することができ、その値を対数確率紙にプロットし、D50の値を平均隙間半径とする。本実施例では、h=2γcosθ/ρgRの式において、γは生理食塩水(0.9質量%NaCl溶液)の表面張力(0.0728N/m)であり、θは0°であり、ρは生理食塩水の密度(1000kg/m)であり、gは重力加速度9.8m/sの値を用いた。
【0199】
これにより1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cmの位置で保持されている液体はそれぞれ1485μm、743μm、297μm、149μm、74.3μm、49.5μm、24.8μmの隙間半径(毛細管半径)に保持されていると求められる。尚、本測定では、測定試料が十分に液を吸収、あるいは濡れた状態で行なわれるため、θは0°とした。以下、具体的な操作について説明する。
【0200】
フィルターロート61(グラスフィルター粒子番号#3:平均孔径20〜30μm程度で、60cmの高さの差をつけた状態(h=60cm)で空気の導入がないもの)における、液吸収面を構成するグラスフィルター62(直径60mm)の下部に導管63の端部をつなぎ、導管63の反対側の端部を液タンク64(直径10cm)の下部に接続した。この際、グラスフィルター62に空気が残留しないように操作を行なった。グラスフィルター62の液吸収面が水平となるように、フィルターロート61をクランプ65で固定した。この際、フィルターロート61およびその下部や導管63は生理食塩水で満たされていた。液タンク64は天秤67に載せられ、天秤67はコンピュータ70に接続されており、液タンク64の質量変化をコンピュータ70に記録することができる構成となっている。クランプ65で固定されたフィルターロート61は自動昇降機68により、予め設定したプログラムに従って、自動的に昇降する構成となっている。尚、フィルターロート61の昇降速度は1.0cm/secに設定した。
【0201】
導管63中およびフィルターロート61におけるグラスフィルター62の下部に気泡(空気)がないことを確認後、液タンク64中の生理食塩水66の液面の位置とグラスフィルター62の厚み方向における中間の位置とを一致させた(高さ0cm)。
【0202】
次に、グラスフィルター62の厚み方向における中間の位置と上記高さ0cmの位置との差が60cmとなるようにフィルターロート61を上昇させ、天秤の値を0にセットした。尚、以下、「フィルターロート61の高さ」とは、液タンク64中の生理食塩水66の液面の位置とグラスフィルター62の厚み方向における中間の位置とを一致させた位置(高さ0cm)を基準として、この高さ0cmから、グラスフィルター62の厚み方向における中間の位置との差を意味する。
【0203】
コンピュータ70により液質量の記録を開始した後、グラスフィルター62上に測定試料69(吸水剤若しくは吸水剤組成物)を設置した。測定試料69の設置は、測定試料69が粒子形状である場合には、600μmから300μmの範囲内に篩分けした測定試料69を約0.900g(W)グラスフィルター62上に均一に素早く散布した。また、測定試料69が粒子形状ではない場合には、測定試料69を直径57mmの円形に打ち抜き、乾燥状態での質量(W)を測定した後グラスフィルター62上に設置した。尚、グラスフィルター62上に何も無い状態、すなわちブランク試験も後述する方法と同様の方法で行なった。
【0204】
フィルターロート61の高さを−3cm(グラスフィルター62の方が液面よりも低い位置)にして、液質量変化が0.002g/min未満となるまで(例えば、30分間)測定試料69を膨潤させた。このとき、測定試料69は生理食塩水で完全に浸っており、測定試料69中には気泡(空気)が無い状態とした。
【0205】
次に、フィルターロート61の高さを0cmとし、液質量変化が0.002g/min未満となるまで(例えば60分間)グラスフィルター62の高さを保持し、液質量変化が0.002g/min未満となった時点での天秤の値をA0とした。
【0206】
同様に、フィルターロート61の高さを1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cmと上昇させ、それぞれの液質量変化が0.002g/min未満となった時点での天秤の値をA1、A2、A5、A10、A20、A30、A60とした。
【0207】
グラスフィルター62上に測定試料69の無い状態(ブランク)についても、上記と同様にフィルターロート61の高さを0cm、1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cmと上昇させ、それぞれの液質量変化が0.002g/min未満となった時点での天秤の値をB0、B1、B2、B5、B10、B20、B30、B60とした。
【0208】
本測定では、(A60−B60)の値を基準として、各高さでの液質量(例えば、A30−B30)から(A60−B60)を引いた値(実際の天秤の値はマイナスとなるため、絶対値とする)を各高さ(0cm、1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cm)での隙間水量とした。
【0209】
各高さでの隙間水量より、累積隙間水量の割合を計算した。上述したように、1cm、2cm、5cm、10cm、20cm、30cm、60cmの位置で保持されている液体はそれぞれ最大1485μm、743μm、297μm、149μm、74.3μm、49.5μm、24.8μmの隙間半径(毛細管半径)に保持され、60cmの位置で保持されている液体は24.8μmの隙間半径(毛細管半径)を通過するとし、各高さでの累積隙間水量の割合と上記毛細管半径の値とを対数確率紙にプロットした。このプロットしたグラフの累積隙間水量の割合の50%に相当する隙間半径の値(D50)を求め、試料の無加圧下平均隙間半径指数(μm)とした。また、各高さでの累積隙間水量の割合より、その分布の対数標準偏差(σζ)を求めた。
【0210】
更に、測定値の確認のため、標準サンプルとして350〜500μmおよび1000〜1180μmの球状ガラスビーズを用いて上記方法により無加圧下平均隙間半径指数を求めたところ、それぞれ86μm、217μmであった。
【0211】
(参考例1)
アクリル酸、アクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5460質量部(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)11.3質量部を溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら窒素ガスでこの反応液から溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液30.7質量部及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液0.7質量部を添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で45分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmおよび212μmの金網で分級することにより、不定形破砕状の吸水剤(A1)を得た。得られた吸水剤(A1)の無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/gであった。また、得られた吸水剤(A1)の粒度分布を表1、表2に示す。
【0212】
(参考例2)
参考例1において、ロールミルを用いて粉砕した乾燥物を、目開き600μmおよび150μmの金網で分級した以外は同様の方法を用いて不定形破砕状の吸水剤(A2)を得た。得られた吸水剤(A2)の無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/gであった。また、得られた吸水剤(A2)の粒度分布を表1、表2に示す。
【0213】
(参考例3)
参考例1において、得られた乾燥物を粉砕する際に、参考例1よりも粗く粉砕できる条件にロールミルを設定して粉砕し、さらに目開き850μmおよび150μmの金網で分級した以外は同様の方法を用いて不定形破砕状の吸水剤(A3)を得た。得られた吸水剤(A3)の無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/gであった。また、得られた吸水剤(A3)の粒度分布を表1、表2に示す。
【0214】
(参考例4)
参考例1において、得られた乾燥物を粉砕する際に、ロールミルを2回通過させることにより粉砕し、目開き600μmおよび106μmの金網で分級した以外は同様の方法を用いて不定形破砕状の吸水剤(A4)を得た。得られた吸水剤(A4)の無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/gであった。また、得られた吸水剤(A4)の粒度分布を表1、表2に示す。
【0215】
(参考例5)
参考例1において、参考例1よりも粗く、参考例3よりも細かく粉砕できる条件にロールミルを設定して粉砕し、さらに目開き850μmおよび106μmの金網で分級した以外は同様の方法を用いて不定形破砕状の吸水剤(A5)を得た。得られた吸水剤(A5)の無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/gであった。また、得られた吸水剤(A5)の粒度分布を表1、表2に示す。
【0216】
(実施例1)
参考例1で得られた吸水剤(A1)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水2.7質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.65質量部を噴霧混合し、該混合物をパドル型混合加熱処理機を用いて、粉体温度195℃で45分間加熱処理した。その後、加熱処理機から取り出した該処理物にプロピレングリコール0.02質量部、硫酸アルミニウム0.5質量部、乳酸ナトリウム0.1質量部、水0.6質量部からなる第2表面架橋剤水溶液1.22質量部を噴霧混合し、60℃で1時間加熱処理して、表面架橋された吸水剤(B1)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B1)の粒度分布は、吸水剤(A1)と殆ど変わらず、SFCは90(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0217】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B1)に、下記の特性を示すコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、吸水剤組成物(C1)を得た。吸水剤組成物(C1)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0218】
<LUDOX(登録商標)HS−30の諸物性>
SiOとして30質量%懸濁水溶液
pH=9.8
比表面積約220m/g
シリカの平均粒子径(シリカ1次粒子の平均粒子径)12nm
(実施例2)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカLUDOX(登録商標)CL(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C2)を得た。吸水剤組成物(C2)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0219】
<LUDOX(登録商標)CLの諸物性>
SiO+Alの混合物として30質量%懸濁水溶液
pH=4.5
比表面積約230m/g
シリカの平均粒子径(シリカ1次粒子の平均粒子径)12nm
(実施例3)
参考例2で得られた吸水剤(A2)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水2.7質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.65質量部を噴霧混合し、該混合物をパドル型混合加熱処理機を用いて、粉体温度195℃で45分間加熱処理した。その後、加熱処理機から取り出した該処理物にプロピレングリコール0.02質量部、硫酸アルミニウム0.5質量部、乳酸ナトリウム0.1質量部、水0.6質量部からなる第2表面架橋剤水溶液1.22質量部を噴霧混合し、60℃で1時間加熱処理して、表面架橋された吸水剤(B3)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B3)の粒度分布は、吸水剤(A2)と殆ど変わらず、SFCは96(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0220】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B3)に、コロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、吸水剤組成物(C3)を得た。吸水剤組成物(C3)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0221】
(実施例4)
実施例3において、添加したコロイダルシリカの量を2質量部に増量したこと以外は同様の操作を行い、吸水剤組成物(C4)を得た。吸水剤組成物(C4)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0222】
(比較例1)
実施例1における表面架橋された吸水剤(B1)に、下記の特性を示すアエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社製)を0.3質量部ドライブレンドし、得られた混合物をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、比較用吸水剤組成物(C5)を得た。比較用吸水剤組成物(C5)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0223】
<アエロジル(登録商標)200の諸物性>
比表面積約200m/g
シリカ1次粒子の平均粒子径12nm
なお、凝集体平均粒子径は37μm(レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社 堀場製作所 LA−920)により純水分散中で湿式測定)であった。
【0224】
(比較例2)
実施例3で得られた表面架橋された吸水剤(B3)に、アエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社製)0.3質量部をドライブレンドし、得られた混合物をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、比較用吸水剤組成物(C6)を得た。比較用吸水剤組成物(C6)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0225】
(比較例3)
参考例3で得られた吸水剤(A3)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水2.7質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.65質量部を噴霧混合し、該混合物をパドル型混合加熱処理機を用いて、粉体温度195℃で45分間加熱処理した。その後、加熱処理機から取り出した該処理物にプロピレングリコール0.02質量部、硫酸アルミニウム0.5質量部、乳酸ナトリウム0.1質量部、水0.6質量部からなる第2表面架橋剤水溶液1.22質量部を噴霧混合し、60℃で1時間加熱処理して、表面架橋された吸水剤(B7)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B7)の粒度分布は、吸水剤(A3)と殆ど変わらず、SFCは85(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0226】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B7)に、コロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き850μmのふるいを通過させることにより、比較用吸水剤組成物(C7)を得た。比較用吸水剤組成物(C7)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0227】
(比較例4)
容量1Lのガラス製反応容器に、アクリル酸ナトリウム77質量部、アクリル酸22.8質量部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.2質量部、脱イオン水395質量部およびジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001質量部を仕込んだ。上記ガラス製反応容器に仕込んだ反応液は、単量体濃度20質量%、中和率72モル%であった。上記反応液を攪拌、混合しながら液温を3℃に保つと共に、該反応液に窒素を流入させて溶存酸素を除去することで酸素濃度を1ppm以下にした。続いて、過酸化水素水1%水溶液1質量部、L−アスコルビン酸0.2%水溶液1.2質量部および2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド2%水溶液2.8質量部を添加、混合して重合を開始した。重合開始後10分で重合ピーク温度45℃を示し、重合を開始して約5時間後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体を双椀型ニーダで1分間均一に混合した。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網に広げ、150℃、風速2.0m/sの条件の通気型乾燥機で30分間乾燥した。得られた乾燥物を参考例3と同じ粉砕条件で粉砕し、目開き850μmおよび150μmの金網(20〜100メッシュ)で分級して粒度を調整した。
【0228】
次に非孔質球状の非結晶酸化ケイ素のコロイド水溶液である実施例2で用いたコロイダルシリカLUDOX(登録商標)CLの3質量部を上記乾燥物に添加し、双椀型ニーダで5分間均一に混合した後、目開き850μmおよび150μmの金網(20〜100メッシュ)を用いて粒度を調整し、比較用吸水剤組成物(C8)を得た。比較用吸水剤組成物(C8)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0229】
(比較例5)
容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸81.7質量部、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.4質量部および脱イオン水241質量部、ジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001質量部を仕込んだ。上記ガラス製反応容器に仕込んだ反応液は、単量体濃度25質量%、中和率0モル%であった。上記反応液を攪拌、混合しながら液温を3℃に保つと共に、該反応液に窒素を流入させて溶存酸素を除去することで酸素濃度を1ppm以下にした。続いて、過酸化水素水1%水溶液0.3質量部、L−アスコルビン酸0.2%水溶液0.8質量部および2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド2%水溶液0.8質量部を添加、混合して重合を開始した。重合開始後、バス温度をコントロールすることにより重合温度を80±5℃に保持し、約5時間後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体を双椀型ニーダで細断しながら、30質量%水酸化ナトリウム水溶液109.1質量部を添加して30分間混錬することにより、カルボキシル基の72モル%が中和された含水ゲル状重合体を得た。上記含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網に広げ、140℃、風速2.0m/sの条件の通気型乾燥機で30分間乾燥した。得られた乾燥物を参考例2と同じ粉砕条件で粉砕し、目開き590μmおよび250μmの金網(30〜60メッシュ)で分級して粒度を調整することで、吸水剤(A9)を得た。
【0230】
上記吸水剤(A9)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.2質量部、水1.26質量部、メタノール0.54質量部からなる表面架橋剤水溶液(10%エチレングリコールジグリシジルエーテルの水/メタノール混合溶液(水/メタノールの質量比=70/30))2質量部をスプレーで、上記吸水剤(A9)を高速攪拌(レデゲミキサー、330rpm)しながら噴霧混合し、140℃に設定した加熱炉の中で30分間静置して加熱架橋させることで、表面架橋された吸水剤(B9)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B9)のSFCは0であった。
【0231】
さらに、表面架橋された吸水剤(B9)に、非孔質球状の非結晶酸化ケイ素のコロイド水溶液である実施例3で用いたコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を1質量部添加し、比較用吸水剤組成物(C9)を得た。比較用吸水剤組成物(C9)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0232】
(比較例6)
容量1Lのガラス製反応容器に、アクリル酸81.8質量部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3質量部および脱イオン水241質量部を仕込んだ。上記ガラス製反応容器に仕込んだ反応液は、単量体濃度25質量%、中和率72モル%であった。上記反応液を攪拌、混合しながら液温を2℃に保つと共に、該反応液に窒素を30分間流入させて溶存酸素を除去した。続いて、過酸化水素水1%水溶液1質量部、L−アスコルビン酸0.2%水溶液1.2質量部および2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド2%水溶液2.8質量部を添加、混合して重合を開始した。重合開始後、バス温度をコントロールすることにより重合温度を70〜80℃に保持し、約8時間後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体を双椀型ニーダで細断しながら、45質量%水酸化ナトリウム水溶液72.7質量部を添加して30分間混錬することにより、カルボキシル基の72モル%が中和された含水ゲル状重合体を得た。上記含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網に広げ、150℃、風速2.0m/sの条件の通気型乾燥機で30分間乾燥した。得られた乾燥物を参考例3と同じ粉砕条件で粉砕し、目開き710μmおよび150μmの金網で分級して粒度を調整することで、吸水剤(A10)を得た。
【0233】
上記吸水剤(A10)100質量部を50℃に保ち、双椀型ニーダで高速攪拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.19質量部、水2.79質量部、メタノール6.52質量部からなる表面架橋剤水溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル/水/エタノールの質量比=2/70/30)9.5質量部滴下し、引き続き50℃で15分間混合した。その後さらに、該混合物を140℃に設定した加熱炉の中で40分間静置して加熱架橋させることで、表面架橋された吸水剤(B10)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B10)のSFCは6(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0234】
さらに、表面架橋された吸水剤(B10)に、双椀型ニーダで高速攪拌しながら、非孔質球状の非結晶酸化ケイ素のコロイド水溶液である実施例3で用いたコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を1.0質量部、メタノール3.0質量部の混合溶液4.0質量部を滴下した後、該混合物を100℃に設定した加熱炉で30分間乾燥し、さらに造粒して生成した粗粒子を除去するために目開き710μmの金網で分級して、比較用吸水剤組成物(C10)を得た。比較用吸水剤組成物(C10)の諸物性を測定し、結果を表1〜3に示す。
【0235】
(実施例5)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカ(スノーテックス(登録商標)20(日産化学株式会社製)1.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C11)を得た。吸水剤組成物(C11)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0236】
<スノーテックス(登録商標)20の諸物性>
SiOとして20質量%懸濁水溶液
pH=9.5〜10.0
シリカの粒子径10〜20nm
(実施例6)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカ(スノーテックス(登録商標)20L(日産化学株式会社製)1.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C12)を得た。吸水剤組成物(C12)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0237】
<スノーテックス(登録商標)20Lの諸物性>
SiOとして20質量%懸濁水溶液
pH=9.5〜10.0
シリカの粒子径40〜50nm
(実施例7)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカ(スノーテックス(登録商標)ZL(日産化学株式会社製)1.25質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C13)を得た。吸水剤組成物(C13)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0238】
<スノーテックス(登録商標)ZLの諸物性>
SiOとして40質量%懸濁水溶液
pH=9.5〜10.0
シリカの粒子径70〜100nm
(実施例8)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すベーマイト板状結晶のコロイダルアルミナ(アルミナゾル520(日産化学株式会社製、硝酸安定型)2.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C14)を得た。吸水剤組成物(C14)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0239】
<アルミナゾル520の諸物性>
Alとして20質量%懸濁水溶液
NO:1%以下
粘度:1.0〜25.0mPa・s
粒子荷電:カチオン
(実施例9)
実施例1におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示す羽毛状のコロイダルアルミナ(アルミナゾル200(日産化学株式会社製、酢酸安定型)5.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C15)を得た。吸水剤組成物(C15)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0240】
<アルミナゾル200の諸物性>
Alとして10質量%懸濁水溶液
CHCOOH:3.5%以下
粘度:50〜3000mPa・s
粒子荷電:カチオン
(実施例10)
実施例3におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカ(スノーテック(登録商標)O(日産化学株式会社製)2.5質量部に変更したこと以外は実施例3と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C16)を得た。吸水剤組成物(C16)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0241】
<スノーテックス(登録商標)Oの諸物性>
SiOとして20質量%懸濁水溶液
pH=2.0〜4.0
シリカの粒子径10〜20nm
(実施例11)
実施例3におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すコロイダルシリカ(スノーテック(登録商標)S(日産化学株式会社製)1.0質量部に変更したこと以外は実施例3と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C17)を得た。吸水剤組成物(C17)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0242】
<スノーテックス(登録商標)Sの諸物性>
SiOとして30質量%懸濁水溶液
pH=9.5〜10.5
シリカの粒子径8〜11nm
(実施例12)
参考例4で得られた吸水剤(A4)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水3.0質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.95質量部を噴霧混合し、該混合物を熱風乾燥機を用いて、加熱温度180℃で60分間加熱処理した。その後、熱風乾燥機から取り出した該処理物にプロピレングリコール0.02質量部、硫酸アルミニウム0.5質量部、乳酸ナトリウム0.1質量部、水0.6質量部からなる第2表面架橋剤水溶液1.22質量部を噴霧混合し、60℃で1時間熱風乾燥機を用いて加熱処理して、表面架橋された吸水剤(B18)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B18)の粒度分布は、吸水剤(A4)と殆ど変わらず、SFCは80(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0243】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B18)に、上述した特性を示すコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き600μmのふるいを通過させることにより、吸水剤組成物(C18)を得た。吸水剤組成物(C18)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0244】
(実施例13)
実施例12におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示す酸化チタンスラリーSTS−21(登録商標)(石原産業株式会社製)0.75質量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C19)を得た。吸水剤組成物(C19)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0245】
<酸化チタンスラリーSTS−21(登録商標)の諸物性>
TiO40質量%スラリー溶液
pH=8.5
(実施例14)
実施例12におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すジルコニアゾルZSL−10T(登録商標)(第一稀元素化学工業株式会社製)3.0質量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C20)を得た。吸水剤組成物(C20)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0246】
<ジルコニアゾルZSL−10T(登録商標)の諸物性>
ZrO10.0〜10.5質量%スラリー溶液
pH=2〜3
平均粒子径約10nm
(実施例15)
実施例12におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示すセリアゾルCESL−15N(登録商標)(第一稀元素化学工業株式会社製)2.0質量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C21)を得た。吸水剤組成物(C21)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0247】
<セリアゾルCESL−15N(登録商標)の諸物性>
CeO15.0〜15.5質量%スラリー溶液
pH=2.5〜3
平均粒子径約10nm
(実施例16)
実施例12におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、下記の特性を示す酸化スズゾル(SnOゾル)(第一稀元素化学工業株式会社製)3.0質量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C22)を得た。吸水剤組成物(C22)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0248】
<酸化スズゾルの諸物性>
SnO9〜11質量%スラリー溶液
pH=9〜11
平均粒子径約5〜10nm
(実施例17)
参考例5で得られた吸水剤(A5)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水3.0質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.95質量部を噴霧混合し、該混合物を熱風乾燥機を用いて、加熱温度180℃で60分間加熱処理し、表面架橋された吸水剤(B23)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B23)の粒度分布は、吸水剤(A5)と殆ど変わらず、SFCは35(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0249】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B23)に、上述した特性を示すコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き850μmのふるいを通過させることにより、吸水剤組成物(C23)を得た。吸水剤組成物(C23)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0250】
(実施例18)
参考例5で得られた吸水剤(A5)100質量部に、プロピレングリコール0.6質量部、1,4−ブタンジオール0.35質量部、水3.0質量部からなる第1表面架橋剤水溶液3.95質量部を噴霧混合し、該混合物を熱風乾燥機を用いて、加熱温度180℃で60分間加熱処理した。その後、熱風乾燥機から取り出した該処理物にプロピレングリコール0.02質量部、硫酸アルミニウム0.5質量部、乳酸ナトリウム0.1質量部、水0.6質量部からなる第2表面架橋剤水溶液1.22質量部を噴霧混合し、60℃で1時間熱風乾燥機を用いて加熱処理して、表面架橋された吸水剤(B24)を得た。得られた表面架橋された吸水剤(B24)の粒度分布は、吸水剤(A5)と殆ど変わらず、SFCは49(単位:10−7cm・s/g)であった。
【0251】
さらに、得られた表面架橋された吸水剤(B24)に、上述した特性を示すコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を1質量部添加混合し、60℃で1時間加熱処理した。得られた混合物をさらに目開き850μmのふるいを通過させることにより、吸水剤組成物(C24)を得た。吸水剤組成物(C24)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0252】
(比較例7)
実施例12におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、上述した特性を示すアエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社製)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C25)を得た。吸水剤組成物(C25)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0253】
(比較例8)
実施例17におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、上述した特性を示すアエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社製)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例17と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C26)を得た。吸水剤組成物(C26)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0254】
(比較例9)
実施例18におけるコロイダルシリカLUDOX(登録商標)HS−30を、上述した特性を示すアエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社製)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例18と同様の操作を行い、吸水剤組成物(C27)を得た。吸水剤組成物(C27)の諸物性を測定し、結果を表4〜6に示す。
【0255】
【表1】

【0256】
【表2】

【0257】
【表3】

【0258】
【表4】

【0259】
【表5】

【0260】
【表6】

【0261】
表2および表3並びに表5および表6に示すように、実施例1〜11の吸水剤組成物は、比較例1〜6とは異なり、(a)LDV低下率が30%以下であり、(b)SFCが60(単位:10−7cm・s/g)以上であり、(c)D50が200〜420μmであり、(d)σζが0.25〜0.40であり、(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下である。
【0262】
また、表4および表6に示すように、実施例12〜18の吸水剤組成物は、比較例7〜9とは異なり、(a’)粒子径が300〜600μmの粒子の含有率が30質量%以上であり、(b’)無加圧下平均隙間半径指数が310μm未満であり、(c’)液拡散速度(LDV)(試験前のLDV)が2.0mm/s以上であり、(d’)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7cm・s/g)以上である。このため、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない吸水剤組成物を提供することができる。
【0263】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0264】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用の可能性】
【0265】
本発明に係る吸水剤組成物は、以上のように、従来相反する物性である通液性と液吸い上げ特性とを両立させ、且つ液吸い上げ特性の低下が少ない。このため、使い捨ておむつなどの吸収体に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】吸水剤組成物の食塩水流れ誘導性(SFC)の測定装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】毛管吸収指数の測定装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】液吸い上げ速度の測定装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】上記液吸い上げ速度の測定装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】LDV耐性試験で使用する容器の概略構成を示す側面図である。
【図6(a)】LDV耐性試験における容器の振動方向を示す図面の側面図である。
【図6(b)】LDV耐性試験における容器の振動方向を示す図面の上面図である。
【図7】LDV耐性試験で使用する分散機の概略構成を示す側面図である。
【図8】LDV耐性試験における容器の軌跡を示す斜視図である。
【図9】無加圧下平均隙間半径指数の測定装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0267】
1 多孔質ガラス板
2 グラスフィルター
3 導管
4 液溜容器
5 支持リング
6 生理食塩水
7 天秤上
8 スタンド
9 測定試料
10 荷重
31 タンク
32 ガラス管
33 生理食塩水
34 L字管
35 コック
36 金網
37 ゲル
38 ステンレス製金網
39 セル
40 容器
41 容器
41a 外蓋
41b 内蓋
42 分散機
43 上クランプ
44 下クランプ
45 ガラスフィルター
46 ピストン
48 容器
49 上皿天秤
51 トラフ・シート
52 トラフ溝
53 スクリーン
54 横木
55 実験用スタンド
56 液体リザーバ層
57 人工尿
58 実験用ジャッキ
59 吸水剤組成物
60 クランプ
61 フィルターロート
62 ガラスフィルター
63 導管
64 液タンク
65 クランプ
66 生理食塩水
67 天秤
68 自動昇降機
69 測定試料
70 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、下記(a)〜(e)の条件
(a)液拡散速度(LDV)低下率が30%以下
(b)食塩水流れ誘導性(SFC)が60(単位:10−7cm・s/g)以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜420μm
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.40
(e)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の3質量%以下
を満たすことを特徴とする吸水剤組成物。
【請求項2】
液拡散速度耐性試験前の液拡散速度(LDV)が2.0mm/s以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸水剤組成物。
【請求項3】
酸基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有するポリカルボン酸系吸水剤を主成分とし、水不溶性の有機若しくは無機微粒子を含有する吸水剤組成物であって、下記(a’)〜(d’)の条件
(a’)粒子径が300〜600μmの粒子の含有率が30質量%以上
(b’)無加圧下平均隙間半径指数が310μm未満
(c’)液拡散速度(LDV)(LDV耐性試験前のLDV)が2.0mm/s以上
(d’)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7cm・s/g)以上
を満たすことを特徴とする吸水剤組成物。
【請求項4】
水不溶性の上記有機若しくは無機微粒子は、親水性の無機微粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の吸水剤組成物。
【請求項5】
親水性の上記水不溶性無機微粒子は、平均粒子径が1〜100nmの非晶質二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミナから選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の吸水剤組成物。
【請求項6】
液拡散速度耐性試験後の液拡散速度(LDV)が1.3mm/s以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の吸水剤組成物。
【請求項7】
毛管吸引指数(CSI)が85以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の吸水剤組成物。
【請求項8】
荷重下吸収倍率(AAP)が22g/g以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の吸水剤組成物。
【請求項9】
含水率が1〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の吸水剤組成物。
【請求項10】
アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合して架橋重合体を得る工程を含む吸水剤組成物の製造方法であって、
得られた架橋重合体を乾燥、整粒し、上記架橋重合体の表面近傍を架橋処理して下記(i)〜(iv)の条件
(i)質量平均粒子径(D50)が200〜500μm
(ii)粒子径150μm未満の粒子の割合が全体の5質量%以下
(iii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(iv)食塩水流れ誘導性(SFC)が30(単位:10−7×cm×s×g−1)以上
を満たす吸水剤を得る工程と、
上記得られた吸水剤に平均粒子径が1〜100nmの水不溶性の有機若しくは無機微粒子を添加混合する工程とを含み、且つ、水不溶性の上記有機若しくは無機微粒子が固形分0.1〜50質量%のスラリーの状態で添加されることを特徴とする吸水剤組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−510177(P2009−510177A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504791(P2007−504791)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/JP2006/319923
【国際公開番号】WO2007/037522
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】