説明

吸水性ポリマーの製造方法

【課題】 平均径や粒径分布を制御することによって、高吸水能力を有する吸水性ポリマーを再現良く製造する方法、並びに吸水性ポリマーの粒径制御方法の提供。
【解決手段】 水溶性ビニルモノマーを含むモノマー成分を重合して吸水性ポリマーを製造する方法であって、反応槽中の疎水性有機溶媒に、重合に用いる全モノマー成分の内の1〜30重量%の初期仕込みモノマー成分及び初期仕込みモノマー成分に対し0〜0.005重量%の重合開始剤を供給した後、残りのモノマー成分及び残りのモノマー成分に対し0.01〜10重量%の重合開始剤を反応槽に連続的又は断続的に供給する、吸水性ポリマーの製造方法、並びにこの製造方法により吸水性ポリマーの重量基準メジアン径を200〜600μmに制御する、吸水性ポリマーの粒径制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用品等に使用される吸水性ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性ポリマーは、衛生用品分野で、幼児用、大人用もしくは失禁者用の紙おむつ(使い捨ておむつ)又は婦人用の生理用ナプキン等の吸収性物品における吸水性物質として使用されている。現在、吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸系吸水性ポリマーがその主流を占めている。
【0003】
吸水性ポリマーの平均径、粒径分布、嵩比重等が吸水性ポリマーの吸水物性に大きく影響する。このため重合条件等により平均径や粒径分布を制御することが行なわれているが(特許文献1,2,3及び4参照)、未だ充分ではなかった。
【特許文献1】特開平3−227301号公報
【特許文献2】特開平4−348103号公報
【特許文献3】特開平6−184212号公報
【特許文献4】特開平6−206929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、平均径や粒径分布を制御することによって、高吸水能力を有する吸水性ポリマーを再現良く製造する方法、並びに吸水性ポリマーの粒径制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水溶性ビニルモノマーを含むモノマー成分を重合して吸水性ポリマーを製造する方法であって、反応槽中の疎水性有機溶媒に、重合に用いる全モノマー成分の内の1〜30重量%の初期仕込みモノマー成分及び初期仕込みモノマー成分に対し0〜0.005重量%の重合開始剤(以下重合開始剤1という)を供給した後、残りのモノマー成分及び残りのモノマー成分に対し0.01〜10重量%の重合開始剤(以下重合開始剤2という)を反応槽に連続的又は断続的に供給する、吸水性ポリマーの製造方法、並びにこの製造方法により吸水性ポリマーの重量基準メジアン径を200〜600μmに制御する、吸水性ポリマーの粒径制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法及び粒径制御方法により、吸水性ポリマーの平均径や粒径分布を制御することができ、高吸水能力を有する吸水性ポリマーを再現良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[モノマー成分]
本発明に用いられるモノマー成分は水溶性ビニルモノマーを含むものである。本発明のモノマー成分中の水溶性ビニルモノマーの割合は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。
【0008】
水溶性ビニルモノマーとしては、具体的には、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム、及びオレフィン系不飽和アミド等の重合性不飽和基を有するビニルモノマーが例示される。これらの中でも、オレフィン系不飽和カルボン酸及びその塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩がより好ましく、アクリル酸、アクリル酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、及びアクリル酸アンモニウム塩が特に好ましい。これらのモノマーは1種以上を使用することができる。
【0009】
また、モノマー成分は、水溶性ビニルモノマーと共重合し得る水不溶性ビニルモノマーを含有することもできる。該水不溶性ビニルモノマーとしては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸アルキルエステルモノマー等が挙げられる。
【0010】
[吸水性ポリマーの製造方法及び粒径制御方法]
本発明の方法においては、先ず、反応槽中に疎水性有機溶媒を仕込み、この疎水性有機溶媒に、重合に用いる全モノマー成分の内の1〜30重量%の初期仕込みモノマー成分及び初期仕込みモノマー成分に対し0〜0.005重量%の重合開始剤1を供給する。次に残りのモノマー成分及び残りのモノマー成分に対し0.01〜10重量%の重合開始剤2を反応槽に連続的又は断続的に供給する。
【0011】
初期に反応槽中の疎水性有機溶媒に供給されるモノマーの量が多いほど重合終了後の吸水性ポリマーの平均径を小さくすることができるが、多すぎると重合開始剤を添加し始めた時の重合が急激に進行するため、初期に反応槽に供給するモノマーの重量を、重合に使用する全モノマー重量の1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%の範囲に設定することにより、所望の平均径を有する吸水性ポリマーを得ることができる。
【0012】
モノマーは水溶液として供給しても良く、モノマーを水溶液として用いる場合のモノマー水溶液の濃度は、好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは30〜60重量%である。
【0013】
本発明において、反応層中に仕込まれる疎水性有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール等の炭素数4〜6の脂肪族アルコール、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン、酢酸エチル等の脂肪族エステル類等を例示することができる。これらの疎水性有機溶媒は、1種以上を用いることができる。また、疎水性有機溶媒の使用量は、全モノマー成分100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、更に好ましくは100〜1000重量部である。
【0014】
また、反応槽には、上記疎水性有機溶媒以外に、両親媒性の溶剤を仕込んでもよい。該両親媒性の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、及び2−プロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、及びテトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類が挙げられる。該両親媒性の溶剤の使用量は、該疎水性有機溶媒との合計量で、モノマー100重量部に対し500重量部までの量であることが好ましい。
【0015】
また、モノマーの重合を行なう際に、分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート及びポリオキシメチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、トリメチルステアリルアンモニムクロリド及びカルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽イオン性及び両性の界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩及びドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等のグリコシド化合物、エチルセルロース及びベンジルセルロース等のセルロースエーテル、セルロースアセテート、セルロースブチレート及びセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリエチレン、マレイン化α−オレフィン、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩及びイソプロピルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩等の高分子分散剤を例示することができる。これらの分散剤は1種以上を用いることができる。分散剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部である。特に、モノマーの逆相懸濁重合を行う場合には、モノマーの分散剤としてイオン性界面活性剤を用いることが、吸水性ポリマー粒子の凝集を防ぐという点で好ましい。
【0016】
本発明においては、上記のように、全モノマー成分の1〜30重量%の初期仕込みモノマー成分及び初期仕込みモノマー成分に対し0〜0.005重量%の重合開始剤1を供給した後、残りのモノマー成分及び残りのモノマー成分に対し0.01〜10重量%の重合開始剤2を反応槽に連続的又は断続的に供給する。このようなモノマー及び重合開始剤の添加方法によれば、所望の平均粒子径を有し、粗大粒子の少ない、吸収性能が良好な吸水性ポリマーを得ることができる。
【0017】
本発明において、重合開始剤2は、下記式(I)で表される添加速度Vが0.1×10-5〜10×10-5(1/min)となる速度で反応槽に供給することが好ましく、0.2×10-5〜5×10-5(1/min)となる速度で反応槽に供給することがより好ましい。
V=C/T (I)
(ここで、Cは重合開始剤2の平均モル濃度を示し、C=重合開始剤2の使用量(モル)/重合で用いる全モノマー成分量(モル)で表される。Tは重合開始剤2の添加時間(min)を示す。)
【0018】
本発明に用いられる重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤及び酸化性重合開始剤等が挙げられ、酸化性重合開始剤が好ましい。重合開始剤1と重合開始剤2は同一でも異なっていても良い。
【0019】
アゾ系重合開始剤としては、具体的には、特開平8−337726号公報の第4頁第5欄第4〜19行に記載のものを例示することができる。これらは1種以上を使用することができる。これらの中でも、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロハライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロハライド及び4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドからなる群より選択される1種以上が本発明の目的を達成する為に好ましい。また、上記の化合物において、ハライドはクロリドであることが経済面より好ましい。
【0020】
酸化性重合開始剤としては、具体的には、特開平8−337726号公報の第3頁第4欄第43行〜第4頁第5欄第3行に記載のものや、過酸化水素/第1鉄塩、過硫酸塩/亜硫酸塩、クメンヒドロパーオキシド/第1鉄塩、過酸化水素/L−アスコルビン酸等のレドックス系重合開始剤等を例示することができる。これらは1種以上を使用することができる。これらの中でも、過硫酸塩が本発明の目的を達成する為に好ましい。
また、アゾ系重合開始剤と酸化性重合開始剤とを1種以上ずつ併用することも可能である。
【0021】
本発明において、重合開始剤の全使用量は、モノマー100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.02〜5重量部がより好ましく、0.05〜2重量部が特に好ましい。重合開始剤の量がこの範囲において、重合が円滑に進行し、高吸水保持能力を有し、しかも含水状態での経時安定性が良好な吸水性ポリマーを得ることができる。
【0022】
初期仕込みモノマー成分100重量部に対する重合開始剤1の量は0.005重量部以下であるが、重合開始剤量はゼロでも良い。また重合に用いる全モノマー成分から初期仕込みモノマー成分を除いた、残りのモノマー成分100重量部に対する重合開始剤2の量は0.01〜10重量部が好ましく、0.02〜5重量部がより好ましく、0.05〜2重量部が特に好ましい。重合開始剤の量がこの範囲において、重合が円滑に進行し、高吸水保持能力を有し、しかも含水状態での経時安定性が良好な吸水性ポリマーを得ることができる。
【0023】
本発明においては、得られる吸水性ポリマーの粒径を制御する点で、モノマー水溶液を疎水性有機溶媒を含有する分散媒中へ供給する逆相懸濁重合法が好ましく、重合を回分操作で行うことがより好ましい。具体的には、疎水性有機溶媒が仕込まれた反応槽に、上記所定量のモノマー水溶液を供給した後、残ったモノマー水溶液に重合開始剤又はその水溶液を加えたモノマー/重合開始剤混合水溶液を作り反応槽に供給すれば良い。あるいはモノマー水溶液と重合開始剤又はその水溶液とをそれぞれ別のラインから同時に並行して反応槽に添加しても良い。重合開始剤を水溶液として用いる場合の重合開始剤水溶液の濃度は、好ましくは0.05〜90重量%、更に好ましくは1〜50重量%である。
【0024】
モノマーを重合する際の重合温度は、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。重合温度がこの範囲の場合、好ましい重合速度が達成される。
【0025】
また、本発明においては、重合前、重合時、重合後又は乾燥時等において、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、ポリアリル化合物、ポリビニル化合物、ポリグリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、ポリアミン、ヒドロキシビニル化合物、またカルシウム、マグネシウム、亜鉛及びアルミニウム等の多価イオンを生じる無機塩又は有機金属塩等を例示することができる。
【0026】
また、モノマーの重合(好ましくは逆相懸濁重合)を終了した後、必要に応じ通常の後処理、例えば、共沸脱水、乾燥等を行なうことにより、所望の吸水性ポリマーを得ることができる。
【0027】
本発明の方法によると、吸水性ポリマーの重量基準メジアン径を200〜600μmに制御することができる。
【0028】
なお、本発明において、吸水性ポリマーの重量基準メジアン径は、サンプルを850μm、600μm、500μm、355μm、106μmの篩いを用いて分級し、各篩い上に残った粒子の重量を測定することにより、重量基準篩い上粒子径分布を測定し、重量で50%になる粒径を内挿することにより求めることができる。
【実施例】
【0029】
実施例1
80重量%のアクリル酸510.0gを203.8gの水で希釈し、冷却しつつ48重量%の水酸化ナトリウム水溶液339.7gで中和した後、分散補助剤アシル化グルタミン酸ソーダ(アミソフトPS−11、味の素(株)製)を0.18g、分散補助剤ポリエチレングリコール(K-PEG6000LA、花王(株)製)を0.41g加えて均一溶液とし、モノマー/分散補助剤混合水溶液を調製した。別に、還流冷却脱水管、滴下ロート、窒素導入管、および撹拌翼としてアンカー翼(d/D=0.9)を備えた5リットル反応槽(セパラブルフラスコ)に、ノルマルヘプタン965gを仕込んだ後、分散剤としてポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩(平均エチレンオキシド付加モル数=1、エマール170J、花王(株)製)70重量%水溶液0.582gを加えて300r/minの回転数にて撹拌させ、反応機内を窒素置換した後、沸点温度まで昇温し、還流冷却管により0.4gの水を除去した。ノルマルヘプタンの温度を90℃に調整した後、このノルマルヘプタン中に前述のモノマー/分散補助剤混合水溶液を一定流量で3分間供給し、重合に用いる全モノマーの内の5.0重量%のモノマー/分散補助剤混合液を反応槽に仕込んだ。次いでモノマー/分散補助剤混合液の45.0重量%に重合開始剤として4.7重量%過硫酸ナトリウム(NaPS)水溶液3.49gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を、更に残ったモノマー/分散補助剤混合液50.0重量%に4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液7.00gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を反応槽に57分間一定流量で供給した(なお以下の実施例2〜5及び比較例1においてもモノマーの反応槽への供給時間は合計60分で行なった。)。モノマーの反応槽供給完了後、還流冷却脱水管を用いて反応槽内温度81〜86℃で284.2g脱水を行い、反応槽内温度86℃で架橋剤エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、ナガセケムテック株式会社製)0.1224gをイオン交換水10gに溶解したものを添加した。その後、反応槽内温度86〜90℃で更に125.3g脱水を行い、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、501.4gのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子を得た。得られた重合体粒子はふるい法による重量基準メジアン径が536μmの顆粒状粒子で、嵩比重は0.62であった。
【0030】
実施例2
モノマー/分散補助剤混合水溶液の反応槽への供給を6分間に変更して重合に用いる全モノマーの内の10.0重量%のモノマー/分散補助剤混合液を反応槽に仕込んだ後に、次いでモノマー/分散補助剤混合液の40.0重量%に重合開始剤として4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液3.49gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を反応槽に一定流量で供給した他は実施例1と同じ操作を行なった。乾燥後に502.1gのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子得られ、重量基準メジアン径は372μm、嵩比重は0.71であった。
【0031】
実施例3
モノマー/分散補助剤混合水溶液の反応槽への供給を9分間に変更して重合に用いる全モノマーの内の15.0重量%のモノマー/分散補助剤混合液を反応槽に仕込んだ後に、次いでモノマー/分散補助剤混合液の35.0重量%に重合開始剤として4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液3.49gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を反応槽に一定流量で供給した他は実施例1と同じ操作を行なった。乾燥後に501.5gのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子得られ、重量基準メジアン径は233μm、嵩比重は0.78であった。
【0032】
実施例4
80重量%のアクリル酸51.0kgを20.4kgの水で希釈し、冷却しつつ48重量%の水酸化ナトリウム水溶液34.0kgで中和した後、アシル化グルタミン酸ソーダを18g、ポリエチレングリコールを41g加えて均一溶液とし、モノマー/分散補助剤混合水溶液を調製した。別に、コンデンサー、および撹拌翼としてアンカー翼(d/D=0.9)を備えた300リットル反応槽(SUS316L製)に、ノルマルヘプタン96.5kgを仕込んだ後、分散剤としてポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩(平均エチレンオキシド付加モル数=1、エマール170J、花王(株)製)70重量%水溶液58.2gを加えて120r/minの回転数にて撹拌させ、反応機内を窒素置換した後、沸点温度まで昇温し、還流脱水により100gの水を除去した。ノルマルヘプタンの温度を90℃に調整した後、このノルマルヘプタン中に前述のモノマー/分散補助剤混合水溶液を一定流量で6分間供給し、重合に用いる全モノマーの内の10.0重量%のモノマー/分散補助剤混合液を反応槽に仕込んだ。次いでモノマー/分散補助剤混合液の40.0重量%に重合開始剤として4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液349gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を、更に残ったモノマー/分散補助剤混合液50.0重量%に4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液700gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を反応槽に54分間一定流量で供給した。モノマーの反応槽供給完了後、反応槽内温度81〜86℃で28.4kg脱水を行い、反応槽内温度86℃で架橋剤エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、ナガセケムテック株式会社製)12.2gをイオン交換水1.0kgに溶解したものを添加した。その後、反応槽内温度86〜90℃で更に12.5kg脱水を行い、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、52.3kgのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子を得た。得られた重合体粒子はふるい法による重量基準メジアン径が274μmの顆粒状粒子で、嵩比重は0.72であった。
【0033】
実施例5
80重量%のアクリル酸510.0gを203.8gの水で希釈し、冷却しつつ48重量%の水酸化ナトリウム水溶液339.7gで中和した後、分散補助剤アシル化グルタミン酸ソーダ(アミソフトPS−11、味の素(株)製)を0.18g加えて均一溶液とし、モノマー/分散補助剤混合水溶液を調製した。別に、還流冷却脱水管、滴下ロート、窒素導入管、および撹拌翼としてアンカー翼(d/D=0.9)を備えた5リットル反応槽(セパラブルフラスコ)に、ノルマルヘプタン965gを仕込んだ後、分散剤としてポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩(平均エチレンオキシド付加モル数=1、エマール170J、花王(株)製)70重量%水溶液0.582gを加えて300r/minの回転数にて撹拌させ、反応機内を窒素置換した後、沸点温度まで昇温し、還流冷却管により0.4gの水を除去した。ノルマルヘプタンの温度を90℃に調整した後、このノルマルヘプタン中に前述のモノマー/分散補助剤混合水溶液を一定流量で6分間供給し、重合に用いる全モノマーの内の10.0重量%のモノマー/分散補助剤混合液を反応槽に仕込んだ。次いでモノマー/分散補助剤混合液の40.0重量%に重合開始剤として分散補助剤ポリエチレングリコール(K-PEG6000LA、花王(株)製)0.20g、V−50(和光純薬(株)製)41mg、クエン酸アンモニウム鉄0.4mgを、水14gに溶解させた水溶液を添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を30分間、ついで残ったモノマー/分散補助剤混合液50.0重量%に4.7重量%過硫酸ナトリウム水溶液10.5gを添加したモノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液を反応槽に30分間一定流量で供給した。モノマーの反応槽供給完了後、還流冷却脱水管を用いて反応槽内温度81〜86℃で284.2g脱水を行い、反応槽内温度86℃で架橋剤エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、ナガセケムテック株式会社製)0.163gをイオン交換水10gに溶解したものを添加した。その後、反応槽内温度86〜90℃で更に125.3g脱水を行い、生成物を分別し、減圧下に乾燥することにより、500.4gのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子を得た。得られた重合体粒子はふるい法による重量基準メジアン径が370μmの顆粒状粒子で、嵩比重は0.74であった。
【0034】
比較例1
重合開始剤(過硫酸カリウム水溶液)を反応槽に供給する前にはモノマーを反応槽に供給せず、重合開始剤を重合に用いる全モノマー/分散補助剤混合液へ添加した後に、モノマー/分散補助剤/重合開始剤混合水溶液の反応槽への供給を開始した他は実施例1と同じ操作を行なった。乾燥後に500.8gのアクリル酸(ナトリウム)重合体粒子得られ、重量基準メジアン径は645μm、嵩比重は0.63であった。
【0035】
実施例6〜11
重合組成及び条件を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、吸水性ポリマーを得た。得られたポリマーのふるい法による重量基準メジアン径及び嵩比重をまとめて表2に示す。
【0036】
実施例1〜11及び比較例1で得られた吸水性ポリマーの吸水速度を下記方法で測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0037】
<吸水速度の測定方法>
a)図1に示す吸水速度の測定装置で、横コック付きビュレット1(内径10.4mmφ)のコックAを開き、コックBを閉じて、生理食塩水2をろ紙3(No.2:70mmφ)が充分濡れるまで注入する。
【0038】
b)コックAを閉じて生理食塩水2を10ccの標線まで注入し、ゴム栓4を閉じてコックAを開く。
【0039】
c)次いでコックBを開き、コックBの管内に液が留らない様に注意しながらろ紙3の面をコックBの中心線に合わせる。ここで、7は空気穴である。
【0040】
d)ろ紙3上の余分な液をティッシュペーパー等で軽く拭き取ると共に、ビュレット1の液面を20ccに調節する。
【0041】
e)予め正確に0.3g秤量したポリマー5を、ろ紙3上にガラスフィルター6の径内に手早く且つ均一に散布する。ここで、8はポリマーの飛散防止のためのプラスチック筒である。
【0042】
f)コックBより気泡が出た時点でストップウォッチを作動させ、液面の経時を測定する。この時、30秒経時後の吸収量を吸水速度(cc/30sec)とする。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
*1:(重合に用いた全分散剤純分量)/(重合に用いた全アクリル酸純分量)×100
*2:(表示した時間に反応槽に供給した開始剤純分量)/(表示した時間に反応槽に供給したアクリル酸純分量)×100
*3:(開始剤添加開始時のモノマー仕込み量/重合に用いる全モノマー量)×100
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】吸水速度の測定装置である。
【符号の説明】
【0047】
1 横コック付きビュレット
2 生理食塩水
3 ろ紙
4 ゴム栓
5 ポリマー
6 ガラスフィルター
7 空気穴
8 プラスチック筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマーを含むモノマー成分を重合して吸水性ポリマーを製造する方法であって、反応槽中の疎水性有機溶媒に、重合に用いる全モノマー成分の内の1〜30重量%の初期仕込みモノマー成分及び初期仕込みモノマー成分に対し0〜0.005重量%の重合開始剤(以下重合開始剤1という)を供給した後、残りのモノマー成分及び残りのモノマー成分に対し0.01〜10重量%の重合開始剤(以下重合開始剤2という)を反応槽に連続的又は断続的に供給する、吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
水溶性ビニルモノマーがオレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩である、請求項1記載の吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
重合開始剤が酸化性重合開始剤である、請求項1又は2記載の吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
重合開始剤2を、下記式(I)で表される添加速度Vが0.1×10-5〜10×10-5(1/min)となる速度で反応槽に供給する請求項1〜3いずれかに記載の吸水性ポリマーの製造方法。
V=C/T (I)
(ここで、Cは重合開始剤2の平均モル濃度を示し、C=重合開始剤2の使用量(モル)/重合で用いる全モノマー成分量(モル)で表される。Tは重合開始剤2の添加時間(min)を示す。)
【請求項5】
重合が逆相懸濁重合である、請求項1〜4いずれかに記載の吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
重合を回分操作で行なう、請求項1〜5いずれかに記載の吸水性ポリマーの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の製造方法により吸水性ポリマーの重量基準メジアン径を200〜600μmに制御する、吸水性ポリマーの粒径制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−179759(P2008−179759A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177109(P2007−177109)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】