説明

吸水性樹脂およびその製造方法

【課題】微粉や粉塵も少ない吸水性樹脂であって、残存モノマーが少なく、高吸収速度の吸水性樹脂を生産性よく製造する方法を提供する。
【解決手段】すなわち、本発明の吸水性樹脂の製造方法は、酸基含有不飽和単量体の水溶液を架橋重合する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体水溶液に固形物を含有させ、重合の開始温度を40℃以上または重合時の最高温度を100℃以上に制御して静置重合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、粒度分布が制御され、微粉も少なく、耐衝撃性(粉体磨耗性)に優れた、高吸収速度の吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、親水性重合体の一例である吸水性樹脂は、紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品、土壌用保水剤、等の各種用途に幅広く利用され、大量に生産・消費されている。特に、紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品用途では、製品の薄型化のために吸水性樹脂の使用量を増し、パルプ繊維の使用量を減らす傾向にある。そこで、吸水性樹脂に対しては、加圧下吸収倍率の大きいものが望まれている一方、衛生用品1枚当りの吸水性樹脂使用量が多いため、低コストで製造できることが望まれている。そのため、吸水性樹脂の製造ラインでのエネルギー消費量の低減、排出物の低減およびそれらによる合理的製法の確立が望まれている。
【0003】
吸水性樹脂に望まれている特性として、高吸収倍率、高加圧下吸収倍率、高吸収速度、低残存単量体、低い(少ない)水可溶分などがあるが、中でも、吸収速度の向上は吸水性樹脂の基本課題のひとつであり、多くの手法が提案されている。
【0004】
吸収速度は比表面積に大きく依存するため、粒子径を細かくする手法では、粉塵発生や通液性低下などの他の物性が低下するという問題がある。そこで、発泡や造粒などの速度向上方法が多く提案され、例えば、固形物(固体)を分散させて発泡重合する方法(特許文献1)、気体を分散させて発泡重合する方法(特許文献2)、炭酸塩で発泡重合する方法(特許文献3,4)、界面活性剤0.1〜20%で発泡重合する方法(特許文献5,6),非球面ダイから押し出し造粒方法(特許文献7)、多価金属で吸水性樹脂微粒子を造粒する方法(特許文献8)、マイクロ波で加熱する方法(特許文献9)、フィラーを内蔵させる方法(特許文献10)などが知られている。
【0005】
また、発泡重合して、不活性ガスのミクロ気泡を含むアクリル酸ナトリウム塩微細沈殿のスラリーを重合する方法(特許文献11)が知られている。
【特許文献1】米国特許5985944号(1999年11月16日公開)
【特許文献2】米国特許6107358号(2000年8月22日公開)
【特許文献3】米国特許5712316号(1998年1月27日公開)
【特許文献4】米国特許5462972号(1995年10月31日公開)
【特許文献5】米国特許6136973号(2000年10月24日公開)
【特許文献6】米国特許6174929号(2001年1月26日公開)
【特許文献7】米国特許6133193号(2000年10月17日公開)
【特許文献8】米国特許5002986号(1991年3月26日公開)
【特許文献9】米国特許6076277号(2000年6月20日公開)
【特許文献10】米国特許6284362号(2001年9月4日公開)
【特許文献11】特開平3−115313号公報(1991年5月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒子径を小さくして表面積を上げて吸収速度を向上する方法では、微粉増加に伴って他の物性が低下する。また、吸収速度を向上のため、吸水性樹脂を造粒する方法は工程が複雑になるうえ、一般に造粒強度が弱いために粉塵や物性低下などの問題がある。また、発泡させる方法は新たな発泡剤や界面活性剤など必要であるだけでなく、発泡による嵩比重の低下に伴う輸送や保管費用の増加、発泡粒子が弱いために微粉の発生や物性低下の問題がある。さらに、発泡重合では残存モノマー増加の問題や加圧下吸収倍率(AAP)が向上しにくいという問題もあった。
【0007】
そして、これまでの吸水性樹脂では、吸水速度、加圧下吸収倍率、粒度、残存モノマー量等の物性を、全て好ましい範囲に制御することは困難若しくは不可能であるだけではなく、仮にこれら物性を制御した吸水性樹脂が得られたとしても、大スケールでオムツを製造する場合では、実験室で予想されたオムツ性能を発揮しないことがある。
【0008】
上記原因を探求した結果、吸水速度を高める(発泡や造粒させる)と、吸水性樹脂が工場のライン等で輸送される際にダメージを受け、微粉が発生し易くなるため、吸水性樹脂をオムツに使用した際のオムツの性能を低下させる等の問題も見出された。
【0009】
このため、オムツの性能を最大限に発揮できる吸水性樹脂の性能改善、具体的には吸水速度が速く、且つダメージにも強い(微粉を発生し難い)吸水性樹脂が望まれていた。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、微粉や粉塵も少ない吸水性樹脂であって、残存モノマーが少なく、高吸収速度の吸水性樹脂を生産性よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、酸基含有不飽和単量体の水溶液を架橋重合する吸水性樹脂の製造方法において、単量体水溶液に固形物(固体)を含有させ、かつ、特定温度以上の高温重合開始または高温重合ピークで規定される高温重合によって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、特定温度以上の高温重合にて、および、固体(好ましくは水不溶性粒子)を含有する単量体水溶液を架橋重合することによって、簡便な工程で生産性も高く、吸収速度が向上し、かつ残存モノマーも低減した吸水性樹脂が得られることを見出した。
【0012】
そして、上記吸水速度の速い吸水性樹脂について、実使用でのオムツの性能が不十分である原因を追求した結果、輸送時やオムツ製造工程で、吸水性樹脂の粒子破壊が生じ、オムツに組み込まれた吸水性樹脂の物性が大きく低下することを見出した。更には、微粒子を含有する、本発明で見出された吸水性樹脂、若しくは特定の吸水性能を満たす吸水性樹脂では、上記問題も解消され、オムツ中でも高性能を維持し、優れたオムツを提供することができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の吸水性樹脂の製造方法は、酸基含有不飽和単量体の水溶液を架橋、好ましくは架橋重合する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体水溶液に固形分(好ましくは水不溶性の固形物)を含有させることで、該固形物の存在下で静置重合し、重合の開始温度を40℃以上、または重合時の最高温度を100℃以上に制御して静置重合することを特徴とする。
【0014】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記固形物が水不溶性粒子であることが好ましい。
【0015】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記静置重合が連続ベルト装置で行なわれることが好ましい。
【0016】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記固形物が吸水性樹脂の乾燥粉末または膨潤ゲル粒子であることが好ましい。
【0017】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記固形物の含有量が酸基含有不飽和単量体に対して0.1〜50重量%であり、前記固形物の90重量%以上が標準篩5mm通過物であることが好ましい。
【0018】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記単量体がアクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記固形物が、生理食塩水に対する吸収倍率(CRC)5〜20g/gである吸水性樹脂であることが好ましい。
【0020】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、重合時間が10分以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の吸水性樹脂の製造方法では、前記単量体の水溶液濃度が40〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の吸水性樹脂粒子は、アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子であって、下記(1)〜(6)を満たすことを特徴とする。
【0023】
(1)吸収倍率(CRC)が20〜40g/gである。
【0024】
(2)加圧下吸収倍率(AAP)が20〜40g/gである。
【0025】
(3)吸収速度(FSR)が0.25〜1.0g/g/secである。
【0026】
(4)嵩比重(JIS K 3362)が0.50〜0.80g/mlである。
【0027】
(5)残存モノマーが0〜400ppmである。
【0028】
(6)850〜150μmの粒子(JIS Z8801−1)が95〜100重量%である。
【0029】
本発明の吸水性樹脂粒子は、酸基含有不飽和単量体の水溶液を重合することにより得られ、重合時の酸基含有不飽和単量体の重量を基準として水不溶性粒子0.1〜50重量%を内部に含むことが好ましい。
【0030】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、以上のように、酸基含有不飽和単量体の水溶液を架橋、好ましくは架橋重合する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体水溶液に固形分(好ましくは水不溶性の固形物)を含有させることで、該固形物の存在下で静置重合し、重合の開始温度を40℃以上、または重合時の最高温度を100℃以上に制御して静置重合することを特徴としている。
【0032】
このため、微粉や粉塵も少ない吸水性樹脂であって、残存モノマーが少なく、高吸収速度の吸水性樹脂を生産性よく製造する方法を提供することができるという効果を奏する。
【0033】
また、本発明の吸水性樹脂粒子は、アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子であって、下記(1)〜(6)を満たすことを特徴とする。
(1)吸収倍率(CRC)が20〜40g/gである。
(2)加圧下吸収倍率(AAP)が20〜40g/gである。
(3)吸収速度(FSR)が0.25〜1.0g/g/secである。
(4)嵩比重(JIS K 3362)が0.50〜0.80g/mlである。
(5)残存モノマーが0〜400ppmである。
(6)850〜150μmの粒子(JIS Z8801−1)が95〜100重量%である。
【0034】
このため、微粉や粉塵も少ない吸水性樹脂であって、残存モノマーが少なく、高吸収速度の吸水性樹脂を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0036】
なお、以下の説明において、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、「主成分」とは50質量%以上(より好ましくは60質量%以上)含有しているという意味として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0037】
また、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリロイル又はメタアクリロイル」、「アクリレート又はメタアクリレート」をそれぞれ意味し、「アクリル酸(塩)」は、「アクリル酸又はアクリル酸塩」を意味する。尚、上記「アクリル酸塩」とは特に1価塩を意味する。
【0038】
(吸水性樹脂)
本発明で吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことである。水膨潤性の架橋重合体とは、例えば、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍の水を吸収するものを指す。また、水不溶性の架橋重合体とは、例えば、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは0〜50質量%、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のものを指す。
【0039】
(単量体)
本発明で用いられる、重合して吸水性樹脂となる単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。
【0040】
これら単量体は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよいが、得られる吸水性樹脂の性能やコストの点から、アクリル酸および/またはその塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、アミン類等の塩、中でも物性面からナトリウム塩が好ましい)を主成分として用いることが好ましい。
【0041】
重合前または重合後のアクリル酸の中和率は好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜85モル%、より好ましくは55〜80モル%、最も好ましくは60〜75モル%である。
【0042】
また、好ましくは、アクリル酸および/またはその塩が全単量体成分(架橋剤を除く)に対して50〜100モル%、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0043】
単量体の濃度は特に制限はないが、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上、最も好ましくは50重量%以上である。上限は単量体の飽和濃度、若しくは80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。濃度20重量%未満では吸収速度が向上しない場合がある。また、アクリル酸ナトリウムを飽和濃度を超えたスラリー状水分散液で重合する吸水性樹脂の製造方法(特開平3−115313号公報)も知られているが、単量体の飽和濃度若しくは80重量%を超えると吸収倍率が低くなる傾向にある。尚、単量体の飽和濃度は、単量体の種類、温度、溶媒の種類、並びに助剤(例えば、界面活性剤)の種類及び添加量等で決定される。
【0044】
本発明において、架橋構造を有する吸水性樹脂を得る方法としては、架橋剤を単量体に添加して重合を行う。また、その際に重合時のラジカル自己架橋や放射線架橋などの公知の吸水性樹脂を得るための架橋方法を併用してもよい。
【0045】
用いられる内部架橋剤としては、重合時に架橋構造を形成させられるものであれば制限なく用いることができ、例えば、複数の重合性不飽和基を有する架橋剤、グリシジルアクリレートなどのように重合性不飽和基と高反応性基を合わせ持つ架橋剤、ソルビトール(例えば、国際公開第2006/319627号パンフレット参照)、(ポリ)エチレングリコールジグリジルエーテルなどのように複数の高反応性基を持つ架橋剤、塩化アルミニウムなどの多価金属塩のようなイオン性の架橋剤、グリセリンなどのように複数の水酸基を持つ架橋剤が例示され併用も制限ないが、複数の重合性不飽和基を有する架橋剤が諸物性の面で最も好ましい。用いられる複数の重合性不飽和基を有する架橋剤として、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、(メタ)アリロキシアルカン、グリセリンアクリレートメタクリレートなどの1種または2種以上が例示される。なお、架橋剤の使用量は、架橋剤の種類や目的とする吸水性樹脂に応じて適宜決定されるが、酸基含有重合性単量体に対して通常0.001〜5モル%、0.005〜4モル%、好ましくは0.01〜1モル%含有する。
【0046】
以上、本発明では繰り返し単位として、アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を含むことが好ましい。
なお、その他、単量体には澱粉、ポバール、PEGやPEOなどの水溶性高分子0〜30質量%程度、次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤、後述のキレート剤を添加してもよい。
【0047】
(固形物)
単量体の水溶液に分散させる化合物としては、水溶液の液温が0〜40℃、さらには10〜30℃の範囲、特に25℃(なお、圧力は常圧(1気圧)とする)である場合に、該水溶液中に不溶もしくは難溶で分散可能な化合物である。好ましくは、固形物(固体)が水不溶性粒子である。
【0048】
このような固形物(以下、固体や固形物質とも称する)としては、無機物質、有機物質、有機無機複合物質等、種々の固形物質を用いることができる。例えばベントナイト、ゼオライト、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、活性炭などの無機物質、ポリアクリル酸(塩)架橋体、ポリアクリルアミドおよびその架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合架橋体、またはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級塩などのカチオン性単量体とポリアクリルアミドの共重合架橋体、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどポリカチオン化合物の架橋体などの有機物質が挙げられる。また有機物質、無機物質の複合体やブレンド物も挙げられる。なお、固体は単量体水溶液中で膨潤してゲル状となってもよい。本発明ではゲル状となっても、単量体に溶解せず分散する状態も固体とする。
【0049】
上記固形物(固体)の形状は、特には限定されず、繊維状であっても粒子状であってもかまわないが、粒子状の方が表面積が高く、より効果的に発泡を促進させることができるため好ましい。
【0050】
これらの固形物(固体)は、通常、常温で固体の粉末状(粒子状)化合物であることが好ましい。粒子径としてはその90重量%以上(上限100質量%)が好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは150μm以下が好ましい。粉末の粒子径が5mmを超えると吸水性樹脂中に存在せしめることができる気泡の数が少なくなり、また粉砕を行う必要が生じる場合もあるため好ましくない。
【0051】
また、上記固形物(固体)は、実質全て(99.9重量%以上)の粒子の粒子径が1nm〜5mmの範囲内であることがより好ましく、全ての粒子の粒子径が5nm〜1mmの範囲内であることが最も好ましい。粉末の粒子径が1nm未満である場合は、単量体水溶液中に均一に混合させることが困難となるおそれがある。
【0052】
粒度の測定は38μm以上の粒子については標準ふるい(JIS Z8801−1(2000))を用いてふるい分級して測定できるし、38μm以下の粒子にはレーザー解析式粒度分布測定装置を用いて測定できる。具体的には、上記分散させる化合物は、常温の水に対して化合物の70重量%以上が不溶、さらに好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上のものである。
【0053】
本発明で好ましくは、固形物(固体)としてポリアクリル酸(塩)架橋重合体、すなわち、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が用いられる。固体が吸水性樹脂の乾燥粉末または膨潤ゲル粒子である。
【0054】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を用いる場合、本発明を達成するうえで、その吸収倍率(CRC)は低いほど好ましく、通常50g/g以下、好ましくは40g/g以下、さらに好ましくは30g/g以下、特に好ましくは20g/g以下である。下限は吸収倍率から5g/g以上、好ましくは10g/g以上である。また、可溶分量は好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。すなわち、本発明で好ましくは、固形物(固体)が、生理食塩水に対する吸収倍率(CRC)5〜20g/gである吸水性樹脂である。
【0055】
かかるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は別途製造してもよく、粒度制御のために除去された微粉や粗大粒子でもよい。すなわち、吸水性樹脂の製造工程で微粉や粗大粒子を除去したのち、それらを廃棄することなく、本発明の固形物(固体)として使用することで、粒度制御も可能でかつ吸収速度も向上する。
【0056】
また、単量体に対する固体(好ましくは吸水性樹脂)の濃度は目的とする性能に応じて適宜設定すればよいが、単量体に対して通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、上限は通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましく30質量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。0.1重量%未満では添加による効果がほとんど見られず、50重量%を超えると吸収倍率の低下などが見られる場合がある。
【0057】
また、固形物(固体)の分散方法としては、特に制限はないが、例えば、タンク中の液体の単量体または単量体水溶液中に投入して分散させたり、連続的に流れる前記液中に混合機を用いて連続的に分散させるといった方法、重合機に供給された単量体水溶液に散布し必要に応じて混合などして分散させる方法、更には重合機に固体を散布してから単量体水溶液を供給し必要に応じて混合などして分散させる方法を用いることができる。このように該化合物を分散させることによって、化合物を単量体水溶液中で均一に分散させることができる。
【0058】
上記分散方法として、後述するエンドレスベルトを用いる連続静置重合を行う場合には、エンドレスベルトに供給された単量体水溶液に、固形物を散布する方法や、エンドレスベルトに単量体水溶液を供給する前に固形物を散布する方法が好ましく、前者がより好ましい。
【0059】
上記分散方法では、単量体水溶液調整用タンクに固形物を予め投入する場合や、ラインミキシングを行う場合とは異なり、固形物が局所的に堆積することによるトラブルが生じないためより好ましい。
【0060】
さらには、上記分散方法では、固形物を散布したり、しなかったりと間欠的に固形物を散布することができるため、静置重合を途中で止めることなく連続的に静置重合を行いながら固形物の散布量を適宜調節することができる。
【0061】
エンドレスベルトに供給された単量体水溶液に固形物を散布する上記方法における固形物を散布するタイミングは、単量体水溶液の重合が終了する前までに行えば特には限定されないが、より効果的に発泡重合を行うという観点から、重合開始直後(具体的には、重合開始から10秒以内)に固形物を単量体水溶液に散布することがより好ましい。
【0062】
(重合)
本発明での重合は、静置水溶液重合であって、かつ、重合の開始温度40℃以上または最高温度が100℃以上で、静置重合することが必須である。静置重合でない場合、例えば、逆相懸濁重合や水溶液攪拌重合である場合、固体を含有させても、得られた吸水性樹脂に吸収速度の向上が見られない。重合の開始温度40℃以上または最高温度が100℃以上ででない場合も、吸収速度の向上が見られない。なお、攪拌水溶液重合としてニーダー重合(米国特許出願公開2004−110897号,米国特許670141号、同4625001号、同5250640号など)が知られており、これらは重合中に終始攪拌を行うため、得られる吸水性樹脂の吸収速度の向上に劣り、本発明では適用されない。
【0063】
なお、静置重合とは、単量体水溶液に対して攪拌機などによりかき混ぜる操作を行うことなく、重合反応を進行させる重合法である。尚、重合開始剤を単量体水溶液に投入して、単量体水溶液を均一に混合した後に静置重合を行う場合には、厳密に言えば、重合反応中にかき混ぜる操作を行っていることになるが、本明細書中では、このような形態であっても静置重合に含まれるものとする。
【0064】
つまり、本明細書中における静置重合とは、具体的には、少なくとも重合開始から30秒以降は単量体水溶液に対してかき混ぜる操作を行うことなく、重合反応を進行させる重合法であり、重合途中に一部攪拌若しくはゲル粉砕を行ってもよいが、より好ましくは重合開始から単量体水溶液に対してかき混ぜる操作を全く行うことなく、重合反応を進行させる重合法である。なお、後述するエンドレスベルトを用いる実施形態は、単量体水溶液全体を移動させるものであって、単量体水溶液に対してかき混ぜる操作を行わないため、静置重合に含まれる。
【0065】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許に記載されている。こられに記載の単量体、架橋剤、重合開始剤、その他添加剤も静置水溶液重合に用いる範囲で本発明では適用できる。
【0066】
(重合装置)
静置重合法ではバッチ式でも行なえるが、エンドレスベルトを用いる連続静置重合(例えば、米国特許出願公開2005−215734号)が好ましい。ベルトは重合熱を接材面から逃しにくい樹脂ないしゴム製のベルトが好ましい。また、吸収速度の向上のために、重合容器上部に開放空間が存在することが好ましい。また、単量体、重合開始剤、架橋剤および分散固体を含む単量体水溶液をベルトに供給した際の単量体水溶液(またはゲル)の仕込み厚さは通常1〜100mmが好ましく、より好ましくは3〜50mm、最も好ましくは5〜30mmである。単量体水溶液の厚みが1mm以下になると単量体水溶液の温度調整が困難となり、100mm以上であると重合熱の除熱が困難となり、いずれも吸水性樹脂の物性が低下する原因となる。また、エンドレスベルトのスピードについては、重合装置の長さにもよるが通常0.3〜100m/分が好ましく、より好ましくは0.5〜30m/分、最も好ましくは1〜20m/分である。ベルトスピードが0.3m/分よりも遅くなると生産性が低下し、100m/分よりも早いと重合装置が巨大化するため好ましくない。
【0067】
すなわち、本発明の重合方法は、単量体、重合開始剤、架橋剤および分散固体を含む単量体水溶液の投入口、前記単量体および生成した含水重合体が搬送されるエンドレスベルトと、前記含水重合体の排出口とを有する連続重合装置を用いた吸水性樹脂の連続製造方法であって、下記条件を満たすことが好ましい。
【0068】
前記連続重合装置は、側面および天井面が覆われており、下記式1で規定される装置空隙率が1.2〜20の範囲である、吸水性樹脂の連続製造方法。
【0069】
式1. 装置空隙率=B/A
A(cm);重合時の前記含水重合体の、前記エンドレスベルトの幅方向に対する最大断面積
B(cm);前記連続重合装置のエンドレスベルトと前記連続重合装置の天井面との間の空間の、前記エンドレスベルトの幅方向に対する最大断面積
また、本発明の重合方法はさらに下記条件を満たすことが好ましい。
【0070】
下記式3で規定される装置高さ比が10〜500の範囲であり、連続製造方法である、請求項1または2記載の吸水性樹脂の連続製造方法。
【0071】
式3.(ベルト比)=E/D
D(cm);前記単量体水溶液の仕込み厚さ
E(cm);前記エンドレスベルトから前記連続重合装置の天井面までの最大高さ
本実施の形態に係る静置重合法では、発泡をより増加させた状態で重合を行うため、気泡により表面積が高められた重合体が得られる。このため、上述したようなエンドレスベルトにより重合を行う場合には、得られる重合体がベルトと密着せず、得られる重合体をベルトから容易に剥離させることができる。これにより、ベルトに付着した重合体を強引に削り取る等の操作を行う必要が無いため、ベルトに対する負荷が低減され、ベルトの使用可能な期間を長期化させることができる。
【0072】
(重合開始温度)
本発明でかかる重合開始温度は吸収速度向上のために、必須に40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、上限は150℃以下、通常110℃以下、さらには100℃以下である。温度が低いと吸収速度の向上が見られず、温度が高すぎると吸収倍率の低下や可溶分量の増大などが生じて吸水性樹脂の物性が低下する。また、本発明では重合開始温度(単量体温度)を高くすることで、溶存酸素の除去が容易になるという利点も有する。重合開始温度が40℃未満であると、発泡重合とならない。さらに、誘導期間、重合時間の延びのため生産性が低下するのみならず、吸水性樹脂の物性も低下する。
【0073】
重合開始温度は、単量体水溶液の白濁、粘度上昇、温度の上昇などにより観測することができる。なお、重合開始温度や重合最高温度は一般的な水銀温度計、アルコール温度計、白金測温抵抗体、熱電対またはサーミスタなどの接触式温度センサーや、放射温度計を用いて測定できる。紫外線などの活性エネルギー線、酸化剤および還元剤によるレドックス重合、アゾ開始剤による熱開始重合などは一般に誘導期間が1秒〜1分程度と短いため、重合開始温度は開始剤添加前または活性エネルギー照射前の単量体水溶液の温度で規定してもよい。
【0074】
(最高温度)
本発明で重合最高温度は重合進行中の重合ゲルないし単量体の最高到達温度で規定される。かかる重合最高温度は吸収速度向上のために、必須に100℃以上、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上であり、上限は150℃以下、通常140℃以下、さらには130℃以下である。温度が低いと吸収速度の向上が見られず、温度が高すぎると吸収倍率の低下や可溶分量の増大などが生じて吸水性樹脂の物性が低下する。
【0075】
なお、重合系の温度測定方法としては、(株)キーエンス(Keyence)製PCカード型データ収集システムNR−1000を用いることによって測定することができる。具体的には、熱電対を重合系の中心部に置き、サンプリング周期0.1秒で測定する。得られた温度−時間チャートから重合開始温度、ピーク温度(最高到達温度)を読み取る。
【0076】
また、本発明においては、重合開始温度と重合中の最高到達温度との差ΔTが0℃を超えて好ましくは70℃以下であり、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下である。ΔTが70℃よりも大きいと、得られる吸水性樹脂の吸収速度が低下する場合があり好ましくない。重合中の温度を上記のような温度とする重合熱を得る一例として、単量体濃度をより好ましくは30重量%以上とする。
【0077】
(重合開始剤)
本発明で用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、熱分解型開始剤(例えば、過硫酸塩:過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム;過酸化物:過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド);アゾ化合物:アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)や光分解型開始剤(例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物)等を用いることができる。
【0078】
コスト、残存モノマー低減能から過硫酸塩が好ましい。また、光分解型開始剤と紫外線を用いるのも好ましい方法である。より好ましくは、光分解型開始剤と熱分解型開始剤を併用することである。重合開始剤量は単量体に対して通常0.001〜1モル%、好ましくは0.01〜0.5モル%、さらには0.05〜0.2モル%の範囲である。
【0079】
(重合時間)
重合時間は特に限定されないが、通常は15分以下であり、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、より好ましくは1分以下である。15分(特に5分)を超えると、得られる重合体(含水重合体、ベースポリマー、および吸水性樹脂)の生産性が低下するだけでなく、場合により、吸収速度などの物性も低下するので好ましくない。
【0080】
ここで、重合時間の算出方法は、単量体水溶液が重合容器に入れられ、重合開始条件が整った時点(光分解型開始剤を用いる場合は、光照射開始時、光分解型開始剤を用いない場合は、単量体水溶液と重合開始剤が重合容器に入れられた時点)から、ピーク温度までの時間を測定することによって得られる。すなわち、(誘導期間)+(重合開始からピーク温度に達するまでの時間)を測定することによって重合時間を算出することができる。
【0081】
(開始温度の調整手段)
単量体を40℃以上とするには重合容器自体を加熱しても良いし、重合容器に単量体水溶液を供給する際に、予め加熱(例えば、ライン中で40℃以上に加熱)してもよい。かかる外部加熱を行うことにより単量体の温度を40℃以上としてもよいが、重合容器に供給される前に単量体を予め加熱することがより好ましく、特に、単量体の中和熱を昇温に用いることが好ましい。なお、中和熱および/または水和熱の発生は、単量体水溶液の昇温に有効に利用されるだけでなく、溶存酸素の除去に利用でき、さらに吸収速度も向上でき好ましい。
【0082】
このように中和熱および/または水和熱を有効に利用するためには、断熱状態で中和を行うことが好ましく、連続的に中和を行い連続的に重合を行うことがより好ましい。そのため、例えば、放熱を極力抑えた容器を用いることが望ましく、材質としては、樹脂、ゴム、ステンレスの非接材部を保温材で蔽ったもの等が好ましく用いられる。
【0083】
(脱気)
本発明の好ましい実施態様では溶存酸素量(酸素濃度)を、単量体水溶液に対して、好ましくは4ppm以下、より好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下にし重合する。
【0084】
かかる酸素濃度とする手段として、重合開始剤投入前に、不活性ガスを吹き込んだり、減圧脱気したりして、重合を阻害する溶存酸素を除去することを行うこともできるが、設備や運転経費を要するため、本発明のより好ましい実施態様では溶存酸素の除去作業を、中和熱および/または水和熱を利用し、単量体水溶液を昇温して、溶存酸素を揮散させることにより行うことができる。
【0085】
溶存酸素量の測定は、例えば、測定装置(セントラル科学(株)製DOメーターUD−1型)を用いることによって測定することができる。尚、単量体水溶液の温度が50℃を超える場合、測定装置の耐熱性から測定できないことがある。調製した単量体水溶液を窒素雰囲気中で、気泡をかみ込まないように穏やかに攪拌しながら、氷冷し、液温が50℃となった時点で溶存酸素量を測定する。
【0086】
また、単量体水溶液の原料であるアクリル酸、アルカリ水溶液、水などの一部または全部をあらかじめ部分的に脱酸素しておき、中和熱によって、さらに脱酸素するのも好ましい。また、アクリル酸とアルカリをラインミキシング中和し、さらに重合開始剤をラインミキシングして80℃以上の高温度で重合開始する場合には、ライン中での重合開始を防ぐために、原料のアクリル酸、アルカリ水溶液、水などは前もって脱酸素する量を減らすか脱酸素しないのが好ましい。
【0087】
(固形分濃度上昇)
また、本発明の方法は、高吸収速度の吸水性樹脂を得るために、固形分濃度が上昇するような形態で重合が行なわれる。
【0088】
本発明の重合法の好ましい例によれば、重合開始後、系の温度は急速に上昇して低い重合率、例えば全単量体を100モル%としたときの重合率が10〜20モル%で沸点に達し、水蒸気を発し、固形分濃度を上昇させながら重合が進行する。重合熱を有効に利用して固形分濃度を高めるのである。重合時の固形分濃度上昇は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上である。
【0089】
なお、固形分濃度上昇は単量体水溶液の固形分濃度と得られた含水ゲル状重合体の固形分濃度との差で規定され、測定方法としては重合器から取り出された含水重合体の一部を小量切り取って素早く冷やし、はさみで素早く細分化した含水重合体5gをシャーレにとり、180℃乾燥器中で24時間乾燥して算出した。粒子状含水重合体の固形分濃度は、サンプル5gをシャーレにとり、180℃乾燥器中で24時間乾燥して乾燥減量で算出することができる。
【0090】
本発明の重合で固形分濃度を上昇させる具体的な手段の一例として、例えば、常圧下での重合では、重合率が40モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が、より好ましい態様である。重合率が20モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が最も好ましい態様である。減圧重合の場合には、やはり重合率が40モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が、より好ましい態様であり、重合率が20モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が最も好ましい態様である。
【0091】
(乾燥)
上記重合により得られた重合体がゲル状である場合には、該ゲル状重合体を乾燥、好ましくは70〜250℃、さらに好ましくは120〜230℃、特に好ましくは150〜210℃、最も好ましくは160〜200℃で乾燥し、必要により粉砕することで、質量平均粒径が10〜1000μm程度の吸水性樹脂粉末とすることができる。乾燥温度がかかる温度範囲から外れる場合、吸水速度、吸水倍率の低下等がみられる場合がある。乾燥方法に特に制限はないが、攪拌乾燥法、流動層乾燥法、気流乾燥法等のように、材料を動かしながら熱風や伝熱面と良く接触する乾燥方法が好ましく用いられる。
【0092】
尚、前述の特許文献11(特開平3−115313号公報)には乾燥条件については開示されていないが、後述する実施例から明らかなように乾燥条件も物性に影響する。
【0093】
重合して吸水性樹脂となる単量体成分を水溶液重合して生成する含水ゲル状重合体は、厚板状、ブロック状、シート状等のそのままでは乾燥しにくい形状の場合、通常、粒子径10mm以下、さらには3mm以下程度にゲル粉砕された後、乾燥される。ゲル粉砕には水や界面活性剤、水溶性高分子を0〜30質量%、さらには0〜10質量%(対吸水性樹脂)程度添加して、ゲル粉砕性を向上させ、物性を向上させてもよい。
【0094】
さらに、乾燥後に必要により粉砕、分級、表面処理等の各工程を経て吸水性樹脂となる。かかる分級工程で得られた微粉や粗粒は、本発明では固体として重合に適用することが好ましい。
【0095】
(表面架橋)
本発明の製造方法は重合後の吸水性樹脂、特に乾燥および粉砕した吸水性樹脂はさらに表面架橋処理をしてもよい。加圧下吸収倍率や加圧下通液性を向上させることができる。
【0096】
好適な表面架橋剤は、オキサゾリン化合物(米国特許6297319号),ビニルエーテル化合物(米国特許6372852号)、エポキシ化合物(米国特許625488号)、オキセタン化合物(米国特許6809158号)、多価アルコール化合物(米国特許4734478号)、ポリアミドポリアミン−エピハロ付加物(米国特許4755562号および同4824901号)、ヒドロキシアクリルアミド化合物(米国特許6239230号)、オキサゾリジノン化合物(米国特許6559239号)、ビスまたはポリーオキサゾリジノン化合物(米国特許6472478号)、2−オキソテトラヒドロ-1,3−オキサゾリジン化合物(米国特許6657015号)、アルキレンカーボネート化合物(米国特許5672633号)などの1種または2種以上が使用される。また、かかる表面架橋剤にアルミニウム塩などの水溶性カチオン(米国特許6605673号、米国特許6620899号)を併用してもよいし、アルカリ(米国特許出願公開2004−106745号)、有機酸や無機酸(米国特許5610208号)などを併用してもよい。また、吸水性樹脂の表面でモノマーの重合を行い表面架橋(米国特許出願公開2005−48221号)としてもよい。
【0097】
上記特許などに使用の架橋剤やその架橋条件は適宜本発明にも適用できる。
【0098】
好適に用いられる表面架橋剤としては、酸基と反応し得る架橋剤であり、例えば、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)グリセリン、ソルビトール(例えば、国際公開第2005/44915号パンフレット参照)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコール化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物;(ポリ)エチレンイミンなどの多価アミン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンなどの各種アルキレンカーボネート化合物;アルミニウム塩などの多価金属塩も例示することができるが、多価アルコールを少なくとも用いることが好ましい。
【0099】
これらの表面架橋剤は単独で使用してもよく、また、2種類以上併用しても良い。なお、吸水性樹脂に対する該使用量は、吸水性樹脂100%に対して0.001〜10重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲内とすればよい。
【0100】
表面架橋剤の添加方法は特に制限はなく、該架橋剤を親水性溶媒あるいは疎水性溶媒に溶解させて混合する方法、無溶媒で混合する方法、などが挙げられる。上記の中でも、親水性溶媒として水、または水に可溶な有機溶媒との混合物が好適である。親水性溶媒またはその混合物の使用量は、吸水性樹脂や該架橋剤との組み合わせなどにもよるが、吸水性樹脂100%に対して0〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲内とすればよい。混合の際には上記表面架橋剤またはその溶液は、滴下あるいは噴霧して混合することができる。
【0101】
吸水性樹脂の表面の架橋密度を上げるために、表面架橋剤を添加混合した後、加熱する。加熱温度は、所望する架橋密度等に応じて適宜選択すればよいが、通常、加熱温度は100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の範囲で行われる。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜選択すればよいが、1分〜2時間程度の範囲内で行うのが好ましい。
【0102】
(粒度)
本発明で吸水性樹脂の粒度は粉砕や分級によって特定範囲に調整することが好ましい。かかる粉砕や分級で発生する粗大粒子(例えば、粒子径1mm以上)や微粉(例えば、粒子径150μm以下)は本発明で固体として重合に使用することで、より粒度制御が可能となる。さらに、従来のように粒度を細かくしなくても、高吸収速度が達成される。
【0103】
すなわち、本発明の吸水性樹脂は粒度制御が容易であり、例えば、質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200〜710μm、より好ましくは250〜600μm、特に好ましくは300〜500μmの範囲に狭く制御され、かつ、850μm以上ないし150μm未満の粒子の割合が0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0〜1質量%に制御される。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は好ましくは0.20〜0.50の範囲、より好ましくは0.45〜0.25、特に0.40〜0.28とされる。なお、かかる粒度は米国特許出願公開2005−118423号に従い、標準ふるい分級(JIS Z8801−1(2000)ないしその相当品)で測定される。
【0104】
また、本発明で嵩比重(JIS K−3362−1998年で規定)は好ましくは0.40g/ml〜0.90g/mlの範囲、より好ましくは0.50g/ml〜0.85g/mlに制御される。従来、吸収速度向上で犠牲になっていた嵩比重も本発明では高く維持できる。よって、吸水性樹脂の輸送や保管の費用を削減できるだけでなく、耐衝撃性(後述のペイントシェーカー試験)も向上する。
【0105】
なお、吸水性樹脂の粒子形状は、粉砕工程を経るので不定形破砕状粒子である。
【0106】
(残存モノマーおよび吸収速度)
本発明では効果の一例として、上記粒度制御のほかに、吸収速度が向上する。吸収速度は粒度にもよるが、上記粒度の場合、FSR(Free Swell Rate)で0.20〜2.00(g/g/sec)、好ましくは0.25〜1.00(g/g/sec)、さらに好ましくは0.27〜0.90(g/g/sec)、特に好ましくは0.30〜0.80(g/g/sec)とされる。FSRが0.20未満では吸収速度が遅すぎて、おむつのもれなどの原因となる。また、FSRが2.00を超える場合、おむつ中の液拡散が低下する恐れがある。
【0107】
本発明では効果の一例として、上記粒度制御のほかに、残存モノマーも低減できる。一般に吸収速度向上のための発泡重合では残存モノマーが増加する傾向であったが、本発明では吸収速度が向上しても残存モノマーは増加しないまたは低減する傾向を示すので好ましい。
【0108】
残存モノマー量は0〜400ppm、好ましくは0〜300ppm、さらに好ましくは0〜100ppmとなる。
【0109】
(その他物性)
本発明では目的に応じて架橋を調整することで物性制御させるが、おむつなどの衛生材料の場合は下記に制御させる。従来、吸収速度で犠牲になっていた加圧下吸収倍率について、本発明では加圧下吸収倍率も高く好ましい。
【0110】
すなわち、本発明の吸水性樹脂は0.9質量%生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)は通常10g/g以上、好ましくは25g/g以上、より好ましくは30〜100g/g、さらに好ましくは33〜50g/g、特に好ましくは34g/g〜40g/gの範囲である。
【0111】
生理食塩水の荷重1.9kPaでの加圧下吸収倍率(AAP1.9kPa)が20g/g以上、より好ましくは25g/g〜40g/g、特に好ましくは27〜35g/gの範囲である。また、荷重4.9kPaでの加圧下吸収倍率(AAP4.9kPa)が10g/g以上、より好ましくは22g/g〜40g/g、特に好ましくは24〜35g/gの範囲である。
【0112】
加圧下吸収倍率から求められるPPUPは、40〜100%、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、特に好ましくは70〜100%である。なお、本発明のPPUPは国際公開第2006/109844号パンフレットに示され、下記にPPUPは規定される。
【0113】
PPUPは4.8kPaの圧力下での0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する60分間の加圧下吸収倍率において、粒子状吸水剤0.9gでの加圧下吸収倍率(AAP:0.90g)、および、粒子状吸水剤5.0gでの加圧下吸収倍率(AAP:5.0g)としたときに、粒子状吸水剤の加圧下通液効率(PPUP)は下記式で規定。
PPUP(%)=(AAP:5.0g)/(AAP:0.90g)×100
通液性としてSFC(米国特許出願公開2004−254553号)は、通常1×10−7(cm×sec/g)以上、好ましくは10×10−7(cm×sec/g)以上、さらに好ましくは50×10−7(cm×sec/g)以上である。
【0114】
含水率(樹脂1gの無風オーブン180℃/3hr後の減量で規定)は、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは93質量%以上99.9質量%以下の範囲、特に好ましくは95質量%以上99.8質量%以下の範囲である。
【0115】
(その他添加剤)
本発明で使用する吸水性樹脂は上記工程に加えてさらに、重合時または重合後(例えば、表面架橋時、造粒時など)に添加剤を0〜10質量%、好ましくは0.001(10ppm)〜1重量%程度(より好ましくは50ppm〜1重量%)使用してもよい。好ましくは、キレート剤を添加してさらに物性向上を行なうことができる。
【0116】
このような工程では、添加剤若しくはその溶液、例えば、水の他に種々の添加成分を溶解した水溶液を吸水性樹脂に添加することが出来る。例えば、水不溶性微粒子、キレート剤(米国特許6599989号参照)(ジエチレントリアミンペンタ酢酸塩、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸など)、植物成分(タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子、没食子酸など)、無機塩(カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の多価金属塩など)、還元剤(米国特許4972019号、同4863989号参照)などが挙げられる。
【0117】
(本発明の吸水性樹脂)
すなわち、本発明では、アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を繰り返し単位とする吸水性樹脂であって、下記6つの条件を満たす吸水性樹脂をも提供する。
【0118】
吸収倍率(CRC)が20〜40g/g
加圧下吸収倍率(AAP)が20〜40g/g
吸収速度(FSR)が0.25〜1.0g/g/sec
嵩比重(JIS K 3362)が0.50〜0.80
残存モノマーが0〜400ppm
粒度分布で850〜150μmの粒子(JIS Z8801−1)が95〜100重量%
なお、上記「アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を繰り返し単位とする吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)分子14〜99999.9個に対して、架橋剤分子が1個結合している構造を、繰り返し単位として有する吸水性樹脂のことを意味する。
【0119】
上記吸水性樹脂は、例えば、上述した本発明に係る吸水性樹脂の製造方法、即ち、水不溶性の固形物の存在下で静置重合し、かつ重合の開始温度を40℃以上または重合時の最高温度を100℃以上に制御することにより製造することができる。
【0120】
かかる吸水性樹脂は好ましくは、重合時の酸基含有不飽和単量体の質量を基準として水不溶性粒子(好ましくは吸水性樹脂粉末)0.1〜50重量%を内部に含む。
【0121】
これら吸収倍率などの上記6つの物性や吸水性樹脂粉末含有量の好ましい範囲は記載されている。本発明では水不溶性粒子(好ましくは吸水性樹脂粉末)を特定量含むことで、一般的には、従来困難であった吸収速度の向上、残存モノマー低減、粒度制御、加圧下吸収倍率の向上、嵩比重の制御などが可能となる。
【0122】
特に、従来の高吸水速度の吸水性樹脂では、発泡や造粒が必要であるために、粉体での耐衝撃性や嵩比重が低く、嵩高くなってしまうという致命的な欠点を有していた。加圧下吸収倍率(AAP)や通液性(SFC)の衝撃による劣化が抑制された吸水性樹脂を開示する、米国特許6071976号、米国特許6414214号、米国特許5837789号、米国特許6562879号等に記載の吸水性樹脂と比べて、本発明に係る吸水性樹脂は吸水速度(FSR)等が飛躍的に改善されている。よって、オムツでの実使用に好適な、耐衝撃性及び吸水速度に優れた新規な吸水性樹脂を提供することができる。
【0123】
そして、オムツに組み込んだ際であっても、高い吸収性能を維持する吸水性樹脂も得ることができる。即ち、オムツ中でも吸収速度が速い吸水性樹脂であって、残存モノマーが少なく、水不溶性粒子の存在の有無にかかわらず嵩比重低下による輸送コストの向上等が起こらない、新規な吸水性樹脂を得ることもできる。
【0124】
(用途)
本発明の吸水性樹脂は、水だけでなく、体液、生理食塩水、尿、血液、セメント水、肥料含有水などの水を含む各種液体を吸収するものであり、使い捨ておむつや生理ナプキン、失禁パット等の衛生材料を始め、土木、農園芸等の各種産業分野においても好適に用いられる。
【0125】
(本発明の機構推定)
本発明で吸収速度が向上する理由の詳細は不明であるが、その機構は以下とも推定される。なお、当該機構は本発明の権利を制限するものではない。
【0126】
以上のように、本発明の製造方法は、単量体水溶液中で不溶性または難溶性の化合物を単量体水溶液中に分散させておき、40℃以上で重合開始することにより重合、好ましくは発泡重合することで、添加した化合物が沸石のような役割を果たし、発泡を著しく促進することにより、親水性重合体(例えば吸水性樹脂)中に気泡を多く存在されると推定される。
【0127】
また、著しい発泡を伴いながら単量体が重合するため、ゲル表面積が大きくなることによって、水分の蒸発が効率的に行われることによる、いわゆる除熱効果が同時に得られることにより、優れた性能の吸水性樹脂を製造することが可能である。更に、未重合の単量体成分の蒸発、水分の蒸発も大きくなり、重合体中への残存単量体(残存モノマー)量の減少や、重合体の固形分上昇、重合中の除熱効率アップなど可能となると推定される。
【0128】
本発明の方法によれば、従来の高温開始重合(親水性単量体を含有する水溶液に不溶性または難溶性の分散可能な常温で固体の化合物の添加なし)と比較した場合、添加した化合物が重合中の発泡を著しく促進する(発泡の数が増える)ことが可能となる。また、本発明の重合においては、重合中は沸点下で蒸気を発して(発泡して)おり、それによって親水性重合体中に気泡(孔)を存在させるのだが、重合が終える時にはその気泡の殆どは収縮する。つまり、親水性重合体(例えば吸水性樹脂)の形状が気泡を含有していないものとほぼ同様であり、親水性重合体中に潜在的気泡を多く存在させることができるのである。この潜在的気泡は親水性重合体(例えば吸水性樹脂)が水などの溶媒中に浸され、膨潤などをした際に改めて孔として存在するのである。
【0129】
本発明の方法によれば、上記の潜在的気泡(孔)が多く含まれた吸水性樹脂を製造することが可能となる。このことから、吸水性樹脂の膨潤時に気泡(孔)が表面積を高めることにより吸収速度が格段に向上する。
【0130】
〔実施例〕
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。さらに、吸水性樹脂は、25℃±2℃、相対湿度約50%±5%RHの条件下で使用(取り扱い)した。また、生理食塩水として0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0131】
なお、おむつ中の吸水性樹脂など市販品を分析する際、吸湿している場合、適宜、減圧乾燥して含水率を5%程度に調整して測定すればよい。
【0132】
<吸収倍率(CRC)>
吸水性樹脂0.2gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、20℃〜25℃に調温した大過剰(通常500ml程度)の生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、その時の質量W2(g)を測定した。そして、これらW1、W2から、次式に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
【0133】
吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W2(g))/(吸水性樹脂の質量(g))−1
<吸収速度(FSR)>
吸水性樹脂1.00gを25mlガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた吸水性樹脂の上面が水平となるようにした。(必要により、慎重にビーカーをたたくなどの処置を行うことで吸水性樹脂表面を水平にしても良い。)次に、23℃±2℃に調温した生理食塩水20gを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、生理食塩水とガラス製ビーカーの合計重さ(単位:g)を測定した(W3)。量り取った生理食塩水を、吸水性樹脂の入った25mlビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだ生理食塩水が吸水性樹脂と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、生理食塩水を注ぎ込んだビーカー中の生理食塩水液上面を約20゜の角度で目視した際、始め生理食塩水液表面であった上面が、吸水性樹脂が生理食塩水を吸収することにより、生理食塩水を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わる時点で、時間測定を終了した(単位:秒)(t)。次に、生理食塩水を注ぎ込んだ後の50mlガラス製ビーカーの重さ(単位:g)を測定した(W4)。注ぎ込んだ生理食塩水の重さ(W5、単位:g)を下記式(a)により求めた。
【0134】
吸収速度(FSR)は、下記式(c)によって計算した。
【0135】
式(a): W5(g)=W3(g)−W4(g)
式(c): FSR(g/g/s)=W5/(t×吸水性樹脂の質量(g))
<加圧下吸収倍率(AAP)>
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、該網上に吸水性樹脂102(粒子径が38μm以上の粒子が主成分(特に99重量%以上))を0.900g均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒100との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の質量W6(g)を測定した。
【0136】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、生理食塩水108(20℃〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0137】
上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量W7(g)を測定した。そして、W6、W7から、下記の式に従って圧力に対する加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0138】
加圧下吸収倍率=(W7(g)−W6(g))/(吸水性樹脂の質量(g))
<可溶分(量)>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、生理食塩水184.3gを量り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加えて16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを量り取り測定溶液とした。
【0139】
はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば、既知量のアクリル酸とその塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量(抽出された水溶性重合体が主成分)を、下記の式(2)、
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0 ・・・(2)
により算出することができる。また、未知量の場合には、滴定により求めた中和率(次の式(3))
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100 ・・・(3)
を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0140】
<残存モノマー量(ppm)>
吸水性樹脂1.00gを生理食塩水184.3gに分散させ、長さ25mmのマグネティックスターラーで16時間攪拌して残存モノマーを抽出した。その後、膨潤ゲルを(トーヨー濾紙(株)製、No.2、JIS P 3801で規定された保留粒子径5μm)を用いて濾過し、この濾液をHPLCサンプル前処理用フィルタークロマトディスク25A(倉敷紡績株式会社製、水系タイプ、ポアサイズ0.45μm)でさらに濾過して、残存モノマー測定サンプルとした。
【0141】
この残存モノマー測定サンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。既知の濃度を示すモノマー標準液を分析して得た検量線を外部標準となし、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の脱イオン水に対する希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂粒子または粒子状吸水剤の残存モノマー量を定量した。HPLCの測定条件は、次の通りである。
【0142】
キャリア液:りん酸(85質量%、和光純薬工業株式会社製、試薬特級)3mlを、超純水(比抵抗15MΩ・cm以上)1000mlで希釈したりん酸水溶液
キャリアスピード:0.7ml/min.
カラム:SHODEX RSpak DM−614(昭和電工株式会社)
カラム温度:23±2℃
波長:UV205nm
<嵩比重、流下速度>
嵩比重測定器(蔵持科学機器製作所製)を用い、JIS K 3362に準じて測定した。粒度による偏りを無くすため十分に混合された吸水性樹脂100.0gをダンパーを閉めた漏斗に入れた後、速やかにダンパーを開け、吸水性樹脂を内容量100mlの受器に落とした。吸水性樹脂を落とし始めてから、落とし切るまでの時間(秒)を流下速度とする。受器から盛り上がった吸水性樹脂は、ガラス棒ですり落とした後、吸水性樹脂の入った受器の重さを0.1gまで正確に量り、次式によって嵩比重を算出した。
【0143】
嵩比重(g/ml)=(吸水性樹脂の入った受器の重さ(g)−受器の重さ(g))/受器の内容量(100ml)
なお、測定を行った環境の温度は25±2℃であり、相対湿度は30〜50%RHであった。
【0144】
<重量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)>
吸水性樹脂を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、45μmのJIS標準篩で篩い分けし、残留百分率を対数プロットした。なお、吸水性樹脂の粒径により、篩は必要により適宜追加して測定する。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0145】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%のときのそれぞれの粒子径)
篩い分けは吸水性樹脂10.0gを、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、45μmなどのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0146】
なお、重量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように、一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0147】
<固形分>
吸水性樹脂1.00gを底面の直径が約50mmのアルミカップに量り取り、吸水性樹脂、およびアルミカップの総質量W8(g)を測定した。その後、雰囲気温度180℃のオーブン中に3時間静置して乾燥した。3時間後、オーブンから取り出した吸水性樹脂、およびアルミカップをデシケーター中で十分に室温まで冷却した後、乾燥後の吸水性樹脂、およびアルミカップの総質量W9(g)を求め、次式に従って固形分を求めた。
【0148】
固形分(質量%)=100−((W8−W9)/(吸水性樹脂の質量(g))×100)
<耐衝撃テスト(別称;ペイントシェーカーテスト)>
ペイントシェーカーテストとは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は米国特許6071976号(対応日本語特許公開公報:特開平9−235378号公報)に開示されている。なお、振盪時間は30分間とした。
【0149】
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂が得られる。
【0150】
〔参考例1〕
シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸530.2g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4364.2g、純水553.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)7.7gを溶解させて反応液とした。
【0151】
次に、この反応液を25℃に調整しながら窒素ガス雰囲気下で20分間脱気した。続いて、反応液に15質量%過硫酸ナトリウム水溶液19.6gおよび0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液24.5gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始された。このときの重合開始温度は25.2℃であった。
【0152】
そして、生成したゲルを粉砕しながら、25〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0153】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を目開き850μmのステンレス金網上に広げ、180℃で40分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を用いて粉砕し、さらに目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、150μm以下の不定形破砕状の吸水性樹脂(A)を得た。吸水性樹脂(A)の吸収倍率は35.3g/g、可溶分量は16.5質量%であった。
【0154】
〔実施例1〕
(重合)
アクリル酸293.1g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)1.1g、およびキレート剤として1質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.8g、重合開始剤としてIRGACURE(登録商標)184の1.0質量%アクリル酸溶液3.6gを1Lポリプロピレン樹脂製の容器中で混合して溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液237.65gと50℃に調温したイオン交換水251.82gを混合した溶液(B)とを作成した。長さ50mmのマグネティックスターラーチップを用い500r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、参考例1で得られた吸水性樹脂(A)を54g加え、次いで溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が102℃まで上昇した。
【0155】
次に、単量体水溶液(C)の温度が97℃に低下した時点で、単量体水溶液(C)に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液11gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、130℃に設定したホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250mm×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250mm×250mm、上面640mm×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されている。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に、ステンレス製バット型容器の底面から高さ600mmに設置された紫外線照射装置(トスキュア 401 型名:HC−04131−B ランプ:H400L/2 ハリソン東芝ライティング株式会社製)により紫外線を照射した。
【0156】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始し、水蒸気を発生しながら静置水溶液重合が進行した(重合開始温度:97℃)。重合は約1分以内にピーク温度となった(ピーク温度:106℃)。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合体(含水ゲル)を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
【0157】
(ゲル細分化)
取り出した含水ゲル状架橋重合体を幅30mmの短冊状にはさみで切った後、イオン交換水を1.4g/secで添加しながら、約6g/secの投入速度でミート・チョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:9.5mm、孔数:18、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0158】
(乾燥・粉砕および分級)
この細分化された粉砕ゲル粒子を目開き850μmの金網上に広げ、180℃で40分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機、有限会社井ノ口技研製)を用いて粉砕し、さらにJIS850μm標準篩で分級調合することで、D50が461μmでかつ600μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子の割合が28質量%、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合が2.2質量%、対数標準偏差(σζ)が0.364、固形分96質量%である不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0159】
(表面架橋)
得られた吸水性樹脂100重量部に、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水2.7重量部の混合液からなる表面処理剤溶液を均一に混合した。表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂を、攪拌翼を備えたジャケット付き加熱装置(ジャケット温度:210℃)で任意の時間加熱処理した。加熱処理後、得られた吸水性樹脂をJIS850μm標準篩を通過せしめ、表面が架橋された粒子状吸水性樹脂(1)を得た。粒子状吸水性樹脂(1)の諸物性を表1に示した。また、該粒子状吸水性樹脂のペイントシェーカーテスト後にJIS標準篩で分級したものの、目開き150μmを通過した割合は、該粒子全量のうち6.2質量%を占めていた。
【0160】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1において使用したポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)を0.75gとし、さらに添加する参考例1で得られた吸水性樹脂(A)を72gとした以外は、実施例1と同様の方法によって粒子状吸水性樹脂(2)を得た。粒子状吸水性樹脂(2)の諸物性を表1に示した。
【0161】
〔実施例3〕
本実施例では、実施例1において使用した吸水性樹脂(A)を、合成ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA−4,100メッシュパス粉末)に代えて用いた(18g使用)以外は、実施例1と同様の方法によって粒子状吸水性樹脂(3)を得た。粒子状吸水性樹脂(3)の諸物性を表1に示した。
【0162】
〔実施例4〕
(重合)
アクリル酸202.7g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液1776.5g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)3.8gを混合した溶液(D)を調整し、15℃になるよう調温しながら窒素ガスを2L/分の流量で30分間吹き込み脱酸素を行った。脱酸素された溶液(D)を300mm×220mm×深さ60mmのテフロン(登録商標)コーティングが施されたステンレス容器に注ぎポリエチレンフィルムで上部開口部を覆い、溶液(D)に酸素がかみ込まないように窒素ガスを2L/分の流量で吹き込み続け空間を窒素ガス雰囲気に保った。次いで、重合開始剤として15質量%過硫酸ナトリウム水溶液7.8g、2質量%L−アスコルビン酸水溶液9.1gを加えて長さ50mmのマグネティックスターラーチップを300r.p.m.で撹拌し均一に混合した後に、参考例1で得られた吸水性樹脂(A)を129g加えた。開始剤投入後2.4分に重合開始(白濁)を確認し、該ステンレス容器を10℃に調整した水槽に10mm浸した。なお、重合が開始した時の溶液の温度は16℃であった。開始剤投入後5.9分で重合温度がピークに達した。このときのピーク温度は103℃であった。開始剤投入から12分後(重合ピークより6.1分後)、該ステンレス容器を80℃の水槽に移し、前(10℃水槽に浸したの)と同様に10mm浸した。80℃の水槽に浸してから12分後にステンレス容器を水槽より引き上げ、含水重合体(含水ゲル)をステンレス容器より取り出した。
【0163】
ゲル細分化、乾燥・粉砕および分級は実施例1と同様にして、D50が434μmでかつ600μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子の割合が24質量%、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合が3.6質量%、固形分95質量%である不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0164】
表面架橋についても、実施例1と同様にして行い、表面が架橋された粒子状吸水性樹脂(4)を得た。粒子状吸水性樹脂(4)の諸物性を表1に示した。
【0165】
〔比較例1〕
本比較例では、実施例1において使用した吸水性樹脂(A)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法によって重合を行って比較粒子状吸水性樹脂(1)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(1)の諸物性を表1に示した。
【0166】
〔比較例2〕
本比較例では、参考例1によって得られた吸水性樹脂(A)321gを参考例1の脱気後の反応液に添加した以外は、参考例1と同様の方法によって重合を行って比較粒子状吸水性樹脂(2)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(2)の諸物性を表1に示した。
【0167】
〔比較例3〕
本比較例では、米国特許61807358号(特開平10−251310号公報の実施例2)を参照し、従来の吸収速度向上法として発泡重合を行なった。
【0168】
アクリル酸360g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液3240g、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)8.8g、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW−S120、花王株式会社製)0.3g、イオン交換水1420gおよび10質量%過硫酸ナトリウム水溶液10gを混合し単量体水溶液を調整した。
【0169】
該水溶液と窒素とを株式会社愛工舎製ホイップオートZを用いて、該水溶液中に窒素ガスの気泡を分散せしめて容器に入れ、すぐに10質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10gを加え、直ちに重合を開始せしめた。このときの重合開始温度は26.2℃であった。そのまま、容器中で1時間、静置水溶液重合し、多量に気泡を含むスポンジ状含水ゲル状架橋重合体を得た(ピーク温度:98℃)。該含水ゲル状架橋重合体を10〜30mmの角状に裁断し、20メッシュの金網上に広げ、それ以降は実施例1と同様の方法によって、比較粒子状吸水性樹脂(3)の諸物性を表1に示した。
【0170】
〔比較例4〕
攪拌重合、すなわち、米国特許出願公開2004−110897号に用いた連続ニーダー重合を行なったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。2軸の攪拌翼を有する重合容器として、該米国特許の実施例で使用のコンティニュアースニーダー((株)ダルトン製、CKDJS−40)で連続重合したのち、以下、同様に乾燥、粉砕表面架橋を行なったが、吸収速度の向上は見られなかった。以上、米国特許出願公開2004−110897号,米国特許670141号、同4625001号、同5250640号など攪拌重合では好ましくない。
【0171】
〔比較例5〕
本比較例では、特開平3−115313号公報に記載の実施例1と同様に、単量体水溶液(スラリー)濃度を56%、中和率75モル%のアクリル酸ナトリウムのスラリーを調製し、次いで、該単量体スラリー(単量体の水分散液)を35℃に冷却させた後、開始剤として過硫酸ナトリウムを添加し、厚さ15mmの層状にして重合を行ったこと以外は本願の実施例1と同様の操作を行った。
【0172】
特開平3−115313号公報の実施例1と同様、約20分でゲル化(ピーク温度:105℃)を示し、更に重合容器底部を100℃に加熱して、15分後に含水重合体を重合容器から取り出した。尚、この時のピーク温度は171℃であった。また、本願実施例1との比較のため、重合開始剤及び架橋剤のモル数は本願実施例1に合わせた。
【0173】
得られた含水重合体について、本願実施例1と同様に、ゲルを細分化、乾燥、粉砕、並びに分級を行い、比較粒子状吸水性樹脂(5)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(5)の諸物性を表1に示した。
【0174】
〔比較例6〕
本比較例では、特開平3−115313号の実施例2に準じて、微粒子状シリカ(商品名:アエロジル、平均粒子径:0.02μm)を1重量%(対単量体の固形分)を含む、57重量%、中和率73モル%のアクリル酸ナトリウムのスラリーを調製し、比較例5と同様に重合を行ったこと以外は本願の実施例1と同様の操作を行った。尚、重合のピーク温度は168℃であった。
【0175】
得られた含水重合体について、本願実施例1と同様に、ゲルを細分化、乾燥、粉砕、並びに分級を行い、比較粒子状吸水性樹脂(6)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(6)の諸物性を表1に示した。
【0176】
〔比較例7〕
吸水性樹脂(A)を添加しないこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、比較粒子状吸水性樹脂(7)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(7)の諸物性を表1に示した。
【0177】
〔比較例8〕
純水の量を553.7gを504.6gに変更し、10質量%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(V−50、和光純薬工業株式会社製)水溶液49.1gを、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液および0.1質量%L−アスコルビン酸水溶液と同時に添加したこと以外は参考例1と同様の操作を行い、細分化された含水ゲル状架橋重合体を得た。
【0178】
そして、得られた、細分化された含水ゲル状架橋重合体を実施例1と同様の方法により、乾燥、粉砕、分級、表面架橋させ、比較粒子状吸水性樹脂(8)を得た。比較粒子状吸水性樹脂(8)の諸物性を表1に示した。
【0179】
〔比較例9〕
米国特許6562879のEXAMPLE1に従って、比較粒子状吸水性樹脂(9)を得た。
【0180】
具体的には、シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度33重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート2.50gを溶解した反応液に、過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、30〜80°Cで重合を行い、重合が開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
【0181】
得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150°Cで90分間熱風乾燥することによって架橋重合体である吸水性樹脂を得た。
【0182】
上記吸水性樹脂をハンマーミル(ロストル:穴の径3mm)で粉砕した後、吸水性樹脂150gをホモジナイザー(日本精機社製、高速ホモジナイザー、Model:MX−7)に入れ、回転数6000rpmで約1時間研磨した。得られた吸水性樹脂をJIS標準ふるい(目開き850、212μm)でふるい、850〜212μmの粒度に分級した。
【0183】
得られた比較粒子状吸水性樹脂(9)の諸物性を表1に示した。
【0184】
〔実施例5〕
含水重合体(含水ゲル)の乾燥温度を180℃から100℃に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水性樹脂(5)を得た。粒子状吸水性樹脂(5)の諸物性を表1に示した。
【0185】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。
【0186】
【表1】

【0187】
(表の説明)
同じ重合温度の静置水溶液重合において、固体を未添加の比較例1に比べて、実施例1(吸水性樹脂を約15質量%添加)、実施例2(吸水性樹脂を約20質量%添加)、実施例3(ゼオライトを約5質量%添加)では、吸収速度(FSR)が約2倍程度に向上し、残存モノマーも100ppm以上低減することが分かる。さらに、他の物性(吸収倍率、加圧下吸収倍率、可溶分(量)など)も向上する傾向にある。
【0188】
従来法の発泡重合である比較例3に比べて、実施例1(吸水性樹脂を約15質量%添加)、実施例2(吸水性樹脂を約20質量%添加)、実施例3(ゼオライトを約5質量%添加)では、残存モノマーがおよそ500ppm低減し、加圧下吸収倍率(AAP)も2〜5g/g向上し、吸水性樹脂粉末の耐衝撃性も向上することが分かる。さらに、本発明では嵩比重も1.2から1.4倍と上昇することから、輸送や保管の費用も大きく低減できる。
【0189】
また、上記実施例で得られた、微粒子を含有する吸水性樹脂、若しくは特定の吸水性能を満たす吸水性樹脂では、輸送時のダメージに強く、微粉や粉塵が低減される。更には、オムツ中であっても高性能を維持し、優れたオムツを与えることができる。
【0190】
特開平3−115313号公報(アクリル酸ナトリウム微細沈殿のスラリー重合)による本願比較例5,6では、単量体をスラリー状で重合させるため、若しくは重合開始温度が35℃と低いため、本願実施例1と比較して、得られる吸水性樹脂の吸収倍率及び吸水速度が低い。尚、比較例4,5と同じ単量体濃度(56〜57重量%)であっても、溶媒の温度によって単量体の溶解度が異なり、スラリーとなったり溶液となったりするが、溶媒の温度が35℃ではスラリーとなる。
【0191】
乾燥温度の影響については、乾燥温度が100℃である実施例5では、乾燥温度が180℃である実施例1と比較して、得られる吸水性樹脂の吸水倍率及び吸水速度は低下する傾向を示し、また、残存モノマーは増加する傾向を示したが、耐衝撃性は向上する傾向を示した。
【0192】
水不溶性固形物である吸水性樹脂(A)を添加することによる効果については、実施例4と比較例7とを比較することにより確認することができた。つまり、実施例4で得られた吸水性樹脂は、比較例7で得られた吸水性樹脂と比べて、特に残存モノマー量、耐衝撃性、並びに吸収速度において優れていた。
【0193】
更には、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を開始剤として用いた比較例8で得られた吸水性樹脂は、吸収速度は高くなるが、耐衝撃性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明の吸水性樹脂の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して生産性を損なわず、コスト的にも非常に有利で、さらには粉化などによる物性の低下も少ない、吸収速度が格段に向上された吸水性樹脂を製造することが可能である。発泡重合の必要もなく、製造工程の簡素化を図ることができ、コストを低減させることができる。
【0195】
また、本発明の製造方法により得られた、微粒子を含有する吸水性樹脂、若しくは特定の吸水性能を満たす吸水性樹脂では、輸送時のダメージに強く、微粉や粉塵が低減される。更には、オムツ中であっても高性能を維持し、優れたオムツを与えることができる。
【0196】
本発明では吸水性樹脂を特定量含むことで、一般的には、従来困難であった吸収速度の向上、残存モノマー低減、粒度制御、加圧下吸収倍率の向上、嵩比重の制御、耐衝撃性向上などが可能となる。
【0197】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】図1は、本発明の実施例における吸水性樹脂の物性測定において、加圧下吸収倍率(AAP)を測定するための装置を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有不飽和単量体の水溶液を重合する吸水性樹脂の製造方法であって、水不溶性の固形物の存在下で静置重合し、かつ重合の開始温度を40℃以上または重合時の最高温度を100℃以上に制御することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記固形物が水不溶性粒子である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記静置重合が連続ベルト装置で行なわれる請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記固形物が吸水性樹脂の乾燥粉末または膨潤ゲル粒子である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記固形物の含有量が酸基含有不飽和単量体に対して0.1〜50重量%であり、前記固形物の90重量%以上が標準篩5mm通過物である請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記単量体がアクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記固形物が、生理食塩水に対する吸収倍率(CRC)5〜20g/gである吸水性樹脂である請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
重合時間が10分以下である請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記単量体の水溶液濃度が40〜90重量%の範囲である請求項1〜8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
アクリル酸(塩)を70〜99.999モル%および架橋剤0.001〜5モル%を繰り返し単位とする吸水性樹脂粒子であって、下記(1)〜(6)を満たす吸水性樹脂粒子。
(1)吸収倍率(CRC)が20〜40g/gである。
(2)加圧下吸収倍率(AAP)が20〜40g/gである。
(3)吸収速度(FSR)が0.25〜1.0g/g/secである。
(4)嵩比重(JIS K 3362)が0.50〜0.80g/mlである。
(5)残存モノマーが0〜400ppmである。
(6)850〜150μmの粒子(JIS Z8801−1)が95〜100重量%である。
【請求項11】
酸基含有不飽和単量体の水溶液を重合することにより得られ、
重合時の酸基含有不飽和単量体の重量を基準として水不溶性粒子0.1〜50重量%を内部に含む請求項10記載の吸水性樹脂粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284675(P2007−284675A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80101(P2007−80101)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】