説明

吸水性樹脂ならびにその製造方法および用途

【課題】 吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、工業的に有利に吸水性樹脂を均一且つ効率的に処理する方法を提供し、結果として、水性液体に接した時の吸水倍率、加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率などの諸物性に優れた、バランスの良い吸水性樹脂を提供する。
【解決手段】 吸水性樹脂(A)に液状物(B)を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、乾燥後、粉砕して得られた吸水性樹脂を、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で、加熱処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、特定の工程を行うことにより改質された吸水性樹脂を製造する方法、および多価アルコールで表面架橋された新規な吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量の水を吸収させることを目的として、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料を構成する材料の一つに吸水性樹脂が幅広く利用されている。また衛生材料以外にも、土壌保水剤ならびに食品等のドリップシート等、吸水、保水を目的として吸水性樹脂が広範囲に利用されている。
このような吸水性樹脂としては、例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(特許文献1)、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物(特許文献2)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物(特許文献3)、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(特許文献4)、またはこれらの架橋体やポリアクリル酸部分中和物架橋体(特許文献5)等が知られている。
【0003】
これら吸水性樹脂は、一般に、重合し、乾燥し、必要により粉砕・分級することで得られるが、かかる吸水性樹脂には、重合・乾燥後も更に付加機能を持たせるために、通常、更に得られた吸水性樹脂に種々の化合物を添加して改質される。
上記吸水性樹脂が備えるべき特性としては、体液等の水性液体に接した際の高い吸収量や吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。しかしながら、これらの諸特性間の関係は必ずしも正の相関関係を示さず、例えば、吸収倍率の高いものほど通液性、ゲル強度等の物性は低下してしまう。また、吸水倍率の高いものの中には水性液体と接した場合にいわゆる“ママコ”を形成してしまい、吸水性樹脂粒子全体に水が拡散せず、加圧下吸収倍率の極端に低いものもある。
【0004】
吸水性樹脂を製造する上で、そのような吸水性樹脂の吸水諸特性をバランス良く改良する方法、すなわち吸水性樹脂の改質方法として、吸水性樹脂粒子の表面近傍を架橋剤で架橋する、いわゆる表面架橋技術が知られている。このような架橋剤としては、多価アルコール類、多価グリシジルエーテル類、ハロエポキシ化合物類、多価アルデヒド類、多価アミン類、多価金属塩類等が用いられている。
この表面架橋工程において最も重要であると考えられているのは、吸水性樹脂粒子の表面を均一に表面架橋することであり、そのためには表面架橋される前の吸水性樹脂と表面架橋剤の均一な混合が重要となっている。この表面架橋される前の吸水性樹脂と表面架橋剤の均一混合技術としては、これまでに様々な方法が開示されており、例えば、溶解度パラメーターの異なる架橋剤を併用する方法(特許文献6)、混合機内壁面を特定の材質とし、高速攪拌下で水性架橋剤液を添加混合する方法(特許文献7、特許文献8)や、表面架橋剤を微細液滴状に噴霧して吸水性樹脂粉末と並流状態で接触させる方法(特許文献9)が知られている。
【0005】
これらの架橋剤を用いて吸水性樹脂の表面を架橋させる方法としては、吸水性樹脂粉末と架橋剤又は架橋剤を少量の水及び親水性有機溶剤に溶解してなる組成物とを直接混合し、必要により加熱処理を行う方法(特許文献10、特許文献11、特許文献12)、吸水性樹脂を水と親水性有機溶剤の混合溶剤中に分散させ架橋剤を加えて反応させる方法(特許文献13)、樹脂を水の存在下、不活性溶剤中で架橋剤と反応させる方法(特許文献14)等が知られている。
そして、吸水性樹脂の表面を処理して架橋する場合、架橋剤の吸水性樹脂粉体表面近傍への適度な浸透が重要な因子であり、且つそのプロセスが工業的に有利であることが必要である。
【0006】
また、吸水性樹脂の形態は粉体である場合が多く、吸水性樹脂に目開き150μmのふるいを通過するような微粉末が多く含まれている場合には、発塵により作業環境に悪影響を及ぼしたり、他の物質と混合する場合の混合性低下を招いたり、ホッパー内のブリッジ形成の原因となったりすることがある。
従来、微粉末の少ない吸水性樹脂の製造方法としては、重合や粉砕の度合いを調節することにより粒度を調節したり、発生した微粉末を分級除去する方法が知られている。しかしながら、上記の方法でも製造工程中に数%から数十%の多量の微粉末が発生する。従って、分級除去し、さらに廃棄することは収率を大きく低下させることになると共に、廃棄コストの面からも不利となる。
【0007】
そこで、吸水性樹脂の製造工程で必然的に発生してしまう微粉末を、水性液等をバインダとして用いて顆粒状に造粒ないし再生する(特許文献15、特許文献16)ことで、上記の問題を解決しようとする吸水性樹脂の改質方法の提案が種々なされている。一般的に吸水性樹脂のバインダとしては、効率や安全性、製造コスト等の面から水ないし水性液が好適である。
このように吸水性樹脂を製造する工程には、重合し乾燥して得られた吸水性樹脂に表面架橋剤を添加したり、発塵低減のために微粉を含む吸水性樹脂にバインダを混合するといった、液状物の添加・混合により改質を行なう工程がある。また近年増加傾向にある、抗菌や消臭、その他吸水性樹脂に付加機能を持たせる改質の際にも、抗菌剤や消臭剤、その他添加剤を液状物として吸水性樹脂と混合することが多い。
【0008】
さらに、吸水性樹脂の表面架橋や改質において、液状物を添加、好ましくは噴霧添加して更に加熱処理されるが、添加剤の種類などによっては、同じ温度(吸水性樹脂温度または熱媒温度)で吸水性樹脂を加熱しても、物性の向上が不十分であったり、連続生産時に物性が安定しない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭49−43395号公報
【特許文献2】特開昭51−125468号公報
【特許文献3】特開昭52−14689号公報
【特許文献4】特公昭53−15959号公報
【特許文献5】特開昭55−84304号公報
【特許文献6】特開平6−184320号公報
【特許文献7】特開平9−235378号公報
【特許文献8】特開平11−349625号公報
【特許文献9】特開平4−246403号公報
【特許文献10】特開昭58−180233号公報
【特許文献11】特開昭59−189103号公報
【特許文献12】特開昭61−16903号公報
【特許文献13】特公昭61−48521号公報
【特許文献14】特公昭60−18690号公報
【特許文献15】特開昭61−101536号公報
【特許文献16】特表平3−817200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吸水性樹脂を製造するにあたり、その諸特性をバランス良く改良(改質)し、さらには付加機能を付与するためには、吸水性樹脂に液状物を混合する工程は必要不可欠となってきている。しかしながら、吸水性樹脂は液状物と接触すると急速に液状物を吸収するという特性をもつため、液状物の吸水性樹脂への均一混合は困難である。
また、吸水性樹脂は吸液すると粘着性が増すという特徴もあるため、過剰に吸液した吸水性樹脂は混合装置内に付着・堆積物を形成することもある。このような堆積物の形成は、吸水性樹脂を大量生産する時の混合装置運転において、攪拌翼等の駆動部モーターに過負荷がかかる原因となり、装置の安全運転上大きな問題となる。
【0011】
また、吸水性樹脂の諸特性をバランス良く改良するために吸水性樹脂に表面架橋層を形成させるなどの表面処理が試みられているが、いずれも前記した如き課題を有しており物性的・工業的にも充分満足できる方法はこれまでのところなかった。
従って、本発明の課題は、吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、工業的に有利に吸水性樹脂を均一且つ効率的に処理する方法を提供し、結果として、水性液体に接した時の吸水倍率、加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率などの諸物性に優れた、バランスの良い吸水性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、特定の混合装置を用いて噴霧混合する形態を採用すること、および/または、加熱処理工程において特定の加熱処理形態を採用すること、により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法は、
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程を含み、液状物(B)は、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる別の吸水性樹脂の製造方法は、
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程を含み、液状物(B)は、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする。
また、本発明にかかる別の吸水性樹脂の製造方法は、
吸水性樹脂(A)に液状物(B)を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
乾燥後、粉砕して得られた吸水性樹脂を、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で、加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる別の吸水性樹脂の製造方法は、
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程と加熱処理工程を含み、
前記混合工程においては、液状物(B)は、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とし、
前記加熱処理工程においては、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で加熱処理することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる別の吸水性樹脂の製造方法は、
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程と加熱処理工程を含み、
前記混合工程においては、液状物(B)は、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とし、
前記加熱処理工程においては、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で加熱処理することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる吸水性樹脂は、
少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる別の吸水性樹脂は、
少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、
均一表面処理指数が0.70以上であることを特徴とする。
また、本発明にかかる衛生材料は、本発明の吸水性樹脂を含んでなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸水性樹脂の液状物と接触すると急速に液状物を吸収するという特性故に従来困難であると考えられていた、吸水性樹脂と液状物の均一混合が極めて容易に、かつ、長時間安定して行うことが出来る。
本発明の方法によれば、該吸水性樹脂粉体と架橋剤とが効率よく効果的に反応するので、工業的、経済的に有利である。こうして吸水性樹脂粉体の表面処理(改質)された後の吸水性樹脂は、吸水倍率や加圧下吸収倍率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における吸水性樹脂の製造に用いられる、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状噴霧の概略図である。
【図2】本発明における吸水性樹脂の製造に用いられる、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状噴霧の概略図である。
【図3】本発明における吸水性樹脂の性能の1つを示す吸水性樹脂の加圧下吸収倍率の測定に用いる測定装置の概略図である。
【図4】蒸気の露点曲線について関係湿度と温度(℃)の関係を示した図である。また、斜線範囲が本発明のクレーム範囲を図示したものである。Tdは露点温度を、黒プロットは、本発明の実施例、白プロットは比較例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を詳しく説明する。
(改質前の吸水性樹脂)
本願発明で液状物を添加される吸水性樹脂は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定可能であるが、カルボキシル基を含有する親水性架橋重合体が好ましい。該親水性架橋重合体は、例えば、アクリル酸および/又はその塩(中和物)を主成分とする親水性不飽和単量体を(共)重合(以下、単に重合と記す)させることによって得られ、イオン交換水中において50倍から1000倍という多量の水を吸収し、水膨潤性かつ水不溶性のヒドロゲルを形成する従来公知の樹脂である。
【0021】
親水性架橋重合体は該架橋重合体中の酸基のうち、例えば、30モル%〜100モル%、さらには50モル%〜90モル%、特には60モル%〜80モル%が、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩、アミン塩等によって中和されていることがより好ましい。この酸基の中和は該架橋重合体を得る前の親水性不飽和単量体を調製する段階で予め中和しておいてから重合反応を開始してもよく、また、重合中あるいは重合反応終了後に得られた該架橋重合体の酸基を中和してもよいし、それらを併用してもよい。
上記の親水性不飽和単量体は、必要に応じて、アクリル酸またはその塩以外の不飽和単量体(以下、他の単量体と記す)を含有していてもよい。他の単量体としては、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等の、ノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および、これらの四級塩等の、カチオン性不飽和単量体;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら他の単量体を併用する場合の使用量は、親水性不飽和単量体全体の30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0022】
親水性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂は、好ましくはカルボキシル基を有している。吸水性樹脂の有するカルボキシル基の量については特に制限はないが、吸水性樹脂100gにつきカルボキシル基が0.01当量以上存在することが好ましい。
該吸水性樹脂を得る際には、内部架橋剤を用いて架橋構造を内部に導入することが望ましい。上記の内部架橋剤は、重合性不飽和基および/またはカルボキシル基と反応し得る反応性基を一分子中に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。つまり、内部架橋剤は、親水性不飽和単量体と共重合および/またはカルボキシル基と反応する置換基を一分子中に複数有する化合物であればよい。尚、親水性不飽和単量体は、内部架橋剤を用いなくとも架橋構造が形成される自己架橋型の化合物からなっていてもよい。
【0023】
内部架橋剤としては、具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの内部架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。そして、上記例示の内部架橋剤のうち、重合性不飽和基を一分子中に複数有する内部架橋剤を用いることにより、得られる吸水性樹脂の吸収特性等をより一層向上させることができる。
【0024】
内部架橋剤の使用量は、親水性不飽和単量体に対して、0.005モル%〜3モル%の範囲内が好ましく、0.01モル%〜1.5モル%の範囲内がより好ましい。内部架橋剤の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、並びに、3モル%よりも多い場合には、所望の吸水特性を備えた吸水性樹脂が得られない恐れがある。
尚、親水性不飽和単量体を重合させて吸水性樹脂を得る際には、反応系に、デンプン、デンプンの誘導体、セルロース、セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤;水溶性もしくは水分散性の界面活性剤等を添加してもよい。
【0025】
親水性不飽和単量体の重合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、バルク重合、沈殿重合等の公知の方法を採用することができる。このうち、重合反応の制御の容易さ、および、得られる吸水性樹脂の性能面から、親水性不飽和単量体を水溶液にして重合させる方法、即ち、水溶液重合および逆相懸濁重合が好ましい。
上記重合方法における単量体成分の水溶液の濃度、即ち、水溶液中における単量体成分の割合は、特に限定されるものではないが、10重量%以上であることが好ましく、10重量%〜65重量%の範囲内であることがより好ましく、10重量%〜50重量%の範囲内であることがさらに好ましく、15重量%〜40重量%の範囲内であることが最も好ましい。また、反応温度や反応時間等の反応条件は、用いる単量体成分の組成等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0026】
親水性不飽和単量体を重合させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のラジカル系光重合開始剤;紫外線や電子線等の活性エネルギー線;等を用いることができる。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合には、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合を行ってもよい。これら重合開始剤の使用量は、0.001モル%〜2モル%の範囲内が好ましく、0.01モル%〜0.5モル%の範囲内がより好ましい。
【0027】
上記の重合方法で得られた含水ゲル状重合体は乾燥により固形分が調整される。該含水ゲル状重合体の乾燥には、通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、薄型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等である。その場合、乾燥温度は、好ましくは40℃〜250℃、より好ましくは90℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜180℃である。このようにして得られる乾燥物は、固形分が、通常70重量%〜100重量%(含水率30重量%〜0重量%)であり、好ましくは80重量%〜98重量%(含水率20重量%〜2重量%)、最も好ましくは90重量%〜98重量%(含水率10重量%〜2重量%)である。(なお、固形分は通常180℃×3時間での乾燥減量より求める。)
上記乾燥によって得られた乾燥物は、そのまま吸水性樹脂として用いることもできるが、必要に応じて、さらに粉砕、分級して所定のサイズの粒子状吸水性樹脂として用いることもできる。その場合、粒子サイズは2mm以下であり、好ましくは10μm〜1mmである。重量平均粒径は、用いる用途によっても異なるが、通常100μm〜1000μm、好ましくは150μm〜800μm、さらに好ましくは300μm〜600μmである。また、目開き150μmのふるいを通過する粒子の割合は、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
上記のようにして得られた吸水性樹脂は、球状、鱗片状、不定形破砕状、繊維状、顆粒状、棒状、略球状、偏平状等の種々の形状であってもよい。
また、吸水性樹脂中に存在する未架橋ポリマー、すなわち可溶性成分は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
さらに、本発明の方法は、従来、液状物の均一な混合が困難であった高吸収倍率の吸水性樹脂に好適に使用され、好ましくは無加圧下吸収倍率が30g/g以上、より好ましくは35g/g〜100g/g、さらに好ましくは40g/g〜90g/g、特に好ましくは45g/g〜85g/gの吸水性樹脂に使用される。
【0029】
本発明においては、このようにして得られた吸水性樹脂に対して、特定の混合装置を用いて液状物を噴霧混合、および/または、特定の加熱処理を行う。以下、これらを順に説明する。
(液状物の噴霧混合工程)
本発明では、上記のようにして得られた吸水性樹脂に対して液状物をスプレーノズルより添加して、さらに改質される。本発明における液状物の添加による改質とは、以下後述の表面架橋、造粒、添加剤の混合などの1種または2種以上が挙げられる。なお、本発明において、液状物(B)を添加される前の吸水性樹脂を単に吸水性樹脂(A)と呼び、また、液状物(B)添加後の吸水性樹脂(A)を改質された吸水性樹脂ないし表面架橋(表面処理)された吸水性樹脂と呼ぶ。
【0030】
上記のようにして得られた液状物(B)を添加される前の吸水性樹脂(A)の粉温は、好ましくは80℃〜35℃、より好ましくは70℃〜35℃、さらに好ましくは50℃〜35℃の範囲に調整された後、液状物(B)と混合される。液状物(B)添加前の吸水性樹脂(A)の温度が高いと、液状物(B)の混合が不均一になり、また、35℃未満にまで調整するには強制冷却や放冷に時間がかかるのみならず、放冷した粉末の凝集が見られたり、再加熱の際のエネルギーロスが大きくなり好ましくない。
表面架橋される前の吸水性樹脂(A)の表面近傍をさらに架橋処理する場合、本発明では液状物(B)は表面架橋剤を含み、後述する特定のスプレーパターンを示すスプレーノズル(C)より噴霧し混合される。さらに、得られた該混合物は加熱処理されて、吸水性樹脂(A)に表面架橋がなされる。
【0031】
液状物(B)を構成する表面架橋剤は、吸水性樹脂(A)が有する2つ以上のカルボキシル基と反応可能な官能基を1分子中に複数有し、架橋反応によって共有結合が形成される化合物であれば、特に限定されるものではない。
上記の表面架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の多価アミン化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価グリシジル化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、エチレンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(ポリ、ジ、ないしモノ)2−オキサゾリジノン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジグリコールシリケート、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]等の多価アジリジン化合物等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。またこれらの表面架橋剤は、一種類のみを用いても良く、二種類以上を併用してもよい。中でも、少なくとも一種類は多価アルコール、多価グリシジル化合物、1,3−ジオキソラン−2−オン、ポリ2−オキサゾリジノン、ビス2−オキサゾリジノン、モノ2−オキサゾリジノンの中から選ばれる表面架橋剤であることが好ましく、少なくとも一種類は多価アルコールを含む表面架橋剤であることがより好ましい。
【0032】
本発明では、安全性が高く、高物性を示す表面架橋剤であるが、その高粘性や親水性のために吸水性樹脂への均一な混合が困難であった多価アルコールを表面架橋剤とする水溶液の場合に好適に使用することができる。
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂(A)の固形分100重量部に対して、表面架橋剤の使用量が0.001重量部〜5重量部の範囲内が好ましく、表面架橋剤の使用量が0.005重量部〜2重量部の範囲内がより好ましい。表面架橋剤の使用量が上記範囲を超える場合には、不経済となるばかりか、吸水性樹脂(A)における最適な架橋構造を形成する上で、表面架橋剤の量が過剰となる為、好ましくない。また、表面架橋剤の使用量が上記範囲よりも少ない場合には、加圧下吸収倍率が高い表面架橋された吸水性樹脂を得ることが困難になる恐れがある。
【0033】
吸水性樹脂(A)と表面架橋剤とを混合する際には、溶媒として水を用いることが好ましく、液状物(B)は表面架橋剤水溶液であることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂(A)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(A)の固形分100重量部に対して、0を超え、20重量部以下が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
また、吸水性樹脂(A)と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。上記の親水性有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂(A)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(A)の固形分100重量部に対して20重量部以下が好ましく、より好ましくは0重量部〜10重量部、さらに好ましくは0重量部〜5重量部、特に好ましくは0重量部〜1重量部である。しかし、本発明では、混合性に優れるため、特に親水性溶媒を用いなくても均一な混合が達成可能である。
【0034】
さらに、液状物(B)の液温は、吸水性樹脂(A)の粉温より低いことが好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より10℃以上低いことがより好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より20℃以上低いことがさらに好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より30℃以上低いことが最も好ましい。なお、液状物(B)はスプレーノズル(C)から噴霧されるため、その液温は凝固点以上であるべきである。また、液状物(B)の液温があまりに高いと、吸水性樹脂(A)への吸液スピードが速くなり、液状物(B)の吸水性樹脂(A)への均一混合を阻害するため好ましくない。
本発明において吸水性樹脂(A)と表面架橋剤水溶液とを混合する際、その混合方法は表面架橋剤水溶液すなわち液状物(B)を、特定のスプレーノズル(C)を備えた混合機を用いて吸水性樹脂(A)に噴霧して混合される。
【0035】
本発明において用いられる液状物(B)を吸水性樹脂(A)と混合する際の液滴としては、その平均粒径が吸水性樹脂(A)の平均粒径より小さいことが好ましく、300μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは250μm以下のものである。通常は平均径50μm〜200μmである。この平均径が300μmを超えると液状物(B)の均一な拡散ないし分散が困難になり、高密度の塊が生じたり、混合装置内で液状物(B)すなわち表面架橋剤水溶液と接触しない吸水性樹脂(A)量が多くなることがあり、好ましくない。
本発明においては、液状物(B)のスプレーノズル(C)からの噴霧角度が、非常に重要であり、該液状物(B)のスプレーノズル(C)からの最大噴霧角度が50°以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法は、液状物(B)が、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されること、または、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする。これらの方法において、好ましい最大噴霧角度は50°以上である。
噴霧角度、および該スプレーノズル(C)の噴霧パターンの概略図は図1(環状を示す空円錐形状;ホローコーン状噴霧;空円錐スプレー)および図2(両凸レンズ状を示す楕円錐形状;扇形噴霧;フラットスプレー)に示すが、噴霧角度はスプレーノズル(C)から噴霧される液状物(B)の粘度、温度により変化する。さらに該スプレーノズル(C)が1流体ノズルである場合には、液状物(B)の噴霧量とそれにかかる噴霧圧力によって噴霧角度は変わり、該スプレーノズル(C)が2流体ノズルである場合には、液状物(B)の噴霧量と空気圧、空気消費量によって噴霧角度は変わる。
【0037】
図1に示すように、環状を示す空円錐形状でスプレーノズル(C)より噴霧すると、例えば、吸水性樹脂(A)が図1の矢印方向(a、b、c)に移送されている場合に、端部a、cにおいて移送中に噴霧される量と中央部bにおいて移送中に噴霧される量とのばらつきが少なくなり、結果として均一な噴霧が実現できる。
同様に、図2に示すように、両凸レンズ状を示す楕円錐形状でスプレーノズル(C)より噴霧すると、例えば、吸水性樹脂(A)が図2の矢印方向(a、b、c)に移送されている場合に、端部a、cにおいて移送中に噴霧される量と中央部bにおいて移送中に噴霧される量とのばらつきが少なくなり、結果として均一な噴霧が実現できる。
【0038】
スプレーノズル(C)は、所定の噴霧角度となるように、使用条件に応じて適宜選択される必要があるが、液状物(B)の該スプレーノズル(C)からの噴霧角度が50°以上となるように選択されることが好ましく、70°以上であることがより好ましく、90°以上であることがさらに好ましい。前記噴霧角度が50°より小さいと、混合装置内に噴霧された液状物(B)の拡散状態において、過剰に液状物(B)が拡散している部分と、低密度で拡散している部分が発生し、吸水性樹脂(A)と液状物(B)の混合状態に偏りが生じる。過剰に液状物(B)すなわち表面架橋剤水溶液と接触した吸水性樹脂(A)は、高密度の塊(堅い凝集物)を生じやすく、また過剰な表面架橋の原因となるため好ましくない。この高密度の塊は後述する加熱処理後に、堅く粉砕し難い塊になる。そのため製品粒度(例えばすべての粒子が1mm未満となる粒度)に調整するためには粉砕することが必要となる。しかしながら粉砕するとせっかく形成した表面架橋層が破壊されてしまうため好ましくない。
【0039】
また、過剰に液状物(B)と接触した吸水性樹脂(A)は、混合装置内に付着・堆積し易くなるため装置の安定運転の観点からも好ましくない。さらに、過剰に液状物(B)が拡散している部分が混合装置の一部と接触すると、装置内に液滴を生じ易くなり、装置内の堆積物発生の原因となるため好ましくない。
一方、低密度で液状物(B)すなわち表面架橋剤水溶液と接触した吸水性樹脂(A)は、所望の表面架橋効果が得られなくなる恐れがあるため好ましくない。
また、本発明の、該液状物(B)のスプレーノズル(C)からの最大噴霧角度が50°以上である方法、液状物(B)が、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧される方法、または、液状物(B)がスプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧される方法は、連続製法において用いるのがより好ましい。なお、スプレーノズルの構造上、最大噴霧角度は180°以下となる。
【0040】
さらに、スプレーノズル(C)から液状物(B)が上記の所定噴霧角度となるように噴霧された際に、混合装置の軸方向に垂直かつ該スプレーノズル(C)の噴射点を含む断面積に、該液状物(B)の噴霧拡散状態を投影した面積が、混合装置の軸方向に垂直な断面積の70%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。混合装置の軸方向に垂直かつ該スプレーノズル(C)の噴射点を含む断面積に、該液状物(B)の噴霧拡散状態を投影した面積が、混合装置の軸方向に垂直な断面積の70%未満である場合には、混合装置内に噴霧された液状物(B)の拡散状態において、過剰に液状物(B)が拡散している部分と、低密度で拡散している部分が発生し、吸水性樹脂(A)と液状物(B)の混合状態に偏りが生じるため好ましくない。
【0041】
混合装置に備え付けられているスプレーノズル(C)は、1つのみであっても良く、また、2つ以上であっても良いが、前記の該スプレーノズル(C)の噴射点を含む混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影した面積を大きくするためには、2つ以上であることが好ましい。
吸水性樹脂(A)と液状物(B)を混合する際に用いられる混合装置は、両者を均一且つ確実に混合する為に、大きな混合力を備えていることが望ましく、吸水性樹脂は攪拌ないし気流で流動していることが好ましい。上記の混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双椀型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられるが、複数のパドルを備えた攪拌軸を有する高速攪拌型混合機が好適である。ここで言う高速攪拌混合機とは、複数のパドルを備えた攪拌軸が通常100rpm〜5000rpm、好ましくは200rpm〜4000rpm、より好ましくは500rpm〜3000rpmの回転数で回転することで、混合力を発生する混合機を指す。
【0042】
また該混合装置の内壁は、吸水性樹脂(A)と液状物(B)の混合物が付着・堆積するのを防止するために、テフロン等の付着性の低い材質であることが好ましい。
さらに、該混合装置内壁温度は室温を超える温度を有していることが好ましく、混合装置内壁温度が40℃以上、さらには50℃〜100℃以上に保たれていることが好ましい。また、混合装置内壁温度が吸水性樹脂(A)より高温であることが好ましく、好ましくは40℃以下の温度差、さらに好ましくは20℃以下温度差であることが好ましい。混合装置内壁温度が室温以下である場合、液状物(B)と吸水性樹脂(A)を混合する際に該吸水性樹脂混合物の内壁付着・堆積が起こる恐れがある。
【0043】
本発明の液状物(B)の添加による改質とは、吸水性樹脂の表面架橋の際の表面架橋剤添加をはじめとして広く適用が可能であり、例えば、吸水性樹脂の造粒、吸水性樹脂への添加剤の混合などにも適用できる。造粒や、添加剤を液状物(B)として混合させる吸水性樹脂(A)は、表面架橋されていても良いし、表面架橋される前の吸水性樹脂(通常、重合乾燥のみの吸水性樹脂)でも良いし、本発明の方法で表面架橋された吸水性樹脂でも良いし、その他の表面架橋(例えば、逆相懸濁など分散系での表面架橋)された吸水性樹脂でも良いが、好ましくは本発明の方法で表面架橋された吸水性樹脂に対して、さらに、液状物(B)添加されて造粒ないしその他添加剤が混合される。
【0044】
以下、吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する方法において、液状物(B)は、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする、あるいは、液状物(B)は、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする本発明の吸水性樹脂の製造方法において、吸水性樹脂の造粒ないし添加剤の混合を行い、改質する場合について更に説明する。
吸水性樹脂(A)は必要に応じて、液状物(B)をバインダとして用いて顆粒状に造粒され、目開き150μmのふるいを通過する粒子の割合を低減することもできる。
【0045】
上記の吸水性樹脂(A)の粉温は、好ましくは80℃〜35℃、より好ましくは70℃〜35℃、さらに好ましくは50℃〜35℃の範囲で液状物(B)と混合される。液状物(B)添加前の吸水性樹脂(A)の温度が高いと、液状物(B)の混合が不均一になり、また、35℃未満にまで調整するには強制冷却や放冷に時間がかかるのみならず、放冷した粉末の凝集が見られたり、再加熱の際のエネルギーロスが大きくなり好ましくない。
バインダとしては、効率や安全性、製造コスト等の面から水単独ないし水性液が好適である。
バインダとして水性液体を用いる場合には、水に上記例示の親水性有機溶媒および/またはポリアクリル酸(塩)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子を溶解せしめたものが挙げられる。
【0046】
また、吸水性樹脂に抗菌や消臭、その他付加機能を持たせ改質するため、添加剤として抗菌剤や消臭剤、香料、食品添加物、酸化剤、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、ラジカル禁止剤、色素等を、必要により溶媒に溶かして、あるいは分散して液状物(B)として添加しても良い。上記の抗菌剤や消臭剤、香料、食品添加物、酸化剤、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、ラジカル禁止剤、色素等は、表面処理や造粒をする際に表面処理剤水溶液やバインダと同時に添加しても良いし、別途添加しても良い。
上記抗菌剤は、抗菌性を有するこれまで公知の抗菌剤であり、特に限定されないが、例えば特開平11−267500号公報記載の抗菌剤が挙げられる。
【0047】
また、上記消臭剤は、メルカプタン、硫化水素、アンモニアといった人尿の不快臭成分を消臭するこれまで公知の消臭剤であり、特に限定されないが、例えばフラバノール類やフラボノール類を消臭成分とする椿科植物抽出物等が挙げられる。
バインダないし吸水性樹脂に付加機能を持たせる添加剤の添加量は、添加の目的、添加剤の種類に応じて適宜変更可能であるが、通常、吸水性樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.001重量部〜10重量部、より好ましくは0.01重量部〜5重量部、さらに好ましくは0.05重量部〜1重量部の範囲で添加される。
バインダおよび/または吸水性樹脂に付加機能を持たせる添加剤の溶媒(好ましくは水)の使用量は、吸水性樹脂(A)100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部の比率の範囲であることが好ましい。使用量が1重量部より少ない比率では造粒が不十分であったり、添加剤が不均一に混合されることがあり、逆に30重量部を超える比率では高密度の塊を生じやすくなり、堅く粉砕し難い塊になる。そのため製品粒度(例えば、すべての粒子が1mm未満となる粒度)に調整するためには粉砕することが必要となる。しかしながら粉砕すると、前述の工程で表面架橋をした場合、せっかく形成した表面架橋層が破壊されてしまうこともあるため好ましくない。
【0048】
さらに、液状物(B)の液温は、吸水性樹脂(A)の粉温より低いことが好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より10℃以上低いことがより好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より20℃以上低いことがさらに好ましく、吸水性樹脂(A)の粉温より30℃以上低いことが最も好ましい。なお、液状物(B)はスプレーノズル(C)から噴霧されるため、その液温は凝固点以上であるべきである。また、液状物(B)の液温があまりに高いと、吸水性樹脂(A)への吸液スピードが速く、液状物(B)の吸水性樹脂(A)への均一混合を阻害するため好ましくない。
本発明においてバインダないし吸水性樹脂に付加機能を持たせる添加剤として液状物(B)を吸水性樹脂(A)と混合する際の液滴としては、その平均粒径が吸水性樹脂(A)の平均粒径より小さいことが好ましく、300μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは250μm以下のものである。通常は平均径50〜250μmである。この平均径が300μmを超えると液状物(B)の均一な拡散ないし分散が困難になり、高密度の塊が生じたり、混合装置内で液状物(B)と接触しない吸水性樹脂(A)量が多くなることがあり、好ましくない。
また、混合装置に備え付けられたスプレーノズル(C)は、前記のような理由で、使用条件に応じて適宜選択される必要があるが、液状物(B)の該スプレーノズルからの噴霧角度が50°以上となるように選択されることが好ましく、70°以上であることがより好ましく、90°以上であることがさらに好ましい。噴霧角度が50°より小さいと、混合装置内に噴霧された液状物(B)の拡散状態において、過剰に該液状物(B)が拡散している部分と、低密度で拡散している部分が発生し、吸水性樹脂(A)と該液状物(B)の混合状態に偏りが生じる。過剰に液状物(B)と接触した吸水性樹脂(A)は、高密度の塊を生じやすくなり、堅く粉砕し難い塊になる。そのため製品粒度(例えば、すべての粒子が1mm未満となる粒度)に調整するためには粉砕することが必要となる。しかしながら粉砕すると、前述の工程で表面架橋をした場合、せっかく形成した表面架橋層が破壊されてしまうこともあるため好ましくない。なお、スプレーノズルの構造上、最大噴霧角度は180°以下となる。
【0049】
また、過剰に液状物(B)と接触した吸水性樹脂(A)は、混合装置内に付着・堆積し易くなるため装置の安定運転の観点からも好ましくない。さらに、過剰に液状物(B)が拡散している部分が混合装置の一部と接触すると、装置内に液滴を生じ易くなり、装置内の堆積物発生の原因となるため好ましくない。
一方、低密度で液状物(B)と接触した吸水性樹脂(A)は、所望の造粒効果や付加機能の効果が得られなくなる恐れがあるため好ましくない。
さらに、スプレーノズル(C)から液状物(B)が上記の所定噴霧角度となるように噴霧された際に、該スプレーノズル(C)の噴射点を含む混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影した面積が、混合装置断面積の70%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがさらに好ましい。該スプレーノズル(C)の噴射点を含む混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影した面積が、混合装置断面積の70%未満である場合には、混合装置内に噴霧された液状物(B)の拡散状態において、過剰に液状物(B)が拡散している部分と、低密度で拡散している部分が発生し、吸水性樹脂(A)と液状物(B)の混合状態に偏りが生じるため好ましくない。
【0050】
混合装置に備え付けられているスプレーノズル(C)は、1つのみであっても良く、また、2つ以上であっても良いが、前記の該スプレーノズル(C)の噴射点を含む混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影した面積を大きくするためには、2つ以上であることが好ましい。
吸水性樹脂(A)と液状物(B)を混合する際に用いられる混合装置は、前記の液状物(B)として表面架橋剤水溶液を吸水性樹脂(A)と混合する際に用いられる、前記例示の混合装置と同様の混合装置を用いることが出来る。
上記の方法によって得られた該混合物は、必要により、乾燥ないし加熱処理されることも可能である。
【0051】
上記のようにして得られた表面架橋された吸水性樹脂や改質された吸水性樹脂は、衛生材料等に用いると優れた保水力、特に加圧下状態においても高い吸収力を示すため、好適に用いられる。
(加熱処理工程)
本発明では、前述の吸水性樹脂(A)と液状物(B)、好ましくは表面架橋剤水溶液とを混合した後、加熱処理を行い、吸水性樹脂(A)の改質、好ましくは表面近傍を架橋させる。なお、吸水性樹脂の改質とは、吸水性樹脂の造粒や添加剤の添加を指し、さらに、その形態として、表面架橋剤の添加による表面架橋が挙げられる。上記加熱処理は用いる表面架橋剤にもよるが、吸水性樹脂温度(材料温度)あるいは熱媒温度が、好ましくは60℃〜250℃、より好ましくは80℃〜250℃、さらに好ましくは100℃〜230℃、特に好ましくは150℃〜200℃の範囲で処理される。処理温度が60℃未満の場合には均一な架橋構造が形成されず、従って、加圧下吸収倍率が高い表面架橋された吸水性樹脂を得ることができない為、好ましくない。また、加熱処理に時間がかかるので、生産性の低下を引き起こす。処理温度が250℃を超える場合には、吸水性樹脂(A)の劣化を引き起こし、従って、表面架橋された吸水性樹脂の性能が低下する為、好ましくない。なお、上記処理温度は表面架橋反応を正確に制御するためには、吸水性樹脂温度(材料温度)であることが好ましい。
【0052】
さらに、表面架橋剤を用いない場合も、液状物(B)の均一な拡散や吸水性樹脂の造粒強度の向上のためにも、前記温度で加熱処理されることが好ましい。また、加熱機能を持った混合機でスプレーしてもよいし、あるいは、加熱と噴霧を同時に行っても良い。
本発明では、上記液状物(B)の噴霧および上記加熱処理が行われるが、さらに、加熱処理時の処理装置上部空間の雰囲気も特定範囲に調整されることが好ましい。
従来、吸水性樹脂に液状物を添加して加熱処理する方法は、その吸水性樹脂温度(材料温度)や熱媒温度で反応や改質が制御されていたが、ただ、その吸水性樹脂温度(材料温度)や熱媒温度だけでは物性の向上が不十分であったり、連続生産時に物性が安定しない場合があった。かかる問題を解決するために鋭意検討した結果、加熱処理による物性の向上や安定には、本発明者は、従来、なんら注目されていなかった加熱処理時の上部空間を特定雰囲気に制御することでかかる問題を解決した。
【0053】
本発明は、例えば上記のようにして得られた吸水性樹脂粉体を露点60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で、好ましくは、前記架橋剤又は該架橋剤水溶液を含む親水性溶液存在下で、該粉体の表面を加熱処理し、好ましくは架橋反応させることによって達成される。なお、本発明の雰囲気とは吸水性樹脂粉体を含む加熱装置の上部空間の温度と露点であり、加熱装置の温度は雰囲気と同じでも良いし、異なっても良い。
含水率10重量%以上有する吸水性樹脂粉体を使用した場合、目的とする物性が得られないのみならず加熱処理時、露点60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下にするには多くのエネルギーがかかり好ましくない。
【0054】
露点が60℃以下で温度が90℃以下の場合は、吸水性樹脂温度(材料温度)や熱媒温度が十分であっても、該樹脂粉体の表面のカルボキシル基と架橋剤との架橋反応が充分進行せず、未反応の架橋剤が多くなる場合がある。又、温度が90℃以上であっても露点が60℃以上の場合は、吸水性樹脂温度(材料温度)や熱媒温度が十分であっても、吸水性樹脂粉体からの水分の蒸発が遅くなり、かつ、架橋剤が吸水性樹脂粉体の内部に浸透し該樹脂粉体の表面のカルボキシル基と架橋剤との架橋反応が進みにくくなる場合がある。従って、架橋剤の該樹脂粉体表面近傍への浸透を最適な状態に保ち該樹脂粉体表面を必要にして且つ充分な架橋状態とするために、図4に示す様に露点は60℃以下温度が90℃以上にするのが良い。特に、雰囲気の温度、露点の影響は、表面架橋での加熱処理、特に、前述の特定架橋剤、さらには多価アルコールでの加熱処理に大きな影響を与えることが見出された。
【0055】
吸水性樹脂粉体を、このような条件下に処理するための加熱装置としては、公知の乾燥機又は加熱炉に前記規定の雰囲気とするための気体供給装置ないし気体排気装置を具備せしめたものが用いられる。用いられる気体としては、蒸気、空気、窒素などであり、その供給量は適宜決められる。温度や露点を調整するための気体は、適宜減圧されても加圧されてもよく、適宜加熱されても冷却されてもよいが、通常は、室温付近(例えば、0〜50℃)の空気が実質常圧(1.013×10Pa(1気圧)±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%)で供給されればよい。例えば、気体供給装置ないし気体排気装置を具備する伝導伝熱型、輻射伝熱型、熱風伝熱型、誘電加熱型の乾燥機又は加熱炉等が好適である。具体的には、空気及び/又は不活性気体との混合気体の供給装置を具備するベルト式、溝型攪拌式、スクリュー型、回転型、円盤型、捏和型、流動層式、気流式、赤外線型、電子線型の乾燥機又は加熱炉が挙げられる。これら加熱装置の温度は、雰囲気と同一でもよく、異なっても良いが、通常、110〜250℃、さらには、150〜210℃の範囲に設定され、また、雰囲気温度0〜120℃、好ましくは30〜100℃高く調整され加熱される。これら加熱処理の中でも、好ましくは伝導伝熱ないし熱風伝熱、さらには伝導伝熱で吸水性樹脂を攪拌ないし流動させながら加熱すると共に、従来注目されていなかった処理装置の上部空間の雰囲気をも制御すればよい。伝導伝熱で吸水性樹脂を加熱する場合、熱媒で加熱された伝熱面(例えば、パドル型乾燥機の壁面や攪拌翼)により吸水性樹脂を加熱すると共に、伝熱面に接していない吸水性樹脂の上部空間は特定温度・特定露点に制御すればよい。なお、かかる特定の露点で加熱処理する本発明は、液状物は好ましくはスプレーで添加され、さらには前記のスプレーパターンで添加され、さらに加熱処理される。処理量は、10kg/hr、さらには100kg/hr、さらには1000kg/hr、さらには2000kg/hr、さらには3000kg/hrの連続的な加熱処理においても、装置の大きさ(スケールファクター)に影響されることなく、好適に使用される。
【0056】
なお、本発明においては、以上に述べた液状物の噴霧混合工程と加熱処理工程との両方を含む形態でもよいし、いずれか一方を含む形態でもよい。液状物の噴霧混合工程と加熱処理工程との少なくとも一方を含んでいれば本発明の効果が発揮できる。
(本発明の吸水性樹脂)
本発明にかかる吸水性樹脂は、好ましくは本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法によって得られるが、とくにこれに限定されない。
本発明にかかる吸水性樹脂は、少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上であることを特徴とする。
【0057】
本発明にかかる吸水性樹脂は、少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋されていることが必要である。かかる表面架橋がされていないと、衛生材料に用いた場合、繊維材料との混合性や保型性に劣り、後述する均一表面処理指数を示す吸水性樹脂が得られなくなる恐れがあり、紙おむつ等の衛生材料に用いた際、吸水能力の低下を招く。
本発明にかかる吸水性樹脂は、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有していることが必要である。150μm未満の粒子の割合が5重量%を超えた粒度分布を示す場合には、紙おむつ等の衛生材料に用いた際に、150μm未満の粒子が吸収体内の隙間をふさぐことで、液の拡散を阻害し、製品性能の低下を招く。
【0058】
本発明にかかる吸水性樹脂は、無加圧下吸収倍率が30g/g以上であることが必要である。無加圧下吸収倍率が30g/g未満の場合には、紙おむつ等の衛生材料に用いた際に、所望の吸収量を得るのに多量の吸水性樹脂が必要となり、不経済である。
吸水性樹脂がオムツ等の実使用において優れた能力を実現するためには、その粒子一粒一粒が優れた能力を発現することが必要である。しかし、従来の測定方法には、その粒子一粒の能力を評価する方法に乏しかった。
例えば、従来の測定方法のうち、本願明細書にも記載している加圧下吸収倍率では、粒度分布を持った吸水性樹脂の粒子全体での評価であったため、粒子一粒一粒の能力評価が困難であった。また、粒度調整(例えば、600〜300μm)を行ってからの加圧下吸収倍率を測定していても、単一粒度のみの評価(米国特許5147343B1号公報、特開平5−200068号公報、特開平6−254118号公報)であったために、他の粒度との表面架橋状態の比較ができなかった。
【0059】
更には、これまでの加圧下吸収倍率の測定では、吸水性樹脂の撒布量が多いため、膨潤後にゲルが積層状態になり、吸水性樹脂の加圧下膨潤能力以外にゲルの膨潤時の再配列性という因子を含むことになる。また、膨潤したゲルの粒子間に存在する隙間水が、吸水性樹脂本来の性能を評価することを妨げる。この因子を排除するために、膨潤後でもゲル層が一層になるような撒布量にし、隙間水をとる評価が、単層加圧下吸収倍率である。具体的な測定方法は実施例において後述する。
本発明の吸水性樹脂は、好ましくは本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法によって得られるものであり、吸水性樹脂の個々の粒子の処理、好ましくは表面架橋処理が、高度な均一性をもって行われていることを特徴とするので、単層加圧下吸収倍率を用いた評価は本発明の吸水性樹脂の能力を的確に反映することができる。
【0060】
本発明にかかる吸水性樹脂は、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上であることを特徴とする。上記各単層加圧下吸収倍率は、好ましくは31g/g以上、より好ましくは32g/g以上である。上記各単層加圧下吸収倍率が30g/g未満の場合には、十分に均一な処理がなされていない恐れがあり、好ましくない。
本発明にかかる吸水性樹脂は、粒度分布として、粒度600〜300μmの粒子の割合が65〜85重量%、かつ、粒度300〜150μmの粒子の割合が10〜30重量%であることが好ましい。より好ましくは、粒度600〜300μmの粒子の割合が70〜80重量%、かつ、粒度300〜150μmの粒子の割合が15〜25重量%である。
【0061】
本発明にかかる吸水性樹脂は、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率が0.80以上であることが好ましい。
ここで、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率は以下の式で算出される値であり、加圧下の膨潤能力を表す値である。この時間変化率は、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上である。すなわち、1に近い方が、短時間で飽和膨潤に近づくことになり好ましい。

粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)

本発明にかかる吸水性樹脂は、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率が0.90以上であることが好ましい。
【0062】
ここで、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率は以下の式で算出される値であり、加圧下の膨潤能力を表す値である。この時間変化率は、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.95以上である。1に近い方が、短時間で飽和膨潤に近づくことになり好ましい。

粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)

本発明にかかる吸水性樹脂は、単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率が0.90〜1.10であることが好ましい。
【0063】
ここで、単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率は以下の式で算出される値であり、混合状態の均一性を表す値である。この粒度間変化率は、より好ましくは0.95〜1.05、さらに好ましくは0.97〜1.03である。

単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)

本発明にかかる吸水性樹脂は、単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率が0.90以上であることが好ましい。
【0064】
ここで、単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率は以下の式で算出される値であり、混合状態の均一性を表す値である。この粒度間変化率は、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.95以上である。

単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)

発明にかかる吸水性樹脂は、少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、均一表面処理指数が0.70以上であることを特徴とする。
【0065】
ここで、均一表面処理指数は以下の式で算出される値であり、表面処理の均一性を的確に表すことが出来る値である。均一表面処理指数は、好ましくは0.72以上であり、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.80以上である。1に近いほうが均一性が高いので好ましい。

均一表面処理指数
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
×単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率

本発明にかかる吸水性樹脂は、分光式色差計等を用いて測定した明度指数L値が85以上、クロマチックネス指数を示すa値が−2〜2、b値が0〜9であることが好ましい。L値、a値、b値がこれら範囲に入らないときは、本発明の吸水性樹脂の特徴である均一処理がなされていないおそれがあるので好ましくない。
【0066】
本発明にかかる吸水性樹脂は、その優れた性能により、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料に好適に用いることができ、本発明の衛生材料を供する。
吸水性樹脂は一般に粉末として製造および使用されるため、粉末の粒度の偏り(偏析)によって得られる衛生材料の物性が変化する問題があったし、吸収時間によって物性値も大きく変化した。しかし、本発明の吸水性樹脂は、多価アルコールを含み、高物性(高吸収倍率)であり、さらに粒度別や吸収時間別にも物性の差がほとんどないため、衛生材料とした場合に好適である。本発明の物性値(特定粒度、特定吸収時間での単層加圧下吸収倍率)は衛生材料として使用する場合、臨界的に重要な数値であることが見出された。本発明の吸水性樹脂は高物性であり、高樹脂濃度で使用でき、繊維材料と吸水性樹脂で規定されるコア濃度(以下の式で算出される)は、好ましくは30%〜100%、より好ましくは40%〜100%、さらに好ましくは50%〜100%で使用できる。
【0067】

コア濃度(%)
=[吸水性樹脂(g)/(繊維材料(g)+吸水性樹脂(g))]×100

【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるのもではない。なお、無加圧下吸収倍率および加圧下吸収倍率は下記の通り測定した。
(a)無加圧下吸収倍率(単に吸収倍率ということもある)
吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に室温(25±2℃)で浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250×9.81m/sec(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、そのときの重量W(g)を測定した。そして、これら重量W,Wから、次式
無加圧下吸収倍率(g/g)=
(重量W(g)−重量W(g))/吸水性樹脂の重量(g)
に従って無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0069】
(b)加圧下吸収倍率(被吸収液:生理食塩水)
被吸収液として生理食塩水を用いた場合の加圧下吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図3を参照にしながら以下に簡単に説明する。
図3に示すように、測定装置は天秤1と、この天秤1上に載置された所定量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。
上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が篏入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。尚、容器2には、所定量の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水、液温25±2℃)11が入っている。
【0070】
また、上記外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水11中に没している。上記外気吸入パイプ3は、容器2内の圧力をほぼ常圧(大気圧)に保つために設けられている。
上記のガラスフィルタ6は、直径70mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルタ6は、シリコン樹脂からなる導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6の容器2に対する位置および高さは一定に保たれている。さらにガラスフィルタ6は、その上面が外気吸入パイプ3の下端に対してごく僅かに高い位置になるように固定されている。
上記測定部5は、濾紙7と、支持円筒8と、この支持円筒8の底部に貼着された金網9と、おもり10とを有している。上記測定部5は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、支持円筒8(つまり、金網9)がこの順に載置されるとともに、支持円筒8内部、即ち、金網9上におもり10が載置されてなっている。上記支持円筒8は、内径60mmに形成され、金網9は、ステンレスからなり、目開き38μm(400メッシュ)に形成されている。そして、金網9上に、所定量の吸水性樹脂が均一に散布されるようになっている。また、おもり10は、金網9、即ち、吸水性樹脂に対して、20g/cm(約1.96kPa)の荷重を均一に加えることができるようになっている。
【0071】
上記構成の測定装置を用いて加圧下吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
まず、容器2に所定量の生理食塩水11を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を篏入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置した。一方、この載置動作に並行して、支持円筒8内部、即ち、金網9上に、0.900gの吸水性樹脂を均一に散布し、この吸水性樹脂上におもり10を載置した。
そして、濾紙7上に、測定部5、つまり、金網9上に吸水性樹脂およびおもり10を載置した上記支持円筒8を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
【0072】
そして、濾紙7上に支持円筒8を載置した時点から、60分間にわたって経時的に、該吸水性樹脂が吸水した生理食塩水11の重量W(g)を、天秤1の測定値から求めた。
そして、上記の重量W(g)と、吸水性樹脂の重量(0.900g)から、次式

加圧下吸収倍率(g/g) = 重量W(g)/吸水性樹脂の重量(g)

に従って、吸水開始から60分後の加圧下吸収倍率を算出した。
(c)加圧下吸収倍率(被吸収液:人工尿)
被吸収液として人工尿を用いた場合の加圧下吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図3を参照しながら、以下に簡単に説明する。
【0073】
図3に示すように、測定装置は天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルター6と、このガラスフィルター6上に載置された測定部5とからなっている。
上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。また、容器2には、所定量の人工尿11が入っている。
外気吸入パイプ3の下端部は、人工尿11中に没している。上記のガラスフィルター6は、直径70mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルター6は、導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルター6の上部は、外気吸入パイプ3の下端に対してごく僅かに高い位置になるようにして固定されている。
【0074】
上記の測定部5は、濾紙7と、支持円筒8と、この支持円筒8の底部に粘着された金網9と、重り10とを有している。そして、測定部5は、ガラスフィルター6上に、濾紙7、支持円筒8(つまり、金網9)がこの順に載置されると共に、支持円筒8内部、即ち、金網9上に重り10が載置されてなっている。支持円筒8は、内径60mmに形成されている。金網9は、ステンレスからなり、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。そして、金網9上に所定量の吸水性樹脂が均一に撒布されるようになっている。重り10は、金網9、即ち、吸水性樹脂に対して、50g/cm(約4.83kPa)の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0075】
上記構成の測定装置を用いて、加圧下吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
先ず、容器2に所定量の人工尿11を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルター6上に濾紙7を載置した。一方、これらの載置動作に並行して、支持円筒内部、即ち、金網9上に吸水性樹脂0.900gを均一に撒布、この吸水性樹脂上に重り10を載置した。
次いで、濾紙7上に、金網9、つまり、吸水性樹脂および重り10を載置した上記支持円筒8を載置した。
【0076】
そして、濾紙7上に支持円筒8を載置した時点から、60分間にわたって吸水性樹脂が吸収した人工尿11の重量W(g)を、天秤1を用いて測定した。そして、上記の重量W(g)から、次式

加圧下吸収倍率(g/g) = 重量W(g)/吸水性樹脂の重量(g)

に従って、吸収開始から60分後の加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
人工尿の組成を以下に示す。
【0077】
(硫酸ナトリウム0.2重量%、塩化カリウム0.2重量%、塩化マグネシウム6水和物0.05重量%、塩化カルシウム2水和物0.025重量%、リン酸2水素アンモニウム0.085重量%、リン酸水素2アンモニウム0.015重量%、脱イオン水99.425重量%)

(d)均一表面処理度評価
均一表面処理度評価に用いる測定装置は、図3に示す加圧下吸収倍率の測定に用いる測定装置と同じである。
【0078】
この装置を用いて均一表面処理度評価を行った。測定方法について以下に示す。
まず、容器2に所定量の人工尿11(組成:硫酸ナトリウム0.2重量%、塩化カリウム0.2重量%、塩化マグネシウム6水和物0.05重量%、塩化カルシウム2水和物0.025重量%、リン酸2水素アンモニウム0.085重量%、リン酸水素2アンモニウム0.015重量%、脱イオン水99.425重量%、液温25±2℃)を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルター6上に濾紙7を載置した。一方、これらの載置動作に並行して、支持円筒8内部、即ち、金網9上に吸水性樹脂0.055±0.005gを均一に撒布し、この吸水性樹脂上に重り10を載置してから、金網9が固定された支持円筒8、吸水性樹脂および重り10の測定前総重量W(g)を測定した。なお、均一表面処理度評価に用いる吸水性樹脂は、測定前に予め600〜300μmおよび300〜150μmに分級した吸水性樹脂をそれぞれ測定試料として用いた。
【0079】
次いで、濾紙7上に、測定部5、つまり、金網9上に吸水性樹脂および重り10を載置した上記支持円筒8を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
そして、濾紙7上に支持円筒8を載置した時点から、10分間または60分間にわたって経時的に、該吸水性樹脂に人工尿を吸水させた。
所定時間経過後、支持円筒8を、重り10を取り除かず吸水性樹脂に荷重を与えたまま、予め準備した濾紙(アドバンテック東洋社製、No.2、直径90mm)5枚の上に静かに移し置いて、吸水後のゲル化した吸水性樹脂粒子間に存在する隙間水を2分間水切りした。ここで重り10を取り除かず、吸水性樹脂に荷重を与えたまま水切りしたのは、吸水性樹脂が、荷重が軽くなることによってその粒子間に存在する隙間水を吸水することを防ぐためである。
【0080】
その後、金網9が固定された支持円筒8、膨潤した吸水性樹脂およびおもり10の測定後総重量W(g)を測定した。そして、上記の重量W(g)およびW(g)と、吸水性樹脂の重量から、次式
単層加圧下吸収倍率(g/g)
=(測定後総重量W(g)−測定前総重量W(g))/吸水性樹脂の重量(g)
に従って、吸収開始から10分後または60分後の単層加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。従って、単層加圧下吸収倍率は、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)の、4つの値が算出された。
【0081】
均一表面処理度評価においては、さらに、単層加圧下吸収倍率の時間による変化率と、単層加圧下吸収倍率の粒度間での変化率を求めた。
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率は以下の式で算出した。
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率は以下の式で算出した。
粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率は以下の式で算出した。
【0082】
単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率は以下の式で算出した。
単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
さらに、均一表面処理度を表す均一表面処理指数は、上記で求めた4つの変化率の値を用いて、以下の式で算出した。
【0083】
均一表面処理指数
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
×単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率
(実施例1)
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダーにアクリル酸ナトリウム水溶液、アクリル酸および水からなるモノマー濃度38wt%、中和率75mol%のアクリル酸塩系単量体水溶液を調製し、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレートを該モノマーに対して0.02mol%となるように溶解せしめた。次いで、該水溶液に窒素ガスを吹き込むことで、該単量体水溶液の溶存酸素を低減するとともに、反応容器内全体を窒素置換した。次いで、2本のシグマ型ブレードを回転させながら、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.05mol%およびL−アスコルビン酸0.0003mol%となるように添加して、該ニーダー内で攪拌重合を行ない、約40分後に平均粒径約2mmの含水ゲル状重合体を得た。
【0084】
得られた含水ゲル状重合体は、170℃に設定した熱風乾燥機中で60分間乾燥された。乾燥物はロールミル粉砕機で粉砕し、目開き850μmのふるいで分級して850μmより大きい粒子を除去することにより吸水性樹脂(A1)を得た。
上記吸水性樹脂(A1)を約60℃に保ち、いけうち社製の1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1、スプレーパターンは環状を示す空円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機(ホソカワミクロン社製タービュライザー)に100kg/hrで供給し、混合比がグリセリン:水:イソプロピルアルコール=1:4:1からなる表面架橋剤水溶液を液状物(B1)として、該水溶液添加量が吸水性樹脂(A1)重量に対して3重量%となるように噴霧混合した。得られた混合物を吸水性樹脂温度(材料温度)190℃で1時間加熱処理したのち、全てを目開き850μmのふるいを通過させて表面処理(改質)された吸水性樹脂(1)を得た。
【0085】
1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1)の使用によって、表面処理剤水溶液の該空円錐ノズルからの噴霧角度は70°となっており、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は2本で約89%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(1)の物性は表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、混合機をいけうち社製の1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2、スプレーパターンは両凸レンズ状を示す楕円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、表面処理(改質)された吸水性樹脂(2)を得た。なお、1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の混合機への取り付けは、連続式高速攪拌混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度が最大となるように、細心の注意を払って取り付けた。
【0086】
1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の使用によって、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度は110°となっており、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は2本で約97%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(2)の物性は表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、混合機をいけうち社製の1流体空円錐ノズル1/4M−K−100(C3、スプレーパターンは環状を示す空円錐形状)を1本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、表面処理(改質)された吸水性樹脂(3)を得た。
【0087】
1流体空円錐ノズル1/4M−K−100(C3)の使用によって、表面処理剤水溶液の該空円錐ノズルからの噴霧角度は70°となっており、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は約77%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた表面架橋(改質)された吸水性樹脂(3)の物性は表1に示す。
(比較例1)
実施例1において混合機をいけうち製の1流体空円錐ノズルの代わりに、内径6mmの直管ノズル(C1´)を2本備えた連続式高速攪拌混合機を用いた以外は実施例1と同様の操作を行ない、表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(1)を得た。
【0088】
使用した直管ノズル(C1´)からは、表面架橋剤水溶液(B1)は液滴で供給されたため、混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度および拡散面積は測定できなかった。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、攪拌翼の一部に堆積物の成長が観察された。
得られた表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(1)には、堅くてつぶすことが出来ず、目開き850μmのふるいを通過しない粒子が存在した。従って、得られた表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(1)の物性は表1に示すが、粒度分布には上記の目開き850μmを通過しなかった粒子を含めて値を求めた。無加圧下吸収倍率および加圧下吸収倍率は、目開き850μmを通過しなかった粒子を除去して測定した。
【0089】
(比較例2)
実施例1において、混合機をスプレーイング システムズ ジャパン社製のエアーアトマイジングノズル スプレーセットアップ番号SU1(C2´、スプレーパターンは円状を示す充円錐形状)を1本備えた連続式高速攪拌形混合機とした以外は同様の操作を行ない、表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(2)を得た。
エアーアトマイジングノズル スプレーセットアップ番号SU1(C2´)の使用によって、表面処理剤水溶液の該エアーアトマイジングノズルからの噴霧角度は18°となっており、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積はで約20%を占めた。
【0090】
上記の操作終了後混合機内を観察した所、攪拌翼およびその軸に堆積物が確認された。
得られた表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(2)には、堅くてつぶすことが出来ず、目開き850μmのふるいを通過しない粒子が存在した。従って、得られた表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(2)の物性は表1に示すが、粒度分布には上記の目開き850μmのふるいを通過しなかった粒子を含めて値を求めた。無加圧下吸収倍率および加圧下吸収倍率は、目開き850μmの通過しなかった粒子を除去して測定した。
(実施例4)
実施例1で得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(1)の150μm篩通過量を低減するために、造粒した。すなわち該吸水性樹脂(1)を改質される前の吸水性樹脂(A2)として、いけうち社製の1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1、スプレーパターンは環状を示す空円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機(ホソカワミクロン社製タービュライザー)に100kg/hrで供給し、水(B4)を液状物として添加量が吸水性樹脂(A2)重量に対して5重量%となるように添加・混合した。そして、得られた混合物を80℃で1時間静置状態に置いて硬化し、全てを850μmの篩を通過させて、改質(造粒)された吸水性樹脂(4)を得た。
【0091】
1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1)の使用によって、水(B4)の噴霧角度は70°となり、混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は2本で約89%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた改質(造粒)された吸水性樹脂(4)の粒度分布を表2に示す。
(実施例5)
上記実施例4において、混合機をいけうち社製の1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2、スプレーパターンは両凸レンズ状を示す楕円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、改質(造粒)された吸水性樹脂(5)を得た。なお、1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の混合機への取り付けは、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度が最大となるように、細心の注意を払って取り付けた。
【0092】
1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の使用によって、噴霧角度は110°となり、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は2本で約97%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた改質(造粒)された吸水性樹脂(5)の粒度分布を表2に示す。
(実施例6)
上記実施例4において、混合機をいけうち社製の1流体空円錐ノズル1/4M−K−100(C3、スプレーパターンは環状を示す空円錐形状)を1本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、改質(造粒)された吸水性樹脂(6)を得た。
【0093】
1流体空円錐ノズル1/4M−K−100(C3)の使用によって、水(B4)の噴霧角度は70°となり、混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は約77%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた改質(造粒)された吸水性樹脂(6)の粒度分布を表2に示す。
(比較例3)
上記実施例4において、混合機をいけうち社製の1流体扇状ノズル1/4M−V−040−05(C3´、スプレーパターンは両凸レンズ状を示す楕円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、比較用吸水性樹脂(3)を得た。なお、1流体扇状ノズル1/4M−V−040−05(C3´)の混合機への取り付けは、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度が最大となるように、細心の注意を払って取り付けた。
【0094】
1流体空円錐ノズル1/4M−V−040−05(C3´)の使用によって、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度は40°となり、混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は2本で約67%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、攪拌翼およびその軸に堆積物が観察された。
得られた改質(造粒)された比較用吸水性樹脂(3)には、堅くてつぶすことが出来ず、目開き850μmの篩を通過しない粒子が存在した。得られた改質(造粒)された比較用吸水性樹脂(3)の粒度分布は表2に示すが、粒度分布には上記の目開き850μmを通過しなかった粒子を含めて値を求めた。
【0095】
(比較例4)
上記実施例4において、混合機をいけうち社製の1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2、スプレーパターンは両凸レンズ状を示す楕円錐形状)を2本備えた連続式高速攪拌混合機とした以外は同様の操作を行ない、改質(造粒)された比較用吸水性樹脂(4)を得た。なお、1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の混合機への取り付けは、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度が最小となるように取り付けた。
1流体扇状ノズル1/4M−V−115−05(C2)の使用にあたって、上記のように噴霧角度が最小となるように取り付けたため、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの噴霧角度が10°となり、混合装置の断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は約23%を占めた。
【0096】
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、攪拌翼およびその軸に堆積物が観察された。
得られた改質(造粒)された比較用吸水性樹脂(4)には、堅くてつぶすことが出来ず、目開き850μmの篩を通過しない粒子が存在した。得られた改質(造粒)された比較用吸水性樹脂(4)の粒度分布は表2に示すが、粒度分布には上記の目開き850μmを通過しなかった粒子を含めて値を求めた。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1では、直管ノズルを用いた混合方法に対して、本発明の方法で混合して得た表面架橋された吸水性樹脂は、高い加圧下吸収倍率を示し、また850μmの篩を通過させることが出来ないほどの堅い凝集物の生成も見られなかった。しかも混合装置内には、液状物が過剰に入ることによって生成する堆積物の成長も観察されず、吸水性樹脂と液状物としての表面架橋剤水溶液は偏りなく均一に混合されたことが判る。
表2からも、本発明の混合方法を用いると、150μm未満の粒子の割合が少なくなっており、また、850μmの篩を通過させることが出来ないほどの堅い凝集物の生成も見られなかった。吸水性樹脂の発塵低減を目的とした多量の水溶液の混合にも有効な方法であることが判る。
【0100】
以上の結果から、本発明の混合方法は、液状物と混合すると凝集しやすい吸水性樹脂に対して、均一混合状態を求める際に非常に有効な方法であると言える。
(参考例1)
37重量%アクリル酸ナトリウム3683部、アクリル酸562部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数8)4.26部、及びイオン交換水1244部を混合し単量体水溶液を調整した。単量体脱気槽において、この単量体水溶液1Lに対し窒素を毎分0.8Lの割合で30分間吹き込み、水溶液中の溶存酸素を除去した。次に重合開始剤槽から、それぞれ5重量%過硫酸ナトリウム水溶液4.5部、0.5重量%L−アスコルビン酸水溶液4.0部、5重量%2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド水溶液4.4部を、単量体水溶液と混合した。.3.5重量%過酸化水素水溶液3.2部を供給しながら、重合開始剤を混合した単量体水溶液をベルト上に供給し、連続的に静置重合を行った。
【0101】
ベルトの全長は3.5mであり、単量体水溶液供給部分から駆動方向に対し1mまでの間はベルト表面を冷却する冷却装置を備え、残りの部分には、ベルト表面を加熱させる加熱装置を備えている。ベルト上に供給した単量体水溶液は、約1分後粘稠なゲル状物を形成し、7分後最高温度に達した。その温度は80℃であった。引き続き重合ゲルを60℃の加熱ゾーンで熟成し透明な含水ゲルを得た。
このゲルをミートチョッパーで砕き、160℃で65分間熱風乾燥機で乾燥した。得られた乾燥物を粉砕し、平均粒径350μmで、150μm未満が5%の吸水性樹脂(A3)を得た。このものの吸収倍率は52倍(52g/g)、可溶分は12%であった。
【0102】
(実施例7)
参考例1で得られた吸水性樹脂(A3)100部に、1,3−プロパンジオール0.5部、プロピレングリコール0.5部、水3.0部、エタノ内壁(熱媒)温度ール0.5部の混合組成物を、タービュライザーで混合した。混合物を、185℃のパドル型乾燥機の空間部の雰囲気を露点40℃、温度97℃に調整し1時間加熱処理し、表面処理(改質)された吸水性樹脂(吸収剤)(7)を得た。結果を表3に示した。
(実施例8)
実施例7のパドル型乾燥機の空間部の雰囲気を露点50℃、温度119℃に調整した以外は同様の操作を行い、表面処理(改質)された吸水性樹脂(吸収剤)(8)を得た。結果を表3に示した。
【0103】
(実施例9)
参考例1で得られた吸水性樹脂(A3)100部に、1,3−プロパンジオール0.5部、プロピレングリコール0.5部、水3.0部、エタノール0.5部の混合組成物を、タービュライザーで混合した。混合物を、内壁(熱媒)温度185℃の双腕型捏和機の空間部の雰囲気を露点60℃、温度145℃に調整し1露点60℃の雰囲気に調整し1時間加熱処理し、表面処理(改質)された吸水性樹脂(吸収剤)(9)を得た。結果を表3に示した。
(比較例5)
実施例7のパドル型乾燥機の空間部の雰囲気を露点25℃、温度88℃にした以外は同様の操作を行い、表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(比較吸収剤)(5)を得た。結果を表3に示した。
【0104】
(比較例6)
実施例7のパドル型乾燥機の空間部の雰囲気を露点100℃、温度142℃にした以外は同様の操作を行い、表面処理(改質)された比較用吸水性樹脂(比較吸収剤)(6)を得た。結果を表3に示した。
【0105】
【表3】

【0106】
(実施例10)
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダーにアクリル酸ナトリウム水溶液、アクリル酸および水からなるモノマー濃度38wt%、中和率75mol%のアクリル酸塩系単量体水溶液を調製し、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数8)を該モノマーに対して0.035mol%となるように溶解せしめた。次いで、該水溶液に窒素ガスを吹き込むことで、該単量体水溶液の溶存酸素を低減するとともに、反応容器内全体を窒素置換した。次いで、2本のシグマ型ブレードを回転させながら、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.05mol%およびL−アスコルビン酸0.0003mol%となるように添加して、該ニーダー内で攪拌重合を行ない、約40分後に平均粒径約2mmの含水ゲル状重合体を得た。
【0107】
得られた含水ゲル状重合体は、170℃に設定した熱風乾燥機中で60分間乾燥された。乾燥物はロールミル粉砕機で粉砕し、目開き850μmのふるいで分級して850μmより大きい粒子を除去することにより吸水性樹脂(A4)を得た。得られた吸水性樹脂(A4)は、平均粒径350μmで、150μm未満の量が7重量%、吸収倍率は45倍(45g/g)であった。
上記吸水性樹脂(A4)を、いけうち社製の1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1、スプレーパターンは環状を示す空円錐形状)を1本備えた連続式高速攪拌混合機(ホソカワミクロン社製タービュライザー)に100kg/hrで供給し、混合比が1,4−ブタンジオール:プロピレングリコール:水=1:1:6からなる表面架橋剤水溶液を液状物(B10)として、該水溶液添加量が吸水性樹脂(A4)重量に対して4重量%となるように混合した。得られた混合物を吸水性樹脂温度(材料温度)190℃のパドル型乾燥機の空間部分の雰囲気を露点50℃、温度160℃として50分間加熱処理したのち、全てを目開き850μmのふるいを通過させて表面処理(改質)された吸水性樹脂(10)を得た。
【0108】
1流体空円錐ノズル1/4M−K−040(C1)の使用によって、表面処理剤水溶液の該空円錐ノズルからの噴霧角度は70°となっており、混合装置の攪拌軸に垂直な断面積に噴霧拡散状態を投影したときの拡散面積は1本で約77%を占めた。
上記の操作終了後、混合機内を観察した所、大きな堆積物はほとんど見当たらなかった。
得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(10)の物性を表4に示す。
(実施例11)
実施例10において、液状物を混合比1,3−ジオキソラン−2−オン:水:エタノール=1:1:1からなる表面架橋剤水溶液(B11)として、該水溶液の添加量が吸水性樹脂(A4)の重量に対して7.5重量%となるように混合した以外は、全て同様の操作を行った。
【0109】
得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(11)の物性を表4に示す。
表4に示すように、多価アルコールを用いない場合、実施例10に比べて物性が悪くなった。なお、本実施例11は製造方法の実施例であり、吸水性樹脂の実施例ではない。
(実施例12)
実施例10において、吸水性樹脂(A4)と液状物(B10)から得られた混合物を、吸水性樹脂温度(材料温度)190℃のパドル型乾燥機の空間部分の雰囲気を露点40℃、温度80℃で50分間加熱処理した以外は、全て同様の操作を行った。
得られた表面処理(改質)された吸水性樹脂(12)の物性を表4に示す。
【0110】
表4に示すように、実施例10に比べて物性が悪くなった。なお、本実施例12は製造方法の実施例であり、吸水性樹脂の実施例ではない。
【0111】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の吸水性樹脂は、紙おむつ、生理綿等衛生材料用の吸水性樹脂をはじめとして、建材の結露防止剤、農園芸用保水剤あるいは乾燥剤等の用途に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 天秤
2 容器
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルタ
7 濾紙
8 支持円筒
9 金網
10 おもり
11 生理食塩水または人工尿


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程を含み、液状物(B)は、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする、
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程を含み、液状物(B)は、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とする、
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程と加熱処理工程を含み、
前記混合工程においては、液状物(B)は、スプレーパターンが環状を示す空円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とし、
前記加熱処理工程においては、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で加熱処理することを特徴とする、
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
吸水性樹脂に液状物を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
吸水性樹脂(A)と液状物(B)をスプレーノズル(C)を備えた混合装置を用いて噴霧混合する工程と加熱処理工程を含み、
前記混合工程においては、液状物(B)は、スプレーパターンが両凸レンズ状を示す楕円錐形状で該スプレーノズル(C)より噴霧されることを特徴とし、
前記加熱処理工程においては、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で加熱処理することを特徴とする、
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
吸水性樹脂(A)に液状物(B)を混合して加熱することにより改質された吸水性樹脂を製造する方法において、
乾燥後、粉砕して得られた吸水性樹脂を、露点が60℃以下で温度が90℃以上の雰囲気下で、加熱処理する工程を含むことを特徴とする、
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
液状物(B)がスプレーノズル(C)を備えた混合装置で噴霧混合される、請求項5に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記液状物(B)のスプレーノズル(C)からの最大噴霧角度が50°以上である、請求項6に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
スプレーノズル(C)を備えた混合装置が、複数のパドルを備えた攪拌軸を有する連続混合装置である、請求項6または7に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
混合装置の軸方向に垂直かつ該スプレーノズル(C)の噴射点を含む断面積に、該液状物(B)の噴霧拡散状態を投影した面積が、混合装置の軸方向に垂直な断面積の70%以上を占める、請求項8に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
液状物(B)が吸水性樹脂(A)が含有する官能基と反応して共有結合を形成する表面架橋剤水溶液であって、混合後の該混合物をさらに吸水性樹脂温度が80〜250℃となるように加熱処理する、請求項1から9までのいずれかに記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
液状物(B)が多価アルコール、多価グリシジル化合物、1,3−ジオキソラン−2−オン、ポリ2−オキサゾリジノン、ビス2−オキサゾリジノン、モノ2−オキサゾリジノンの中の少なくとも1つから選ばれる表面架橋剤を含有する水溶液である、請求項10に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
液状物(B)が多価アルコールを含有する表面架橋剤水溶液である、請求項11に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)が30g/g以上、粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)が30g/g以上であることを特徴とする、
吸水性樹脂。
【請求項14】
少なくとも多価アルコールを含む表面架橋剤を用いて表面架橋され、150μm未満の粒子の割合が5重量%以下の粒度分布を有し、無加圧下吸収倍率が30g/g以上である吸水性樹脂において、
均一表面処理指数が0.70以上であることを特徴とする、
吸水性樹脂。
ただし、
均一表面処理指数
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
×単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
×単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率
ここで、
粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)

粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率の時間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)

単層加圧下吸収倍率(10min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(10min値)

単層加圧下吸収倍率(60min値)の粒度間変化率
=粒度300〜150μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
/粒度600〜300μmでの単層加圧下吸収倍率(60min値)
【請求項15】
請求項13または14に記載の吸水性樹脂を含んでなる衛生材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214016(P2011−214016A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169765(P2011−169765)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【分割の表示】特願2001−284017(P2001−284017)の分割
【原出願日】平成13年9月18日(2001.9.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】