説明

吸水性発泡部材

【課題】多量の水分を保持することができ、湿潤状態を長期間維持することができる吸水性発泡部材を提供する。
【解決手段】吸水性発泡部材10は、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを原料とし、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを加熱下に混合した高温の第1混合物に水を加え、第1混合物の内部における水の気化によって、第1混合物の内部に多数の気泡14を形成しつつ、第1混合物を所定倍率に膨張させることで作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を吸収保持する吸水性発泡部材に関する。
【背景技術】
【0002】
含水率が0.5〜20倍の親水性樹脂を、固形樹脂重量から算出される体積の2〜50倍の見かけ容積に発泡させた親水性樹脂発泡体がある(特許文献1参照)。親水性樹脂発泡体は、植物を栽培する養生床として使用される。この親水性樹脂発泡体は、それが適度な堅さを有するので、挿花に使用する養生床としても使用することができる。
【特許文献1】特開2005−290121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示の親水性樹脂発泡体は、樹脂固有の吸水率が0.5〜20倍であるから、吸水機能が低く、多量の水分を吸収保持することが難しい。さらに、発泡体表面から水分が容易に蒸発するから、湿潤状態を長期間維持することが難しい。この親水性樹脂発泡体は、植物栽培の養生床や挿花の養生床として使用したとしても、短期間に水を補給しなければならず、手間を要する。
【0004】
本発明の目的は、多量の水分を保持することができ、湿潤状態を長期間維持することができる吸水性発泡部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを原料とし、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを加熱下に混合した高温の第1混合物に水を加え、第1混合物の内部における前記水の気化によって、該第1混合物の内部に複数の気泡を形成しつつ、該第1混合物を所定倍率に膨張させることで作られた吸水性発泡部材である。
【0006】
本発明の一例としては、吸水性発泡部材が、該吸水性発泡部材の一部を露出させた状態でその周りを囲む支持発泡部材を備え、支持発泡部材が、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉とを原料とし、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉とを加熱下に混合した高温の第2混合物に水を加え、第2混合物の内部における水の気化によって、該第2混合物の内部に多数の気泡を形成しつつ、該第2混合物を所定倍率に膨張させることで作られている。
【0007】
本発明の他の一例としては、第1混合物に対するポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとの混合割合が、ポリオレフィン系合成樹脂20〜35重量%、紙パウダー40〜60重量%、澱粉10〜30重量%、高吸水性ポリマー10〜20重量%の範囲、第2混合物に対するポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉との混合割合が、ポリオレフィン系合成樹脂20〜40重量%、紙パウダー40〜60重量%、澱粉20〜30重量%の範囲にあり、紙パウダーの平均粒径が50〜200μm、澱粉の平均粒径が10〜200μmの範囲にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる吸水性発泡部材によれば、その内部に多数の気泡が形成され、さらに、それが高吸水性ポリマーを含有するから、気泡に水を取り込みつつ、高吸水性ポリマーに多量の水分を吸収させることができ、湿潤状態を長期間維持することができる。吸水性発泡部材は、その内部に水を長期間保持することができるから、短期間に水を補給する必要がなく、植物栽培の養生床や挿花の養生床としての長期間の使用に好適である。吸水性発泡部材は、それがポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを混合した高温の第1混合物に水をくわえることで作られ、紙パウダーや澱粉を含有するから、燃焼カロリーが低く、その焼却処理時に焼却炉を傷めることはない。この吸水性発泡部材は、その焼却時に煤煙の発生がなく、環境に悪影響を及ぼすことはない。
【0009】
吸水性発泡部材の一部を露出させた状態でその周りを囲む支持発泡部材を備えた吸水性発泡部材は、吸水性ポリマーが多量の水を吸収することで吸水性発泡部材が脆弱になったとしても、支持発泡部材が吸水性発泡部材を支持するから、湿潤状態にある吸水性発泡部材が不用意に崩壊してしまうことはない。吸水性発泡部材は、その内部に水を長期間保持することができるから、短期間に水を補給する必要がなく、植物栽培の養生床や挿花の養生床としての長期間の使用に好適である。吸水性発泡部材は、それがポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを混合した高温の第1混合物に水をくわえることで作られているとともに、支持発泡部材がポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉とを混合した高温の第2混合物に水をくわえることで作られており、それら発泡部材が紙パウダーや澱粉を含有するから、燃焼カロリーが低く、その焼却処理時に焼却炉を傷めることはない。この吸水性発泡部材は、その焼却時に煤煙の発生がなく、環境に悪影響を及ぼすことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付の図面を参照し、本発明に係る吸水性発泡部材の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1,2は、一例として示す吸水性発泡部材10の斜視図と、図1の2−2線端面図とである。図1の吸水性発泡部材10は、水を吸収する以前の状態にある。図1,2では、縦方向を矢印A、横方向を矢印B(図1のみ)で示し、厚み方向を矢印Cで示す。この吸水性発泡部材10は、四角柱状を呈し、矩形の上面11および矩形の下面12と、上下面11,12間に延びる矩形の4つの側面13とを有する六面体である。発泡部材10は、上下面11,12間の厚み寸法が2〜10cmの範囲にあり、縦方向の寸法と横方向の寸法とが3〜20cmの範囲にある。なお、発泡部材10の形状について特に限定はなく、円柱状や多角柱状等の形状を自由に選択することができる。
【0011】
発泡部材10の内部には、多数の独立した気泡14が形成されている。気泡14は、その形状や大きさが一様ではなく、縦横方向と厚み方向とへ不連続かつ不規則に延びている。発泡部材10はポリオレフィン系合成樹脂15、紙パウダー16、澱粉17、粒子状の高吸水性ポリマー18を原料とするが(図3参照)、原料として無機化合物を加えることもできる。
【0012】
ポリオレフィン系合成樹脂15には、ポリプロピレンとポリエチレンとのいずれか一方、または、それらを所定の割合で混合した樹脂を使用する。ポリプロピレンには、ブロック重合ポリプロピレン、ランダム重合ポリプロピレン、ホモ重合ポリプロピレン、メタロセン−ポリプロピレンのうちから選択された少なくとも1種類を使用することができる。ポリエチレンには、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン、変成ポリエチレン、エチレンビニルアセテート(EVA)のうちから選択された少なくとも1種類を使用することができる。なお、ポリプロピレンには、線状ポリプロピレンとイソプレンとラジカル重合開始剤とを反応させた改質ポリプロピレンを使用することもできる。線状ポリプロピレンには、プロピレンの単独重合体や共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体のうちの少なくとも1つを使用することができる。ラジカル重合開始剤には、過酸化物やアゾ化合物を使用することができる。
【0013】
ポリオレフィン系合成樹脂15には、改質物質を混入することもできる。改質物質は、ポリオレフィン系合成樹脂15の全重量に対するその重量比が0.1重量%以上かつ10重量%以下の範囲にあることが好ましい。改質物質は、ポリオレフィン系合成樹脂15と相互に親和性を有する樹脂で、そのメルトフローインデックスが0.1〜15g/10分の範囲にあり、ポリオレフィン系合成樹脂15の流動性を向上させることができる。また、改質物質は、紙パウダー16をポリオレフィン系合成樹脂15に接着するバインダーとして機能する。改質物質には、エチレン−プロピレンエラストマー、水素添加スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマーのうちの少なくとも1つを使用することができる。水素添加スチレン−ブタジエンラバーやスチレン−エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマーは、エチレンとブテン−1とから形成されたランダム性の高い共重合体であり、ポリマー分子中に二重結合を持たず、かつ、低結晶性で柔軟性のある透明性の高い合成樹脂である。
【0014】
紙パウダー16は、広葉樹パルプと針葉樹パルプとのうちの少なくとも一方を原料としてそれらパルプを粉状に微粉砕したセルロース主体のパウダー、紙の製造中に発生する破紙や損紙を粉状に微粉砕したパウダー、古紙を粉状に微粉砕したパウダー、または、それらを所定の割合で混合したパウダーを使用する。パルプは、機械的パルプ、化学的機械パルプ、半化学的パルプ、化学的パルプのいずれであってもよい。古紙には、新聞古紙や雑誌古紙、印刷古紙、包装古紙、段ボール古紙、OA古紙を使用することができる。澱粉17には、とうもろこし、さつまいも、バレイショ、小麦、大麦、米に含まれるそれを使用するが、とうもろこしに含まれる澱粉を使用することが好ましい。
【0015】
高吸水性ポリマー18には、ポリアクリル酸塩架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体架橋物、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体架橋物の加水分解物、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体の加水分解物、アクリル酸−アクリルアミド共重合体架橋物、ポリアクリロニトリル架橋物の加水分解物を使用する。また、アクリル酸で架橋されたポリエチレンオキサイド、ナトリウムカルボキシセルロースの架橋物、無水マレイン酸塩−イソブチレン、アクリル酸にマレイン酸塩のコモノマーを共重合させたもの、アクリル酸にイタコン酸塩のコモノマーを共重合させたもの、アクリル酸に2−アクリルアミド−2メチルスルホン酸塩のコモノマーを共重合させたもの、アクリル酸に2−アクロイルエタンスルホン酸のコモノマーを共重合させたもの、アクリル酸に2−ヒドロキシエチルアクリレートのコモノマーを共重合させたものを使用することもできる。
【0016】
それら高吸水性ポリマー18は、三次元網目構造を有し、自重の500〜1000倍の水を吸収する。高吸水性ポリマー18は、水溶液重合法、溶液重合法、逆相懸濁重合法により、イオン基を有する電解質ポリマーを架橋することで作られる。水を加える以前のポリマー18は、イオン基どうしが互いに集合かつ連結した状態(結晶化)にある。ポリマー18に水が加えられると、主鎖にぶら下がっている電解質が電離されて水分子と引き合い、さらに、イオンの濃度差により生じる浸透圧によって水が網目の中に吸収される。同時に主鎖に残ったイオン基どうしが反発しあって網目が広がり、網目構造を作る主鎖が伸びきるまで水を吸収する。
【0017】
水19には、水道水を使用する。水19に特に限定はなく、軟水や硬水、純水のいずれであっても使用することができる。無機化合物には、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、クレーのうちの少なくとも1つを使用する。無機化合物は、発泡部材10の平均気泡径を調整する発泡核剤となる。
【0018】
図3は、吸水性発泡部材10の製造方法の一例を示す概略図である。発泡部材10の製造方法の一例は、以下のとおりである。合成樹脂15と紙パウダー16と澱粉17と粒子状の高吸水性ポリマー18とを押出機20に投入するとともに(無機化合物を含む場合はそれも押出機20に投入)、押出機20の中段から押出機20の内部に水19を注入する。押出機20の内部では、スクリュを介して合成樹脂15と紙パウダー16と澱粉17と高吸水性ポリマー18とが混合されつつ、それらが押出機20のヒータによって110〜170℃に加熱される。押出機20の内部では、合成樹脂15と澱粉17と高吸水性ポリマー18とが溶解するとともに、紙パウダー16が熔解した合成樹脂15と澱粉17とポリマー18とに混練されることで高温の混合物(第1混合物)が作られる。混合物は、スクリュによって混練されながら押出機20の先端部へ向かって次第に移動する。押出機20の中段から注入された水19は、スクリュを介して混合物に混入される。水19が混合物に混入されると、混合物の温度によって水19が瞬時に気化する。水19が気化すると、それにともなって混合物の内部に多数の気泡14が形成され、混合物が押出機20の先端部に取り付けられたダイ(図示せず)から押し出されたときに気泡14の膨張にともなって混合物が所定倍率に膨張し、四角柱状の吸水性発泡部材10が作られる。ダイから押し出された発泡部材10はその温度が低下して固形化する。発泡部材10の内部では、温度が低下して固化した澱粉17が気泡14を包被する膜21を形成している。
【0019】
押出機20の内部における水19混入前の混合物(第1混合物)の温度は120℃以上190℃以下の範囲にある。混合物の温度が120℃未満では、混入する水19の量にもよるが、水19が混合物の内部で瞬時に気化せず、混合物の内部における発泡が不十分となり、発泡部材10の内部に多数の気泡14を作ることができない。混合物の温度が190℃を超過すると、合成樹脂15や紙パウダー16、澱粉17、高吸水性ポリマー18の性状が温度によって変化し、特に、紙パウダー16が黄ばんだり、黒ずんだりすることで、発泡部材10自体が変色してしまう。発泡部材10の単位体積当たりの発泡倍率は、5〜60倍であり、好ましくは5〜30倍である。発泡倍率が5倍未満では、発泡部材10に気泡14が十分に形成されておらず、発泡部材10の保水性能や吸水性能が低下し、発泡部材10に多量の水を保持させることができない。発泡倍率が60倍を超過すると、発泡部材10の強度が著しく低下し、わずかな衝撃で発泡部材10が崩壊してしまう場合がある。
【0020】
発泡部材10は、独立気泡が40%以上であり、平均気泡径が2.0mm以下である。独立気泡率は50%以上が好ましく、平均気泡径は1.5mm以下が好ましい。発泡部材10は、それが紙パウダー16と澱粉17とを含むから、それが合成樹脂15や高吸水性ポリマー18のみから作られている場合と比較し、その燃焼カロリーが低く、その焼却処理時に焼却炉を傷めることはない。なお、発泡部材10の燃焼カロリーは、4500〜6000Kcal/kgの範囲にある。発泡部材10は、その原料である合成樹脂15や紙パウダー16、澱粉17、高吸水性ポリマー18の混合割合を変えることで、その燃焼カロリーを前記範囲で調節することができる。発泡部材10は、その内部に多数の気泡14が形成され、さらに、それが高吸水性ポリマー18を含有するから、気泡14が水を取り込んで保持するとともに、ポリマー18が水を吸収しつつ水を長期間保持する。発泡部材10は、ベンゼン環を有さないポリオレフィン系合成樹脂を使用するとともに、それが紙パウダーと澱粉とを含むから、その焼却時に二酸化炭素のみが発生し、煤煙の発生がなく、環境に悪影響を及ぼすことはない。
【0021】
混合物(第1混合物)に対するポリオレフィン系合成樹脂15と紙パウダー16と澱粉17と高吸水性ポリマー18の混合割合は、ポリオレフィン系合成樹脂15が20重量%以上であって35重量%以下、紙パウダー16が40重量%以上であって60重量%以下、澱粉17が10重量%以上であって30重量%以下、高吸水性ポリマー18が10重量%以上であって20重量%以下の範囲にある。ポリオレフィン系合成樹脂15が20重量%未満では、混合物の内部での発泡が不十分となり、発泡部材10にわずかしか気泡14が形成されず、発泡部材10の保水性能や吸水性能が低下し、発泡部材10に多量の水を保持させることができない。ポリオレフィン系合成樹脂15が35重量%を超過すると、紙パウダー16や澱粉17よりも燃焼カロリーが高い合成樹脂15の割合が増え、発泡部材10の燃焼カロリーが増加し、燃焼カロリーが6000kcal/kgを超過してしまう場合がある。紙パウダー16が60重量%を超過しかつ澱粉17が30重量%を超過すると、加熱しても流動性を示さない紙パウダー16や澱粉17が押出機の内部における合成樹脂15の流動性を妨げ、押出機20の内部において合成樹脂15と紙パウダー16と澱粉17と高吸水性ポリマー18とが均一に混合されない場合がある。紙パウダー16が40重量%未満かつ澱粉17が20重量%未満では、紙パウダー16や澱粉17よりも燃焼カロリーが高い合成樹脂15の割合が増え、発泡部材10の燃焼カロリーが増加し、燃焼カロリーが6000kcal/kgを超過してしまう場合がある。高吸水性ポリマー18が10重量%未満では、発泡部材10の保水機能が低下し、発泡部材10の湿潤状態を長期間維持することができない。高吸水性ポリマー18が20重量%を超過すると、水を吸収したときの発泡部材10の強度が低下し、わずかな衝撃で発泡部材10が崩壊してしまう場合がある。
【0022】
紙パウダー16は、その平均粒径が50μm以上であって200μm以下の範囲にある。紙パウダー16の平均粒径が50μm未満では、パルプや損紙、破紙、古紙を50μm未満の粒径に加工するために複数の工程を必要とするので、紙パウダー16の生産コストが高くなってしまう。その結果、発泡部材10の生産コストが上昇する。紙パウダー16の平均粒径が200μmを超過すると、紙パウダー16が合成樹脂15の中で分散不良を起こし、紙パウダー16が合成樹脂15の中に嵩高な継粉を形成する場合があり、発泡部材10の内部に紙パウダー16の塊が形成され、発泡部材10が脆弱となってその耐衝撃性が低下してしまう。澱粉17は、その平均粒径が10μm以上であって200μm以下の範囲にある。澱粉17の平均粒径が10μm未満では、澱粉17を10μm未満の粒径に加工するために複数の工程を必要とするので、使用する澱粉17の生産コストが高くなってしまう。澱粉17の平均粒径が200μmを超過すると、澱粉17が溶解し難くなり、澱粉17が合成樹脂15の中で分散不良を起こし、澱粉17が合成樹脂15の中に嵩高な継粉を形成する場合があり、発泡部材10の内部に澱粉17の塊が形成されてしまう。
【0023】
図4は、吸水性発泡部材10を挿花の養生床として使用した場合の斜視図である。図4の吸水性発泡部材10は、水を吸収した状態にある。この発泡部材10は、切り花22の根本を差し込んでそれを生ける養生床として使用される。発泡部材10は、その全体を水に浸し、水の中で締め付けて気泡14を潰した後、その締め付けを解いで再び気泡14を膨張させる。そのとき、水が気泡14に取り込まれて保持されるとともに、水が高吸水性ポリマー18に吸収保持される。発泡部材10に水を含ませると、ポリマー18が膨潤するとともに、発泡部材10が膨張する。発泡部材10に水を含ませた後は、図4に示すように、切り花22の根本を発泡部材10の上面11から下面12に向かって厚み方向へ差し込み、発泡部材10に切り花22を支持させる。この吸水性発泡部材10は、水が発泡部材10の内部に形成された気泡14に取り込まれて保持されるとともに、多量の水が高吸水性ポリマー18に吸収保持されるから、湿潤状態を長期間維持することができる。発泡部材10は、その内部に水を長期間保持することができるから、短期間の水補給の必要がなく、挿花の養生床としての使用に手間を要せず、挿花の養生床としての長期間の使用に好適である。
【0024】
図5,6は、他の一例として示す吸水性発泡部材30の斜視図と、図5の6−6線端面図とである。図5の吸水性発泡部材30は、水を吸収する以前の状態にある。図5,6では、縦方向を矢印A、横方向を矢印B(図5のみ)で示し、厚み方向を矢印Cで示す。なお、発泡部材10は図1のそれと同一であり、発泡部材10の製造方法も図1のそれと同一であるから、図1と同一の符号を付すことで発泡部材10自体の説明は省略する。この吸水性発泡部材30が図1のそれと異なるところは、発泡部材10を支持する支持発泡部材31を有する点にある。
【0025】
支持発泡部材31は、四角柱状を呈し、矩形の上面32および矩形の下面33と、上下面32,33間に延びる矩形の4つの側面34とを有する六面体である。発泡部材31は、上下面32,33間の厚み寸法が3〜15cmの範囲にあり、縦方向の寸法と横方向の寸法とが5〜25cmの範囲にある。なお、発泡部材31の形状について特に限定はなく、円柱状や多角柱状等の形状を自由に選択することができる。
【0026】
発泡部材31の内部には、多数の独立した気泡35が形成されている。気泡35は、その形状や大きさが一様ではなく、縦横方向と厚み方向とへ不連続かつ不規則に延びている。発泡部材31はポリオレフィン系合成樹脂36、紙パウダー37、澱粉38を原料とするが(図7参照)、原料として無機化合物を加えることもできる。ポリオレフィン系合成樹脂36や紙パウダー37、澱粉38、無機化合物は、発泡部材10の原料のそれらと同一である。発泡部材31の中央には、上面32から下面33に向かって凹む四角柱状の凹部39が形成されている。凹部39は、その形状が発泡部材10のそれと同一であり、その容積が発泡部材10の体積と略同一またはわずかに大きい。凹部39には、吸水性発泡部材10が嵌め込まれている。発泡部材10は、その上面11を除く下面12および各側面13(周り)が支持発泡部材31に囲まれ、発泡部材31に支持されている。凹部39では、発泡部材10の上面11が発泡部材31の上面32から露出している。発泡部材10の下面12は凹部39の底面40に当接し、発泡部材10の各側面13は凹部39の内周面41に当接している。
【0027】
図7は、支持発泡部材31の製造方法の一例を示す概略図である。支持発泡部材31の製造方法の一例は、以下のとおりである。合成樹脂36と紙パウダー37と澱粉38とを押出機20に投入するとともに(無機化合物を含む場合はそれも押出機20に投入)、押出機20の中段から押出機20の内部に水19を注入する。押出機20の内部では、スクリュを介して合成樹脂36と紙パウダー37と澱粉38とが混合されつつ、それらが押出機20のヒータによって110〜170℃に加熱される。押出機20の内部では、合成樹脂36と澱粉38とが溶解するとともに、紙パウダー37が熔解した合成樹脂36と澱粉38とに混練されることで高温の混合物(第2混合物)が作られる。混合物は、スクリュによって混練されながら押出機20の先端部へ向かって次第に移動する。押出機20の中段から注入された水19は、スクリュを介して混合物に混入される。水19が混合物に混入されると、混合物の温度によって水19が瞬時に気化する。水19が気化すると、それにともなって混合物の内部に多数の気泡35が形成され、混合物が押出機20の先端部に取り付けられたダイ(図示せず)から押し出されたときに気泡35の膨張にともなって混合物が所定倍率に膨張し、四角柱状の支持発泡部材31が作られる。ダイから押し出された発泡部材31はその温度が低下して固形化する。発泡部材31の内部では、澱粉38が気泡35を包被する膜42を形成している。
【0028】
押出機20の内部における水19混入前の混合物(第2混合物)の温度は110℃以上〜170℃以下の範囲にある。混合物の温度が110℃未満では、混入する水19の量にもよるが、水19が混合物の内部で瞬時に気化せず、混合物の内部での発泡が不十分となり、発泡部材31の内部に多数の気泡35を作ることができない。混合物の温度が170℃を超過すると、合成樹脂36や紙パウダー37、澱粉37の性状が温度によって変化し、特に、紙パウダー37が黄ばんだり、黒ずんだりすることで、発泡部材31自体が変色してしまう。発泡部材31の単位体積当たりの発泡倍率は、5〜60倍であり、好ましくは5〜40倍である。発泡倍率が5倍未満では、発泡部材31に気泡が十分に形成されておらず、発泡部材31のクッション性や柔軟性が低下する。発泡倍率が60倍を超過すると、発泡部材31の強度が著しく低下し、わずかな衝撃で発泡部材31が崩壊してしまう場合があり、発泡部材10を十分に支持することができない。
【0029】
発泡部材31は、独立気泡が40%以上であり、平均気泡径が2.0mm以下である。独立気泡率は50%以上が好ましく、平均気泡径は1.5mm以下が好ましい。発泡部材31は、それが紙パウダー37と澱粉38とを含むから、それが合成樹脂36のみから作られている場合と比較し、その燃焼カロリーが低く、その焼却処理時に焼却炉を傷めることはない。なお、発泡部材31の燃焼カロリーは、4500〜6000Kcal/kgの範囲にある。発泡部材31は、その原料である合成樹脂36や紙パウダー37、澱粉38の混合割合を変えることで、その燃焼カロリーを前記範囲で調節することができる。発泡部材31は、発泡部材10と同様に、ベンゼン環を有さないポリオレフィン系合成樹脂36を使用するとともに、それが紙パウダー37と澱粉38とを含むから、その焼却時に二酸化炭素のみが発生し、煤煙の発生がなく、環境に悪影響を及ぼすことはない。
【0030】
混合物(第2混合物)に対するポリオレフィン系合成樹脂36と紙パウダー37と澱粉38と混合割合は、ポリオレフィン系合成樹脂36が20重量%以上であって40重量%以下、紙パウダー37が40重量%以上であって60重量%以下、澱粉38が20重量%以上であって30重量%以下の範囲にある。ポリオレフィン系合成樹脂36が20重量%未満では、混合物の内部での発泡が不十分となり、発泡部材31にわずかしか気泡42が形成されず、発泡部材31のクッション性や柔軟性が低下する。ポリオレフィン系合成樹脂36が40重量%を超過すると、紙パウダー37や澱粉38よりも燃焼カロリーが高い合成樹脂36の割合が増え、発泡部材31の燃焼カロリーが増加し、燃焼カロリーが6000kcal/kgを超過してしまう場合がある。紙パウダー37が60重量%を超過しかつ澱粉38が30重量%を超過すると、加熱しても流動性を示さない紙パウダー37や澱粉38が押出機20の内部における合成樹脂36の流動性を妨げ、押出機20の内部において合成樹脂36と紙パウダー37と澱粉38とが均一に混合されない場合がある。紙パウダー37が40重量%未満かつ澱粉38が20重量%未満では、紙パウダー37や澱粉38よりも燃焼カロリーが高い合成樹脂36の割合が増え、発泡部材31の燃焼カロリーが増加し、燃焼カロリーが6000kcal/kgを超過してしまう場合がある。
【0031】
紙パウダー37の平均粒径は、発泡部材10の原料である紙パウダー16のそれと同一である。紙パウダー37の平均粒径が50μm未満では、パルプや損紙、破紙、古紙を50μm未満の粒径に加工するために複数の工程を必要とするので、紙パウダー37の生産コストが高くなってしまう。その結果、発泡部材31の生産コストが上昇する。紙パウダー37の平均粒径が200μmを超過すると、紙パウダー37が合成樹脂36の中で分散不良を起こし、紙パウダー37が合成樹脂36の中に嵩高な継粉を形成する場合があり、発泡部材31の内部に紙パウダー37の塊が形成され、発泡部材31が脆弱となってその耐衝撃性が低下してしまう。澱粉38の平均粒径は、発泡部材10の原料である澱粉17のそれと同一である。澱粉38の平均粒径が10μm未満では、澱粉38を10μm未満の粒径に加工するために複数の工程を必要とするので、使用する澱粉38の生産コストが高くなってしまう。澱粉38の平均粒径が200μmを超過すると、澱粉38が溶解し難くなり、澱粉38が合成樹脂36の中で分散不良を起こし、澱粉38が合成樹脂36の中に嵩高な継粉を形成する場合があり、発泡部材31の内部に澱粉38の塊が形成されてしまう。
【0032】
図8は、吸水性発泡部材30を植物栽培の養生床として使用した場合の斜視図である。図8では、発泡部材10が水を吸収した状態にある。この発泡部材30は、植物の種子を蒔いてそれを発芽させ、発芽した植物43をそのまま栽培する養生床として使用される。発泡部材10は、その全体を水に浸し、水の中で締め付けて気泡14を潰した後、その締め付けを解いで再び気泡14を膨張させる。そのとき、水が気泡14に取り込まれて保持されるとともに、水が高吸水性ポリマー18に吸収保持される。吸水性発泡部材10に水を含ませた後は、支持発泡部材31の凹部39に発泡部材10を嵌め込む。発泡部材10に水を含ませると、ポリマー18が膨潤するとともに、発泡部材10が凹部39で膨張し、発泡部材10の下面12が凹部39の底面40に密着し、各側面14が凹部39の内周面41に密着して発泡部材10が支持発泡部材31に支持される。発泡部材10を凹部39に嵌め込んだ後は、発泡部材10の上面11に植物43の種子を蒔く。種子は発泡部材10に保持された水を吸収して発芽し、発芽後の植物43は発泡部材10に保持された水を吸収して成長する。
【0033】
この吸水性発泡部材30は、水が発泡部材10の内部に形成された気泡14に取り込まれて保持されるとともに、多量の水が高吸水性ポリマー18に吸収保持されるから、湿潤状態を長期間維持することができる。発泡部材30は、発泡部材10の内部に水を長期間保持することができるから、短期間の水補給の必要がなく、植物栽培の養生床としての使用に手間を要せず、植物栽培の養生床としての長期間の使用に好適である。発泡部材30は、吸水性ポリマー18が多量の水を吸収することで発泡部材10が脆弱になったとしても、その周りを囲む発泡部材31が発泡部材10を支持するから、湿潤状態にある発泡部材10が不用意に崩壊してしまうことはない。
【0034】
図1の吸水性発泡部材10は、挿花の養生床の他に、植物を栽培する養生床として使用することもできる。図5の吸水性発泡部材30は、植物を栽培する養生床の他に、挿花の養生床として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一例として示す吸水性発泡部材の斜視図。
【図2】図1の2−2線端面図。
【図3】吸水性発泡部材の製造方法の一例を示す概略図。
【図4】吸水性発泡部材を挿花の養生床として使用した場合の斜視図。
【図5】他の一例として示す吸水性発泡部材の斜視図。
【図6】図5の6−6線端面図。
【図7】支持発泡部材の製造方法の一例を示す概略図。
【図8】吸水性発泡部材を植物栽培の養生床として使用した場合の斜視図。
【符号の説明】
【0036】
10 吸水性発泡部材
14 気泡
15 ポリオレフィン系合成樹脂
16 紙パウダー
17 澱粉
18 高吸水性ポリマー
19 水
30 吸水性発泡部材
31 支持発泡部材
35 気泡
36 ポリオレフィン系合成樹脂
37 紙パウダー
38 澱粉
39 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉と高吸水性ポリマーとを原料とし、前記ポリオレフィン系合成樹脂と前記紙パウダーと前記澱粉と前記高吸水性ポリマーとを加熱下に混合した高温の第1混合物に水を加え、前記第1混合物の内部における前記水の気化によって、該第1混合物の内部に多数の気泡を形成しつつ、該第1混合物を所定倍率に膨張させることで作られた吸水性発泡部材。
【請求項2】
前記吸水性発泡部材が、該吸水性発泡部材の一部を露出させた状態でその周りを囲む支持発泡部材を備え、前記支持発泡部材が、ポリオレフィン系合成樹脂と紙パウダーと澱粉とを原料とし、前記ポリオレフィン系合成樹脂と前記紙パウダーと前記澱粉とを加熱下に混合した高温の第2混合物に水を加え、前記第2混合物の内部における前記水の気化によって、該第2混合物の内部に多数の気泡を形成しつつ、該第2混合物を所定倍率に膨張させることで作られている請求項1記載の吸水性発泡部材。
【請求項3】
前記第1混合物に対する前記ポリオレフィン系合成樹脂と前記紙パウダーと前記澱粉と前記高吸水性ポリマーとの混合割合が、ポリオレフィン系合成樹脂20〜35重量%、紙パウダー40〜60重量%、澱粉10〜30重量%、高吸水性ポリマー10〜20重量%の範囲、前記第2混合物に対する前記ポリオレフィン系合成樹脂と前記紙パウダーと前記澱粉との混合割合が、ポリオレフィン系合成樹脂20〜40重量%、紙パウダー40〜60重量%、澱粉20〜30重量%の範囲にあり、前記紙パウダーの平均粒径が、50〜200μm、前記澱粉の平均粒径が、10〜200μmの範囲にある請求項1または請求項2に記載の吸水性発泡部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−254656(P2007−254656A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82937(P2006−82937)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(597022540)株式会社環境経営総合研究所 (23)
【Fターム(参考)】